商標取消審判
2022-300448
アラミイ、アラミー
- 審判番号
- 2022-300448
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2012-069318
- 登録番号
- 5549682
- 請求日
- 2022年05月20日
- 審決日
- 2024年12月02日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アラミ リミテッド
- 【請求人代理人】曾我 道治
- 【請求人代理人】坂上 正明
- 【請求人代理人】鈴木 昇
- 【被請求人】荒川区
- 【被請求人代理人】久門 享
- 【被請求人代理人】久門 保子
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T132 .1 -Y (W0916)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第1号、商標法第2条第3項、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条第1項、商標法第38条第5項、商標法第1条、商標法第3条第2項、商標法第32条、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5549682号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5549682号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成24年8月28日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」、第16類「印刷物,写真,写真立て」を含む第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類、第25類、第28類及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同25年1月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、令和4年6月6日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の令和元年6月6日から令和4年6月5日までを以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証(枝番号を含む。枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」及び第16類「印刷物,写真,写真立て」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「区政ポケットブック2021」についての使用
被請求人は、乙第1号証ないし乙第6号証を提出し、要証期間に本件商標を「印刷物」について使用したと主張する。
本件商標の「使用」が、商標法第2条第3項に規定された行為のいずれに該当するか、被請求人は述べていないが、ぎょうせいデジタル株式会社が「区政ポケットブック2021」(以下「ポケットブック」という場合がある。)を印刷した行為が「商品に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)、これを区民に配布した行為が「商品に標章を付したものを譲渡する行為」(同項第2号)に該当すると主張されたものとして弁駁する。
まず、本件商標は、ポケットブックの奥付けの下部に、荒川区の紋章、シンボルマーク、区の木、区の花、区の誕生日とともに、登録第5333945号商標(甲2)と並んで表示されており、このページ全体として、荒川区の紹介をしているにすぎない。したがって、本件商標の表示態様から、本件商標がポケットブックを発行する者の自他商品識別標識として表示されているものではない。
また、商標法上の商品とは、商標制度の目的に照らすと、流通性があり市場で取引の対象となり得るものである。ポケットブックは、専ら荒川区民を対象とする行政情報の伝達手段にすぎず、区役所及び区の施設に配置されるものであって、一般の書店や、インターネット等の通信販売、その他の販売経路を通じて、不特定多数の需要者に対し譲渡されるものではない。したがって、ポケットブックは、商標法上の商品である「印刷物」には該当しない。
以上のとおり、ポケットブックによって、「印刷物」について、本件商標の使用をしたとはいえない。
(2)「【フラット35】地域連携型の周知広告」についての使用
被請求人は、乙第7号証ないし乙第9号証を提出し、要証期間に本件商標を「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」について使用したと主張する。本件商標の「使用」が、商標法第2条第3項に規定された行為のいずれに該当するか、被請求人は述べていないが、通常使用権者である住宅金融支援機構が、JR及び東京メト口等東京都下の鉄道駅に設置している「ビジョン」に広告として掲載した行為が「商品に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)に該当すると主張されたものとして弁駁する。
被請求人は、本件商標が、デジタルサイネージ広告の使用媒体である「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」の出所を示す機能を果たしていると主張する。
しかしながら、デジタルサイネージ広告の使用媒体が「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」であることが証朋されていないし、そうとしても、流通性があり市場で取引の対象となり得るものでないから、商標法上の商品に該当しない。
また、本件商標は、乙第9号証「2 許諾する内容」中の「具体的内容」に記載されているとおり、「【フラット35】地域連携型の制度概要及び当機構と協定書を締結している公共団体の周知をするため、荒川区の枠に」掲載するものであって、本件商標がデジタルサイネージ広告の使用媒体の出所を表示するものではない。
以上のとおり、「【フラット35】地域連携型の周知広告」によって、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」について、本件商標の使用をしたとはいえない。
(3)「「あらかわの心」ニュース・第32号」についての使用
被請求人は、乙第10号証を提出し、要証期間に本件商標を「印刷物」について使用したと主張する。
本件商標の「使用」が、商標法第2条第3項に規定された行為のいずれに該当するか被請求人は述べていないが、「「あらかわの心」ニュース・第32号」を配布する行為が「商品に標章を付したものを譲渡する行為」(商標法2第条第3項第2号)に該当すると主張されたものとして弁駁する。
本件商標に近似するキャラクターが、1ページの「「あらかわの心」ニュース」の文字の下、色違いの5個のハート型の図形を内部に配した紫色の楕円(あらかわの心推進運動シンボルマーク)及び今号の内容の説明文の右に、登録第5333945号商標に近似するキャラクターに重なるように表示されているが、以下の理由で、「印刷物」について、本件商標の使用をしているとはいえない。
ア 使用商標は、登録商標と同一ではない
本件商標に近似するキャラクター(別掲2)は、下記ウで述べるように、商標として機能していないが、便宜上、以下「使用商標」という。
使用商標の顔の一部は、登録第5333945号商標に近似するキャラクターに重なり、2つのキャラクターが一体として表示されている。また、本件商標において、キャラクターは口を閉じているが、使用商標においては、口を開けて笑っている。さらに、本件商標において、キャラクターは、右手を上げ、左手を下げているが、使用商標においては、両手を上げている。全体として、本件商標では、キャラクターがおとなしく、使用商標では、喜んでいる様子であり、2つの商標の印象はまったく異なるものである。
このように、使用商標と本件商標は、それぞれの図形に対して、ともに一定の概念(「あらみい」なるキャラクター)を生ずるものとしても、該図形の形態が顕著に異なるため、外観において同視されるものではなく、社会通念上同一の商標とはいえない。
イ 「「あらかわの心」ニュース」は、商標法上の商品ではない
商標法上の商品とは、商標制度の目的に照らすと、流通性があり、市場で商取引の対象となり得るものである。これを「印刷物」についていえば、一般の書店において販売されるものでなくとも、インターネット等の通信販売その他何らかの販売経路を通じて、不特定多数の需要者に対し、譲渡する対象となり得るものであれば、これを商標法上の商品ということができると解すべきである(平成15年(行ケ)第14号・東京高裁平成15年5月20日判決)。
「「あらかわの心」ニュース」についてみると、幼稚園・保育園・小学校・中学校などを通して、各園児・児童・生徒に配布したほか、荒川区役所児童青少年課で配布したものであるが、その掲載内容は、「あらかわの心」推進運動区民委員会参加団体の活動報告が中心であって、当該運動の関係者へのお知らせにすぎない。
そして、「「あらかわの心」ニュース」は、一般の書店において販売されるものでも、何らかの販売経路を通じて、不特定多数の需要者に対し、譲渡されるものでもなく、市場で商取引の対象とはなり得ないものである。
また、「「あらかわの心」ニュース」には定価が表示されていないので、無償で配布されたものと推認できるところ、広告が掲載されていない。
したがって、「「あらかわの心」ニュース」は、広告主から広告料を得て、これにより読者から対価を得なくても経貴を賄い、利益が得られるようにしたビジネスモデルにおいて配布されたものではなく、取引全体を観察しても、商取引に供される商品に該当するということはできない。
ウ 商標としての使用ではない
「「あらかわの心」ニュース」が商標法上の商品ではないから、これに表示された使用商標は、そもそも、自他商品識別標識としての機能を果たすものではないが、百歩譲って、「「あらかわの心」ニュース」が商標法上の商品であるとしても、使用商標は、以下の理由で、商標として使用されていない。
使用商標は、「「あらかわの心」ニュース」の文字の下、色違いの5個のハート型の図形を内部に配した紫色の楕円(あらかわの心推進運動シンボルマーク)及び今号の内容の説明文の右に、登録第5333945号商標に近似するキャラクターに重なるように表示されているところ、使用商標が占める面積は、あらかわの心推進運動シンボルマーク、説明文それぞれの約3分の1と、顕著に表示されたものとはいえない。
また、過去の「「あらかわの心」ニュース」をみると、使用商標が表示されているのと同じ位置に、毎号、形態が異なるキャラクターが表示されている(甲3の1、2)。一定の商標を使用した商品は必ず一定の出所から提供されることを確保する商標制度の目的に照らすと、同一の商品について、毎号、異なる商標が使用されていることは考えられない。したがって、キャラクターは商標ではなく、単なるデザインとして表示されているとみるのが相当である。
さらに、「荒川区シンボルキャラクター「あら坊」及び荒川区シンボルキャラクターの妹キャラクター「あらみぃ」の商標利用に関する取扱要綱」別紙1には、「使用する「あら坊」デザイン及び「あらみい」デザインは、原則として「あらみぃ」のみの使用は行わないこと」と規定されている(甲5)。すなわち、本件商標は、登録第5333945号商標とともに使用されることになっており、「「あらかわの心」ニュース」においても、そのとおりである。したがって、使用商標が、単独で、自他商品識別標識としての機能を発揮し得ないことは、被請求人も承知しているところである。
以上のとおり、「「あらかわの心」ニュース第32号」によって、「印刷物」について、本件商標の使用をしたとはいえない。
なお、「あらかわの心ノート」のプレゼントの告知が「「あらかわの心」ニュース第32号」でされていたからといって、「「あらかわの心」ニュース第32号」の発行日には「あらかわの心ノート」が製作されていたとはいえないから、製作日が要証期間であったかどうかは不明である。
(4)「町屋駅前銀座商店街振興組合のホームページ「ちょっとまちや」」についての使用
被請求人は、乙第11号証ないし乙第13号証を提出し、要証期間に本件商標を「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」について使用したと主張する。
本件商標の「使用」が、商標法第2条第3項に規定された行為のいずれに該当するか、被請求人は述べていないが、通常使用権者である町屋駅前銀座商店街振興組合が、そのホームページに本件商標を表示した行為が「商品に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)に該当すると主張されたものとして弁駁する。
本件商標が表示されたホームページは、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」であることが証明されていないし、そうとしても、流通性があり、市場で取引の対象となり得るものでないから、商標法上の商品に該当しない。
したがって、「町屋駅前銀座商店街振興組合のホームページ「ちょっとまちや」」によって、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」について、本件商標の使用をしたとはいえない。
(5)商標権者(被請求人)のホームページにおける画像「特別住民票」についての使用
被請求人は、乙第14号証及び乙第15号証を提出し、要証期間に本件商標を「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」について使用したと主張する。
本件商標の「使用」が、商標法第2条第3項に規定された行為のいずれに該当するか、被請求人は述べていないが、商標権者のホームページ上でダウンロードできる状態に置いた行為が「商品に標章を付したものを譲渡する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当すると主張されたものとして弁駁する。
特別住民票の画像は、本件商標そのものであり、その画像がダウンロードできる「あら坊とあらみぃのプロフィール」のページに表示された本件商標も、「あらみぃ」なるキャラクターを紹介するものにすぎない。
したがって、本件商標の表示態様から、本件商標が「特別住民票」を配布する者の自他商品識別標識として表示されているものではない。
したがって、商標権者のホームページにおける画像「特別住民票」によって、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」について、本件商標の使用をしたとはいえない。
(6)結語
以上のとおり、被請求人の提出した証拠方法によっては、要証期間に本件商標が請求に係る商品に使用されたことを証明したとはいえない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると主張し、その理由を審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)及び回答書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第24号証(枝番号を含む。枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 本件商標の使用の事実、提出証拠の説明
(1)「区政ポケットブック2021」(令和3年8月版)(乙1)、「印刷製本請負契約書」(乙2)、顛末書(乙3)、「委託・物品購買検査証(正本)」(乙4)、納品書(乙5)及び請求書(ぎょうせいデジタル株式会社より)(乙6)を総合的に勘案すれば、商標権者が、要証期間に「印刷物」に本件商標を使用したことは明らかである。
ポケットブックは、発行部数3,000冊(乙2の5行目)であるが、その内訳は、荒川区職員、その他公共施設職員に配布したもの、区役所の情報提供コーナーにおいて窓口で直接販売したもの、また、商標権者のホームページの「有償刊行物の頒布」頁にて電子手続きで申込をして頂き頒布したものがある。
電子手続の申込に関しては、商標権者のホームページからポケットブックの申し込みを受け付け、後日ポケットブックを郵送する、という流れになっている。
頒布用として50部割り当てられていたが、実績としては21部が販売された。
なお、有償頒布をしていたという証拠として、WaybackMachineで表示された2021年10月18日付けの“有償刊行物の頒布”の頁を提出する(乙16)。
さらに、現実に販売したという証拠として領収書(乙17の1、2)と、その日の現金出納帳のエクセルデータ(乙18)を提出する。
なお、令和3年10月6日には「No.02の区政ポケットブック」(乙17の1)の他、「No.74のあらかわそして未来へ 荒川音頭(CD)」(乙17の2)が販売されていたため、合計額が1,100円で、上記の内訳となっている(乙18)。
上記の証拠により、商標権者が「印刷物」に本件商標を表示したことにより、商標法第2条第3項第1号の使用、これを配布、頒布したことにより同項第2号の使用をしたことがわかる。
なお、被請求人としては、ポケットブックの全頁を証拠として提出するのが憚られたため、取消に係る登録商標の使用部分(奥付部分)と表紙部分のみ提出したが、その内容及び目的に関しては、荒川区民、荒川区で働く者の生活の向上を目的とする情報開示と同時に荒川区の紹介であることに変わりない。必要であれば、他の頁についても送付する。
(2)商標権者は、“駅のデジタルサイネージによる広告”という媒体による「【フラット35】荒川区と住宅金融支援機構が締結している地域連携制度を周知するためのパンフレット」において、本件商標を使用した(乙7)。
商標権者は、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」に本件商標を表示したが、これが商標法第2条第3項第1号の使用に該当し、これを住宅金融支援機構の担当者に引き渡したことで、同項第2号の使用に該当する。
乙第8号証の、現実に広告媒体に本件商標が表示されているという事実により、被請求人が住宅金融支援機構に引き渡したことは明らかである。
(3)「「あらかわの心」ニュース・第32号」(乙10)は、令和4年3月1日に発行された印刷物であり、ダウンロードが可能である。幼稚園・保育園・小学校・中学校などを通して、各園児・児童・生徒・保護者に配布しているほか、荒川区役所児童青少年課でも配布しており、その印刷物のトップページのタイトルの下に本件商標が使用されている。
さらには、その2ページ目の下段の「あらかわの心ノート」(印刷物)においても本件商標が使用されており、ダウンロードすることも可能である。
当該「あらかわの心」ニュースと、「あらかわの心ノート」により、印刷物に本件を使用していることがわかる。
また、上記「あらかわの心ノート」は、クイズ・アンケートに答え、正解者の中から30名の人にプレゼントされるものであり、そのクイズに回答できる締め切りの日は2022年6月15日となっているが、「あらかわの心」ニュース第32号で告知されている以上、令和4年3月1日には係る印刷物は製作されていたものと考えられる。
上記の証拠によっても本件商標が要証期間に印刷物に使用されていたことは明らかである。
「あらかわの心」は、商標権者のホームページにおいてバックナンバーとしてダウンロードをして見られるようになっており、そうとすれば、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」に本件商標を使用している、と考えることもできる(乙19)。
また、図形(キャラクター)部分においては、口が開き、両手を挙げている点が異なり(登録商標では口を閉じ、片手を挙げている)、社会通念上同一ではない、とのことであるが、商標権者は、あらみぃを様々な表情、ポーズで表示している。例えば、現実に、バックナンバーでは、ウィンクをしたり(第25号)目を閉じていたり(第24号)、座っていたり(第19号、第25号)、スキップしていたり(第24号)と、多様な態様のあらみぃが表示されており、この事実により、印象が大きく異なるものが色々含まれていることがわかる(甲3の1、2、乙20の1~3)。
その様に、活発で表情豊かなあらみぃの多様な態様が確認でき、そうとすれば、第32号(乙10)に表示されたあらみぃは、登録商標にかなり近く実質的同一の範囲ではないかと考えられる。
なぜなら、本件商標のあらみぃは、口は一本の太線であるが、口角を上げ笑顔と推認されるし、片手を挙げているか、両手を挙げているかの微差では、印象は大きく変わらないからである。
したがって、本件商標と乙第10号証におけるこの程度の差異であれば、実質的同一の範囲と考えられるべきと考える。
(4)「町屋駅前銀座商店街振興組合のホームページ「ちょっとまちや」」のトップページ(乙11)は、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」に使用しているということができる。ホームページについては、ダウンロード可能である。
「荒川区シンボルキャラクターあら坊・あらみぃ商標利用申請書(商品以外)」(乙12)及び「荒川区シンボルキャラクターあら坊・あらみぃ商標利用許諾通知書」(乙13)によれば、利用期間は令和2年4月1日から令和3年3月31日となっており、マップとホームページに使用と記載されている。
なお、令和4年においても使用されていたが、その理由については、商標使用に関する取扱要綱第7条1項及び2項によるものである。
乙第11号証において、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」の画像の一部に本件商標を表示したことが、商標法第2条第3項第1号の使用に該当し、それを町屋駅前銀座商店街振興組合の担当者に引き渡したことで、同項第2号の使用に該当する。なお、乙第11号証で本件商標の表示が実際に確認できるため、商標権者が町屋駅前銀座商店街振興組合に当該商品1を引き渡したことは明らかであると考える。
(5)商標権者のホームページにおける画像「特別住民票」(乙14)は、同ホームページにおいて印刷可能な画像(ダウンロード可能)であり、荒川区役所ホームページにおいて本件商標が使用されていることがわかる。
これは、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」についての本件商標の使用と考えられる。
なお、当該画像は、本件商標と文字の配置が多少異なって文字が左側に記載されているが、これは、文字どおり“住民票”について子ども達に慣れ親しんで、理解してもらうために住民票の形式を模して作成したものである。
したがって、その形式上、あらみぃ部分は、どうしても「氏名」欄より右横に記載する必要があり、必然的にキャラクターの左部分に配置されることになる。
しかしながら、この特別住民票を手にした子ども達にとって、ピンク色のキャラクターとすぐ左に表示された「あらみぃ」はまとまって把屋されるのが通常であると考える。
そうとすれば、構成位置こそ若干異なるが、キャラクターと文字が一体として把握.感得され、子ども達にとっては実質的に同一と感得され得るのではないか、と考える。
ゆるキャラファンの大人にとっても同様であり、左に記載されようと、下に記載されようと、一体として把握されることには変わりなく、実質的同一性は認められ得るものと考えられ、この程度であれば、本件商標と社会通念上同一であるものと考えられる(商標法第38条第5項かっこ書き)。
また、上述のとおり、本件画像は平成25年頃から継続して使用しているものであるが、乙第15号証1頁目の上段に、更新日「2020年6月17日」とあり、この更新日付によれば、要証期間に使用していたことは明確である。
2 弁駁に対する意見
(1)「区政ポケットブック2021」については、上述のとおり、商標法第2条第3項第1号及び第2号の使用をしたものである。
なお、請求人は「ポケットブックは行政情報の伝達手段にすぎず、商標法上の商品ではない」と主張している。行政情報の伝達手段という主張を否定するものではないが、伝達手段の他に広告的機能もある。なぜなら他の公共施設職員にも配布し、また、窓口販売や電子申込みによる頒布もされているからである。
また、「ポケットブック」は上述のとおり販売も行っているが、たとえ無料で配布した、ということであっても当該商品は商標法上の商品に該当するので、その点について反論する。
特許庁の「逐条解説」(第22版)の1534頁(乙21)に、以下のような記載がある。
「5.(商標登録)旧法(大正10年法)二六条一項は「榮利ヲ目的トセサル業務二係ル商品ノ標章ヲ専用セムトスル者ハ登録ヲ受クルコトヲ得」と規定して、営利の目的の有無によって商標と標章を区別していた。しかし、その2項で、標章は商標とみなして商標に関する規定を適用すると規定しており、実体的な差異はなかった。そこで、現行法(旧三四年法)は両者を含めて商標とし、制度を一本化した。したがって、標章登録制度は商標登録制度に吸収されて消滅した。」
“商標登録制度に吸収された”という記載のとおり、「営利を目的とせざる業務に係る商品」は現在においても当然に商標法で保護されていると解釈されるべきであり、そうとすれば、営利を目的としない業務に係る商品であると把握され得る「ポケットブック」に登録商標を使用している今回のケースにおいても商標法では保護されるべきである。
そのように把握しなければ、例えば、東京都の登録商標第5624913号(乙22)の通称ヘルプマークを付した商品も、営利目的の商品、すなわち請求人いわく“販売経路を通じて不特定多数の需要者に対し譲渡されるもの”ではないため、使用とは認められず、取り消されてしまう、という不合理な結果になりかねない。
そうなれば、公共機関の商標や福祉関連の商標は使用とは認められず、商標登録をしても不利な扱いを受けてしまう、という結果となるケースが想定される。
極端な話ではあるが、営利を目的としない公共機関の業務に係る商標、福祉関連の商標が保護されないこととなれば、公共機関の果たしている業務の信用が損なわれるおそれも生じ、商標法の目的「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り」という商標法第1条の目的に反する結果となりかねない。
別の観点から考えると、被請求人たる荒川区などの官公庁は、区民等に対するサービスを遂行しており、営利を目的として業務を行っているわけではない。
しかしながら、一方で、区政や都政は、区民税や都税を払っている者に対し、その対価として行政サービスを提供している、という側面からも考えることが可能である。
したがって、区民等に配布する印刷物も、区民税に見合う行政サービスの一環として制作され、配布されているものとも考えられ、そうすれば、当該ポケットブックは、請求人の指摘のように“商品ではない”と断じてしまうことはできないと考える。
したがって、当該ポケットブックが商品ではないと断じて、商標を使用していない、との弁駁の主張は100%正しいとはいいきれないと考える。
被請求人は、本件商標を「印刷物」に記載し配布したことで、商標法第2条第3項第1号、同項第2号(若しくは同項第8号)の使用をしたものと考える。
(2)【フラット35】地域連携型の周知広告に関して、商標権者が「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」に本件商標を表示して、これを契約の相手方たる住宅金融支援機構に引き渡したことで、商標法第2条第3項第1号、同項第2号の使用に該当するものと考える。
(3)「「あらかわの心」ニュース 第32号」については、口を開けて両手を上げている点が異なるとのことであるが、本件商標自体、口角を上げて笑顔の表情であり、また、片手のみ上げている場合と両手を上げている場合は、詳細に観察してみなければ気がつかない程度の差異であり、印象が全く異なる、ということはない。
したがって、乙第10号証は実質的同一の図形ではないかと考える。そうでなければ、様々なポーズ、表情のキャラクターを全て商標登録しなければならない、という不合理な面が生じ得ると考える。
また、文字商標では文字種の違い(アルファベットと片仮名)、縦書きと横書き、二段併記と一段のみの使用について「実質的同一」と判断され得るのに比し、図形に関しては、僅差のみであっても“実質内同一ではない”と判断されるのは不合理ではないか、と考える。
商標法第3条第2項における同一性の判断や、商標法第32条における同一性判断の場合とは異なり、キャラクターの微々たる相違については、同一の範囲と許容される余地があって然るべきと考える。
また、請求人の指摘のとおり、「原則として「あらみぃ」のみの使用は行わないこと」という取扱要綱があるのも事実であるが、これはあくまでも原則であって、個別の相談によってあらみぃのみの使用も認められている(乙23、乙24)。
なお、あらみぃとあら坊を並べて使用していることについて、それぞれの商標を使用していることにならない、という指摘についても疑問の余地があるものと考える。
(4)「町屋駅前銀座商店街振興組合のホームページ「ちょっとまちや」」に関して、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」に本件商標を画像の一部として表示したことで商標法第2条第3項第1号の使用をし、町屋駅前銀座商店街振興組合担当者に引き渡したことで、商標法第2条第3項第2号の使用をしたものと考える。
なお、契約書及びホームページヘの現実の表示で、商標権者が町屋駅前銀座商店街振興組合担当者に引き渡したことは明確である。
(5)被請求人のホームページにおける「特別住民票」に関して、ダウンロードした画像が商標権者の出所を表示する点について疑いはないものと考える。
これはあらみぃの紹介という一面もあるが、需要者たる荒川区の子ども達に、住民票に慣れ親しんで学んで欲しいという行政サービスの一環であり、そのためにダウンロードして保存できる「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」であり、その出所を表示する機能を果たしているものと考える。
したがって、これは本件「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」に使用したものである。
3 まとめ
以上から、被請求人は、本件商標を取消の対象となっている商品中、「印刷物」及び「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」に使用していることを証明した。
第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、「区政ポケットブック/2021/(令和3年度版)」をタイトルとし、同号証第2葉の下方には、「荒川区シンボルキャラクター」の文字の直下に使用商標が表され、その下には、発行年月及びタイトルと考えられる「令和3年8月 区政ポケットブック2021(令和3年度版)」の記載並びに発行者として商標権者の名称が記載されている。
(2)ポケットブックは、商標権者と印刷業者との印刷製本請負契約により、令和3年(2021年)8月26日に、商標権者に対して3,000部納品された(乙1~乙6)。
(3)令和3年(2021年)10月18日付け商標権者のウェブサイトにおいて、「有償刊行物の頒布」の見出しの下、「区政ポケットブック2021」が掲載されており、「発行年月」として「令和3年8月」の記載及び「料金」として「160円」の記載があるところ、これらの記載は上記タイトル及び発行年月と一致する(乙16)。
(3)日付けを「令和3年10月6日」とする領収証には、「但書」として「区政ポケットブック2021」の記載及び「金額」として「¥160」の記載があるところ、これらの記載は上記商標権者のウェブサイトにおける刊行物の名称及び料金と一致する(乙17の1)。
(4)以上を総合すれば、ポケットブックは、令和3年(2021年)8月26日に、印刷業者から商標権者に対して納品され、同年10月6日には、商標権者のウェブサイトにおいて、有償刊行物として販売された。
また、ポケットブック(以下「使用商品」という。)は、印刷製本請負契約に基づいて印刷されたものであることから、「印刷物」と認められる。
2 判断
本件商標は、別掲1のとおり、赤い着ぐるみを着た子供と考えられるキャラクター図形を表し、その下に「あらみぃ」の平仮名をやや丸みを帯びた書体で横書きしてなるものである。
これに対して、使用商標は、別掲2のとおり、赤い着ぐるみを着た子供と考えられるキャラクター図形を表し、その下に「あらみぃ」の平仮名をやや丸みを帯びた書体で横書きしてなるものである。
そうすると、本件商標と使用商標とは、その構成図形及び構成文字が酷似するものであり、また、その配置も共通にするものであるから、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
また、使用商品は、商標権者と印刷業者との印刷製本請負契約により印刷されたものである(乙2~乙6)ことから「印刷物」であるところ、当該「印刷物」は、請求に係る指定商品中、「印刷物」と同一の商品であるから、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品である。
さらに、使用商標を表示した使用商品が、商標権者のウェブサイトにおいて、有償刊行物として販売(譲渡)されたのは、要証期間(令和3年10月6日)であり、その販売(譲渡)も日本国内で行われていること明らかである。
したがって、商標権者は、要証期間に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、請求に係る指定商品中、「印刷物」に付して譲渡したということになる。
そして、商標権者による上記行為は、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、・・・する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は、「ポケットブック」(使用商品)の奥付けのページ全体として、荒川区(商標権者)の紹介をしているにすぎず、本件商標が自他商品識別標識として表示されているものではない旨主張する。
しかしながら、近年、地方自治体等において、キャラクターを独自で制作し、自身の広報活動等に活用していることがよく知られているところ、商標権者は東京都における特別区の一である地方公共団体であって、商標権者が発行するポケットブックについては、その見出しからも、荒川区(商標権者)の区政についての情報を内容とし、当該情報を同区民等に対して開示等することを目的とするものであることは明らかである。そして、上記2(2)のとおり、「荒川区シンボルキャラクター」の文字の直下に使用商標が表示されていることからすれば、使用商標は商標権者のシンボルとして独自に制作されたキャラクターであり、これを付した使用商品が有償刊行物として販売されたのであるから、使用商標は、使用商品に関する発行主体としての役割を果たしているといえ、使用商品に付された使用商標は、商標権者の自他商品識別標識としての機能を果たすものといえるから、請求人の上記主張は採用できない。
4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件請求に係る指定商品に含まれる印刷物について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用した事実を証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-300448