特許拒絶査定不服審判
2018-008074
ダニ忌避剤並びにこれを用いたダニ忌避性樹脂組成物及びダニ忌避性加工品
- 審判番号
- 2018-008074
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-529367外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年06月12日
- 審決日
- 2019年04月16日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東亞合成株式会社
- 分類
- P18 .121-WY (A01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-529367「ダニ忌避剤並びにこれを用いたダニ忌避性樹脂組成物及びダニ忌避性加工品」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/194544、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年6月16日(優先権主張2014年6月19日日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年7月31日付けの拒絶理由に対し同年10月6日に意見書が提出され、平成30年3月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由は、平成29年7月31日付けの拒絶理由通知における理由1であり、その理由1の概要は、この出願の請求項1~6に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1~6に記載された発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献1 特開平8-246290号公報
引用文献2 国際公開第2004/012507号
引用文献3 特開2009-269788号公報
引用文献4 特開2000-63201号公報
引用文献5 特開2011-132196号公報
引用文献6 国際公開第2011/040252号
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は、補正前の請求項1に記載の「一般式(1)で表される脂肪族二塩基ジアルキルエステル」におけるRについて、「nが3~8の整数であるとき、Rは炭素数3~15のアルキル基であり、nが9~15の整数であるとき、Rは炭素数1~15のアルキル基である」を「ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2‐エチルヘキシル基から選ばれるアルキル基である」とするものである。
当該補正は、「一般式(1)で表される脂肪族二塩基ジアルキルエステル」におけるRに含まれるアルキル基を、「ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2‐エチルヘキシル基から選ばれるアルキル基である」と具体的なアルキル基に限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本願の当初明細書の段落【0011】には、nが3~8の整数であるとき、Rは炭素数3~15のアルキル基であり、無機多孔性物質の細孔に入り易く、適度な徐放性が得られることから、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が好ましい旨記載されており、また、nが9~15の整数であるとき、Rは炭素数1~15のアルキル基であり、無機多孔性物質の細孔に入り易く、適度な徐放性が得られることから、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が好ましい旨記載されており、当該補正は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1~6に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成30年6月12日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項によって特定された以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
薬剤を無機多孔性物質に担持させてなるダニ忌避剤であって、
前記薬剤は、下記一般式(1)で表される脂肪族二塩基酸ジアルキルエステルであり、
前記無機多孔性物質は、BET比表面積が550~1000m2/gであり、かつ、細孔径が0.8~15nmであり、
前記薬剤の担持量は、無機多孔性物質のBET比表面積100m2あたり0.007~0.09mlであることを特徴とするダニ忌避剤。
ROOC(CH2)nCOOR (1)
[式(1)中、nは3~15の整数であり、Rはブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2‐エチルヘキシル基から選ばれるアルキル基である。]
【請求項2】
上記薬剤の沸点が300℃以上である請求項1に記載のダニ忌避剤。
【請求項3】
上記無機多孔性物質が、ケイ酸塩化合物、シリカゲル、ゼオライト、金属酸化物、金属水酸化物及びリン酸塩化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のダニ忌避剤。
【請求項4】
薬剤を担持させる前の上記無機多孔性物質の水分が、3質量%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のダニ忌避剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のダニ忌避剤、及び、樹脂を含有することを特徴とするダニ忌避性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のダニ忌避剤を含有することを特徴とするダニ忌避性加工品。」(以下「本願発明1」~「本願発明6」という。)
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 アルキル基の炭素数が9~14のジアルキルフタレート、ジアルキルアジペート、ジアルキルマレート、ジアルキルフマレートのうちから選ばれた1種または2種以上を合成繊維に練り込むことを特徴とする防虫性及び撥水性を有する合成樹脂布帛及びその製造法」
(1b)「【0012】本発明は、以上に示したように繊維製品に一般衛生害虫が成育しないよう、またダニをはじめゴキブリなどの害虫が合成繊維布帛には寄り付かないようにする方法として防虫剤を処理する方法である。この防虫剤を繊維製品に処理した後は、一般家庭で使用されている洗濯機で、洗濯しても防虫剤が脱落することが少なく長期間効力を持続できる薬剤に耐久性を付与することを目的とした合成繊維布帛に防虫剤を処理する方法である。」
(1c)「【0015】従来から防虫剤成分として、脂肪族系および芳香族系の低級アルキルエステルによる効果が認められている。しかし、そのアルキル基の炭素数は、1~8の低級のアルキルエステルであった。この低級アルキルエステルによる脂肪族および芳香族系エステルは、沸点が比較的低いものであるために、溶融樹脂への練り込みが困難であり、また、蒸気圧が低いため長期間使用中に樹脂から蒸散することも考えられる。
【0016】本発明者らは、合成樹脂への練り込みを目的として、更に高級なアルキル基、例えば炭素数が9以上のアルキル基を有する脂肪族系および芳香族系二塩基酸ジアルキルエステルについて実験を行なった結果、炭素数9~14のジアルキルフタレート、ジアルキルアジペート、ジアルキルマレート、ジアルキルフマレートのうちから選ばれた1種または2種以上を配合した防虫剤を合成樹脂に直接練り込みによる防虫性について実験を行なった結果、その効果が長期間安定した結果が得られ、本発明を完成した。
【0017】本発明は、防虫剤成分としてアルキル基の炭素数が9~14であるジアルキルフタレート、ジアルキルアジペート、ジアルキルマレート、ジアルキルフマレートのうちから選ばれた1種または2種以上を配合した薬剤を合成繊維に練り込み加工することにより耐久性のある防虫性繊維の得られる方法である。」
(1d)「【0022】(1)防虫剤処方No.1
ジ-n-デシルアジペート60.0gおよびジ-2-エチルオクチルフタレート40gをシリカ100gに吸着させた防虫剤をポリプロピレン樹脂に230~250℃で、0.05%,0.1%,0.3%練り込み、厚さ0.1mmのフィルムとしてを行なった。その結果を表1に示す。」
(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 水難溶性無機化合物と摘花薬剤との混合製剤からなり、下記(a)、(b)及び(c)の要件を満たすことを特徴とする摘花剤。
(a)0.03≦P≦30
(b)3≦Q≦800
(c)0.5≦Q/P≦1000
P:SALD2000Aレーザー式粒度分布計により測定した粒子の平均粒子径(μm)
Q:窒素吸着法によるBET比表面積(m2 /g)」
(2b)「比表面積Qが800(m2 /g)を越えた場合、多孔質度が高くなり過ぎるため、水難溶性無機粒子に添加した添加剤の徐放速度が遅くなり過ぎる傾向となり、混合製剤中の添加剤が、花の受粉時期に受粉を阻害するに十分な量が放出されなくなり、摘花効果が不十分となる傾向にある。一方、比表面積が3(m2 /g)未満の場合、摘花剤の比表面積が小さすぎるため、添加剤の吸着面積が小さくなり、摘花効果の持続性が不十分となる傾向にあるだけでなく、薬害を発生し易くなる。」
(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】
金属を含有するコアゼオライトを形成するコアゼオライト形成工程と、
上記コアゼオライト形成工程にて形成された上記コアゼオライトの周囲にゼオライト結晶を成長させ、コア・シェルゼオライトを形成するコア・シェルゼオライト形成工程と、
上記コア・シェルゼオライト形成工程にて形成された上記コア・シェルゼオライトから上記金属を除去する金属除去工程と、
シリカ分解剤を接触させて上記金属除去工程にて金属を除去したコアゼオライトを分解し、上記コア・シェルゼオライトに中空を形成する中空形成工程と
を有する中空ゼオライトの合成方法。」
(3b)「【0035】
なお、このゼオライトの種類の選択については、合成させる中空ゼオライトの用途に応じて決定することができる。例えば、以下で詳細に説明を続けていく合成方法よって合成した中空ゼオライトの当該中空に薬物を担持させて、徐放性のカプセル剤としての薬物担体として用いる場合には、その担持させる薬物の分子の大きさに応じて、ゼオライトの種類を決定することが好ましい。ゼオライトは、周知のとおり、その細孔の大きさにより大分類することができる。具体的には、一般的に、ゼオライトの細孔を構成するケイ素が8個以下を小細孔、10個を中細孔、12個を大細孔、14個以上を超大細孔と便宜上称し、細孔の大きさに基づいてゼオライトを分類することができる。このとき、例えば、大細孔を有する*BEA型ゼオライトで中空ゼオライトを合成し、その*BEA型中空ゼオライトに、分子の小さい薬物を担持させようとした場合、その薬物は容易に中空ゼオライトの細孔を通過することができてしまう。その結果、薬物の徐放効果は十分に期待することができなくなる。したがって、このように、例えば徐放性カプセル剤等として合成した中空ゼオライトを使用する場合には、担持させようとする薬物の分子の大きさを考慮して、また所望の薬物の徐放時間を考慮して、ゼオライトの種類を決定することが好ましい。」
(4)引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献4には、次の事項が記載されている。
(4a)「【請求項1】害虫忌避剤を担持した無水珪酸多孔質微粒子、合成樹脂微粒子および溶媒とからなる忌避剤組成物。」
(4b)「【0013】この無機多孔質微粒子は、中空および非中空を含め、次のような特徴をもっている。すなわち、粒径は0.5~25μm、表面細孔直径は20~150Å、比表面積は300~700m2 /g、嵩密度は0.18~0.40g/cm3 である。中空無機多孔質微粒子にあっては、液状の害虫忌避剤または溶媒に溶解または分散した害虫忌避剤を160~180ml/100g内包させることができ、非中空の無機多孔質微粒子にあっては、溶媒に溶解または分散した害虫忌避剤を80~175ml/100g含浸させることができる。害虫忌避剤を担持した無機多孔質微粒子の概略断面構造を、図1に示した。図示したものは壁物質が無水珪酸からなる中空の無機多孔質微粒子内に、害虫忌避剤が内包すなわちカプセル化されているものであり、壁面に存在する無数の空孔より害虫忌避剤が徐々に浸み出し、害虫忌避剤がもつ作用を、長時間にわたって持続させることができる。なお、図2に示しているような、非中空の無機多孔質微粒子の空隙部に前記害虫忌避剤を含浸させることもできる。」
(4c)「表1
」
(4d)「表2
」
(4e)「表3
」
(5)引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献5には、次の事項が記載されている。
(5a)「【請求項1】
ダニ忌避成分と溶剤とを含む原液並びに噴射剤を、それらの充填容器より屋内塵性ダニ類の棲息する又は棲息するおそれがある場所の上方の空間に向けて噴霧し、そして該噴霧粒子が沈降し前記場所に付着することにより、前記屋内塵性ダニ類を忌避させる方法であって、
前記ダニ忌避成分は、難揮発性化合物であり、前記噴霧の一ショット当たりの容量は、0.35ないし0.9mLであり、前記原液と前記噴射剤の容量比(原液/噴射剤(v/v))は、20~50/50~80であるところの方法。」
(5b)「【0010】
上記観点から好ましいダニ忌避成分としては、二塩基酸エステルが挙げられ、該二塩基酸エステルの具体例としては、例えば、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアミル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
好ましい二塩基酸エステルとしては、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。」
(6)引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献6には、次の事項が記載されている。
(6a)「【特許請求の範囲】 N,N-ジエチル-m-トルアミド、1-ピペリジンカルボン酸-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル、N,N-ジエチル-m-トルアミドおよび1-ピペリジンカルボン酸-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル、の中から選択されるいずれか一つを必須成分とする害虫忌避薬剤を、下記式[1]で示される層状珪酸塩の層内に担持させた耐久性害虫忌避剤。
(M 1 )a 〔Mgb ,(M2)c 〕(Si4O10)(A)2 [1]
ただし、(M 1 )はCaおよび/またはZnであり、(M2 )はLiおよび/またはNaであり、(A)はFおよび/またはOHを意味する。 また、2a+2b+c=6であり、0.001<c≦0.55である。」
(6b)「本発明における層状珪酸塩へのN,N-ジエチル-m-トルアミド、1-ピペリジンカルボン酸-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル、N,N-ジエチル-m-トルアミドおよび1-ピペリジンカルボン酸-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル、の中から選択されるいずれか一つの好ましい担持量は、多い方が害虫忌避の効果は大きくなりやすいが、あまり担持量が多すぎると、層状珪酸塩に担持しきれなかったN,N-ジエチル-m-トルアミドおよび/または1-ピペリジンカルボン酸-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステルが変色などを引き起こして耐熱性が低下することがある。好ましい担持量は、層状珪酸塩1gに対して、N,N-ジエチル-m-トルアミドならびに1-ピペリジンカルボン酸-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステルの合計量として0.3~1.2mmolであり、さらに好ましくは、0.5~1.0mmolである。」
(6c)「表2
」
2 引用文献に記載された発明
(1)引用文献1に記載された発明
引用文献1の(1d)には、ジ-n-デシルアジペート60.0gおよびジ-2-エチルオクチルフタレート40gをシリカ100gに吸着させた防虫剤が記載されている。
してみると、引用文献1には、
「ジ-n-デシルアジペート60.0gおよびジ-2-エチルオクチルフタレート40gをシリカ100gに吸着させた防虫剤」の発明が記載されている(以下「引用発明1」という。)。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明との対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「防虫剤」は、(1b)の記載より、ダニ等の害虫が寄りつかないようにするためのものと認められることから、本願発明1「ダニ忌避剤」に相当する。引用発明1の「ジ-n-デシルアジペート60.0gおよびジ-2-エチルオクチルフタレート40g」は、(1c)の記載より、防虫剤に用いる薬剤であることが明らかであるから、本願発明1の「薬剤」に相当する。引用発明1のシリカは、本願発明1の「無機多孔性物質」に相当し、引用発明1の「吸着」は、シリカ100gにジ-n-デシルアジペート60.0gおよびジ-2-エチルオクチルフタレート40gを吸着させていることから、本願発明1の「担持」に相当する。
以上のことから、本願発明1と引用発明1は、
「薬剤を無機多孔性物質に担持させてなるダニ忌避剤」である点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本願発明1の薬剤は、「一般式(1)で表される脂肪族二塩基酸ジアルキルエステル」であり、「式(1)中、nは3~15の整数であり、Rはブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2‐エチルヘキシル基から選ばれるアルキル基である」と特定されるのに対して、引用発明1の薬剤は、「ジ-n-デシルアジペート60.0gおよびジ-2-エチルオクチルフタレート40g」である点
(相違点2)
本願発明1は、「無機多孔性物質は、BET比表面積が550~1000m2/g」と特定しているのに対し、引用発明1ではそのような特定をしていない点
(相違点3)
本願発明1は、「無機多孔性物質は、細孔径が0.8~15nm」と特定しているのに対し、引用発明1ではそのような特定をしていない点
(相違点4)
本願発明1は、「薬剤の担持量は、無機多孔性物質のBET比表面積100m2あたり0.007~0.09ml」と特定されるのに対し、引用発明1ではジ-n-デシルアジペート60.0gおよびジ-2-エチルオクチルフタレート40gをシリカ100gに吸着させたと特定している点
(2)判断
上記相違点について検討する。
相違点1ついて、引用文献1の【0015】には、従来から防虫剤成分として、脂肪族系および芳香族系の低級アルキルエステルによる効果が認められていたが、アルキル基の炭素数は1~8の低級のアルキルエステルであり、沸点が比較的低く、溶融樹脂への練り込みが困難であることや、長期間使用中に樹脂から蒸散することも考えられたため、【0016】には、引用発明1においては、炭素数9~14のジアルキルフタレート、ジアルキルアジペート、ジアルキルマレート、ジアルキルフマレートのうちから選ばれた1種または2種以上を配合した防虫剤を用いることで、発明が完成した旨記載されており(摘記(1c))、引用文献1の請求項1において、防虫性の化合物として、アルキル基の炭素数が9~14であるジアルキルフタレート等が記載されている。そうすると、引用文献1においては、アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数1~8のものに代えて、炭素数9~14のものを積極的に選択しているといえる。
一方、本願発明1における一般式(1)で表される脂肪族二塩基酸ジアルキルエステルのアルキル基、すなわち、Rは、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2‐エチルヘキシル基から選ばれること、すなわち炭素数が8までのものが特定されている。
そして、引用文献1は、防虫剤成分の脂肪族系アルキルエステルについて、従来技術であるアルキル基の炭素数1~8の低級アルキルに代えて、炭素数9~14のアルキルエステルを選択したことによって発明を完成したものであり、炭素数9~14以外を選択する動機付けがないことから、当業者であっても、本願発明1を容易に想到し得るものとはいえない。
そして、引用文献2~4において無機多孔性物質のBET比表面積等の物性や引用文献5において従来技術の防虫剤成分、引用文献6において層状珪酸塩が記載されていたとしても、引用発明1とこれらを組み合わせる動機付けも見出すことができない。
したがって、本願発明1は、相違点2から4を検討するまでもなく、引用発明1から容易であるとはいえない。
(3)本願発明2~6について
本願発明2~6も、本願発明1を直接あるいは間接的に引用し、さらに物性や含有成分などを特定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~6に記載された技術的事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。
(4)小括
したがって、本願発明1~6は、当業者が引用文献1~6に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
第7 原査定について
本願発明1~6は、上記第6で検討したとおり、審判請求時の補正により、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1~6に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1~6は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとすることはできず、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-008074