特許拒絶査定不服審判
2018-009673
後方椎弓根固定具を有する拡張可能な椎体内インプラントシステム
- 審判番号
- 2018-009673
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-560047外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月13日
- 審決日
- 2019年10月16日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-560047「後方椎弓根固定具を有する拡張可能な椎体内インプラントシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日国際公開、WO2015/097416、平成29年 1月12日国内公表、特表2017-500999〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2014年12月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月23日、仏国(FR))を国際出願日とする出願であって、平成29年8月23日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成30年3月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。
第2 平成30年7月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年7月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以下「本件補正発明」という。)は、以下のとおりである(下線は、補正箇所であり、当審が付与したものである。)。
「【請求項1】
椎体内で拡張可能な前方部(11)、及び後方部(12)を備える椎体内インプラント(1)と、前記後方部(12)を受け入れるための中空部分を画定する、後方内側部分(22)及び前方内側部分(23)を備える椎弓根固定具(2)と、を備える拡張可能な椎体内インプラントシステムであって、前記椎体内インプラント(1)の前記後方部(12)が前記椎弓根固定具(2)に部分的に据え付けられ、2の自由度に沿って動くことができる、拡張可能な椎体内インプラントシステム。」
(2)本件補正前の、平成30年2月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、以下のとおりである。
「【請求項1】
椎体内で拡張可能な前方部(11)、及び後方部(12)を備える椎体内インプラント(1)と、前記後方部(12)を受け入れるための中空部分を画定する、後方内側部分(22)及び前方内側部分(23)を備える椎弓根固定具(2)と、を備える拡張可能な椎体内インプラントシステムであって、前記椎体内インプラント(1)の前記後方部(12)が2の自由度に沿って動くことができる、拡張可能な椎体内インプラントシステム。」
2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「椎体内インプラント(1)の後方部(12)」について、「椎弓根固定具(2)に部分的に据え付けられ」と特定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1の(1)のとおりである。
(2)引用文献及び引用発明
(2-1)本願の優先権主張の日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-160399号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。
ア.記載事項
「【0001】
この発明は、椎骨または骨を安定させるためのインプラントに関する。特に、この発明は、骨粗鬆症の椎体を安定させるためのインプラントに関する。」
「【0010】
このインプラントの第1の実施例を、図1および図2を参照して説明する。インプラント1は、管状であり、長手方向の軸Lを有し、第1の端部2と、第2の端部3と、中間部4とを備える。中間部4は、第1の端部2から第2の端部3へ延在する複数の長手細片5からなる。長手細片5の間には、間隙または溝孔6があり、この溝孔も、第1の端部2から第2の端部3へ延在する。長手細片5は、長手方向から見てそれらのおよそ中央で、横断細片7を介して、1対ずつそれぞれ互いに接続される。したがって、2つの長手細片5およびこの接続する横断細片7は、細片ユニット8を形成する。図面に示されるように、溝孔6は、1つおきに管状端部2および管状端部3の方向へさらに延びる。長手細片5は、図2に示されるように、細片ユニット8の外側への屈曲によって細片ユニット8間の溝孔6を広げ、これにより中間部4がバルーンのように拡張可能であるように中間部4に可撓性を与える。このインプラントの寸法は、このインプラントを椎骨の椎弓根に形成された孔を通して椎体に挿入することができるような寸法である。特に、中間部4の長さは、図2に示される拡張された状態で、中間部4を椎体内に収容することができるように選択される。長手細片および横断細片の数、形状、間隔、および厚さは、所望の弾性および所望の寸法を拡張されたインプラントに与えるように選択される。」
「【0023】
図13から図15は、第3の実施例のインプラントを示す。インプラント20は、先に説明した実施例と、第2の端部の構造が異なる。先の実施例の部品と同一である、インプラント20の他の部品には、同一の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。インプラント20は、先の実施例のインプラントの端部3と比較して延長された端部3′を備える。第2の端部3′は、中間部4から外方に向く端部に好ましくは設けられた外部ねじ山を備えた部分21を含む。外部ねじ山は金属ねじ山であり得る。第2の端部の長さは、図15に示される挿入された状態で、第2の端部3′が椎弓根域を貫通して延在するようにされる。
【0024】
このインプラントは、孔102の内壁と係合するための骨ねじ山を設けられたブッシング22をさらに備える。骨ねじ山の代わりに、椎弓根孔とブッシングとの間に圧入接続が形成されるように、ブッシング22の外径を孔102の直径に関していくぶん大きめにすることもでき、またはブッシング22が摩擦により孔102に保持されるようにブッシング22の表面を粗くすることもできる。ブッシング22は、一方の端部に、インプラントの第2の端部3′の部分21の外部ねじ山と協働する内部ねじ山を有する部分23をさらに備える。ブッシングの長さは、椎弓根孔102の長さとほぼ同じである。ブッシングは、内部ねじ山を有する部分23が、椎体の中心から外方に向くように椎弓根孔102の中で方向付けられる。
【0025】
使用に当たっては、まず、ブッシング22が、孔102に挿入され、その後、インプラント20が、インプラントのねじ山が付けられた部分21とブッシングのねじ山が付けられた部分23とが係合するまで、ブッシング22を通って誘導される。第1の端部が椎体の内壁と当接するまで、インプラントを、ブッシングにさらに螺入することにより、中間部4が拡張され、椎体の一部を満たす。拡張されたインプラントは、骨セメントを使用する必要なしに椎体を安定化する可撓性支持体を形成する。」
イ.図示事項
図13より、椎体を安定させるためのインプラントが、インプラント20とブッシング22とからなる点が看て取れる。また、図15より、孔102は椎弓根に開けられた孔であることが看て取れる。さらに、図14より、ブッシングが、インプラントの第2の端部を受け入れるための中空部分をその全長に亘って画定する点が看て取れる。
(2-2)上記(2-1)ア.の記載事項及びイ.の図示事項から、引用文献には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
a 引用文献に記載された技術は、椎体を安定させるためのインプラントに関するものである(【0001】)。当該インプラントは、インプラント20とブッシング22とからなる(図13)。
b インプラント20は、第1の端部と、第2の端部と、中間部とを備え、中間部は、拡張可能であって、拡張された状態で椎体内に収容されるものである(【0010】)。第2の端部は、中間部から外方に向く端部に設けられた、外部ねじ山を備えた部分を含む(【0023】)。
c インプラントは、椎弓根に開けられた孔の内壁と係合するための骨ねじ山を設けられたブッシング22を備える(【0024】及び図15)。
d ブッシング22は、インプラント20の第2の端部を受け入れるための中空部分をその全長に亘って画定し(図14)、一方の端部に、インプラント20の第2の端部の部分の外部ねじ山と協働する内部ねじ山を有する部分を備える(【0024】)。
e ブッシング22が、椎弓根に開けられた孔に挿入され、その後、インプラント20が、インプラント20のねじ山が付けられた部分とブッシング22のねじ山が付けられた部分、すなわち、外部ねじ山を備えた部分と内部ねじ山を有する部分が係合するまで、ブッシング22を通って誘導される(【0025】)。
(2-3)上記(2-1)及び(2-2)を踏まえると、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「椎体を安定させるためのインプラントであって、
インプラント20とブッシング22とからなり、
インプラント20は、第1の端部と、第2の端部と、中間部とを備え、
中間部は、拡張可能であって、拡張された状態で椎体内に収容されるものであり、
第2の端部は、中間部から外方に向く端部に設けられた、外部ねじ山を備えた部分を含み、
ブッシング22は、椎弓根に開けられた孔の内壁と係合するための骨ねじ山を設けられ、
インプラント20の第2の端部を受け入れるための中空部分をその全長に亘って画定し、一方の端部に、インプラント20の第2の端部の部分の外部ねじ山と協働する内部ねじ山を有する部分を備え、
ブッシング22が、椎弓根に開けられた孔に挿入され、その後、インプラント20が、インプラント20の外部ねじ山を備えた部分とブッシング22の内部ねじ山を有する部分とが係合するまで、ブッシング22を通って誘導される、
インプラント。」
(3)対比・判断
本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「インプラント20」は、その「拡張可能」な「中間部」が「拡張された状態で椎体内に収容される」点を踏まえれば、本件補正発明の「椎体内インプラント」に相当する。また、引用発明の「インプラント20」の、「拡張可能であって、拡張された状態で椎体内に収容される」「中間部」は、その機能又は構造からみて、本件補正発明の「椎体内で拡張可能な前方部」に相当する。同様に、該「インプラント20」の「第2の端部」は、本件補正発明の「後方部」に相当する。したがって、引用発明の、「中間部」と「第2の端部」とを備える「インプラント20」は、本件補正発明の「椎体内で拡張可能な前方部、及び後方部を備える椎体内インプラント」に相当する。
引用発明の「ブッシング22」は、「インプラント20の第2の端部を受け入れるための中空部分を」「画定し」ている。また、当該「ブッシング22」は、「その全長に亘って」中空部分を備えていることからみて、前方内側部分と後方内側部分とを備えているといえる。さらに、当該「ブッシング22」は、「椎弓根に開けられた孔の内壁と係合するための骨ねじ山を設けられ」ていることからみて、椎弓根に対して固定される器具であるといえる。したがって、引用発明の「ブッシング22」は、本件補正発明の「後方部を受け入れるための中空部分を画定する、後方内側部分及び前方内側部分を備える椎弓根固定具」に相当する。
引用発明の「インプラント」は、「インプラント20」と「ブッシング22」とからなっており、これら2つの部材により、椎体内で拡張させて用いるインプラント装置の全体を構成しているといえるから、当該「インプラント」は、本件補正発明の「拡張可能な椎体内インプラントシステム」に相当するといえる。
そうすると、両者は、
「椎体内で拡張可能な前方部、及び後方部を備える椎体内インプラントと、前記後方部を受け入れるための中空部分を画定する、後方内側部分及び前方内側部分を備える椎弓根固定具と、を備える拡張可能な椎体内インプラントシステム」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:
椎体内インプラント(1)の後方部(12)について、本件補正発明では、椎弓根固定具(2)に部分的に据え付けられ、2の自由度に沿って動くことができるのに対し、引用発明では、インプラント20が、インプラント20の外部ねじ山を備えた部分とブッシング22の内部ねじ山を有する部分とが係合するまで、ブッシング22を通って誘導される構成である点。
上記相違点について判断する。
本願明細書の段落【0046】には「椎体内インプラント1が、その円筒形後方部12によって椎弓根固定具2に部分的に据え付けられる。実際は、円筒形後方部12は、前方内側部分23の中に挿入され、したがって、y軸及びx軸を中心とした回転運動をロックし、かつ、前述のx軸及びy軸に沿った平行移動をロックする。この理由のため、これらのロックされた自由度は、前方内側部分23内に挿入される円筒形後方部12間の部分的据え付けを確実なものにする。据え付けという用語は、椎弓根固定具2と椎体内インプラント1との間のすべての自由度のロックを表す。部分的据え付けという用語は、これらの2つのパーツ間の少なくとも1の自由度のロックを表す。」と記載されており、この「部分的据え付け」の定義にしたがえば、上記相違点に係る本件補正発明の構成である「椎弓根固定具(2)に部分的に据え付けられ、2の自由度に沿って動くことができる」とは、椎体内インプラント(1)の後方部(12)が椎弓根固定具(2)の中に挿入され、当該後方部(12)が椎弓根固定具(2)に対して、その径方向に沿った平行移動がロックされるとともに、2の自由度に沿った移動、すなわち、その軸方向に沿った平行移動及び当該軸を中心とした回転運動ができることを意味すると解することができる。
ここで、引用発明のインプラントについて検討すると、インプラント20は、インプラント20の外部ねじ山を備えた部分とブッシング22の内部ねじ山を有する部分とが係合し始めるまでの間、ブッシング22を通って誘導されるものである。そして、インプラント20がブッシング22に挿入されると、インプラント20の第2の端部は、ブッシング22に対してその径方向に沿った平行移動が不可能となるとともに、その軸方向に沿った平行移動及び当該軸を中心とした回転運動ができる状態となるものといえる。
したがって、引用発明の「インプラント20が、インプラント20の外部ねじ山を備えた部分とブッシング22の内部ねじ山を有する部分とが係合するまで、ブッシング22を通って誘導される」との構成は、本件補正発明における「椎体内インプラントの前記後方部が前記椎弓根固定具に部分的に据え付けられ、2の自由度に沿って動くことができる」との構成に実質的に相当する。
そうすると、上記相違点として挙げたものは、実質的な相違点とはいえない。
したがって、本件補正発明は、引用発明と同じである。
よって、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。したがって、本件補正は、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年2月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される前記第2の[理由]1の(2)に記載のものである(以下「本願発明」という。)。
2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(上記「引用文献」)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2の(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「椎体内インプラント(1)の後方部(12)」について「椎弓根固定具(2)に部分的に据え付けられ」との特定事項を除いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2の(3)に記載したとおり、引用発明と同じであるから、本願発明は当然に、引用発明と同じとなる。
第4 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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