特許拒絶査定不服審判
2020-014166
光起電力ソリッドステート変圧器、光起電力インバータシステム及び双方向高電圧変換器
- 審判番号
- 2020-014166
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-008998外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月08日
- 審決日
- 2021年07月09日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (H02M) / P18 .575-Z (H02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 8998「光起電力ソリッドステート変圧器,光起電力インバータシステム及び双方向高電圧変換器」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日出願公開,特開2019-134665〕について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
理 由
第1.手続の経緯
本願は,平成31年1月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年1月31日(以下,「優先日」という。) 中国)を出願日とする出願であって,令和1年12月18日付けで拒絶理由が通知され,これに対して令和2年3月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和2年5月29日付けで拒絶査定がなされた(以下,「原査定」という。)。これに対して,令和2年10月8日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2.令和2年10月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年10月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「光起電力ソリッドステート変圧器であって、
複数の単相モジュールと、フィルタとを含み、前記単相モジュールは、複数の多出力絶縁型DC/DCコンバータと、複数のカスケード接続DC/ACモジュールとを含み、
前記多出力絶縁型DC/DCコンバータのそれぞれは、1つのDC/ACモジュール、1つの高周波変圧器、及び複数のAC/DCモジュールを含み、
前記カスケード接続DC/ACモジュールの入力端は、少なくとも一つの前記AC/DCモジュールの出力端に接続され、
複数の前記カスケード接続DC/ACモジュールの出力端はカスケード接続され、且つカスケード接続された第1の出力端を前記単相モジュールの第1の出力端とし、カスケード接続された第2の出力端を前記単相モジュールの第2の出力端とし、
前記単相モジュールの第1の出力端は、前記フィルタの入力端に接続され、複数の前記単相モジュールの第2の出力端は互いに接続されるか、又は前記単相モジュールの第2の出力端は前記フィルタの出力端に接続され、
複数の前記多出力絶縁型DC/DCコンバータは、各単相モジュールでは、同一のDC/ACモジュール、同一の高周波変圧器を共有せず、
前記高周波変圧器は、絶縁電圧レベルが10KV以上の変圧器であることを特徴とする光起電力ソリッドステート変圧器。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和2年3月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「光起電力ソリッドステート変圧器であって、
複数の単相モジュールと、フィルタとを含み、前記単相モジュールは、複数の多出力絶縁型DC/DCコンバータと、複数のカスケード接続DC/ACモジュールとを含み、
前記多出力絶縁型DC/DCコンバータのそれぞれは、1つのDC/ACモジュール、1つの高周波変圧器、及び複数のAC/DCモジュールを含み、
前記カスケード接続DC/ACモジュールの入力端は、少なくとも一つの前記AC/DCモジュールの出力端に接続され、
複数の前記カスケード接続DC/ACモジュールの出力端はカスケード接続され、且つカスケード接続された第1の出力端を前記単相モジュールの第1の出力端とし、カスケード接続された第2の出力端を前記単相モジュールの第2の出力端とし、
前記単相モジュールの第1の出力端は、前記フィルタの入力端に接続され、複数の前記単相モジュールの第2の出力端は互いに接続されるか、又は前記単相モジュールの第2の出力端は前記フィルタの出力端に接続され、
複数の前記多出力絶縁型DC/DCコンバータは、各単相モジュールでは、同一のDC/ACモジュール、同一の高周波変圧器を共有しないことを特徴とする光起電力ソリッドステート変圧器。」
2.補正の適否
本件補正は,請求項1について,本件補正前の「高周波変圧器」に「前記高周波変圧器は、絶縁電圧レベルが10KV以上の変圧器である」との限定を加えたものである。また,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。したがって,請求項1についての本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か(特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否か)を検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献及び引用発明,並びに周知技術及び技術常識
ア 引用文献1
(ア)本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の理由において引用された,米国特許出願公開第2015/0016159号明細書(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審において付加した。以下,同じ。)
a 「[0084] FIG. 1 illustrates a first embodiment of a power converter circuit (power inverter circuit) 4 for converting a plurality of n (at least two) DC input voltages V31, V32, V3n into one AC output voltage v1 and one AC output current iOUT, respectively. It should be noted in this connection that throughout the drawings DC voltages and DC currents will be denoted using capital letters “V” and “I,” while AC voltages and AC currents will be denoted using lowercase letters “v” and “i.” The power converter circuit includes a plurality of n (at least two) converter units (inverter units) 21, 22, 2n, with n≧2. Each of these converter units includes an input with input terminals 211, 221; 212, 222; and 21n, 22n that are configured to be coupled to a DC power source 31, 32, 3n. In FIG. 1, besides the power converter circuit 1 with the converter units 21, 22, 2n DC power sources 31, 32, 3n are also illustrated. These DC power sources 31, 32, 3n together with the power converter circuit 1 form an AC power supply system or an AC current supply system. The DC power sources 31, 32, 3n are implemented as photovoltaic (PV) modules in the embodiment illustrated in FIG. 1. However employing PV modules as DC power sources is only an example. Any other type of DC power source, such as a power source including fuel cells, may be used as well. It is even possible to employ different types of DC power sources in one power supply system.
(当審訳:[0084]図1は,n個(2以上)の複数の直流入力電圧V31,V32,V3nを1つの交流出力電圧v1及び交流出力電流iOUTに変換するための電力変換回路(電力インバータ回路)4の第1の実施形態を示している。なお,以下の図面において,直流電圧および直流電流は大文字のVとIを使用して示され,一方,交流電圧および交流電流は小文字のvとiを使用して示されることを留意されたい。電力変換回路は,n個(少なくとも2以上)の複数の電力変換ユニット(インバータユニット)21,22,2nを備えている。これらの電力変換ユニットの各々は,直流電源31,32,3nに接続するように構成された入力端子211と221,212と222,および21nと22nを含む。図1において,電力変換ユニット21,22,2nを有する電力変換回路1に加えて,直流電源31,32,3nも示されている。これらの直流電源31,32,3nは電力変換回路1とともに,交流電源系統または交流電流供給システムを形成する。直流電源31,32,3nは, 図1に示した実施の形態において,光起電(PV)モジュールとして実現される。しかしながら,直流電源としてのPVモジュールを用いることは単なる例示に過ぎない。任意の他のタイプの燃料電池のような直流電源の電力源が含まれ使用できる。また,1つの電源供給システムにおいて異なる種類の直流電力供給源を使用することも可能である。)」
b 「[0119]The switches 421-424 may be implemented as conventional electronic switches. Referring to FIG. 7A, which illustrates a first embodiment for implementing the switches, the switches may be implemented as mosfets, specifically as n-type mosfets. Electronic switch 42 in FIG. 7A represents an arbitrary one of the switches 421-424. A mosfet, such as the n-type mosfet illustrated in FIG. 7A has an integrated diode that is also illustrated in FIG. 7A. This diode is known as body diode and may act as a freewheeling element. A drain-source path, which is a path between a drain terminal and a source terminal, forms a load path of a mosfet, and a gate terminal forms a control terminal.
(当審訳:[0119]スイッチ421-424は従来の電子スイッチとして実施することができる。図7Aは,スイッチを実装するための第1の実施形態を示しており,この例では,スイッチは,MOSFETとして実現され,具体的にはn型MOSFETであってもよい。図7Aにおいて,電子スイッチ42はスイッチ421-424の任意の1つを表す。また,図7Aに示すようなn型MOSFEは,図7Aに示されている集積されたダイオードを有している。このダイオードは,ボディダイオードとして知られており,フリーホイール要素として作用することができる。また,レイン端子とソース端子との間のドレイン-ソース経路は,MOSFETの負荷経路が形成し,ゲート端子は,制御端子を形成する。)
[0120] Referring to FIG. 7B, the switches 421-424could also be implemented as IGBTs, where additionally a diode may be connected between a collector and an emitter terminal of the IGBT. This diode acts as a freewheeling element. In an IGBT, the load path runs between the emitter and the collector terminal, and the gate terminal forms a control terminal.
(当審訳:[0120]図7Bを参照すると,スイッチ421-424は,IGBTとして実施することができ,また,ダイオードは,IGBTのコレクタ-エミッタ間に接続することができる。このダイオードはフリーホイーリング素子として作用する。IGBTにおいて,負荷経路はエミッタとコレクタ端子の間であって,ゲート端子が制御端子を形成する。)
[0121] According to a further embodiment, two of the four switches, such as the first and third transistors 421, 423are implemented as SCR Thyristors, while the other two switches are implemented as mosfet.
(当審訳:[0121]さらなる実施形態によれば,4個のスイッチのうち2個の第1及び第3のトランジスタ421,423はSCRサイリスタとして実装でき,他の2個のスイッチがMOSFETとして実施される。)
[0122] According to yet another embodiment, illustrated in FIG. 7C, the switches 421-424can be implemented as GaN-HEMTs (Gallium-Nitride High Electron Mobility Transistors). Unlike a conventional (silicon or silicon carbide) mosfet a GaN-HEMT does not include an integrated body diode. In a GaN-HEMT, a current conduction in a reverse direction (corresponding to the forward direction of a body diode in a conventional mosfet) can be obtained through a substrate biased turn-on. When implementing the switches in GaN technology, all switches of one converter unit can be implemented on a common semiconductor substrate.
(当審訳:[0122]さらに別の実施形態によれば,図7(c)に示す,スイッチ421-424は,GaN-HEMT(窒化ガリウムHigh Electron Mobility Transistor)として実装することができる。従来の(シリコン又はシリコンカーバイド)MOSFETとは異なり,本GaN-HEMTは,集積ボディダイオードを有していない。GaN-HEMTでは,逆方向(従来のMOSFETのボディダイオードの順方向に対応する)の電流は,ターンオンにバイアスされた基板を通して得ることができる。GaN技術でスイッチを実現した場合,1つの電力変換ユニットの全てのスイッチが共通の半導体基板上に実現することができる。)」
c 「[0336] In the embodiment of FIG. 44, each converter unit 2 receives a DC voltage V3 from a DC power source 3. The level of the DC voltage V3 is dependent on the specific type of DC power source. According to one embodiment, the individual DC power sources 3 each include a string with several PV modules connected in series, so as to provide a voltage level of between several 10V and several 100V. In this case, the power converter circuit 1 can be configured to be coupled to a mid-voltage grid supplying voltages of between 10 kV and 20 kV.
(当審訳:[0336]図44の実施形態では,各電力変換ユニット2は,直流電源3からの直流電圧V3が印加される。直流電圧V3のレベルは,直流電源の特定のタイプに依存する。一実施形態によれば,直列に接続された複数のPVモジュールを有するストリングを含む各直流電源3は,数十Vから数百Vの間の電圧レベルを提供することができる。この場合,電力変換回路1は,10KVと20KVとの間の中電位電力網に結合されるように構成することができる。」
d 「[0345] FIG. 52 illustrates yet a further embodiment of a power converter circuit 1. This power converter circuit 1 includes a DC/DC stage with a plurality of DC/DC converters that share one transformer 69. In the present embodiment, the transformer 69 includes m primary windings 69P1-60Pm (審判注:「69Pn」の誤記と認められる,以下同じ。)and n secondary windings 69S1-60Sn(審判注:「69Sn」の誤記と認められる。) that are inductively coupled. Each of the primary windings 69P1-60Pm iscoupled to a switching circuit 6211-621m, wherein each of the switching circuits 6211-621mis connected to an input with input terminals 211, 21m, 221, 22m. In the present embodiment, each of the switching circuits 6211, 621m is connected to a different DC power source. However, this is only an example. According to a further embodiment (not illustrated) two or more switching circuits are connected to one common DC power source. Referring to FIG. 50(審判注:「FIG. 52」の誤記と認められる,以下同じ。), a rectifier circuit 6221-622n is connected to each of the secondary windings 69S1-69Sn. Each rectifier circuit 6221-622n is configured to generate a DC link voltage V61-V6n from a voltage across the corresponding secondary winding 69S1-69Sn. Each of a plurality DC/AC converters 41-4n that have their outputs connected in series receives one of the DC link voltages V61-V6n, wherein the individual DC/AC converters 41-4n together output the output current i1. Optionally, an unfolding bridge 300 is connected between the series circuit with the DC/AC converters 41-4n and the output terminals 11,12.
(当審訳:[0345]図52は,電力変換回路1の更に別の実施形態を示す。すなわち,この電力変換回路1は,1つの変圧器69を共有する複数のDC/DCコンバータからなるDC/DC段を含む。本実施形態では,変圧器69は,誘導結合された複数m個の一次巻線69P1-69Pmおよび複数n個の二次巻線69S1-69Snを含む。一次巻線69P1-69Pmの各々は,スイッチング回路6211-621mに接続され,スイッチング回路6211-621mは,入力端子211,21m,221,22mの入力に接続されている。本実施形態では,スイッチング回路6211-621mの各々は,異なる直流電源へと接続されている。しかし,これは一例にすぎない。さらなる実施形態(図示せず)によれば,2以上のスイッチング回路は,1つの共通の直流電源に接続されている。図52を参照すると,整流回路6221-622nは,それぞれの二次巻線69S1-69Snの各々に接続されている。各整流回路6221-622nは,対応する二次巻線69S1-69Snの両端電圧からDCリンク電圧V61-V6n を生成するように構成される。出力が直列に接続された複数のDC/ACコンバータ41-4n の各々は,DCリンク電圧V61-V6n の一つを受信し,個々のDC/ACコンバータ41-4n は,共に出力電流i1を出力する。任意選択的に,ブリッジ300は,直列接続回路のDC/ACコンバータ41-4n と,出力端子11,12との間に接続されている。)」
e 「[0377] FIG. 60 schematically illustrates one embodiment of a 3-phase power converter circuit. This 3-phase power converter circuit includes three single phase power converter circuits 1R, 1S, 1T, wherein each of these single phase power converter circuits 1R, 1S, 1T can be implemented like the single phase power converter circuit explained herein before. In FIG. 60, one single phase power converter circuit 1R of these three single power converter circuits is illustrated in detail, the other two single phase power converter circuits 1S, 1T are only schematically illustrated. The topology of the single phase converter 1R shown in FIG. 60 corresponds to the topology of the single phase power converter circuit shown in FIG. 1 to which reference is made. Instead of the topology shown in FIG. 1, the topology shown in FIG. 23 may be used in the single phase converter 1R as well. In the single phase converter 1R shown in FIG. 60 and the single phase converter 1 shown in FIG. 1, like features have corresponding reference characters, wherein the reference characters in FIG. 60 additionally include an index “R.” For example, the power converter units in the single phase converter 1 shown in FIG. 1 have reference characters 21-2n, while the corresponding power converter units in the single phase converter 1R shown in FIG. 60 have reference characters 2R1-2Rn. The individual converter units 2R1-2Rn of the single phase converter 1R shown in FIG. 60 can be implemented in accordance with one of the embodiments explained herein before.
(当審訳:[0377]図60は,3相用電力変換回路の一実施形態を概略的に示す。この3相用電力変換回路は,3個の単相の電力変換回路1R,1S,1T を含み,単相の電力変換回路1R,1S,1T のそれぞれは,本明細書で前に説明した単相の電力変換回路等で実装することができる。図60では,これら3個の電力変換回路の1つの単相の電力変換器回路1Rが詳細に示され,他の2個の単相の電力変換器回路1S,1Tは,概略的にのみ図示されている。図60に示す単相の電力変換回路1Rのトポロジーは,前に説明した図1に示す単相の電力変換回路のトポロジーに対応する。図1のトポロジーの代わりに,図23に示されたトポロジーを単相の電力変換回路1Rに同様に使用することができる。図60に示す単相の電力変換回路1Rと図1に示す単相の電力変換回路1においては,同じ特徴には対応する参照符号を有し,図60中では参照符号は更に,インデックス“R”を含む。例えば,図1に示す単相の電力変換回路1における電力変換ユニットは,参照符号21-2nを有し,図60に示す単相の電力変換回路1Rのこれに対応する電力変換ユニットには,参照符号2R1-2Rn を有している。図60に示した単相電力変換回路1Rの各電力変換ユニット2R1-2Rnは,ここで先に説明した実施形態のうちの1つに従って実施することができる。)
[0378] The 3-phase power converter circuit is configured to be coupled to a 3-phase power grid. This 3-phase power grid may include three phases R, S, T and a neutral N as illustrated in FIG. 60 (where the three phases R, S, T and the neutral N are schematically illustrated). Referring to FIG. 61, the 3-phase power grid may include three phases R, S, T, only.
(当審訳:[0378]3相用電力変換回路は,3相の電力網に結合されるように構成されている。この3相の電力網は,図60(3相R,S,Tと中性点Nは,概略的に示されている)に示すように,3相R,S,Tと中立点Nとを含んでよい。図61に示すように,3相の電力網は3相R,S,Tだけを含んでもよい。)
[0379] Referring to FIG. 60, each of the three single phase power converter circuits 1R, 1S, 1T includes an output, with each of these outputs including two output nodes 11R, 12R, 11S, 12S, and 11T, 12T, respectively. Each of the single phase power converter circuits 1R, 1S, 1T is configured to be coupled to one of the three phases R, S, T and the neutral N. For this, a first output terminal 11R of a first single phase power converter circuit 1R is coupled to a first phase R, a first output terminal 11S of a second single phase power converter circuit 1S is coupled to a second phase S, and a first output terminal 11T of a third single phase power converter circuit 1T is coupled to a third phase T. Second output terminals 12R, 12S, 12T of the individual single phase power converter circuits 1R, 1S, 1T, are coupled to the neutral N.
(当審訳:[0379]図60を参照すると,3個の単相の電力変換回路1R,1S,1Tは,対応するそれぞれの2つの出力ノード11Rと12R,11Sと12S,11Tと12Tを含む出力を備えている。単相の電力変換回路1R, 1S,1Tのそれぞれは,この3相R,S,Tと中立点Nのうちの1つに結合されるように構成されている。そのため,第1の単相の電力変換回路1R の第1の出力端子11R が第1相Rに接続され,第2の単相の電力変換回路1Sの第1の出力端子11Sが第2相Sに接続され,第3の単相の電力変換回路1Tの第1の出力端子11Tが第3相Tに接続されている。各単相の電力変換回路1R,1S,1Tの第2の出力端子12R,12S,12Tが,中性点Nに接続されている。)」
f 「図1
[図:0001380510000001.jpg]
」
g 「図52
[図:0001380510000002.jpg]
」
h 「図60
[図:0001380510000003.jpg]
」
i 上記eの段落[0377]には図60(上記h)の実施形態として,“3個の単相の電力変換回路を含む3相用電力変換回路”が,また,段落[0378]には,「3相用電力変換回路は,3相の電力網に結合される」ことが記載されている。
してみると,引用文献1には,“3個の単相の電力変換回路を含み,3相の電力網に結合されるように構成されている3相用電力変換回路”が記載されているといえる。
j 上記eの段落[0378]には図60(上記h)の実施形態として,“3相の電力網は,3相R,S,Tと中立点Nとを含んで”いること,また,段落[0379]には,「第1の単相の電力変換回路1R の第1の出力端子11R が第1相Rに接続され,第2の単相の電力変換回路1Sの第1の出力端子11Sが第2相Sに接続され,第3の単相の電力変換回路1Tの第1の出力端子11Tが第3相Tに接続されている。各単相の電力変換回路1R,1S,1Tの第2の出力端子12R,12S,12Tが,中性点Nに接続されている」ことが記載されている。
してみると,引用文献1には,“第1の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第1相に接続され,第2の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第2相に接続され,第3の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第3相に接続され,各単相の電力変換回路の第2の出力端子が,中性点に接続され”ることが記載されているといえる。
k 上記eの段落[0377]には,「図60に示す単相の電力変換回路1Rのトポロジーは,前に説明した図1に示す単相の電力変換回路のトポロジーに対応する」と記載され,そして,上記aの段落[0084]には図1(上記f)の実施形態として,「複数の直流入力電圧V31,V32,V3nを1つの交流出力電圧v1及び交流出力電流iOUTに変換するための電力変換回路」が,さらに,「直流電源31,32,3nは,図1に示した実施の形態において,光起電(PV)モジュールとして実現される」ことが記載されている。
してみると,引用文献1には図60の実施形態の電力変換回路として,“電力変換回路は,複数の光起電(PV)モジュールとして実現される直流入力電圧を,1つの交流出力電圧及び交流出力電流に変換するもの”としたものが記載されているといえる。
m さらに,上記dの段落[0345]には図1(上記f)の電力変換回路1の別の実施形態である図52(上記g)として,“電力変換回路は,1つの変圧器を共有する複数のDC/DCコンバータからなるDC/DC段を含み,変圧器は,誘導結合された複数m個の一次巻線および複数n個の二次巻線を含み,さらに,一次巻線の各々は,m個のスイッチング回路に接続され,スイッチング回路は,入力端子と入力が接続され,スイッチング回路の各々は,異なる直流電源へと接続され”ることが記載されているといえる。
してみると,引用文献1には図60の実施形態の電力変換回路として,“電力変換回路は,1つの変圧器を共有する複数のDC/DCコンバータからなるDC/DC段を含み,変圧器は,誘導結合された複数m個の一次巻線および複数n個の二次巻線を含み,さらに,一次巻線の各々は,m個のスイッチング回路に接続され,スイッチング回路は,入力端子と入力が接続され,スイッチング回路の各々は,異なる直流電源へと接続され”ることが記載されているといえる。
n また,上記dの段落[0345]には図52(上記g)の実施形態として,「整流回路6221-622nは,それぞれの二次巻線69S1-69Snの各々に接続されている。各整流回路6221-622nは,対応する二次巻線69S1-69Snの両端電圧からDCリンク電圧V61-V6n を生成するように構成される。出力が直列に接続された複数のDC/ACコンバータ41-4n の各々は,DCリンク電圧V61-V6n の一つを受信し,個々のDC/ACコンバータ41-4n は,共に出力電流i1を出力する」ことが記載されている。
してみると,引用文献1には図60の実施形態の電力変換回路として,“n個の整流回路は,それぞれの二次巻線の各々に接続され,対応する二次巻線両端電圧からDCリンク電圧を生成”すること,及び,“出力が直列に接続されたn個のDC/ACコンバータの各々が,DCリンク電圧の一つを受信し,共に出力電流を出力するものであ”ることが記載されているといえる。
o 上記dの段落[0345]には図52(上記g)の実施形態において,“任意選択的に,ブリッジ300が,直列接続回路のDC/ACコンバータ41-4n と,出力端子11,12との間に接続され”ることが記載されており,図52において「ブリッジ300」が接続されない場合には,図52から,“複数のDC/ACコンバータの出力は直列に接続され,且つ直列に接続されたDC/ACコンバータの第1の出力端を電力変換回路の第1の出力端子とし,直列に接続されたDC/ACコンバータの第2の出力端を電力変換回路の第2の出力端とする”ことが看取できる。
(イ) 上記aないしoの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「3個の単相の電力変換回路を含み,3相の電力網に結合されるように構成されている3相用電力変換回路であって,
第1の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第1相に接続され,第2の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第2相に接続され,第3の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第3相に接続され,各単相の電力変換回路の第2の出力端子が,中性点に接続されており,
電力変換回路は,複数の光起電(PV)モジュールとして実現される直流入力電圧を1つの交流出力電圧及び交流出力電流に変換するものであって,
電力変換回路は,1つの変圧器を共有する複数のDC/DCコンバータからなるDC/DC段を含み,変圧器は,誘導結合された複数m個の一次巻線および複数n個の二次巻線を含み,さらに,一次巻線の各々は,m個のスイッチング回路に接続され,スイッチング回路は,入力端子と入力が接続され,スイッチング回路の各々は,異なる直流電源へと接続され,
n個の整流回路は,それぞれの二次巻線の各々に接続され,対応する二次巻線両端電圧からDCリンク電圧を生成し,
出力が直列に接続されたn個のDC/ACコンバータの各々が,DCリンク電圧の一つを受信し,共に出力電流を出力するものであって,
複数のDC/ACコンバータの出力は直列に接続され,且つ直列に接続されたDC/ACコンバータの第1の出力端を電力変換回路の第1の出力端子とし,直列に接続されたDC/ACコンバータの第2の出力端を電力変換回路の第2の出力端とする,
3相用電力変換回路。」
イ 引用文献2
(ア)本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の理由において引用された,国際公開第2015/105081号(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
a 「[0035] 電力変換装置1Pは、三相交流の各相に対応して設けられた3組の変換装置(第1相変換装置、第2相変換装置、第3相変換装置)1によって構成されている。変換装置1は、太陽光発電パネル2から入力される直流電力を交流電力に変換して、三相交流系統3に供給する。また、3組の変換装置1は、三相交流系統3の中性点Nに対する各相3p(第1相u、第2相v、第3相w)に、それぞれ相電圧で、交流電力を供給する。
・・・中略・・・
[0042] 変換装置1は、単相インバータ回路11と、系統相電源3pとの間にフィルタ回路21を備えている。 フィルタ回路21は、交流リアクトル22と、交流リアクトル22の後段に設けられたコンデンサ23(出力平滑コンデンサ)とを備えて構成されている。フィルタ回路21は、単相インバータ回路11から出力される交流電力に含まれる高周波成分を除去する機能を有している。フィルタ回路21により高周波成分が除去された交流電力は、系統相電源3pに与えられる。
[0043] このように、昇圧回路10及び単相インバータ回路11は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を、フィルタ回路21を介して系統相電源3pへ出力する。」
b 「図2
[図:0001380510000004.jpg]
」
(イ)上記a及びbの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献2には次の周知技術(以下,「フィルタに関する周知技術」という。)が記載されている。
「複数の単相モジュールで構成され,三相電力網に接続される電力変換装置において,各単相モジュールの一方の出力端と三相電力網との間にフィルタを設けること。」
ウ 引用文献3
(ア)本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の理由において引用された,特開2017-11964号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
a 「【0022】
図1は、風力発電用設備に適用して好適な本発明の実施例1に係る電力変換装置を示す図であり、これらの設備は図3で後述するようにいずれも風力発電タワーに設置されている。
【0023】
風力発電用設備は、発電設備と電力変換設備に大別して把握することが可能であり、このうち発電設備は、同図の風車11、ギア10、発電機9、発電電力を直流に変換するパワーコンディショナ8などである。これに対し電力変換設備は、同図の残余の部分であり、いわゆるDC-DCコンバータを構成する回路部分である。本発明の実施例1に係る電力変換設備(DC-DCコンバータ)では、図1に示すようにこの部分を複数にモジュール分けして構成している。
【0024】
実施例1のDC-DCコンバータは、複数個(ここではNと表記)の単位モジュール1からなり、入力側を並列接続、出力側を直列接続して構成される。各単位モジュール1は、入力側のDC-AC変換手段2、出力側のAC-DC変換手段3、および両者を接続する多巻線変圧器4から構成されている。また複数のAC-DC変換手段3の出力側は直列接続されて、一方の直流出力端子はフィルタリアクトル5を介してブッシング22に接続される。複数のAC-DC変換手段3の出力側他方の直流出力端子はアースGNDに接続される。
【0025】
本発明の実施例1においては、DC-DCコンバータを複数個(ここではNと表記)の単位モジュール1で形成するとともに、DC-DCコンバータの低圧部分と、高圧部分を別筐体に収納して、高圧部分の筐体内を油浸構造としている。図1で低圧部分筐体が50であり、高圧部分筐体が7である。低圧部分筐体2にはDC-AC変換手段2が収納され、高圧部分筐体7には、多巻線変圧器4、AC-DC変換手段3、フィルタリアクトル5、フィルタコンデンサ6などが収納される。
【0026】
以下図1のDC-DCコンバータの各部機能について詳細に説明する。典型的な図1のDC-DCコンバータの設計においては、例えば7台の単位モジュール1(従ってN=7)とされ、DC-AC変換手段2とAC-DC変換手段3を接続する多巻線変圧器4の二次側数は5個(従ってk=5)である。kは単位モジュール1内のAC-DC変換手段3の個数に相当している。」
b 「図1
[図:0001380510000005.jpg]
」
(イ)上記a及びbの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献3には次の周知技術(以下,「周知のDC/DC変換部」という。)が記載されている。
「電力変換装置(「電力変換設備(DC-DCコンバータ)」)の複数の入力と複数の出力を有するDC/DC変換部として,複数の各入力に対して,個別1つのDC/ACモジュール(「DC-AC変換手段2」),個別の1つの高周波変圧器(多巻線変圧器4),及び複数のAC/DCモジュール(「AC-DC変換手段3」)を含む1つの多出力絶縁型DC/DCコンバータ(「単位モジュール1」)を接続したもの。」
エ 技術常識を示す文献
(ア)本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の理由において引用された,特開2005-151608号公報(以下,「引用文献6」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
a 「【0035】
図14は、本発明の第8の実施例による共振型コンバータの回路構成図であり、トランスを分割した例である。この図では3分割トランスの例で示した。トランスT11,T12,T13の一次巻線11,12,13は同じ巻数とし、かつトランスの漏れインダクタンス(図示せず)の存在のため、それぞれのトランスがバランスすることを期待している。トランスの分割による効果は、1つのトランスを使用する場合に比べて、容積の小さなトランスを使用できるので、小形、薄型の電源を構成し易いことである。」
(イ)本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の理由において引用された,特開2010-178521号公報(以下,「引用文献7」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
a 「【0101】
また、本実施の形態に示したようにトランスを複数に分割して構成することによりトランス1個当たりが伝達する電力を減らすことが可能になり、この結果、トランス1個のコアの高さを低減し、薄型化することが可能になる。トランスの薄型化と上記したリレー,セメント抵抗の削除によりスイッチング電源基板の厚さを従来の電源よりも薄型化することができる。」
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「3相用電力変換回路」は,「複数の光起電(PV)モジュールとして実現される直流入力電圧を,1つの交流出力電圧及び交流出力電流に変換」する「電力変換回路」からなり,この「電力変換回路」は,「1つの変圧器」と「スイッチング回路」から構成されるものであって,スイッチング回路を半導体で構成することは技術常識(必要であれば,上記「(2)b」参照。)であるから,引用発明の「3相用電力変換回路」は,光起電力用の半導体からなる変圧器といえる。
してみると,引用発明の「3相用電力変換回路」は,本件補正発明の「光起電力ソリッドステート変圧器」に相当する。
イ 通常,DC/DC段における変圧器は高周波のものを用いるのが普通であるから,引用発明の「変圧器」は,本件補正発明の「高周波変圧器」に相当し,また,引用発明の「整流回路」は,本件補正発明の「AC/DCモジュール」に相当する。
そして,引用発明の「スイッチング回路」は,「入力端子」に「入力」である「直流入力」が接続され,出力は「変圧器」に接続されるものであり,DC/AC変換器といえるから,本件補正発明の「DC/ACモジュール」に相当する。
また,引用発明の「変圧器」は,「誘導結合された複数m個の一次巻線および複数n個の二次巻線を含」むものであるから,多出力型の絶縁装置といえる。
そして,引用発明の「変圧器」の「複数m個の一次巻線および複数n個の二次巻線」の各々に「m個のスイッチング回路」及び「n個の整流回路」が接続されるものであり,「スイッチング回路」は「複数m個」,「整流回路」は「複数n個」あるものと認められる。
してみると,引用発明の「1つの変圧器」,及びこの「1つの変圧器」に接続された「複数m個」の「スイッチング回路」及び「複数n個」の「整流回路」からなるものと,本件補正発明の「1つのDC/ACモジュールと,1つの高周波変圧器,及び複数のAC/DCモジュールを含」む「多出力絶縁型DC/DCコンバータのそれぞれ」とは,後記の点で相違するものの“多出力絶縁型DC/DCコンバータは,DC/ACモジュール,1つの高周波変圧器,及び複数のAC/DCモジュールを含”む点では共通する。
ウ 引用発明では,「変圧器は」「複数n個の二次巻線を含み」,「n個の整流回路」が,「それぞれの二次巻線の各々に接続され,対応する二次巻線両端電圧からDCリンク電圧を生成し」,「出力が直列に接続されたn個のDC/ACコンバータの各々が,DCリンク電圧の一つを受信」するものである。
してみると, 引用発明の「DC/ACコンバータ」は,「複数n個」あり,「出力が直列に接続された」ものであり,複数がカスケード接続されているといえる。
また,引用発明の各「電力変換回路」は,「3相の電力網」の各相に接続されるものである。
そして,引用発明の「電力変換回路」は,「直流入力」を「交流出力」に「変換する」ものであって,また,「1つの変圧器を共有する複数のDC/DCコンバータからなるDC/DC段を含み,変圧器は,誘導結合された複数m個の一次巻線および複数n個の二次巻線を含み,さらに,一次巻線の各々は,m個のスイッチング回路に接続され,スイッチング回路は,入力端子と入力が接続され,スイッチング回路の各々は,異なる直流電源へと接続され」,さらに,「n個の整流回路は,それぞれの二次巻線の各々に接続され,対応する二次巻線両端電圧からDCリンク電圧を生成し,出力が直列に接続されたn個のDC/ACコンバータの各々が,DCリンク電圧の一つを受信し,共に出力電流を出力するものであ」る。
してみると,引用発明の「電力変換回路」は,「直流入力」が入力する「複数m個」の「スイッチング回路」と,この「複数m個」の「スイッチング回路」に接続される「複数m個の一次巻線」を含む「1つの変圧器」と,この「変圧器」の「複数n個の二次巻線の各々に接続され」る「複数n個」の「整流回路」と,この「複数n個」の「整流回路」に接続され「交流出力」を行う「複数n個」の「DC/ACコンバータ」からなるものであって,また,「変圧器」は「1つ」であり,引用発明の「1つの変圧器」,及びこの「1つの変圧器」に接続された「複数m個」の「スイッチング回路」及び「複数n個」の「整流回路」からなるもの」において,「変圧器」を「共有」しているものと認められる。
したがって,引用発明の「電力変換回路」は,「1つの変圧器」,及びこの「1つの変圧器」に接続された「複数m個」の「スイッチング回路」及び「複数n個」の「整流回路」からなる1つのものと,「複数n個」の「DC/ACコンバータ」からなるものであるから,上記イの点も踏まえると,引用発明の「電力変換回路」と,本件補正発明の「複数の多出力絶縁型DC/DCコンバータと,複数のカスケード接続DC/ACモジュールとを含」む「単相モジュール」とは,後記の点で相違するものの,“単相モジュールは,多出力絶縁型DC/DCコンバータと,複数のカスケード接続DC/ACモジュールとを含”む点では共通する。
さらに,引用発明の「3個の単相の電力変換回路を含」む「3相用電力変換回路」と,本件補正発明の「複数の単相モジュールと,フィルタとを含」む「光起電力ソリッドステート変圧器」とは,後記の点で相違するものの,“複数の単相モジュールを含む,光起電力ソリッドステート変圧器”の点では共通する。
エ 引用発明では「n個の整流回路」が,「二次巻線両端電圧からDCリンク電圧を生成」し,この「DCリンク電圧の一つを」「出力が直列に接続されたn個のDC/ACコンバータの各々が」「受信」するものであり,「出力が直列に接続されたn個のDC/ACコンバータ」の入力端は,「n個の整流回路」に接続されているといえる。
したがって,引用発明の「出力が直列に接続されたn個のDC/ACコンバータの各々が,DCリンク電圧の一つを受信」することは,本件補正発明の「前記カスケード接続DC/ACモジュールの入力端は,少なくとも一つの前記AC/DCモジュールの出力端に接続され」ることに相当する。
オ 引用発明の「複数のDC/ACコンバータの出力は直列に接続され,且つ直列に接続されたDC/ACコンバータの第1の出力端を電力変換回路の第1の出力端子とし,直列に接続されたDC/ACコンバータの第2の出力端を電力変換回路の第2の出力端とする」ことは,本件補正発明の「複数の前記カスケード接続DC/ACモジュールの出力端はカスケード接続され,且つカスケード接続された第1の出力端を前記単相モジュールの第1の出力端とし,カスケード接続された第2の出力端を前記単相モジュールの第2の出力端と」することに相当する。
カ 引用発明では各「単相の電力変換回路の第1の出力端子」は,各々,「3相の電力網」の各「相」に「接続され」,「各単相の電力変換回路の第2の出力端子」は,「中性点に接続され」るものであり,「各単相の電力変換回路の第2の出力端子」は互いに接続されているものと認められる。
してみると,引用発明の「第1の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第1相に接続され,第2の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第2相に接続され,第3の単相の電力変換回路の第1の出力端子が電力網の第3相に接続され,各単相の電力変換回路の第2の出力端子が,中性点に接続され」ることと,本件補正発明の「前記単相モジュールの第1の出力端は,前記フィルタの入力端に接続され,複数の前記単相モジュールの第2の出力端は互いに接続されるか,又は前記単相モジュールの第2の出力端は前記フィルタの出力端に接続され」ることとは,後記の点で相違するものの,“複数の前記単相モジュールの第2の出力端は互いに接続される”ことの点では共通する。
したがって,本件補正発明と引用発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。
<一致点>
「光起電力ソリッドステート変圧器であって,
複数の単相モジュールを含み,前記単相モジュールは,多出力絶縁型DC/DCコンバータと,複数のカスケード接続DC/ACモジュールとを含み,
前記多出力絶縁型DC/DCコンバータのそれぞれは,DC/ACモジュール,1つの高周波変圧器,及び複数のAC/DCモジュールを含み,
前記カスケード接続DC/ACモジュールの入力端は,少なくとも一つの前記AC/DCモジュールの出力端に接続され,
複数の前記カスケード接続DC/ACモジュールの出力端はカスケード接続され,且つカスケード接続された第1の出力端を前記単相モジュールの第1の出力端とし,カスケード接続された第2の出力端を前記単相モジュールの第2の出力端とし,
複数の前記単相モジュールの第2の出力端は互いに接続される,
光起電力ソリッドステート変圧器。」
<相違点1>
本件補正発明では「フィルタ」を含むものであって,「前記単相モジュールの第1の出力端は,前記フィルタの入力端に接続され,複数の前記単相モジュールの第2の出力端は互いに接続されるか,又は前記単相モジュールの第2の出力端は前記フィルタの出力端に接続され」るのに対して,引用発明ではそのようなフィルタを含むものでなく,各「単相の電力変換回路の第1の出力端子」は,各々,「3相の電力網」の各「相」に「接続され」,「各単相の電力変換回路の第2の出力端子」は,「中性点に接続され」るものである点。
<相違点2>
「多出力絶縁型DC/DCコンバータ」が,本件補正発明では「複数」あり,また,「多出力絶縁型DC/DCコンバータのそれぞれは,1つのDC/ACモジュール」を含むものであって,さらに,「複数の前記多出力絶縁型DC/DCコンバータは,各単相モジュールでは,同一のDC/ACモジュール,同一の高周波変圧器を共有」しないのに対して,引用発明では1つであり,また,「複数m個の」「スイッチング回路」を含むものであって,さらに,「1つの変圧器」を共有している点。
<相違点3>
本件補正発明では,「前記高周波変圧器は,絶縁電圧レベルが10KV以上の変圧器である」のに対して,引用発明では「変圧器」にその旨の特定がされていない点。
(4)判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
上記(2)イ(イ)の引用文献2に記載されるように,複数の単相モジュールで構成され,三相電力網に接続される電力変換装置において,各単相モジュールの一方の出力端と三相電力網との間にフィルタを設けることは,フィルタに関する周知技術である。
そして,引用発明の電力変換装置は,3個の単相の電力変換回路を含み,3相の電力網に結合されるものであるから,引用発明の電力変換装置において,このフィルタに関する周知技術を適用して,各「単相の電力変換回路の第1の出力端子」及び「各単相の電力変換回路の第2の出力端子」にフィルタを設けることで,上記相違点1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2>について
一般に,電力変換装置を構成するDC/DC変換部としては,様々なものが周知であり,DC/DC変換部として具体的にどのような構成とするかは,当業者の設計的事項である。また,上記(2)エの引用文献6,7にも記載されるように,電力変換装置の技術分野においては,変圧器の個数を増やすからといって一概に大型化されるものではないことは,当該技術分野において技術常識である。
してみると,引用発明の「1つの変圧器」,及びこの「1つの変圧器」に接続された「m個のスイッチング回路」及び「n個の整流回路」からなるDC/DC変換部においては,複数「m個」の入力と複数「n個」の出力を有するDC/DC変換部であれば,変圧器の個数によらず,具体的にどのような構成とするかは,当業者が設計時に適宜変更なし得たものと認められる。
そして,上記(2)ウ(イ)の引用文献3に記載されるように,電力変換装置の複数の入力と複数の出力を有するDC/DC変換部として,複数の各入力に対して,個別1つのDC/ACモジュールと,個別の1つの高周波変圧器,及び複数のAC/DCモジュールを含む1つの多出力絶縁型DC/DCコンバータを接続したものは,周知のDC/DC変換部である。
してみれば,引用発明における「1つの変圧器」,及びこの「1つの変圧器」に接続された「m個のスイッチング回路」及び「n個の整流回路」からなるDC/DC変換部として,この周知のDC/DC変換部を適用することによって,上記相違点2の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点3>について
引用文献1の段落[0336](上記(2)ア(ア)c参照。)には,「電力変換回路」の他の実施形態ではあるが,「電力変換回路」を10KVから20KVの間の電力網に接続することが記載されており,引用発明の「電力変換回路」においても10KVから20KVの間の電力網に接続し,そして,その際に,「変圧器」の絶縁電圧レベルを10KV以上とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,引用発明,及び周知の技術に基づいて本件補正発明とすることは,当業者にとって容易である。したがって,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
(5)結語
以上検討したとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3.本願発明について
1.本願発明
令和2年10月8日にされた手続補正(本件補正)は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし11に係る発明は,令和2年3月23日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記第2の1.(2)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,
(理由1)この出願の請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1-3,6,7に基づいて,また,請求項2-10に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1-4,6,7に基づいて,また,請求項11に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1-3,5-7に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 米国特許出願公開第2015/0016159号明細書
引用文献2 国際公開第2015/105081号
引用文献3 特開2017-11964号公報
引用文献4 特開2015-76050号公報
引用文献5 特開2017-55589号公報
引用文献6 特開2005-151608号公報
引用文献7 特開2010-178521号公報
というものである。
3.引用文献,引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は,上記第2の2.(2)引用文献及び引用発明,並びに周知技術及び技術常識で説示したとおりである。
4.対比・判断
本願発明は,上記第2の2.で検討した本件補正発明の発明特定事項である「高周波変圧器」についての限定を省いたものである。
そうすると,本願発明と引用発明は,上記相違点1及び相違点2で相違し,上記相違点1及び相違点2は,上記第2の2.(4)で説示したのと同様の理由で当業者が容易になし得たものである。
したがって,本願発明は,引用発明,引用文献2に記載の周知の技術,引用文献3に記載の周知の技術,及び引用文献6,7に記載の技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4.むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-014166