特許異議申立
2017-700851
電力管理システム、電力管理方法、電力管理装置及び燃料電池装置
- 審判番号
- 2017-700851
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-018174
- 登録番号
- 特許第6152498号(P6152498)
- 請求日
- 2017年09月06日
- 審決日
- 2018年03月01日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】京セラ株式会社
- 【権利者代理人】キュリーズ特許業務法人
- 【異議申立人】西林 博
- 審判長/審判官
- 審判長 中川 真一
- 審判官 堀川 一郎
- 審判官 矢島 伸一
- 分類
- P1651.121-Y (H02J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6152498号発明「電力管理システム、電力管理方法、電力管理装置及び燃料電池装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6152498号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第6152498号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成24年8月6日に出願した特願2012-174454号の一部を平成28年8月9日に新たな出願とした特願2016-156567号の一部を平成29年2月3日に新たな出願としたものであって、平成29年6月2日にその特許権の設定登録がされた。
これに対し、特許異議申立人西林博により平成29年9月6日に特許異議申立がされたものである。
2.本件発明
特許第6152498号の請求項1~10の特許に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
燃料電池装置と、
前記燃料電池装置との間で予め定められた所定フォーマットを有するメッセージを受信する電力管理装置とを備え、
前記電力管理装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で前記燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを前記燃料電池装置から受信することを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
前記燃料電池装置の停止中は、エラーに起因する停止を除くものであることを特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記起動中は、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記停止動作中は、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記発電動作状態は、前記燃料電池装置が正常に運転している場合の状態であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項6】
前記電力管理装置は、前記発電動作状態を示すメッセージを送信する機能の有無を示すメッセージを前記燃料電池装置から受信することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項7】
前記電力管理装置は、前記発電動作状態を示すメッセージの送信を前記燃料電池装置に要求することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項8】
燃料電池装置との間で予め定められた所定フォーマットを有するメッセージを電力管理装置が受信するステップAを備え、
前記ステップAは、前記電力管理装置が、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で前記燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを前記燃料電池装置から受信するステップを含むことを特徴とする電力管理方法。
【請求項9】
燃料電池装置との間で予め定められた所定フォーマットを有するメッセージを受信する受信部を備え、
前記受信部は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で前記燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを前記燃料電池装置から受信することを特徴とする電力管理装置。
【請求項10】
燃料電池装置であって、
電力管理装置との間で予め定められた所定フォーマットを有するメッセージを送信する送信部を備え、
前記送信部は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で前記燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを前記電力管理装置に送信することを特徴とする燃料電池装置。」
3.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人西林博は、本件請求項1~10に係る特許を取り消すべきものとする旨の特許異議を申立て、証拠として、特開2005-236348号公報(以下、「甲第1号証」という。)、特開2010-267561号公報(以下、「甲第2号証」という。)、特開2007-109463号公報(以下、「甲第3号証」という。)、APPENDIX ECHONET機器オブジェクト詳細規定ReleaseA,ECHONET CONSORTIUM,平成23年12月21日(以下、「甲第4号証」という。)、特開2009-217671号公報(以下、「甲第5号証」という。)を提出し、本件発明1、3~4、8~10は、甲第1号証に記載された発明に甲第2、3号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2、5は、甲第1号証に記載された発明に甲第2、3号証記載の事項を適用すること又は甲第1号証に記載された発明に甲第2~4号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明に甲第2~4号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明に甲第2、3、5号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許を取り消すべきものと主張している。
4.甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a「近年、エアコンや冷蔵庫などの白物家電機器や侵入センサなどセキュリティ機器と家庭内に設置されたホームコントローラとを無線で接続し、前記ホームコントローラを介して携帯電話に接続し、家の外からエアコン等の機器をコントロールしたり、家の中のセキュリティ情報を携帯電話に報知させる家庭内ネットワークシステムが開発され、商品化されてきている。
日本においては、前記家庭内ネットワークシステムの業界標準としてECHONET(R)規格が制定されている。前記ECHONET(R)規格を用いた家電ネットワークシステムでは、特定小電力無線400MHz帯の電波などを利用して無線通信する為、制御信号等が電波で放射されるので、制御信号の秘匿性を考慮する必要がある。また、同規格では、無線通信の性質上同一ビット列が連続しないようにスクランブル符号(疑似ランダム符合)を用いた符号変換を行い、同一ビットが連続しないようにすると共に、符号変換されるので簡易的な暗号化がなされている(非特許文献1参照)。」(【0002】-【0003】)
b「図1は、本発明の第1の実施の形態における無線システムのシステム構成図である。
図1で、エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4はネットワーク接続機能を備えたネット家電であり、各々無線装置1d、2d、3d、4dが接続され無線でゲートウェイ5と通信する機能を備える。無線装置(1d、2d、3d、4d)は、無線LAN、Bluetooth(R)または特定小電力無線などの無線通信媒体で構成される。本実施例では、特定小電力無線(400MHz帯)を用い、家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコルを実装している。
なおネット家電とは、インターネットを含む様々なネットワークに接続する機能を有する家電機器、設備機器を示す概念であり、エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4の他に、図示していないが、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、給湯器、乾燥機、食器洗い乾燥機、掃除機、ガステーブル、IH機器、炊飯器、温水洗浄便座、電子錠、各種セキュリティセンサ(人感センサ、開閉センサ)、燃料電池システム、コージェネレーションシステム、メーター機器(電力メーター、水道メーター)、IPカメラ、ホームサーバ、テレビ、ビデオ、DVD機器、パソコン、PDAなどの情報端末、携帯電話、FAX、電話機、オーディオ機器、およびそのリモコンなどである。
これらのネット家電が、ネットワーク通信機能を備えることにより、通信手段によってネット家電の制御状態やメンテナンス情報を集中表示コントローラに表示したり、または制御を行ったりする。またネット家電を管理するサーバ6からネット家電に対する新しいソフトウェアや、電子レンジでのレシピ情報や、洗濯機での洗濯コースプログラムをダウンロードするものである。
また宅外より携帯電話、PDA、パソコンを用いて、インターネット7やゲートウェイ5を介してネット家電を制御できる。
また図2に示すように、給湯器リモコン3は、CPU3a、メモリ3b、LCDやELディスプレイなどの表示手段であるディスプレイ3cや無線装置3dなどの必要なハードリソースを備え、これらを協働させて図3に示すような、情報処理部306、情報記憶部307、表示部308、無線通信部309を機能させている。
情報処理部306は、給湯器リモコン3に接続された給湯器の制御を行う。また、給湯器の制御ステータス情報やメンテナンス情報を、ゲートウェイ5や、第3の機器へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成する。またゲートウェイ5から送信された制御電文(命令)の内容を判断処理し、前記内容に応じた給湯器への制御を行う機能を提供する。」(【0030】-【0036】)
c「表示部308は、情報表示できる機能を備え、サーバ6よりインターネット7を介して取得されたメンテナンス情報や、給湯器の制御情報、エネルギー使用量、使用料金などを表示する。燃料電池システムで提供される給湯器リモコンでは、発電量なども表示する。
無線通信部309(無線装置3d)は、次に述べるゲートウェイ5の無線装置5dとの間で無線通信可能な有効伝送距離内に設置されているものである。なお無線通信部309(無線装置3d)は、図示はしないが、給湯器リモコン3と別々に設けてもよいし、給湯器に接続してもよい。また、情報処理部306より送信すべき制御命令や、制御情報を取得した場合、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、無線信号に変換して電波として空間に放射する。図3では図示していないが、無線通信部309にはアンテナが接続される。また無線通信部309は、スクランブル符号テーブルと呼ばれる通信相手ごとに利用するスクランブル符号を管理するテーブル情報を利用して、送信データのスクランブル符号化を行う。スクランブル符号変換に関する詳細な説明は後述する。」(【0038】-【0039】)
d「無線通信部305は無線装置5dで構成され、サーバ6より受信した制御電文や、定期的にネット家電へ送信する制御電文を、ネット家電に対して無線通信するものである。無線媒体は特定小電力無線(400MHz帯)を使用している。また通信プロトコルは家庭内ネットワークの標準規格であるECHONET(R)を用いており、同一ビットが連続しないようにする為、送信するデータに対してスクランブル符号変換を行っている。」(【0049】)
上記記載及び図面から判断して、ネット家電である燃料電池システムはゲートウェイと無線通信する機能を有しているから、ゲートウェイは燃料電池システムと無線通信するためのデータフォーマットに加工された情報を受信している。
上記記載事項からみて、甲第1号証には、
「ネット家電である燃料電池システムと、
前記ネット家電である燃料電池システムとの間で無線通信する為のデータフォーマットに加工された情報を受信するゲートウェイとを備え、
前記ゲートウェイは、前記情報を前記ネット家電である燃料電池システムから受信する無線システム。」
との発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
5.対比
そこで、本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「データフォーマット」、「情報」、「燃料電池システム」は、本件発明1の「所定フォーマット」、「メッセージ」、「燃料電池装置」に相当する。
甲1発明の「前記ネット家電である燃料電池システムとの間で無線通信する為のデータフォーマットに加工された情報を受信するゲートウェイ」と、本件発明1の「前記燃料電池装置との間で予め定められた所定フォーマットを有するメッセージを受信する電力管理装置」は、「前記燃料電池装置との間で予め定められた所定フォーマットを有するメッセージを受信する装置」との概念で一致する。
甲1発明の「前記ゲートウェイは、前記情報を前記ネット家電である燃料電池システムから受信」と、本件発明1の「前記電力管理装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で前記燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを前記燃料電池装置から受信」は、「前記装置は、前記メッセージを前記燃料電池装置から受信」との概念で一致する。
甲1発明の「無線システム」と、本件発明1の「電力管理システム」は、「システム」との概念で一致する。
したがって、両者は、
「燃料電池装置と、
前記燃料電池装置との間で予め定められた所定フォーマットを有するメッセージを受信する装置とを備え、
前記装置は、前記メッセージを前記燃料電池装置から受信するシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点1〕
メッセージを受信する装置に関し、本件発明1は、電力管理装置であるのに対し、甲1発明は、ゲートウェイである点。
〔相違点2〕
所定フォーマットを有するメッセージに関し、本件発明1は、燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で前記燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを前記燃料電池装置から受信するのに対し、甲1発明は、情報をネット家電である燃料電池システムから受信する点。
〔相違点3〕
システムに関し、本件発明1は、電力管理システムであるのに対し、甲1発明は、無線システムである点。
6.判断
相違点1について
ゲートウェイとは、コンピュータネットワークをプロトコルの異なるネットワークと接続するためのネットワークノードのことであって、プロトコルトランスレータ・プロトコルインバータの役割を果たし、制御機能を有するものではない。
上記bには、ゲートウェイがネット家電と無線通信することが記載されており、しかも、特許異議申立人が提出した甲第1~5号証の何れにも、機器の電力管理を行う電力管理装置が記載されておらず示唆も無い。
そうであれば、甲1発明のゲートウェイを制御装置に換えて、しかも当該制御装置を電力管理装置とすることは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。
相違点2について
甲1発明のゲートウェイは、無線通信する為のデータフォーマットに加工された情報をネット家電である燃料電池システムから受信するものであるが、当該情報がどの様なものか甲第1号証に何等記載も示唆もないから、甲1発明のゲートウェイが、燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを燃料電池装置から受信することは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。
しかも、特許異議申立人が提出した甲第2~5号証の何れにも、受信装置が、燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを燃料電池装置から受信することは記載されておらず示唆も無い。
そうであれば、甲1発明のゲートウェイを、燃料電池装置の発電中、停止中、起動中及び停止動作中を少なくとも識別可能な態様で燃料電池装置の状態である発電動作状態を示すメッセージを燃料電池装置から受信するものとすることは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。
相違点3について
「相違点1について」で述べたように、特許異議申立人が提出した甲第1~5号証の何れにも、機器の電力管理を行う電力管理装置が記載されておらず示唆も無いから、甲1発明の無線システムを電力管理システムとすることは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。
したがって、本件発明1は、甲1発明に甲第2、3号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。本件請求項2~7は本件請求項1の従属項であるから、本件発明1が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできないので、本件発明2~7も同様に当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。
本件発明8~10は、本件発明1とカテゴリーは異なるが実質的に同じ内容であるから、本件発明1と同様に当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。
7.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては本件発明1~10の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~10の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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