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特許異議申立

2017-701004

遊技機

審判番号
2017-701004
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-207405外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年10月20日
審決日
2018年01月09日
公報発行日
2018年02月23日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.161-Y (A63F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6121505号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6121505号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6121505号の請求項1に係る特許についての出願は、平成21年12月25日に出願した特願2009-296296号の一部を平成27年10月21日に新たな特許出願としたものであり、平成29年4月7日に特許権の設定登録がされ、平成29年10月20日に、その特許に対し、特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第6121505号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(A~Iは、特許異議申立人の主張に従って、当審で付した。)。 【請求項1】 A メダルを用いて遊技を行う遊技機であって、 B 前記遊技機の前面に設けられる投入部から投入されたメダルが流下するメダル流下通路と、該メダル流下通路を流下するメダルを流出させる第1流出部及び第2流出部と、前記メダル流下通路の流下方向を前記第1流出部または前記第2流出部に変更可能な流路変更手段と、を有するメダルセレクタと、 C 前記第1流出部から流出したメダルを所定の回収部に誘導する回収誘導部と、 D 前記第2流出部の少なくとも一部を覆うカバー部と、 E 前記第2流出部から流出したメダルを前記遊技機の前面に設けられた返却部に誘導する返却誘導部と、 を備え、 F 前記回収誘導部は、 前記第1流出部から前記回収部に向けて下方に傾斜するように延設された流下路面と、 G 前記流下路面におけるメダルの流下方向の両側に立設される一対のガイド壁面と、 H 前記流下路面の上方位置に配設され、該流下路面を流下するメダルの上方への取り出しを規制する規制部と、 を備え、 I 前記規制部におけるメダルの流下方向の下流側端部と前記流下路面におけるメダルの流下方向の下流側端部とは、前記カバー部の上方端部よりも下方に位置することを特徴とする遊技機。 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、主たる証拠として下記甲第1号証及び従たる証拠として下記甲第2~4号証を提出し、本件特許発明は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるため、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 <証拠方法> 甲第1号証:特願2009-93731号(特開2010-240227号公報)(以下、「先願」という。) 甲第2号証:特開2008-23260号公報 甲第3号証:特開2009-61061号公報 甲第4号証:特開2007-313249号公報 第4 甲第1~4号証の記載 1 先願に記載された発明 本願の出願遡及日前の出願であって、本願の出願遡及日後に公開された先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。 (ア)「【0001】 本発明は、スロットマシン、パチンコ機等の遊技機に関するものである。 【背景技術】 【0002】 スロットマシン等の遊技機は、筐体の前面に装着された前面パネルにメダル(遊技媒体)の投入口を備え、この投入口から1ゲーム当たり所定数のメダルを投入してゲームを行う。投入口から投入されたメダルは前面パネルの裏側へと案内され、選別手段により正、不正の選別を受けた後、正規のメダルは案内シュートを経て筐体内のメダルホッパーに貯留される。一方、不正メダルは選別手段で除去されて返却通路の上端の受け入れ口へと落下し、返却通路を経て排出口から前面パネルの前面下部の受け皿へと返却される。」 (イ)「【0009】 本発明は、このような従来の問題点に鑑み、返却通路から受け入れ口を経て案内シュート側に不正部材を挿入して、その不正部材により選別手段を通過した正規のメダルを返却通路へと不正に回収する不正回収を防止できる遊技機を提供することを目的とする。」 (ウ)「【0016】 前面パネル3は左右一端側に配置された上下一対のヒンジ手段(図示省略)を介して筐体2に開閉自在に装着されており、この前面パネル3の上部側には第1表示窓15と第2表示窓16とが上下に配置されている。第1表示窓15は、筐体2側の図柄表示リール4a~4cに対応して矩形状に形成されており、遊技者はこの第1表示窓15を介して図柄表示リール4a~4cを前側から視認可能となっている。 【0017】 第2表示窓16は、前面パネル3の裏側に装着された液晶表示ユニット(図示省略)の表示画面17に対応して矩形状に形成されており、遊技者はこの第2表示窓16を介して表示画面17を前側から視認可能となっている。第2表示窓16の下側には、上部側に上操作パネル部18と前操作パネル部19とを有する前カバー20が前側に張り出して設けられている。 【0018】 上操作パネル部18にはメダルを投入可能な投入口22の他、1ベットボタン23とマックスベットボタン24とキャンセルボタン25とが設けられている。1ベットボタン23とマックスベットボタン24は、投入口22へのメダルの投入に代えてクレジットからメダルをベットするためのものである。 ・・・ 【0020】 前面パネル3の下部側は前カバー20に比して大きく後方に後退しており、この前面パネル3の下部側には、払い出し手段7から払い出されたメダルや返却されたメダルを前側に排出するための排出口30と、排出口30から排出されたメダルを受ける受け皿31と、この受け皿31の一側に配置された灰皿32とが設けられている。なお、排出口30の左右両側には、スピーカ33が配置されている。」 (エ)「【0023】 パネル体38の裏側には、図3、図4に示すように、投入口22から投入されたメダルの正、不正を選別する選別手段41と、選別手段41を通過した正規のメダルをメダルホッパー6へと案内する案内シュート42と、選別手段41により排除された不正メダル、返却メダルを排出口30を経て受け皿31へと排出する返却通路43と、選別手段41を通過したメダルを返却通路43へと不正に回収する不正回収を阻止するための阻止手段44とが設けられている。」 (オ)「【0026】 返却通路43は、図3、図4に示すように、パネル体38と、このパネル体38の後側に装着された横断面コ字状の通路形成体56とにより構成され、選別手段41の下側からパネル体38の左右方向の中央側へと傾斜する傾斜通路部57と、この傾斜通路部57の下端から排出口30側へと下方に延びる縦通路部58とを有する。傾斜通路部57の上端はメダルホッパー6よりも上にあり、選別手段41の下側と対向して上向きに開口する受け入れ口59となっている。なお、受け入れ口59は平面視横長矩形状になっている。 【0027】 通路形成体56の後壁60は前面パネル3を閉じたときにメダルホッパー6、払い出し手段7に近接するように、そのメダルホッパー6、払い出し手段7の前面形状に沿って屈曲している。そして、返却通路43の途中の後壁60には払い出し手段7の払い出し口37に対応する入口61が設けられ、払い出し口37から払い出されたメダルを入口61から返却通路43を介して排出口30から受け皿31へと案内するようになっている。」 (カ)「【0030】 この選別手段41は、投入口22に投入されたメダルが上向きに開口する入口68から入り、内部の傾斜通路66を経て取り付け枠48側の出口70へと移動する間に正、不正を判別して、不正メダルを傾斜通路66の途中の開口状の除去部67から受け入れ口59へと落下させて除去し、正規のメダルのみを出口70から案内シュート42へと通過させるようになっている。選別手段41の傾斜通路66は除去部67で不正メダルが裏側へと容易に落下すべく上部が裏側となるように傾斜しており、この傾斜通路66に対応して出口70も傾斜状になっている。」 (キ)「【0033】 案内シュート42は内周壁77と外周壁78とを有する樋状であって、図3、図5~図7に示すように、出口70に接続して略横方向に配置され且つ出口70からのメダルを略横方向に案内する上流側の横向き案内部79と、メダルホッパー6へとメダルを後向きに案内する下流側の後向き案内部80と、横向き案内部79と後向き案内部80とを円弧状に接続し且つ横向き案内部79からのメダルを後向き案内部80へと案内する湾曲案内部81とを有し、その上流端側に一体に設けられた取り付け座75を介して取り付け部64の側面にネジ等で着脱自在に固定されている。 【0034】 この案内シュート42は内周壁77と外周壁78との間でメダルを円滑に案内すべく比較的狭い通路幅を有し、出口70から傾斜状態で出たメダルを内周壁77に沿って案内するようになっている。案内シュート42の上流端は出口70に対応して返却通路43の受け入れ口59よりも高い位置にあり、下流端はメダルホッパー6の上端と同程度又は若干高い程度で返却通路43の受け入れ口59よりも低い位置にあって、上流端と下流端との間で徐々に傾斜している。」 (ク)「【0057】 図20~図22は本発明の第6の実施形態を例示する。この実施形態では、案内シュート42には、内周壁77と外周壁78との上端間を連結する覆い部83が上流側の横向き案内部79から下流側の後向き案内部80までの略全体にわたって設けられており、この覆い部83により阻止手段44が構成されている。」 (ケ)「【0060】 このように案内シュート42の略全体に覆い部83を設けて、その覆い部83により阻止手段44を構成しても、メダルの不正回収を未然に防止することができる。」 (コ)図3には、樋状の案内シュート42の底面部の下流側端部は、返却通路43の受け入れ口59より下方に位置し、案内ショート42の外周壁78の下流側端部は、返却通路43の受け入れ口59より上方に位置することが示されている。 上記(ア)~(ケ)の記載事項及び(コ)の認定事項から、以下の事項が導かれる。 (a)上記(ア)【0001】には、「スロットマシン・・・等の遊技機」と記載され、同【0002】には、「スロットマシン等の遊技機は、・・・メダル・・・の投入口を備え、この投入口から・・・メダルを投入してゲームを行う」と記載されている。 よって、先願明細書等には、メダルを投入してゲームを行うスロットマシン等の遊技機が記載されているといえる。 (b)上記(ウ)【0016】~【0018】には、「前面パネル3の上部側には・・・第2表示窓16・・・が・・・配置され・・・第2表示窓16の下側には、・・・上操作パネル部18・・・を有する前カバー20が・・・設けられ・・・上操作パネル部18にはメダルを投入可能な投入口22・・・が設けられている」と、上記(カ)【0030】には、「この選別手段41は、投入口22に投入されたメダルが・・・、内部の傾斜通路66を経て・・・出口70へと移動する間に正、不正を判別して、不正メダルを傾斜通路66の途中の開口状の除去部67から受け入れ口59へと落下させて除去し、正規のメダルのみを出口70から案内シュート42へと通過させる」と、それぞれ、記載されている。 よって、先願明細書等には、前面パネルに設けられる投入口22から投入されたメダルが移動する傾斜通路66を有し、傾斜通路66を経て出口70へと移動する間に正、不正を判別して、不正メダルを傾斜通路66の途中の開口状の除去部67から受け入れ口59へと落下させて除去し、正規のメダルのみを出口70から案内シュート42へと通過させる選別手段41が記載されているといえる。 (c)上記(キ)【0033】には、「案内シュート42は・・・出口70からのメダルを・・・メダルホッパー6へと・・・案内する」と記載されている。 よって、先願明細書等には、出口70からのメダルをメダルホッパー6へと案内する案内シュート42が記載されているといえる。 (e)上記(ウ)【0020】には、「前面パネル3の下部側には、払い出し手段7から払い出されたメダルや返却されたメダルを前側に排出するための排出口30・・・が設けられている」と、上記(エ)【0023】には、「選別手段41により排除された不正メダル、返却メダルを排出口30を経て受け皿31へと排出する返却通路43」と、上記(オ)【0026】には、「返却通路43は、・・・傾斜通路部57・・・を有する。傾斜通路部の上端は・・・、選別手段41の下側と対向して上向きに開口する受け入れ口59となっている」と、上記(カ)【0030】には、「この選別手段41は、・・・不正メダルを傾斜通路66の途中の開口状の除去部67から受け入れ口59へと落下させて除去」すると、それぞれ、記載されている。 よって、先願明細書等には、除去部67から落下されたメダルを前面パネルに設けられた排出口30へと排出する返却通路43が記載されているといえる。 (f)上記(キ)【0033】には、「案内シュート42は内周壁77と外周壁78とを有する樋状であって、出口70からのメダルを・・・メダルホッパー6へと・・・案内する」と、同【0034】には、「案内シュート42は・・・上流端と下流端との間で徐々に傾斜している」と、それぞれ、記載されている。 よって、先願明細書等には、案内シュート42は、樋状であって、出口からメダルホッパー6へと、上流端と下流端との間で傾斜していることが記載されているといえる。 (g)上記(キ)【0033】には、「案内シュート42は内周壁77と外周壁78とを有する樋状であって」と、同【0034】には、「案内シュート42は内周壁77と外周壁78との間でメダルを円滑に案内」すると、それぞれ、記載されている。 よって、先願明細書等には、案内シュート42は、メダルを円滑に案内する内周壁77と外周壁78を有することが記載されているといえる。 (h)上記(ク)【0057】には、「案内シュート42には、内周壁77と外周壁78との上端間を連結する覆い部83が・・・設けられており、この覆い部83により阻止手段44が構成されている」と、上記(ケ)【0060】には、「覆い部83により阻止手段44を構成しても、メダルの不正回収を未然に防止することができる」と、それぞれ、記載されている。 よって、先願明細書等には、案内シュート42は、内周壁77と外周壁78との上端間を連結し、メダルの不正回収を防止するための阻止手段44を構成する覆い部83が設けられていることが記載されているといえる。 (i)上記(コ)より、図3には、樋状の案内シュート42の底面部の下流側端部は、返却通路43の受け入れ口59より下方に位置することが示されている。 上記(ア)~(ケ)の記載事項、(コ)の認定事項及び(a)~(i)の認定事項より、先願明細書等には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「先願発明」という。)。 「a メダルを投入してゲームを行うスロットマシン等の遊技機であって、 b 前面パネルに設けられる投入口22から投入されたメダルが移動する傾斜通路66を有し、傾斜通路66を経て出口70へと移動する間に正、不正を判別して、不正メダルを傾斜通路66の途中の開口状の除去部67から受け入れ口59へと落下させて除去し、正規のメダルのみを出口70から案内シュート42へと通過させる選別手段41と、 c 出口70からのメダルをメダルホッパー6へと案内する案内シュート42と、 e 除去部67から落下されたメダルを前面パネルに設けられた排出口30へと排出する返却通路43と、 を備え、 f 案内シュート42は、 樋状であって、出口からメダルホッパー6へと、上流端と下流端との間で傾斜しており、 g メダルを円滑に案内する内周壁77と外周壁78を有し、 h 内周壁77と外周壁78との上端間を連結し、メダルの不正回収を防止するための阻止手段44を構成する覆い部83を、 備え、 i 案内シュート42の底面部の下流側端部は、返却通路43の受け入れ口59より下方に位置する 遊技機。」 2 甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (サ)「【0001】 本発明は、メダルを用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の図柄を変動表示可能な可変表示装置の表示結果に応じて所定の入賞が発生可能なスロットマシンに関する。」 (シ)「【0027】 投入メダルセレクタ131では、投入されたメダルの真偽(形状、大きさ、厚み等)が判別されるようになっており、真正なメダルはその通過が投入メダルセンサ31a~31cにて検出された後、投入メダルセレクタ131の本体側面に形成された流出口142(図7参照)から流出されるとともに、偽メダルはその通過が投入メダルセンサ31a~31cにて検出される前に、投入メダルセレクタ131の本体下部に形成された返却部から下方に向けて流出されるようになっている。また、投入メダルセレクタ131の流出口142から流出したメダルは、該投入メダルセレクタ131の側方に設けられる後述するメダルシュート160によりホッパータンク134aに誘導され、返却部から流出したメダルは、該投入メダルセレクタ131の下方に設けられたメダル返却通路132を介してメダル払出口9から下皿に返却されるようになっている。尚、投入メダルセレクタ131及びメダルシュート160の詳細な構造に関しては後述することとする。」 (ス)「【0067】 メダル判別装置としての投入メダルセレクタ131は、図5~図7に示すように直方体形状に構成されており、その本体部内には、正面視略L字状のメダル流下通路133が形成されている(図6中斜線領域)。本体部の上面には、メダル流下通路133の上流側に連通するとともに、上方に配置される投入メダルガイド部材140に形成された投入口140a(図4中拡大図参照)から落下されたメダルが流入される流入口141が形成され、また、本体部の側面には、メダル流下通路133の下流側に連通するとともに、メダルを流出させるための流出口142(図7参照)が形成されている。」 (セ)「【0090】 メダルシュート160は、図8(b)(c)に示すように、取付片167の左右側面及びガイド板164の誘導立面163が、鉛直方向を向く軸線Pに対して平行、つまり鉛直方向を向くように配設される。この鉛直方向を向く誘導立面163に対して、底板162は、図8(b)に示すように、後側(図8(b)中左側)から前側(図8(b)中右側)に向けて下方に傾斜するように、かつ、図8(c)に示すように、投入メダルセレクタ131が配設される左側(図8(c)中左側)から右側(図8(c)中右側)に向けて下方に傾斜するように配設される。」 (ソ)図4には、投入メダルセレクタ131の下縁及びメダル流下通路133の下縁より、メダル返却通路132の上縁が上方に位置すること、及び、メダルシュート160の下流側端部の上縁及び下縁がメダル返却通路132の上縁より下方に位置することが示されている。 上記(サ)~(セ)の記載事項及び(ソ)の認定事項より、甲第2号証には、次の事項が記載されていると認められる。 「その上縁が、投入メダルセレクタ131の下縁及びメダル流下通路133の下縁より、上方に位置するメダル返却通路132を備え、メダルシュート160の下流側端部の上縁及び下縁がメダル返却通路132の上縁より下方に位置するスロットマシン。」 3 甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (タ)「【0014】 以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。 なお、以下の実施形態では、本発明の遊技機として、スロットマシン10を例に挙げて説明する。」 (チ)「【0021】 また、フロントマスク部12の後面側(裏面側)の下方部には、メダル投入口43(図1参照)に対応して、メダルセレクター110が配置されている。このメダルセレクター110は、投入されたメダルが遊技状態等に応じて受付け可能であるか否かを選別する装置であり、メダルの受付けができる場合には、投入されたメダルは、メダル誘導路107を介してホッパータンク108に誘導され、貯留される。逆に、メダルの受付けができない場合には、投入されたメダルは、メダル返却路109を介してメダル受け皿44(図1参照)に誘導され、返却される。」 (ツ)「【0031】 一方、メダルセレクター110のセレクター本体112には、投入されたメダルを適正な大きさのメダルと不適正な大きさのメダルとに選別したり、メダルが受付け可能であるか否かを遊技状態等に応じて選別するためにメダルを転動通過させるメダル選別通路112aが形成されている。そして、セレクター本体112の下方部であって、メダル選別通路112aの外側は、カバー113で覆われており、メダル選別通路112aとカバー113との間にメダル返却路109が接続されている。」 (テ)「【0040】 このようなメダルセレクター110のセレクター本体112に対し、遊技者がメダル投入口43からメダルを投入すると、そのメダルは、自重によってメダル選別通路112aへと導かれ、その後、メダル選別通路112aの入口部分にあるメダル規制機構114に到達する。この際、メダルの外径が規定よりも大きいものだった場合には、メダル規制機構114の外径規制板(図示せず)によるメダルの外径規制に引っ掛かり、その下のメダル選別通路112aへの落下が阻止される。すると、そのメダルは、メダル選別通路112aの縦方向の通路から外れることとなり、そのままメダル選別通路112aとカバー113との間からメダル返却路109に落下し、メダル受け皿44(図1参照)に返却される。 【0041】 また、投入されたメダルの外径が規定以下だった場合には、そのメダルは、メダル規制機構114に引っ掛かることなく、メダル選別通路112aの縦方向の通路に沿って落下する。そして、縦方向の通路と緩やかな曲線で結ばれた横方向の通路に至ると、縦方向から横方向への方向転換によって減速される。この際、メダルの外径が規定よりも小さいものだった場合には、ソレノイド118がONであり、メダル選別機構115によって横方向の通路の上部にガイドとなる凹溝が形成されていたとしても、小さい外径の頂部(上部)が凹溝内に入らない。すると、頂部(上部)の案内がないそのメダルは、減速されていることと横方向の通路がメダルの厚さ方向に傾斜していることから、自重によって通路の外側に自然に横倒しされるようになる。その結果、メダル選別通路112aの横方向の通路から外れ、メダル選別通路112aとカバー113との間からメダル返却路109に落下し、メダル受け皿44(図1参照)に返却される。」 (ト)図4には、メダル選別通路112aの下部を覆うようにカバー113を設けている点、及び、メダル誘導路107の下流側上縁とカバー113の上縁が、同じぐらいの高さであることが示されている。 上記(タ)~(テ)の記載事項及び(ト)の認定事項より、甲第3号証には、次の事項が記載されていると認められる。 「メダル選別通路112aの下部を覆うように設けられているカバー113、及び、メダル誘導路107の下流側上縁とカバー113の上縁が同じぐらいの高さであるスロットマシン10。」 4 甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ナ)「【0023】 [パチスロ機1の全体構成] 先ず、図1及び図2を用いて、実施例に係るパチスロ機1の外観構成と内部構成について詳細に説明する。図1は、実施例に係るパチスロ機1の外観構成を示す斜視図を示している。図2は、前面ドアの内部構成の正面図を、図3は、パチスロ機1の内部構成の正面図をそれぞれ示している。」 (ニ)「【0039】 一方、メダルセレクタ55により不正メダルと判別されたメダルは、メダルセレクタ55の下方に設けたキャンセルシュータ56に排出され、このキャンセルシュータ56を通じて、キャンセルシュート60の内部に落下する。 【0040】 キャンセルシュート60は、メダルセレクタ55のキャンセルシュータ56を通じて落下したメダルをメダル払い出し口20から排出し返却する機能を備えている。また、このキャンセルシュート60は、メダルホッパー21(図3)から排出されるメダルをメダル払い出し口20からメダル受け部19に払い出す機能を備えている。」 (ヌ)「【0047】 図4に示すメダルセレクタ55は、メダル投入口12(図1)から投入されたメダルが、メダルセレクタ55の内部に形成されたメダル通路(図示せず)を通過する際に、メダルの真偽を判別し、正規メダルと判別されたメダルをメダルセレクタ55の排出口側に接続しているメダルホッパー21(図1)に排出する。 【0048】 一方、不正メダルと判別したメダルは、メダルセレクタ55に形成したメダル返却通路(図示せず)を通じて、キャンセルシュータ56内に排出する。また、キャンセルシュータ56内に排出されたメダルは、メダルセレクタ55の下方に接続されているキャンセルシュート60の内部に落下し、以下、このメダルは、メダル払い出し口20を通じて、メダル受け部19に排出する。」 (ネ)図2、図4には、メダルセレクタ55の下方にキャンセルシュータ56、キャンセルシュータ56の下方にキャンセルシュートが位置することが、図7-1には、メダルセレクタ55とキャンセルシュート60は、連通していることが示されている。 上記(ナ)~(ヌ)の記載事項及び(ネ)の認定事項より、甲第4号証には、次の事項が記載されていると認められる。 「メダルセレクタ55からキャンセルシュータ56内に排出されたメダルは、メダルセレクタ55の下方に接続されているキャンセルシュート60の内部に落下するパチスロ機1。」 第5 当審の判断 1 対比 本件特許発明と先願発明を対比する。以下、(a)~(h)は上記第2で本件特許発明に付したものに対応する。 (a) 先願発明の「メダルを投入してゲームを行う」ことは、本件特許発明の「メダルを用いて遊技を行う」ことに相当する。 よって、先願発明の「メダルを投入してゲームを行うスロットマシン等の遊技機」は、本件特許発明の「メダルを用いて遊技を行う遊技機」に相当する。 (b) 先願発明の「前面パネルに設けられる投入口22」、「投入されたメダルが移動する傾斜通路66」は、本件特許発明の「前記遊技機の前面に設けられる投入部」、「投入されたメダルが流下するメダル流下通路」に、それぞれ、相当する。 そして、先願発明の「出口70」、「除去部67」は、それぞれ、本件特許発明の「第1流出部」、「第2流出部」に相当する。 先願発明の「選別手段41」は、「傾斜通路66を経て出口70へと移動する間に正、不正を判別して、不正メダルを傾斜通路66の途中の開口状の除去部67から受け入れ口59へと落下させて除去し、正規のメダルのみを出口70から案内シュート42へと通過させる」ものであるから、メダルが「傾斜通路66」を移動する間にその方向を「出口70」または「除去部67」に変更可能な「流路変更手段」を有するものであり、本件特許発明の「メダルセレクタ」に相当するといえる。 よって、先願発明の「前面パネルに設けられる投入口22から投入されたメダルが移動する傾斜通路66を有し、傾斜通路66を経て出口70へと移動する間に正、不正を判別して、不正メダルを傾斜通路66の途中の開口状の除去部67から受け入れ口59へと落下させて除去し、正規のメダルのみを出口70から案内シュート42へと通過させる選別手段41」は、本件特許発明の「前記遊技機の前面に設けられる投入部から投入されたメダルが流下するメダル流下通路と、該メダル流下通路を流下するメダルを流出させる第1流出部及び第2流出部と、前記メダル流下通路の流下方向を前記第1流出部または前記第2流出部に変更可能な流路変更手段と、を有するメダルセレクタ」に相当する。 (c) 上記(b)より、先願発明の「出口70」は、本件特許発明の「第1流出部」に相当する。 また、先願発明の「メダルホッパー6」、「案内シュート42」は、それぞれ、本件特許発明の「所定の回収部」、「回収誘導部」に相当する。 よって、先願発明の「出口70からのメダルをメダルホッパー6へと案内する案内シュート42」は、本件特許発明の「前記第1流出部から流出したメダルを所定の回収部に誘導する回収誘導部」に相当する。 (e)上記(b)より、先願発明の「除去部67」は、本件特許発明の「第2流出部」に相当する。 また、先願発明の「前面パネルに設けられた排出口30」、「返却通路43」は、それぞれ、本件特許発明の「前記遊技機の前面に設けられた返却部」、「返却誘導部」に相当する。 よって、先願発明の「除去部67から落下されたメダルを前面パネルに設けられた排出口30へと排出する返却通路43」は、本件特許発明の「前記第2流出部から流出したメダルを前記遊技機の前面に設けられた返却部に誘導する返却誘導部」に相当する。 (f)上記(c)より、先願発明の「案内シュート42」、「出口」、「メダルホッパー6」は、それぞれ、本件特許発明の「回収誘導部」、「第1流出部」、「回収部」に相当する。 先願発明の「案内シュート42」は「樋状」であるから、底部があることは明らかであり、「出口からメダルホッパー6へと、上流端と下流端との間で傾斜して」いることから、該底部は「前記第1流出部から前記回収部に向けて下方に傾斜するように延設され」ているといえる。 よって、先願発明の「樋状であって、出口からメダルホッパー6へと、上流端と下流端との間で傾斜して」いる「案内シュート42」は、本件特許発明の「回収誘導部」と同様に、「前記第1流出部から前記回収部に向けて下方に傾斜するように延設された流下路面」を備えているといえる。 (g)上記(f)より、先願発明の「案内シュート42は、樋状」であるから、「メダルを円滑に案内する内周壁77と外周壁78」は、「前記流下路面におけるメダルの流下方向の両側に」「一対」「立設され」ているといえる。 よって、先願発明の、案内シュート42は、「メダルを円滑に案内する内周壁77と外周壁78を有」することは、本件特許発明の、回収誘導部は、「前記流下路面におけるメダルの流下方向の両側に立設される一対のガイド壁面」を備えることに相当する。 (h)上記(g)での検討を踏まえると、先願発明の「内周壁77と外周壁78との上端間」は、「樋状」の「案内シュート42」の上方位置であることは明らかであるから、本件特許発明の「前記流下路面の上方位置」に相当する。 そして、先願発明の「メダルの不正回収を防止するための阻止手段44を構成する」ことは、本件特許発明の「該流下路面を流下するメダルの上方への取り出しを規制する」ことといえるから、先願発明の「覆い部83」は、本件特許発明の「規制部」に相当する。 よって、先願発明の「内周壁77と外周壁78との上端間を連結し、メダルの不正回収を防止するための阻止手段44を構成する覆い部83」は、本件特許発明の「前記流下路面の上方位置に配設され、該流下路面を流下するメダルの上方への取り出しを規制する規制部」に相当する。 上記(a)~(h)の対比により、本件特許発明と先願発明とは、 「A メダルを用いて遊技を行う遊技機であって、 B 前記遊技機の前面に設けられる投入部から投入されたメダルが流下するメダル流下通路と、該メダル流下通路を流下するメダルを流出させる第1流出部及び第2流出部と、前記メダル流下通路の流下方向を前記第1流出部または前記第2流出部に変更可能な流路変更手段と、を有するメダルセレクタと、 C 前記第1流出部から流出したメダルを所定の回収部に誘導する回収誘導部と、 E 前記第2流出部から流出したメダルを前記遊技機の前面に設けられた返却部に誘導する返却誘導部と、 を備え、 F 前記回収誘導部は、 前記第1流出部から前記回収部に向けて下方に傾斜するように延設された流下路面と、 G 前記流下路面におけるメダルの流下方向の両側に立設される一対のガイド壁面と、 H 前記流下路面の上方位置に配設され、該流下路面を流下するメダルの上方への取り出し を規制する規制部と、 を備える遊技機。 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本件特許発明が、前記第2流出部の少なくとも一部を覆うカバー部を備えているのに対し、先願発明は、そのような構成が特定されていない点(構成D)。 [相違点2] 本件特許発明が、前記規制部におけるメダルの流下方向の下流側端部と前記流下路面におけるメダルの流下方向の下流側端部とは、前記カバー部の上方端部よりも下方に位置するのに対し、先願発明では、カバー部が備えられていないため、覆い部83の下流側端部と樋状の案内シュート42の底部の下流側端部と位置関係を比較する対象がない点(構成I)。 2 判断 事案の性質に鑑み、相違点2から検討する。 甲第2号証には、「メダル返却通路132」の上縁が「投入メダルセレクタ131の下縁及びメダル流下通路133の下縁より」上方に位置することが記載されているから、本件特許発明の「カバー部」に相当する構成が記載されているといえる。 また、甲第2号証には、「メダルシュート160の下流側端部の上縁及び下縁がメダル返却通路132の上縁より下方に位置する」ことが記載されているから、本件特許発明における「回収誘導部」が「メダルの流下方向の下流側端部と前記流下路面におけるメダルの流下方向の下流側端部とは、前記カバー部の上方端部よりも下方に位置する」ことは記載されているが、本件特許発明の「規制部」に相当する構成が記載されていないので、相違点2に係る本件特許発明の構成である「前記規制部におけるメダルの流下方向の下流側端部と前記流下路面におけるメダルの流下方向の下流側端部とは、前記カバー部の上方端部よりも下方に位置する」ことが記載、ないし、示唆されているとはいえない。 甲第3号証には、「メダル選別通路112aの下部を覆うように設けられているカバー113」が記載されているから、本件特許発明の「カバー部」に相当する構成が記載されているといえる。 しかしながら、甲第3号証は、「メダル誘導路107の下流側上縁とカバー113の上縁が同じぐらいの高さである」ことは記載されているが、本件特許発明における「回収誘導部」が「メダルの流下方向の下流側端部と前記流下路面におけるメダルの流下方向の下流側端部とは、前記カバー部の上方端部よりも下方に位置」しているとはいえず、また、本件特許発明の「規制部」に相当する構成は記載されていないので、相違点2に係る本件特許発明の構成である「前記規制部におけるメダルの流下方向の下流側端部と前記流下路面におけるメダルの流下方向の下流側端部とは、前記カバー部の上方端部よりも下方に位置する」ことが記載、ないし、示唆されているとはいえない。 甲第4号証には、「メダルセレクタ55からキャンセルシュータ56内に排出されたメダルは、メダルセレクタ55の下方に接続されているキャンセルシュート60の内部に落下する」ことが記載されているが、本件特許発明の「回収誘導部」に関する構成が、その具体的な構成が把握できるように記載されておらず、相違点2に係る本件特許発明の構成である「前記規制部におけるメダルの流下方向の下流側端部と前記流下路面におけるメダルの流下方向の下流側端部とは、前記カバー部の上方端部よりも下方に位置する」ことが記載、ないし、示唆されているとはいえない。 したがって、甲第2~4号証には、相違点2に係る本件特許発明の構成が記載も示唆もされていないので、当該相違点2に係る本件特許発明の構成が、周知技術であるとはいえない。 特許異議申立人は、相違点2に係る本件特許発明の構成は、甲第2~4号証に示される周知技術の付加にすぎないと主張する。しかしながら、上記のとおり、甲第2~4号証には、相違点2に係る本件特許発明の構成は記載されていない。 また、本件特許発明は、回収誘導部の流下路面の上方位置に規制部が配置され、規制部におけるメダルの流下方向の下流側端部がカバー部の上方端部よりも下方に位置するという、上記相違点2に係る本件特許発明の構成を備えることで、流下路面を流下するメダルを上方へリフトして取り出すことが困難となるとともに、規制部を回避して取り出そうとした場合には、取り出したメダルの返却誘導部までの移送距離が長くなるため、第1流出部から流出したメダルを回収部に貯留させることなくメダル払出口から返却させて使い回すといった不正行為を抑制することができる(本件特許発明の明細書の段落【0314】~【0316】等参照のこと。)という効果を奏するものである。 以上より、上記相違点2に係る本件特許発明の構成は、返却通路から受け入れ口を経て案内シュート側に不正部材を挿入して、その不正部材により選別手段を通過した正規のメダルを返却通路へと不正に回収する不正回収を防止できる遊技機を提供することを課題とする先願発明において、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないこと)であるとはいえない。 よって、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明は、先願発明と実質的に同一ではない。 3 まとめ 上記2において検討したとおり、本件特許発明は、先願発明と実質的に同一であるとはいえない。 よって、本件特許発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に該当しない。 第6 むすび 以上のことから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701004

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