2024-009788
治療薬物の腸内送達のためのシステム
- 審判番号
- 2024-009788
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-507492外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年06月12日
- 審決日
- 2026年02月19日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .113-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、2019年(令和元年)8月13日(パリ条約による優先権主張 2018年8月15日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和 4年 8月31日 手続補正書の提出
令和 5年 5月31日付け 拒絶理由通知書
令和 6年 2月 7日付け 拒絶査定
同年 6月12日 審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和6年6月12日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)について
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所を示す。)
「【請求項1】治療薬物の腸内投与のためのシステムであって、担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含み、前記システムは、圧縮した形態及び拡張した形態において設定可能であり、ここで前記システムが(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、又は(2)胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、かつ小腸に到達するまで前記治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定され;ここで、前記システムが、小腸の腸壁への外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁への接触を保持し、かつ小腸の腸粘膜にわたって治療薬物の少なくとも部分を輸送するようなサイズを取り;かつここで、前記システムの少なくとも一部が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うシステム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年8月31日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】治療薬物の腸内投与のためのシステムであって、:担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材、圧縮した形態及び拡張した形態において設定可能な前記システムであって、ここで前記システムが(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、又は(2)胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、かつ小腸に到達するまで前記治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定され;ここで、前記システムが、小腸の腸壁への外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁への接触を保持し、かつ小腸の腸粘膜にわたって治療薬物の少なくとも部分を輸送するようなサイズを取り;かつここで、前記システムの少なくとも一部が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うシステム。」
2 本件補正の適否
上記補正は、特許請求の範囲についてする補正であり、令和6年2月7日付け拒絶査定の理由を記載した、令和5年5月31日付けの拒絶理由通知書の「●理由3(明確性)について」において、「(4)請求項1の「システム」と「担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材」との関係が特定されておらず、「システム」に、「担体部材」が含まれるのか否かが判然としない。」とされたことに対応し、「システム」に「担体部材」が含まれることを、明りょうにすることを目的とする補正である。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とする補正に該当し、特許法第17条の2第5項の規定に適合する。
また、上記補正は、明りょうでない記載を明りょうな記載とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
3 小括
よって、本件補正は、特許法17条の2第3項及び第5項の規定に適合し、適法になされたものである。
第3 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は、適法になされたものであるから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「治療薬物の腸内投与のためのシステムであって、担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含み、前記システムは、圧縮した形態及び拡張した形態において設定可能であり、ここで前記システムが(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、又は(2)胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、かつ小腸に到達するまで前記治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定され;ここで、前記システムが、小腸の腸壁への外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁への接触を保持し、かつ小腸の腸粘膜にわたって治療薬物の少なくとも部分を輸送するようなサイズを取り;かつここで、前記システムの少なくとも一部が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うシステム。」
第4 拒絶査定における拒絶理由の概要
令和6年2月7日付け拒絶査定における拒絶理由のうち、本願発明に対応する請求項1に係る発明についての理由1の概略は、次のとおりである。
1.(新規性)本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2010/0021536号明細書(以下「引用文献1」という。)
第5 引用文献の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、引用文献1は外国語で記載された文献であるから、図面を除き、当審による日本語訳で示す。また、原文にない下線は、強調のために当審が付した。
(摘記1a)「要約
摂取可能なカプセルが、対象に薬剤を送達するために提供される。カプセルのコーティングは、対象の消化管内で溶解する。カプセルの内部コアは、それと関連する外表面を有する。外表面は、コーティング内に配置され、コーティングが溶解すると拡張する。薬剤は、外表面上に配置され、外表面が拡張すると対象の腸壁に接触するように構成される。他の実施形態もまた提供される。」(1頁目の「ABSTRACT」の項目)
(摘記1b)「発明の概要
[0024]本発明のいくつかの実施形態では、摂取可能なカプセルの形態で薬剤が対象に投与される。いくつかの実施形態では、カプセルは外表面を有する内部コアを含み、外表面はコーティング、例えば腸溶性コーティング及び/又はゲル内に配置されている。薬剤は内部コアの外表面に配置されている。カプセルのコーティングは、カプセルが小腸に到達すると溶解し、内部コアの外表面が小腸内で拡張することを可能にする。例えば、内部コアの外表面は、内部コア又は外表面が小腸内の液体と接触したこと、又は腸溶性コーティング若しくはゲルによる拘束がなくなったことに反応して、伸長又は展開する場合がある。外表面は拡張し、腸壁と接触する。この拡張の結果、内部コアの外表面に配置された薬剤は腸壁に接触する。
・・・」([0024])
(摘記1c)「実施形態の詳細な説明
[0134]図1A及び図1Bは、本発明の一実施形態に係る、被験者による摂取用に構成されたカプセル20の概略図である。カプセル20は、外表面24を有する内部コア28を備える。外表面24はコーティング22内に配置されている。薬剤26は、内部コア28の外表面24上に配置されている。
・・・
[0135]ゼラチン又は他の適切な材料を含む、カプセル20のコーティング22は、カプセル20が小腸に到達した際に、当該技術分野で既知の技術を用いて溶解する。いくつかの実施形態では、コーティング22が溶解する前に、コーティングは外表面24を拘束して、その拡張を防止する。
・・・
[0136]外表面24は、内部コア又は外表面が小腸内の液体と接触したこと、又は腸溶性コーティングによる拘束が解除されたことに応答して、伸張及び/又は展開することにより拡張する。拡張すると、外表面24は、図1Bに示すように、小腸壁31と接触する。この拡張の結果、外表面24上に配置された薬剤は、典型的には腸壁31と実質的に360度接触する。
・・・
[0137]薬剤26の送達後、内部コア28は、体外に排出される。一実施形態では、内部コア28は、薬剤送達後に生分解して腸壁からの分離を容易にする生分解性物質を含む。代替的に、又は追加的に、内部コア28は、水分を吸収し、小腸内で拡張し、その後、細菌及び/又は結腸内のpHによって分解されるポリマーを含む。
・・・」([0134]~[0137])
(摘記1d)「[0179]
・・・
1.被験者に薬剤を送達するための摂取可能なカプセルであって、以下のものを備える:
被験者の消化管内で溶解するように構成されたコーティング;
外表面を有する内部コアであって、前記外表面は前記コーティング内に配置され、前記コーティングが溶解すると拡張するように構成された内部コア;及び
前記外表面上に配置された薬剤であって、前記外表面は、前記外表面が拡張すると前記薬剤が被験者の腸壁に接触するように構成された薬剤。
・・・
20.請求項1に記載のカプセルであって、外表面は、薬剤と腸壁との接触を確立することにより腸壁を介した薬剤の送達を容易にするように構成され、腸壁を介した薬剤の送達中に拡張された外表面を所定の位置に保持するように構成された接着剤をさらに備える。」([0179])
(摘記1e)「
[図:0001436615000001.jpg]
」(図1A、1B)
第6 判断
1 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、
「被験者に薬剤を送達するための摂取可能なカプセルであって、以下のものを備える:被験者の消化管内で溶解するように構成されたコーティング;外表面を有する内部コアであって、前記外表面は前記コーティング内に配置され、前記コーティングが溶解すると拡張するように構成された内部コア;及び前記外表面上に配置された薬剤であって、前記外表面は、前記外表面が拡張すると前記薬剤が被験者の腸壁に接触するように構成された薬剤。」
が記載され(摘記1dの1.)、上記カプセルは、「腸壁を介した薬剤の送達」をするものであり(摘記1dの20.)、コーティングは、カプセルが「小腸に到達した際に溶解」し、溶解前は、「拡張を防止」すること(摘記1a、1b、1cの[0135])、内部コアは、「小腸内で拡張」した後、「細菌及び/又は結腸内のpHによって分解されるポリマー」を含むこと(摘記1cの[0137])が記載されている。
以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
<引用発明>
「被験者に腸壁を介して薬剤を送達するための摂取可能なカプセルであって、以下のものを備える:被験者の小腸に到達した際に溶解するように構成されたコーティング;外表面を有する内部コアであって、前記外表面は前記コーティング内に配置され、前記コーティングが、溶解前は拡張を防止し、溶解すると拡張するように構成された、小腸内で拡張した後、細菌及び/又は結腸内のpHによって分解されるポリマーを含む内部コア;及び前記外表面上に配置された薬剤であって、前記外表面は、前記外表面が拡張すると前記薬剤が被験者の腸壁に接触するように構成された薬剤。」
2 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「薬剤」は、本願発明の「治療薬物」に相当し、引用発明の「被験者に腸壁を介して薬剤を送達する」ことは、本願発明の「治療薬物の腸内投与」に相当するから、引用発明の「被験者に腸壁を介して薬剤を送達するための摂取可能なカプセル」は、本願発明の「治療薬物の腸内投与のためのシステム」に相当する。
(2)引用発明の「内部コア」は、「ポリマー」を含み、外表面上に「薬剤」が配置されているから、「ポリマー」及び「薬剤」を含むものであり、本願発明の「担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材」に相当する。
(3)引用発明の「コーティング」は、「溶解前は拡張を防止し、溶解すると拡張するように構成された」ものであるところ、「拡張」した形態は、本願発明の「拡張した形態」に相当する。そして、溶解すると拡張するのであれば、溶解前は「圧縮した形態」であるといえる。
そうすると、引用発明の「溶解前は拡張を防止し、溶解すると拡張するように構成された」は、本願発明の「圧縮した形態及び拡張した形態において設定可能」に相当する。
(4)引用発明におけるコーティングは、「被験者の小腸に到達した際に溶解」し、「溶解前は拡張を防止し、溶解すると拡張する」から、引用発明は、小腸において、溶解前の圧縮した形態から、拡張した形態に拡張するものであり、本願発明の「(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張」するように設定されたものに相当する。
そうすると、引用発明は、本願発明の「(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、又は(2)胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張」するものに相当する。
さらに、引用発明のコーティングは、「被験者の小腸に到達した際に溶解」するから、小腸に到達する前は、外表面上に配置された薬剤は、コーティング内に配置されているために、実質的な放出がされないものと認められる。そして、本願発明の「幽門」とは、「小腸に到達する前」に薬剤が通過する箇所であるから、引用発明は、本願発明の「小腸に到達するまで前記治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定されている」ものに相当する。
(5)引用発明は、コーティングが溶解して外表面が拡張すると、薬剤が「腸壁」に接触するものであるところ、コーティングは、「小腸」に到達した際に溶解するから、引用発明は、薬剤が「小腸の腸壁」に接触するものである。また、「外表面が拡張する」ことは、小腸の腸壁への「外向きの圧力が適用」されているということができ、それにより薬剤が小腸の腸壁に接触するから、引用発明は、本願発明の「小腸の腸壁への外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁への接触を保持」するものに相当する。
(6)引用発明は、「被験者に腸壁を介して薬剤を送達するための摂取可能なカプセル」であるところ、上記(5)のとおり、薬剤は、「小腸の腸壁」に接触するから、引用発明は、小腸の腸壁を介して薬剤を送達するものであり、小腸の腸壁を介して薬剤が送達される以上、引用発明のカプセルは、小腸の腸粘膜を介して薬剤を輸送できるサイズであるといえる。
そうすると、引用発明のカプセルは、本願発明の「小腸の腸粘膜にわたって治療薬物の少なくとも部分を輸送するようなサイズ」を取るものに相当する。
(7)引用発明の内部コアは、「小腸内で拡張した後」、細菌及び/又は結腸内のpHによって「分解」されるポリマーを含むものであるところ、「分解」は、「構造的な完全性を失う」ことであるということができ、また、「分解」は、小腸内で拡張した後、すなわち、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後に行われているといえる。
そうすると、引用発明は、その一部である内部コアが、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後に構造的な完全性を失うものであり、本願発明の「システムの少なくとも一部が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うシステム」に相当する。
(8)以上によれば、本願発明と引用発明の間に差異はない。
3 小括
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。
4 請求人の主張について
請求人は、令和5年5月31日付けで通知された拒絶理由について意見書を提出する機会に対して、何ら応答せず、令和6年6月12日提出の審判請求書においても、
「【本願発明が特許されるべき理由】本願発明は、同拒絶理由書において引用された文献に記載された発明とは明白に異なる技術的特徴を有するものであります。【むすび】従って、原査定を取り消す、本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求めるものであります。」
というだけで、具体的に、本願発明が、引用文献1に記載された発明との間にどのような「明白に異なる技術的特徴」を有するのかも説明しておらず、実質的な意見を述べていない。
そして、本願発明が、引用文献1に記載された発明であることは、上記1~3のとおりである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2024-009788