特許拒絶査定不服審判
2018-002809
一体化された電気機械と炭化ケイ素電源コンバータアセンブリおよびその作製方法
- 審判番号
- 2018-002809
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-250220外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月28日
- 審決日
- 2019年06月03日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】小倉 博
- 【請求人代理人】田中 拓人
- 分類
- P18 .121-Z (H02M) / P18 .537-Z (H02M) / P18 .575-Z (H02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-250220「一体化された電気機械と炭化ケイ素電源コンバータアセンブリおよびその作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日出願公開、特開2012-115135〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月16日(パリ条約による優先権主張 2010年11月19日 米国(US))に出願したものであって、手続の概要は以下のとおりである。
拒絶理由通知 :平成27年12月 7日(起案日)
意見書 :平成28年 6月14日
手続補正 :平成28年 6月14日
拒絶理由通知(最後) :平成28年11月14日(起案日)
意見書 :平成29年 5月18日
手続補正 :平成29年 5月18日
補正却下の決定 :平成29年10月31日(起案日)
拒絶査定 :平成29年10月31日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成30年 2月28日
手続補正 :平成30年 2月28日
第2 平成30年2月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年2月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
平成30年2月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、請求項1については、
「 【請求項1】
ロータ(110)およびステータ(112)を含む電気機械(66、208)と、
前記電気機械(66、208)に電気的に結合され、前記電気機械(66、208)を駆動するために直流接続路電圧を交流出力電圧に変換するように構成された電力コンバータ(58、210)と、
単一の冷却ループ(202)とを備える電気駆動システム(44)であって、
前記電力コンバータ(58、210)が複数の炭化ケイ素(SiC)金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)スイッチングデバイス(80、82、84、86、88、90)を備え、
前記電気機械(66、208)と前記電力コンバータ(58、210)が前記単一の冷却ループ(202)内で一体化され、前記単一の冷却ループ(202)の冷媒が不凍液である、電気駆動システム(44)。」
とあったところを、
本件補正により、
「 【請求項1】
ロータ(110)およびステータ(112)を含む電気機械(66、208)と、
前記電気機械(66、208)に電気的に結合され、前記電気機械(66、208)を駆動するために直流接続路電圧を交流出力電圧に変換するように構成された電力コンバータ(58、210)と、
単一の冷却ループ(202)とを備える電気駆動システム(44)であって、
前記電力コンバータ(58、210)が複数の炭化ケイ素(SiC)金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)スイッチングデバイス(80、82、84、86、88、90)を備え、
前記電力コンバータ(58、210)と前記電気機械(66、208)とを接続するケーブルが前記単一の冷却ループ(202)内に配置されるように、前記電気機械(66、208)と前記電力コンバータ(58、210)が前記単一の冷却ループ(202)内で一体化され、前記単一の冷却ループ(202)の冷媒が不凍液である、電気駆動システム(44)。」
とするものである。
上記本件補正の内容は、請求項1について、発明特定事項である「前記電気機械(66、208)と前記電力コンバータ(58、210)が前記単一の冷却ループ(202)内で一体化され」ることについて「前記電力コンバータ(58、210)と前記電気機械(66、208)とを接続するケーブルが前記単一の冷却ループ(202)内に配置されるように、」と限定したものである。
本件補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。
2.特許請求の範囲の記載要件
請求項1には、「前記電力コンバータ(58、210)と前記電気機械(66、208)とを接続するケーブルが前記単一の冷却ループ(202)内に配置される」との記載がある。
しかしながら、発明の詳細な説明には、背景技術として、「システムの電力コンバータは一般に、それが結合される電気機械から比較的遠く離して取り付けられる」ことには、「電力コンバータを電気機械と結合するのに必要な延長ケーブル接続により、電磁妨害(EMI)が増加する」欠点がある(【0005】)との記載があり、また、発明を実施するための形態として、「電力コンバータ210を電気機械208のすぐ近傍に取り付ける(または一体化する)ことができ、それによって、電力コンバータを電気機械に結合する長いシールドケーブルが不要になる」(【0025】)との記載があるから、発明の詳細な説明に記載された発明においては、少なくとも「長いシールドケーブル」を備えるものは排除されている。(なお、下線は当審で付与した。)
したがって、「長いシールドケーブル」を備えるものを何ら排除しない請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
よって、本件補正後の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件を満たしていない。
3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
平成30年2月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成28年6月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-199986号公報(平成17年7月28日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「【0069】
図1を参照して、ハイブリッド自動車100は、動力伝達ギア102と、ディファレンシャルギア104と、駆動輪106R,106Lと、プラネタリギア108と、動力取出ギア110と、チェーンベルト112と、モータジェネレータMG1,MG2と、エンジン114と、レゾルバ116~118と、ダンパ120と、バッテリ122と、インバータ124,126と、制御装置128とを備える。」
(2)「【0074】
モータジェネレータMG1,MG2は、3相交流同期電動発電機であり、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する3相コイルが回巻されたステータとを含む。モータジェネレータMG1のロータは、サンギア軸140に結合され、モータジェネレータMG2のロータは、リングギア軸142に結合されている。この各モータジェネレータMG1,MG2は、永久磁石による磁界と3相コイルによって形成される磁界との相互作用によりロータを回転駆動する電動機として動作するとともに、永久磁石による磁界とロータの回転との相互作用により3相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機として動作する。」
(3)「【0076】
インバータ124,126は、バッテリ122から直流電圧を受け、その受けた直流電圧を交流電圧に変換してそれぞれモータジェネレータMG1,MG2へ出力する。また、インバータ124,126は、モータジェネレータMG1,MG2によって発電された交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ122を充電する。インバータ124,126は、後述するように、高耐熱性のSiC(シリコンカーバイド)系パワー素子によって構成され、制御装置128から受ける制御信号に基づいてパワートランジスタがスイッチング動作することにより上述した電圧変換を行なう。」
(4)「【0079】
図2を参照して、ハイブリッド自動車100は、モータジェネレータMG1,MG2と、インバータ装置150と、バッテリ122と、制御装置128とを備える。インバータ装置150は、インバータ124,126と、コンデンサCと、電源ラインL1と、接地ラインL2とを含む。そして、インバータ124は、SiCトランジスタQ11~Q16と、SiCダイオードD11~D16とを含み、インバータ126は、SiCトランジスタQ21~Q26と、SiCダイオードD21~D26とを含む。」
(5)「【0088】
このハイブリッド自動車100においては、インバータ124,126は、バッテリ122から電源ラインL1および接地ラインL2を介して直流電力を受け、その受けた直流電力を交流電力に変換してそれぞれモータジェネレータMG1,MG2へ出力する。また、インバータ124,126は、それぞれモータジェネレータMG1,MG2によって発電された交流電力を直流電力に変換し、電源ラインL1および接地ラインL2を介してバッテリ122を充電する。」
(6)「【0092】
図3を参照して、この実施の形態1によるハイブリッド自動車100は、インバータ装置150と、モータジェネレータMG1,MG2と、エンジン114と、ラジエータ170と、ウォータポンプ172と、冷媒路174~182とを備える。」
(7)「【0093】
ラジエータ170の第1のポートとインバータ装置150との間に冷媒路174が設けられ、インバータ装置150とモータジェネレータMG1,MG2との間に冷媒路176が設けられる。また、モータジェネレータMG1,MG2とエンジン114との間に冷媒路178が設けられ、エンジン114とポンプ172との間に冷媒路180が設けられる。そして、さらに、ポンプ172とラジエータ170の第2のポートとの間に冷媒路182が設けられる。すなわち、インバータ装置150、モータジェネレータMG1,MG2、エンジン114およびウォータポンプ172は、冷媒路174~182によって直列に接続される。」
(8)「【0094】
ウォーターポンプ172は、不凍液などの冷却水を循環させるためのポンプであって、図に示される矢印の方向に冷却水を循環させる。ラジエータ170は、インバータ装置150、モータジェネレータMG1,MG2およびエンジン114を循環してきた冷却水を冷却する。」
上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。
(a)ハイブリッド自動車は、モータジェネレータと、エンジンと、バッテリと、インバータと、ラジエータと、ウォータポンプと、冷媒路とを備える(摘示事項(1)、(4)、(6))。
(b)モータジェネレータは、ロータと、ステータとを含む(摘示事項(2))。
(c)インバータは、バッテリから電源ラインおよび接地ラインを介して直流電圧を受け、その受けた直流電圧を交流電圧力に変換してモータジェネレータへ出力する(摘示事項(3)、(5))。
(d)インバータは、複数のSiC(シリコンカーバイド)系パワー素子によって構成され、パワートランジスタがスイッチング動作することにより電圧変換を行なう(摘示事項(3)、図2)。
(e)インバータ、モータジェネレータ、エンジンおよびウォータポンプは、冷媒路によって直列に接続される(摘示事項(7))。
(f)ウォーターポンプは、不凍液などの冷却水を循環させる(摘示事項(8))。
以上を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「モータジェネレータと、エンジンと、バッテリと、インバータと、ラジエータと、ウォータポンプと、冷媒路とを備えるハイブリッド自動車であって、
モータジェネレータは、ロータと、ステータとを含み、
インバータは、バッテリから電源ラインおよび接地ラインを介して直流電圧を受け、その受けた直流電圧を交流電圧力に変換してモータジェネレータへ出力し、
インバータは、複数のSiC(シリコンカーバイド)系パワー素子によって構成され、パワートランジスタがスイッチング動作することにより電圧変換を行ない、
インバータ、モータジェネレータ、エンジンおよびウォータポンプは、冷媒路によって直列に接続され、
ウォーターポンプは、不凍液などの冷却水を循環させるハイブリッド自動車。」
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-124764号公報(平成19年5月17日公開、以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(9)「【0007】
この発明の目的は、インバータが一体化され小型化かつ構成が簡素化された車両の駆動装置を提供することである。」
(10)「【0076】
図1のパワー制御ユニット21は、図5に示すようにモータジェネレータMG2の回転中心軸に対し、少なくとも一方側にリアクトルL1が他方側に平滑用コンデンサC2が分割配置される。モータジェネレータMG1,MG2、動力分割機構、およびパワー制御ユニット21は、金属製のケースに収容されて一体化されている。」
上記摘示事項及び図面の記載から、引用例2には、次の技術的事項が記載されているものと認める。
「小型化かつ構成が簡素化された車両の駆動装置を提供するために、モータジェネレータ、動力分割機構、およびパワー制御ユニットを、金属製のケースに収容して一体化する。」
3.対比
そこで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)電気駆動システム
引用発明のハイブリッド自動車が備える電気的に自動車を駆動するための構成は、「電気駆動システム」といえる。
(2)電気機械
引用発明の「モータジェネレータ」は、ロータと、ステータとを含むから、「ロータおよびステータを含む電気機械」といえる。
(3)電力コンバータ
引用発明の「インバータ」は、バッテリから電源ラインおよび接地ラインを介して直流電圧を受け、その受けた直流電圧を交流電圧力に変換してモータジェネレータへ出力するから、「前記電気機械に電気的に結合され、前記電気機械を駆動するために直流接続路電圧を交流出力電圧に変換するように構成された電力コンバータ」といえる。
(4)単一の冷却ループ
引用発明において、インバータ、モータジェネレータ、エンジンおよびウォータポンプは、冷媒路によって直列に接続され、ウォーターポンプは、冷却水を循環させるから、引用発明は単一の冷却ループを備えるといえる。
(5)炭化ケイ素(SiC)金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)スイッチングデバイス
引用発明の「インバータ」は、複数のSiC(シリコンカーバイド)系パワー素子によって構成され、パワートランジスタがスイッチング動作することにより電圧変換を行なうから、本願発明と引用発明とは、「前記電力コンバータが複数の炭化ケイ素(SiC)トランジスタスイッチングデバイスを備え」る点で一致する。
もっとも、「トランジスタ」について、本願発明は、「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。
(6)一体化
本願発明と引用発明とは、「前記電気機械と前記電力コンバータが前記単一の冷却ループ内」にある点で一致する。
もっとも、「前記電気機械と前記電力コンバータ」について、本願発明は、「一体化され」るのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。
(7)不凍液
引用発明の「ウォーターポンプ」は、不凍液などの冷却水を循環させるから、「前記単一の冷却ループの冷媒が不凍液である」といえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「ロータおよびステータを含む電気機械と、
前記電気機械に電気的に結合され、前記電気機械を駆動するために直流接続路電圧を交流出力電圧に変換するように構成された電力コンバータと、
単一の冷却ループとを備える電気駆動システムであって、
前記電力コンバータが複数の炭化ケイ素(SiC)トランジスタスイッチングデバイスを備え、
前記電気機械と前記電力コンバータが前記単一の冷却ループ内にあり、前記単一の冷却ループの冷媒が不凍液である、電気駆動システム。」の点。
そして、次の点で相違する。
<相違点1>
「トランジスタ」について、本願発明は、「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
<相違点2>
「前記電気機械と前記電力コンバータ」について、本願発明は、「一体化され」るのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
4.判断
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点1>について
インバータに用いられるトランジスタとして、「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)」はごく一般的なものであるから、引用発明において、「トランジスタ」として「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)」を採用し、<相違点1>の構成とすることは、当業者が適宜為し得る。
<相違点2>について
引用例2には、「小型化かつ構成が簡素化された車両の駆動装置を提供するために、モータジェネレータ、動力分割機構、およびパワー制御ユニットを、金属製のケースに収容して一体化する」技術的事項が記載されているところ、引用発明におけるハイブリッド自動車にあっても小型化や構成の簡素化などは当然に望まれることであるから、引用発明においても、かかる技術的事項を採用してモータジェネレータとインバータを一体化し、<相違点2>の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。
また、明細書に記載された本願発明が奏する効果についてみても、本願発明の構成のものとして当業者であれば予測し得る程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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