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特許拒絶査定不服審判

2018-006416

粒子

審判番号
2018-006416
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-515514外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年05月09日
審決日
2020年01月06日
公報発行日
2020年07月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .57 -WZ (C11D) / P18 .561-WZ (C11D) / P18 .536-WZ (C11D) / P18 .537-WZ (C11D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法49条1号特許法49条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第184条の12第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項、特許法第2条、特許法第49条第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-515514「粒子」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日国際公開、WO2015/041791、平成28年12月 8日国内公表、特表2016-538350〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2014年8月21日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年9月23日(US)米国〕を国際出願日とする特許出願であって、 平成29年4月28日付けの拒絶理由通知に対し、平成29年8月3日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、 平成29年9月5日付けの拒絶理由通知に対し、平成29年12月8日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、 平成30年1月4日付けの拒絶査定に対し、平成30年5月9日付けで審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、さらに、平成30年9月10日付けで上申書の提出がなされ、 平成30年12月4日付けの当審による拒絶理由通知に対し、令和元年6月7日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、 令和元年7月12日付けの拒絶理由通知(最後)に対し、令和元年10月16日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 第2 令和元年10月16日付け手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 令和元年10月16日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1.補正の内容 令和元年10月16日付け手続補正(以下「第5補正」という。)は、補正前の請求項1の 「【請求項1】 21℃において100cps~1000cpsの粘度を有する布地強化剤組成物であって、全組成物重量に基づいて、 a)0.1%~1%の複数のマイクロカプセルであって、前記複数のマイクロカプセルは、前記マイクロカプセルの外表面上に配置される付着ポリマーを含む、複数のマイクロカプセル、 b)0.3%~2%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物、及び c)0.1~10重量%の界面活性剤を含む組成物であって、 前記組成物は、組成物1グラム当たり、0.1~5個の香料マイクロカプセル凝集粒子の分布集中度指数を有し、前記組成物は消費者製品であり、 前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であり、 前記マイクロカプセルはコア及びシェルを含み、前記シェルは前記コアをカプセル化しており、前記マイクロカプセルは、0.5マイクロメートル~50マイクロメートルの平均粒径を有し、前記コアは香料を含み、 前記付着ポリマーが、ポリビニルアミンとN-ビニルホルムアミドとを含む第1のカチオン変性コポリマー、およびアクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマーを含み、前記付着ポリマーコーティング対壁の重量比率は、1:10~5:1であり、 前壁は、アミノ樹脂を含み、ここで前記アミノ樹脂は、ポリ尿素、ポリウレタン、及び/又はポリウレアウレタンを含む、組成物。」 との記載を、補正後の請求項1の 「【請求項1】 21℃において100cps~1000cpsの粘度を有する布地強化剤組成物であって、全組成物重量に基づいて、 a)0.1%~1%の複数のマイクロカプセルであって、前記複数のマイクロカプセルは、前記マイクロカプセルの外表面上に配置される付着ポリマーを含む、複数のマイクロカプセル、 b)0.01~0.1%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物、及び c)0.1~0.25重量%の界面活性剤を含む組成物であって、 前記組成物は、組成物1グラム当たり、0.1~5個の香料マイクロカプセル凝集粒子の分布集中度指数を有し、前記組成物は消費者製品であり、 前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であり、 前記マイクロカプセルはコア及びシェルを含み、前記シェルは前記コアをカプセル化しており、前記マイクロカプセルは、0.5マイクロメートル~50マイクロメートルの平均粒径を有し、前記コアは香料を含み、 前記付着ポリマーが、ポリビニルアミンとN-ビニルホルムアミドとを含む第1のカチオン変性コポリマー、および多糖類、カチオン変性デンプン、カチオン変性グアー、ポリシロキサン、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びビニルピロリドンのコポリマー、メタクリレート四級化ホモポリマー、およびアクリルアミドからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマーを含み、前記付着ポリマーコーティング対壁の重量比率は、1:10~5:1であり、 前壁は、アミノ樹脂を含み、ここで前記アミノ樹脂は、ポリ尿素、ポリウレタン、及び/又はポリウレアウレタンを含む、組成物。」 との記載に改める補正を含むものである。 2.補正の適否 (1)「b)0.01~0.1%」の補正について 上記請求項1の補正は、補正前の「b)0.3%~2%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物」との記載部分を、補正後の「b)0.01~0.1%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物」との記載に改める補正(以下「改変補正」という。)を含むものである。 しかして、補正後の「0.01~0.1%」という範囲は、補正前の「0.3%~2%」の範囲に含まれないから、当該「改変補正」が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するとは認められない。 また、補正前の「0.3%~2%」との記載自体に不明瞭な点はなく、当該記載が不明瞭である旨の拒絶の理由も示されておらず、当該記載を補正後の「0.01~0.1%」との記載に改変することが単なる「釈明」であるともいえないことから、当該「改変補正」が同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当するとは認められない。 さらに、補正前の「0.3%~2%」との記載が、もともと「0.01~0.1%」という範囲を意図していたといえる事情は見当たらないから、当該「改変補正」が同3号に掲げる「誤記の訂正」に該当するとは認められない。 そして、当該「改変補正」によって「請求項の削除」がなされるとはいえないから、当該「改変補正」が同1号に掲げる「第36条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするものに該当するとは認められない。 したがって、当該「改変補正」は、目的要件を満たすものではない。 (2)「第2のカチオン性ポリマー」の補正について 上記請求項1の補正は、補正前の「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマー」との記載部分を、補正後の「多糖類、カチオン変性デンプン、カチオン変性グアー、ポリシロキサン、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びビニルピロリドンのコポリマー、メタクリレート四級化ホモポリマー、およびアクリルアミドからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマー」に置き換える補正(以下「置換補正」という。)を含むものである。 しかして、補正後の「ポリシロキサン」等の選択肢は、補正前の「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群」の選択肢に含まれないから、当該「置換補正」が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するとは認められない。 また、当該「置換補正」によって、補正前の「請求項」が「削除」される、補正前の「誤記」が「訂正」される、又は補正前の「明りようでない記載」が「釈明」されるといえる事情は見当たらないので、当該「置換補正」が、同1号に掲げる「第36条第5項に規定する請求項の削除」、同3号に掲げる「誤記の訂正」、又は同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当するとは認められない。 したがって、当該「置換補正」は、目的要件を満たすものではない。 (3)補正の適否のまとめ 以上総括するに、第5補正は、目的要件違反があるという点において特許法第17条の2第5項の規定に違反する。 このため、第5補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。 第3 本願発明について 第5補正は上記のとおり却下されたところ、本願は、その発明の名称を「粒子」とするものであって、令和元年6月7日付け手続補正(以下「第4補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項は、次のとおりのものである(第4補正による補正箇所に下線を付した。)。 「【請求項1】 21℃において100cps~1000cpsの粘度を有する布地強化剤組成物であって、全組成物重量に基づいて、 a)0.1%~1%の複数のマイクロカプセルであって、前記複数のマイクロカプセルは、前記マイクロカプセルの外表面上に配置される付着ポリマーを含む、複数のマイクロカプセル、 b)0.3%~2%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物、及び c)0.1~10重量%の界面活性剤を含む組成物であって、 前記組成物は、組成物1グラム当たり、0.1~5個の香料マイクロカプセル凝集粒子の分布集中度指数を有し、前記組成物は消費者製品であり、 前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であり、 前記マイクロカプセルはコア及びシェルを含み、前記シェルは前記コアをカプセル化しており、前記マイクロカプセルは、0.5マイクロメートル~50マイクロメートルの平均粒径を有し、前記コアは香料を含み、 前記付着ポリマーが、ポリビニルアミンとN-ビニルホルムアミドとを含む第1のカチオン変性コポリマー、およびアクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマーを含み、前記付着ポリマーコーティング対壁の重量比率は、1:10~5:1であり、 前壁は、アミノ樹脂を含み、ここで前記アミノ樹脂は、ポリ尿素、ポリウレタン、及び/又はポリウレアウレタンを含む、組成物。 【請求項2】 前記マイクロカプセルは、重量基準で0.1%~5%の有益剤漏出率を有する、請求項1に記載の組成物。」 第4 令和元年7月12日付けの拒絶理由通知(最後)の概要 令和元年7月12日付けの拒絶理由通知(最後)の概要は、次のとおりである。 「理由3:令和元年6月7日付けでした手続補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、請求の範囲の翻訳文又は図面(図面の中の説明を除く。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用する同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 理由4:本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由5:本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。」 第5 当審の判断 1.理由3(新規事項)について (1)「b)0.3~2%の…化合物」という事項について 第4補正は、第4補正による補正前の請求項1の「b)0.3%~2%のMg2+、Ca2+、Cl-、及びSO42-からなる群から選択されるイオン」との記載部分を「b)0.3%~2%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物」との記載に改める補正を含むものである。 そして、上記「b)0.3~2%の…化合物」という事項を導入する補正に関して、令和元年6月7日付けの意見書の第2頁において、審判請求人は『このような御説示に鑑みて、「0.3%~2%のMg2+、Ca2+、Cl-、及びSO42-からなる群から選択されるイオン」との記載を、「0.3%~2%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物」と補正しました。このような補正は、本願明細書の実施例の記載に支持されるものです。…表3における塩濃度は、450~1000ppm(つまり0.45~1.0%)となり、「b)0.3%~2%」との範囲に整合します。』と主張している。 しかしながら、上記化合物の含有量に関して、審判請求人がその根拠として示した翻訳文の明細書の段落0224の表3にある「450~1000ppm」という塩濃度は「0.045~0.1%」と換算されるので、補正後の「0.3%~2%」との範囲に整合していない。 また、翻訳文の明細書の段落0017の「組成物は、…全組成物重量に基づいて、…b)…約0.3~約2%の…イオン、…を含み、」との記載にある「イオン」を基準とした百分率を根拠にしているものと解しても、基準を「イオン」から「化合物」に変更した場合には、その百分率の範囲も連動して変わるので、補正後の「化合物」を基準とした場合の百分率が「0.3%~2%」のままになるとは解せない。 このため、上記「b)0.3~2%の…化合物」という事項を新たに導入する補正が『当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである』とはいえない。 (2)第2のカチオン性ポリマーに関する事項について 第4補正は、第4補正による補正前の請求項1の「多糖類、カチオン変性デンプン、カチオン変性グアー、ポリシロキサン、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びビニルピロリドンのコポリマー、メタクリレート四級化ホモポリマー、アクリルアミド、イミダゾール、イミダゾリニウム、ハライド、およびイミダゾリウムハライドからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマーを含む場合、」との記載部分を「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマーを含み、」との記載に改める補正を含むものである。 そして、上記「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマー」という事項を導入する補正に関して、同意見書の第4頁において、審判請求人は『御説示に鑑みて、第2のカチオン性ポリマーを「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される」ものに限定しました。』と釈明している。 しかしながら、このような釈明のみによっては、当該補正が何を根拠にしているのか理解できないし、実際、その根拠となる記載を見出すことができず、補正後の「イミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」等の4種類のポリマーが、具体的にどのようなポリマーを意味しているのか等を含めて、その補正の根拠が明らかではない。 このため、上記「イミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」等の事項を新たに導入する補正が『当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである』とはいえない。 (3)明細書の段落0224の補正について 第4補正は、本願明細書の段落0224の「a 第四級アンモニウムエステル化合物の、9部のエタノール及び3部のココナッツ油との混合物」との記載部分を「a 総量100部に対して9部のエタノール及び3部のココナッツ油と、残部が第四級アンモニウムエステル化合物との混合物」との記載に改める補正を含むものである。 そして、当該補正に関して、令和元年6月7日付けの意見書の第1~2頁において、審判請求人は『段落[0224]の「a」における混合物が、総量を100部として、9部のエタノール及び3部のココナッツ油を、第四級アンモニウムエステル化合物に混合した物であることを明らかにしました。このような補正は、本願明細書段落[0015]の「別途明示する場合を除き、パーセント及び比は全て、重量パーセント、重量比とする。別途明示する場合を除き、パーセント及び比は全て、組成物全量に基づいて計算する。」との記載に支持されるものです。』と主張をし、 令和元年10月16日付けの意見書の第1~2頁において、審判請求人は『令和元年6月7日付けの手続補正の【手続補正15】で補正されたところの「総量」は、「液体布地強化剤」の総量ではなく、「布地増強活性成分」の総量を意味しています。 したがって、まず、「布地増強活性成分」は、「布地増強活性成分の総量100部に対して、9部のエタノール、3部のココナッツ油、残量(計算により88部の)第四級アンモニウムエステル化合物との混合物」であり、「液体布地強化剤」は、その「布地増強活性成分」を8%の割合で含んでいる(つまり液体布地強化剤の総量100部に対して布地増強活性成分8部が含まれる)のです。 令和元年6月7日付けの意見書において「パーセント及び比は全て、組成物全量に基づいて計算する。」との根拠を示したのは、例えば「9部のエタノール」の基準が何であるかを示すためであり、「9部」の基準は、「布地増強活性成分」という組成物であることを示すためでありました。 そして、そのような解釈は当業者にとって自明なものであります。すなわち、平成28年3月18日付け国内書面に添付された翻訳文の段落[0224]において、「布地増強活性成分」は「a 第四級アンモニウムエステル化合物の、9部のエタノール及び3部のココナッツ油との混合物」と説明されており、「布地増強活性成分」は、それら3成分からなるものであって、エタノール及びココナッツ油の配合量が決まっているのですから、第四級アンモニウムエステル化合物が残部を占めるのは自明であります。 したがって、令和元年6月7日付けの手続補正の【手続補正15】の補正内容は、誤訳に起因するものというよりは、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の導入には相当しないものであると本出願人は思料いたします。』と主張をしている。 しかしながら、令和元年6月7日付けの意見書で根拠とする本願明細書の段落0015の「組成物全量」と、同年10月16日付けの意見書で根拠とする「布地増強活性成分の総量」は、相互に異なるものであるから、上記2つの意見書の主張は相互に矛盾し、どちらも採用できない。 なお、本願の原文明細書の第52頁における対応する記載は“a An ester quaternary ammonium compound mixture with 9 parts ethanol and 3 parts coco oil.”であって、和訳にして「a 9部のエタノールと3部のヤシ油とのエステル四級アンモニウム化合物の混合物」となるところ、本願の翻訳文の全ての記載を総合しても、補正後の「a 総量100部に対して9部のエタノール及び3部のココナッツ油と、残部が第四級アンモニウムエステル化合物との混合物」という事項が導き出し得るといえる合理的な根拠は見出せない。 したがって、当該補正が『当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである』とはいえない。 (4)新規事項のまとめ 以上総括するに、、第4補正は、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用する同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 2.理由5(サポート要件)について (1)サポート要件の観点 一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人(…)が証明責任を負うと解するのが相当である。』とされているところ〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕、このような観点に基づいて、本願特許請求の範囲の記載がサポート要件に違反するものであるか否かを検討する。 (2)解決しようとする課題について 本願請求項1~2に係る発明の解決しようとする課題は、本願明細書の段落0004の記載を含む発明の詳細な説明の全体の記載からみて『複数の異なる表面に対する高レベルの均一な付着特性をもたらす布地強化剤組成物の提供』にあるものと認められる。 (3)「イミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」等について 本願請求項1における「前記付着ポリマーが、ポリビニルアミンとN-ビニルホルムアミドとを含む第1のカチオン変性コポリマー、およびアクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマーを含み、前記付着ポリマーコーティング対壁の重量比率は、1:10~5:1であり」という発明特定事項について、令和元年6月7日付けの意見書の第4頁では『ケ.第2のカチオン性ポリマーは上記したとおり、補正によって限定されており、実施例の記載に対応した記載になっています。』との主張がなされている。 しかしながら、第4補正による補正後の本願明細書の段落0222~0224には、 「【0222】実施例3 実施例1の粒子スラリーを、25℃の温度で、約24%の粒子濃度まで水で調整し、pH3に調整し、多糖類、カチオン変性デンプン、カチオン変性グアー、ポリシロキサン、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びビニルピロリドンのコポリマー、メタクリレート四級化ホモポリマー、アクリルアミド、イミダゾール、イミダゾリニウム、ハライド、又はイミダゾリウムハライドからなる群から選択される、2重量%の第2のカチオン性ポリマーと混合する。次に、スラリーのpHを5.1に調整し、425マイクロメートルのフィルターに通過させ、分布集中度指数をスラリー1グラム当たり約10の粒子とする。 【0223】実施例4 実施例3の粒子スラリーを、約20℃の温度で、液体布地強化剤と、以下の組成物と共に混合する。分布集中度指数は、液体布地強化剤1グラム当たり、 【0224】【表3】 a 総量100部に対して9部のエタノール及び3部のココナッツ油と、残部が第四級アンモニウムエステル化合物との混合物 b DC2310の商標名でダウ・コーニング社(Dow Corning Corp.)から入手可能なシリコーン消泡剤。 c ジエチレントリアミン5酢酸 d Arch Chemicalsから入手可能なProxel(登録商標) e 2.5%塩化カルシウム塩水溶液 f 商品名Rheovis(登録商標)CDEとして、BASFから入手可能なポリマー g 商品名Variquat K1215として、Evonikから入手可能なカチオン性界面活性剤」との記載がなされている。 すなわち、本願請求項1の「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」との記載にあるものは、 本願明細書の段落0222の「多糖類、カチオン変性デンプン、カチオン変性グアー、ポリシロキサン、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びビニルピロリドンのコポリマー、メタクリレート四級化ホモポリマー、アクリルアミド、イミダゾール、イミダゾリニウム、ハライド、又はイミダゾリウムハライドからなる群から選択される、2重量%の第2のカチオン性ポリマー」との記載にあるものと整合せず、 上記『1.(2)第2のカチオン性ポリマーに関する事項について』の項での検討したように、本願請求項1の「イミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」等の4種類のポリマーについては、具体的にどのようなポリマーを意味しているのか等を含めて、本願明細書の発明の詳細な説明に記載があるとはいえない。 このため、本願明細書の発明の詳細な説明の全ての記載を考慮しても、当該「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」という選択肢の範囲が、本願発明の上記『複数の異なる表面に対する高レベルの均一な付着特性をもたらす布地強化剤組成物の提供』という課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあると認めることはできない。 また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるといえる「技術常識」の存在も見当たらない。 したがって、本願請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないので、本願請求項1~2の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 (4)「b)0.3%~2%の…化合物」について 本願請求項1における「b)0.3%~2%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物」という発明特定事項について、令和元年6月7日付けの意見書の第4頁では『イ.b)成分において配合量が特定されるものをイオンでは無く、化合物に補正されましした。この補正により、実施例の記載は、「0.3%~2%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物」を含む組成物という要件を満たすものになっています。』との主張がなされている。 しかしながら、第4補正により補正された本願明細書の段落0224に記載された式10~式12の具体例は「2.5%塩化カルシウム塩水溶液」を用いて、450~1000ppmの塩濃度にしているものであるところ、この表3に示される「液体布地強化剤組成物」に含まれる塩化カルシウム(CaCl2)の濃度は0.045~0.1重量%であって、本願請求項1に記載された「全組成物重量」に基づく「b)0.3~2%」との数値範囲は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載と整合していない。 このため、本願発明の上記『複数の異なる表面に対する高レベルの均一な付着特性をもたらす布地強化剤組成物の提供』という課題を解決できることが、単なる憶測ではなく、実験結果に裏付けられたものであることが、発明の詳細な説明において明らかにされているとはいえない。 また、このような実験結果による裏付けがなくとも、上記広範な範囲の全てにおいて、当該課題を解決できると当業者が認識できるような作用機序などの技術的根拠となる説明も見当たらず、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし、当該課題を解決できると認識できるといえる技術常識の存在も見当たらない。 したがって、本願請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないので、本願請求項1~2の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 (5)「c)0.1~10重量%の界面活性剤を含む組成物」について 本願請求項1における「c)0.1~10重量%の界面活性剤を含む組成物であって、…前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であり」という発明特定事項について、令和元年6月7日付けの意見書の第4頁では『ウ.界面活性剤(カチオン性界面活性剤)の配合量として、「15%~40%」と記載されていたのは、前記した通り、誤記でしたので「0.1~10重量%」に補正しました。そして、その補正の結果、実施例の記載は、「0.1~10重量%の界面活性剤を含む組成物」との要件を満たすものになっています。』との主張がなされている。 しかしながら、補正後の本願明細書の段落0224の表3に記載された式10~式12の具体例(布地強化剤組成物の実施例4)は、そのカチオン性界面活性剤の濃度が「0.25%」である場合のもののみとなっており、補正により削除された「0%」の具体例を考慮したとしても、このような狭い濃度範囲の具体例の記載のみによっては、補正後の請求項1の「0.1~10重量%」という広範な範囲の全てにおいて、本願発明の『複数の異なる表面に対する高レベルの均一な付着特性をもたらす布地強化剤組成物の提供』という課題を解決できると直ちに認識できるとはいえない。 したがって、本願請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないので、本願請求項1~2の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 なお、令和元年10月16日付けの意見書の第3頁では『御説示によれば、令和元年6月7日付けの手続補正の【手続補正16】における「c)0.1~10重量%の界面活性剤を含む組成物であって、…前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であり」という発明特定事項について、本願明細書の発明の詳細な説明の記載と整合しておらず、発明の詳細な説明に記載されたものではない、とのことであります。このような御説示に鑑みて、前項1での述べたとおり、界面活性剤の濃度範囲の上限を実施例の記載に即して0.25重量%と補正しました。』との主張がなされているところ、仮に同意見書が前提とする第5補正による補正後の「0.1~0.25重量%」という範囲に限定されたとしても、この範囲は本願明細書の段落0075の「存在する場合、カチオン性界面活性剤系は、すすぎ易い感覚、レオロジー、及び湿潤コンディショニング効果の間のバランスを考慮して…約1.4重量%~約4重量%の濃度で組成物に含まれる。」との記載にある範囲と整合しないので、当該範囲が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲にあるとはいえない。 (6)マイクロカプセルの「平均粒径」の技術的な意味について 本願請求項1における「前記マイクロカプセルは、0.5マイクロメートル~50マイクロメートルの平均粒径を有し」という発明特定事項について、令和元年6月7日付けの意見書の第4頁では『ク.本願明細書の段落[0018]または[0030]には、本願発明の効果を得ることができる態様として、マイクロカプセルの平均粒径について、いくつかの態様が記載されています。従って、マイクロカプセルの平均粒径が「0.5マイクロメートル~50マイクロメートル」であるとき、本願発明の効果が得られることは明確に記載されているといえます。』との主張がなされている。 しかしながら、本願明細書の段落0222の「425マイクロメートルのフィルターに通過させ」との記載によっては、実施例4の「液体布地強化剤」の組成物に用いられている「マイクロカプセル」の粒径が、補正後の請求項1の「0.5マイクロメートル~50マイクロメートルの平均粒径」を満たす範囲にあると直ちに認めることができず、同段落0018及び0030の「前記マイクロカプセルは、約0.01マイクロメートル~約300マイクロメートル…の粒径を有する。」等の記載を参酌しても、補正後の請求項1に規定されたマイクロカプセルの「平均粒径」の「0.5マイクロメートル~50マイクロメートル」という数値範囲と、本願発明の『複数の異なる表面に対する高レベルの均一な付着特性をもたらす布地強化剤組成物の提供』という課題の解決との関係の「技術的な意味」を「具体例の開示がなくとも当業者に理解できる」又は「特許出願時の技術常識を参酌して認識できる」程度に発明の詳細な説明が記載されているとはいえない。 したがって、本願請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないので、本願請求項1~2の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 なお、令和元年10月16日付けの意見書の第3頁では『御説示の通り、明細書に記載された実施例におけるマイクロカプセルの平均粒子径が0.5~50マイクロメートルであることが直接的に読み取ることができる記載が見当たらないかもしれません。しかしながら、本願発明において「平均粒子径が0.5~50マイクロメートル」であるときに臨界的に効果を奏することを理由として、その平均粒子径が限定されたものではありません。すなわち、権利を請求する範囲としてその範囲を選択しているに過ぎないのです。…したがって、実施例における記載では「425マイクロメートルのフィルターに通過させ」との記載からみて、そこに記載されたマイクロカプセルの平均粒子径が仮に「0.5マイクロメートル~50マイクロメートル」の範囲外であるとしても、明細書全体の記載からみれば、「0.5マイクロメートル~50マイクロメートル」の範囲を選択したときに、当該実施例で確認できるものを超える効果が得られることが理解できると考えます。』と主張しているが、マイクロカプセルの平均粒径が「0.5マイクロメートル」のような極小の場合のものが、実施例の「425マイクロメートルのフィルター」を通過する程度の粒径のものと同等の有用性を示し得るといえる具体的な根拠は見当たらないので、当該主張は採用できない。 3.理由4(実施可能要件)について (1)実施可能要件の観点 一般に『方法の発明における発明の実施とは,その方法の使用をすることをいい(特許法2条3項2号),物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(同項1号),方法の発明については,明細書にその方法を使用できるような記載が,物の発明については,その物を製造する方法についての具体的な記載が,それぞれ必要があるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその方法を使用し,又はその物を製造することができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。』とされているところ〔平成22(行ケ)10348号判決参照。〕、このような観点に基づいて、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に違反するものであるか否かを検討する。 (2)「イミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」等について 本願請求項1~2に係る発明は「前記付着ポリマーが、ポリビニルアミンとN-ビニルホルムアミドとを含む第1のカチオン変性コポリマー、およびアクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマーを含み、前記付着ポリマーコーティング対壁の重量比率は、1:10~5:1であり」という事項を発明特定事項とする「布地強化剤組成物」の発明に関するものであるところ、令和元年6月7日付けの意見書の第4頁では『ケ.第2のカチオン性ポリマーは上記したとおり、補正によって限定されており、実施例の記載に対応した記載になっています。』との主張がなされている。 しかしながら、当該「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」という「第2のカチオン性ポリマー」の各々が、どのように「実施例の記載に対応」しているのか不明であり、当該「イミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」等が、具体的にどのような化学構造を有するポリマーなのか、どのように製造ないし入手され得るポリマーなのか、本願明細書の発明の詳細な説明の全ての記載を精読しても、理解することができない。 すなわち、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当該「アクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマー」という「第2のカチオン性ポリマー」の製造ないし入手方法が明確かつ十分に記載されていないので、本願が『発明の詳細な説明において、作り方が具体的に記載されたもの』であるとはいえない。 また、具体的な記載がなくとも『明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき、当業者がその物を作れる場合』に該当するといえる明細書の「記載箇所」や「技術常識」の存在も見当たらない。 このため、本願請求項1~2の「布地強化剤組成物」という物の発明について、明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載があるとはいえず、そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造できるといえる事情も見当たらないことから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、上記の実施可能要件を満たすということはできない。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願請求項1~2に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではないから特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 なお、令和元年10月16日付けの意見書の第4頁では『御説示に対して、上記したとおり、塩濃度や第2のカチオン性ポリマーなどについての記載を本願明細書に記載されたものに補正しました。』との主張がなされているが、第5補正は上記第2の項に示した理由により却下されているので、当該主張は採用できない。 (3)機能・特性等で特定される物の発明の実施可能要件について 本願請求項1の記載は「21℃において100cps~1000cpsの粘度を有する」という発明特定事項、及び「前記組成物は、組成物1グラム当たり、0.1~5個の香料マイクロカプセル凝集粒子の分布集中度指数を有し」という発明特定事項を含み、本願請求項2の記載は「前記マイクロカプセルは、重量基準で0.1%~5%の有益剤漏出率を有する」という発明特定事項を含むものであって、本願請求項1~2の記載は「機能・特性等によって物を特定しようとする記載」を含むものに該当するところ、 一般に『物の有する機能、特性等からその物の構造等を予測することが困難な技術分野において、機能、特性等で特定された物のうち、発明の詳細な説明に具体的に製造方法が記載された物及びその物から技術常識を考慮すると製造できる物以外の物について、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、どのように作るか理解できない場合(例えば、そのような物を作るために、当業者に期待し得る程度を越え得る試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要がある場合)は、実施可能要件違反となる。』とされている。 そして、上記2.(3)に示したように、本願明細書の段落0223~0224には「実施例4」と称する「液体布地強化剤」の場合の具体例についての記載があるが、当該「実施例4」の組成物は、 本願請求項1の「b)0.3%~2%のMgCl2、CaSO4およびCaCl2からなる群から選択される化合物」という発明特定事項の範囲外の450~1000ppm(0.045~0.1%)の「2.5%塩化カルシウム塩水溶液」を含む組成のものであるから、本願請求項1に係る発明の具体例に相当せず、 本願請求項1の「前記付着ポリマーが、ポリビニルアミンとN-ビニルホルムアミドとを含む第1のカチオン変性コポリマー、およびアクリルアミド系カチオン性ポリマー、イミダゾール系カチオン性ポリマー、イミダゾリニウム系カチオン性ポリマー、およびイミダゾリウムハライド系カチオン性ポリマーからなる群から選択される、第2のカチオン性ポリマーを含み、前記付着ポリマーコーティング対壁の重量比率は、1:10~5:1であり」という発明特定事項を満たすものとして明示された具体例でもなく、 本願請求項1の「粘度」及び本願請求項2の「有益剤漏出率」の値も不明なものである。 してみると、本願明細書の実施例を含む発明の詳細な説明の記載によっては、本願請求項1の「21℃において100cps~1000cpsの粘度を有する」という「機能・特性等」の発明特定事項、及び本願請求項2の「前記マイクロカプセルは、重量基準で0.1%~5%の有益剤漏出率を有する」という「機能・特性等」の発明特定事項を含む発明について「当業者に期待し得る程度を越え得る試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要」なく、その実施をすることができるとはいえない。 この点について、令和元年10月16日付けの意見書の第4頁では『粘度や有益剤漏出率については、本願発明において例示されている組成物をそのまま追試すれば実現できるものであって、当業者に過度な試行錯誤を強いるものでもありません。』との主張がなされている。 しかしながら、上記のとおり、当該「例示されている組成物」は、本願請求項1~2に係る発明の具体例に相当するものではなく、当該「例示されている組成物」が、本願請求項1又は2で特定される特定の「粘度」及び「有益剤漏出率」を満たすか否かも不明であるから、上記「粘度や有益剤漏出率については、本願発明において例示されている組成物をそのまま追試すれば実現できる」との主張は根拠のないものであり、 本願請求項1~2の「布地強化剤組成物」を製造することが、具体的な記載がなくとも『明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき、当業者がその物を作れる場合』に該当するといえる明細書の「記載箇所」や「技術常識」の存在は見当たらない。 このため、本願請求項1~2の「布地強化剤組成物」という物の発明について、明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載があるとはいえず、そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造できるといえる事情も見当たらないことから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、上記の実施可能要件を満たすということはできない。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願請求項1~2に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものであるとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本願は、その特許出願の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲についてした補正が第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであり、また、本願は、その特許出願が第36条第4項第1号及び第6項第1項に規定する要件を満たしていないものであるから、特許法第49条第1号及び第4号の規定に該当し、その余のことを検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-006416

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