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特許拒絶査定不服審判

2020-014138

界面活性剤フリーシリコーンエマルジョン

審判番号
2020-014138
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-505123外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年10月08日
審決日
2023年01月11日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (C08L) / P18 .537-WZ (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-505123「界面活性剤フリーシリコーンエマルジョン」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日国際公開、WO2017/180567、令和1年5月30日国内公表、特表2019-513888〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年4月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年4月15日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年6月1日に拒絶査定がなされ、令和2年10月8日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。以後の主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和3年 3月 1日 上申書の提出 令和4年 5月30日付け 拒絶理由通知書、審尋 令和4年12月 6日付け 意見書、回答書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~8に係る発明は、令和4年12月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1、7に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」、請求項7に係る発明を「本願発明7」といい、これらを総称して「本願発明」ということがある。また、本願の願書に添付された明細書を「本願明細書」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 カルボキシル基を有するアニオン性ポリマーを含む水性又は有機ジオール媒体を含む連続相に、ヒドロキシル末端又はヒドロキシアルキル末端のポリオルガノシロキサンである1個以上のヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサンを含む分散油相を含むシリコーンエマルジョンであって、前記シリコーンエマルジョンが、界面活性剤又は乳化剤を含まず、前記シリコーンエマルジョンの安定性は、前記ヒドロキシル末端又はヒドロキシアルキル末端のポリオルガノシロキサンと前記カルボキシル基を有するアニオン性ポリマーとの間の、水素結合相互作用及び立体安定化によって実現され、前記シリコーンエマルジョンが、表面処理済みフィラーを実質的に含まず、前記「表面処理済みフィラー」は、エマルジョンを安定化するように機能する表面処理が施されているフィラーを表す、シリコーンエマルジョン。」 「【請求項7】 安定なシリコーンエマルジョンを調製する方法であって、前記方法が、ヒドロキシル含有ポリオルガノシロキサンを含み、界面活性剤又は乳化剤を含まない油を、カルボキシル基を有するアニオン性ポリマーを含み、界面活性剤又は乳化剤を含まない水性媒体に分散させて、界面活性剤又は乳化剤を含まない前記シリコーンエマルジョンを形成する工程を含む、方法。」 第3 当審で通知した拒絶の理由 令和4年5月30日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、本願発明1、7に対する理由1~3の概略は、以下のとおりである。 理由1(明確性) 本願発明1は、「表面処理済みフィラーを実質的に含まない」ことを発明特定事項とするものであるが、「表面処理」が具体的に如何なる表面処理剤を用いた処理を意図しているのか、また、「フィラー」が具体的に如何なる剤を意図しているのか、明確に理解、特定できないので、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由2(サポート要件) 本願発明が解決しようとする課題は、界面活性剤又は乳化剤を用いないことで皮膚に対して悪影響を及ぼさない、安定なシリコーンエマルジョンを提供することにあると認められる。 本願明細書の【0015】には、「本明細書では、安定なエマルジョンは、光学顕微鏡によって測定するとき、周囲条件で、少なくとも12カ月間、ミセルの平均サイズの実質的な合体又は実質的な変化を示さないものを意味する。」との記載があり、同【0054】~【0101】には、エマルジョン1~6が記載されているが、エマルジョン1~6が、上記の【0015】に示された安定なエマルジョンであることを示す実験結果は記載されてないから、エマルジョン1~6が、上記の課題を解決できることは確認できない。 よって、本願明細書の発明の詳細な説明及び本願の出願時の技術常識に照らしても、本願発明1、7に記載された発明特定事項のみで、上記の課題を解決できることを当業者が認識できるとは認められないから、本願発明1、7は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由3(新規性) 本願発明1、7は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された下記の引例Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 <引例等一覧> 引例A.特開平8-40825号公報 第4 当審の判断 1.本願明細書の記載事項 本願明細書には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。 なお、エマルジョン1~6は、概ね同様の組成を有するものであるから、以下では、エマルジョン1、6の組成のみを摘記した。 本a 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上記を考慮すると、皮膚に対して悪影響を及ぼさない、安定なエマルジョンを生成する新しい方法が必要である。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本開示の利点は、界面活性剤又は乳化剤を用いることなく、安定したシリコーンエマルジョンである。 【0007】 これらの利点及び他の利点は、アニオン性ポリマーを含んだ水性又は有機ジオール媒体を含む連続相に、1個又は複数のヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサンを含んだ分散油相を含むシリコーンエマルジョンによって、少なくとも部分的に満たされる。」 本b 「【0012】 実施形態には、本開示のエマルジョンについて記載された特徴のうち、任意の1つ又は複数が、単独で又は組み合わせて含まれる。更に、本開示の実施形態には、水性媒体に油を分散させる工程が、水性媒体を中和剤、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ化剤で中和する工程を含むことが含まれる。 ・・・ 【0015】 有利なことに、本開示のエマルジョンは、界面活性剤又は乳化剤を用いることなく安定である。本開示のエマルジョンの安定性は、水性又は有機ジオール媒体中の、ヒドロキシル含有ポリオルガノシロキサンとアニオン性ポリマーとの間の、水素結合相互作用及び立体安定化によって実現されると考えられる。本明細書では、安定なエマルジョンは、光学顕微鏡によって測定するとき、周囲条件で、少なくとも12カ月間、ミセルの平均サイズの実質的な合体又は実質的な変化を示さないものを意味する。有利なことに、本発明のエマルジョンは、なお、周囲条件で、少なくとも12カ月間、外観の実質的な変化、又はレオロジー特性の変化を示さない。」 本c 「【0018】 有利なことに、エマルジョンは、アミン官能性ポリマー、又はフィラーの表面処理がエマルジョンを安定化するように機能する、表面処理済みフィラーを添加することなく調製することもできる。一実施形態において、本開示のエマルジョンは、アミン官能化ポリオルガノシロキサン、例えば、アミン官能化メチコン又はアモジメチコン等のアミン官能化ジメチコンも含まない可能性がある。 ・・・ 【0022】 例えば、ヒドロキシル基を含まないポリオルガノシロキサンは、任意の種類の、流体又は流体及びフィラーの組み合わせ、例えば天然油、ワックス、ゴム、希釈エラストマー、粉末、又はペーストの溶解度及び/又は分散性の性質に基づいて、油相に含むことができる。 ・・・ 【0023】 本開示のエマルジョンの安定性は、水性又は有機ジオール媒体中の、ヒドロキシル含有ポリオルガノシロキサンとアニオン性ポリマーとの間の、水素結合相互作用及び立体安定化によって実現されると考えられる。本開示のエマルジョンの分散油相は、他のポリオルガノシロキサンを含み、他のポリオルガノシロキサンは、こうしてつくられた保護層によって安定化される。相間からの反対電荷の相互作用及び/又は双極子間相互作用により、エマルジョン中の水性又は有機の、ジオール相及び油相を安定化する。 【0036】 本開示のエマルジョンは、1種又は複数の、活性剤、フレグランス、香料、植物抽出物、着香剤、粉末、及び/又は防腐剤を含む他の成分を、油相又は水性相のいずれかに含むことができる。 ・・・ 【0037】 油相は、有機系油又は炭化水素系油等の疎水性成分を含むことができる。ケイ素原子含有油又は有機油とケイ素原子含有油とのブレンドをエマルジョンの油相に取り込むこともできる。こうした油には、ヤシ油、鉱油、及び水素化ポリイソブテン等の炭化水素類、オクチルドデカノール等の脂肪アルコール類、C12~C15安息香酸アルキル等のエステル類、プロピレンジペラルガネートジペラルゴネート(propylene dipelarganatedipelargonate)等のジエステル類、並びにトリオクタン酸グリセリル等のトリエステル類が挙げられる。 ・・・ 【0045】 例えば、ウィンターグリーンの油、ハッカ油、スペアミント油、メントール、バニラ、桂皮油、丁子油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグの油、セージの油、カッシア油・・・を含む、他の有用な着香剤等の着香剤を含むこともできる。 【0046】 化粧及び健康の効果のために、粉末を本開示で添加することができる。典型的な効果には、顔料、染料、インク、又は活性剤等の着色剤の任意の種類に限定されることなく、特定の色、又は粉末/ミクロスフェアを生成して皮膚の光散乱を変えることが含まれる。・・・こうした粉末には、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、ヒュームドシリカ、球状シリカ、ポリメチルメタクリレート、微粒テフロン(登録商標)、窒化ホウ素、アクリレートポリマー、珪酸アルミニウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、ベントナイト、珪酸カルシウム、セルロース、白亜、コーンスターチ、珪藻土、酸性白土、グリセリルデンプン、ヘクトライト、含水シリカ、カオリン、珪酸アルミニウムマグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、三珪酸マグネシウム、マルトデキストリン、モンモリロナイト、微結晶性セルロース、米デンプン、シリカ、タルク、雲母、二酸化チタン、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ロジン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレン、アルミナ、アタパルジャイト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、デキストラン、カオリン、ナイロン、シリル化シリカ、シルク粉末、絹雲母、大豆粉、酸化スズ、水酸化チタン、リン酸三マグネシウム、クルミ殻粉末、又はそれらの混合物が挙げられる。上記粉末は、レシチン、アミノ酸、鉱油、シリコーン油、又は粉末表面を被覆し、粒子を本質的に疎水性にする、様々な他の作用剤で、単独で、又は組み合わせて表面処理することができる。」 本d 「【実施例】 ・・・ 【0052】 以下のエマルジョンを調製し、エマルジョンは不透明な外観を有する。本実施例で、APとOPとの間で合わせた屈折率を得るために、グリセリンを用いなかった。しかし、特定の用途で半透明又は透明の外観が所望される場合には、グリセリンを用いることができる。 【0053】 以下の配合物を以下の一般的な手順に従って調製した。工程1(水性又は無水有機ジオール相):水又は無水有機ジオールを計量し、容器にカルボマーをゆっくりと加える。カルボマーを完全に溶解させるまで混合する。工程2(連続的な中和工程を伴う油相):ポリシロキサンを計量し、容器に加える。均一になるまで十分に混合する。工程3:水性又は無水有機ジオール相を油相と共に容器に加え、均一になるまで十分に混合する。工程4:防腐剤を容器に加え、均一になるまで十分に混合する。工程5:NaOHを容器に加え、均一になるまで十分に混合する。 【0054】 エマルジョン1 【0055】 【表1】 [図:0001397379000001.jpg] 【0056】 APは、カルボマー及び水を含み、OP/中和は、数種のポリオルガノシロキサン、水性相(AP)、数種の防腐剤、及び中和剤、例えば水酸化ナトリウムを含んだ。 【0057】 水性相(AP)を、低せん断ブレードを備えたシングルシャフト分散機で水とカルボマーとの間で均一に混合して調製した。油相(OP)/中和を、高せん断ブレードを備えたシングルシャフト分散機で、予備混合されたCXG-1104/CSF-3504ブレンド及びAPと共に調製した。混合物を完全に混合した後、防腐剤を添加し、組成物は、pHを上げて所望の粘度に到達するために、中和剤によって中和した。 ・・・ 【0060】 この工程の後、以下の組成の不透明ゲルエマルジョンを得た。 【0061】 【表3】 [図:0001397379000002.jpg] 【0062】 エマルジョン2 ・・・ 【0070】 エマルジョン3 ・・・ 【0078】 エマルジョン4 ・・・ 【0086】 エマルジョン5 ・・・ 【0094】 エマルジョン6(無水) 【0095】 【表16】 [図:0001397379000003.jpg] 【0100】この工程の後、以下の組成の不透明ゲルエマルジョンを得た。【0101】 【表18】 [図:0001397379000004.jpg] ・・・」 2.引例Aの記載事項並びに引例A物発明及び引例A方法発明の認定 (1)引例Aの記載事項 当審の拒絶理由で引用した引例A(特開平8-40825号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。 引例A1 「【0005】 【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】 よって、本発明の主題は、ゲル化した水相に油相があるエマルションにおいて、水相に確実に油相を分散させるアクリロニトリルのポリマーまたはコポリマーの、膨張した中空の熱可塑性粒子を含有し、界面活性剤がないことを特徴とするものである。加えて、有利には、化粧品的および/または皮膚科学的に許容される媒体を含有する。 【0006】請求項に掲げるエマルションは、界面活性剤を含有せず、それゆえ、刺激が生じず、また、中空の粒子の存在によってソフトな適用感があるという利点を有する。 【0007】加えて、エマルションを安定させるために、中空の粒子を使用することで、低温での製造が可能となった。この製造方法は、界面活性剤を使用していた際に、大抵の場合、加熱がなされる従来の製法よりも、簡単で低コストである。低温で製造すると、例えば、劣化の危険性なしに、感熱性の活性物質の導入が可能になる。 ・・・ 【0011】なるほど、界面活性剤を含有しない分散液を安定させるために、表面処理によって疎水性にされた微小シリカ粒子を使用することは、シー.レビン(C.Levine)の論文[コロイドと表面(1989)第38巻、頁325-頁343の「微小粒子によるエマルションの安定化.I.連続相と油/水の界面との間での粒子の分割」]により公知であるが、一方では、重油およびビチューメンというかなり異なった技術分野に関するため、また他方では、そこに与えられている教示が、均一系ではなく、小滴が裸眼で可視できるきめの粗い分散液に導くため、この文献は、化粧品分野の当業者をして、本発明に至らしめるものではない。しかしながら、定義付ければ、化粧品エマルションは、一方が他方の中に入っているという2つの相の均一分散液のことをいう。 【0012】さらに、そこで使用される粒子は、本発明のエマルションを得ることができる粒子とは、性質が異なるものである。本発明においては、可能な限り刺激性がなく、良好な感覚上の特性を有し、特に、使用時にソフトな適用感があるエマルションを得るための試みがなされている。 ・・・ 【0017】また、本発明の主題は、界面活性剤なしにゲル化した水相に油相を分散させ、得られたエマルションを安定させるために、アクリロニトリルのポリマーまたはコポリマーの、膨張した中空の熱可塑性粒子を使用することにある。 ・・・ 【0028】本発明に係るエマルションは、少なくとも1つのゲル化剤、特に、親水性のゲル化剤の補助によりゲル化した水相を含有するものであり、結果として、連続水相の粘度は、エマルションの良好な経時的安定性を許容し、密度が極度に低い粒子が表面に浮いて、エマルションが不安定になることを防止できるように十分に高い。」 引例A2 「【0054】一般に、本発明のエマルションは、化粧品および皮膚科学の分野で知られている、公知の低温製法によって調製することができる。例えば、まず、ゲル化剤と水を混合することによって水性ゲルを調製し、ついで、そこに活性物質類と他の親水性のアジュバントを添加し、次に、そこに中空の粒子を分散させる。ついで、油類と脂肪物質類とを含有する脂肪相、活性物質類および他の疎水性のアジュバントを室温で数分撹拌し、前記水性ゲルを乳化させる。ゲルの調製工程は、わずかに加熱が要求される傾向にあるが、感熱性の活性物質類は、常に低温で添加される。 【0056】 【実施例】本出願人は、分散作用を比較するために、水中油型エマルション中の異なった性質の粒子を試験した。エマルションの組成を次に示す: -シクロメチコーン 10% -カーボマー(Carbomer)(ゲル化剤) 0.8% -トリエタノールアミン(中和剤) 0.8% -粒子 1% -水 全体を100%とする量 【0057】結果を次の表に示す。エクスパンセル粒子のみが、水相中に油相を確実に、良好に分散させることが解った。」 引例A3 「【0074】 [図:0001397379000005.jpg] [図:0001397379000006.jpg] 【0075】手順は、以下の通りである。水中で種々の構成成分を混合して80℃でゲル化した水相Aを調製し、ついで攪拌しつつ、周囲の温度になるまで放置して冷却した。ついで、C相をかなりゆっくりと攪拌しつつ添加し、穏やかに10分間攪拌しつつ、B相をそこに混入した。」 (2)引例A物発明及び引例A方法発明の認定 引例Aの【0054】、【0074】、【0075】には、カーボマー(ゲル化剤)、トリエタノールアミン(中和剤)、安定化剤、グリセリン、キノリンイエロー(染料)、ボンソ=二ナトリウム塩(染料)、アリザリングリーン=二ナトリウム塩(染料)、脱イオン水を混合し、80℃でゲル化して、水性ゲルである水相Aを調製し、ついで冷却した後、中空の粒子であるエクスパンセル551DE20を添加し、穏やかに10分間攪拌しつつ、シクロメチコーン/ジメチコノール、水素化ポリブテンを含む、油相であるB相を混入し、水性ゲルを乳化させ、水性ゲルであるA相にカーボマー(ゲル化剤)、トリエタノールアミン(中和剤)、安定化剤、グリセリン、キノリンイエロー(染料)、ボンソ=二ナトリウム塩(染料)、アリザリングリーン=二ナトリウム塩(染料)、脱イオン水を含み、油相であるB相にシクロメチコーン/ジメチコノール、水素化ポリブテンを含み、C相がエクスパンセル551DE20である、乳化状態のほほ紅を調製したことが記載されている(引例A2、A3)。 以上の記載事項より、特にA相、B相の主要な成分に着目すると、引例Aには、以下の2つの発明が記載されていると認められる。 「カーボマー(ゲル化剤)、トリエタノールアミン(中和剤)、グリセリン、脱イオン水を含む、水性ゲルであるA相、シクロメチコーン/ジメチコノール、水素化ポリブテンを含む、油相であるB相、中空の粒子であるエクスパンセル551DE20のC相を含有する、乳化状態のほほ紅。」 (「引例A物発明」という。) 「水中でカーボマー(ゲル化剤)、トリエタノールアミン(中和剤)、グリセリン、脱イオン水を含む成分を混合して水性ゲルである水相Aを調製し、ついで、中空の粒子であるエクスパンセル551DE20を添加し、シクロメチコーン/ジメチコノール、水素化ポリブテンを含む、油相であるB相を混入して、水性ゲルを乳化させる、乳化状態のほほ紅の調製方法。」 (「引例A方法発明」という。) 以下では、事案に鑑み、本願発明7に対する理由3(新規性)の検討を優先し、次に理由1(明確性)、理由2(サポート要件)を検討して、最後に本願発明1に対する理由3(新規性)を検討する。 3.本願発明7に対する理由3(新規性)について (1)本願発明7と引例A方法発明の対比、判断 本願発明7(第2)と引例A方法発明(第4の2(2))を対比する。 引例A方法発明の「カーボマー(ゲル化剤)」、「グリセリン、脱イオン水を含む成分」、「シクロメチコーン/ジメチコノール」は、本願発明7の「カルボキシル基を有するアニオン性ポリマー」、「水性媒体」、「ヒドロキシル含有ポリオルガノシロキサン」にそれぞれ相当する。 引例A方法発明の「水性ゲルである水相A」、「油相であるB相」は、共に、界面活性剤又は乳化剤を含まないものであり、引例Aの【0005】に「本発明の主題は、界面活性剤がないことを特徴とするものである」旨が記載されていることからも(引例A1)、本願発明7の「界面活性剤又は乳化剤を含まない水性媒体」、「界面活性剤又は乳化剤を含まない油」にそれぞれ相当する。 引例A方法発明の「水性ゲルである水相Aを調製し」「油相であるB相を混入して、水性ゲルを乳化させる」工程により、シクロメチコーン/ジメチコノールを含み、界面活性剤又は乳化剤を含まない乳化(エマルジョン)が形成されるから、引例A方法発明の上記の乳化させる工程は、本願発明7の「油を」「水性媒体に分散させて、界面活性剤又は乳化剤を含まない前記シリコーンエマルジョンを形成する工程」に相当する。 引例Aの【0005】、【0007】によると、引例A方法発明により調製された乳化状態のほほ紅は、安定したエマルションを形成しているので(引例A1)、引例A方法発明の「乳化状態のほほ紅の調製方法」は、本願発明7の「安定なシリコーンエマルジョンを調製する方法」ということができる。 引例A方法発明は、トリエタノールアミン(中和剤)、グリセリンを水相に含んでいるが、本願明細書の【0012】(本b)、【0056】(本d)には、水性媒体に中和剤を加えること、同【0052】(本d)には、グリセリンを加えることが記載されている。 引例A方法発明は、中空の粒子であるエクスパンセル551DE20を水相に添加しているが、本願明細書の【0036】には、「本開示のエマルジョンは、1種又は複数の、活性剤、フレグランス、香料、植物抽出物、着香剤、粉末、及び/又は防腐剤を含む他の成分を、油相又は水性相のいずれかに含むことができる。」(本c)、同【0046】には、「化粧及び健康の効果のために、粉末を本開示で添加することができる。・・・こうした粉末には・・・ポリメチルメタクリレート・・・アクリレートポリマー・・・ポリエチレン・・・ナイロン・・・又はそれらの混合物が挙げられる。」(本c)と記載され、高分子粉末(粒子)等を配合し得る旨の記載がある。 引例A方法発明は、水素化ポリブテンを油相に含んでいるが、本願明細書の【0037】(本c)には、油相に水素化ポリイソブテン等の炭化水素類を加えることが記載されている。 以上から、本願発明7は、トリエタノールアミン(中和剤)、グリセリン、高分子粉末(粒子)の一つであるエクスパンセル551DE20、水素化ポリブテンを添加する態様も包含すると認められるから、引例A方法発明が、トリエタノールアミン(中和剤)、グリセリンを水相A、水素化ポリブテンを油相Bに含み、中空の粒子であるエクスパンセル551DE20を水相Aに添加している点は、本願発明7との相違点にはならない。 してみれば、本願発明7と引例A方法発明は、 「安定なシリコーンエマルジョンを調製する方法であって、前記方法が、ヒドロキシル含有ポリオルガノシロキサンを含み、界面活性剤又は乳化剤を含まない油を、アニオン性ポリマーを含み、界面活性剤又は乳化剤を含まない水性媒体に分散させて、界面活性剤又は乳化剤を含まない前記シリコーンエマルジョンを形成する工程を含む、方法。」であり、両者において、相違点は存しない。 (2)小括 以上によれば、本願発明7は、引例A方法発明、すなわち引例Aに記載された発明である。 4.理由1(明確性)について 本願発明1は、「シリコーンエマルジョンが、表面処理済みフィラーを実質的に含まず、前記「表面処理済みフィラー」は、エマルジョンを安定化するように機能する表面処理が施されているフィラーを表す」ことを発明特定事項とするものである。 ここで、本願明細書の【0018】には、「エマルジョンは、アミン官能性ポリマー、又はフィラーの表面処理がエマルジョンを安定化するように機能する、表面処理済みフィラーを添加することなく調製することもできる。」と記載されているものの(本c)、「エマルジョンを安定化するように機能する、表面処理」が具体的に如何なるものであるのか、また、そのような「表面処理」「済みフィラー」が具体的に如何なるものであるのか、についての説明は、本願明細書に何ら見当たらない。 一方、本願明細書の【0022】には、「フィラー」の文言はあるものの(本c)、この「フィラー」と同段落に記載された「天然油、ワックス、ゴム、希釈エラストマー、粉末、又はペースト」との関係は不明であるし、審判請求人が令和4年12月7日付け意見書で述べるように、この「フィラーは、本願明細書の[0022]段落に記載される通り、天然油、ワックス、ゴム、希釈エラストマー、粉末、又はペーストであり得ます」と善解したとしても、同【0037】、【0045】や同【0046】(いずれも本c)には、「油」や「粉末」が「フィラー」とは無関係に説明されているので、同【0018】や【0022】を参酌しても、本願発明1の「表面処理」「済みフィラー」が具体的に如何なるものか、理解、特定することができない。 なお、審判請求人は、上記意見書において、「フィラーは、本願明細書の[0046]段落に記載される「粉末」とは異なります。「粉末」は、例えば、組成物の色を変更するために追加され得る材料であり、したがって、補正後の請求項1に記載されるフィラーとは明確に異なります」と述べる一方、この意見書と同日付けの回答書では、「「表面処理済みフィラー」と考えられるであろう第2の成分は・・・「顔料及び染料」の節に記載されます。」と述べており、「フィラー」が顔料等の粉末を含むか否かについて、一貫性のない回答をしている。 また、審判請求人は、上記意見書で、「表面処理は、本願明細書の[0018]段落に記載される通り、アミン官能化であり得ます」と述べるが、【0018】では、「アミン官能性ポリマー」の後に「又は」が続いており(本c)、本願明細書において、「アミン官能性ポリマー」が表面処理剤として説明されているとは解されない。 さらに、審判請求人は、上記回答書において、引用文献1(令和4年5月30日付け審尋で引用した特表2004-529952号公報)において、「表面処理済みフィラー」と考えられるであろう成分として、「固体シリコーンエラストマーパウダー」や「疎水処理された顔料」を挙げているが、「固体シリコーンエラストマーパウダー」が、エマルジョンを安定化するように機能することは引用文献1に何ら記載されてないし、「疎水処理された顔料」は、本願明細書の【0046】にも記載されているものであり(本c)、審判請求人が、上記意見書においては「フィラーとは明確に異なります」と述べているものである。 そうすると、本願明細書の記載及び審判請求人の主張を踏まえると、本願出願時の技術常識を参酌しても、当業者は「エマルジョンを安定化するように機能する、表面処理」「済みフィラー」が、具体的に如何なるものか、明確に理解、特定することはできないから、「エマルジョンを安定化するように機能する、表面処理」「済みフィラー」を発明特定事項とする請求項1の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえる。 したがって、本願発明1は、明確性要件を満たさない。 5.理由2(サポート要件)について 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 ここで、本願明細書の【0005】及び【0006】の記載によると(本a)、本願発明が解決しようとする課題は、界面活性剤又は乳化剤を用いないことで皮膚に対して悪影響を及ぼさない、安定なシリコーンエマルジョンを提供することにあると認められる。 そして、本願明細書の【0015】には、「本明細書では、安定なエマルジョンは、光学顕微鏡によって測定するとき、周囲条件で、少なくとも12カ月間、ミセルの平均サイズの実質的な合体又は実質的な変化を示さないものを意味する。」との記載がある(本b)。 本願明細書の【0053】には、一般的な配合物の調製手順が記載され(本d)、同【0054】~【0101】には、請求項1に記載された配合成分を含むエマルジョン1~6が具体的に記載されているが(本d)、同【0060】、【0100】等には、「不透明ゲルエマルジョンを得た」との記載があるだけで(本d)、エマルジョン1~6が「光学顕微鏡によって測定するとき、周囲条件で、少なくとも12カ月間、ミセルの平均サイズの実質的な合体又は実質的な変化を示さない」ことを裏付ける実験結果は記載されていない。 一方、本願明細書の【0023】には、「本開示のエマルジョンの安定性は、水性又は有機ジオール媒体中の、ヒドロキシル含有ポリオルガノシロキサンとアニオン性ポリマーとの間の、水素結合相互作用及び立体安定化によって実現されると考えられる。・・・相間からの反対電荷の相互作用及び/又は双極子間相互作用により、エマルジョン中の水性又は有機の、ジオール相及び油相を安定化する。」と記載され(本c)、「カルボキシル基を有するアニオン性ポリマー」とジメチコノールのような「ヒドロキシル末端…を有するポリオルガノシロキサン」の配合だけで安定なシリコーンエマルジョンが実現されると考えられることが記載されているが、こうした事実を裏付ける具体的な実験データは示されていない。 他方、引例Aの【0017】、【0028】をみると、エマルションの経時的安定性には、親水性のゲル化剤、すなわち、カーボマー(カルボキシル基を有するアニオン性ポリマー)や引例Aの実施例5で用いられているジメチコノールの配合だけでは足りず、密度が極度に低い粒子(膨張した中空の熱可塑性樹脂)が必要との説明がある(引例A1)。 そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明及び本願の出願時の技術常識に照らすと、本願発明1、7に記載された「カルボキシル基を有するアニオン性ポリマー」と「ヒドロキシル末端又はヒドロキシアルキル末端のポリオルガノシロキサン」(ヒドロキシル含有ポリオルガノシロキサン)を配合させるだけで、「前記ヒドロキシル末端又はヒドロキシアルキル末端のポリオルガノシロキサンと前記カルボキシル基を有するアニオン性ポリマーとの間の、水素結合相互作用及び立体安定化」が生じ、それにより「シリコーンエマルジョンの安定性」が実現することが裏付けられているとはいえないので、本願発明1、7が、上記の課題を解決できることを当業者が認識できるとは認められない。 したがって、本願発明1、7は、サポート要件を満たさないので、発明の詳細な説明に記載したものではない。 6.本願発明1に対する理由3(新規性)について (1)本願発明1と引例A物発明の対比 本願発明1(第2)と引例A物発明(第4の2(2))を対比する。 引例A物発明の「カーボマー(ゲル化剤)」、「グリセリン、脱イオン水を含む、水性ゲルであるA相」、「シクロメチコーン/ジメチコノールを含む、油相であるB相」は、引例Aの【0056】によると、「水中油型エマルション」の組成を示すものであるから(引例A2)、それぞれ、本願発明1の「カルボキシル基を有するアニオン性ポリマー」、「水性又は有機ジオール媒体を含む連続相」、「ヒドロキシル末端又はヒドロキシアルキル末端のポリオルガノシロキサンである1個以上のヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサンを含む分散油相」に相当する。 引例A物発明の「乳化状態のほほ紅」は、ポリオルガノシロキサン(シリコーン)を含む乳化物(エマルジョン)であるから、本願発明1の「シリコーンエマルジョン」に相当する。 引例A物発明の「水性ゲルであるA相」、「油相であるB相」は、共に、界面活性剤又は乳化剤を含まないものであり、引例Aの【0005】(引例A1)の記載も考慮すると、それらから調製される「乳化状態のほほ紅」も界面活性剤又は乳化剤を含むとは認められないので、引例A物発明の「乳化状態のほほ紅」は、本願発明1の「界面活性剤又は乳化剤を含ま」ない「シリコーンエマルジョン」に相当する。 一方、引例Aをみても、引例A物発明の「中空の粒子であるエクスパンセル551DE20」は、表面処理がなされておらず、「中空の粒子であるエクスパンセル551DE20」が、本願の優先日において、表面処理されたフィラーであることが周知であるとも認められないので、引例A物発明の「中空の粒子であるエクスパンセル551DE20」が、本願発明1において「シリコーンエマルジョンが」「実質的に含まず」と規定されている「エマルジョンを安定化するように機能する表面処理が施されているフィラー」に相当するとはいえない。 なお、上記の3(1)で述べた理由と同様に、本願発明1は、トリエタノールアミン(中和剤)、グリセリン、高分子粉末(粒子)の一つであるエクスパンセル551DE20、水素化ポリブテンを含む態様を包含すると認められるので、引例A物発明が、これらを含む点は、本願発明1との相違点にはならない。 以上からすると、本願発明1と引例A物発明は、 「カルボキシル基を有するアニオン性ポリマーを含む水性又は有機ジオール媒体を含む連続相に、ヒドロキシル末端又はヒドロキシアルキル末端のポリオルガノシロキサンである1個以上のヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサンを含む分散油相を含むシリコーンエマルジョンであって、前記シリコーンエマルジョンが、界面活性剤又は乳化剤を含まず、前記シリコーンエマルジョンが、表面処理済みフィラーを実質的に含まず、前記「表面処理済みフィラー」は、エマルジョンを安定化するように機能する表面処理が施されているフィラーを表す、シリコーンエマルジョン。」で一致し、 以下の点で一応相違している。 <相違点1> 本願発明1では、「シリコーンエマルジョンの安定性は、前記ヒドロキシル末端又はヒドロキシアルキル末端のポリオルガノシロキサンと前記カルボキシル基を有するアニオン性ポリマーとの間の、水素結合相互作用及び立体安定化によって実現され」ているのに対して、 引例A物発明では、「カーボマー(ゲル化剤)」と「シクロメチコーン/ジメチコノール」が水素結合相互作用及び立体安定化していることやこれらによりシリコーンエマルジョンの安定性が実現していることが特定されていない点 (2)相違点1の検討 本願明細書の【0053】等をみても(本d)、「ヒドロキシル末端又はヒドロキシアルキル末端のポリオルガノシロキサン」と「カルボキシル基を有するアニオン性ポリマー」を混合する以外に、水素結合相互作用及び立体安定化を生じるための特別な手順や条件は明示されてないから、引例Aの【0054】に記載された水性ゲルの乳化方法(引例A2)と本願明細書の【0053】に記載された本願発明1のシリコーンエマルジョンの調製方法が実質的に異なるとは認められない。 そうすると、引例Aに、水素結合相互作用及び立体安定化に関する記載がなくても、引例A物発明は、「カーボマー(ゲル化剤)」と「シクロメチコーン/ジメチコノール」を混合し、それらが共存することに伴い、水素結合相互作用及び立体安定化が生じ、「シリコーンエマルジョンの安定性」の実現に寄与しているものと解される。 したがって、上記の相違点1は、本願発明1と引例A物発明とを区別する実質的なものとは認められないので、本願発明1と引例A物発明が異なる発明であるとはいえない。 (3)審判請求人の主張 審判請求人は、令和4年12月6日付け回答書において、「引用文献Aに関して、「安定なシリコーンエマルジョン」は、「請求項1において実現されるような水素結合相互作用及び立体安定化」を介してもたらされません。」、「引用文献Aは、その出願に特異的なエマルジョン安定化のメカニズムについて開示又は推測しませんが、発明者らは、「微小粒子によるエマルションの安定化.I.連続相と油/水の界面との間での粒子の分割」と題するC.Levineによる論文に言及し、そこでは、表面処理によって疎水性とされた微小シリカ粒子が、界面活性剤を含有しない分散物を安定化することが報告されました。Levine,et al.は、イントロダクションにおいて、これらのエマルジョンは、ピッカーリング・エマルジョンとして知られることを注記します。」、「液体の1種が他の1種よりも固体粒子を湿潤させる場合、良好な湿潤液体は、連続相となり、他は、分散相となる。3相接触角θ(固体粒子、連続相及び分散相の3相境界における角)が90未満である(例えば、シリカ、クレイ)場合、O/Wエマルジョンが生じ、θ>90である(例えば、カーボンブラック)場合、W/Oエマルジョンが形成される。しかしながら、θが90に相対的に近いときにのみ、粒子は、ピッカーリング安定化剤として効果的に振る舞うことができる。これは、ピッカーリング・エマルジョン、例えば引用文献Aによって開示される組成物の安定化が、液体相に対する接触角によって決定される通り、粒子表面の湿潤性に依存すること、及び、水素結合が、それらのエマルジョンの安定化における因子ではないことを明確に確立します。」と主張する。 しかし、本願発明1は、明確に、「中空の粒子であるエクスパンセル551DE20」を除くものではないし、引例A物発明は、本願発明1と同様に、「カーボマー(ゲル化剤)、トリエタノールアミン(中和剤)、グリセリン、脱イオン水を含む、水性ゲルであるA相」と「シクロメチコーン/ジメチコノールを含む、油相であるB相」を混合して得られるエマルジョンであるから、水素結合相互作用及び立体安定化が生じていないとは判断できない。 仮に、引例Aの【0011】に記載された「界面活性剤を含有しない分散液を安定させるために、表面処理によって疎水性にされた微小シリカ粒子」(引例A1)が、「エマルジョンを安定化するように機能する表面処理が施されているフィラー」として、本願発明1において除かれていたとしても(審判請求人が、令和4年12月6日付け意見書及び回答書において、フィラーについて、一貫性のない回答をしている点はひとまず措く。)、引例Aの【0012】では、「そこで使用される粒子は」、引例A物発明の「中空の粒子であるエクスパンセル551DE20」とは「性質が異なるもの」と記載されているので(引例A1)、表面処理がなされていないことが周知な「エクスパンセル551DE20」が本願発明1で除かれているとはいえない。 そうすると、上記の審判請求人の主張を参酌しても、本願発明1と引例A物発明が異なる発明であるとは認められない。 (4)小括 以上によれば、本願発明1は、引例A物発明、すなわち引例Aに記載された発明である。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件、請求項1、7の記載は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を、それぞれ満たしていない。 また、本願発明1、7は、引例Aに記載された発明であるから、同法第29条第1項第3号に該当する。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-014138

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