特許拒絶査定不服審判
2018-003423
絶縁電線及びケーブル
- 審判番号
- 2018-003423
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-120682外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月09日
- 審決日
- 2019年04月02日
- 公報発行日
- 2019年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日立金属株式会社
- 分類
- P18 .121-Z (H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-120682「絶縁電線及びケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-224557〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成28年6月17日の出願であって、平成29年9月28日付け拒絶理由通知の応答時、同年12月1日付けで手続補正がなされたが、同年12月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年3月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年12月1日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
導体と、前記導体の外周に設けられた、金属水酸化物を含有する難燃内層と、前記難燃内層の外周に設けられた水分浸入防止層とを備え、
前記水分浸入防止層の外周に設けられた難燃外層を備える絶縁電線。」
3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-161960号公報(以下、「引用例1」という。)には、「自動車用の防鼠絶縁電線」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
ア.「【請求項1】
破断点伸び500%以上、メルトマスフローレート(MFR)0.5g/10min(230℃、2.16Kg)以下のホモポリプロピレン(PP)60~95質量部と、破断点伸び500%以上、MFR0.25g/10min(190℃、2.16Kg)以下の低密度ポリエチレン5~40質量部の範囲で混合されるベース樹脂100質量部と、シリコーン処理した金属水酸化物80~120質量部と、防鼠剤0.1質量部以上とからなり、電子線照射により架橋させることを特徴とする防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項7】
前記請求項1、2、3、4、5又は6記載の組成物を、被覆したことを特徴とする自動車用の防鼠絶縁電線。」
イ.「【0019】
本発明で用いる難燃剤としては、金属水酸化物が挙げられ、特にシリコーン処理された金属水酸化物の使用が好ましい。シリコーン処理されたものの場合、シリコーン無処理のものに比較して、所望の難燃効果を得るにおいて、金属水酸化物の添加量が少なくて済む。このため、添加量の多いことによる弊害、例えば、機械的特性の低下などを抑制することができる。」
ウ.「【0030】
〈実施例、比較例〉
表1~表2に示した配合からなる、本発明の防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物(実施例1~11)と、本発明の条件を欠く樹脂組成物(比較例1~9)により、サンプルの防鼠絶縁電線を製造した。なお、サンプルの絶縁電線は、外径φ0.9mmの導体上に厚さ0.2mmの絶縁体として、上記各組成物を押出被覆し(被覆外径φ1.3mm)、窒素雰囲気中で電子線照射を行った。電子線照射の強度は0.5Mradであった。また、表中の配合材料の数値は質量部数を示す。なお、用いたホモPP系樹脂はプライムポリマー社製のE111G(商品名)、LDPEは宇部興産社製のUBEC150(商品名)、難燃剤はシリコーン処理された金属水酸化物の水酸化マグネシウムである、キスマ5P(商品名、協和化学社製)、酸化防止剤はイルガノックス1010(商品名、チバスペシャルティ・ケミカルズ社製)、銅害防止剤はCDA-1(商品名、旭電化工業社製)、架橋助剤は25000ppmのHQを併用したTMPTである、NKエステルTMPT(商品名、新中村化学工業社製)である。」
・上記引用例1に記載の「自動車用の防鼠絶縁電線」は、上記「ア.」、「ウ.」の記載事項によれば、導体上に、ベース樹脂と金属水酸化物と防鼠剤とからなる防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物を被覆してなるものである。
・上記「イ.」、「ウ.」の記載事項によれば、金属水酸化物は、難燃剤として用いられるものである。
したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「導体上に、ベース樹脂と難燃剤としての金属水酸化物と防鼠剤とからなる防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物を被覆してなる、自動車用の防鼠絶縁電線。」
(2)引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-203434号公報(以下、「引用例2」という。)には、「遮水防鼠ケーブル」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
ア.「【請求項1】ケーブルシース上に防鼠層、遮水層、防鼠層を順次施してなることを特徴とする遮水防鼠ケーブル。」
イ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来技術;図2の防鼠ケーブルでは、防鼠層3が最外層に露出状態で設けられているため、防鼠剤の成分が、周囲の過酷な環境;水、熱等の影響を受けて経年変化または揮発し、防鼠効果が短い期間しか保持することができないという欠点があった。
【0004】本発明は、前述した従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、その課題;目的は、防鼠効果を長い期間保持可能な遮水防鼠ケーブルを提供することにある。」
ウ.「【0008】図示したように、この実施例のケーブルは、撚り合わせコア1外周に施されるケーブルシース2上に、防鼠層3、遮水層4、防鼠層5を順次施して構成されたものである。」
エ.「【0011】このような構造の遮水防鼠ケーブルによれば、外側の防鼠層5は従来の防鼠層と同じ働きをする。遮水層4があるため、遮水効果が得られる。外側の防鼠層5及び遮水層4により、熱や水等の影響を低減できるので、内側にある防鼠層3は防鼠剤の変化や揮発を抑制することができ、防鼠効果を長期間保持することが可能となる。」
したがって、上記記載事項及び図面(図1)を総合勘案すると、引用例2には、次の技術事項が記載されている。
「遮水防鼠ケーブルにおいて、
コア外周に施されるケーブルシース上に、防鼠層、遮水層、防鼠層を順次施すことによって、外側の防鼠層及び遮水層により水等の影響を低減でき、内側にある防鼠層の防鼠効果を長期間保持することができるようにしたこと。」
4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「導体上に、ベース樹脂と難燃剤としての金属水酸化物と防鼠剤とからなる防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物を被覆してなる・・」によれば、
(a)引用発明における「導体」は、本願発明の「導体」に相当することは明らかである。
(b)引用発明における「防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物」は、導体上に被覆したものであるから当然、層を形成しており、また、防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物は、難燃剤としての金属水酸化物が含まれれていることから、難燃層を形成しているといえるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「導体と、前記導体の外周に設けられた、金属水酸化物を含有する難燃層を備え」ている点で共通しているといえる。
ただし、「難燃層」に関して、本願発明では、金属水酸化物を含有する「難燃内層」と「前記難燃内層の外周に設けられた水分浸入防止層」と「前記水分浸入防止層の外周に設けられた難燃外層」とを備えるのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。
(2)そして、引用発明における「自動車用の防鼠絶縁電線」は、本願発明における「絶縁電線」に相当するものである。
よって、本願発明と引用発明とは、
「導体と、前記導体の外周に設けられた、金属水酸化物を含有する難燃層とを備える絶縁電線。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
導体の外周に設けられた層について、本願発明では、金属水酸化物を含有する「難燃内層」と「前記難燃内層の外周に設けられた水分浸入防止層」と「前記水分浸入防止層の外周に設けられた難燃外層」とを備える旨特定するのに対し、引用発明では、金属水酸化物を含有する難燃層を備えるものの、難燃内層、水分侵入防止層、難燃外層の三層とするような特定は有していない点。
5.判断
上記[相違点]について検討すると、
引用例2には、従来、防鼠層が最外層に露出状態で設けられているため、防鼠剤の成分が、周囲の過酷な環境;水、熱等の影響を受けて経年変化または揮発し、防鼠効果が短い期間しか保持することができないという課題を解決するために、遮水防鼠ケーブルにおいて、コア外周に施されるケーブルシース上に、防鼠層、遮水層、防鼠層を順次施すことによって、外側の防鼠層及び遮水層により水等の影響を低減でき、内側にある防鼠層の防鼠効果を長期間保持することができるようにした技術事項が記載(上記「3.(2)」を参照)されており、引用発明においても、防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物層は防鼠剤を含有していることから、防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物層の防鼠効果を長期間保持することを考慮して上記引用例2に記載の技術事項を採用し、導体上に防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物層、遮水層、防鼠耐磨耗性難燃樹脂組成物層を順次施すようし、その結果として相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
なお、請求人は審判請求書において、もともと1つであった防鼠層が遮水層により断ち切られて2つの防鼠層を作り出す技術思想を引用文献2に記載の「引用発明」として認定することはできず、それ故、かかる「引用発明」の認定を前提とする「引用文献1(引用例1)に開示された発明において、水等の影響により絶縁層内の添加物(例:難燃剤、防鼠剤)が経年変化等することを防ぐために、絶縁層を遮水層によって分断する(すなわち、絶縁層、遮水層、絶縁層の順に被覆する)ことは、当業者が容易に想到し得ることである。」との審査官の認定は明らかに妥当性を欠くものである旨主張している。
結局のところ、請求人は、もともと1つであった防鼠層のその厚さ等を変えることなく、その間に遮水層を設けて2つの防鼠層に分けるという技術思想は引用文献2に開示されていない旨主張しているものと解されるが、審査官による、引用文献2に記載の技術事項の認定において用いられた「分断する」について、平成29年9月28日付け拒絶理由通知には「すなわち、防鼠層、遮水層、防鼠層の順に被覆する」とも記載されており、一方で、もともと1つであった防鼠層のその厚さ等を変えることなく、防鼠層を遮水層によって分断するとまでは記載されていない。つまり、審査官による「分断する」は、もともと1つであった防鼠層のその厚さ等を変えることなく、その間に遮水層を設けて2つの防鼠層に分けることを意味するものとして用いられているわけではなく、防鼠層、遮水層、防鼠層の順に被覆して三層構造とした結果として、2つの防鼠層が遮水層によって分断された構造となっていることから用いているにすぎないといえ、請求人の上記主張を採用することはできない。
6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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