特許拒絶査定不服審判
2018-016632
レボドパの血漿濃度の患者間のばらつきの低減
- 審判番号
- 2018-016632
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-538100外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年12月13日
- 審決日
- 2020年03月30日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サイヴィタス セラピューティックス,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】高岡 亮一
- 【請求人代理人】小田 直
- 【請求人代理人】高橋 香元
- 分類
- P18 .113-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-538100「レボドパの血漿濃度の患者間のばらつきの低減」拒絶査定不服審判事件〔平成26年5月1日国際公開、WO2014/066206、平成27年12月7日国内公表、特表2015-534988〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年10月21日(パリ条約による優先権主張 2012年10月22日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年11月21日 :手続補正書の提出
平成30年 1月29日付け :拒絶理由通知
平成30年 5月28日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 8月 1日付け :拒絶査定
平成30年12月13日 :審判請求書の提出
令和 1年 6月28日付け :拒絶理由通知
令和 1年12月26日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明について
1 本願発明
本願に係る発明は、令和1年12月26日提出の手続補正書による手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
パーキンソン病患者の患者集団におけるレボドパの患者間のばらつきを低減する方法において使用するためのレボドパ製剤であって、
前記製剤は、75重量%以上のレボドパと、リン脂質と、を含み、
前記方法は、パーキンソン病を罹患する少なくとも2人の患者の患者集団に吸入により前記レボドパ製剤を、20mg~50mgの微粒子用量(FPD)のレボドパが各患者に投与されるように投与することを含み;
吸入後少なくとも20分の時点でのレボドパの血漿濃度の患者間のばらつきが50%未満の変動係数を有する、
レボドパ製剤。」
第3 拒絶の理由について
令和1年6月28日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由4の概要は、以下のとおりのものである。
理由4.(新規性)この出願の請求項1~10、13~15に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献1.特表2006-507218号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている(注:下線部は合議体が付した。)。
「【請求項1】
患者の気道に、約90重量パーセントを超えるレボドパと、非還元糖、リン脂質およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選ばれる物質とを含む粒子を投与する工程を含み、該粒子が肺系に送達される、パーキンソン病患者の治療方法。
・・・
【請求項29】
約90重量%を超えるL-ドパおよび約10重量%未満のトレハロースまたはDPPCを含む粒子群を提供する工程、該粒子群を有する容器から分散と吸入とを同時に経て、粒子をヒトの被験体の気道に投与する工程を含む、肺系に有効量のL-ドパを送達する方法。」
「【0002】
発明の背景
パーキンソン病は、基底核中のドパミンニューロンの変性により神経病理学的に、そして消耗性の震え、動作の緩慢および平衡性の問題により神経学的に特徴づけられる。パーキンソン病を患う人は100万人を超えると推定される。ほとんど全ての患者は、ドパミン前駆物質レボドパまたはL-ドパを、しばしばドパ-デカルボキシラーゼインヒビター、カルビドパ(carbidopa)と組み合わせて受けている。L-ドパは、パーキンソン病の徴候をこの病気の初期の段階で適切に抑える。しかしながら、これは、この疾患の過程において、数ヶ月~数年の間の期間後に効力を失う傾向がある。
【0003】
パーキンソン病患者におけるL-ドパの様々な効力は、少なくとも部分的には、L-ドパの血中濃度半減期に関連しており、これは極めて短い傾向にあり、カルビドパを同時に投与した場合でも1~3時間の範囲である。この疾患の初期段階では、この要因は、標的となる線条ニューロンのドパミン蓄積能により緩和される。L-ドパは、ニューロンにより吸収され、蓄積され、時間がたてば放出される。しかしながら、この疾患が進行するにつれて、ドパミン作用ニューロンが変性し、ドパミン蓄積能が低減する。したがって、L-ドパの陽性作用は、L-ドパの血漿レベルの変動にますます関連する。また、患者は、L-ドパの胃内容排出および貧弱な腸での吸収を含む問題を抱える傾向がある。患者は、血漿レベルが一次的にL-ドパ投与後に一時的に高く増大する場合のいわゆる運動障害から血漿が低下する場合の典型的なパーキンソン病の症状に戻るまでの、パーキンソン病の徴候の極めて顕著な規則的変動を示す。
【0004】
疾患が進行するにつれて、従来のL-ドパ治療は、かなり頻繁であるが、より低い投与量のスケジュールを含む。多くの患者は、たとえば、2~3時間毎にL-ドパを受ける。しかしながら、L-ドパの頻繁な投与でさえ、パーキンソン病の徴候を抑えるには不十分であることがわかっている。また、それらは患者にとって都合が悪く、しばしばノンコンプライアンスを生じる。
【0005】
1日に6~10倍のL-ドパ用量を用いても、血漿L-ドパレベルは危険なまでに低下し得、患者はかなり重篤なパーキンソン病の徴候に直面することもわかっている。これが発生した場合、脳ドパミン活性を急速に増加するために追加のL-ドパが干渉治療として投与される。しかしながら、経口的に投与される治療は、いたずらに患者が苦しむ間の約30~45分の初期の期間に関連する。また、正規に予定された容量と複合した干渉治療の効果は、入院を必要とし得る過剰投与を引き起こす。たとえば、皮下投与されるドパミンレセプターアゴニスト(アポモルヒネ)は、しばしばドパミンで誘導される吐き気を抑えるために局所作用ドパミンアンタゴニスト、たとえば、ドンぺリドンを必要とし、不都合で、かつ侵襲的である。
【0006】
したがって、従来の治療と少なくとも同じ効果があり、また上記の問題を最小にするもしくは解消した、パーキンソン病に罹患している患者を処置する方法が必要とされている。」
「【0012】
…本発明は、少数の呼吸で、好ましくは1回の呼吸でL-ドパの治療用量を肺系に投与する方法にも関する。」
「【0016】
パーキンソン病を処置するために使用される化合物としては、レボドパ(L-ドパ)およびカルビドパが挙げられる。」
「【0026】
別の態様において、本発明の粒子は、L-ドパに加えて、1以上のリン脂質を含む。リン脂質の具体例としては、限定されないが、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、…が挙げられる。
・・・
【0028】
任意に、前記粒子は、非還元糖またはリン脂質に加えて、少量の強電解質の塩、限定はされないが、塩化ナトリウム(NaCl)などを含む。使用され得る他の塩としては、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。一般に、前記粒子中に存在する塩の量は、10wt%未満、例えば、少なくとも5wt%未満である。
【0029】
90重量%を超える薬剤、たとえば、L-ドパを含有する粒子は、該粒子の表面上に局部電荷を有し得る。粒子の表面上のこの静電気は、粒子が望ましくない方法で機能する原因となる。たとえば、静電気の存在は、粒子が噴霧乾燥チャンバーの壁やスプレードライヤーから導入されるに導管に固着したり、バグハウス内に固着したりする原因となり、それにより、得られる収率パーセントが有意に低減する。さらに、静電気は、カプセル系システムに設置された場合、粒子が塊になる原因となる傾向があり得る。これらの塊を分散することは、困難であり得、このことは乏しい放出用量、乏しい微粒子画分、または両方により明らかにされる。さらに、粒子の充填は、また、静電気の存在により影響を受け得る。密接に近接した電荷様を有する粒子は、互いに反発して粉末ベッドにおいて隙間を残す。これは、所定の質量の、静電気を持たない同じ粉末よりも大きな場所をとる、所定の質量の、静電気を持つ粒子を生じる。このため、これは、一つの容器に送達され得る上限の用量を制限する。
【0030】
本発明の特定の解釈に執着することを望まないが、NaClなどの塩は、可動な対イオン源を提供すると考えられる。表面に局所帯電領域を有する粒子への小さい塩の添加は、表面上の帯電領域に関連する可動な対イオン源を提供することにより、最終粉末に存在する静電気の量を低減するだろう。それにより、製造される粉末の収率は、粉末凝集を低減し、微粒子画分(FPF)および粒子の放出量を改善し、より大量の粒子を一つの容器に詰め込むことができる。表1に示されるように、L-ドパおよび、トレハロースまたはDPPCのいずれかを、塩化ナトリウムに加えて含有する粒子は、約50~60倍の収率の増大を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表2は、微粒子画分ならびにL-ドパおよび、トレハロースまたはDPPCのいずれかを含有する粒子の放出量における塩化ナトリウムの効果を示す。
【0033】
【表2】
」
「【0039】
本発明の粒子は、肺系へのL-ドパの送達に適している。気道に投与される粒子は、上気道(中咽頭および喉頭)、その後に気管支および細気管支への分岐点に続く気管を含む下気道を通過し、最終的な呼吸領域である肺胞または深肺へと至る呼吸細気管支に順に分かれる末端細気管支を通過する。粒子は、粒子群のほとんどが深肺または肺胞に沈着するように操作され得る。
【0040】
本発明の粒子は、医薬配合物の一部として、または経口、肺、注射または他の投与様式による他の治療法と組み合わせて投与され得る。本明細書中に記載されるように、特に有用な肺の製剤は、標的の肺での沈着を補助する物理的特徴を有する噴霧乾燥粒子であり、放出プロフィールおよびバイオアベイラビリティプロフィールを最適化するために配合される。」
「【0043】
カスケードインパクタを用いる重量分析(gravimetric analysis)は、空気で運ばれる粒子のサイズ分布を測定する方法である。アンダーソンカスケードインパクタ(Andersen Cascade Impactor)(ACI)は、空気力学的サイズに基づいてエーロゾルを9つの異なる画分に分離し得る8段階のインパクタである。各段階のサイズのカットオフは、ACIが作動される流速に依存する。好ましくは、ACIは60 L/分に調整される。ある態様において、粒子最適化に2段崩壊ACIが用いられる。2段崩壊ACIは8段ACIのステージ0、2およびFからなり、2つの別々の粉末画分の回収が可能である。各ステージにおいて、エーロゾルの流れはノズルを通過し、表面に衝突する。エーロゾルの流れの中の、慣性の十分大きな粒子は、プレートに衝突する。プレートに衝突するのに十分な慣性を有しないより小さな粒子は、エーロゾルの流れの中に残り、次のステージに運ばれる。
【0044】
ACIは、最初のステージで回収された粉末の画分が微粒子画分(FPF)(5.6)と呼ばれるように較正される。このFPFは、空気力学的直径が5.6 μm未満の粒子の%に相当する。ACIの最初のステージを通過し、回収フィルター上に沈着した粉末の画分は、FPF(3.4)と呼ばれる。これは空気力学的直径が3.4 μm未満の粒子の%に相当する。
【0045】
FPF(5.6)画分は、患者の肺に沈着する粉末の画分と互いに関連することが示されたが、FPF(3.4)は患者の深肺に到達する粉末の画分と互いに関係があることが示された。
【0046】
本発明の粒子の少なくとも50%のFPFは約5.6 μm未満である。例えば、粒子中のFPFの少なくとも60%、または70%、または80%、または90%は約5,6μm未満であるが、これらに限定されない。」
「【0080】
呼吸系への粒子の投与は、当該分野で公知のような手段によりうる。例えば、粒子は、乾燥粉体吸入器(DPI)などの吸入デバイスにより送達される。定量吸入器(MDI)、ネブライザーまたは点滴注入技術もまた使用されうる。」
「【0086】
本発明は、さらに、少数回のステップで、好ましくは単回呼吸活性化ステップで治療投与量の医薬を肺系に投与する方法に関する。本発明はまた、少数回の呼吸で、好ましくは1または2回の単回呼吸で治療投与量の薬物を肺系に送達する方法に関する。該方法は、ある質量の粒子を有する、保持、含有、保管または封入している容器から被験体の気道に粒子を投与することを含む。
【0087】
1つの実施例において、吸入器容器に保管された粒子の質量の少なくとも80%が、被験体の呼吸系に単回呼吸活性化ステップで送達される。別の態様では、容器に封入された粒子を被験体の気道に単回呼吸で投与することにより、少なくとも1ミリグラムのL-ドパが送達される。好ましくは、少なくとも10ミリグラムのL-ドパが被験体の気道に送達される。15、20、25、30、35、40および50ミリグラム程の高量が送達され得る。」
「【0089】
本発明はまた、肺系に粉体粒子を効率的に送達する方法に関する。例えば、名目上粉体投与量の少なくとも約70%または少なくとも約80%が実際に送達されるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「名目上粉体投与量」は、吸入装置に使用されるものなどの容器内に保管された粉体の合計である。本明細書で使用する場合、名目上薬物投与量という用語は、名目上粉体量に含まれる医薬の合計量である。名目上粉体投与量は、粉体中の薬物の負荷パーセントによって名目上薬物投与量と関連する。」
「【0092】
本発明の方法は、例えば、上記の医薬などの医薬の有効量を肺系に送達することを含む。本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、所望の効果または効力を達成するのに必要な量を意味する。薬物の実際の有効量は、利用される特定の薬物またはその組合せ、製剤化される特定の組成物、投与の形態、患者の年齢、体重、状態、ならびに処置対象の発現症状の重篤度により変化し得る。ドパミン前駆体、アゴニストまたはその組み合わせの場合、それは、治療を必要とするパーキンソン症状を低減する量である。特定の患者に対する用量は、本明細書に記載されており、従来の考察を用いて(例えば、適切な従来の薬理学的プロトコルによる)当業者により決定され得る。…
【0093】
本発明において、L-ドパ投与量の肺送達は、体重に対して標準化すると、経口投与と比べて血漿レベルおよび治療的利益において少なくとも2倍増加をもたらすことがわかった。経口投与と比べ、有意に高い血漿レベルおよび治療的利益が可能である。1つの実施例において、L-ドパの肺送達は、経口投与と比べた場合、約2倍~約10倍の範囲の血漿レベル増加をもたらす。静脈内注射で得られるものに近いか、または同様の血漿レベルが得られ得る。
【0094】
用量を増加してもバイオアベイラビリティは同じままであると仮定すると、本発明の方法による肺送達でもたらされるものに匹敵する血漿レベルを達成するのに必要とされる経口薬、例えば、L-ドパの量は、投与後のある特定の点で決定され得る。特定の実施例において、経口投与および本発明の方法による投与後2分での血漿レベルは、それぞれ、1μg/ml L-ドパおよび5μg/ml L-ドパである。」
「【0098】
好ましくは、有効量は、作用部位への血液の「初回通過」で送達される。「初回通過」は、薬物が肺から脈管系に通過する点から標的器官およびその内部に初めて薬物が血液によって運ばれた時である。一般に、L-ドパは、血流中に放出され、処置対象の患者に治療を提供するのに充分短い時間以内にその作用部位に送達される。多くの場合において、L-ドパは、約10分未満で中枢神経系に達し得、しばしば2分という早さで、それより早いことさえある。
【0099】
好ましくは、患者の症状は、数分以内に、通常1時間以内に和らぐ。本発明の1つの態様において、医薬の放出速度論は、静脈内経路により達成される薬物の速度論に実質的に類似する。本発明の別の態様では、血流中のL-ドパのTmaxは、約1~約10分の範囲である。本明細書で使用する場合、用語Tmaxは、レベルが最大濃度に達する点を意味する。多くの場合において、本発明の方法を使用することにより得られる処置の発現は、経口送達で得られる処置の発現よりも少なくとも2倍速い。有意により速い処置の発現が得られ得る。1つの実施例において、処置の発現は、経口送達で見られるものより約2倍~約10倍速い。」
「【0102】
1つを超えるドパミン前駆体、アゴニストまたはその組み合わせ、特にL-ドパ、カルビドパ、アポモルフィンおよび他の薬物の投与が、同時または経時的に提供され得る。例えば、カルビドパは、しばしば、末梢カルボキシラーゼ活性を完全に遮断するために投与される。筋肉内、皮下、経口および他の投与経路が使用され得る。1つの態様において、これらの他の薬剤が肺系に送達される。これらの化合物または組成物は、前、後または同時に投与され得る。好ましい態様において、気道に投与される粒子は、L-ドパおよびカルビドパの両方を含む。用語「同時投与」は、本明細書では、本明細書に記載の発現症状および潜在状態を処置するために、特定のドパミン前駆体、アゴニストもしくはその組み合わせおよび/または他の組成物を時々に投与することを意味するために使用する。
【0103】
1つの態様において、長期L-ドパ療法は、経口カルビドパを併用したL-ドパの肺送達を含む。別の態様において、L-ドパの肺送達は、症状発現中に提供されるが、長期処置では従来のL-ドパ/カルビドパの経口投与を使用することができる。」
「【0117】
実施例4-L-ドパ、DPPCおよび塩化ナトリウムを含有する粒子
L-ドパ、DPPCおよび塩化ナトリウムを含有する製剤を含む粒子を、以下のようにして調製した。水溶液を、1.125 g L-ドパおよび25 mg塩化ナトリウムを300 mlのUSP水に添加することにより形成した。有機溶液は、700 mlのエタノール中の100 mg DPPCから構成された。水溶液および有機溶液をスタティックミキサー中で合わせた。合わせた容量で合計1 Lを使用し、全溶質濃度は、70/30エタノール/水中1.25 g/Lであった。合わせた溶液はスタティックミキサーから2液アトマイザー内へと流れ、得られた霧化液滴を以下の処理条件下で噴霧乾燥した。
供給口温度 約108℃
乾燥ドラムからの排出口温度 約49~53℃
窒素乾燥用ガス=95 kg/時
霧化速度=18 g/分
2液内部混合ノズルアトマイザー
液体供給速度=70 ml/分
液体供給温度 約50℃
乾燥チャンバ内の圧力=水中で-2.0
【0118】
得られた粒子は、70%のFPF (5.6)および40%のFPF (3.4)(ともに2段ACIを用いて測定)を有した。体積平均幾何学的直径は、1.0バールで14μmであった。
【0119】
スタティックミキサーから流出している混合溶液を、回転式アトマイザー内に送り込んだ。アトマイザーからの霧化液滴と加熱された窒素との接触によって液滴から液体を蒸発させ、乾燥多孔性粒子を得た。生じた気体-固体流を、得られた乾燥粒子を保持するバッグフィルターに送り込み、乾燥ガス(窒素)、蒸発水およびエタノールを含む高温ガス流を通過させた。乾燥粒子を生成物回収容器内に回収した。
【0120】
特定の物理的特性および化学的特性を有する乾燥粒子を得るため、上記のように、完成品乾燥粒子に関してインビトロ特性付け試験を行ない、それに応じて処理パラメータを調整することができる。この方法を用いて作製した、90 wt% L-ドパ、8 wt% DPPCおよび2 wt%塩化ナトリウムを含有する粒子は、1バールでRodosにより測定された14μmのVMGD、および2バールで11μmのVMGD、70%のFPF (5.6)を有した。このようにして、これらの粒子について、作製プロセス中にリアルタイムで所望の空気力学的直径、幾何学的直径および粒子密度を得ることができた。」
2 上記1によれば、引用文献1には、パーキンソン病患者におけるパーキンソン病症状を低減する医薬配合物が開示され(【0016】、【0040】、【0092】等)、当該医薬配合物は、単回呼吸で治療投与量のL-ドパを肺系に送達するものであり(【0012】、【0086】)、「容器に封入された粒子を被験体の気道に単回呼吸で投与することにより、少なくとも1ミリグラムのL-ドパが送達され」、「好ましくは、少なくとも10ミリグラムのL-ドパが被験体の気道に送達され」、「15、20、25、30、35、40および50ミリグラム程の高量が送達され得る」こと(【0087】)が記載され、また、実施例4において、90wt%L-ドパ、8wt%ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)及び2wt%塩化ナトリウムを含有し、70%のFPF(5.6)を有する乾燥粒子を製造したこと(【0026】、【0117】~【0120】)が記載されている。【0087】に記載された気道に送達されるL-ドパ15、20、25、30、35、40および50ミリグラムとは、【0039】及び【0045】の記載からみて、実質的にFPF(5.6)画分の量のことを意味すると解される。
そうすると、引用文献1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「90wt%L-ドパ、8wt%ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)及び2wt%塩化ナトリウムの組成を有し、70%のFPF(5.6)を有する乾燥粒子である、パーキンソン病患者のパーキンソン病症状を低減する医薬配合物であって、
単回呼吸でL-ドパの治療用量を肺系に送達するものであり、
15、20、25、30、35、40又は50mgのL-ドパが患者の気道に送達され得るものである、医薬配合物。」(以下「引用発明」という。)
第5 対比及び判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「L-ドパ」はレボドパの別称であり(引用文献の【0016】参照。)、また、引用発明の医薬配合物は、当然に複数の患者に投与されることを想定したものであるから、引用発明の「パーキンソン病患者のパーキンソン病症状を低減する医薬配合物」は、本願発明の「パーキンソン病患者の患者集団」に使用するための「レボドパ製剤」に相当する。
引用発明の乾燥粒子の組成である「90wt%L-ドパ、8wt%ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)及び2wt%塩化ナトリウムの組成を有し」は、本願発明と「75重量%以上のレボドパと、リン脂質と、を含」む点で重複する。
また、引用発明は、単回呼吸でL-ドパを肺系に送達する医薬配合物の発明であることから、本願発明と同じく「少なくとも2人の患者の患者集団に吸入により」投与されるものである。
さらに、本願発明の微粒子用量(FPD)は、名目用量×FPF(5.6)であり(本願明細書【0014】、【0015】)、患者へ投与されるレボドパ量を意味するところ(本願明細書【0055】)、引用発明は、名目上薬物投与量(【0089】)の70%のFPF(5.6)である、「15、20、25、30、35、40又は50mg」のL-ドパが患者の気道に送達され得る、すなわち「患者へ投与される」ものであるから、引用発明の微粒子用量(FPD)は「15、20、25、30、35、40又は50mg」であり、そのうち、「20、25、30、35、40又は50mg」である微粒子用量は、本願発明の微粒子用量の範囲に包含されるものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で一応相違する。
<一致点>
「パーキンソン病患者の患者集団に使用するためのレボドパ製剤であって、
前記製剤は、75重量%以上のレボドパと、リン脂質と、を含み、
パーキンソン病を罹患する少なくとも2人の患者の患者集団に吸入により前記レボドパ製剤を、20、25、30、35、40又は50mgの微粒子用量(FPD)のレボドパが各患者に投与されるように投与される、
レボドパ製剤。」
<一応の相違点>
本願発明は、レボドパ製剤が、パーキンソン病患者の患者集団における「レボドパの患者間のばらつきを低減する方法において使用するための」ものであって、「吸入後少なくとも20分の時点でのレボドパの血漿濃度の患者間のばらつきが50%未満の変動係数を有する」ものであるのに対し、引用発明は、レボドパ製剤について、かかる特定をしていない点。
2 判断
(1)一応の相違点について
最初に、本願発明における「パーキンソン病患者の患者集団におけるレボドパの患者間のばらつきを低減する方法において使用するための」との発明特定事項について検討すると、当該発明特定事項は、本願発明に係るレボドパ製剤において、適用される疾病や用法又は用量を特定するものではない。さらに、患者間のばらつきを低減する方法において使用するレボドパ製剤は、複数の患者に対して使用するレボドパ製剤と、その実態として区別はできない。
そうすると、上記発明特定事項を考慮しても、本願発明の医薬用途とは、吸入により、レボドパ製剤が投与されることが特定された、パーキンソン病へのレボドパ製剤の適用に留まるものであって、引用発明の医薬用途と異なるところはない。
次に、本願発明における「吸入後少なくとも20分の時点でのレボドパの血漿濃度の患者間のばらつきが50%未満の変動係数を有する」との発明特定事項について検討する。
本願明細書の発明の詳細な説明には、実施例1として、レボドパを90重量%、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を8重量%及び塩化ナトリウムを2重量%含むレボドパ製剤(「90/8/2」)が(本願明細書【0054】、【0065】)、微粒子用量(FPD)が20mg、30mg、50mgのそれぞれとなるように(本願明細書【0024】、【0078】のレボドパ用量の脚注)、被検体に吸入により投与されたこと(本願明細書【0075】~【0078】)が記載され、その結果として(本願明細書【0092】~【0099】)、吸入後少なくとも20分の時点でのレボドパの血漿濃度の変動係数として【0099】に示される、50%未満である数値が得られたことが記載されている。
一方、引用発明には、90wt%L-ドパ、8wt%ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)及び2wt%塩化ナトリウムの組成を有するレボドパ製剤であって、微粒子用量が20、30又は50mgとなるように、患者に吸入により投与され得るレボドパ製剤が含まれ、当該レボドパ製剤は上記本願明細書における実施例1において用いられたレボドパ製剤とその組成、微粒子用量及び投与経路が同一であるから、引用発明における上記レボドパ製剤を患者に吸入投与すれば、自ずと、「吸入後少なくとも20分の時点でのレボドパの血漿濃度の患者間のばらつきが50%未満の変動係数を有する」こととなると認められる。
そうすると、上記一応の相違点は、実質的な相違点とはいえない。
(2)請求人の主張について
請求人は、令和1年12月26日提出の意見書において、「引用文献1には、「20mg~50mg」という微粒子用量(FPD)の範囲は開示されておりません」(4頁10~11行:主張1)、「引用文献1は、レボドパのインビボでの薬物動態についての具体的なデータを何ら開示していない上、「20mg~50mg」の範囲のFPDを用いれば「吸入後少なくとも20分の時点での患者間のばらつきが低減される」という効果が得られることを何ら教示していません。」(4頁13~16行:主張2)と主張している。
しかしながら、上記主張1については、上記1において説示したように、引用文献1に、本願発明の微粒子用量の範囲に包含される用量が開示されている。
また、上記主張2については、引用文献1には、上記効果について記載はされていないが、20mg~50mgの範囲のFPD等の条件を有するレボドパ製剤を吸入投与することにより、上記効果が自ずと得られることは上記(1)で説示したとおりである。
そうすると、請求人の上記主張を参酌しても、上記(1)の判断に変わるところはない。
3 小括
以上のとおりであるから、本願発明は引用文献1に記載された発明である。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-016632