特許拒絶査定不服審判
2018-004224
有機アミノシラン前駆体、並びにその製造方法及び使用方法
- 審判番号
- 2018-004224
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-266781外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月28日
- 審決日
- 2019年01月28日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】木村 健治
- 【請求人代理人】胡田 尚則
- 分類
- P18 .121-WY (C23C) / P18 .536-WY (C23C) / P18 .537-WY (C23C) / P18 .57 -WY (C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-266781号「有機アミノシラン前駆体、並びにその製造方法及び使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年4月24日出願公開、特開2014-74236号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月24日(パリ条約による優先権主張 2011年5月24日(US)米国、2012年5月17日(US)米国)に出願された特願2012-119083号の一部を、平成25年12月25日に新たな出願としたものであって、平成26年1月17日付けの上申書が提出され、平成27年5月25日付けの上申書及び手続補正書が提出され、平成28年6月3日付けの拒絶理由通知書に対して、平成28年12月7日付けの意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月6日付けの拒絶理由通知書に対して、平成29年9月14日付けの意見書及び手続補正書が提出され、平成29年11月6日付けで拒絶査定がなされ、この拒絶査定に対して、平成30年3月28日付けで審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、平成30年10月31日付けの上申書が提出されたものである。
第2 平成30年3月28日付けの手続補正について
第2-1.補正の内容
平成30年3月28日付けの手続補正は、
(ア)特許請求の範囲について、補正前の請求項1~4、6、7、9、10を削除し、同請求項5、8、11を補正後の請求項1、2、3にすると共に、補正後の請求項1、2、3が関連するようにし、また、補正前の請求項5の「N-(4-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(6-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(3-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(5-メチル-2-ピリジル)ジシラザン及びN-[2-(4-メチルピリミジノ)アミノ]ジシラザンからなる群より選択される、」を「N-(4-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(6-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(3-メチル-2-ピリジル)ジシラザン及びN-(5-メチル-2-ピリジル)ジシラザンからなる群より選択される」とする補正(以下、「補正事項1」という。)、及び
(イ)発明の詳細な説明について、【0053】における式(1)~(6)のうちの式(2)を削除して式(1)及び(3)~(6)とし、【0052】における式(2)についての記載を削除する補正(以下、「補正事項2」という。)を行うものであると認める。
第2-2.補正の適否
(1)補正の目的要件について
補正事項1のうち、補正前の請求項1~4、6、7、9、10を削除する補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「第36条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするものに該当し、また、補正事項1のうち、補正前の請求項5の「N-(4-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(6-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(3-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(5-メチル-2-ピリジル)ジシラザン及びN-[2-(4-メチルピリミジノ)アミノ]ジシラザンからなる群より選択される、」を「N-(4-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(6-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(3-メチル-2-ピリジル)ジシラザン及びN-(5-メチル-2-ピリジル)ジシラザンからなる群より選択される」とした上で、補正前の請求項5、8、11を補正後の請求項1、2、3にすると共に、補正後の請求項1、2、3が関連するようにする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、補正事項2は、平成29年3月6日付けの拒絶理由通知書の理由1の(1)で指摘された事項についてした特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の追加の有無について
補正事項1は、「第36条第5項に規定する請求項の削除」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、補正事項2は、「明りょうでない記載の釈明」を目的とし、また、補正事項1における「N-(4-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(6-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(3-メチル-2-ピリジル)ジシラザン及びN-(5-メチル-2-ピリジル)ジシラザン」は、願書に最初に添付した特許請求の範囲(【請求項25】)及び明細書(【0096】【表8】の「表4 式Bを有する有機アミノシラン」のNo.16ないし19)等に記載されているものであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。
(3)独立特許要件について
(ア)はじめに
補正後の請求項1ないし3に係る発明(以下、「補正発明1」ないし「補正発明3」といい、これらを纏めて「補正発明」という。)は、平成30年3月28日付け手続補正書により補正された請求項1ないし3に記載された事項により特定される、以下のものであり、補正発明1ないし3が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について検討する。
「 【請求項1】
N-(4-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(6-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(3-メチル-2-ピリジル)ジシラザン及びN-(5-メチル-2-ピリジル)ジシラザンからなる群より選択される有機アミノシラン。
【請求項2】
以下を含む、ケイ素含有膜の堆積用の組成物:
請求項1に記載の有機アミノシラン又はこれらの混合物;及び
エーテル、第三級アミン、ニトリル、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、第三級アミノエーテル及びこれらの混合物からなる群より選択される、溶媒。
【請求項3】
ALD又はサイクリックCVDから選択される堆積方法を用いて、結晶性シリコン膜、アモルファスシリコン膜、又はこれらの組合せから選択されるケイ素含有膜を、形成する方法であって、以下の工程を含み、これらの工程を所望の厚さの前記ケイ素含有膜が得られるまで繰り返す方法:
25℃から700℃の範囲の温度に加熱され、かつ1Torr以下の圧力で維持される反応器に、1以上の基材を置く工程;
少なくとも1種の請求項1に記載の有機アミノシラン又はこれらの混合物を、前記反応器に導入する工程;及び
水素、水素プラズマ及びヒドラジンからなる群より少なくとも1種選択される還元剤を、前記反応器に導入して、前記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させ、そして前記1以上の基材上にケイ素含有膜を堆積する工程。」
当審注:補正発明1ないし3の「N-(4-メチル-2-ピリジル)ジシラザン」、「N-(6-メチル-2-ピリジル)ジシラザン」、「N-(3-メチル-2-ピリジル)ジシラザン」及び「N-(5-メチル-2-ピリジル)ジシラザン」の4化合物について、【0096】【表8】の「表4.式Bを有する有機アミノシラン」の「No16ないし19」からして、ピリジン誘導体であることは明らかであり、また、上記「4、6、3、5」を「x」で総称することで、「N-(x-メチル-2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン」ということとする。
(イ)原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、平成29年9月14日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項に係る発明について、「平成29年3月6日付けの拒絶理由通知書に記載した理由1、2、4によって、拒絶をすべきものである」というものであり、その概要は、以下で示すものである。
[理由1]本願の発明の詳細な説明の記載は、本願の請求項1~11に係る発明の「有機アミノシラン」を当業者が「製造」及び「使用」できるように記載しているものではないから、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
[理由2]本願の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明(有機アミノシラン)が発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
[理由4]本願の請求項1~11に係る発明は、以下の引用文献1~4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開平08-099979号公報
引用文献2:特開2007-051363号公報
引用文献3:特開2008-300850号公報
引用文献4:特表2006-517517号公報
そこで、補正発明1ないし3が、これらの拒絶理由を有するものであるか否かを、最初に理由4、次いで理由1、2の順に検討する。
(イ-1)理由4について
原査定の理由4には、引用文献1を主引用例とする理由と、引用文献2を主引用例とする理由とがある。
(a)引用文献1を主引用例とする理由
引用文献1には、例えば、【請求項1】の一般式(4)からして、「R1N(SiR3)2で示されるジシリルアミン(R1は、炭素数1~20の置換もしくは非置換の一価炭化水素基、Rは、水素原子又は炭素数1~10の置換もしくは非置換の一価炭化水素基)。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1のR1N(SiR3)2におけるRが水素原子である場合、N(SiR3)2は、補正発明1のN-ジシラザンに相当するので、両者は、「N-ジシラザン」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
補正発明1は、N-ジシラザンが付加するベースが「(x-メチル)ピリジン」であるのに対して、引用発明1は、同ベースが「R1(炭素数1~20の置換もしくは非置換の一価炭化水素基)」である点。
<相違点>について検討する。
引用文献1には、「R1(炭素数1~20の置換もしくは非置換の一価炭化水素基)」を「(x-メチル)ピリジン」とすることについて、示唆はない。
さらに、その他の上記引用文献2~4にも、引用発明1における「R1」を「(x-メチル)ピリジン」に変更することを想起させる記載や示唆はない。
したがって、補正発明1は、引用発明1及び引用文献1ないし4に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、補正発明2ないし3は、上記相違点に係る事項を有するものであるので、補正発明1と同じく、引用発明1及び引用文献1ないし4に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(b)引用文献2を主引用例とする理由
引用文献2には、例えば、【請求項1】の式Bからして、「RN(SiH3)2で示されるアミノシラン(Rは、直鎖、分枝若しくは環状の飽和若しくは不飽和のC1~C10アルキル基、芳香族、複素環、又は式Cのシリル)。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
注:式Cは、以下のものである。
「
」
補正発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2のRN(SiH3)2におけるN(SiH3)2は、補正発明1のN-ジシラザンに相当するので、両者は、「N-ジシラザン」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点’>
補正発明1は、N-ジシラザンが付加するベースが「(x-メチル)ピリジン」であるのに対して、引用発明2は、同ベースが「R(直鎖、分枝若しくは環状の飽和若しくは不飽和のC1~C10アルキル基、芳香族、複素環、又は式Cのシリル)」である点。
<相違点’>について検討する。
引用文献2には、「R(直鎖、分枝若しくは環状の飽和若しくは不飽和のC1~C10アルキル基、芳香族、複素環、又は式Cのシリル)」を「(x-メチル)ピリジン」とすることについて、示唆はない。
さらに、その他の上記引用文献1、3~4にも、引用発明2における「R」を「(x-メチル)ピリジン」に変更することを想起させる記載や示唆はない。
したがって、補正発明1は、引用発明2及び引用文献1ないし4に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、補正発明2ないし3は、上記相違点’に係る事項を有するものであるので、補正発明1と同じく、引用発明2及び引用文献1ないし4に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(c)まとめ
上記(a)及び(b)より、補正発明は、理由4により拒絶することはできない。
(イ-2)理由1(実施可能要件)について
補正発明は、化学物質の発明であるから、発明の詳細な説明は、その物質を製造することができ、使用することができることを記載するものでなければならない。
(a)製造することができるかについて
補正発明は、「N-(2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン」の4、6、3、5位の「水素」が「メチル基」に置換されたものであるところ、発明の詳細な説明の【0094】(例2)には、「N-(2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン」を製造する際の具体的条件や収率及び質量分析のピークデータについての記載がある。
また、一般に、「2-ピリジル基を有したピリジン」における「ピリジン」の1つの「水素」を「メチル基」に置換して、「メチル基及び2-ピリジル基を有したピリジン」を製造することは、本願優先日前の慣用技術(例えば、特開2001-97950号公報の特に【請求項2】参照)である。
そうすると、発明の詳細な説明は、実質的に、補正発明に係る「N-(x-メチル-2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン」(xは、4、6、3、5のいずれか)を当業者が製造できるように記載するものである、ということができる。
(b)使用することができるかについて
補正発明に係る「N-(x-メチル-2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン(有機アミノシラン)」は、式B(【0012】等参照)で表される、2つのSiH3基を有するものであり、例1の【0090】~【0093】【表5】に示されたN-イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン、例4の【0100】~【0102】【表14】及び例5の【0103】~【0110】【表16】に示された有機アミノシランである、N-メチルシクロヘキシルアミノシラン、N-エチルシクロヘキシルアミノシラン及びN-イソプロピルシクロヘキシルアミノシランは、式A(【0012】等参照)で表される、1つのSiH3基を有するものである。
ここで、発明の詳細な説明には、「理論に拘束されないが、有機アミノシラン前駆体、例えば1以上の-SiH3基を有し、かつ本明細書に記載した式A、B及びCを有する有機アミノシラン前駆体は、ヒドロキシル化している半導体表面に反応するための比較的低い活性化障壁、比較的少ない不純物及び堆積後の比較的高いフィルム密度の点で、SiH2又はSiHを有する他の有機アミノシラン前駆体よりも、有利である。」(【0048】)、有機アミノシランである式Aに係るN-イソプロピルシクロヘキシルアミノシランが優れた熱安定性を有すること(【0090】~【0093】【表5】)、有機アミノシランである、N-メチルシクロヘキシルアミノシラン、N-エチルシクロヘキシルアミノシラン及びN-イソプロピルシクロヘキシルアミノシランを用いて原子層堆積により酸化ケイ素等の膜をウエハー温度45~300℃で製造すること(【0103】~【0110】【表16】)、及び、窒素原子に結合する炭素原子の嵩高さが高くなることで熱安定性が向上すること(【0101】~【0102】【表14】)の記載(開示)があり、そして、平成30年10月31日付け上申書において、「本願明細書の段落0101及び表6の記載を参酌した当業者であれば、-SiH3基を有しかつ嵩高いメチルピリジル基を有する本願請求項1に記載の有機アミノシラン・・・(中略)・・・は、同じく-SiH3基を有しかつ嵩高いシクロヘキシル基を有する式Aの有機アミノシラン、例えば、表6に記載されそして本願の親出願である特願2012-119083号(特許第6404540号公報の請求項1及び2をご参照ください)においてその特許性が認められたN-メチルシクロヘキシルアミノシラン、N-エチルシクロヘキシルアミノシラン及びN-イソプロピルシクロヘキシルアミノシランの場合と同様に、本願発明の課題を解決するのに十分な安定性を有することを容易に理解する筈です。」と主張されているように、嵩高さが、窒素原子に結合するSiH3基が1つである式Aに係る有機アミノシランよりも高いことが明らかな同SiH3基が2つである式Bに係る有機アミノシランもまた、N-イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン(式A)等と同様に、安定性を有するものである、ということができる。
そうすると、補正発明に係る「N-(x-メチル-2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン(有機アミノシラン)」(式B)は、有機アミノシラン(式A)と同じく、ヒドロキシル化している半導体表面に反応するための比較的低い活性化障壁、比較的少ない不純物及び堆積後の比較的高いフィルム密度の点で、SiH2又はSiHを有する他の有機アミノシラン前駆体よりも、有利であり、また、500℃には至らない低い温度で、酸化ケイ素等の膜を製造することができるものであり、さらに、一応の熱安定性を有するものであることが、発明の詳細な説明に記載(開示)されている、とみるのが妥当である。
そうすると、発明の詳細な説明は、補正発明に係る「N-(x-メチル-2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン」が酸化ケイ素等の膜の製造に使用できるものであることを記載するものである。
(c)まとめ
上記(a)及び(b)より、補正発明は、理由1により拒絶することはできない。
(イ-3)理由2(サポート要件)について
(a)本願の発明の課題
発明の詳細な説明の「窒化ケイ素膜を堆積するのに用いられる前駆体、例えばBTBAS及びクロロシランは、通常、550℃超の温度で膜を堆積させる。半導体デバイスの縮小化及び低いサーマルバジェット・・・略・・・の傾向は、比較的低い処理温度及び比較的高い堆積速度を必要とする。ケイ素含有膜を堆積させる温度は、・・・略・・・低下させるべきである。したがって、550℃以下又は更には室温において、CVD、ALD又は他のプロセスにより堆積を可能とするのに化学的に十分に反応性があり、さらに通常の処理及び取扱い性の要件に関して安定で、新規でかつ比較的コスト優位性のある、ケイ素含有膜の堆積用の前駆体、例えば酸化ケイ素又は窒化ケイ素膜の堆積用の前駆体を与える継続的な必要性が、本分野において存在している。」(【発明が解決しようとする課題】【0010】)等の記載からして、補正発明は、ケイ素含有膜の堆積用の前駆体について、「550℃以下又は更には室温において、CVD、ALD又は他のプロセスにより堆積を可能とするのに化学的に十分に反応性があり、さらに通常の処理及び取扱い性の要件に関して安定で、新規でかつ比較的コスト優位性のある、ケイ素含有膜の堆積用の前駆体を提供する」ことに問題があることを、発明が解決しようとする課題にするものである、と認められる。
(b)検討
上記「(イ-2)」の「(a)」で示したように、発明の詳細な説明は、補正発明に係る「N-(x-メチル-2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン」(xは、4、6、3、5のいずれか)を当業者が製造できるように記載するものであり、同「(b)」で示したように、補正発明に係る「N-(x-メチル-2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン(有機アミノシラン)」(式B)は、有機アミノシラン(式A)と同じく、ヒドロキシル化している半導体表面に反応するための比較的低い活性化障壁、比較的少ない不純物及び堆積後の比較的高いフィルム密度の点で、SiH2又はSiHを有する他の有機アミノシラン前駆体よりも、有利であり、また、500℃には至らない低い温度で、酸化ケイ素等の膜を製造することができるものであり、さらに、一応の熱安定性を有するものであることが、発明の詳細な説明に記載(開示)されている、とみるのが妥当である。
そうすると、補正発明のN-(x-メチル-2-ピリジル)ジシラザン-ピリジン(有機アミノシラン)は、発明の詳細な説明において、上記「550℃以下又は更には室温において、CVD、ALD又は他のプロセスにより堆積を可能とするのに化学的に十分に反応性があり、さらに通常の処理及び取扱い性の要件に関して安定で、新規でかつ比較的コスト優位性のある、ケイ素含有膜の堆積用の前駆体を提供する」ことに問題があるという上記課題を解決できるものとして記載されている、ということができる。
(c)まとめ
上記(b)より、補正発明は、理由2により拒絶することはできない。
(ウ)原査定の理由以外の理由について
補正発明について、新たな拒絶の理由は、発見することができない。
(エ)まとめ
以上のとおりであるから、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する)。
(4)むすび
したがって、平成30年3月28日付けの手続補正は、特許法第17条の2の規定を満たすものである。
第3 当審の判断
1.本願の発明
平成30年3月28日付けの手続補正は適法なものであるから、本願請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、この手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のものである(再掲)。
「【請求項1】
N-(4-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(6-メチル-2-ピリジル)ジシラザン、N-(3-メチル-2-ピリジル)ジシラザン及びN-(5-メチル-2-ピリジル)ジシラザンからなる群より選択される有機アミノシラン。
【請求項2】
以下を含む、ケイ素含有膜の堆積用の組成物:
請求項1に記載の有機アミノシラン又はこれらの混合物;及び
エーテル、第三級アミン、ニトリル、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、第三級アミノエーテル及びこれらの混合物からなる群より選択される、溶媒。
【請求項3】
ALD又はサイクリックCVDから選択される堆積方法を用いて、結晶性シリコン膜、アモルファスシリコン膜、又はこれらの組合せから選択されるケイ素含有膜を、形成する方法であって、以下の工程を含み、これらの工程を所望の厚さの前記ケイ素含有膜が得られるまで繰り返す方法:
25℃から700℃の範囲の温度に加熱され、かつ1Torr以下の圧力で維持される反応器に、1以上の基材を置く工程;
少なくとも1種の請求項1に記載の有機アミノシラン又はこれらの混合物を、前記反応器に導入する工程;及び
水素、水素プラズマ及びヒドラジンからなる群より少なくとも1種選択される還元剤を、前記反応器に導入して、前記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させ、そして前記1以上の基材上にケイ素含有膜を堆積する工程。」
2.本願発明1ないし3について
本願発明1ないし3は、補正発明1ないし3に相当し、これらは、上記「第2-2」において検討したとおり、原査定の理由により拒絶されるものではなく、他に拒絶すべき理由を発見するものでもない。
第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-004224