特許異議申立
2017-701211
燃料噴射装置
- 審判番号
- 2017-701211
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-229270
- 登録番号
- 特許第6151336号(P6151336)
- 請求日
- 2017年12月21日
- 審決日
- 2019年03月15日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日立オートモティブシステムズ株式会社
- 【権利者代理人】戸田 裕二
- 【異議申立人】金田 政毅
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】大貫 敏史
- 【異議申立人代理人】江口 昭彦
- 【異議申立人代理人】内藤 和彦
- 審判長/審判官
- 審判長 金澤 俊郎
- 審判官 粟倉 裕二
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P1652.121-YAA(F02M) / P1652.851-YAA(F02M) / P1652.854-YAA(F02M) / P1652.855-YAA(F02M) / P1652.856-YAA(F02M) / P1652.857-YAA(F02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6151336号発明「燃料噴射装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6151336号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
特許第6151336号の請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6151336号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成23年3月10日に出願した特願2011-52347号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年4月23日に新たな特許出願とした特願2014-88696号の一部をさらに平成27年11月25日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月2日にその特許権の設定登録がされ、平成29年6月21日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。
・平成29年12月21日 :特許異議申立人金田政毅(以下「特許異 議申立人」という。)による請求項1な いし4、6、7、10及び11に係る特 許に対する特許異議の申立て
・平成30年4月26日付け :取消理由通知書
・平成30年7月6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出
・平成30年7月27日付け :訂正請求があった旨の通知
・平成30年8月29日 :特許異議申立人による意見書の提出
・平成30年10月10日 :特許異議申立人による上申書の提出
・平成30年11月8日付け :取消理由通知書(決定の予告)
・平成31年1月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出(以下、当該訂正請求書による訂正 の請求を「本件訂正請求」という。)
・平成31年2月13日 :特許異議申立人による上申書の提出
なお、本件訂正請求がされたため、平成30年7月6日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし6のとおりである(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
とあるのを、
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状であることを特徴とする燃料噴射装置。」
に訂正する(下線は、訂正箇所を示す。以下同様)。
なお、請求項1の記載を引用する請求項2ないし7、10及び11も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状であることを特徴とする燃料噴射装置。」
とあるのを、
「請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において
前記弁体は弁ニードル部と前記弁ニードル部よりも大きな径を有する拡径部とを有し、
前記可動子は、前記弁体の前記拡径部の規制部と協働して開閉弁動作を行わせるように構成され、
前記内径拡大部は、前記拡径部の外径側に位置するとともに、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流側において形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
に訂正する。
なお、請求項5の記載を引用する請求項10及び11も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1~7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
とあるのを、
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
とあるのを、
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1~7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記弁体よりも大きな径を有する拡径部によって形成され、
前記規制部は、前記可動子と前記磁気コアが接触し、前記可動子と前記規制部が接触した状態で、前記孔の前記内径拡大部内に位置し、
前記内径拡大部の範囲は、前記磁気コアの前記可動子側端面から前記規制部よりも上流部まで構成されている燃料噴射装置。」
とあるのを、
「請求項1~7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記弁体よりも大きな径を有する拡径部によって形成され、
前記規制部は、前記可動子と前記磁気コアが接触し、前記可動子と前記規制部が接触した状態で、前記孔の前記内径拡大部内に位置し、
前記内径拡大部の範囲は、前記磁気コアの前記可動子側端面から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流部まで構成されている燃料噴射装置。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0009】に、
「具体的には以下のように構成するとよい。
(1)弁体と、前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、前記磁気コアには、燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成される。
(2)(1)において、前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを備え、前記スプリングの外径は前記内径部の径よりも小さく、前記スプリングは前記内径部の内周側で支持される。
(3)(1)又は(2)において、前記大径部の内径はほぼ一定となるように形成される。
(4)(3)において、前記内径拡大部の内径は前記可動子と対向する端面に向かって次第に拡大される。
(5)(1)又は(2)において、前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である。
(6)(1)又は(2)において、前記可動子には前記弁体が挿入される挿入孔と前記挿入孔よりも外周側に位置する燃料通路孔が形成され、前記挿入孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置するとともに、前記燃料通路孔は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部と軸方向において重なる位置に形成される。
(7)(6)において、前記燃料通路孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置することを有する。
(8)(1)~(7)の何れかにおいて、前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成される。
(9)(1)~(7)の何れかにおいて、前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成される。」
とあるのを、
「具体的には以下のように構成するとよい。
(1)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である。
(2)(1)において、前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを備え、前記スプリングの外径は前記内径部の径よりも小さく、前記スプリングは前記内径部の内周側で支持される。
(3)(1)又は(2)において、前記大径部の内径はほぼ一定となるように形成される。
(4)(3)において、前記内径拡大部の内径は前記可動子と対向する端面に向かって次第に拡大される。
(5)(1)又は(2)において、前記弁体は弁ニードル部と前記弁ニードル部よりも大きな径を有する拡径部とを有し、
前記可動子は、前記弁体の前記拡径部の規制部と協働して開閉弁動作を行わせるように構成され、
前記内径拡大部は、前記拡径部の外径側に位置するとともに、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流側において形成される。
(6)(1)又は(2)において、前記可動子には前記弁体が挿入される挿入孔と前記挿入孔よりも外周側に位置する燃料通路孔が形成され、前記挿入孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置するとともに、前記燃料通路孔は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部と軸方向において重なる位置に形成される。
(7)(6)において、前記燃料通路孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置することを有する。
(8)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成される。
(9)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成される。」
に訂正する。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし11は、請求項2ないし11が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正後の請求項1ないし11は、一群の請求項として請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の「内径拡大部」について、「前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項1は、特許明細書の段落【0022】、【0023】、【0044】及び【0055】並びに特許図面の図1、図2、図10及び図15に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項5についての訂正は、「前記弁体は弁ニードル部と前記弁ニードル部よりも大きな径を有する拡径部とを有し、前記可動子は、前記弁体の前記拡径部の規制部と協働して開閉弁動作を行わせるように構成され、前記内径拡大部は、前記拡径部の外径側に位置するとともに、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流側において形成される」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項2は、特許明細書の段落【0014】、【0015】、【0018】、【0022】、【0023】、【0025】、【0027】、【0029】、【0043】、【0044】、【0054】及び【0055】並びに特許図面の図1、図10及び図15に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1ないし7のいずれか一項を引用する形式であった訂正前の請求項8を、引用請求項数を削減するとともに、他の請求項を引用しない独立形式請求項に改めるものである。
よって、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とし、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1ないし7のいずれか一項を引用する形式であった訂正前の請求項9を、引用請求項数を削減するとともに、他の請求項を引用しない独立形式請求項に改めるものである。
よって、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とし、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る請求項10についての訂正は、訂正前に「前記規制部よりも上流部」とあるのを「前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流部」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項5は、特許明細書の段落【0014】、【0015】、【0018】、【0022】、【0023】、【0025】、【0027】、【0029】、【0043】、【0044】、【0054】及び【0055】並びに特許図面の図1、図10及び図15に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6に係る明細書の段落【0009】についての訂正は、上記訂正事項1ないし5に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために明細書を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)独立して特許を受けることができるかについて
特許異議は請求項1ないし4、6、7、10及び11に対して申し立てられており、請求項5、8及び9に対しては申し立てられていないところ、請求項5、8及び9に係る訂正を含む訂正事項1ないし4は、上述のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後の請求項5、8及び9は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定が適用されるので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、訂正後の請求項5、8及び9について検討すると、訂正後の請求項5、8及び9は、それぞれ訂正前の請求項5、8及び9の発明特定事項を備えたものであり、他に請求項5、8及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しないから、訂正後の請求項5、8及び9に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
3 小括
本件訂正請求による訂正事項1ないし6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合する。
よって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許に対して、当審が平成30年11月8日付け取消理由通知書により通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許は同法第113条第2号により取り消されるべきものである。
引用文献1:特開2008-121679号公報
引用文献2:特開2010-159677号公報
第4 当審の判断
1 訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」ないし「訂正発明4」、「訂正発明6」、「訂正発明7」、「訂正発明10」及び「訂正発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4、6、7、10及び11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状であることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを備え、
前記スプリングの外径は前記内径部の径よりも小さく、前記スプリングは前記内径部の内周側で支持されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記大径部の内径はほぼ一定となるように形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記内径拡大部の内径は前記可動子と対向する端面に向かって次第に拡大されることを特徴とする燃料噴射装置。」
「 【請求項6】
請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記可動子には前記弁体が挿入される挿入孔と前記挿入孔よりも外周側に位置する燃料通路孔が形成され、
前記挿入孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置するとともに、前記燃料通路孔は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部と軸方向において重なる位置に形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料噴射装置において、
前記燃料通路孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置することを有することを特徴とする燃料噴射装置。」
「 【請求項10】
請求項1~7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記弁体よりも大きな径を有する拡径部によって形成され、
前記規制部は、前記可動子と前記磁気コアが接触し、前記可動子と前記規制部が接触した状態で、前記孔の前記内径拡大部内に位置し、
前記内径拡大部の範囲は、前記磁気コアの前記可動子側端面から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流部まで構成されている燃料噴射装置。
【請求項11】
請求項1~7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記磁気コアと前記可動子とが対向する前記可動子の端面は、平面状である燃料噴射装置。」
2 引用文献1及び2に記載された発明及び技術
(1)引用文献1について
本件特許に係る原出願の出願前に頒布された引用文献1には、「燃料噴射弁」に関して、図面(特に、図1参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア 「【0016】
図1には、燃料噴射弁1が断面図で示されている。この燃料噴射弁1は、混合機圧縮型火花点火式の内燃機関の燃料噴射装置用の燃料噴射弁として形成されている。この燃料噴射弁1は特に、図示されていない内燃機関の燃焼室に、燃料を直接噴射するために適している。
【0017】
燃料噴射弁1は、内部に弁ニードル3が配置されているノズル体2から成っている。弁ニードル3は球形の弁閉鎖体4と作用結合しており、この弁閉鎖体4は、弁座体5に配置された弁座面6と共働してシール座を形成している。図示の燃料噴射弁1は、内方に向かって開放する電磁式の燃料噴射弁1であって、噴射開口7を有している。
【0018】
マグネットコイル9はコイル保持体に巻き付けられていて、このコイル保持体はマグネットコイル9の内極10に接触している。内極10と外極8とは間隙によって互いに切り離されている。マグネットコイル9は導体を介して、電気的な差込みコンタクト12を介して供給可能な電流によって励起される。差込みコンタクト12は、内極10に射出成形されたプラスチック被覆13によって取り囲まれている。
【0019】
可動子19は第1のフランジ14を介して弁ニードル3と摩擦力結合式に結合されており、この弁ニードル3は例えば溶接シームによって第1のフランジ14と結合されている。第1のフランジ14には戻しばね15が支持されており、この戻しばね15は燃料噴射弁1の図示の構造形態では、スリーブ16によって予負荷もしくはプレロード(Vorspannung)される。
【0020】
可動子19及び弁座体5内には、燃料通路18a,18bが延びており、これらの燃料通路18a,18bは、中央の燃料供給部11を介して供給される燃料を、弁座体5における噴射開口7に導く。燃料噴射弁1はシール部材17によって、図示されていない分配管路に対してシールされている。
【0021】
燃料噴射弁1の休止状態において可動子19は、弁ニードル3における第1のフランジ14を介して、戻しばね15によって、上昇行程方向とは逆向きに負荷され、これにより弁閉鎖体4は弁座面6にシール作用をもって接触する状態に保たれる。マグネットコイル9の励起時に、マグネットコイル9は磁界を形成し、この磁界は可動子19を戻しばね15のばね力に抗して上昇行程方向に移動させ、この場合上昇行程は、休止位置において内極10と可動子19との間に位置している作業間隙によって所定されている。
【0022】
可動子19は、弁ニードル3に溶接された第1のフランジ14を、ひいては弁ニードル3を上昇行程方向に連行する。弁ニードル3と作用結合されている弁閉鎖体4は、弁座面6から持ち上がり、燃料通路18a,18bを介して噴射開口7に達した燃料が噴射される。
【0023】
コイル電流が遮断されると、可動子19は磁界の十分な消滅の後で、第1のフランジ14に対する戻しばね15の圧力によって内極10から落下し、これによって弁ニードル3は上昇行程方向とは逆向きに移動する。これによって弁閉鎖体4は弁座面6に接触し、燃料噴射弁1は閉鎖される。電磁的な磁気回路はアクチュエータ28を形成する。」
イ 上記ア(【0021】ないし【0023】)から、弁ニードル3と可動子19とが協働して開閉弁動作が行われることが分かる。
ウ 上記アの「マグネットコイル9は導体を介して、電気的な差込みコンタクト12を介して供給可能な電流によって励起される」(段落【0018】)との記載、「マグネットコイル9の励起時に、マグネットコイル9は磁界を形成し、この磁界は可動子19を戻しばね15のばね力に抗して上昇行程方向に移動させ」(段落【0021】)との記載及び「コイル電流が遮断されると、可動子19は磁界の十分な消滅の後で、第1のフランジ14に対する戻しばね15の圧力によって内極10から落下し、これによって弁ニードル3は上昇行程方向とは逆向きに移動する」(段落【0023】)との記載並びに図1の図示内容からみて、マグネットコイル9に電流を供給することにより可動子19を移動させる磁気力を発生する内極10を備えることが分かる。
エ 上記アの「可動子19及び弁座体5内には、燃料通路18a,18bが延びており、これらの燃料通路18a,18bは、中央の燃料供給部11を介して供給される燃料を、弁座体5における噴射開口7に導く」(段落【0020】)との記載及び図1の図示内容から、中央の燃料供給部11を介して供給される燃料は、可動子19における燃料通路18a,18bを経て、弁座体5における噴射開口7に導かれることが分かる。そうすると、燃料供給部11と燃料通路18a,18bとの間に位置する、内極10の内周側にある貫通孔が燃料通路として機能するものであることが分かる。また、図1の図示内容から、内極10の内周側にある貫通孔が、可動子19と対向する内極10の端面に開口して弁ニードル3の軸部に沿う方向にあることが看取できる。
オ 図1の図示内容からみて、内極10の内周側にある貫通孔には、燃料の流通方向の上流側(図1における上方側)に、内径が最も小さい領域があり、それに続く下流側に、内径が中程度の大きさの領域があり、さらにそれに続く下流側に、内径がより大きい領域があり、最も下流側に、下流側に向かって徐々に内径が拡大する部分があることが分かる。また、便宜的に、内径が中程度の大きさの領域を上流側と下流側とに分割して、上流側部分と下流側部分とからなるということができる。
そうすると、前記貫通孔には、燃料通路を形成する内径が最も小さい領域(以下「第1内径領域」という。)と、第1内径領域よりも下流側に位置し、上流側部分と下流側部分とからなる第1内径領域の内径よりも大きい内径を有する領域(以下「第2内径領域」という。)と、第2内径領域よりも下流側に位置し、第2内径領域の内径よりも大きい内径を有する領域(以下「第3内径領域」という。)と、第3内径領域よりも下流側に位置し、可動子19と対向する端面に向かって徐々に内径が拡大する部分(以下「内径徐変拡大部」という。)とがあるといえる。
カ 上記オ及び図1の図示内容からみて、第2内径領域の下流側部分、第3内径領域及び内径徐変拡大部の内径は、下流側に向かって拡大することが分かるから、言い換えると、第2内径領域の下流側部分、第3内径領域及び内径徐変拡大部の形成面と可動子19との、弁ニードル3の軸部に沿う方向の間隔は、内極10の端面の内径部(内径徐変拡大部の下流端の内径部)から貫通孔の奥側(中央側)に向かうほど拡大することが分かる。
上記アないしカ及び図1の図示内容を総合すると、引用文献1には、「燃料噴射弁1」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「弁ニードル3と、
前記弁ニードル3と協働して開閉弁動作を行わせる可動子19と、
マグネットコイル9に電流を供給することにより可動子19を移動させる磁気力を発生する内極10と、を備えた燃料噴射弁1において、
前記内極10には、前記可動子19と対向する端面に開口して弁ニードル3の軸部に沿う方向に貫通孔が形成され、
貫通孔には、
燃料通路を形成する内径が最も小さい第1内径領域と、
前記第1内径領域よりも下流側に位置し、上流側部分と下流側部分とからなる前記第1内径領域の内径よりも大きい内径を有する第2内径領域と、
前記第2内径領域よりも下流側に位置し、前記第2内径領域の内径よりも大きい内径を有する第3内径領域と、
前記第3内径領域よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって徐々に内径が拡大する内径徐変拡大部とが形成され、
前記第2内径領域の下流側部分、前記第3内径領域及び前記内径徐変拡大部の形成面と前記可動子19との前記弁ニードル3の軸部に沿う方向の間隔が、前記内極10の前記端面の内径部から前記貫通孔の奥側に向かうほど拡大するように構成される燃料噴射弁1。」
(2)引用文献2について
本件特許に係る原出願の出願前に頒布された引用文献2には、「燃料噴射弁」に関して、図面(特に、図1、図2および図4参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0020】
図1に示すインジェクタ10は、燃料噴射弁であって、たとえば直噴式のガソリンエンジンに適用される。直噴式のガソリンエンジンにインジェクタ10を適用する場合、インジェクタ10はエンジンヘッド(図示せず)に搭載される。」
イ 「【0041】
ニードル14に設けられるストッパ27は、開弁方向Z1への可動コア36の変位を規制する。ストッパ27の外径は、穴部41の内径よりも大きい。そのため、ニードル14のストッパ27は、開弁方向Z1に位置する可動コア36の端面部45(以下、「可動コア36の上端面部45」ということがある)と接する。ストッパ27と可動コア36の上端面部45とが接することにより、可動コア36とニードル14との間におけるニードル14の弁座29側(閉弁方向Z2)への移動および可動コア36の固定コア35側への相対的な移動は制限される。これにより、ニードル14のストッパ27は、可動コア36とニードル14との過剰な相対移動を制限する。
【0042】
またストッパ27は、筒状の固定コア35の内方側にて軸方向Zに沿って往復変位する。したがってストッパ27の外径は、固定コア35の内径よりも若干小さい。したがって、固定コア35の内周面部351とストッパ27の外周面部271との間には、円筒形状の隙間部54が形成される。」
ウ 「【0056】
図4(a)に示すように、時刻t1で閉弁状態からコイル34に通電すると、コイル34に発生した磁界により磁性プレート50、磁性部16、可動コア36、固定コア35およびノズルホルダ13には磁束が流れ、磁気回路が形成される。これにより、固定コア35と可動コア36との間には磁気吸引力が発生する。固定コア35と可動コア36との間に発生する磁気吸引力と第2スプリング46の開弁力f2との和が第1スプリング39の閉弁力f1よりも大きくなると、図4(b)に示すように、時刻t2にて可動コア36は開弁方向Z1への移動を開始する。このとき、可動コア36の上端面部45にストッパ27が接しているニードル14は、可動コア36とともに開弁方向Z1へ移動する。その結果、ニードル14のシール部28は、弁座29から離れる。
【0057】
燃料入口18からインジェクタ10の内部へ流入した燃料は、前述したように燃料フィルタ19、入口部材12の内周側、アジャスティングパイプ40の内周側、固定コア35の内周側(燃料通路321)、流入孔30、連通孔31、中径部21の内周側(燃料通路322)、小径部22の内周側(燃料通路322)を順次経由して、ノズルボディ24の内周側に流入する。ノズルボディ24に流入した燃料は、弁座29から離れたニードル14とノズルボディ24との間を経由して噴孔25へ流入する。これにより、噴孔25から燃料が噴射される。」
エ 「【0061】
上述したように、閉弁状態から磁気吸引力が作用すると、可動コア36およびニードル14は、可動コア36の上端面部45とストッパ27とが接することによって一体となって開弁方向Z1へ移動する。可動コア36およびニードル14は、可動コア36の上端面部45(本例では凸部51のうち外周側の部分)が固定コア35の下端面部49と衝突して噴孔25を全開(最大開度)とする時刻t3まで開弁方向Z1へ移動する。可動コア36が固定コア35に衝突すると、可動コア36とニードル14とは軸方向Zへ相対移動可能であるので、ニードル14は開弁方向Z1への慣性力によって、ストッパ27が可動コア36の上端面部45から離間して、さらに開弁方向Z1への移動を継続する。このようにストッパ27が離間しても、ストッパ27は第1スプリング39と接触している状態が維持されるので、なんら他の部材にストッパ27が衝突することはない。したがってニードル14がバウンドすることなく、噴孔25からの不規則な燃料の噴射は低減される。
【0062】
また、ニードル14は開弁方向Z1への慣性力によって開弁方向Z1への移動を継続して、可動コア36とストッパ27とが離れると、ニードル14には可動コア36を経由した第2スプリング46の開弁力f2が加わらない。そのため、ニードル14には、第1スプリング39の押し付け閉弁力f1のみが加わる。すなわち可動コア36とニードル14とが離れると、ニードル14に対し閉弁方向Z2へ加わる力が大きくなる。したがって、ニードル14の開弁方向Z1への過剰な移動が制限され、いわゆるオーバーシュートは低減される。
【0063】
同様に、ニードル14が開弁方向Z1への慣性力によって開弁方向Z1への移動を継続して、可動コア36とニードル14とが離れると、可動コア36には第2スプリング46の開弁力f2および磁気吸引力が加わり、第1スプリング39の閉弁力f1が加わらない。すなわち可動コア36とストッパ27とが離れると、可動コア36に対し開弁方向Z1へ加わる力が大きくなる。したがって、可動コア36が固定コア35に衝突すると、その衝撃により可動コア36は閉弁方向Z2へ跳ね返ることなく、時刻t3から少なくともコイル34が通電されている期間は固定コア35に接触した状態が維持される。
【0064】
可動コア36が固定コア35に衝突する時の衝撃力は、衝撃力に寄与する重量が低減されるため(可動コア36分の重量のみとなるため)小さくなる。このように衝撃力が小さいために、可動コア36は極めて跳ね返り難い。
【0065】
さらに、ニードル14がオーバーシュートして、ニードル14に加わる力が第1スプリング39の閉弁力f1のみとなると、ニードル14は開弁方向Z1への移動速度が減少し、オーバーシュート量が最大となった後、閉弁力f1によって閉弁方向Z2へ移動を開始する。一方、可動コア36は、磁気吸引力および第2スプリング46の開弁力f2によって固定コア35に接触した状態であるので、ニードル14が閉弁方向Z2へ移動するとき、固定コア35と接触している可動コア36によって閉弁方向Z2への移動が規制される。その結果、ニードル14には再び磁気吸引力および第2スプリング46の開弁力f2が加わるので、ニードル14は開弁状態を維持することができる。このように、可動コア36とニードル14とは相対的に移動可能であるため、ニードル14のバウンドにともなう噴孔25からの不規則な燃料の噴射は低減される。したがって、コイル34への通電時間が短期間でも、噴孔25から噴射される燃料の噴射量を精密に制御することができる。」
オ 上記イの「ニードル14に設けられるストッパ27は、開弁方向Z1への可動コア36の変位を規制する。」(段落【0041】)との記載及び上記エの「可動コア36およびニードル14は、可動コア36の上端面部45とストッパ27とが接することによって一体となって開弁方向Z1へ移動する。」(段落【0061】)との記載から、ニードル14は、可動コア36の前記ニードル14に対する開弁方向の相対変位を規制するストッパ27を有することが分かる。
カ 図1及び図2の図示内容からみて、ストッパ27はニードル14より大きな径を有して形成されることが看取できる。
キ 上記イの「ストッパ27の外径は、固定コア35の内径よりも若干小さい。したがって、固定コア35の内周面部351とストッパ27の外周面部271との間には、円筒形状の隙間部54が形成される。」(段落【0042】)との記載並びに図1及び図2の図示内容からみて、ストッパ27は、可動コア36と固定コア35が接触し、前記可動コア36と前記ストッパ27が接触した状態で、前記固定コア35の内周側(燃料通路321)に位置することが分かる。
上記アないしキ並びに図1、図2及び図4の図示内容を総合すると、引用文献2には、「燃料噴射弁」に関して、次の技術(以下、「引用文献2技術1」及び「引用文献2技術2」という。)が記載されている。
〔引用文献2技術1〕
「ニードル14のストッパ27の外径が、固定コア35の内径よりも小さく、可動コア36が前記固定コア35の下端面部49に衝突して前記ニードル14の前記ストッパ27が前記可動コア36から開弁方向Z1に離間した後、前記ニードル14の前記ストッパ27が前記可動コア36に接触する燃料噴射弁に関する技術。」
〔引用文献2技術2〕
「ニードル14は、可動コア36の前記ニードル14に対する開弁方向の相対変位を規制するストッパ27を有し、前記ストッパ27は、前記ニードル14よりも大きな径を有して形成され、前記ストッパ27は、前記可動コア36と前記固定コア35が接触し、前記可動コア36と前記ストッパ27が接触した状態で、前記固定コア35の内周側(燃料通路321)に位置する燃料噴射弁に関する技術。」
3 対比・判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「弁ニードル3」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、訂正発明1における「弁体」に相当し、以下同様に、「可動子19」は「可動子」に、「マグネットコイル9に電流を供給することにより可動子19を移動させる磁気力を発生する内極10」は「コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コア」に、「燃料噴射弁1」は「燃料噴射装置」に、「弁ニードル3の軸部」は「弁軸」に、「貫通孔」は「孔」に、それぞれ相当する。
引用発明における「第1内径領域」は訂正発明1における「内径部」に相当し、引用発明における「第1内径領域」よりも下流側に位置し、「第1内径領域」の内径よりも大きい内径を有する「第2内径領域」の「上流側部分」は訂正発明1における「大径部」に相当する。
また、引用発明における「第2内径領域」の「下流側部分」、「第3内径領域」及び「内径徐変拡大部」は、「第2内径領域」の「下流側部分」と「第3内径領域」との間の段差部と、徐々に内径が拡大する「内径徐変拡大部」とを有しており、可動子19と対向する端面に向かって内径が拡大するものであるから、訂正発明における「内径拡大部」に相当する。
そうすると、引用発明は、訂正発明1の用語で表すと、燃料通路を形成する内径部と、前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成されているといえる。
なお、以下の図は、引用発明における「第1内径領域」、「第2内径領域」、「第3内径領域」及び「内径徐変拡大部」を、訂正発明1に則って整理したものである。
そうすると、訂正発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成される燃料噴射装置。」
〔相違点〕
訂正発明1においては、「前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である」のに対して、
引用発明においては、かかる事項を備えていない点。
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る訂正発明1の発明特定事項は、引用文献1には示唆されておらず、本件特許に係る原出願の出願前において周知技術であるともいえない。
そうすると、訂正発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、引用文献2技術1及び引用文献2技術2も、上記相違点に係る訂正発明1の発明特定事項を開示又は示唆するものではないから、引用発明に、引用文献2技術1及び引用文献2技術2を適用しても、上記相違点に係る訂正発明1の発明特定事項とすることはできない。
したがって、訂正発明1は、引用発明、引用文献2技術1及び引用文献2技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)訂正発明2ないし4、6、7、10及び11について
訂正特許請求の範囲における請求項2ないし4、6、7、10及び11は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、訂正発明2ないし4、6、7、10及び11は、訂正発明1の発明特定事項をすべて含むものである。
したがって、訂正発明2ないし4、6、7、10及び11は、訂正発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2技術1及び引用文献2技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
4 まとめ
以上のとおり、訂正発明1ないし4、6、7、10及び11は、引用発明、引用文献2技術1及び引用文献2技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、訂正後の請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-701211