特許拒絶査定不服審判
2018-013428
高周波数領域における誘電体としてのガラスセラミック
- 審判番号
- 2018-013428
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-228805外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月09日
- 審決日
- 2019年09月09日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ショット アクチエンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 【請求人代理人】齋藤 正巳
- 【請求人代理人】臼井 伸一
- 分類
- P18 .113-Z (C03C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-228805「高周波数領域における誘電体としてのガラスセラミック」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017- 71550〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)11月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年11月24日 ドイツ)を国際出願日とする特願2014-542807号の一部を平成28年11月25日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年11月13日付け:拒絶理由通知
平成30年 5月16日 :意見書の提出
6月 4日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
10月 9日付け:審判請求及び手続補正
11月19日 :手続補正(方式)
第2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年10月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項及び本願明細書の記載より次のとおりのものと認める。
「周波数f>200MHzの高周波領域において10-2以下の誘電損失(tanδ)を有する誘電体であって、
該誘電体は、少なくとも以下の構成要素(酸化物換算のmol%)を含むガラスセラミックからなり、
SiO2 1~50
Al2O3 0~20
B2O3 0~25
TiO2 10~70
RE2O3 0~35
BaO 0~35
ここで、REは、ランタン、他のランタノイド、又はイットリウムであり、Tiは部分的に、Zr、Hf、Y、Nb、V、Taで置換されていてもよく、
該ガラスセラミックの気孔率が0.5%未満であり、および該ガラスセラミックの表面は金属化を含み、および
共振周波数の温度依存性の絶対値(τf)が200ppm/K以下である、
誘電体。」
なお、共振周波数の温度依存性の絶対値(τf)について、請求項1には、「200ppm/Kである」と記載されているが、本願明細書には、「共振周波数の温度依存性を非常に低くすることができる。特にセラミック化の条件を最適化することにより、共振周波数の温度依存性の絶対値|τf|を200ppm/K以下・・・に制限することができる。」(段落【0029】)、「ここで、共振周波数の温度依存性の絶対値|τf|は、好ましくは200ppm/K以下・・・である。」(段落【0037】)」と記載されていることから、「200ppm/K以下である」の誤記であると認め、上記のとおり認定した。
第3.原査定の理由
原査定の理由の一つは、
特開2011-195440号公報(以下、「引用文献1」という。)
を引用し、本願発明は、その(優先権の基礎とされた先の)出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
第4.引用文献の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、高周波領域(周波数>200MHz)、特にギガヘルツ領域(周波数f>1GHz)において誘電体として使用できるガラスセラミックに関する。」(段落【0001】)
(イ)「焼結により製造する誘電体は多数の欠点を有する。すなわち、すべての焼結プロセスは必ず一定の収縮を伴い、これが不正確な寸法精度およびそれに応じた最終機械加工につながる。さらに、すべての焼結プロセスは、一定の残留多孔性をもたらし、これは表面を金属被覆するときに不都合である。金属が空隙に浸透して、誘電体の誘電損を増やす。・・・」
(段落【0009】)
(ウ)「・・・実施例1ないし実施例9のさまざまなガラスサンプルを、まず、従来の出発材料を使用した通常の方法で溶融および均質化する。ここで、白金るつぼ、Pt/Irるつぼ、Pt/Rhるつぼ、溶解石英るつぼ、または酸化アルミニウムるつぼを使用できる。サンプルは、まず、1350℃で2時間溶融してから、1400℃で30分間精製(純化)し、白金スターラーで20分間攪拌して均質化し、10分間静置してから、例えばスチール、グラファイト、酸化アルミニウム、または溶解石英製の適切な成形型に注入し、近似成形する。」(段落【0023】)
(エ)「このサンプルの結晶相の体積比率は、およそ約50体積%ないし70体積%である。
サンプル1ないしサンプル9の比誘電率εを測定した。これらはすべて15より大きく、20ないし50の範囲内であった。
これらのサンプルは、低い誘電損と高い品質も示している。
品質Q値は、誘電損(tanδ)の逆数である。
Q=1/tan(δ)
品質は、ハッキ・コールマン共振法により測定する。ここでは、品質係数は、品質Q値と測定周波数f0との積として求める。」
(段落【0026】)
(オ)「すべてのサンプル1ないし9の品質係数Q・f0は、2000GHzないし3000GHzの範囲内であった。サンプル1の場合、10.09GHzで、比誘電率ε22.4、品質Q値205が、すなわち、品質係数2068が測定された。
共振周波数の温度係数tfは、測定したすべてのサンプルで非常に低く、-40ppm/K<tf<40ppm/Kの範囲である。」
(段落【0027】)
(カ)「サンプル番号1 含有量(モル%) SiO2 21.00、Al2O3 6.00、B2O3 12.60、BaO 0.00、TiO2 40.20、Sb2O3 0.10、La2O3 20.10」
(段落【0029】【表1】抜粋)
第5.引用発明の認定
記載事項(ア)から、引用文献1には、誘電体として使用できるガラスセラミックの発明について記載されており、記載事項(オ)及び記載事項(カ)から、当該発明の実施例である「サンプル(番号)1」として、以下に示す誘電体特性及び成分組成を有する発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「10.09GHzにおいて205の品質Q値を有し、
成分の含有量(モル%)が、
SiO2 21.00
Al2O3 6.00
B2O3 12.60
BaO 0.00
TiO2 40.20
Sb2O3 0.10
La2O3 20.10であり、
共振周波数の温度係数tfは-40ppm/K<tf<40ppm/Kである誘電体として使用できるガラスセラミック。」
第6.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、記載事項(エ)に記載されるように、「品質Q値」は誘電損(tanδ)の逆数であるから、引用発明の「10.09GHzにおいて205の品質Q値」は、「10.09GHzにおいて0.0049の誘電損(tanδ)」を意味し、本願発明における「周波数f200MHzの高周波領域において10-2以下の誘電損失(tanδ)」に相当する。 また、引用発明の「共振周波数の温度係数tfは-40ppm/K<tf<40ppm/Kの範囲である」は、本願発明の「共振周波数の温度依存性の絶対値(τf)が200ppm/K以下である」に相当する。
したがって、本願発明のうち、
「周波数f>200MHzの高周波領域において10-2以下の誘電損失(tanδ)を有する誘電体であって、
該誘電体は、少なくとも以下の構成要素(酸化物換算のmol%)を含むガラスセラミックからなり、
SiO2 1~50
Al2O3 0~20
B2O3 0~25
TiO2 10~70
RE2O3 0~35
BaO 0~35
ここで、REは、ランタン、他のランタノイド、又はイットリウムであり、Tiは部分的に、Zr、Hf、Y、Nb、V、Taで置換されていてもよく、
共振周波数の温度依存性の絶対値(τf)が200ppm/K以下である、
誘電体。」の点は、引用発明と一致し、両者は以下の点で相違する。
相違点1
本願発明は、「ガラスセラミックの気孔率が0.5%未満であ」るのに対して、引用発明は気孔率が不明である点。
相違点2
本願発明は、「ガラスセラミックの表面は金属化を含」むのに対して、引用発明はその表面処理が不明である点。
第7.相違点の判断
相違点1について
ガラスセラミックの気孔率に関し、本願明細書の段落【0018】には、「・・・溶融により製造されるガラスセラミックを用いて得られる気孔率は非常に低く、好ましくは0.1%未満(<0.1%)、より詳細には0.01%未満(<0.01%)である。」と記載され、さらに段落【0036】には、溶融時に「気孔率が0.5%未満(<0.5%)、好ましくは0.1%未満(<0.1%)、より好ましくは0.05%未満(<0.05%)となるように上記原料ガラスを均質化する工程」を設けたことが記載されている。そして段落【0047】には、この溶融均質化工程について「まず1350℃で2時間溶融させてから、1400℃で30分間改質し、白金スターラーを用いて20分間撹拌及び均質化して、10分間保持した。」ことが記載されている。
してみると、本願発明の「0.5%未満の気孔率」とは、溶融により製造された結果得られるものであって、具体的には、原料ガラスの溶融均質化工程により得られるものと認められる。
これに対し、引用文献1の記載事項(ウ)には、引用発明もまた原料ガラスの溶融均質化工程を経て製造されたことが記載されており、しかもその製造条件が本願発明と一致している。
してみると、引用発明のガラスセラミックの気孔率は、引用文献1に具体的な記載がなくとも、本願発明と同様に0.5%未満であると認められる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。
相違点2について
引用文献1の記載事項(イ)に、引用発明の前提となる先行技術において、誘電体がその表面を金属被覆されることが記載されていることから、引用発明もまた、その表面を金属化されて使用されるものと認められる。
したがって、相違点2も、実質的な相違点ではない。
よって、本願発明と引用発明には、実質的な差異がない。
請求人の主張について
請求人は平成30年11月19日に提出された審判請求書の手続補正書で、相違点1について、本願発明と引用発明とはガラスセラミックの組成比率に関し完全に一致しているわけではないから気孔率も一致しているとはいえない旨主張している。
しかしながら、「第6.発明の対比」にて検討したとおり、引用発明は、本願発明が特定するガラスセラミックの組成比率を満足している。また、溶融均質化工程を経て製造されたガラスセラミックの気孔率が、焼結工程を経て製造された場合のように組成比率によって大きく変化するものとは認められない。
したがって、上記主張は採用できない。
第8.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、本願は原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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