特許拒絶査定不服審判
2018-015364
局在型表面プラズモン共鳴センシングチップおよび局在型表面プラズモン共鳴センシングシステム
- 審判番号
- 2018-015364
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-540200外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月20日
- 審決日
- 2019年09月25日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】国立研究開発法人産業技術総合研究所
- 【請求人代理人】特許業務法人筒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-540200「局在型表面プラズモン共鳴センシングチップおよび局在型表面プラズモン共鳴センシングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月11日国際公開、WO2016/021516〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)7月31日(優先権主張 平成26年8月4日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年2月22日付けで拒絶理由が通知され、同年4月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月6日付け(同年同月21日送達)で拒絶査定されたところ、同年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~13に係る発明は、平成30年4月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「平板状のベースと、
赤道面で扁球を二等分した一方の立体である半扁球のような形状を備え、前記半扁球の分割面が前記ベースの表面に面するように配置された複数の突起部と、
前記複数の突起部の表面を覆う金属層と、
を有し、
前記複数の突起部は、前記分割面の直径方向および前記直径方向と垂直な方向にそれぞれ一定の周期となるように配置され、
前記分割面の直径Dに対する前記突起部の高さHの比H/Dが0.1以上0.5未満である局在型表面プラズモン共鳴センシングチップ。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の内容を含むものである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2011-506916号公報
第4 引用文献1の記載事項及び引用発明1の認定
1 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2011-506916号公報(引用文献1)には、次の事項が記載されていると認められる(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(1)記載事項
ア「【0014】
「回転楕円体」又は「回転楕円体状」は、球体のようではあるが完全に丸くはなく、円又は楕円の弧状のプロファイルを有し得る形体を指す。
【0015】
ロールツーロール加工ラインのような低コストの加工技術を用いて達成可能な、マイクロフィーチャを有するアレイを作製する方法が提供される。同方法は、球体状、回転楕円体状、及び円筒状のフィーチャを有するマイクロフィーチャを含むアレイを提供することができる。提供される方法により作製したアレイは、例えば光学用途のマイクロレンズアレイとして、(表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強蛍光、その他の表面増強光学技術のような)分光表面プラズモン効果に依存する分析のための基材として、また生物学的用途のためのマイクロ流体アレイを製造するために使用可能である。本開示で提供する方法は、型を形成するステップと、型を使用して複数の複製を形成するステップと、を含む。提供される複製は、元のアレイと同様の用途に用いることができる。」
イ「【0020】
基材は複数の離散的な第1のマイクロフィーチャを含み得る。離散的な第1のマイクロフィーチャは、パターン状であり得る。パターンはアレイを形成し得る。本開示において用語「マクロフィーチャ」は、マイクロメートルオーダー(約1μm~約1000μm又は更に大きい)であり得るフィーチャ及び更にナノメートルオーダー(約1nm~約1000nm)であり得るフィーチャを含むものと理解すべきである。この寸法はそのアレイ内のフィーチャの平均最小寸法であり、例えば円柱状のフィーチャであれば直径であり得る。本開示の第1のマイクロフィーチャは1000μm未満、500μm未満、100μm未満、10μm未満、1μm未満、0.1μm(100nm)未満、又は更に小さい最大幅(平均最小寸法)を有し得る。アレイはマイクロフィーチャの規則的な(繰り返し)配列、マイクロフィーチャの無規則な配列、マイクロフィーチャの異なる規則的又は無規則な配列の組み合わせ、又はマイクロフィーチャのいかなる配列をも含み得る。アレイは単一のマイクロフィーチャを含み得る。マイクロフィーチャは離散的、又は分離したフィーチャであり得る。マイクロフィーチャを含むパターンは基材中に直接、又は付加層中にに形成し得る。加えて、パターンは基材の一部として形成することもできる。
【0021】
離散的な第1のマイクロフィーチャはマイクロポスト及びマイクロリッジを含み得る。代表的マイクロポストは本開示で高さと称する、実質的に基材に垂直な1次元(z次元)と、これよりはるかに小さい2つの次元(x次元及びy次元)を有し得る。小さなほうのx次元及びy次元は、本開示ではマイクロフィーチャの幅と称する。例えば、x次元及びy次元が等しければ、マイクロポストの横断面(又は底面)は円形であり得る。横断面が円形でz次元に沿って変化しなければ、マイクロポストは円筒状である。また、x次元及びy次元が互いに等しいがz方向に沿って変化することもあり得る。この場合、マイクロポストは円錐状である。他の実施例では、マイクロポストの横断面は楕円であり得る。また、例えばマイクロポスが三角形、正方形、五角形などの多角形の横断面を有し得ることも考えられる。マイクロポストの横断面がz方向に沿って変化しなければ、マイクロポストはプリズムの形状を有し得る。要するに、マイクロポストが長い寸法を1つ有する限り、いずれの形状のマイクロポストも本開示の意図するところである。」
ウ「【0034】
提供されるアレイは、コーティングされた、第1のプロファイルとは実質的に異なる第2のプロファイルを有する第2のマイクロフィーチャを含む。実質的に異なるとは、コーティングされた第2のマイクロ構造(第2のプロファイル)が、第1のプロファイルと一致しないことを意味する。加えて、第2のプロファイルは第1のプロファイルとは基本的に同じ形状を有しないか、又は基本的に同じ形状を有するものとはみなされない。実施形態によっては、第2のプロファイルは曲面状であるか、第1のプロファイルより大きい曲率半径を有する。例えば、第1のプロファイルは矩形のフィーチャを有し第2のプロファイルは曲面状(円形、楕円形、その他)のフィーチャを有し得る。別の実施形態では、曲面は円形又は楕円形であり、第1のプロファイル上に材料を堆積する前には第1のプロファイルの平坦部が位置していた場所に、配置される。曲線状のプロファイルは凸面、又は凹面であり得る。凸曲面プロファイルの例には球面及び回転楕円面(楕円体状)が挙げられる。第1のマイクロフィーチャの少なくとも1つは、同フィーチャの最小寸法の少なくとも5パーセント、少なくとも8パーセント、少なくとも10パーセント、少なくとも15パーセント、又は更に少なくとも20パーセントの長い寸法を有し得る。
【0035】
第2のマイクロフィーチャの少なくとも1つは実質的に平面的な表面を含まない。例えば、第2のマイクロフィーチャの少なくとも1つは球体状又は回転楕円体状の表面を有し得る。多くの実施形態では、第2のマイクロフィーチャの全てではないにしても、ほとんどは、実質的に平面的な表面を含まない。球面及び回転楕円面の表面は、化学線に対して透明であればレンズエレメントとして用い得る。すなわち、提供する方法はマイクロレンズアレイの作製に用い得る。提供する方法は第2のマイクロフィーチャが少なくとも1つの凸曲面を有することができ、同凸面が、少なくとも1つの横断方向に曲率を有し、基材側に局部的曲率中心(焦点)を有する構造として画される、第2のマイクロフィーチャのアレイの作製に用い得る。実施形態によっては、本発明のフィーチャのアレイはまた、凹面である曲面状の表面を少なくとも1つ含むことができる。例えば、同表面は、少なくとも1つの横断方向に曲率を有し、基材とは反対側に局部的曲率中心を有し得る。これらのアレイは、マイクロスフェロイド(例えばマイクロスフィアを含む)のアレイであり得る。別の実施形態では、アレイは、回転楕円体状の頭部を備えたマイクロリッジのアレイであり得る。マイクロスフィア上の曲面が凸面であって可視光に透明な材料からなる場合には、アレイはマイクロレンズのアレイとなり得る。曲面がコーティングされて放射線を反射する場合には、マイクロスフェロイドのアレイは、放射線を集束させ(凹面)又は散乱させ(凸面)るマイクロレンズのアレイとなり得る。マイクロフィーチャの第1のプロファイル及び/又は堆積プロセスの条件(時間、温度、方法)を変化させることにより、第2のプロファイルの寸法及び形状を制御できることが見出されている。」
エ「【0045】
ここに開示する実施形態のいくつかは、図を参照することによって、よりよく理解され得る。図1A及び1Bは複数の離散的なマイクロフィーチャを含む基材の2つの実施形態の図である。図1Aは基材上の微小なマイクロポストの矩形アレイを示す。図1Bはマイクロリッジのアレイを示す。図2A~2Fは本開示の方法の一実施形態を例示する。図2Aは基材201上のマイクロポスト202のアレイである。先に述べたように、多くの材料が、基材201又はマイクロポスト202のいずれかに有用であり得る。マイクロポスト202のアレイのプロファイルは矩形である。図2Bは、図2Aに示したマイクロポスト202上に材料203を堆積し、第1のプロファイルとは異なる第2のプロファイルを有するマイクロポストのアレイマイクロポストのアレイを形成した図である。図2Bでは、表面のプロファイルは球面部を含む。図2Cはマイクロスフィアアレイ上に第1の複製材料204を備えた、図2Bの少なくとも1表面を含む、マイクロポストのアレイの図である。第1の複製材料は次いで硬化され、アレイから分離されて、図2Dに示すように型204を形成し得る。次いで図2Eに示すように型204に第2の複製材料206を充填することにより、第2の複製材料を硬化させた後、複製206が形成できる。この複製206を図2Fに示す。図3A及び3Bは、型の2つの実施形態の顕微鏡写真であり、提供される方法を用いて複合回転楕円体形状を作製し得ることを示している。
【0046】
提供される方法を用いることにより、多様なアレイが作製できる。例えば、本開示で示した方法により、多様なパターンのマイクロスフィアのアレイを構成、成形、及び複製することができる。光学的に透明な材料を用いることで、本開示の方法によりマイクロレンズアレイが得られる。光学的に透明な材料としては可視光透過性の熱硬化性ポリマー、例えばアクリルポリマー、ポリカーボネート、ウレタンアクリレート、エポキシなどを挙げることができる。光学的に透過性の熱可塑性性材料もまた、マイクロレンズアレイの形成に用い得る。これらの材料としては例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリオレフィン、ポリエチレン、アクリル酸ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、アイオノマー、ポリエーテルエーテルケトンたなどのケトン、ポリアミド、ポリエステル、スチレンブロックコポリマー、その他、当業者に周知のものを挙げることができる。アレイのマイクロレンズは、上述したように球状又は回転楕円体状であり得る。マイクロレンズのアレイは、例えばバーチャル画像、その他の光学用途に有用であり得る。反射性マイクロスフィアアレイは、例えば表面増強ラマン分光法(SERS)その他の、分光表面プラズモン効果を用いる分析技術に有用であり得る。このような分析技術には、提供される方法によって作製された、金属層を含む反射性アレイを提供するステップと、少なくとも上記金属層の一部分にごく近接させて被分析物を提供するステップと、この被分析物について表面増強ラマン分光法を適用するステップと、を含む方法が挙げられる。アレイは、元のアレイ又は複製をはじめ、提供される方法のいずれによって作製したアレイであってもよい。アレイが複製であって非金属からなる場合は、複製を金属層でコーティングしてから、少なくとも金属層の一部分にごく近接させて被分析物を提供することができる。被分析物は、SERSにより分析可能ないずれの材料又は材料の混合物であってもよい。これには、例えば有機化合物、有機化合物の混合物、無機化合物、ポリマー、ポリマー/モノマー混合物、金属、合金、有機金属、及び生体分子をはじめとする多様な材料が挙げられる。
【0047】
(省略)
【実施例】
【0048】
実施例1-ナノポストのアレイをオーバーコーティングすることによるマイクロスフィアのアレイ
Siウェハ、ガラス、及びプラスチック基材上で、出力300mWの244nm周波数二倍化アルゴンレーザー(Santa Clara,CAのCoherent Inc.より入手可能なSabre FreDレーザー)を用いた干渉リソグラフィによって、ポジ型フォトレジスト(Marlborough,MAのRohm and Haas Electronic Materials Inc.から入手可能なShipley UV5 レジスト)中にフォトレジスト(PR)ポスト構造を作製した。直径240nm、ピッチ480nmのポスト構造を有するアレイが得られた。このポスト構造のアレイにスパッタリングにより堆積した110nmのインジウムスズ酸化物(ITO)、蒸着により堆積した390nmの有機発光ダイオード(OLED)、及び
同じく蒸着により堆積した250nmのAlを含む750nmの材料を被覆した。コーティング後、きわめて密集したマイクロスフィア構造が形成された。図4Aは実施例1のマイクロスフィアアレイの顕微鏡写真である。図4Bはこのマイクロスフィアアレイの一部を拡大した画像である。図示のように、きわめて密集したマイクロスフィア構造が形成された。マイクロスフィアの寸法と形状ははじめのポストの寸法、高さ、密度、又はオーバーコーティング工程におけるパラメータを変化させることにより制御することができる(実施例2及び3を参照)。」
オ「【0060】
脱気した、上述のSylgard 187 PDMS混合物をPDMS型上に注ぎ、更に30分間脱気してから、ホットプレート上において、80℃で1時間硬化させた。硬化後、PDMS複製はPDMS型から容易に剥離した。型の高品質マイクロスフィア複製が作製された。図5A及び5Bは、実施例4のPEMS複製の顕微鏡写真であり、そのうち図5Aは60度の視角での斜視図、図5Bは同じアレイの平面図である。」
カ 図2から図5まで
(2)引用文献1に記載された技術的事項
ア アレイ
【0020】には、「本開示において用語「マクロフィーチャ」は、マイクロメートルオーダー(約1μm~約1000μm又は更に大きい)であり得るフィーチャ及び更にナノメートルオーダー(約1nm~約1000nm)であり得るフィーチャを含むものと理解すべきである。」こと、「アレイはマイクロフィーチャの規則的な(繰り返し)配列」「を含み得る」ことが記載されている。
よって、【0020】から、「アレイはマイクロフィーチャ(約1nm~約1000μmであり得るフィーチャ)の規則的な(繰り返し)配列を含む」との技術事項が読み取れる。
イ 用途
【0015】には、「球体状、回転楕円体状」「のフィーチャを有するマイクロフィーチャを含むアレイ」は、「(表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強蛍光、その他の表面増強光学技術のような)分光表面プラズモン効果に依存する分析のための基材として」「使用可能である」ことが記載されている。
よって、【0015】から、「球体状、回転楕円体状のフィーチャを有するマイクロフィーチャを含むアレイは、(表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強蛍光、その他の表面増強光学技術のような)分光表面プラズモン効果に依存する分析のための基材として使用可能である」との技術事項が読み取れる。
ウ 金属層
【0046】には、「分光表面プラズモン効果を用いる分析技術に有用であ」るアレイは、「金属層を含む反射性アレイ」であり、「アレイが複製であって非金属からなる場合は、複製を金属層でコーティングしてから、少なくとも金属層の一部分にごく近接させて被分析物を提供する」ことが記載されている。
よって、【0046】から、「分光表面プラズモン効果を用いる分析技術に有用なアレイは、金属層でコーティングされている」との技術事項が読み取れる。
エ マイクロフィーチャ
(ア)【0045】には、
「図2Bは、図2Aに示したマイクロポスト202上に材料203を堆積し、第1のプロファイルとは異なる第2のプロファイルを有するマイクロポストのアレイマイクロポストのアレイを形成した図である。図2Bでは、表面のプロファイルは球面部を含む。」、「図3A及び3Bは、型の2つの実施形態の顕微鏡写真であり、提供される方法を用いて複合回転楕円体形状を作製し得ることを示している。」との記載がある。
(イ)【0048】には、
「図4Aは実施例1のマイクロスフィアアレイの顕微鏡写真である。図4Bはこのマイクロスフィアアレイの一部を拡大した画像である。図示のように、きわめて密集したマイクロスフィア構造が形成された。マイクロスフィアの寸法と形状ははじめのポストの寸法、高さ、密度、又はオーバーコーティング工程におけるパラメータを変化させることにより制御することができる」との記載がある。
(ウ)【0060】には、
「図5A及び5Bは、実施例4のPEMS複製の顕微鏡写真であり、そのうち図5Aは60度の視角での斜視図、図5Bは同じアレイの平面図である。」との記載がある。
(エ)そして、図2Bの「球面部」、図3A及び3Bの「回転楕円体形状」、図4A及び4Bの「マイクロスフィア構造」、図5A及び5Bの「マイクロスフィア」が図示又は、顕微鏡写真で示されており、「球面部」(【0015】の「球体状」)、「回転楕円体形状」及び「マイクロスフィア」とされるマイクロフィーチャは、平面板状の部材に設けられた、「球体状」又は「回転楕円体形状」の半分のような形状の複数の突起部であるように見て取れる。
(オ)よって、【0015】、【0045】、【0048】、【0060】及び図2から図5までの記載から、
「マイクロフィーチャは、平面板状の部材に設けられた、「球体状」又は「回転楕円体形状」の半分のような形状の複数の突起部である」との技術事項が読み取れる。
2 上記1によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「アレイは、マイクロフィーチャ(約1nm~約1000μmであり得るフィーチャ)の規則的な(繰り返し)配列を含むものであり、
マイクロフィーチャは、平面板状の部材に設けられた、「球体状」又は「回転楕円体形状」の半分のような形状の複数の突起部であり、
球体状、回転楕円体状のフィーチャを有するマイクロフィーチャを含むアレイは、(表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強蛍光、その他の表面増強光学技術のような)分光表面プラズモン効果に依存する分析のための基材として使用可能であり、
分光表面プラズモン効果を用いる分析技術に有用なアレイは、金属層でコーティングされている、
アレイ。」
第5 本願発明と引用発明1との対比
1 本願発明と引用発明1とを対比すると、以下のとおりとなる。
(1)引用発明1の「平板状の部材」は、本願発明の「平板状のベース」に相当する。
(2)引用発明1の「平板状の部材に設けられた、「球体状」又は「回転楕円体形状」の半分のような形状の複数の突起部」において、「回転楕円体形状」は、「扁球」であり、「回転楕円体形状の半分」は、「赤道面で扁球を二等分した一方の立体である半扁球」であるといえる。
よって、引用発明1の「平板状の部材に設けられた」「「回転楕円体形状」の半分のような形状の複数の突起部」は、本願発明の「赤道面で扁球を二等分した一方の立体である半扁球のような形状を備え、前記半扁球の分割面が前記ベースの表面に面するように配置された複数の突起部」に相当する。
(3)引用発明1において、「分光表面プラズモン効果を用いる分析技術に有用なアレイは、金属層でコーティングされている」から、引用発明1の「金属層」は、本願発明の「前記複数の突起部の表面を覆う金属層」に相当する。
(4)引用発明1の「マイクロフィーチャの規則的な(繰り返し)配列」は、引用文献1の図や顕微鏡写真を考慮すると、本願発明の「複数の突起部は、前記分割面の直径方向および前記直径方向と垂直な方向にそれぞれ一定の周期となるよう」な「配置」に相当する。
(5)表面増強ラマン共鳴は、局在型表面プラズモン共鳴の一用途であるから、引用発明1の「(表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強蛍光、その他の表面増強光学技術のような)分光表面プラズモン効果に依存する分析のための基材」は、局在型表面プラズモン共鳴を用いた分析のための基材であるといえる。
よって、引用発明1の「分光表面プラズモン効果に依存する分析のための基材として使用可能であ」る「アレイ」は、本願発明の「局在型表面プラズモン共鳴センシングチップ」に相当する。
2 一致点及び相違点
(1)一致点
上記1によれば、本願発明と引用発明1とは、以下の点において一致する。
「平板状のベースと、
赤道面で扁球を二等分した一方の立体である半扁球のような形状を備え、前記半扁球の分割面が前記ベースの表面に面するように配置された複数の突起部と、
前記複数の突起部の表面を覆う金属層と、
を有し、
前記複数の突起部は、前記分割面の直径方向および前記直径方向と垂直な方向にそれぞれ一定の周期となるように配置された、
局在型表面プラズモン共鳴センシングチップ。」
(2)相違点
本願発明と引用発明1とは、以下の点で相違する。
本願発明は、「前記分割面の直径Dに対する前記突起部の高さHの比H/Dが0.1以上0.5未満である」のに対し、引用発明1のマイクロフィーチャ(突起部)は、回転楕円体状のフィーチャを有するものの、回転楕円体状の直径と高さの比が不明である点。
第6 判断
1 相違点について
引用文献1には、「球体状、回転楕円体状、及び円筒状のフィーチャを有するマイクロフィーチャを含むアレイ」(【0015】等)との記載があり、「回転楕円体状」以外に、「球体状」の発明も記載されている。また、「回転楕円体状」については、【0014】に、「「回転楕円体」又は「回転楕円体状」は、球体のようではあるが完全に丸くはなく、円又は楕円の弧状のプロファイルを有し得る形体を指す。」との記載がある。
つまり、引用文献1において、突起部の形状として、「球体のようではあるが完全に丸くはなく、円又は楕円の弧状のプロファイルを有し得る形体」である「回転楕円体状」は、「球体」とは区別されている形状である。
そして、引用発明1の「「球体状」又は「回転楕円体形状」の半分のような形状の複数の突起部」において、「球体状」の半分のような形状の場合、直径Dに対する前記突起部の高さHの比H/Dは、0.5となる。一方、「回転楕円体形状」の半分のような形状の場合、「球体のようではあるが完全に丸くはな」いから、比H/Dは、球体状の場合の0.5に近い値であるが、0.5とは異なる値であることは、明らかである。
引用文献1には、その寸法、形状についても制御し得ることが記載されてることから(【0035】、【0048】など参照。)、球体状(0.5)だけでなく、回転楕円体状(0.5とは異なる)の形状を採用する動機付けはあり、採用した場合の効果についても、区別して形状を認識していることから、当業者の予測の範囲内であるといえる。
してみると、引用発明1の回転楕円体状の形状において、比H/Dが0.5に近い値(0.5とは異なる値)として、0.5よりも小さい本願発明の「0.1以上0.5未満」に含まれる値の形状を採用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
なお、引用発明1の回転楕円体状の形状において、0.5よりも大きい値の形状も採用し得るが、その場合は、本願請求項3に係る発明の「0.5より大きく6以下」に含まれる値の形状を採用することになる。
2 請求人の主張について
審判請求書において、請求人は以下の主張をしている。
「引用文献1には、「球体状」と「回転楕円体状」とは区別はしていても、本願発明の突起部に相当する形状として、「球状」を除くという技術的思想はまったく存在しません。すなわち、引用文献1に記載された技術には、
「突起部の輪郭形状が球状からずれると、局在プラズモン共鳴に由来する吸収スペクトルの線幅を狭くすることができる」という第2知見に関する記載や示唆がまったく存在しないことから、当然、引用文献1には、本願発明の突起部に相当する形状として、「球状」を除くという技術的思想は存在しません。
そして、審査官殿は、引用文献1の段落〔0048〕には、マイクロポストの寸法、高さ、密度等を制御することにより、マイクロスフィアの寸法および形状を制御することが可能であるということが記載されている旨を指摘しておりますが、これは、「球体状または回転楕円体状の表面を有するマイクロスフィア」を形成できることを言っているだけであり、本願発明の突起部に相当する形状として、「球状」を除くという技術的思想を示唆するものではありません。
以上のように、引用文献1に記載された技術には、本願発明の特徴点ばかりでなく、本願発明を想到する動機づけとなる第1知見や第2知見さえまったく記載も示唆もされていないことから、たとえ、当業者といえども、引用文献1に記載された技術から本願発明を想到することは困難であるものと思料します。」
しかしながら、本願発明は、特定の寸法関係を有する「局在型表面プラズモン共鳴センシングチップ」の発明であって、その特定の寸法関係の範囲の中の一つの寸法関係を有する「チップ」の集合体の発明である(例えば、「0.1のチップ」、「0.2のチップ」、「0.3のチップ」、「0.4のチップ」、「0.6のチップ」、「1のチップ」・・・「6のチップ」など)。 そして、本願発明は、寸法関係を特定の範囲(0.1~6の範囲で0.5を除く)の中で変更し得る一つの「チップ」のように、一つの「チップ」が特定の範囲を一体として捉えられる発明ではない。
請求人の上記主張は、寸法関係として特定の範囲(0.1~6の範囲で0.5を除く)を一体のものとして捉え、その範囲に意味があることを主張するものであるが、本願発明は、個々の発明の集合体であり、本願発明に含まれる個々の発明(「0.1以上0.5未満」に含まれる値を有する発明)が、上記のとおり当業者が容易に想到し得るものである以上、本願発明は特許を受けることはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-015364