特許拒絶査定不服審判
2018-016116
導電性粒子、導電材料及び接続構造体
- 審判番号
- 2018-016116
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-214663外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年12月04日
- 審決日
- 2020年02月19日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】積水化学工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-214663「導電性粒子、導電材料及び接続構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月11日出願公開、特開2015-109267〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月21日(優先権主張 平成25年10月21日)の出願であって、平成30年4月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年同月29日付けで拒絶査定がされ、同年12月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし13に係る発明は、平成30年12月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
なお、本願発明は、平成30年12月4日に提出された手続補正書による補正前、すなわち同年8月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に係る発明(請求項1を引用する場合のもの)と、実質的に同じである。
「【請求項1】
基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置されており、かつニッケルを含む導電層とを備え、
前記導電層の外表面に複数の突起を有し、
前記ニッケルを含む導電層が、ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%以上である第1の領域と、ニッケルとボロンとを含み、かつボロンの含有量が0.5重量%以上である第2の領域とを有し、
前記第2の領域が、少なくとも一部においてタングステン又はモリブデンを含み、
前記ニッケルを含む導電層の厚み方向において、前記第1の領域の内側端部分が前記第2の領域の全体よりも前記基材粒子側に位置しており、前記第2の領域の外側端部分が前記第1の領域の全体よりも前記基材粒子側とは反対側に位置している、導電性粒子。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、おおむね、この出願の請求項1ないし14に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献等に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2003-197028号公報
引用文献2.国際公開第2013/094637号
引用文献3.特開2011-29180号公報
第4 引用文献に記載された事項等
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「導電性微粒子、導電性微粒子の製造方法及び異方性導電材料」に関して、おおむね次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
・「【請求項2】 樹脂微粒子と前記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなる導電性微粒子であって、前記金属被覆層は、ニッケルを主成分としホウ素を含有する層と、ニッケルを主成分としリンを含有する層とを有するものであることを特徴とする導電性微粒子。」
・「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に鑑み、高い導電性を有し、経時的な導電性の変化が少なく、かつ、圧縮荷重をかけても樹脂微粒子から被覆層が剥離、破壊されない耐圧縮性に優れた信頼性の高い導電性微粒子、導電性微粒子の製造方法及び異方性導電材料を提供することを目的とする。」
・「【0019】本発明の導電性微粒子における上記金属被覆層において、ニッケル-ホウ素合金は高い導電性に寄与し、ニッケル-リン合金は樹脂微粒子への優れた密着性及び可とう性に寄与している。本発明2の導電性微粒子では、更に、これらの合金を含有する層同士による相乗的な効果が発現されることにより、高い導電性、優れた密着性及び耐圧縮性に寄与する可とう性を得られるものと考えられる。」
・「【0020】上記ニッケルを主成分とする層は、ホウ素やリン以外に、ニッケルと共に共析する他の金属を含有していてもよい。上記ニッケルと共に共析する他の金属としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、モリブデン、パラジウム、錫、タングステン、レニウム等が挙げられる。」
・「【0021】上記ニッケルを主成分とする層全体におけるホウ素及びリンの含有率の好ましい下限はホウ素が0.05重量%、かつ、リンが0.5重量%であり、上限はホウ素が4重量%、かつ、リンが10重量%である。ホウ素の含有率が0.05重量%未満又はリンの含有率が0.5重量%未満であると、導電性は向上するものの可とう性が損なわれ、金属被覆層の剥離、破壊による劣化が起こりやすくなる。ホウ素の含有率が4重量%又はリンの含有率が10重量%を超えると、可とう性は向上するものの導電性が低下することがある。より好ましい下限は、ホウ素が0.1重量%、かつ、リンが1重量%であり、上限はホウ素が2重量%、かつ、リンが5重量%であり、この範囲においてホウ素とリンとの相乗効果が最も効果的に発現する。」
・「【0022】本発明1の導電性微粒子において、ニッケルを主成分としホウ素とリンとを含有する層は、例えば、図1の形態をとることができる。本発明2の導電性微粒子において、上記ニッケルを主成分としホウ素を含有する層と、ニッケルを主成分としリンを含有する層とは、どちらの層が外層とされてもよく、例えば、図2や図3の形態をとることができる。ニッケルを主成分としホウ素を含有する層を外層とした場合には、特に優れた導電性が得られ、ニッケルを主成分としリンを含有する層を外層とした場合には、特に優れた可とう性が得られるので、用いられる導電材料において要求される仕様に合わせて設計することができる。」
・「【0051】(実施例1)平均粒子径が5.0μm、粒子径の変動係数が4.9%、10%K値が4900MPa、回復率が60%であるジビニルベンゼンを主成分とする樹脂微粒子(積水化学工業社製、ミクロパールSP-205)10gを粉末メッキ用プレディップ液(奥野製薬社製)に分散させ、30℃で30分間攪拌することによりエッチングした。
【0052】続いて、エッチングされた樹脂微粒子を水洗して、パラジウム触媒(アトテックジャパン社製、ネオガント834)を8重量%含有するパラジウム触媒化液100mL中に添加し30℃で30分間攪拌した後、樹脂微粒子を濾取し、水洗した。この樹脂微粒子をpH6.0に調整された0.5重量%のジメチルアミンボラン液に添加し、パラジウムにより活性化された樹脂微粒子を得た。
【0053】パラジウムにより活性化された樹脂微粒子に蒸留水500mLを加え、超音波処理機を用いて充分に分散させて懸濁液とした。この懸濁液を50℃で攪拌しながら、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物20g/L、ジメチルアミンボラン2.5g/L、クエン酸50g/LからなるpHを7.5に調整した無電解メッキ液Aを徐々に添加し、樹脂微粒子の無電解ニッケルメッキを行った。この際、無電解ニッケルメッキ中の樹脂微粒子を経時的にサンプリングしてニッケルを主成分とする層の厚さを測定し、厚さが0.10μmになった時点で無電解メッキ液Aの添加を止め、樹脂微粒子を濾取、水洗し、アルコール置換した後、真空乾燥し、導電性微粒子1を得た。なお、ニッケルを主成分とする層の厚さtNiは下記式(2)にて計算した。
tNi(μm)=(ρP×WNi×D)/{6×ρNi×(100-WNi)}
(2)
ρP:樹脂微粒子の比重
ρNi:ニッケルを主成分とする層の比重
WNi:導電性微粒子中のニッケルの含有率(重量%)
D:樹脂微粒子の平均粒子径(μm)
【0054】(定量分析)得られた導電性微粒子1中に含有されるニッケル、ホウ素及びリンの量をIPC発光分析機にて分析し、ニッケルの含有量に対するホウ素の含有率(B/Ni)、ニッケルの含有量に対するリンの含有率(P/Ni)を算出し、結果を表1に示した。
【0055】(導電性測定)得られた導電性微粒子1をエポキシ系接着剤(古川化工社製、SE-4500)に5重量%の割合で混合し、ホモジナイザーで充分に分散させて異方性導電接着剤Xを作製した。この異方性導電接着剤Xにφ4.5μmのガラスファイバー(GF)を5重量%の割合で加え、ホモジナイザーで充分に分散させ、異方性導電接着剤Yを作製した。これら2種類の異方導電接着剤を幅300μmでITO電極が直角に交差するように重ね合わせた。これに2.9×106N/m2の圧力を加えながら160℃で30分間加熱して圧着硬化させた後、ITO電極が交差する部分について接触抵抗値を4端子法により測定した。ITO電極が交差する部分に存在する導電性微粒子1の数を光学顕微鏡にて計数し、得られた接触抵抗値を導電性微粒子1の数で除したものを導電性微粒子1個当たりの接触抵抗値とした。接触抵抗値は小さいほど導電性が高いことを意味する。この測定を5つの試料について行い、平均値を算出し、結果を表1に示した。」
・「【0059】(実施例4)実施例1で作製したパラジウムにより活性化された樹脂微粒子に蒸留水500mlを加え、超音波処理機を用いて充分に分散させて懸濁液とした。この懸濁液を50℃で攪拌しながら、硫酸ニッケル6水和物50g/L、ジメチルアミンボラン5g/L、クエン酸50g/LからなるpHを7.5に調整した無電解メッキ液Cを徐々に添加し、樹脂微粒子の無電解ニッケルメッキを行った。この際、無電解ニッケルメッキ中の樹脂微粒子を経時的にサンプリングしてニッケルを主成分とする層の厚さを測定し、厚さが0.05μmになった時点で無電解メッキ液Cの添加を止め、代りに、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物40g/L、クエン酸50g/LからなるpHを7.5に調整した無電解メッキ液Dを徐々に添加して樹脂微粒子の無電解ニッケルメッキを継続した。同様にニッケルを主成分とする層の厚さを測定し、厚さが合わせて0.10μmになった時点で無電解メッキ液Dの添加を止めた。続いて、無電解ニッケルメッキされた樹脂微粒子を濾取、水洗し、アルコール置換した後、真空乾燥し、導電性微粒子4を得た。得られた導電性微粒子4につき、実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。」
・「【0061】(実施例6)先に無電解メッキ液Dを添加し、その後から無電解メッキ液Cを添加したこと以外は実施例4と同様にして導電性微粒子6を得た。得られた導電性微粒子6につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。」
・「【0068】
【表1】
」
・「【図面の簡単な説明】
・・・(略)・・・
【図2】ニッケルを主成分としホウ素を含有する層を外層とした本発明2に係る導電性微粒子の一実施形態を示した模式図である。
・・・(略)・・・
【符合の説明】
1 樹脂微粒子
2 ニッケルを主成分としホウ素とリンとを含有する層
3 ニッケルを主成分としホウ素を含有する層
4 ニッケルを主成分としリンを含有する層
5 金からなる層」
・「【図2】
」
(2)引用発明
引用文献1の「(実施例6)先に無電解メッキ液Dを添加し、その後から無電解メッキ液Cを添加したこと以外は実施例4と同様にして微粒子6を得た。」(【0061】)という記載によると、実施例6における「層3」と「層4」の厚みは、実施例4における「層3」と「層4」の厚みと同じであり、「厚さが0.05μmになった時点で無電解メッキ液Cの添加を止め、代りに、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物40g/L、クエン酸50g/LからなるpHを7.5に調整した無電解メッキ液Dを徐々に添加して樹脂微粒子の無電解ニッケルメッキを継続した。同様にニッケルを主成分とする層の厚さを測定し、厚さが合わせて0.10μmになった時点で無電解メッキ液Dの添加を止めた。」(【0059】)という記載によると、いずれも「0.05μm」であるといえる。
以上を踏まえて、引用文献1に記載された事項を実施例6について整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「平均粒子径が5.0μmの樹脂微粒子1と、前記樹脂微粒子1の表面に形成されたニッケルを含む金属被覆層とを備え、
前記ニッケルを含む金属被覆層が、厚さ0.05μmの、ニッケルを主成分とし、リンを導電性微粒子6中に含有されるニッケルに対して4.3重量%含有する層4と、厚さ0.05μmの、ニッケルを主成分とし、ホウ素を導電性微粒子6中に含有されるニッケルに対して0.4重量%含有する層3とを有し、
上記層4が内層であり、上記層3が外層である、導電性微粒子6。」
2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、「導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体」に関して、おおむね次の記載がある。
・「[請求項1] 基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを有し、
前記導電層が、ニッケルと、タングステン及びモリブデンの内の少なくとも1種の金属成分とを含み、
前記導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量が60重量%以上であり、
前記導電層の外表面から厚み方向に内側に向かって5nmの厚みの導電層部分100重量%中、タングステン及びモリブデンの合計の含有量が5重量%を超える、導電性粒子。
・・・(略)・・・
[請求項7] 前記導電層がボロンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性粒子。
・・・(略)・・・
[請求項10] 前記導電層が外表面に突起を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の導電性粒子。」
・「[0009] 本発明の目的は、電極間を接続して接続構造体を得た場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができ、更に高温高湿下での接続抵抗の上昇を抑制できる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。」
・「[0061] 上記導電層Xは、ニッケルに加えて、タングステン及びモリブデンの内の少なくとも1種の金属成分を含む。・・・(略)・・・
[0066] 上記導電層Xの全体100重量%中のタングステン及びモリブデンの合計の含有量(金属成分の含有量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、より一層好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、更に一層好ましくは1重量%以上、特に好ましくは5重量%を超え、最も好ましくは10重量%以上である。タングステン及びモリブデンの合計の含有量が上記下限以上であると、導電層の外表面の硬さがより一層高くなる。このため、電極や導電層の表面に酸化被膜が形成されている場合に、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を効果的に排除でき、接続抵抗を低くすることができ、かつ得られる接続構造体の耐衝撃性を高めることができる。さらに、タングステン及びモリブデンの合計の含有量が上記下限以上であると、導電層の外表面の磁性が弱くなり、複数の導電性粒子が凝集し難くなる。このため、電極間の短絡を効果的に抑制できる。」
・「[0098] 本発明に係る導電性粒子は、表面に突起を有することが好ましい。上記導電層は、外表面に突起を有することが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、導電性粒子の導電層の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁物質を有する場合、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて異方性導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
[0099] 上記突起は複数であることが好ましい。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「平均粒子径が5.0μmの樹脂微粒子1」は本願発明における「基材粒子」に相当し、以下、同様に、「金属被覆層」は「導電層」に、「導電性微粒子6」は「導電性粒子」に、それぞれ相当する。
引用発明における「厚さ0.05μmの、ニッケルを主成分とし、リンを導電性微粒子6中に含有されるニッケルに対して4.3重量%含有する層4」は本願発明における「ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%である第1の領域」と、ニッケルとリンとを含む領域という限りにおいて一致する。
引用発明における「厚さ0.05μmの、ニッケルを主成分とし、ホウ素を導電性微粒子6中に含有されるニッケルに対して0.4重量%含有する層3」は本願発明における「ニッケルとボロンとを含み、かつボロンの含有量が0.5重量%である第2の領域」と、ニッケルとボロンとを含む領域という限りにおいて一致する。
引用発明における「上記層4が内層であり、上記層3が外層である」は本願発明における「前記ニッケルを含む導電層の厚み方向において、前記第1の領域の内側端部分が前記第2の領域の全体よりも前記基材粒子側に位置しており、前記第2の領域の外側端部分が前記第1の領域の全体よりも前記基材粒子側とは反対側に位置している」と、前記ニッケルを含む導電層の厚み方向において、前記ニッケルとリンとを含む領域の内側端部分が前記ニッケルとボロンとを含む領域の全体よりも前記基材粒子側に位置しており、前記ニッケルとボロンとを含む領域の外側端部分が前記ニッケルとリンとを含む領域の全体よりも前記基材粒子側とは反対側に位置しているという限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置されており、かつニッケルを含む導電層とを備え、
前記ニッケルを含む導電層が、ニッケルとリンとを含む領域と、ニッケルとボロンとを含む領域とを有し、
前記ニッケルを含む導電層の厚み方向において、前記ニッケルとリンとを含む領域の内側端部分が前記ニッケルとボロンとを含む領域の全体よりも前記基材粒子側に位置しており、前記ニッケルとボロンとを含む領域の外側端部分が前記ニッケルとリンとを含む領域の全体よりも前記基材粒子側とは反対側に位置している、導電性粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1>
本願発明は、「導電層の外表面に複数の突起を有し」と特定されているのに対して、引用発明は、金属被覆層(導電層)の外表面に「複数の突起」を有していない点。
<相違点2>
ニッケルとリンとを含む領域に関し、本願発明においては、「ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%以上である第1の領域」と特定されているのに対し、引用発明においては、「厚さ0.05μmの、ニッケルを主成分とし、リンを導電性微粒子6中に含有されるニッケルに対して4.3重量%含有する層4」と特定されている点。
<相違点3>
ニッケルとボロンとを含む領域に関し、本願発明においては、「ニッケルとボロンとを含み、かつボロンの含有量が0.5重量%以上である第2の領域」と特定されているのに対し、引用発明においては、「厚さ0.05μmの、ニッケルを主成分とし、ホウ素を導電性微粒子6中に含有されるニッケルに対して0.4重量%含有する層3」と特定されている点。
<相違点4>
ニッケルとボロンとを含む領域について、本願発明においては、「少なくとも一部においてタングステン又はモリブデンを含み」と特定されているのに対して、引用発明においては、そのような特定事項を有しない点。
第6 判断
以下検討する。
1 相違点1について
引用文献2([0098]及び[0099])には、導電性粒子の表面に突起を設けることによって、電極表面及び導電性粒子の導電層の表面に形成された酸化被膜を効果的に排除し、電極間の接続抵抗を低くすることができること並びに突起は複数であることが好ましいことが記載されている。
また、引用発明が解決しようとする課題として、電極間の接続抵抗を低くすることは、自明である(例えば、引用文献1の【0007】参照。)。
しかも、引用文献1には、引用発明において、突起を設けることについて、阻害要因となるような記載はない。
したがって、引用発明において、自明な課題である電極間の接続抵抗を低くするために、引用文献2に記載された上記事項を適用して、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
引用発明において、「厚さ0.05μmの、ニッケルを主成分とし、リンを導電性微粒子6中に含有されるニッケルに対して4.3重量%含有する層4」における「リン」の含有量は、「導電性微粒子6中に含有されるニッケル」に対するものであるから、「層4」に含まれるニッケルに対する量に対してであれば、5重量%以上であることは明らかである(「4.3重量%」は、「層3」と「層4」の両方に含まれるニッケルの量に対する比であるから、「層4」だけに含まれるニッケルの量に対する比は約2倍になる。)。
したがって、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点2が実質的な相違点であるとしても、引用文献1の【0021】の記載を考慮すれば、引用発明において、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
3 相違点3について
引用発明において、「厚さ0.05μmの、ニッケルを主成分とし、ホウ素を導電性微粒子6中に含有されるニッケルに対して0.4重量%含有する層3」における「ホウ素」の含有量は、「導電性微粒子6中に含有されるニッケル」に対するものであるから、「層3」に含まれるニッケルに対する量に対してであれば、0.5重量%以上であることは明らかである(「0.4重量%」は、「層3」と「層4」の両方に含まれるニッケルの量に対する比であるから、「層3」だけに含まれるニッケルの量に対する比は約2倍になる。)。
したがって、相違点3は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点3が実質的な相違点であるとしても、引用文献1の【0021】の記載を考慮すれば、引用発明において、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
4 相違点4について
引用文献2([0061]ないし[0066])には、タングステン及びモリブデンの内の少なくとも1種を含有させることにより、導電層の外表面の硬さをより一層高くして、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を効果的に排除して、電極間の接続抵抗を低くすることができることが記載されている。
また、引用文献1(【0020】)には、タングステン又はモリブデンを含有してもよい旨記載されている。
したがって、引用発明において、自明の課題である電極間の接続抵抗を低くするために、引用文献2に記載された上記事項を適用して、相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
5 効果について
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項からみて、格別顕著なものとはいえない。
この点、請求人は、審判請求書において、本願発明は「前記導電層の外表面に複数の突起を有」するという構成、「前記第2の領域が、少なくとも一部においてタングステン又はモリブデンを含」むという構成、「前記ニッケルを含む導電層が、ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%以上である第1の領域と、ニッケルとボロンとを含み、かつボロンの含有量が0.5重量%以上である第2の領域とを有する」という構成及び「前記ニッケルを含む導電層の厚み方向において、前記第1の領域の内側端部分が前記第2の領域の全体よりも前記基材粒子側に位置しており、前記第2の領域の外側端部分が前記第1の領域の全体よりも前記基材粒子側とは反対側に位置している」という構成を採用することにより、「酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗を低く維持することができる」(【0008】、【0024】及び【0030】等)という格別顕著な効果を奏する旨主張する。
しかし、請求人の上記主張は採用できない。
すなわち、本願発明は、タングステン又はモリブデンの含有量について何ら特定しておらず、本願の発明の詳細な説明において、請求人が主張する上記効果が奏されることを確認しているのは、タングステンが10重量%含有された実施例2、モリブデンが9重量%含有された実施例11及びタングステンが16重量%含有された実施例12だけである。
また、本願の発明の詳細な説明には、第2の領域に含まれるタングステン又はモリブデンのどのような作用機序により、上記効果がもたらされるのかを説明する記載はない。
さらに、第2の領域に含まれるタングステン又はモリブデンが、それらの含有量にかかわらず含有されてさえいれば、上記効果がもたらされることが当業者の技術常識であったともいえない。
したがって、上記効果は、第2の領域に含まれるタングステン又はモリブデンの含有量が具体的に特定された実施例のような場合のものが奏する効果であって、本願発明において、すべからく発揮される効果とはいえない。
6 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 結語
上記第6のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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