特許拒絶査定不服審判
2018-011439
SIMカードへのエンベロープアップデートの最適なスケジューリング
- 審判番号
- 2018-011439
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-556066外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年08月23日
- 審決日
- 2019年08月23日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H04W) / P18 .575-Z (H04W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-556066「SIMカードへのエンベロープアップデートの最適なスケジューリング」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日国際公開、WO2014/123700、平成28年 3月24日国内公表、特表2016-509435〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)1月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年2月5日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年10月6日 :手続補正書の提出
平成29年1月5日 :手続補正書の提出
平成30年1月18日付け :拒絶理由通知書
平成30年4月3日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年5月7日付け :拒絶査定
平成30年8月23日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
第2 平成30年8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月23日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本願発明と補正後の発明(補正の概要)
本件補正は、平成30年4月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「モバイルデバイスにおいて動作可能なワイヤレス通信の方法であって、前記方法は、
1つ以上のエンベロープコマンドにおいて複数のアップデートを受信することと、
前記複数のアップデートを、互いに異なる優先度を有する複数のグループに分類することと
を備え、
前記モバイルデバイスにおいて前記複数のアップデートを加入者識別モジュール(SIM)に送信すること、ここにおいて、前記複数のアップデートは、再順序付けされ、前記再順序付けされた複数のアップデートが送信される順序は、前記複数のアップデートが分類されたグループの前記互いに異なる優先度に基づく、
を特徴とする、方法。
」(以下,「本願発明」という。)
を,
「モバイルデバイスにおいて動作可能なワイヤレス通信の方法であって、前記方法は、
1つ以上のエンベロープコマンドにおいて複数のアップデートを受信することと、
前記複数のアップデートを、前記アップデートが何に関連するかに応じて、複数のグループに分類することと、ここで、前記複数のグループは互いに異なる優先度を有する
を備え、
前記モバイルデバイスにおいて前記複数のアップデートを加入者識別モジュール(SIM)に送信すること、ここにおいて、前記複数のアップデートは、再順序付けされ、前記再順序付けされた複数のアップデートが送信される順序は、前記複数のアップデートを分類したグループの前記互いに異なる優先度に基づく、
を特徴とする、方法。
」(以下,「補正後の発明」という。)
に変更することを含むものである。([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)
2 補正の適否
(1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
請求項1についての上記補正は,本件補正前の「互いに異なる優先度を有する複数のグループに分類すること」について,互いに異なる優先度を有する複数のグループに分類することが「アップデートが何に関連するかに応じて」との限定をする補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そして,請求項1についての上記補正は,特許法第17条の2第3項(新規事項),第4項(シフト補正)に違反するものではない。
請求項1について上記補正は特許請求の範囲を減縮するものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて,以下検討する。
(2)独立特許要件
ア 補正後の発明
補正後の発明は,上記「1 本願発明と補正後の発明」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。
イ 引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された国際公報第2013/016667号(以下,「引用例」という。)には,以下の事項が記載されている。
(ア)「[0016] In order to access the services provided by the networks the mobile equipment 110 must register with the networks. The mobile equipment 110 may need to register with a plurality of networks for different services. For example, the mobile equipment 110 initiates registration with various networks upon initial power up, exiting airplane mode or a reset of the SIM. Registration with a network includes authenticating that the mobile equipment 110 has the appropriate credentials to access the services provided by the network. For example, prior to initialing a telephone conversation the mobile equipment 110 may have to register with the base station 150a. The registration information that the mobile equipment 110 provides to the base station 150a may be stored on the SIM 140. The mobile equipment 110 may access and/or decrypt the registration information from the SIM 140 and provide the registration information to the base station 150a. In turn the base station 150a may provide the mobile equipment 110 with identification, scheduling, frequency, and/or bandwidth information to enable future communications between the mobile equipment 110 and the base station 150a.
[0017] The mobile equipment 110 includes a plurality of components that may each be configured to access the SIM 140. For example, the mobile equipment 110 includes call manager 111, NAS (Non- Access Stratum) 112, SMS 114, data layer 116, and user interface 118. The mobile equipment 110 may also include ISO interface 130 that enables communication with the SIM 140.
[0018] The call manager 111 is configured to facilitate incoming and outgoing voice communications. For example, prior to the user making a voice call to another phone, the call manager 111 in conjunction with 1X call processing may authenticate the mobile equipment 110 with the base station 150a. The 1X call processing may send a command to the ISO interface 130 to provide authentication codes to send to the base station 150a. Since the request from the 1X call processing is to receive service acquisition, the queue management logic 125 may identify the command as being related to service acquisition. The queue management logic 125 may have access to a lookup table, algorithm or the like, that identifies commands or data that are related to service acquisition. Since the command is related to service acquisition the queue management logic 125 may prioritize the request from the 1X call processing as higher priority request. The higher priority requests to the SIM 140 may be placed earlier in the SIM processing queue.
[0019] The NAS (non-access stratum) 112 authenticates the ME for UMTS related services. For example, if the user accesses the Internet or data on another network, the NAS may initiate the LTE authentication protocol with eNodeB 150b. In order to initiate the authentication protocol, the NAS 112 may acquire the most essential system information (including but not limited to frame timing, cell ID group, carrier frequency and the like) from the eNodeB 150b. The NAS 112 also sends a request to the SIM 140 in order to request authentication information from the SIM 140. Since requests from the NAS 112 are for service acquisition, the queue management logic 125 may prioritize those requests to be higher priority than other types of requests, from for example, the user interface 118. The higher prioritization performed by the queue management logic 125 generally occurs when the mobile equipment 110 is acquiring services. The higher prioritization leads to the SIM 140 processing the requests before the lower priority requests. 」(4ページ)
([当審仮訳]:
[0016]
ネットワークによって提供されるサービスにアクセスするために,モバイル機器110はネットワークに登録しなければならない。モバイル機器110は,異なるサービスのための複数のネットワークに登録する必要があり得る。たとえば,モバイル機器110は,最初の電源投入の時,機内モードを無効にした時,またはSIMをリセットした時,様々なネットワークへの登録を開始する。ネットワークへの登録は,ネットワークによって提供されるサービスにアクセスするための適切な認証情報をモバイル機器110が有することを,証明することを含む。たとえば,電話での会話を開始する前に,モバイル機器110は,基地局150aに登録する必要があり得る。モバイル機器110が基地局150aに提供する登録情報は,SIM 140に記憶され得る。モバイル機器110は,SIM 140からの登録情報にアクセスし,かつ/または登録情報を復号して,登録情報を基地局150aに提供することができる。次いで,基地局150aは,識別情報,スケジューリング情報,周波数情報,および/または帯域幅情報をモバイル機器110に提供して,モバイル機器110と基地局150aとの間の今後の通信を可能にすることができる。
[0017]
モバイル機器110は,SIM 140にアクセスするように各々が構成され得る,複数のコンポーネントを含む。たとえば,モバイル機器110は,呼マネージャ111,NAS(Non-Access Stratum)112,SMS 114,データ層116,およびユーザインターフェース118を含む。モバイル機器110はまた,SIM 140との通信を可能にする,ISOインターフェース130を含み得る。
[0018]
呼マネージャ111は,入来する音声通信および発信される音声通信を支援するように構成される。たとえば,ユーザが別の電話に音声呼を行う前に,呼マネージャ111は1X呼処理とともに,モバイル機器110を基地局150aに対して認証することができる。1X呼処理は,基地局150aに送るための認証コードを提供せよという命令を,ISOインターフェース130に送ることができる。1X呼処理からの要求はサービス取得を受けるためのものであるので,キュー管理論理125は,サービス取得に関連するものとして命令を識別することができる。キュー管理論理125は,サービス取得に関連する命令またはデータを識別する,参照テーブル,アルゴリズムなどへのアクセスを有し得る。命令はサービス取得と関連するので,キュー管理論理125は,1X呼処理からの要求を,より高優先度の要求として優先順位付けすることができる。SIM 140に対するより高優先度の要求は,SIM処理キューにおいてより前に配置され得る。
[0019]
NAS(non-access stratum)112は,UMTS関連のサービスのためにMEを認証する。たとえば,ユーザがインターネットまたは別のネットワーク上のデータにアクセスする場合,NASは,eNodeB 150bとのLTE認証プロトコルを開始することができる。認証プロトコルを開始するために,NAS 112は,eNodeB 150bから,最も不可欠なシステム情報(限定はされないが,フレームタイミング,セルIDグループ,キャリア周波数などを含む)を取得することができる。NAS 112はまた,SIM 140からの認証情報を要求するために,要求をSIM 140に送る。NAS 112からの要求はサービス取得のためのものであるので,キュー管理論理125は,それらの要求を,たとえばユーザインターフェース118からの他のタイプの要求よりも優先度が高いものとして,優先順位付けすることができる。キュー管理論理125によって実行されるより高い優先順位付けは,一般に,モバイル機器110がサービスを取得している時に発生する。より高い優先順位付けによって,SIM 140は,それらの要求を,より低優先度の要求の前に処理するようになる。)
(イ)「[0023] The queue management logic 125 may have the ability to review each request at a bit level and determine the command or data that are in the request. Based on the review of each request, the queue management logic 125 may use a logic, such as but not limited to, a comparator that is configured to compare the received requests with predefined list of high priority requests in order to determine the placement of the requests within the queues. The queue management logic 125 is one of many modules that are located within the mobile equipment 110. The SIM 140 is replaceable by another SIM and is in electrical communication with the module within the mobile equipment 110. The queue management loci 125 is part of the mobile equipment 110 and is configured to prioritize requests that are intended to be processed by the SIM 140. 」(6ページ)
([当審仮訳]:
[0023]
キュー管理論理125は,ビットレベルで各要求を検証し,要求の中にある命令またはデータを判定する能力を有し得る。各要求の検証に基づいて,キュー管理論理125は,限定はされないが,キュー内での要求の配置を決定するために,受け取られた要求を,高優先度の要求の事前に定義されたリストと比較するように構成される比較器のような,論理を使用することができる。キュー管理論理125は,モバイル機器110内に位置する多くのモジュールの1つである。SIM 140は,別のSIMによって置換可能であり,モバイル機器110内のモジュールと電気的に接続されている。キュー管理論理125は,モバイル機器110の一部であり,SIM 140によって処理されることが意図される要求を優先順位付けするように構成される。)
(ウ)「[0031] Referring to Fig. 2, Fig. 2 is a method that may be implemented by the systems shown in Fig. 1. At step 210 the SIM 140 may receive a request for the card services layer. At step 220, the queue management logic 125 may determine whether the received request is related to service acquisition or is listed in the high priority table. If at step 220 it is determined that the request does not relate to service acquisition then the request is placed in a regular queue, at step 230. Alternatively, if the received request is related to service acquisition, then the request may be prioritized for access to the SIM 140, at step 240. In this embodiment, the queue management logic 125 may place the request for services acquisition in a high priority queue 310. At step 250, all requests may be placed in a queue to send to the SIM 140. Next at step 260, the request may be sent to the SIM 140. 」(8ページ)
([当審仮訳]:
[0031]
図2を参照すると,図2は,図1に示されるシステムによって実施され得る方法である。ステップ210において,SIM 140は,カードサービス層に対する要求を受け取ることができる。ステップ220において,キュー管理論理125は,受け取られた要求がサービス取得に関連するかどうか,または高優先度の表に載っているかどうかを判定することができる。ステップ220において,要求がサービス取得に関連しないと判定されると,ステップ230において,要求は通常のキューに配置される。あるいは,受け取られた要求がサービス取得に関連する場合,ステップ240において,要求はSIM 140へのアクセスに関して優先順位付けされ得る。この実施形態では,キュー管理論理125は,高優先度のキュー310に,サービス取得に対する要求を配置することができる。ステップ250において,すべての要求が,SIM 140に送るためのキューに配置され得る。次にステップ260において,要求がSIM 140に送られ得る。)
(エ)「[0033] Fig. 3 is a schematic diagram of the queue management logic 125 configured to manage two request queues. Fig. 3 shows queue management logic 125, ISO interface 130, SIM 140, two FIFO queues, high priority queue 310 and regular priority queue 320, and other ME modules 330. Other ME modules 330 may feed requests for the SIM 140 to the queue management logic 125. In one embodiment, all requests in the high priority queue 310 are processed before the requests in the regular priority queue 320. A request being processed meaning that the request is presented to the SIM 140 and a result is received from the SIM 140 or stored in the SIM 140. The queue management logic 125 may receive the requests from the mobile equipment 110 and based on the determination that the request is related to service acquisition, place the request in either the high priority queue 310 or the regular priority queue 320. In one embodiment, requests from the high priority queue 310 may be sent to the SIM 140 prior to any requests from the regular priority queue 320 are sent to the SIM 140. In another embodiment, a greater number of requests from the high priority queue 310 may be sent to the SIM 140 compared to the number of requests from the regular priority queue 320 that are sent to the SIM 140. In yet another embodiment, the queue management logic 125 may be configured to send two or more requests from the high priority queue 310 before sending one request from the regular priority queue to the SIM 140. 」(9ページ)
([当審仮訳]:
[0033]
図3は,2つの要求のキューを管理するように構成されている,キュー管理論理125の概略図である。図3は,キュー管理論理125,ISOインターフェース130,SIM 140,2つのFIFOキュー,高優先度のキュー310および通常の優先度のキュー320,ならびに他のMEモジュール330を示す。他のMEモジュール330は,SIM 140に対する要求を,キュー管理論理125に与えることができる。一実施形態では,高優先度のキュー310の中のすべての要求は,通常の優先度のキュー320の中の要求より前に処理される。要求が処理されるということは,要求がSIM 140に提示され,結果がSIM 140から受け取られ,またはSIM 140に記憶されることを意味する。キュー管理論理125は,モバイル機器110から要求を受け取り,要求がサービス取得に関連するという判定に基づいて,高優先度のキュー310と通常の優先度のキュー320のいずれかに要求を配置することができる。一実施形態では,通常の優先度のキュー320からの任意の要求がSIM 140に送られるより前に,高優先度のキュー310からの要求がSIM 140に送られ得る。別の実施形態では,SIM 140に送られる通常の優先度のキュー320からの要求の数と比較して,より多数の高優先度のキュー310からの要求がSIM 140に送られ得る。さらに別の実施形態では,キュー管理論理125は,通常の優先度のキューからの1つの要求をSIM 140に送る前に,高優先度のキュー310からの2つ以上の要求を送るように構成され得る。)
(オ)「[0037] Embodiments of the queue management logic 125 are directed to reviewing each request and test whether the request is for a particular files (for example, IMSI) on the card that is known to be required for registration to the network or some operations (for example, authentication) that are known to be required for registration and give those requests a higher priority. In another embodiment, an identifier may be used within the request to allow the queue management logic 125 to recognize a high priority request.」(10ページ)
([当審仮訳]:
[0037]
キュー管理論理125の実施形態は,各要求を検証し,要求が,ネットワークへの登録に必要であることが知られているカード上の特定のファイル(たとえば,IMSI)のためのものであるかどうか,または,登録に必要であることが知られている何らかの工程(たとえば,認証)であるかどうかを試験し,それらの要求により高い優先度を与えることを対象とする。別の実施形態では,キュー管理論理125が高優先度の要求を認識することを可能にするために,識別子が要求の中で使用され得る。)
上記摘記事項の記載及び当業者の技術常識を考慮すると,次のことがいえる。
a 段落[0017],[0019]には,モバイル機器が,SIMにアクセスするための構成として,呼マネージャ,NAS,SIMとの通信を可能とするISOインターフェース等の複数のコンポーネントを含み,ユーザがインターネット上または別のネットワーク上のデータにアクセスする場合,NASはeNodeBとのLTE認証プロトコルを開始し,その際,NASはSIMからの認証情報を要求するために,要求をSIMに送ること,NASからの要求はサービス取得のためのものであり,キュー管理論理はサービス取得のための要求をたとえばユーザインターフェースからの他のタイプの要求よりも優先度が高いものとして優先順位付けするのものである。これらは,すなわち、ユーザがネットワーク上のデータへのアクセスするために要求や、ユーザインターフェースからの他のタイプの要求をキュー管理論理が優先順位付けするのものといえ,キュー管理論理が要求を受け取ることは自明である。
そうすると,引用例には「ネットワーク上のデータへのアクセスのための要求や,ユーザインターフェースからの他のタイプの要求をキュー管理論理が受け取ること」が記載されていると認められる。
b 段落[0023],[0031]には,キュー管理論理125は,モバイル機器110の一部であり,キュー管理論理は,受け取られた要求がサービス取得に関連するかを判定し,受け取られた要求がサービス取得に関連する場合,要求はSIMへのアクセスに関して優先順位付けされ得ること,要求がサービス取得に関連しないと判定されると,要求は通常のキューに配置され,要求がサービス取得に関連する場合,高優先度のキューにサービス取得に対する要求は配置されること,が記載されている。
したがって,引用例には,モバイル機器が備えるキュー管理論理は,「受け取られた要求が,サービス取得に関連する場合,要求を高優先度のキューに配置し,受け取られた要求が,サービス取得に関連しない場合,要求を通常のキューに配置すること」が記載されていると認められる。
c 段落[0031],[0033]には,すべての要求はSIMに送るためのキューに配置され,要求がSIMに送られること,高優先度のキューの中のすべての要求は,通常の優先度のキューの中の要求より前に処理されること,キュー管理論理は,モバイル機器から要求を受け取り,要求がサービス取得に関するという判定に基づいて,高優先度キューと通常の優先度キューのいずれかに要求を配置すること,そして,段落[0019]の記載によれば,キュー管理論理によって実行されるより高い優先順位付けは,モバイル機器がサービスを取得している時に発生することが記載されている。
したがって,引用例には,「キュー管理論理は,複数の要求をSIMに送信すること,ここにおいて,複数の要求は,サービス取得時にキュー管理論理によって優先順位付けが実行され,複数の要求は,高優先度のキューの要求がすべて送信された後,通常の優先度のキューの要求が送信される」ことが記載されていると認められる。
d そして,段落[0016]、上記a~cを総合すると,モバイル機器が備えるキュー管理論理によってSIMに送られる複数の要求に優先度を付けて処理することは,モバイル機器において動作するものであるから,引用例には,「モバイル機器がネットワークによって提供されるサービスにアクセスするための方法」が記載されているといえる。
以上を総合すると,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「モバイル機器がネットワークによって提供されるサービスにアクセスするための方法であって,前記方法は,
ネットワーク上のデータへのアクセスのための要求や,ユーザインターフェースからの他のタイプの要求をキュー管理論理が受け取ること,
受け取られた要求が,サービス取得に関連する場合,要求を高優先度のキューに配置し,受け取られた要求が,サービス取得に関連しない場合,要求を通常のキューに配置すること,
を備え,
キュー管理論理は,複数の要求をSIMに送信すること,ここにおいて,複数の要求は,サービス取得時にキュー管理論理によって優先順位付けが実行され,複数の要求は,高優先度のキューの要求がすべて送信された後,通常の優先度のキューの要求が送信される,
方法。」
[周知技術]
本件の優先日前に公開された、3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Core Network and Terminals; Universal Subscriber Identity Module(USIM) Application Toolkit(USAT) (Release 11),3GPP TS31.111,3GPP,2012年12月,V11.4.0(以下,「周知例1」という。)には,以下の事項が記載されている。
(カ)「7.3.1.8 Procedure for EPS PDN connection Activation
If the service "call control on EPS PDN connection by USIM" is available in the USIM Service Table (see TS 31.102 [14]), then for all EPS PDN connection activation (including those resulting from a OPEN CHANNEL proactive UICC command where E-UTRAN is selected), the ME shall first pass the corresponding PDN Connectivity Request message (see TS 24.301 [46]) to the UICC, using the ENVELOPE (CALL CONTROL) command defined above. The ME shall also pass to the UICC in the ENVELOPE (CALL CONTROL) command the current serving cell. )」(57ページ)
([当審仮訳]:
7.3.1.8 EPS PDN接続のアクティブ化の手順
サービス「USIMによるEPS PDN接続の呼制御」がUSIMサービステーブルで利用可能である場合(TS 31.102 [14]を参照),すべてのEPS PDN接続の有効化(OPEN CHANNELプロアクティブUICCコマンドから生じるものを含む)については,E-UTRANが選択されている場合,MEは最初に,上記で定義されたENVELOPE(CALL CONTROL)コマンドを使用して,対応するPDN Connectivity Requestメッセージ(TS 24.301 [46]を参照)をUICCに渡します。 MEはまた,現在のサービングセルをENVELOPE(CALL CONTROL)コマンドでUICCに渡す。)
本件の優先日前に公開された、米国特許出願公開第2012/0282901号明細書(以下,「周知例2」という。)には以下の事項が記載されている。
(キ)「[0004]The SIM Tool Kit (STK) function contains a set of commands for the terminal and the SIM card to interact with each other, so that the SIM card can be used to run an application program in the card so as to achieve value-added services. Herein, the set of commands are two types of commands of the STK function, one type is an envelope command that is sent by the terminal to the SIM card, the other type is the proactive command that is actively sent by SIM card to the terminal.
(後略)」(1ページ)
([当審仮訳]:
[0004]
加入者識別アプリケーション開発ツール(STK,SIM Tool Kit)機能は,端末とSIMカードとの対話に使われる一組のコマンドを含み,このようにして,SIMカードを使用し,カード内の応用システムを実行し,付加価値サービスの目的を実現する。ここの一組のコマンドは,STK機能の2種類のコマンドを指し,1つのタイプは,端末がSIMカードに送信するエンベロープコマンド(envelope command)であり,もう1つのタイプは,SIMカードによって端末へ能動的に送信するプロアクティブコマンド(proactive command)である。)
周知例1の「ME」,「UICC」,「メッセージ」は周知例2の「端末」,「SIM」,「コマンド」に相当するものであるから、上記(カ)~(キ)の記載並びに当業者の技術常識を考慮すると,「端末からSIMへのコマンドを送信する際,エンベロープコマンドを使用する。」ことは,技術常識ともいえる周知技術である。
ウ 対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると,以下のことがいえる。
(ア)引用発明の「モバイル機器」は,補正後の発明の「モバイルデバイス」に相当する。そして,引用発明の「方法」は,モバイル機器がeNodeBを介してネットワークによって提供されるサービスにアクセスするための方法であるから,モバイル機器が「ワイヤレス通信」を行うための方法であるといえる。
したがって,引用発明の「モバイル機器がネットワークによって提供されるサービスにアクセスするための方法」は,補正後の発明と同様に「モバイルデバイスにおいて動作可能なワイヤレス通信の方法」であるといえる。
(イ)補正後の発明の「1以上のエンベロープコマンドにおいて複数のアップデートを受信すること」において,該「アップデート」は,取得に関連するグループやUIインタラクションに関連するグループ等にグループ分けされるものであり,取得に関連するグループには,アタッチ制御が,UIインタラクションに関連するグループには,メニュー選択等が,それぞれ含まれるものである(段落【0030】)。そして「エンベロープコマンド」はUE上で何らかの処理をおこなうためにUEが生成する1つのコマンドであり,コマンドの生成を行う判断はUEそのものが行うことであるから,エンベロープコマンド生成のトリガーとなる複数のアップデート(アタッチ制御やメニュー選択)はUEそのものが受信するものであるといえる。
一方,引用発明の「ネットワーク上のデータへのアクセスのための要求や,ユーザインターフェースからの他のタイプの要求をキュー管理論理が受け取ること」において,「ネットワーク上のデータへのアクセスのための要求」は,ネットワークに対してアタッチ制御を含むものであるといえ,また「ユーザインターフェースからの他のタイプの要求」は,メニュー選択等を含むものであるといえるから,「ネットワーク上のデータへのアクセス要求や,ユーザインターフェースからの他のタイプの要求」は,補正後の発明の「複数のアップデート」に含まれるといえる。そして,キュー管理論理はモバイル機器の一部であるから,「複数のアップデート」は「モバイル機器」によって受信されるものであるといえる。
そうすると,補正後の発明の「1以上のエンベロープコマンドにおいて複数のアップデートを受信すること」と引用発明の「ネットワーク上のデータへのアクセス要求や,ユーザインターフェースからの他のタイプの要求をキュー管理論理が受け取ること」は,「モバイルデバイスが複数のアップデートを受信すること」という点で一致する。
(ウ)引用発明の「受け取られた要求」が,サービス取得に関連する場合,要求を高優先度のキューに配置し,「受け取られた要求」が,サービスに関連しない場合,要求を通常のキューに配置するものであるから,引用発明は「要求」を高優先度の要求と,通常の優先度の要求という,「複数のグループ」に分類しているといえる。そして,該「複数のグループ」は,前述のとおり,高優先度,通常の優先度という互いに異なる優先度を有するものである。
したがって,引用発明の「受け取られた要求が,サービス取得に関連する場合,要求を高優先度のキューに配置し,受け取られた要求が,サービス取得に関連しない場合,要求を通常のキューに配置すること」は,補正後の発明の「複数のアップデートを,前記アップデートが何に関連するかに応じて,複数のグループに分類することと,ここで,前記複数のグループは互いに異なる優先度を有する」ことに相当する。
(エ)引用発明の「キュー管理論理」は,「モバイル機器」の一部である。また,引用発明の「SIM」は補正後の発明の「加入者識別モジュール(SIM)」に相当する。そして,引用発明の「複数の要求は,サービス取得時にキュー管理論理によって優先順位付けが実行され,複数の要求は,高優先度のキューの要求がすべて送信された後,通常の優先度のキューの要求が送信される」ことは,要求を受け取る度に該要求がサービス取得に関連するものであった場合,優先順位付けが行われるものであり,要求を受け付けた際,高優先度のキューに該要求が追加された場合,通常の優先度のキューに存在する要求は,新たに高優先度のキューに追加された該要求よりも後にSIMに対して送信されることになるものであるから,該優先順序付けは「再順序付け」であるといえ,「再順序付けされた複数のアップデートが送信される順序は,複数のアップデートを分類したグループの互いに異なる優先度に基づ」いてSIMに対して送信されるものといえる。
そうすると,引用発明の「キュー管理論理は,複数の要求をSIMに送信すること,ここにおいて,複数の要求は,サービス取得時にキュー管理論理によって優先順位付けが実行され,複数の要求は,高優先度のキューの要求がすべて送信された後,通常の優先度のキューの要求が送信される」ことは,補正後の発明の「前記モバイルデバイスにおいて前記複数のアップデートを加入者識別モジュール(SIM)に送信すること,ここにおいて,前記複数のアップデートは,再順序付けされ,前記再順序付けされた複数のアップデートが送信される順序は,前記複数のアップデートを分類したグループの前記互いに異なる優先度に基づく」ことに相当する。
以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「モバイルデバイスにおいて動作可能なワイヤレス通信の方法であって,
前記モバイルデバイスが複数のアップデートを受信することと,
前記複数のアップデートを,前記アップデートが何に関連するかに応じて,複数のグループに分類することと,ここで,前記複数のグループは互いに異なる優先度を有する
を備え、
前記モバイルデバイスにおいて前記複数のアップデートを加入者識別モジュール(SIM)に送信すること,ここにおいて,前記複数のアップデートは,再順序付けされ,前記再順序付けされた複数のアップデートが送信される順序は,前記複数のアップデートを分類したグループの前記互いに異なる優先度に基づく
方法。」
(相違点)
一致点の「前記モバイルデバイスが複数のアップデートを受信すること」に関して,補正後の発明は「1つ以上のエンベロープコマンドにおいて」複数のアップデートを受信する発明特定事項を有しているのに対し,引用発明は「キュー管理論理」が複数のアップデートを受け付けるものであって、「1つ以上のエンベロープコマンドにおいて」複数のアップデートを受信するという発明特定事項を有していない点。
以下,上記相違点について検討する。
補正後の発明の,「1つ以上のエンベロープコマンドにおいて」複数のアップデートを受信するとは、上記「(イ)」に述べたとおり、明細書によると「複数のアップデートを受信するのはUEそのものであり,複数のアップデートをSIMに通信する際,1つ以上のエンベロープコマンドにおいて行われる」ものである。
そして、上記[周知技術]で述べたとおり、「端末(ME)からSIM(UICC)へのコマンド(メッセージ)を送信する際,エンベロープコマンドを使用する。」ことは技術常識ともいる周知技術であるから、引用発明においても、モバイル機器が備えるキュー管理論理がSIMへの要求を送信する際、エンベロープコマンドを使用すること、すなわち「エンベロープコマンドにおいて,(UEから)アップデートを受信」し送信するものとすることは、当業者において格別困難なことではない。したがって,相違点の事項は当業者が容易になし得ることである。
そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものにすぎず,格別顕著なものとはいえない。
したがって,補正後の発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
3 請求人の主張に対する検討
請求人は,審判請求書にて「本願発明は、同じグループのアップデート、すなわち同じものに関連するアップデートが連続的に連なって送信されることになり、SIMでは、同じものに関連するアップデートが連続的に処理されることになります。一方、引用文献1は、要求を高優先度と通常優先度に分けて配置していますが、優先度順にSIMに送られるだけなので、本願発明のように、同じものに関連するアップデートが連続的に連なって送信されるとは限りません。」と主張している。
しかし,上記「2 ウ(エ)」でも述べたとおり、引用発明は、要求を受け取る度に該要求がサービス取得に関連するものであった場合,優先順位付けが行われるものであり,要求を受け付けた際,高優先度のキューに該要求が追加された場合,通常の優先度のキューに存在する要求は,新たに高優先度のキューに追加された該要求よりも後にSIMに対して送信されるものである。そして上記「2 ウ(ウ)」でも述べたとおり、引用発明の「要求」は高優先度の要求と,通常の優先度の要求という,「複数のグループ」に分類されているものといえ、高優先度のキューがすべてSIMに送信されるまで、通常の優先度のキューに存在する要求はSIMに送信されない、すなわち、高優先度のグループとして処理される要求は、連続してSIMに送信され、高優先度のグループとして処理される要求がすべて処理されると、次に通常の優先度のグループとして処理される要求が連続して処理されることになることは自明であるから、審判請求書の上記主張は採用できない。
4 結語
したがって,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月23日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年4月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明は,上記「第2 平成30年8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶理由は,
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
というものであり,請求項1に対して引用例(国際公報第2013/016667号)が引用されている。
2 引用発明
引用発明は,上記「第2 平成30年8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用発明等」の項で認定したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は,補正後の発明から当該補正に係る限定事項を省いたものである。そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「第2 平成30月8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」の「ウ 対比及び判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-011439