特許拒絶査定不服審判
2018-016684
反応性イオンエッチング方法
- 審判番号
- 2018-016684
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-148571外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年12月14日
- 審決日
- 2019年12月26日
- 公報発行日
- 2020年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アトランティック・イナーシャル・システムズ・リミテッド
- 【請求人代理人】小林 博通
- 【請求人代理人】富岡 潔
- 分類
- P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-148571「反応性イオンエッチング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 2日出願公開、特開2015- 23292〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月22日(パリ条約による優先権主張平成25年7月22日(以下「優先日」という。)、英国)の出願であって、平成29年10月12日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月7日付けで拒絶査定がなされた。それに対して、同年12月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。
第2 平成30年12月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8は、以下のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
少なくとも第1および第2のエッチングされた形体を形成する、基板の反応性イオンエッチング方法であって、前記第1のエッチングされた形体が、前記第2のエッチングされた形体よりも大きいアスペクト比(深さ:幅)を有し、前記方法は、
第1のエッチング段階において、前記第1の形体のみを所定の深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
その後、第2のエッチング段階において、前記第1および前記第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
を備え、
前記基板の表面にマスキング材料の第1の層を施して、前記第1および第2の形体の形状に対応する第1および第2の開口部を画定することと、
前記第1のエッチング段階において、前記第1の開口部のみを介して前記基板を選択的にエッチングして、前記第1のエッチングされた形体を所定の深さにエッチングすることと、
その後、前記第2のエッチング段階において、両方の前記開口部を介して前記基板をエッチングして、前記第1および第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングすることと、
を含み、
前記第1のエッチング段階が、前記第2の開口部を閉塞するステップを備え、その後、前記マスキングされた基板を反応性エッチングプロセスに露出させ、それによって、前記第1の開口部のみを介してエッチングが起こるようにし、
前記閉塞するステップが、前記第2の開口部を被覆するために、マスキング材料の前記第1の層の上にマスキング材料の第2の層を施すことを含み、前記方法がさらに、
前記第1の段階のエッチングプロセスの後、および前記第2の段階のエッチングプロセスの前に、マスキング材料の前記第2の層を前記第2の開口部およびマスキング材料の前記第1の層から除去し、
それぞれの形体が、実質的に同じ深さにエッチングされる、
ことを含むことを特徴とする、基板の反応性イオンエッチング方法。
【請求項2】
それぞれの形体が、前記基板の深さ全域を貫いてエッチングされることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応性イオンエッチングプロセスが、交互に繰り返すエッチング段階とパッシベーション段階とを備える異方性の反応性イオンプロセスであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の形体が、前記基板に形成されたスロットであり、これが、隣接するフィンガー間の間隔が異なる状態で、隣接し、互いに組み合わされるフィンガーを画定することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記基板がMEMSセンサ用のウェハであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2の形体のその頂部からその底部までの幅の変動の、基板の深さに対する比が、0.015以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記基板が少なくとも90μmの深さを有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記より大きいアスペクト比の前記より小さいアスペクト比に対する比は、2.0および3.5の間であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
平成30年3月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15は、以下のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも第1および第2のエッチングされた形体を形成する、基板の反応性イオンエッチング方法であって、前記第1のエッチングされた形体が、前記第2のエッチングされた形体よりも大きいアスペクト比(深さ:幅)を有し、前記方法は、
第1のエッチング段階において、前記第1の形体のみを所定の深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
その後、第2のエッチング段階において、前記第1および前記第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
を備え、
前記基板の表面にマスキング材料を施して、前記第1および第2の形体の形状に対応する第1および第2の開口部を画定することと、
前記第1のエッチング段階において、前記第1の開口部のみを介して前記基板を選択的にエッチングして、前記第1のエッチングされた形体を所定の深さにエッチングすることと、
その後、前記第2のエッチング段階において、両方の前記開口部を介して前記基板をエッチングして、前記第1および第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングすることと、
を含み、
前記第1のエッチング段階が、前記第2の開口部を閉塞するステップを備え、その後、前記マスキングされた基板を反応性エッチングプロセスに露出させ、それによって、前記第1の開口部のみを介してエッチングが起こるようにし、
前記閉塞するステップが、前記第2の開口部を被覆するために、さらなるマスキング材料を施すことを含み、前記方法がさらに、
前記第1の段階のエッチングプロセスの後、および前記第2の段階のエッチングプロセスの前に、前記さらなるマスキング材料を前記第2の開口部から除去する、
ことを含むことを特徴とする、基板の反応性イオンエッチング方法。
【請求項2】
少なくとも第1および第2のエッチングされた形体を形成する、基板の反応性イオンエッチング方法であって、前記第1のエッチングされた形体が、前記第2のエッチングされた形体よりも大きいアスペクト比(深さ:幅)を有し、前記方法は、
第1のエッチング段階において、前記第1の形体のみを所定の深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
その後、第2のエッチング段階において、前記第1および前記第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
を備え、
前記基板の表面にマスキング材料を施して、前記第1および第2の形体の形状に対応す第1および第2の開口部を画定することと、
前記第1のエッチング段階において、前記第1の開口部のみを介して前記基板を選択的にエッチングして、前記第1のエッチングされた形体を所定の深さにエッチングすることと、
その後、前記第2のエッチング段階において、両方の前記開口部を介して前記基板をエッチングして、前記第1および第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングすることと、
を含み、
前記第1のエッチング段階が、前記第2の開口部を閉塞するステップを備え、その後、前記マスキングされた基板を反応性エッチングプロセスに露出させ、それによって、前記第1の開口部のみを介してエッチングが起こるようにし、
前記閉塞するステップが、前記第2の開口部を被覆するために、さらなるマスキング材料を施すことを含み、
前記さらなるマスキング材料が、前記エッチングプロセスに応じて、次第に薄くなり、次いで、前記第2の段階のエッチングが始まると、前記第2の開口部を露出することを特徴とする、基板の反応性イオンエッチング方法。
【請求項3】
それぞれの形体が、実質的に同じ深さにエッチングされることを特徴とする請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
それぞれの形体が、前記基板の深さ全域を貫いてエッチングされることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記反応性イオンエッチングプロセスが、交互に繰り返すエッチング段階とパッシベーション段階とを備える異方性の反応性イオンプロセスであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の形体が、前記基板に形成されたスロットであり、これが、隣接するフィンガー間の間隔が異なる状態で、隣接し、互いに組み合わされるフィンガーを画定することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記基板がMEMSセンサ用のウェハであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第2の形体のその頂部からその底部までの幅の変動の、基板の深さに対する比が、0.015以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基板が少なくとも90μmの深さを有することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記より大きいアスペクト比の前記より小さいアスペクト比に対する比は、2.0および3.5の間であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第1および第2の形体を内部にエッチングされた基板を備えるMEMSセンサであって、前記第1のエッチングされた形体が、前記第2のエッチングされた形体よりも大きいアスペクト比(深さ:幅)を有し、前記第2の形体のその頂部からその底部までの幅の変動の、基板の深さに対する比が、0.015以下であることを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項12】
前記第1および第2の形体が、前記基板に形成されたスロットであり、これが、隣接するフィンガー間の間隔が異なる状態で、隣接し、互いに組み合わされるフィンガーを画定することを特徴とする請求項11記載のMEMSセンサ。
【請求項13】
前記形体が前記基板を貫通して延在することを特徴とする請求項11または12に記載のMEMSセンサ。
【請求項14】
前記基板が少なくとも90μmの深さを有することを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載のMEMSセンサ。
【請求項15】
前記より大きいアスペクト比の前記より小さいアスペクト比に対する比は、2.0および3.5の間であることを特徴とする請求項11~14のいずれかに記載のMEMSセンサ。」
2 補正の適否
本件補正は、請求項1についての補正(以下「補正事項1」という。)を含むものであるところ、当該補正事項1は、本件補正前の請求項1について、「マスキング材料」を施すこと、並びに、「さらなるマスキング材料」を施すこと及び第2の開口部から除去することについて、「マスキング材料の第1の層を施して」、「マスキング材料の前記第1の層の上にマスキング材料の第2の層を施すこと」、及び「マスキング材料の前記第2の層を前記第2の開口部および前記第1の層から除去し」と限定する補正と、「第1および第2のエッチングされた形体」について、「それぞれの形体が、実質的に同じ深さにエッチングされる」と限定する補正を含むものあって、本件補正前の発明と本件補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、当該補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下において検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献2の記載
原査定の拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、中国特許出願公開第102616733号明細書(原査定で引用された引用文献2。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(審決注:翻訳は、当審による翻訳文である。下線は当審で付加した。以下同じ。)。
(ア)「
」
(「(57)【要約】
本発明はデュアルマスク・高濃度ホウ素ドープによるSOI MEMS加工方法を提供し、MEMS微細加工分野に属する。SOIウェハは、シリコン構造層、シリコン基板層、およびシリコン構造層とシリコン基板層との間に位置する絶縁層とを含む。当該加工方法は、デュアルマスクを利用し、まずシリコン構造層上の細い線幅構造部分をエッチし、それからシリコン構造層上の幅の広い細い線幅構造を同時にエッチし、そうすることで幅の広い細い線幅構造が絶縁層上までエッチされる時間をおおむね同じにすることと、その後、シリコン構造層の表面に高濃度ホウ素ドープを行うことと、最後に、構造層下の絶縁層を除去し、異方性エッチングで構造層下のシリコン基板をエッチして、微細構造をリリースすることと、を含む。本発明は、SOI材料を利用して様々なMEMSデバイスを作製することができ、構造層の厚さの制御性がよい、ノッチング現象および寄生容量を小さくする、加工プロセスが単純である等の特徴を有する。」)
(イ)「
」
(「【技術分野】
【0001】 本発明はMEMS微細加工技術分野に関し、特に、デュアルマスク・高濃度ホウ素ドープによるSOI(Silicon on insulator、絶縁体上のシリコン)MEMS(Micro-electromechanical Systems、微小な電気機械システム)加工方法の微細加工工程研究に関する。」)
(ウ)「
」
(「【0005】 本発明は以下の方法によって実現される:
すなわち、デュアルマスク・高濃度ホウ素ドープによるSOI MEMS加工方法であって、そのステップは:(a)シリコンウェハ表面でアルミニウムをスパッタし、フォトエッチングし、アルミニウムをエッチし、シリコンウェハ上で完全なMEMS構造パターンを定義する、ステップと;(b)フォトエッチングし、シリコンウェハ上で細い線幅構造パターンを形成する、ステップと;(c)ICPエッチング法を用いて細い線幅構造をエッチする、ステップと:(d)フォトレジストを除去し、ICPエッチング法を用いて幅の広い細い線幅構造を同時にエッチする、ステップと;(e)シリコン構造層に高濃度ホウ素ドープを行う、ステップと;(f)構造層下の絶縁層をエッチする、ステップと;(g)KOH溶液によるエッチング法を用いてシリコン基板をエッチする、ステップと、を含む。」)
(エ)「
」
(「【図面の説明】
【0013】 図1~図5は、本発明の方法によってMEMSデバイスを加工する工程プロセス概略図である。
【0014】 図1は1回目のDRIEを示す図;図2は2回目のDRIEを示す図;図3はシリコン構造層表面の高濃度ホウ素ドープを示す図;図4は絶縁層の除去を示す図;図5は異方性エッチングを示す図。」)
(オ)「
」
(「【具体的な実施形態】
【0015】 図1-図5は、デュアルマスク・高濃度ホウ素ドープによるSOI MEMS加工方法の加工プロセス概略図である。本発明の加工方法は、SOIウェハ1を利用してMEMSデバイスを製造し、デュアルマスクおよび高濃度ホウ素ドーピング技術を用いて、シリコン構造層2底部のノッチング現象を効果的に小さくし、シリコン構造層2上の質量ブロックおよびその他の構造とシリコン基板層4との間の寄生容量を効果的に小さくすることができる。
【0016】 図1において、SOIウェハ1は、シリコン構造層2とシリコン基板層4との間に位置する二酸化ケイ素(SiO2)層3を含み、当該加工方法は、以下の工程ステップによって実現される:
(1)シリコンウェハ表面でアルミニウムをスパッタし、フォトエッチングし、アルミニウムをエッチし、シリコンウェハ上で完全なMEMS構造パターンを定義する;
(2)フォトエッチング装置でフォトエッチングし、シリコンウェハ上で細い線幅構造パターンを定義する;
(3)図1に示すように、深掘り反応性イオンエッチング(deep reactive ion etch、DRIE)によって、シリコン構造層2上の細い線幅構造部分をエッチし、細い線幅構造部分のエッチング深さを制御し、そうすることで幅の広い細い線幅構造が絶縁層上までエッチされる時間をおおむね同じにする;
(4)フォトレジストを除去し、深掘り反応性イオンエッチングによって、シリコン構造層2上の幅の広い細い線幅構造を同時にエッチし、エッチング深さは絶縁層3上にまで達する。二酸化ケイ素層3はエッチング自停止機能を有し、それ以上のエッチングを阻止することができる。これにより、図2に示すように、あらかじめ定義したパターン構造がシリコン構造層2上でエッチされでき上がる;
(5)図3に示すように、シリコン構造層2上のマスクが除去され、その後シリコン構造層2表面に高濃度ホウ素ドープを行う。ドープ濃度は5×1018/cm3よりも高く、ドープ厚さは、それによってシリコン構造層2上のMEMS構造における広い線幅構造がすべてドープされる厚さでなければならない;
(6)シリコン構造層2上の可動構造部分下の二酸化ケイ素が除去される。図4に示すように、例えば、HF溶液を利用するウェットエッチングによって絶縁層3上の二酸化ケイ素の一部をエッチ除去し、そうすることで微細構造をリリースし、シリコンは、HF溶液によるエッチングを阻止することができる;
(7)シリコン構造層2上のホール又はキャビティを介し、EDP(Ethylene-Diamene-Pyrocatechol)溶液(又はKOH溶液)を利用して、シリコン基板層4上の、二酸化ケイ素が除去されたシリコン基板部分に対して、異方性エッチングを行う。高濃度ホウ素ドープされたシリコン構造層2は、EDP溶液によるエッチングを阻止することができ、EDPエッチングの時間はシリコンエッチングの深さに左右される。エッチング後、シリコン基板層4上に形成されたキャビティは、シリコン基板層4をシリコン構造層2上の可動構造からさらに分離させ、これによって、シリコン構造層2上の可動構造とシリコン基板層4との間の寄生容量を小さくし、その他、シリコン構造層2とシリコン基板層4との間の摩擦および短絡現象も取り除くことができる。言うまでもなく、図5に示すように、他の異方性エッチング法を利用することもできる。」)
(カ)図1~図3は、以下のとおりである。
引用文献2の段落【0016】には、「細い線幅構造」、「幅の広い細い線幅構造」について、ステップ(3)で「細い線幅構造部分のエッチング深さを制御し、そうすることで幅の広い細い線幅構造が絶縁層上までエッチされる時間をおおむね同じにする」、ステップ(4)で「幅の広い細い線幅構造を同時にエッチし」と記載されているところ、「細い線幅構造」と「幅の広い細い線幅構造」は別の細い線幅構造であり、図1で前者がエッチングされ、図2で両者が同時にエッチングされると解される。そして、前者は後者の「幅の広い細い線幅構造」と比較すると、「幅の狭い細い線幅構造部分」といえる。
そうすると、図1及び図2において示され、図3では除去されている、「シリコン構造層2上の層」は、「幅の狭い細い線幅構造部分および幅の広い細い線幅構造」の形状に対応する、「幅の狭い開口部および幅の広い開口部」が画定されたものであることが見てとれる。
図1と図2を比較すると、図1から、上記「シリコン構造層2上の層」の「幅の広い開口部」を閉塞し、かつ「シリコン構造層2上の層」の上に延在する「薄層(黒い部分)」が見てとれる。
また、当該「薄層(黒い部分)」は、図2では、当該「幅の広い開口部」および「シリコン構造層2上の層」から除去されていることが見てとれる。
さらに、図1から、「幅の広い開口部」が閉塞された当該「シリコン構造層2上の層」の「幅の狭い開口部」のみを介して、シリコン構造層2の「幅の狭い細い線幅構造部分」のみがエッチングないし除去された形状が見てとれる。
イ 引用発明
(ア)引用文献2の図1及び図2に示され、図3では除去されている、「シリコン構造層2上の層」は、引用文献2の段落【0016】に記載されたステップ(1)において、「完全なMEMS構造パターン」を定義し、かつ、ステップ(5)で除去される「マスク」であることが、明らかである。
(イ)引用文献2の段落【0016】に記載されたステップ(2)は、図1を参照すると、マスクの「幅の広い開口部」を閉塞し、かつ「シリコン構造層2上の層」の上に延在する「薄層(図1の黒い薄層)」を形成し、「幅の狭い開口部」が画定されるフォトエッチングステップであると認められる。
(ウ)引用文献2の段落【0016】に記載されたステップ(3)では、「深掘り反応性イオンエッチング(deep reactive ion etch、DRIE)によって、シリコン構造層2上の細い線幅構造部分をエッチし、細い線幅構造部分のエッチング深さを制御」するところ、当該ステップ(3)は、図1を参照すると、当該「細い線幅構造部分」は「幅の狭い細い線幅構造部分」であるといえるから、マスクの「幅の狭い開口部のみ」を介して、「幅の狭い細い線幅構造部分のみ」をエッチングするステップであると認められる。
(エ)したがって、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「SOIウェハ1を利用してMEMSデバイスを製造するためのデュアルマスク・高濃度ホウ素ドープによるSOI MEMS加工方法であって、
SOIウェハ1は、シリコン構造層2とシリコン基板層4との間に位置する二酸化ケイ素(SiO2)層3を含み、
そのステップは、
(1)シリコンウェハ表面でアルミニウムをスパッタし、フォトエッチングし、アルミニウムをエッチし、シリコンウェハ上で完全なMEMS構造パターンのマスクを定義する、ステップであって、
当該ステップにおいて定義されるシリコン構造層2上の完全なMEMS構造パターンのマスクは、幅の狭い細い線幅構造部分および幅の広い細い線幅構造の形状に対応する、幅の狭い開口部および幅の広い開口部が画定されたものであり;
(2)フォトエッチングし、シリコンウェハ上で幅の狭い細い線幅構造パターンを定義する、ステップであって、前記マスクの前記幅の広い開口部を閉塞し、かつ前記シリコン構造層2上の前記マスクの上に延在する薄層(図1の黒い薄層)を形成し、前記幅の狭い開口部が画定される、ステップと;
(3)図1に示すように、深掘り反応性イオンエッチング(deep reactive ion etch、DRIE)によって、前記マスクの幅の狭い開口部のみを介して、シリコン構造層2上の幅の狭い細い線幅構造部分のみをエッチし、幅の狭い細い線幅構造部分のエッチング深さを制御し、そうすることで幅の広い細い線幅構造が絶縁層上までエッチされる時間をおおむね同じにする、ステップと;
(4)フォトレジストを前記幅の広い開口部および前記シリコン構造層2上の前記マスクから除去し、深掘り反応性イオンエッチングによって、シリコン構造層2上の幅の広い細い線幅構造を同時にエッチするステップであって、エッチング深さは絶縁層3上にまで達し、二酸化ケイ素層3はエッチング自停止機能を有し、それ以上のエッチングを阻止することができ、これにより、図2に示すように、あらかじめ定義したパターン構造がシリコン構造層2上でエッチされでき上がる、ステップと;
(5)図3に示すように、シリコン構造層2上の前記マスクが除去され、その後シリコン構造層2表面に高濃度ホウ素ドープを行う、ステップと、
を含む、デュアルマスク・高濃度ホウ素ドープによるSOI MEMS加工方法。」
ウ 引用文献5に記載の技術
(ア)引用文献5の記載
原査定で周知技術を示す文献として提示された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開昭60-171729号公報(原査定で引用された引用文献5。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a「第1図参照
半導体層1上に、PSG等リアクティブイオンエッチング法によっては比較的エッチングされにくい材料をもって比較的厚く厚さ1.5μm程度に第2の(下層の)エッチング用マスク層2を形成し、つゞいて、多結晶シリコン等リアクティブイオンエッチング法によってエッチングされやすい材料をもって厚さ4,000Å程度の薄い厚さに第1の(上層)のエッチング用マスク層3を形成する。これらの工程は、CVD法等通常の薄膜形成手段をもってなすことができる。フォトリソグラフィー法を使用して、深い開口の形成予定領域上と浅い開口の形成予定領域上とに開口4を有するレジストマスク5を形成する。
第2図参照
このマスク5を使用してなすリアクティブイオンエッチング法を使用して、多結晶シリコン等よりなる第1の(上層の)エッチング用マスク層3を除去して開口4の深さを大きくする。
使用済みのレジストマスク5を除去した後、再びフォトリソグラフィー法を使用して、深い開口の形成予定領域上のみに開口4を有するレジストマスク5’を形成する。
このマスク5’を使用してなすリアクティブイオンエッチング法を使用して、PSG等よりなる第2の(下層の)エッチング用マスク層2を深い開口に対応する領域上のみから除去する。
第3図参照
使用済みのレジストマスク5’を除去した後、PSGと半導体との双方をエッチングするリアクティブイオンエッチング法を使用して、深い開口4’に対応する領域においては半導体層1を、浅い開口4”に対応する領域においては第2の(下層の)エッチング用マスク層2と半導体層1とを、つゞけて、エッチングする。
第4図参照
使用済みの2層のエッチング用マスク層2、3を溶解除去する。」(第2頁右上欄第9行~右下欄第6行)
b 第1図~第3図は、以下のとおりである。
(イ)引用文献5に記載の技術
上記記載から、引用文献5には、以下の技術が記載されているものと認められる。
「深い開口の形成予定領域上と浅い開口の形成予定領域上とに開口4を有するレジストマスク5を使用して、多結晶シリコン等よりなる第1の(上層の)エッチング用マスク層3を除去し、
レジストマスク5を除去した後、深い開口の形成予定領域上のみに開口4を有し、浅い開口の形成予定領域上を閉塞するレジストマスク5’を形成し、
レジストマスク5’使用して、PSG等よりなる第2の(下層の)エッチング用マスク層2を深い開口4’に対応する領域上のみから除去し、
レジストマスク5’を除去した後、2層のエッチング用マスク2、3を使用して、深い開口4’に対応する領域においては半導体層1を、浅い開口4”に対応する領域においては第2の(下層の)エッチング用マスク層2と半導体層1とを、エッチングする、半導体層のエッチング方法、
すなわち、
エッチング用マスク2、3に形成された一方の開口をレジストマスク5’で閉塞して、エッチングし、その後、レジストマスク5’を除去して、エッチング用マスク2、3を使用して、両方の開口に対応する領域を除去する、半導体層のエッチング方法。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)本件補正発明を以下のように分説する。
「【請求項1】
(a)少なくとも第1および第2のエッチングされた形体を形成する、基板の反応性イオンエッチング方法であって、(b)前記第1のエッチングされた形体が、前記第2のエッチングされた形体よりも大きいアスペクト比(深さ:幅)を有し、前記方法は、
(c)第1のエッチング段階において、前記第1の形体のみを所定の深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
(d)その後、第2のエッチング段階において、前記第1および前記第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
を備え、
(e)前記基板の表面にマスキング材料の第1の層を施して、前記第1および第2の形体の形状に対応する第1および第2の開口部を画定することと、
(f)前記第1のエッチング段階において、前記第1の開口部のみを介して前記基板を選択的にエッチングして、前記第1のエッチングされた形体を所定の深さにエッチングすることと、
(g)その後、前記第2のエッチング段階において、両方の前記開口部を介して前記基板をエッチングして、前記第1および第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングすることと、
を含み、
(h1)前記第1のエッチング段階が、前記第2の開口部を閉塞するステップを備え、
(i)その後、前記マスキングされた基板を反応性エッチングプロセスに露出させ、それによって、前記第1の開口部のみを介してエッチングが起こるようにし、
(h2)前記閉塞するステップが、前記第2の開口部を被覆するために、マスキング材料の前記第1の層の上にマスキング材料の第2の層を施すことを含み、前記方法がさらに、
(j)前記第1の段階のエッチングプロセスの後、および前記第2の段階のエッチングプロセスの前に、マスキング材料の前記第2の層を前記第2の開口部およびマスキング材料の前記第1の層から除去し、
(k)それぞれの形体が、実質的に同じ深さにエッチングされる、
ことを含むことを特徴とする、
(l)基板の反応性イオンエッチング方法。」
(イ)引用発明の「SOIウェハ1」は、本件補正発明の「基板」に相当する。
また、引用発明において、ステップ(3)は、反応性イオンエッチングによって、「幅の狭い細い線幅構造部分」のみをエッチするステップであり、ステップ(4)は、反応性イオンエッチングによって、「幅の広い細い線幅構造」を同時にエッチするステップであるところ、「幅の狭い細い線幅構造部分」は「幅の広い細い線幅構造」よりも「大きいアスペクト比(深さ:幅)」を有するといえるから、引用発明の「幅の狭い細い線幅構造部分」、「幅の広い細い線幅構造」は、それぞれ本件補正発明の「第1のエッチングされた形体」、「第2のエッチングされた形体」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、(a)、(b)の「少なくとも第1および第2のエッチングされた形体を形成する、基板の反応性イオンエッチング方法であって、前記第1のエッチングされた形体が、前記第2のエッチングされた形体よりも大きいアスペクト比(深さ:幅)を有」する点で一致する。
(ウ)本件補正発明の、
「(c)第1のエッチング段階において、前記第1の形体のみを所定の深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップ」、
「(e)前記基板の表面にマスキング材料の第1の層を施して、前記第1および第2の形体の形状に対応する第1および第2の開口部を画定すること」、
「(f)前記第1のエッチング段階において、前記第1の開口部のみを介して前記基板を選択的にエッチングして、前記第1のエッチングされた形体を所定の深さにエッチングすること」、
「(h1)前記第1のエッチング段階が、前記第2の開口部を閉塞するステップを備え」、
「(i)その後、前記マスキングされた基板を反応性エッチングプロセスに露出させ、それによって、前記第1の開口部のみを介してエッチングが起こるようにし」、
「(h2)前記閉塞するステップが、前記第2の開口部を被覆するために、マスキング材料の前記第1の層の上にマスキング材料の第2の層を施すことを含み」は、
引用発明の、
「(1)シリコンウェハ表面でアルミニウムをスパッタし、フォトエッチングし、アルミニウムをエッチし、シリコンウェハ上で完全なMEMS構造パターンのマスクを定義する、ステップであって、ステップ(1)において定義されるシリコン構造層2上の完全なMEMS構造パターンのマスクは、幅の狭い細い線幅構造部分および幅の広い細い線幅構造の形状に対応する、幅の狭い開口部および幅の広い開口部が画定されたものであり」、
「(2)フォトエッチングし、シリコンウェハ上で幅の狭い細い線幅構造パターンを定義する、ステップであって、前記マスクの前記幅の広い開口部を閉塞し、かつ前記シリコン構造層2上の前記マスクの上に延在するフォトレジスト(図1の黒い薄層)を形成し、前記幅の狭い開口部が画定される、ステップ」、
「(3)図1に示すように、深掘り反応性イオンエッチング(deep reactive ion etch、DRIE)によって、前記マスクの幅の狭い開口部のみを介して、シリコン構造層2上の幅の狭い細い線幅構造部分のみをエッチし、幅の狭い細い線幅構造部分のエッチング深さを制御し、そうすることで幅の広い細い線幅構造が絶縁層上までエッチされる時間をおおむね同じにする、ステップ」を含む一連のステップに対応することは明らかであるから、両者を対比する。
a 引用発明において、上記ステップ(1)でスパッタされ、エッチされたアルミニウムは、「シリコンウェハ上で完全なMEMS構造パターンのマスクを定義する」から、スパッタされた「アルミニウム」は、本件補正発明の「マスキング材料の第1の層」に相当する。
また、引用発明において、「ステップ(1)において定義されるシリコン構造層2上の完全なMEMS構造パターンのマスクは、幅の狭い細い線幅構造部分および幅の広い細い線幅構造の形状に対応する、幅の狭い開口部および幅の広い開口部が画定されたものであ」るところ、「幅の狭い開口部」、「幅の広い開口部」は、それぞれ本件補正発明の「第1の開口部」、「第2の開口部」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、(e)の「前記基板の表面にマスキング材料の第1の層を施して、前記第1および第2の形体の形状に対応する第1および第2の開口部を画定すること」を含む点で一致する。
b 引用発明において、上記ステップ(3)は、「幅の狭い細い線幅構造部分(本件補正発明の「第1の形体」)のみ」をエッチングするステップであるから、本件補正発明の「第1のエッチング段階」に対応する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、(c)の「第1のエッチング段階において、前記第1の形体のみを所定の深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップ」を備える点、及び「前記第1のエッチング段階」が、(i)の「その後、前記マスキングされた基板を反応性エッチングプロセスに露出させ、それによって、前記第1の開口部のみを介してエッチングが起こるよう」にすることを含む点で一致する。
c 引用発明において、上記ステップ(3)は、「前記マスクの幅の狭い開口部のみを介して、シリコン構造層2上の幅の狭い細い線幅構造部分のみをエッチし、幅の狭い細い線幅構造部分のエッチング深さを制御」するから、本件補正発明と引用発明とは、(f)の「前記第1のエッチング段階において、前記第1の開口部のみを介して前記基板を選択的にエッチングして、前記第1のエッチングされた形体を所定の深さにエッチングすること」を含む点で一致する。
d 引用発明において、上記ステップ(2)は、「前記幅の狭い開口部が画定される、ステップ」で、ステップ(3)で、「前記マスクの幅の狭い開口部のみを介して」、「エッチ」するところ、本件補正発明では、上記(h1)の「閉塞するステップ」を備え、(i)において、「その後」、「前記第1の開口部のみを介してエッチングが起こるように」するものであるから、引用発明の当該ステップ(2)は、本件補正発明の「第1のエッチング段階」に対応する。
また、引用発明において、上記ステップ(2)は、「前記マスクの前記幅の広い開口部を閉塞し、かつ前記シリコン構造層2上の前記マスクの上に延在する薄層(図1の黒い薄層)を形成」するステップであるところ、当該「薄層(図1の黒い薄層)」は、本件補正発明の「前記第2の開口部を被覆するために、マスキング材料の前記第1の層」の上に施される「第2の層」に対応するから、当該ステップ(2)は、本件補正発明の「前記第2の開口部を閉塞するステップ」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、後記の点で相違するものの、(h1)の「前記第1のエッチング段階が、前記第2の開口部を閉塞するステップを備え」る点、及び、(h2)における「前記閉塞するステップが、前記第2の開口部を被覆するために、マスキング材料の前記第1の層の上に第2の層を施すことを含」む点で一致する。
(エ)次に、本件補正発明の、
「(d)その後、第2のエッチング段階において、前記第1および前記第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップ」、
「(g)その後、前記第2のエッチング段階において、両方の前記開口部を介して前記基板をエッチングして、前記第1および第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングすること」、
「(j)前記第1の段階のエッチングプロセスの後、および前記第2の段階のエッチングプロセスの前に、マスキング材料の前記第2の層を前記第2の開口部およびマスキング材料の前記第1の層から除去し」、
「(k)それぞれの形体が、実質的に同じ深さにエッチングされる」は、
引用発明の、
「(4)フォトレジストを前記幅の広い開口部および前記シリコン構造層2上の前記マスクから除去し、深掘り反応性イオンエッチングによって、シリコン構造層2上の幅の広い細い線幅構造を同時にエッチするステップであって、エッチング深さは絶縁層3上にまで達し、二酸化ケイ素層3はエッチング自停止機能を有し、それ以上のエッチングを阻止することができ、これにより、図2に示すように、あらかじめ定義したパターン構造がシリコン構造層2上でエッチされでき上がる、ステップ」、
「(5)図3に示すように、シリコン構造層2上の前記マスクが除去され、その後シリコン構造層2表面に高濃度ホウ素ドープを行う、ステップ」を含む一連のステップに対応することは明らかであるから、両者を対比する。
a 引用発明において、上記ステップ(4)は、図2を参照すると、SOIウエハ1の「シリコン構造層2上の幅の広い細い線幅構造(本件補正発明の「第1の形体」)」を、「幅の狭い細い線幅構造部分(本件補正発明の「第2の形体」)」と「同時にエッチするステップ」であるといえるから、当該ステップ(4)は、本件補正発明の「第2のエッチング段階」に対応し、本件補正発明と引用発明とは、(d)の「その後、第2のエッチング段階において、前記第1および前記第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップ」を備える点、及び、(g)の「その後、前記第2のエッチング段階において、両方の前記開口部を介して前記基板をエッチングして、前記第1および第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングすること」を含む点で一致する。
b 引用発明において、上記ステップ(4)で、「フォトレジストを前記幅の広い開口部および前記シリコン構造層2上の前記マスクから除去」するから、本件補正発明と引用発明とは、(j)における「前記第1の段階のエッチングプロセスの後、および前記第2の段階のエッチングプロセスの前に、前記第2の層を前記第2の開口部およびマスキング材料の前記第1の層から除去」することを含む点で一致する。
c 引用発明において、上記ステップ(4)で、「シリコン構造層2上の幅の広い細い線幅構造を同時にエッチするステップであって、エッチング深さは絶縁層3上にまで達し、二酸化ケイ素層3はエッチング自停止機能を有し、それ以上のエッチングを阻止することができ」るから、当該ステップ(4)では、「幅の広い細い線幅構造(本件補正発明の「第1の形体」)」と「幅の狭い細い線幅構造部分(本件補正発明の「第2の形体」)」とが、実質的に同じ深さにエッチングされるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、(k)の「それぞれの形体が、実質的に同じ深さにエッチングされる」ことを含む点で一致する。
イ 以上をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点と相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「少なくとも第1および第2のエッチングされた形体を形成する、基板の反応性イオンエッチング方法であって、前記第1のエッチングされた形体が、前記第2のエッチングされた形体よりも大きいアスペクト比(深さ:幅)を有し、前記方法は、
第1のエッチング段階において、前記第1の形体のみを所定の深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
その後、第2のエッチング段階において、前記第1および前記第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングするように前記基板をエッチングするステップと、
を備え、
前記基板の表面にマスキング材料の第1の層を施して、前記第1および第2の形体の形状に対応する第1および第2の開口部を画定することと、
前記第1のエッチング段階において、前記第1の開口部のみを介して前記基板を選択的にエッチングして、前記第1のエッチングされた形体を所定の深さにエッチングすることと、
その後、前記第2のエッチング段階において、両方の前記開口部を介して前記基板をエッチングして、前記第1および第2の形体の両方をそれぞれの深さにエッチングすることと、
を含み、
前記第1のエッチング段階が、前記第2の開口部を閉塞するステップを備え、その後、前記マスキングされた基板を反応性エッチングプロセスに露出させ、それによって、前記第1の開口部のみを介してエッチングが起こるようにし、
前記閉塞するステップが、前記第2の開口部を被覆するために、マスキング材料の前記第1の層の上に第2の層を施すことを含み、前記方法がさらに、
前記第1の段階のエッチングプロセスの後、および前記第2の段階のエッチングプロセスの前に、前記第2の層を前記第2の開口部およびマスキング材料の前記第1の層から除去し、
それぞれの形体が、実質的に同じ深さにエッチングされる、
ことを含むことを特徴とする、基板の反応性イオンエッチング方法。」
<相違点>
<相違点1>
閉塞するステップにおいて、「マスキング材料の前記第1の層」の上に施され、「前記第1の段階のエッチングプロセスの後、および前記前記第2の段階のエッチングプロセスの前」に除去される「第2の層」が、本件補正発明では、「マスキング材料」の第2の層であるのに対し、引用発明のステップ(2)における「薄層(図1の黒い薄層)」は、「マスキング材料」の層であるか否か不明である点。
(4)判断
ア 相違点1について
(ア)引用発明において、ステップ(2)は、「フォトエッチングし、シリコンウェハ上で幅の狭い細い線幅構造パターンを定義する、ステップ」であるところ、「フォトエッチング」とは、「半導体、金属、酸化皮膜などの表面を部分的にエッチングするために、表面に感光剤(フォトレジスト)を塗布し、これを露光することによって、露光した部分(あるいは露光しなかった部分)のフォトレジストを取去り、取去った部分だけ化学薬品などでエッチングする技術」であることは、当該技術の分野において、文献を示すまでもない技術常識(必要であれば、ブリタニカ国際大百科事典等を参照。)である。
また、引用発明において、ステップ(4)で、「フォトレジスト」を除去することが特定され、更に、引用文献2の図1と図2を比較すると、図1に示された「薄層(黒い部分)」は図2において除去されていると解される。
したがって、引用文献2の図1の「薄層(黒い部分)」は、ステップ(4)で除去される「フォトレジスト」であり、引用文献2には、引用発明の「薄層(図1の黒い薄層)」はマスクとして機能することが、示唆されているといえる。
そして、「マスクとして機能する層」の材料は、「マスキング材料」であるといえるから、引用発明において、「薄層(図1の黒い薄層)」を「マスキング材料の第2の層」とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
よって、引用発明において、引用文献2に記載された技術的事項に基づき、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者であれば適宜なし得たことである。
(イ)次に、仮に、引用発明の「薄層(図1の黒い薄層)」がマスクとして機能するものではないとした場合について検討する。
引用発明において、ステップ(3)では、「(ステップ(1)で定義された)前記マスクの幅の狭い開口部のみを介して、シリコン構造層2上の幅の狭い細い線幅構造部分のみをエッチ」するから、上記「薄層(図1の黒い薄層)」がマスクとして機能するものではない場合は、当該ステップ(3)の前の閉塞するステップにおいて、完全なMEMS構造パターンのマスクに画定された「幅の広い開口部」(本件補正発明の「第2の開口部」)を被覆するために、「スパッタされた『アルミニウム』」(本件補正発明の「第1の層」)及び当該「薄層」の上に、第2のマスク層を施す必要があることは明らかである。
したがって、仮に、引用発明の「薄層(図1の黒い薄層)」がマスクとして機能するものではないとした場合であっても、引用発明において、ステップ(2)の閉塞するステップを、「幅の広い開口部を被覆するために、スパッタされた『アルミニウム』の上に、第2のマスク層としてマスキング材料の第3の層を施す」ものとし、更に、ステップ(4)で、深掘り反応性イオンエッチングによってエッチする前に、フォトレジストを除去するとともに、当該第3の層を除去するものとすることで、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。
イ 効果について
発明の効果に関して、本件補正発明によって当業者が予期し得ない格別の効果が奏されるとは認められず、本件補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものというほかない。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求書の「3.」の「(4)本願発明と引用文献との対比」において、「引用文献5の方法を引用文献2の開示に適用することが、本願発明に到達することはないでしょう。」と主張する。
しかしながら、原審の拒絶査定における指摘どおり、多層のマスクを用いてエッチングする技術は、引用文献5に記載されているように周知の技術である。
更に、上記ア(ア)で検討したとおり、引用文献2の図1の「薄層(黒い部分)」は、ステップ(4)で除去される「フォトレジスト」であり、引用文献2には、引用発明の「薄層(図1の黒い薄層)」はマスクとして機能することが、示唆されているといえる。
したがって、引用発明(引用文献2に記載された発明)において、前記周知の技術及び引用文献2に記載された技術的事項に基づき、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者であれば適宜なし得たことである。
また、仮に、引用発明の「薄層(図1の黒い薄層)」がマスクとして機能するものではないとした場合についても、上記ア(イ)で検討したとおり、引用発明のステップ(3)の前の閉塞するステップにおいて、完全なMEMS構造パターンのマスクに画定された「幅の広い開口部」(本件補正発明の「第2の開口部」)を被覆するために、「スパッタされた『アルミニウム』」(本件補正発明の「第1の層」)及び当該「薄層」の上に、第2のマスク層を施す必要があることは明らかであるから、前記周知の技術に基づき、ステップ(3)の前の閉塞するステップにおいて、第2のマスク層を施すことにより、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。
(イ)また、請求人は、審判請求書の同(4)において、「さらに、引用文献5(深さの異なる複数の開口)から出発すると、当業者が、同じ深さを有する開口に関連すると思われる引用文献2を調べてみるよう動機付けられることはないでしょうし、たとえ引用文献2を調べてみたとしても、同じ深さの開口を提供するように基板をどのようにマスクするかの教示はなく、従って、当業者には、引用文献5のマスキング方法が残ること(従って、深さの異なる開口を製造すること)になるであろうと、謹んで申し上げます。」と主張する。
しかしながら、上記(3)ア(エ)cに記載したとおり、引用発明において、上記ステップ(4)では、「幅の広い細い線幅構造(本件補正発明の「第1の形体」)」と「幅の狭い細い線幅構造部分(本件補正発明の「第2の形体」)」とが、実質的に同じ深さにエッチングされるといえ、また、引用文献2には、ステップ(1)~(4)において、どのようにマスクするかも示唆もされているから、引用文献5から出発するのではなく、引用発明(引用文献2に記載された発明)において、前記周知の技術及び引用文献2に記載された技術的事項に基づき、若しくは、前記周知の技術に基づき、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
エ 判断についてのまとめ
以上検討したとおりであるから、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであり、上記相違点1を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(5)独立特許要件についてのまとめ
よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年3月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記「第2 1(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特表2003-502161号公報
引用文献2:中国特許出願公開第102616733号明細書
引用文献3:特表2008-504975号公報
引用文献4:特開2000-77681号公報
引用文献5:特開昭60-171729号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献の記載と引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、中国特許出願公開第102616733号明細書(引用文献2、再掲)には、上記「第2 2(2)ア(ア)引用文献2の記載」に記載した事項が記載されており、引用文献2には上記「第2 2(2)イ(エ)引用発明」に記載したとおりの引用発明が記載されている。
4 対比・判断
本願発明は、上記「第2 2 補正の適否」で検討した本件補正発明において、「マスキング材料」及び「さらなるマスキング材料」についての限定事項、及び他の限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を実質的に全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 2 補正の適否」において判断したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-016684