商標取消審判
2018-300191
リニア
- 審判番号
- 2018-300191
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2013-029640
- 登録番号
- 5725543
- 請求日
- 2018年03月30日
- 審決日
- 2021年12月24日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東海旅客鉄道 株式会社
- 【請求人代理人】名古屋国際特許業務法人
- 【被請求人】株式会社日本すこやか研究所
- 【被請求人代理人】向口 浩二
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 淳
- 審判官 中束 としえ
- 審判官 山田 啓之
- 分類
- T131 .1 -Y (W16)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第2号、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条、商標法第50条第2項、商標法第50条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5725543号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5725543号商標(以下「本件商標」という。)は、「リニア」の片仮名を標準文字により表してなり、平成25年4月19日に登録出願、第16類「文房具類,紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,印刷したくじ(「おもちゃ」を除く。),写真,写真立て,印刷物」を指定商品として、同26年12月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成30年4月16日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、同27年4月16日から同30年4月15日までの期間である(以下「要証期間」という。)。
なお、本件商標権は、商標登録原簿の記載によれば、「有限会社エコー商事」(以下「前権利者」という場合がある。)を権利者とし設定登録されたものであるが、令和2年10月27日受付の特定承継による本件の移転がされ、「株式会社日本すこやか研究所」が権利者となったものである。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載し、また、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)弁駁書(令和2年9月14日付け)の要旨
被請求人は、本件商標が、要証期間に、日本国内において、その指定商品について使用された事実を証明していない。
ア 委託販売の記載について
乙1の1の宣伝広告チラシにおいて、「田村商店」の文字列の左上に「(委託販売)」との記載があるが、通常、自己の商品について、委託販売先を通じて販売する際には、販売される対象の商品が、委託販売先の商品ではなく、委託者である自己の商品であることを明示するために、委託者に関する情報を記載するところ、当該チラシにおいては、委託者に関する情報の記載がなく、不自然な内容であって、被請求人の商品に関する広告としての体を成したものとはいえない。
イ 通常使用権者との主張について
被請求人は、雑貨販売事業を営む「田村商店」が本件商標の通常使用権者であると主張するものの、これを示す客観的な事実について何らの証拠も提出していないから、「田村商店」が本件商標の通常使用権者に該当すると認定することはできない。「委託販売」の記載のみをもって、通常使用権者であるとの認定は困難である。
さらに、「田村商店」が所在とされる住所(大阪市東淀川区・・・)は、現在は駐車場があり、その横の建物に「株式会社田村商店」の看板らしきものがあるが、同住所の法人の存在は確認できず、かつ、本件審判に係る指定商品の製造販売を推認させる事実は確認できないことからすれば、要証期間に「田村商店」が乙1の1に記載の住所に存在していたかどうかは疑わしく、また、存在していたとしても、本件審判に係る指定商品を取り扱っていたことついて強い疑念を持たざるを得ない状況であるから、被請求人の主張自体、信憑性に欠けるものといわざるを得ない。
ウ 宣伝広告チラシの作成事実について
乙1の2の領収書において、記載された数字・文字等は、その記載がとても薄く、内容について具体的かつ正確に把握できず、当該領収書は、何らかの事実を証明する証拠として不適切であり、本件商標の使用の事実を証明することはできない。
また、これが、乙1の1の宣伝広告チラシに関する領収書に該当すると認定できるとしても、通常、宣伝広告チラシの作成等に関しては、作成事実(発注、受注、納品)を示す一連の証拠が併せて存在するものであり、当該領収書がいずれかに該当するとしても、その他の証拠が存しなければ宣伝広告チラシの作成事実は何ら証明され得ない。
エ 宣伝広告チラシの配布実績(頒布事実)について
被請求人は、平成27年9月12日に乙1の1の宣伝広告チラシが新聞折り込みにより5000枚配布されたと主張するが、配布場所についての主張やそれを示す証拠、及び被請求人が主張する日時、配布枚数についての証拠は何ら提出されていないから、乙1の1の宣伝広告チラシの配布事実について何ら証明されていない。
オ 宣伝広告チラシ内容について
被請求人が作成・頒布したと主張する乙1の1の宣伝広告チラシには、商品としてのボールペンの写真(以下「商品写真」という。)が掲載され、その価格と「田村商店」に関する情報(住所、電話番号、携帯電話番号)が記載されているが、商品の販売方法、購入方法、支払方法等、取引に不可欠な情報については一切掲載・記載がなく、当該チラシは、宣伝広告としての体を成していない。
また、商品写真において「LINEAR」と記載された横長長方形状のシールと思われるものが貼付されているように認識できるところ、このような態様は、第三者の商品に、「LINEAR」のシールを添付したものであると捉えられるというのが自然である。
さらに、実際の商品の形状、形態等は、需要者が商品の購入判断をするのに重要な要素であるところ、乙1の1に掲載された商品写真は、いずれも、その内容が不鮮明であり、この観点を踏まえても、乙1の1の宣伝広告チラシは、宣伝広告としての体を成していない。
よって、乙1の1の宣伝広告チラシは、その内容に不自然な点が散見され、広告の体を成していないものである。
カ 小括
上記によれば、乙1の1の宣伝広告チラシを、通常使用権者である「田村商店」が配布したとの行為が、商標法第2条第3項第8号に該当すると認定することはできない。
(2)弁駁書(令和3年5月31日付け)の要旨
ア 「乙7の4の1」ないし「乙7の4の3」について
(ア)撮影日を証明する証拠の不存在
被請求人は、「乙7の4の1」ないし「乙7の4の3」の各写真について、撮影日を「平成30年(2018年)5月以前」とする「店舗・駐車場・看板の写真」としているが、当該期間は、要証期間「外」の期間を含むものであり、要証期間「外」に撮影されたことを否定すべき証拠は何ら提出されていない。
(イ)撮影日について信憑性を欠くこと
被請求人の主張する撮影日「平成30年(2018年)5月以前」をはさむ「2016年(平成28年)8月」(甲5)、「2018年(平成30年)10月」(甲6)のいずれにおいても、「革新的ダストステーション」のチラシの掲示がなされているが、本件商標に係る乙4の1の宣伝広告チラシは確認することはできないから、撮影日及び乙4の1の宣伝広告チラシが掲示されていたとの被請求人の主張は、不自然であって、いずれも事実に反する可能性が極めて高い。
イ 商標法第2条第3項第2号該当性について
(ア)乙4の1の宣伝広告チラシ掲載の各商品販売事実を示す証拠の不存在
被請求人は、前権利者である有限会社エコー商事又は田村商店(田村真人氏(以下「田村氏」といい、これらをまとめて「前権利者等」という。))は、乙4の1の宣伝広告チラシ掲載の各商品について、現金取引にて販売したため納品書や請求書は発行していないが、チラシ看板を掲げ、当該宣伝広告チラシ等を頒布し、また、仕掛品を相当程度仕入れ、さらに完成品に貼付するシールも作成していたことから、実際に一定程度の売上げがあったと推認するのが合理的であると主張する。
しかしながら、要証期間に前権利者等が本件商標を付す等した商品を販売した事実を証明する証拠は、何ら提出されていないから、この被請求人の主張をもって、当該宣伝広告チラシ掲載の各商品について、販売の事実が存したと推認できないことは明らかである。
なお、この点、被請求人は、乙4の1の宣伝広告チラシ等の頒布の事実に加えて、「仕掛品の相当程度の仕入れの事実」が販売の事実を推認させる根拠であるとも主張する。
しかし、「仕掛品」は、一般的に、それ自身での販売や、交換価値を見込めない、「商品」とは異なるものをいうのであって、このような「仕掛品」を、「相当」程度仕入れたとしても、商品の販売を推認させる根拠とはならない。
(イ)商標法第2条第3項第2号の「使用」に該当しないこと(「ボールペン」について)
「水鉄砲(おもちゃ)、ボールペンの仕入れに係る領収書」(写し)とする領収書(乙12)の作成者は「株式会社シモジマ心斎橋店」であり、「株式会社シモジマ」は、「雑貨・文房具類」等の卸売販売をその事業内容とする会社である(甲7)。
当該領収書には、「商品名」の項目に、「XBLW355Nエナージェルタショクダークグレー」と記載されており、これは、「ぺんてる株式会社」(以下「P社」という。)が製造販売する「ボールペンの」の型番、名称と同一であり、両者の具体的形状も同一である。
以上を踏まえると、乙4の1の宣伝広告チラシに掲載された「3 ボールペン」及び前権利者等が販売したと主張する「ボールペン」は、「株式会社シモジマ心斎橋店」にて購入した「P社のボールペン」であることは明らかである。
そうすると、被請求人の主張は、要証期間に権利者等が製造等した商品ではない、他者「P社」の商品である「エナージェル」を購入し、前権利者等が用意した「シール」(乙13の1、乙13の2)を貼付し、前権利者等「自身」の商品であるとして「再度」販売した事実をもって、商標法第2条第3項第2号の「使用」に該当するとの主張にほかならない。
このような、「P社」の商品である「エナージェル」に、自身が用意したシールを貼付した上で「再度」販売する行為は、前権利者等の当該商品の出所が「P社」である、との誤認が生じることは明らかであり、上記したような購入事実を踏まえれば、前権利者等が「P社」から承諾を得ているとは考えられない。
以上を踏まえると、前権利者等による当該行為は、「P社」が所有する商標権の侵害行為に該当するものであって、同社の業務上の信用を毀損する行為であり、利益を侵害する「法律上保護される利益」を侵害する不法行為(民法第709条)に該当するものである。
よって、乙4の1の宣伝広告チラシ掲載の各商品中、例えば、「3 ボールペン」について、仕掛品又は商品が実際に存在し、これらについての販売の事実が仮に存するとしても、前権利者等による前述した行為をもって、商標法第50条における「登録商標の使用」(商標法第2条第3項第2号)に該当すると認定することはできない。
(ウ)商標法第2条第3項第2号の「使用」に該当しないこと(「ボールペン」以外の他の商品について)
上述した「ボールペン」同様、例えば、乙4の1の宣伝広告チラシに掲載された「2 おもちゃ」も、他者の商品と形状が同一である。
そのため、「ボールペン」以外の本件審判の請求に係る商品に対応する「他の商品」について、仮に被請求人が主張するような販売の事実が存するとしても、上記(イ)と同様に、前権利者等による当該販売行為をもって、商標法第50条における「登録商標の使用」(商標法第2条第3項第2号)に該当すると認定されるべきではない。
ウ 宣伝広告チラシについて
乙4の1の宣伝広告チラシに掲載された各商品について、仮に、販売の事実が存するとしても、上記(イ)のとおり、当該行為は、商標法第50条における「登録商標の使用」(商標法第2条第3項第8号)に該当するものではない。
エ 結論
以上のとおり、被請求人は、本件商標が日本国内において要証期間にその指定商品について使用された事実を証明していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙13(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)商標の使用者
本件商標の通常使用権者である田村商店が本件商標を使用している。「田村商店」は、大阪市東淀川区・・・に住所を有し、雑貨販売事業を主たる事業としている。
(2)使用に係る商品及び商標
乙1の1の宣伝広告チラシには、本件商標に係る指定商品を含む商品(ハンカチ、水鉄砲、ボールペン、キーホルダー、時計)の写真が掲載されている。
(3)使用時期
乙1の1の宣伝広告チラシは、平成27年(2015年)9月12日以前に作成され、平成27年(2015年)9月12日にB5版で、新聞折り込みにより5000枚配布され、当該日付が乙1の2に記載されている。
2 回答書(令和3年3月23日付け)の要旨
(1)前権利者と田村商店との関係について
ア 両者が実質同体であることについて
(ア)「田村商店」とは、田村氏を個人事業主とし、雑貨販売を主たる事業とする個人商店の屋号(通称)である。
(イ)前権利者である有限会社エコー商事は、不動産賃貸を主たる事業としつつも雑貨販売事業をも行う有限会社である。田村氏は、前権利者の「取締役」兼「従業員」であり(乙6)、前権利者の雑貨販売事業を推進する立場にあったとともに、個人事業主としても田村商店の屋号の下で雑貨販売事業を遂行していた。
(ウ)上記(ア)及び(イ)により、前権利者と田村商店(個人事業主たる田村氏を含む。)は、田村氏を介し、雑貨販売事業において、実質的に同一の営業主体であったこと明らかである。
(エ)田村商店は、遅くとも平成24年(2012年)頃には、雑貨販売業としての実体を有していた。例えば、物品名「ごみ容器固定枠」に係る意匠(意匠登録第1459476号)(乙7の1)(以下、当該「ごみ容器固定枠」を「乙7の1商品」という。)は、田村氏を創作者、前権利者を出願人として意匠登録がなされたものであり、田村氏は前権利者の黙示の実施許諾を得て、「田村商店」の屋号の下、乙7の1商品を販売していた(乙7の2)。かかる事実より、前権利者と田村商店の両者が、本件商標に係る雑貨商品の販売事業を開始する以前から、実質同体であったことが明らかである。
(オ)乙7の1商品の宣伝広告チラシ(乙7の2)に記載されているFAX番号は、前権利者の電話番号であり(乙7の3)、090から始まる電話番号は田村氏の個人用携帯電話の番号である。この事実からも、両者が実質同体であったこと明らかである。
(カ)請求人が田村商店の存在の疑義に関連して指摘した住所地にある駐車場及び店舗(甲3)は、前権利者の不動産賃貸物件であり、田村商店は同人の許諾を得て、看板を掲げていたものである。
(キ)請求人が提出した2016年5月を撮影日とするGoogleストリートビュー(甲3)において、「株式会社 田村商店」の看板の下方に、やや不鮮明ではあるが、2枚の長方形の張り紙が視認される。この2枚の長方形の張り紙に関して、被請求人はその内容を明らかにすべく、鮮明な写真(撮影日:平成30年(2018年)5月以前)を提出する(乙7の4の1~3)。当該写真から、上記2枚の長方形の張り紙が、乙7の1商品に係る宣伝広告チラシであることが明らかである。前権利者の不動産賃貸物件の地に、田村商店の宣伝広告チラシが貼られていることからも、両者が実質同体であること明らかである。
なお、「株式会杜 田村商店」の文字中、「株式会杜」の文字は、前権利者が将来の株式会社化の意図・計画を先走って表示したものではあるが、本件商標の使用の立証に影響するものではない。
(ク)意匠権(乙7の1)のみならず、田村氏を創作者等とする複数の産業財産権(特許権、意匠権、商標権)を前権利者又は田村氏の名義で取得し、それらの産業財産権に係る事業に当たっては、前権利者名又は田村商店名を営業上の方便として使い分けていた。
(ケ)前権利者及び田村商店は、本件審判の請求に係る商品、すなわち、リニアグッズと称して販売する商品に関しても、乙7の1商品と同様の営業方針を取った。
(コ)リニアグッズに係る第4回目の宣伝広告チラシ(乙4の1)に図示される田村商店の住所と乙7の1商品に係る宣伝広告チラシに表示される田村商店の住所は同一である。
(サ)リニアグッズに係る第4回目の宣伝広告チラシ(乙4の1)の最下段には、「有限会社エコー商事」及び「田村商店」の両者の名称が併記されている。
(シ)リニアグッズと称して、田村商店が仕入れ又は販売していた商品に係る各種取引書類において、「有限会社エコー商事田村商店」(乙4の1等)、「田村商店 田村氏」(乙1の3等)、「田村商店」(乙5等)、「田村氏」(乙8の1の1等)、「エコー商事」(乙8の1の2等)の宛名が混在している。この事実も、前権利者である有限会社エコー商事と田村商店とが実質的に同一の営業主体であったことの証左である。
イ 前権利者又は通常使用権者による使用
前権利者と「田村商店(個人事業主たる田村氏を含む。)」とが別の営業主体であるとする場合には、田村商店による本件商標の使用は、黙示の使用許諾を受けた通常使用権者による使用である。一方、前権利者と「田村商店(個人事業主たる田村氏を含む。)」とが実質同一の営業主体であり、「田村商店」が前権利者における雑貨事業部の名称又は通称であるとする場合には、当該事業部による使用は、商標権者自身による使用にほかならない。
ウ 小括
上記ア及びイのとおり、前権利者と「田村商店(個人事業主たる田村氏を含む。)」とが実質同体である以上、本件商標の使用者が商標権者又は通常使用権者であるかをしゅん別する実質的意義は存しない。
(2)第1回ないし第3回目の宣伝広告チラシの頒布経路等について
ア チラシの発注(S社による代行)
田村商店(田村氏)は、リニアグッズに係る第1回ないし第3回目の宣伝広告チラシ(乙1の1、乙2の1、乙3の1)の発注に関して、セラフホーム株式会社(以下「S社」という。)(乙3の2)にその代行を依頼した。代行を依頼した理由は、S社が前権利者の所有に係る不動産賃貸物件を取り扱っていたため、田村氏と懇意の関係にあり、また、S社に係るチラシの印刷・配布を通じて、独自の印刷・配布ルートを有していたからである。
イ 株式会社商報へのチラシの手配
発注代行依頼を受け、S社は従来から利用している株式会社商報(以下「商報社」という。)(乙3の6)のルートにより、チラシの手配を行ったため、「『早チラ!』ご注文書」という注文書(乙3の3)には、「お得意先」としてS社の名称とコード番号が記載されている。
ここで「早チラ」とは、商報社が提供する、「印刷込みの新聞折込」セットサービスである(乙3の4)。
直近の料金表によれば(乙3の4)、B5サイズ×5千枚に係る「印刷+折込料金」は「23,925円(消費税込み)」であるが、これと各領収書(乙3の5等)に記載の「22,950円」との金額差は、物価上昇による値上げ(500円)と消費税率の上昇(8%から10%)に起因するものである。
ウ 実質的発注者
上記ア及びイのとおり、リニアグッズに係る宣伝広告チラシの発注はS社によって代行されたが、実際の費用の支払いは田村商店田村氏によって行われた(乙3の5)。
したがって、当該チラシの発注は便宜的にS社によって行われたが、実質的な発注者は田村商店(田村氏を含む。)である。
エ チラシの注文内容
(ア)乙3の3の注文書の「タイトル」欄には、「リニアグッツ販売」と記載されている。このタイトルは、実際のチラシのタイトル「リニアグッツ販売(リニア・LENEAR商品)」(乙3の1)と一致し、領収書(乙1の3、乙2の3)の表示とも一致する。
(イ)当該注文書の「サイズ」欄において、「B5」との記載がある。このサイズは、領収書(乙3の5)に記載のある「B5サイズ」と一致し、実際のチラシのサイズ(乙3の1)とも一致する。
(ウ)当該注文書の「枚数」欄において、「5千枚」との記載がある。この枚数は、領収書に記載のある「5000枚」と一致する(乙3の5)。
(エ)当該注文書の印刷色の欄において、「紺」との記載がある。この印刷色は、実際のチラシの色(乙3の1、乙2の1)と一致する。
(オ)当該注文書の「折込日」の欄において、「10月31日(土)曜」、「5,000枚」とある記載は、領収書(乙3の5)の記載と一致する。
オ チラシの配布会社と配布地域
(ア)乙3の3の注文書の「配布会社」の欄には、配布会社が列挙されており、「読宣」が選択されている。
(イ)「読宣」は、その配下に南大阪配送センター(住所:大阪府堺市)を有し(乙3の7)、商報社本社の所在地は大阪府堺市である(乙3の6)。
したがって、チラシの配布は、大阪府堺市その他南大阪を中心としたものであった。
(3)要証期間における使用商標及び使用商品(乙1の1等)
ア 使用商標は、本件商標と社会通念上同一の「リニア」「LINEAR」「リニア・LINEAR」等である。
イ 使用商品は、宣伝広告チラシに掲載のハンカチ、水鉄砲、ボールペン、キーホルダー及び腕時計であり、本件審判の請求に係る商品に含まれる。
ウ 上記の使用商標と使用商品が掲載された宣伝広告チラシは、要証期間に存在し、かつ、頒布されたことは、明らかである。
(4)商標法第2条第3項第8号該当性
上記(1)ないし(3)により、商標法第2条第3項第8号に該当する本件商標の使用は立証された。
(5)商標法第2条第3項第2号該当性
ア 各種仕掛品を仕入れた事実等
前権利者又は田村商店(田村氏を含む。)が、宣伝広告チラシに掲載のハンカチ、水鉄砲、ボールペン、キーホルダー及び腕時計に係る仕掛品を複数回に渡り、相当程度の数量を仕入れていたことは、各請求書及び各領収書より明らかである(乙8の1~乙12)。また、仕掛品又は完成品に貼付するシールも作成した(乙13)。
イ 販売(譲渡)の事実
宣伝広告チラシに掲載のハンカチ、水鉄砲、ボールペン、キーホルダー及び腕時計の1品当たりの販売単価は数百円程度である。1回当たりの販売も数個程度である。商取引は全て現金取引で行われたため、販売に当たって、前権利者又は田村商店(田村氏を含む。)がその都度、納品書や請求書を発行することはなかった。
しかしながら、前権利者又は田村商店(田村氏を含む。)が、請求人が田村商店の存在の疑義を指摘した住所地においてチラシ看板を掲げていた事実、及び大阪において少なくとも5回に渡り、宣伝広告チラシ(1回当たり5,000枚)を頒布した事実、並びに上記アのとおり、相当程度の数量の仕掛品を仕入れている事実から、宣伝広告チラシに掲載のハンカチ、水鉄砲、ボールペン、キーホルダー及び腕時計の売上げが皆無であったとすることは不自然であり、一定程度の売上げがあったと推認するのが合理的である。
ウ 上記ア及びイより、商標法第2条第3項第2号に該当する本件商標の使用を立証した。
(6)審尋に対する回答
ア 宣伝広告チラシ(乙1の1)が要証期間に存在したことを確認できないとする疑義について
上記(2)の宣伝広告チラシの頒布経路等についての主張及び立証により、チラシが要証期間に存在しかつ頒布されたことが明らかになった。
イ 田村商店と前権利者との関係に関する疑義について
田村商店と前権利者との関係に関する疑義については、上記(1)の主張及び立証により、解消されたものと思料する。
ウ 「早チラ代」の意味について
「早チラ代」とは、上記(2)イにおいて説明したとおりである。
エ 領収書(乙1の2)に記載のチラシが乙1の1の宣伝広告チラシと同一であることについて
乙1の1の宣伝広告において、オリジナルA4サイズのチラシは配布時にB5サイズに縮小された(乙2の1)。
そして、乙2の1及び乙3の1の宣伝広告においては、縮小されたサイズ(B5)の原版が商報社に保管されていたため、同原版(B5サイズ)がそのまま使用された。
上記(2)における説明のとおり、乙1の1の宣伝広告チラシに係る領収書(乙1の3)のみならず、乙2の1及び乙3の1の宣伝広告チラシに係る領収書(乙2の3、乙3の5)における「チラシB5」の記載は、乙1の1、乙2の1、乙3の1のチラシを指し示すものであることが明らかになった。
(7)弁駁に対する意見
弁駁において請求人が指摘した疑義については、上記(1)ないし(6)の回答により解消した。
なお、請求人の主張において、前権利者の宣伝広告チラシの体などについて、大資本のビジネス手法の視点からの言及がなされているように見受けられるが、そのような言及は本件審判請求に係る法律問題ではないことはもとより、全従業員4人の零細企業が行い得る事業規模において投入し得る営業資金の限界に鑑みれば、投入資金に見合った最大限の十分な体を成している。
(8)結論
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求に係る商品について、本件商標権者又は通常使用権者により、要証期間に使用されていたことは明らかである。
第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
(1)乙1の1は、平成27年9月12日に新聞に折り込んで配布されたとされる「リニアグッツ販売」の表題の広告宣伝チラシ(以下「本件チラシ1」という。)とされるものであり、これには、「リニア・LINEAR商品」「(委託販売)田村商店」「大阪市東淀川区・・・」及び「TEL(06)-6317-××××」の記載がある。また、当該チラシには、腕時計、ハンカチ、おもちゃ、ボールペン及びキーホルダー(以下、これらをまとめて「使用商品」という。)の写真及び価格が掲載されている。そして、腕時計以外の商品には、「LINEAR」の文字が表示されたシールが付され、腕時計には、何らかの文字が表示されたシールと思われるものが貼られている。
(2)乙1の3は、商報社が作成した田村商店田村氏を宛先とする、平成27年9月17日付けの領収証であり、これには、「¥22,950-」「但し、早チラ代として、(9/12(土)折込分、5,000枚)」「リニア商品チラシ B5サイズ」の記載がある。
(3)乙2の1は、「リニアグッツ販売」の表題の広告宣伝チラシ(以下「本件チラシ2」という。)とされるものであり、これは、本件チラシ1と同じ内容のものである。
(4)乙2の2は、商報社が作成した「S社」を宛先とする、「2015年10月15日 締切」の記載がある請求書であり、「月 日」の「10.10」の欄には、「商品名」欄に「早チラ!印刷(折込含)B5 リニアグッツ販売」、「数量」及び「単位」欄に「5,000」及び「枚」、金額欄に「21,250」の記載があり、これに消費税を加算した「22,950」が合計金額欄に記載されている。
(5)乙2の3は、商報社が作成した田村商店田村氏を宛先とする、平成27年10月16日付けの領収証であり、これには、「¥22,950-」「但し、リニアグッズチラシ代として、H27年10月10日配布分」の記載がある。
(6)3の1は、「リニアグッツ販売」の表題の広告宣伝チラシ(以下「本件チラシ3」という。)とされるものであり、これは、本件チラシ1と同じ内容のものである。
(7)乙3の3は、「『早チラ!』ご注文書」の表題の書面であり、これには、得意先名としてS社の記載があり、「受注日(記入日):27年10月26日(月)」、「タイトル リニアグッツ販売」、「サイズ B5」、「折込日 10月31日(土)」、「印刷+折込 売価(税別) 21250」、「折込部数 5,000枚」、「チラシ店名(得意先と異なる場合)田村商店」の記載がある。
また、乙3の4は、商報社が作成した「早チラ『新聞折込』セット」の表題の書面であり、これには、「お客様の手間いらず!お手軽パック商品! 完全版下(パソコン等で制作された出来上がりのデータ)をメール送信して頂くだけで新聞折込まで一発手配」の記載があり、印刷代と折込料からなる料金がサイズ及び枚数ごとに記載されている。
(8)乙3の5は、商報社が作成した田村商店田村氏を宛先とする、平成27年11月19日付けの領収証であり、これには、「¥22,950-」「但し、チラシ代として H27年10月31日配布分 早チラ B5 5000枚」の記載がある。
(9)乙6は、平成30年3月14日付けの有限会社エコー商事の履歴事項全部証明書であり、役員に関する事項に取締役の一人として、田村氏の名称及び住所並びに「平成5年8月17日就任」の記載がある(乙6)。
また、乙7の3は、有限会社エコー商事のウェブサイトをプリントアウトしたとされるものであり、これには、乙6と同一の住所とともに、本件チラシ1と同一の電話番号「06-6317-××××」が記載されている。
(10)平成27年7月4日及び同年8月20日に作成された、タムラ氏又は「田村商店」宛ての領収書には、時計、ウルトラウォーターガン、メタリックボールペン及びシューホーン付きキーホルダーの記載がある(乙10の1、乙11)。
(11)田村商店は、田村氏を個人事業主とする個人商店である(被請求人の主張)。
(12)田村商店(田村氏)は、リニアグッズに係る宣伝広告チラシ(乙1の1、乙2の1、乙3の1)の発注に関して、S社にその代行を依頼し、S社は、商報社のルートにより、チラシの手配を行った(被請求人の主張)。
2 判断
(1)ア 上記1(2)、(4)、(5)、(7)及び(8)によれば、商報社は、平成27年9月12日、同年10月10日、及び同月31日に、リニア商品(グッズ)に関するチラシ各5,000枚を折込広告として配布したことが推認でき、同社は、田村商店の田村氏から、その代金を受け取ったものといえる。
また、上記1(1)、(3)及び(6)をも踏まえれば、当該リニア商品(グッズ)に関するチラシは、本件チラシ1ないし本件チラシ3(以下、これらをまとめて「本件チラシ」という。)であると認められる。
そして、上記1(4)、(7)及び(12)をも踏まえると、本件チラシの配布について、商報社は、田村商店の田村氏からS社を介して依頼されたものということができる。
そうすると、本件チラシは、田村商店の田村氏の依頼により、頒布されたものといえ、当該チラシに記載されている「リニアグッツ販売」の文字と、領収書、請求書及び注文書に記載されている「リニア商品チラシ」「リニアグッツ販売」等の記載及び「早チラ」が新聞への折り込み広告であること、並びに、上記1(10)によれば、平成27年7月4日及び同年8月20日に、田村氏又は田村商店は、本件チラシに掲載されている商品について、購入したことがうかがえることを併せみれば、本件チラシが、商報社により平成27年9月12日、同年10月10日、及び同月31日に新聞に折り込まれ配布されたものとみるのが自然である。
イ 上記1(11)のとおり、田村商店は、田村氏を個人事業主とする個人商店である。
そして、上記1(9)によれば、田村商店の田村氏と有限会社エコー商事の役員の名前が一致し、上記1(1)、(3)、(6)及び(9)によれば、本件チラシの電話番号と有限会社エコー商事の電話番号が一致することから、田村商店の田村氏は、前権利者である有限会社エコー商事の役員の田村氏と認めることができる。
(2)使用商標について
本件チラシには、「リニア・LINEAR商品」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。)が記載されているところ、本件商標は、上記第1のとおり、「LINEAR」の欧文字と「リニア」の片仮名を上下二段に表してなるものである。
そして、使用商標は、その構成中「商品」の文字部分は、出所識別標識としての称呼、観念を生じない部分と認められることから、「リニア・LINEAR」の文字部分が出所識別標識としての要部と認められるものである。
そこで、本件商標と使用商標の要部とを比較すると、その構成文字を同じくするものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用者について
上記(2)のとおり、本件チラシには、使用商標が表示されているところ、上記(1)イによれば、本件チラシは、有限会社エコー商事の役員である田村氏に係るものであるといえる。
そして、被請求人は、前権利者によって、田村氏は本件商標の使用について黙示の使用許諾を受けていた旨主張しているところ、本件商標の使用に関する契約書等の提出はないとしても、上記(1)イのとおり、前権利者と田村氏には密接な業務上の繋がりが認められることは明らかであるから、前権利者は、田村氏に対して、本件商標の使用について、黙示の許諾を与えていたものとみて差し支えない。
したがって、田村商店の田村氏は、本件商標の通常使用権者であるということができる。
(4)使用商品について
本件チラシに掲載されている使用商品中の「ボールペン」(以下「本件使用商品」という。)は、本件審判の請求に係る商品中の「文房具類」の範ちゅうに含まれる商品である。
(5)使用時期及び使用行為について
使用商標が表示されている本件チラシには、本件使用商品の写真、価格、連絡先等が掲載されていることからすれば、当該チラシは、本件使用商品の宣伝ための広告であるといえる。
そして、上記(1)アのとおり、本件チラシは、平成27年9月12日、同年10月10日及び同月31日に頒布されたものと推認できるところ、当該日付はいずれも要証期間である。
(6)小括
上記(1)ないし(5)によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間に、本件審判の請求に係る商品中の「ボールペン」に関する広告に、本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布したものと認めることができ、当該行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品の広告に標章を付して頒布する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は、本件チラシに「委託販売」の文字があるにもかかわらず、委託者に係る情報の記載がないこと、販売方法・購入方法・支払方法等の取引に不可欠な情報が一切掲載されていないことなどから、本件チラシは宣伝広告としての体を成していないから、商標法第2条第3項第8号における「広告」には該当しない旨主張している。
しかしながら、本件チラシが「広告」と認められることは、上記2(5)のとおりであり、委託者の情報、支払方法等の記載がないことをもって、本件チラシが広告であることを否定することはできないというべきである。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、本件審判の請求に係る商品中の「ボールペン」について、本件商標の使用をしていたことを証明したものといえる。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-300191