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特許拒絶査定不服審判

2023-002058

リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用

審判番号
2023-002058
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-539517外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年02月07日
審決日
2026年03月11日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-539517「リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月16日国際公開、WO2020/143534、令和 4年 2月22日国内公表、特表2022-515920〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年1月3日(パリ条約による優先権主張 2019年1月8日 (CN)中国)を国際出願日とする特願2021-539517号であり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和3年 7月20日提出 手続補正書 令和4年 8月 1日付け 拒絶理由通知書 同年 9月20日提出 手続補正書及び意見書 同年10月 5日付け 拒絶査定 令和5年 2月 7日提出 審判請求書及び手続補正書 同年 4月 5日付け 前置報告書 同年 7月25日提出 上申書 令和6年 8月 7日付け 拒絶理由通知書(当審) 令和7年 2月13日提出 意見書及び手続補正書 同年 4月24日 面接 同年 5月 9日付け 拒絶理由通知書(当審) 同年10月14日提出 意見書 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は、令和7年2月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩を含む、 [図:0001437617000001.jpg] リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌に前記リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩への耐性を生じさせることなく、前記リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患を治療又は予防するために使用される薬物。」 第3 拒絶の理由 当審において令和7年5月9日付けで通知した拒絶理由通知書において、本願発明に対する理由1(特許法第29条第1項第3号)の概略は、以下のとおりである。 本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 ・引用文献2:Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 2008, Vol.52 No.7, p.2313-2323 第4 引用文献に記載された事項及び引用発明 1 引用文献2に記載された事項 引用文献2には下記の事項が記載されている。原文は外国語で記載されているため、必要に応じて当審による日本語訳を記載する。 また、原文にない下線及び四角囲いは、当審において付したものである。 (摘記2a) 「新規リファマイシン・キノロン系ハイブリッド抗生物質 CBR-2092のin vitro 評価: 黄色ブドウ球菌における作用機序の研究 ・・・ リファマイシンは、持続性細菌感染症の治療において有効性が実証されている。しかし、細菌がリファマイシン系薬剤に対して耐性を獲得する頻度が高いため、臨床使用は抗生物質併用療法に限られている。耐性獲得の傾向が低いリファマイシンの合成を目指したプログラムにおいて、リファマイシンとキノロン系のファーマコフォアを共有結合させることで安定したハイブリッド抗菌剤を形成する一連の化合物が合成された。本稿では、リファマイシンSVと4H-4-オキソ-キノリジン系のファーマコフォアを組み合わせた新規ハイブリッド抗菌剤であるCBR-2092の黄色ブドウ球菌を用いた作用機序試験について報告する。生化学的研究において、CBR-2092はRNAポリメラーゼ阻害剤としてリファンピシン様の効力を示し、DNAジャイレース及びDNAトポイソメラーゼIVに対しては等効力(バランス)阻害剤であり、広く見られるキノロン耐性変異株に対しても活性を維持した。高分子生合成研究により、CBR-2092はリファンピシン感受性株のRNA合成に対してリファンピシン様作用を示し、リファンピシン耐性株のDNA合成に対してキノロン様作用を示すことが確認された。CBR-2092に対する感受性が低下した変異株の研究により、CBR-2092の主な細胞標的はRNAポリメラーゼであり、既にリファンピシン耐性を示す株においては、DNAジャイレースとDNAトポイソメラーゼIVがそれぞれ二次標的、三次標的であることがさらに実証された。キノロン系比較薬剤とは対照的に、CBR-2092に対する感受性が変化した株において、排出特性の変化と一致する変化は認められなかった。これらのデータを総合すると、CBR-2092は持続性黄色ブドウ球菌感染症の治療において単剤療法として潜在的に有用であり得ることが示されている。」(文献タイトル、p.2313の要約) (摘記2b) 「材料と方法 抗菌剤。CBR-2092及びABT-719(A-86719.0)はCumbre Pharmaceuticals Inc.で合成された。リファンピシン、エチジウムブロマイド、及びレセルピンはSigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入した。シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ガチフロキサシン、及びナジフロキサシンは LKT Laboratories(ミネソタ州セントポール)から購入した。 細菌株。表1は、以下に説明するように分離され、特徴付けられたリファマイシン及び/又はキノロンクラスの薬剤に対して安定した耐性を示すS. aureus ATCC 29213(CB190)及びRN4220(CB1244)の派生株シリーズの詳細を示している。」(p.2314左欄の「MATERIALS AND METHODS」の項目の1~2段落) (摘記2c) 「 [図:0001437617000002.jpg] 」(p.2314の「TABLE 1.」) (当審注:四角囲い中の日本語訳は下記のとおりである。下線を付した細胞株はキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌株である。) 「 [図:0001437617000003.jpg] 」 (摘記2d) 「結果 CBR-2092及び関連薬剤の構造。リファマイシンをベースとしたハイブリッド抗生物質の合成と評価を目的としたプログラムにおいて、リファマイシンとキノロン系ファーマコフォアが共有結合した一連の化合物が調製された。・・・CBR-2092(図1)では、リファマイシンSVファーマコフォアがキラル結合基を介して4H-4-オキソキノリジンサブファミリー(25)のキノロン実体と結合している。比較のために、図1には、本研究で比較薬として使用したリファンピシン、シプロフロキサシン、及び代表的な4H-4-オキソキノリジン(ABT-719)の構造も示している。ABT-719は、4H-4-オキソキノリジンシリーズの中で最も広範囲に特徴付けられたメンバーであり、DNAジャイレース及びDNAトポイソメラーゼIV 酵素に対して同等の(バランスのとれた)生化学的活性を示し、シプロフロキサシン耐性黄色ブドウ球菌分離株を含むグラム陽性及びグラム陰性病原体の両方に対して強力な抗菌活性を示し、げっ歯類感染モデルで有効であることから、比較対象として研究された(26)。」(p.2315左欄の「RESULTS Structures of CBR-2092 and related agents.」の項目) (摘記2e) 「 [図:0001437617000004.jpg] 」 (摘記2f) 「リファンピシン及び/又はキノロン耐性を示すS.aureus株に対するCBR-2092の活性。表3は、高レベルのリファンピシン耐性変異rpoBH481Yと一般的なキノロン耐性変異 parCS80F及びgyrAS84Lのあらゆる組合せ、これらの耐性変異以外は同質であるS.aureus CB190 (ATCC 29213)の派生株セットに対する、CBR-2092及び比較薬剤の活性を示している。CBR-2092の場合、寒天希釈法とブロス微量希釈法の両方で実施したアッセイからのMICエンドポイントが、ここ及び他の場所で示されている。後者は、0.002%(vol/vol) P-80を添加したMHII培地で実施された。」(p.2316左欄2段落の1~11行) (摘記2g) 「 [図:0001437617000005.jpg] 」(p.2316の「TABLE 3. Antibacterial activities of CBR-2092 against isogenic Staphylococcus aureus strains bearing combinations of rifamycin or quinolone resistance mutations」(表3. リファマイシン又はキノロン耐性変異の組合せを有する同質遺伝子型黄色ブドウ球菌株に対するCBR-2092の抗菌活性)) (当審注:四角囲いは、キノロン耐性を示す黄色ブドウ球菌株における実験結果である。これらの細菌株について、摘記2cに記載した日本語訳を再掲する。) [図:0001437617000006.jpg] 」 2 引用文献2に記載された発明(引用発明) 引用文献2の表3(摘記2g)には、キノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌株に対する、CBR-2092と称される化合物(以下「CBR-2092」という。)、Rifampin(当審注:本願発明のリファンピシン(Rifampicin)の別名である。)、各種のキノロン系薬剤(Ciprofloxacin、Levofloxacin、Gatifloxacin)等のMIC(最小発育阻止濃度)を測定したアッセイの結果が記載されている(当審注:MICは、化合物の細菌に対する抗菌作用の有無、及び細菌の化合物に対する感受性の有無の指標となる値である。)。 そして、表3に示された結果から、CBR-2092が抗菌作用を示したキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌株のうち、一般的なキノロン耐性変異であるparCS80F及び/又はgyrAS84Lを有する、CB811(gyrAS84L)細菌、CB808(parCS80F)細菌及びCB814(parCS80F及びgyrAS84L)細菌は、リファンピシン(Rifampin)に対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌であるといえる(当審注:菌株の名称の後に付した( )内の記載は、キノロン薬剤耐性変異に関連する遺伝子型を示す。)。 また、CBR-2092は、その化学構造(摘記2e)に水溶性塩の形態になり得る-COOH基及び-OH基を有していることから、MICを測定したアッセイ(表3)における寒天希釈法の寒天培地、及びブロス微量希釈法のMHII培地(摘記2f)では、CBR-2092及びその薬学的に許容される塩を含む薬物の形態で用いられたと解される。 そうすると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「CBR-2092及びその薬学的に許容される塩を含む、リファンピシン(Rifampin)に対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌であるCB811(gyrAS84L)細菌、CB808(parCS80F)細菌、又はCB814(gyrAS84L及びparCS80F)細菌に対する抗菌作用を有する薬物。」 第5 本願発明と引用発明との対比・判断 1 本願発明と引用発明との対比 (1)上記第2で説示したとおり、本願発明は、「Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩を含む、 [図:0001437617000007.jpg] リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌に前記リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩への耐性を生じさせることなく、前記リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患を治療又は予防するために使用される薬物。」である。 (2)そして、引用発明の「CBR-2092」は、その化学構造(摘記2e)から、本願発明の「Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子」に相当するから、引用発明の「CBR-2092及びその薬学的に許容される塩を含む」薬物は、本願発明の「Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩を含む」薬物に相当する。 (3)また、引用発明の「リファンピシン(Rifampin)に対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌であるCB811(gyrAS84L)細菌、CB808(parCS80F)細菌、又はCB814(gyrAS84L及びparCS80F)細菌」は、本願発明の「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌」に相当する。 (4)そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び一応の相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩を含む、 [図:0001437617000008.jpg] リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌に関する薬物」である点。 <一応の相違点> 本願発明の薬物には「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌に前記リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩への耐性を生じさせることなく、前記リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患を治療又は予防するために使用される」という用途が特定されているのに対し、引用発明の薬物には上記用途が特定されていない点。 以下、本願発明の「Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩」、及び引用発明の「CBR-2092及びその薬学的に許容される塩」を、「CBR-2092」と統一して記載する。 2 <一応の相違点>についての判断 (1)引用文献2には、リファマイシンは「持続性細菌感染症の治療において有効性が実証されて」おり、「CBR-2092」は「細菌がリファマイシン系薬剤に対して耐性を獲得する頻度が高いため、臨床使用は抗生物質併用療法に限られている」という背景を前提として、「耐性獲得の傾向が低いリファマイシンの合成を目指したプログラム」に基づいて合成された「新規リファマイシン・キノロン系ハイブリッド抗生物質」であること、「生化学的研究において、CBR-2092はRNAポリメラーゼ阻害剤としてリファンピシン様の効力を示し、DNAジャイレース及びDNAトポイソメラーゼIVに対しては等効力(バランス)阻害剤であり、広く見られるキノロン耐性変異株に対しても活性を維持した」こと、「CBR-2092は持続性黄色ブドウ球菌感染症の治療において単剤療法として潜在的に有用であり得ることが示されている」ことが記載されている(摘記2a)。 これらの記載から、引用文献2では、in vitro実験(摘記2b~2g)で確認された、「CBR-2092」による「リファンピシン(Rifampin)に対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌であるCB811(gyrAS84L)細菌、CB808(parCS80F)細菌、又はCB814(gyrAS84L及びparCS80F)細菌に対する抗菌作用」が、in vivoにおいても発現することを前提として、「耐性獲得の傾向が低いリファマイシンの合成を目指したプログラム」(摘記2a)を進めていることは自明であり、引用発明の薬物は「リファンピシン(Rifampin)に対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌であるCB811(gyrAS84L)細菌、CB808(parCS80F)細菌、又はCB814(gyrAS84L及びparCS80F)細菌の感染による疾患の治療に使用される薬物」であるといえる。 そして、上記「リファンピシン(Rifampin)に対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌であるCB811(gyrAS84L)細菌、CB808(parCS80F)細菌、又はCB814(gyrAS84L及びparCS80F)細菌の感染による疾患の治療に使用される薬物」は、本願発明の「リファ」ンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患を治療又は予防するために使用される薬物」に相当する。 (2)ここで、本願発明を特定する「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌に前記リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩への耐性を生じさせることなく」という記載は、「CBR-2092」が有する属性(以下「属性X」という。)を説明するものであり、引用発明の「CBR-2092」は、その化学構造(摘記2e)から、本願発明の「Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子」に相当するから、引用発明の「CBR-2092」も属性Xを有していることは自明である。 そして、属性Xを有することが特定された本願発明と、属性Xを有することが特定されていない引用発明のいずれにおいても、「CBR-2092」を含む薬物が治療又は予防する対象疾患が「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患」であることに何ら変わりはなく、属性Xの記載は、「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患を治療又は予防するために使用される」という用途をさらに限定するものではない。 (3)以上のとおり、本願発明を特定する「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌に前記リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩への耐性を生じさせることなく、前記リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患を治療又は予防するために使用される」という記載は、引用発明の「CBR-2092」(本願発明の「Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子」に相当する化合物)の用途を、さらに限定するものではなく、本願発明と引用発明とに実質的な差異はないから、<一応の相違点>は実質的な相違点ではない。 3 請求人の主張について 請求人は、令和7年10月14日提出の意見書の「1.新規性について」の項において、以下(1)及び(2)の主旨の主張をしているので、順次検討する。 (1)技術的構成の差異について、本願発明は、分子I(リファマイシン-キノリジノン結合分子)及びその薬学的に許容される塩を含む薬物であって、リファンピシン感受性かつキノロン耐性(RIF-S/FQ-R)の黄色ブドウ球菌(以下「黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)」という。)による感染性疾患の治療又は予防のために、前記黄色ブドウ球菌に耐性変異を生じさせることなく、使用される薬物に関するものであって、本願発明の効果は、黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)感染症に関するin vivo実験に基づいて得られたものである。 これに対し、 (A)引用文献2は、黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)による感染症に対するCBR-2092の生体内(in vivo)活性を教示していない。 (B)引用文献2は、リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩に対する耐性の発現を、黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)において防止するという薬物の特徴を教示していない。 そこで、上記(1)の主張について検討する。 引用文献2では、in vitro実験(摘記2b~2g)で確認された、「CBR-2092」による「リファンピシン(Rifampin)に対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌であるCB811(gyrAS84L)細菌、CB808(parCS80F)細菌、又はCB814(gyrAS84L及びparCS80F)細菌に対する抗菌作用」が、in vivoにおいても発現することを前提として、「耐性獲得の傾向が低いリファマイシンの合成を目指したプログラム」(摘記2a)を進めていることは自明であることは、上記2(1)で説示したとおりである。 すなわち、本願発明の「CBR-2092」を、耐性変異を生じさせることなく、黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)感染症の治療又は予防に使用できることは、引用文献2のin vitro実験で既に発見された事項であり、本願明細書に記載されたin vivo実験は、既に発見された事項を単に確認したものにすぎない。 (2)技術的効果に基づく用途限定について、本願発明の「黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)にリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩への耐性を生じさせることなく、黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)の感染による疾患を治療又は予防するために使用される」という用途限定は、単なる属性の記載ではなく、in vivo実験の結果に基づく技術的効果を伴う発明の構成である。 黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)について分子Iへの耐性の発現を抑制するという本願発明の技術的効果は、黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)による感染症を治療する過程で見出されたものであり、分子Iが固有に有する性質に由来するものではない。 本願の優先日前において、当業者は、黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)による感染症の治療において、分子Iが自然耐性発生頻度を低減することを知る由もなかった。 そこで、上記(2)の主張について、検討する。 ア 引用発明の「CBR-2092」は、「耐性獲得の傾向が低いリファマイシンの合成を目指したプログラム」において合成された「新規リファマイシン・キノロン系ハイブリッド抗生物質」であるところ(摘記2a)、上記2(2)で説示したとおり、本願発明の「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌に前記リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩への耐性を生じさせることなく」という記載は、「CBR-2092」が有する属性Xを説明するものである。 イ 属性Xは、本願明細書に記載されたin vivo実験の結果に基づく属性であるが、引用発明の「CBR-2092」は、その化学構造(摘記2e)から、本願発明の「Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子」に相当するから、引用発明の「CBR-2092」も属性Xを有していることは自明であることも、上記2(2)で説示したとおりである。 ウ そして、属性Xを有することが特定された本願発明と、属性Xを有することが特定されていない引用発明のいずれにおいても、「CBR-2092」を含む薬物が治療又は予防する対象疾患が「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患」であることに何ら変わりはなく、属性Xの記載は、「リファンピシンに対して感受性を有するキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染による疾患を治療又は予防するために使用される」という用途をさらに限定するものではないことも、上記2(2)で説示したとおりである。 エ 以上のとおりであるから、請求人が上記(2)で主張するように、「黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)にリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩への耐性を生じさせることなく、黄色ブドウ球菌(RIF-S/FQ-R)の感染による疾患を治療又は予防するために使用される」ことは、本願明細書に記載されたin vivo実験の結果に基づくことを考慮しても、本願発明の薬物の用途と、引用発明の薬物の用途に実質的な差異はない。 4 したがって、上記<一応の相違点>は実質的な相違点ではなく、本願発明と引用発明は実質的に同一の発明であり、本願発明は引用文献2に記載された発明である。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-002058

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