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特許拒絶査定不服審判

2018-001914

分解可能な循環再生材料

審判番号
2018-001914
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-557309外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年02月13日
審決日
2019年01月04日
公報発行日
2019年07月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (C08L) / P18 .561-Z (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第159条第1項、特許法第53条第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-557309「分解可能な循環再生材料」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日国際公開、WO2014/124562、平成28年 4月21日国内公表、特表2016-511785〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)2月18日を国際出願日とする特許出願であって、平成28年11月9日付けで拒絶理由が通知され、平成29年5月11日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年10月3日付けで拒絶査定がされ、平成30年2月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年5月7日付けで前置報告がされたものである。 第2 平成30年2月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年2月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成30年2月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、補正前の平成29年5月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の 「【請求項1】 PHAs(ポリヒドロキシアルカノエート)及びPLA(ポリ乳酸)を含み、PLAの質量パーセント含量が1%から95%であり、 前記PHAsが、PHBs(ポリヒドロキシ酪酸)またはPHVs(ポリヒドロキシ吉草酸)、またはPHBs及びPHVsの共重合体もしくはブレンドであり、 前記PLAと前記PHBsとの割合が、前記PLAの質量パーセント含量が75%から85%であり、 前記PHBsが、3HB(3-ヒドロキシブタン酸)及び4HB(4-ヒドロキシブタン酸)を重合してなるP(3HB-co-4HB)(重合体)であり、 前記4HBのモルパーセントが5%~85%である ことを特徴とする生分解性材料。」 を、 「【請求項1】 PHAs(ポリヒドロキシアルカノエート)及びPLA(ポリ乳酸)を含み、PLAの質量パーセント含量が1%から95%であり、 前記PHAsが、PHBs(ポリヒドロキシ酪酸)またはPHVs(ポリヒドロキシ吉草酸)、またはPHBs及びPHVsの共重合体もしくはブレンドであり、 前記PLAと前記PHBsとの割合が、前記PLAの質量パーセント含量が75%から85%であり、 前記PHBsが、3HB(3-ヒドロキシブタン酸)及び4HB(4-ヒドロキシブタン酸)を重合してなるP(3HB-co-4HB)(重合体)であり、 前記4HBのモルパーセントが5%~85%である生分解性材料であって、 繊維のランダム堆積を有し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持し、 熱成型、樹脂射出成型、または溶融紡糸により、薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料であり、 前記複合製品は、病気、疾患用のスリング、乳母車または担架に用いられるサーマルボンド-メルトブロー-スパンボンド、または超音波接着不織布を含む製品であり、 前記不織布は、ニードルパンチ工程、スパンレース工程、熱カレンダー、熱気流による堆積、または以下の加熱処理、すなわちマイクロ波、超音波、溶接、遠赤外線及び近赤外線による加熱によって得られるものである ことを特徴とする生分解性材料。」 と補正するものを含むものである。 2 補正事項について 本件補正は、次の補正事項1を含むものである。なお、下線は当審による。以下同じ。 <補正事項1>補正前の請求項1において、生分解性材料をさらに「繊維のランダム堆積を有し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持し、 熱成型、樹脂射出成型、または溶融紡糸により、薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料であり、 前記複合製品は、病気、疾患用のスリング、乳母車または担架に用いられるサーマルボンド-メルトブロー-スパンボンド、または超音波接着不織布を含む製品であり、 前記不織布は、ニードルパンチ工程、スパンレース工程、熱カレンダー、熱気流による堆積、または以下の加熱処理、すなわちマイクロ波、超音波、溶接、遠赤外線及び近赤外線による加熱によって得られるものである」と限定。 そうすると、本件補正により補正された請求項1に係る生分解性材料は、「薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料」であり、補正事項1の下線部分がこれら全ての材料を修飾するものとなる。すなわち、補正事項1により、これら全ての「薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料」は、「繊維のランダム堆積を有し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持」するものとなった。 3 当初明細書及び特許請求の範囲の記載内容 そこで、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)の記載について検討する。当初明細書等においては、補正事項1に関連する部分として、以下のとおり記載されている。 (1)「【請求項1】 PHAs及びPLAを含み、PLAの質量パーセント含量が1%から95%である ことを特徴とする生分解性材料。 【請求項2】 前記PLAの質量パーセント含量が10%から50%である 請求項1に記載の生分解性材料。 【請求項3】 PLA及びPHBを含み、前記PLAの質量パーセント含量が75%から85%であり、PHBの品質パーセント含量が15%から25%である 請求項2に記載の生分解性材料。 【請求項4】 前記PHAsが、PHBsまたはPHVs、またはPHBs及びPHVsの共重合体もしくはブレンドである 請求項1に記載の生分解性材料。 【請求項5】 前記PHBsが、3HB及び4HBを重合してなるP(3HB-co-4HB)である 請求項4に記載の生分解性材料。 【請求項6】 前記4HBのモルパーセントが5%~85%である 請求項5に記載の生分解性材料。 【請求項7】 セルロース繊維を含む 請求項1に記載の生分解性材料。 【請求項8】 前記生分解性材料から、熱成型、樹脂射出成型、または溶融紡糸により、薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物及び薄膜の複合製品が生産される 請求項1に記載の生分解性材料。 【請求項9】 前記溶融紡糸が、スパンボンド及びメルトブローの不織処理を含む 請求項8に記載の生分解性材料。 【請求項10】 前記不織布が、湿式接着または乾式接着により接着される 請求項9に記載の生分解性材料。 【請求項11】 前記不織布が、ニードルパンチ工程、スパンレース工程、熱カレンダー、熱気流による堆積、または以下の加熱処理、すなわちマイクロ波、超音波、溶接、遠赤外線及び近赤外線による加熱によって得られる 請求項9に記載の生分解性材料。 【請求項12】 前記複合製品が圧延してなる薄膜または織物であり、紡糸堆積処理、ニードルパンチ処理、パルプもしくは繊維の気流堆積処理またはスパンレース処理を組み合わせる 請求項7に記載の生分解性材料。 【請求項13】 前記圧延がサーマルボンド-メルトブロー-スパンボンド、または超音波接着不織処理を含み、前記複合製品が工業及び医療用防護織物に用いられる 請求項12に記載の生分解性材料。 【請求項14】 前記複合製品が病気、疾患用のスリング、乳母車または担架に用いられるサーマルボンド-メルトブロー-スパンボンド、または超音波接着不織布を含む 請求項12に記載の生分解性材料。 【請求項15】 前記複合製品が、スパンボンドを介して内外表面とするメルトブロー濾材を含み、前記製品が、辺縁で前記メルトブロー濾材を縫製または熱接着または超音波接着する 請求項11に記載の生分解性材料。 【請求項16】 前記生分解性材料から、強化性能を有する生分解性ラミネートまたは織布または編地または不織布が製造され、これらの不織布には多くの繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する 請求項1に記載の生分解性材料。」(特許請求の範囲の請求項1~16) (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoates、PHAs)及びポリ乳酸(polylactic acid、PLA)のブレンドに関し、その製造された製品は、微生物を含有する環境下で、生分解を高めることができる。これらのブレンドのもう1つの利点は、清潔環境下の品質保証期間を延長させることである。PHAs及びPLAのブレンドから熱成型、樹脂射出成型または溶融紡糸により、薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物、薄膜及びその他の材料の複合製品を生産することができる。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】 【0016】 本発明が解決しようとする技術的問題は、既存の生分解性材料の上記分解速度が遅い欠点に対し、清潔環境下で品質保持期限を延長させ、汚濁環境下で分解を加速させる生分解性材料を提供することである。」 (4)「【0023】 本発明の前記生分解性材料において、前記生分解性材料から、熱成型、樹脂射出成型、または溶融紡糸により、薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物及び薄膜の複合製品が生産される。 【0024】 本発明の前記生分解性材料において、前記溶融紡糸はスパンボンド及びメルトブローの不織処理を含む。 【0025】 本発明の前記生分解性材料において、前記不織布は湿式接着または乾式接着により接着される。 【0026】 本発明の前記生分解性材料において、前記不織布は、ニードルパンチ工程、スパンレース工程、熱カレンダー、熱気流による堆積、または以下の加熱処理、すなわちマイクロ波、超音波、溶接、遠赤外線及び近赤外線による加熱によって得られる。 【0027】 本発明の前記生分解性材料において、前記複合製品は圧延してなる薄膜または織物であり、紡糸堆積処理、ニードルパンチ処理、パルプもしくは繊維の気流堆積処理またはスパンレース処理を組み合わせる。 【0028】 本発明の前記生分解性材料において、前記圧延は、サーマルボンド-メルトブロー-スパンボンド、または超音波接着不織処理を含む。前記複合製品は、工業及び医療用防護織物に用いられる。 【0029】 本発明の前記生分解性材料において、前記複合製品は、病気、疾患用のスリング、乳母車または担架に用いられるサーマルボンド-メルトブロー-スパンボンド、または超音波接着不織布を含む。 【0030】 本発明の前記生分解性材料において、前記複合製品は、スパンボンドを介して内外表面とするメルトブロー濾材を含む。前記製品は、辺縁で前記メルトブロー濾材を縫製または熱接着または超音波接着する。」 (5)「【0031】 本発明の前記生分解性材料において、前記生分解性材料から、強化性能を有する生分解性ラミネートまたは織布または編地または不織布が製造される。これらの不織布には、多くの繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが調整可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透し生分解が増加する。それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する。」 (6)「【発明の効果】 【0032】 本発明の生分解性材料を実施すると、以下の有益な効果を有する。本発明はPHAs及びPLAのブレンド製品の製造に用いられ、微生物を含有する環境において、生分解を加速させることができる、新規のPHAs及びPLA重合体の混合物に関する。この新規の製品から、熱成型、樹脂射出成型または溶融紡糸により、薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物、薄膜及びその他の材料の複合製品を生産することができる。これらのブレンドは、清潔環境下における品質保持期限を延長することもできる。」 4 補正の適否の検討 そこで、補正事項1における下線部分である「繊維のランダム堆積を有し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持し」に関し、当初明細書等の記載について以下に検討する。 (1)摘示3(1)においては、【請求項16】として「前記生分解性材料から、強化性能を有する生分解性ラミネートまたは織布または編地または不織布が製造され、これらの不織布には多くの繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」と記載されている。 当該記載によれば、「前記生分解性材料から、強化性能を有する生分解性ラミネートまたは織布または編地または不織布が製造され」るものであり、「これらの不織布には多くの繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有する」から、「雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ものであると解される。 そうすると、「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ものは、あくまでも、「不織布」に限られるものと解され、不織布以外の「生分解性ラミネートまたは織布または編地」はもとより「薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布及び編地、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料」が「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ことについては記載されていないし、そのことを窺わせる記載も見あたらない。 (2)そして、摘示3(5)においても、「本発明の前記生分解性材料において、前記生分解性材料から、強化性能を有する生分解性ラミネートまたは織布または編地または不織布が製造される。これらの不織布には、多くの繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが調整可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透し生分解が増加する。それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する。」と記載されているのであって、前記(1)で述べたとおり、「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ものは、あくまでも、「不織布」に限られるものと解され、不織布以外の「生分解性ラミネートまたは織布または編地」はもとより「薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布及び編地、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料」が「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ことについては記載されていないし、そのことを窺わせる記載も見あたらない。 (3)また、摘示3(1)~(6)における、当初明細書等の他の部分の記載をみても、不織布以外の「生分解性ラミネートまたは織布または編地」はもとより「薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布及び編地、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料」が「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ことについては記載されていないし、そのことを窺わせる記載も見あたらない。 (4)さらに、当該技術分野においては、不織布が「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ことをもってして、不織布以外の「生分解性ラミネートまたは織布または編地」はもとより「薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布及び編地、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料」においてまで「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ことが、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にとって、自明のことでもないし、技術常識でもない。 (5)以上のとおり、当初明細書等には、不織布である場合はともかく、不織布以外の「薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布及び編地、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料」が「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ことについての記載は一切なされていないし、そのことが示唆もされていないし、本願出願時において、当業者にとって、そのことが自明のことでもない。 してみると、本件補正後の請求項1に記載された「薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布及び編地、並びに織物及び薄膜の複合製品の材料」が「繊維のランダム堆積が存在し、比較的低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する」ことが、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとする根拠は見出せない。 したがって、補正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。 5 まとめ 以上のとおりであるから、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たしておらず、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 当審の判断 1 本願発明 上記のとおり、当審補正は却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成29年5月11日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、前記特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「PHAs(ポリヒドロキシアルカノエート)及びPLA(ポリ乳酸)を含み、PLAの質量パーセント含量が1%から95%であり、 前記PHAsが、PHBs(ポリヒドロキシ酪酸)またはPHVs(ポリヒドロキシ吉草酸)、またはPHBs及びPHVsの共重合体もしくはブレンドであり、 前記PLAと前記PHBsとの割合が、前記PLAの質量パーセント含量が75%から85%であり、 前記PHBsが、3HB(3-ヒドロキシブタン酸)及び4HB(4-ヒドロキシブタン酸)を重合してなるP(3HB-co-4HB)(重合体)であり、 前記4HBのモルパーセントが5%~85%である ことを特徴とする生分解性材料。」 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1(中国特許出願公開第102219988号明細書)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものを含むものである。 3 引用刊行物 刊行物:中国特許出願公開第102219988号明細書(平成28年11月9日付け拒絶理由通知書における引用文献1。以下、「引用例」という。) 4 引用例の記載事項 本願の国際出願前である2011年10月19日に頒布された刊行物である引用例には以下の事項が記載されている。なお、翻訳は当審による。 (1)「【請求項1】 PHAs及びPLAを含み、前記PLAの質量百分率含量が1%から95%である、生分解性材料。 【請求項2】 前記PLAの質量百分率含量が10%から50%である、請求項1に記載の生分解性材料。 【請求項3】 PLA及びPHBを含み、前記PLAの質量百分率含量が75%から85%であり、前記PHBの品質百分率含量が15%から25%である、請求項2に記載の生分解性材料。 【請求項4】 前記PHAsが、PHBsまたはPHVs、またはPHBs及びPHVsの共重合体もしくはブレンドである、請求項1に記載の生分解性材料。 【請求項5】 前記PHBsが、3HB及び4HBを重合してなるP(3HB-co-4HB)である、請求項4に記載の生分解性材料。 【請求項6】 前記4HBのモルパーセントが5%~85%である、請求項5に記載の生分解性材料。 【請求項7】 セルロース繊維を含む、請求項1に記載の生分解性材料。 【請求項8】 前記生分解性材料から、熱成型、樹脂射出成型、または溶融紡糸により、薄膜、固体及び液体の容器、剛性または柔軟性包装、長繊維及び短繊維の織布、編地及び不織布、並びに織物及び薄膜の複合製品が生産される、請求項1に記載の生分解性材料。 【請求項9】 前記溶融紡糸工程が、不織スパンボンド及びメルトブローを含む、請求項8に記載の生分解性材料。 【請求項10】 前記不織布が、湿式または乾式で接着される、請求項9に記載の生分解性材料。 【請求項11】 前記不織布が、ニードルパンチ工程、スパンレース工程、熱カレンダー、熱気流による堆積、または以下の加熱処理、すなわちマイクロ波、超音波、溶接、遠赤外線及び近赤外線による加熱によって得られる、請求項9に記載の生分解性材料。 【請求項12】 前記複合製品が、紡糸堆積処理、ニードルパンチ処理、気流もしくはパルプ繊維の堆積処理またはスパンレース処理と組み合わされた圧延により得られる薄膜または織物である、請求項7に記載の生分解性材料。 【請求項13】 前記圧延がサーマルボンド-メルトブロー-スパンボンド、または超音波接着不織処理を含み、前記複合製品が医療及び工業用防護織物に用いられる、請求項12に記載の生分解性材料。 【請求項14】 前記複合製品が、サーマルボンド-メルトブロー-スパンボンド、超音波接着または不織布を含む、患者用の座式または携帯用担架のスリングである、請求項12に記載の生分解性材料。 【請求項15】 前記複合製品が、メルトブロー濾材を熱縁縫製または接着または超音波接着によりスパンボンドしてなる、内外表面のメルトブロー濾材を含む、請求項11に記載の生分解性材料。 【請求項16】 前記生分解性材料から、強化性能を有する生分解性薄膜または織布または編地または不織布が製造され、これらの不織布には多くの繊維がランダムに堆積し、低いが制御可能な空隙率を有するため、雨水、露が土壌及び植物から自由に空隙に浸透して生分解が増加し、それにより、雑草の成長を抑制し、土壌の水分を保持する、請求項1に記載の生分解性材料。」(特許請求の範囲) 5 引用例に記載された発明 摘示4(1)の記載、特に請求項1、3,4、5及び6の記載を総合すれば、引用例には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「PHAs及びPLAを含み、前記PLAの質量百分率含量が1%から95%であり、 前記PHAsが、PHBsまたはPHVs、またはPHBs及びPHVsの共重合体もしくはブレンドであり、 PLA及びPHBを含み、前記PLAの質量百分率含量が75%から85%であり、前記PHBの品質百分率含量が15%から25%であり、 前記PHBsが、3HB及び4HBを重合してなるP(3HB-co-4HB)であり、 前記4HBのモルパーセントが5%~85%である、 生分解性材料。」 6 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「PHAs」、「PLA」、「PHBs」、「PHVs」、「3HB」、「4HB」及び「P(3HB-co-4HB)は、本願発明の「PHAs(ポリヒドロキシアルカノエート)」、「PLA(ポリ乳酸)」、「PHBs(ポリヒドロキシ酪酸)」、「PHVs(ポリヒドロキシ吉草酸)」、「3HB(3-ヒドロキシブタン酸)」、「4HB(4-ヒドロキシブタン酸)」及び「P(3HB-co-4HB)(重合体)」に、それぞれ相当し、それらの含有量も一致する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、全ての点で一致し、相違点はない。 よって、本願発明は、引用発明、すなわち引用例に記載された発明である。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明、すなわち平成29年5月11日に提出された手続補正書により補正された本願の請求項1に係る発明は、本願の国際出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 原査定の理由は妥当なものである。 したがって、他の請求項に係る発明について、更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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