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特許異議申立

2017-700822

静電容量型入力装置

審判番号
2017-700822
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-532784外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年08月31日
審決日
2018年03月23日
公報発行日
2018年06月29日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6088654号発明「静電容量型入力装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6088654号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6088654号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6088654号の請求項1-4に係る特許についての出願は、平成26年7月28日を国際出願日とする出願であって(優先権主張平成25年8月23日、日本)、平成29年2月10日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年8月31日に特許異議申立人松田亘弘により特許異議の申立てがされ、平成29年11月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月22日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人松田亘弘から平成30年3月6日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)-(7)のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1-4において、訂正前の 「  【請求項1】 ユーザに対向する外曲面を有して合成樹脂で成形された外装体と、 該外装体の内曲面に倣って一体に設けられたフィルム基材と、 該フィルム基材の前記外装体側の面の反対面に形成された導電性高分子からなる導電層と、 該導電層と電気的に接続された配線層と、 前記導電層の前記フィルム基材側の面の反対面を覆うように積層された、前記フィルム基材よりも薄い保護層と、 を有することを特徴とする曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項2】 前記導電性高分子は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の混合体からなることを特徴とする請求項1に記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項3】 前記外装体、前記フィルム基材、前記導電層及び前記保護層が透明であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項4】 前記保護層は、絶縁性の合成樹脂材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。」 と記載されているのを、訂正後の 「  【請求項1】 ユーザに対向する外曲面を有して合成樹脂で成形された外装体と、 該外装体の内曲面に倣って一体に設けられたフィルム基材と、 前記外装体の前記内曲面と前記フィルム基材との間に設けられた接着層と、 該フィルム基材の前記外装体側の面の反対面に形成された導電性高分子からなる透明性の導電層と、 該導電層と電気的に接続された配線層と、 前記導電層の前記フィルム基材側の面の反対面を覆うように積層された、前記フィルム基材よりも薄い保護層と、 を有し、透明性を有することを特徴とする曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項2】 前記導電性高分子は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の混合体からなることを特徴とする請求項1に記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項3】 前記外装体、前記フィルム基材、前記導電層及び前記保護層が透明であり、前記フィルム基材の前記外装体側の面に加飾層が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項4】 前記保護層は、絶縁性の合成樹脂材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。」 に訂正する。 (2) 訂正事項2 明細書の段落【0018】の【図8】の説明において、 「【図8】第1実施形態に係わる曲面形状を有する静電容量型入力装置の変形例を説明する図であって、図8(a)は、図3と比較した変形例3の断面構成図であり、図8(b)は、図3と比較した変形例4の断面構成図である。」 と記載されているのを、 「【図8】第1実施形態に係わる曲面形状を有する静電容量型入力装置の変形例を説明する図であって、図3と比較した変形例4の断面構成図である。」 に訂正する。 (3) 訂正事項3 明細書の段落【0044】において、 「図8は、第1実施形態に係わる曲面形状を有する静電容量型入力装置101の変形例を説明する図であって、図8(a)は、図3と比較した変形例3の静電容量型入力装置C103の断面構成図であり、図8(b)は、図3と比較した変形例4の静電容量型入力装置C104の断面構成図である。」 と記載されているのを、 「図8は、第1実施形態に係わる曲面形状を有する静電容量型入力装置101の変形例を説明する図であって、図3と比較した変形例4の静電容量型入力装置C104の断面構成図である。」 に訂正する。 (4) 訂正事項4 明細書の段落【0047】において、 「<変形例3> 上記第1実施形態では、導電層5を覆うように保護層9を設けるように好適に構成したが、図8(a)に示すように、保護層9を設けない構成にしても良い。」 と記載されているのを、削除する。 (5) 訂正事項5 明細書の段落【0048】において、 「<変形例4> 上記第1実施形態に対して、図8(b)に示すように、外装体1と加飾層52との間に、中間層C42を設けるように好適に構成しても良い。これにより、射出成形時において、外装体1となる高温で流動した合成樹脂から加飾層52を保護することができる。」 と記載されているのを、 「<変形例4> 上記第1実施形態に対して、図8に示すように、外装体1と加飾層52との間に、中間層C42を設けるように好適に構成しても良い。これにより、射出成形時において、外装体1となる高温で流動した合成樹脂から加飾層52を保護することができる。」 に訂正する。 (6) 訂正事項6 明細書の段落【0049】において、 「<変形例5> 上記第1実施形態では、外装体1、フィルム基材3、導電層5及び保護層9を透明にして、操作面全体を透明にした構成にしたが、提供される製品によっては、必ずしも透明にする必要はない。」 と記載されているのを、削除する。 (7) 訂正事項7 【図8】を、訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項1に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明には、 「接着層」について、段落【0024】に、 「静電容量型入力装置101のフィルム基材3は、ポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethylene terephthalate)やポリエチレンナフタレート(PEN、Polyethylene naphthalate)等の透明なフィルムを用いており、図4に示すように、外装体1と接合された接合面3m側に透明な接着層22を設けて、外装体1の内面である凹状の内曲面1nに倣って一体に形成されている。」と記載され、 「透明性の導電層」について、段落【0027】に、 「静電容量型入力装置101の導電層5は、図4に示すように、フィルム基材3の接合面3mとは反対側の反対面3pに形成されており、導電性高分子である、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の混合体(以下、PEDOT:PSSと表記する)を用いている。このPEDOT:PSSは、透明であり、しかも充分な透明性を確保しつつ所望の導電性を得ることができる材料である。」と記載され、 「透明性を有する」静電誘導型入力装置の全体について、段落【0014】に、 「これによれば、操作面全体を透明にすることができる。このことにより、透明性が要求される製品に好適に用いることができる。」と記載され、段落【0029】に、 「以上、上述したように、外装体1、フィルム基材3及び導電層5が透明であるので、操作面全体を透明にすることができる。このことにより、透明性が要求される製品に好適に用いることができる。」と記載され、段落【0041】に、 「また、外装体1、フィルム基材3及び導電層5が透明であるので、操作面全体を透明にすることができる。このことにより、透明性が要求される製品に好適に用いることができる。」と記載され、 「加飾層」について、段落【0026】に、 「また、フィルム基材3の外装体1と接合される接合面3mには、図4に示すように、製品のデザイン性を向上させる等のため、加飾層52が設けられている」と記載されていることから、 請求項1に係る、「前記外装体の前記内曲面と前記フィルム基材との間に設けられた接着層」を有し、導電層が、「透明性の導電層」である、「透明性を有する」静電容量型入力装置の発明、及び、 請求項3に係る、「前記フィルム基材の前記外装体側の面に加飾層が設けられている」発明は、明細書に記載されているものと認められる。 よって、上記訂正事項1の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、請求項1の静電容量型入力装置の積層構造を、「接着層」を有し、導電層と、装置全体とが「透明性」を有する構成に限定し、請求項3の静電容量型入力装置の積層構造を、「加飾層」を有する構成に限定するものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、上記訂正事項2-7の訂正は、上記訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、図8(a)に図示されていた、「保護層」を有していない<変形例3>を削除するとともに、「透明性」を有していない、<変形例5>を削除することによって、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、これら訂正は一群の請求項1-4に対して請求されたものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1-4に係る発明(以下「本件発明1」-「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1-4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「  【請求項1】 ユーザに対向する外曲面を有して合成樹脂で成形された外装体と、 該外装体の内曲面に倣って一体に設けられたフィルム基材と、 前記外装体の前記内曲面と前記フィルム基材との間に設けられた接着層と、 該フィルム基材の前記外装体側の面の反対面に形成された導電性高分子からなる透明性の導電層と、 該導電層と電気的に接続された配線層と、 前記導電層の前記フィルム基材側の面の反対面を覆うように積層された、前記フィルム基材よりも薄い保護層と、 を有し、透明性を有することを特徴とする曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項2】 前記導電性高分子は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の混合体からなることを特徴とする請求項1に記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項3】 前記外装体、前記フィルム基材、前記導電層及び前記保護層が透明であり、前記フィルム基材の前記外装体側の面に加飾層が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。 【請求項4】 前記保護層は、絶縁性の合成樹脂材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の曲面形状を有する静電容量型入力装置。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1-4に係る特許に対して平成29年11月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 請求項1-4に係る発明は、甲第1-4号証に記載された発明及び技術事項に基づき容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1-4に係る特許は、取り消されるべきものである。 3 各甲号証の記載 (1) 甲第1号証 甲第1号証(特開2010-244772号公報)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、特に着目した箇所を示す。) ア 段落【0015】-【0018】 「【0015】 一方、タッチパネルとは異なるが、後述の特許文献6には、人体などの接触物体の接近または接触を感知する、静電容量方式のタッチセンサの例が示されている。図12(a)は、特許文献6に示されているタッチセンサ200の配置例を示す斜視図、図12(b)は、斜視図(a)に12b-12b線で示した位置における断面図である。 【0016】 図12(a)に示すように、タッチセンサ200は、例えば、人形型玩具210などの電子機器の前頭部から頭頂後部にかけて、その内部に配置されている。図12(b)に示すように、タッチセンサ200は、基材201と、その電極部201aに形成された検出電極202と、その延出部201bに形成された配線(図示省略)と、検出回路部203とで構成されている。 【0017】 基材201は、可撓性を有する樹脂材料からなる絶縁シートなどである。基材201は、所定の寸法で形成された電極部201aと、この端部から検出回路部203へ向かって延びる延出部201bとからなり、これらの表面にはそれぞれ電極202および配線が配置されている。検出電極202および配線は、例えば銅などの導電性材料からなり、例えば蒸着法やめっき法などの公知の方法によって形成される。あるいは、銀ペーストなどの導電性塗料を印刷するなどの公知の方法によって形成してもよい。検出回路部203は、接触物体と検出電極202との間の静電容量の変化を検出する信号処理手段である。 【0018】 タッチセンサ200は、人形型玩具210の外形を形成している筐体211の内側の曲面に固定されている。筐体211は、金属以外の、誘電率が大きい材料、例えば合成樹脂で形成されたものが好ましい。タッチセンサ200を内蔵する電子機器は、図示した人形型玩具210以外に、PDA(情報携帯端末)、携帯電話機、ビデオカメラなどであると記載されている。」 イ 段落【0020】-【0026】 「【発明が解決しようとする課題】 【0020】 既述したように、タッチ部材を画像表示装置の前面に配置する場合を考慮すると、静電容量式タッチパネルを構成する検出電極は、光透過性であることが望ましい。 【0021】 現在、広く利用されている透明導電材料はインジウムスズ酸化物(ITO)またはフッ素ドープスズ酸化物(FTO)などである。これらの酸化物系透明導電材料は、一般に真空蒸着法やスパッタリング法などの物理的蒸着法(PVD)によって、ガラスやポリエチレンテレフタラート(PET)などの光透過性支持体上に成膜される。PVDでは、平面上への成膜は容易であるが、曲面などの立体物上にむらなく均一に成膜することはきわめて難しい。近年、プラズマCVD法によって、透明導電材料を曲面基板上に成膜できるようになってきたが(WO2006/033268参照。)、この方法では、プラズマの発生や条件制御のために大掛かりな装置が必要である。また、ITOやFTOなどの酸化物系透明導電材料はもろく、応力をかけると微細なひび割れが生じ、導電性が急激に低下する(特開2008-36902参照。)。このため、成膜後に、折り曲げる等の成形加工を施すことはできない。 【0022】 特許文献2および3では、導電性高分子が透明導電材料として用いられている。導電性高分子は成形性には優れるものの、ITOなどに比べ、導電性および透明性に劣り、所定の導電性が得られず、タッチパネルの誤動作の原因になることがある。また、耐久性に劣り、特に車載用など高温環境中での動作特性には問題がある。また、特許文献2および3で意図されているタッチパネルは、抵抗膜式タッチパネルである。既述したように、抵抗膜式タッチパネルでは、抵抗膜を形成した2枚の基材をわずかな間隔を空けて保持する必要がある。基材の形状が球面や任意の曲面である場合には、2枚の基材の間隔を高い精度で目標値に合わせることは極めて困難である。 【0023】 特許文献4および5では、カーボンナノチューブが透明導電材料として用いられている。しかし、特許文献2および3と同様、特許文献4および5で意図されているタッチパネルは、抵抗膜式タッチパネルであり、基材の形状が球面や任意の曲面である場合には、2枚の基材の間隔を高い精度で目標値に合わせることは極めて困難である。 【0024】 以上の理由で、現在実用化されているタッチパネルは、タッチ面が平面の平板パネルにほぼ限定されている。 【0025】 一方、特許文献6に提案されているタッチセンサでは、検出電極202は筐体211の内壁に設けられるので、光透過性である必要はないが、フレキシブルであることが必要である。しかも、検出電極が透明であれば、外観を損なうことなく、検出電極を筐体211の外壁に設けることができる。この場合、筐体211の内部に設ける場合に比べて、はるかに簡易に検出電極を設けることができる。また、検出電極202を内蔵することの難しい多くの物品にも、検出電極を設けて、タッチセンサ機能を付与することができる。 【0026】 本発明の目的は、上記のような実情に鑑み、フレキシブルな形状または立体的な形状を有し、光透過性の検出電極を有する静電容量式タッチ部材及びその製造方法、並びにその静電容量式タッチ部材を備えた静電容量式タッチ検出装置を提供することにある。」 ウ 段落【0034】-【0035】 「【発明の効果】 【0034】 本発明の静電容量式タッチ部材、並びに静電容量式タッチ検出装置の特徴は、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層を検出電極として用い、静電容量方式のタッチ検出方法と組み合わせることによって、初めて、実用的な、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有するタッチ検出装置を実現したことにある。 【0035】 前記カーボンナノ線状構造体は、直径が可視光の波長よりはるかに小さいので、可視光をよく透過させる。しかも、前記カーボンナノ線状構造体には、金属性カーボンナノチューブのように極めて高い電気伝導性を有するものがあり、小さい面密度で十分な電気伝導性を示す。しかも、カーボンナノチューブは、ITOなどの酸化物系透明導電材料と異なり、しなやかで強靱な機械的特性を有する。また、化学的にも安定である。以上のように、前記カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層は、フレキシブルな形状又は立体的な形状を有するタッチ部材に用いられる検出電極として最良の特性を有する。」 エ 段落【0045】 「【0045】 本発明の第1~第4の静電容量式タッチ部材において、前記光透過性導電層が、前記カーボンナノ線状構造体と導電性樹脂材料との複合体からなるのがよい。前記カーボンナノ線状構造体は極めて細く、単位質量あたりの表面積(比表面積)が大きいので、補助的な材料は必ずしも必要ではないが、用いるのであれば、透明性の高い導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT;商品名 バイトロン)などがよい。また、前記カーボンナノ線状構造体がカーボンナノチューブであるのがよい。単層カーボンナノチューブには、極めて高い電気伝導性を示す金属性カーボンナノチューブが含まれる。また、二層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブの中にも、極めて高い電気伝導性を示すものがある。しかも、カーボンナノチューブは、ITOなどの酸化物系透明導電材料と異なり、しなやかで強靱な機械的特性を有する。」 オ 段落【0052】-【0062】 「【0052】 [実施の形態1] 実施の形態1では、主として、請求項1、2、8~14に記載した静電容量式タッチ部材、請求項15、16に記載した静電容量式タッチ検出装置、および請求項18、20に記載した静電容量式タッチ部材の製造方法の例について説明する。この際、前記カーボンナノ線状構造体としてカーボンナノチューブを用いるものとする。 【0053】 図1(a)は、実施の形態1に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す斜視図であり、図1(b)はその断面図である。この静電容量式タッチ検出装置は、本発明の第1の静電容量式タッチ部材に基づく静電容量式タッチ部材10と、静電容量変化検出回路60とで構成されている。 【0054】 静電容量式タッチ部材10は、絶縁性材料からなり、立体的な形状を有するフィルム状又は板状の支持体1と、支持体1の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極2と、検出電極2から引き出された引き出し配線3とで構成されている。 【0055】 静電容量式タッチ部材10では、支持体1の、検出電極2が配置された面とは反対側の面がタッチ面4として用いられる。すなわち、人体の一部、例えば指などの接触物体がタッチ面4に接近または接触すると、接触物体と検出電極2との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化は、引き出し配線3を介して静電容量変化検出回路60に伝えられ、電気信号に変換して感知される。静電容量変化検出回路60としては、市販の一般的な静電容量測定装置、例えば、Cypress Semiconductor社のCapSenseシリーズ(商品名)などを用いることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0057】 支持体1の材料は、絶縁性材料であることを除けば、特に限定されるものではない。ただし、タッチ部材が画像表示装置の前面に配置される場合には、支持体1の材料は光透過性であることが必要である。光透過性支持体1として、ガラス板または光透過性高分子樹脂板を用いることができる。光透過性高分子樹脂板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、およびエポキシ樹脂などが挙げられる。好ましくは、透明度が高く、耐熱性および耐薬品性に優れた材料であればよく、このような材料の例としてPETなどが挙げられる。 【0058】 タッチ面4の反対側の面に検出電極2を設け、タッチ面4に接近又は接触する接触物体と検出電極2との間に静電容量を形成させることを考えると、支持体1の厚さは大きすぎないことが重要である。従って、支持体1は、例えば、厚さが0.01~3mm、通常0.1~0.5mm程度であって、フレキシブルなテープ状、フィルム状、またはシート状であるのがよい。この場合、任意の立体的形状を有する物品に、貼り付けるなどの形態で用いることができる。また、図1に示したように、このフィルム状、シート状、または板状の支持体1が、例えば中空半球状などの立体的な形状に成形されているのがよい。その形状は、カーボンナノチューブ分散液が流入できる程度に、一部が開口した形状が望ましい。このように、形状に多少の制限はあるものの、立体的形状を有する支持体1に、その形状を変えることなく、静電容量式タッチ検出部材を設けることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0062】 図1(c)は、請求項2に対応して、検出電極2が被覆層5によって被覆されている静電容量式タッチ部材の例を示す断面図である。被覆層5は、カーボンナノチューブの付着性を向上させ、また光透過率を向上させる。被覆層5を構成する材料は、光学特性がよいこと(高透明性・低反射性・低グレア性)、簡単に形成できること、電気絶縁性があることが必要である。また、高分子系の材料が好ましく、スルホ基-SO3Hを有する高分子を用いるとカーボンナノチューブの導電性が安定することが知られている(特開2008-251271号公報参照。)。以上から、被覆層5を構成する材料としては、Nafion(デュポン社登録商標)が特によく、これ以外には、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)樹脂、およびTPX樹脂(4-メチルペンテン-1を主原料とする、結晶性のオレフィン系ポリマー)などが挙げられる。被覆層5の形成方法としては、構成材料を適当な溶媒に溶解させた後、浸漬法や吹き付け法などによって溶液を塗布する方法などが挙げられる。」 カ 段落【0063】 「【0063】 図2(a)は、実施の形態1の別の例に基づく静電容量式タッチ検出装置の構造を示す断面図である。図1に示した静電容量式タッチ部材10では、半球形の支持体1の内側の面(凹面)に検出電極2が配置され、外側の面(凸面)がタッチ面4として用いられているのに対し、図2(a)に示す静電容量式タッチ部材11では、半球形の支持体1の外側の面(凸面)に検出電極6が配置され、内側の面(凹面)がタッチ面8として用いられる。このように、検出電極が配置されている面が異なり、その結果、タッチ面が逆になるので、使用上は大きな違いを生じる。しかし、タッチ検出の仕組みに関しては両者に重要な違いはない。図2(b)は、図1(c)と同様、検出電極6が被覆層9によって被覆されている例を示している。」 キ 段落【0068】 「【0068】 本発明に基づく静電容量式タッチ検出装置は、支持体1がもつ模様や質感を維持したまま、静電容量式タッチ検出装置とすることができる。また、光透過性の支持体を用いて静電容量式タッチ検出部材を作製し、これを他の物品に被せる場合には、他の物体の外観や意匠をそのまま利用して、静電容量式タッチ検出部材とすることができる。」 ク 段落【0102】-【0103】 「【0102】 [実施の形態5] 実施の形態5では、請求項5および6に記載した第4の静電容量式タッチ部材の例について説明する。図示省略するが、実施の形態5に基づく静電容量式タッチ検出装置は、タッチ検出機能を付与したいと望む物品の表面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極と、この検出電極を被覆する光透過性保護膜と、検出電極から引き出された引き出し配線とを有する第4の静電容量式タッチ部材、および静電容量変化検出回路60で構成される。この静電容量式タッチ部材では、光透過性保護膜の表面がタッチ面として用いられ、このタッチ面への、人体の一部、例えば指などの接触物体の接近又は接触を、接触物体と検出電極との間の静電容量の変化として感知する。 【0103】 この静電容量式タッチ部材を設ける物品は、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層を設けることが可能であればよく、特に限定されるものではない。例えば、特許文献2に示されている人形型玩具210のようなものでもよく、PDA(情報携帯端末)、携帯電話機、ノートパソコン、携帯ゲーム機、およびビデオカメラなどの電子機器の筐体で、曲面形状をもつものなどがとくによい。また、ドアのノブのような家具や日用品でもよい。静電容量式タッチ部材は薄く、光透過性であるので、物品の外観を損ねることなく設けることができる。」 上記下線部の記載(特に上記「エ」の光透過性導電層に関する摘記、及び、上記「オ」、「カ」の[実施の形態1]に関する摘記参照。)を、関連図面(特に図1(c)参照。)に照らせば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「カーボンナノ線状構造体としてカーボンナノチューブを用い、 静電容量式タッチ検出装置は、静電容量式タッチ部材10と、静電容量変化検出回路60とで構成され、 静電容量式タッチ部材10は、 絶縁性材料からなり、立体的な形状を有するフィルム状又は板状の支持体1と、 支持体1の一方の面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極2と、 検出電極2から引き出された引き出し配線3とで構成され、 支持体1の、検出電極2が配置された面とは反対側の面がタッチ面4として用いられ、すなわち、人体の一部、例えば指などの接触物体がタッチ面4に接近または接触すると、接触物体と検出電極2との間の静電容量が変化し、この静電容量の変化は、引き出し配線3を介して静電容量変化検出回路60に伝えられ、電気信号に変換して感知され、 タッチ部材が画像表示装置の前面に配置される場合には、支持体1の材料は光透過性であることが必要であり、 支持体1は、厚さが0.01~3mm、通常0.1~0.5mm程度であって、フレキシブルなテープ状、フィルム状、またはシート状であり、この場合、任意の立体的形状を有する物品に、貼り付けるなどの形態で用いることができ、 前記光透過性導電層が、前記カーボンナノ線状構造体と導電性樹脂材料との複合体からなり、補助的な材料は、透明性の高い導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT;商品名 バイトロン)などがよく、 検出電極2が被覆層5によって被覆され、被覆層5を構成する材料は、光学特性がよいこと(高透明性・低反射性・低グレア性)、簡単に形成できること、電気絶縁性があることが必要であり、また、高分子系の材料が好ましく、 半球形の支持体1の内側の面(凹面)に検出電極2が配置され、外側の面(凸面)がタッチ面4として用いられている、 静電容量式タッチ検出装置。」 (2) 甲第2号証 甲第2号証(特開2012-133428号公報)には、次の記載がある。 ア 段落【0017】 「【0017】 図1に示すように、本発明に係る表示装置は、湾曲形状に形成された液晶パネル4と、液晶パネル4上に、液晶パネル4に沿って配置された、柔軟性を有する所定の膜厚の接着層3と、接着層3を介して、液晶パネル4と接着されたタッチパネル2と、タッチパネル2上に配置された、湾曲形状を有する表面保護板1とを備える。」 イ 段落【0021】 「【0021】 表面保護板1を化学処理を施した強化ガラスで形成することで、タッチパネル2の吸湿等による変質や検出感度の低下を防止し、より耐環境性の高い表示装置が実現することができる。」 ウ 段落【0025】-【0026】 「【0025】 図3には、本発明に係る表示装置のうち、タッチパネル2の断面構造を示す。図3に示すように、シールド電極8上にタッチパネル基板9が配置され、タッチパネル基板9上に、2層の絶縁膜11、絶縁膜14が選択的に形成される。 【0026】 タッチパネル基板9と絶縁膜11との境において、検出配線10が配線され、絶縁膜11と絶縁膜14との境において、検出配線16が配線される。タッチパネル基板9表面において端子12、絶縁膜11表面において端子15がそれぞれ備えられる。」 エ 段落【0031】 「【0031】 また、本発明に係る実施の形態1によれば、表示装置において、タッチパネル2は、タッチパネル基板9上に検出配線10、検出配線16を備え、透明電極は、シールド電極であることで、表面保護板1が1mm以上の厚さになった場合でも、適切にタッチ検出を行うことが可能となる。」 (3) 甲第3号証 甲第3号証(特開2012-27894号公報)には、【請求項2】に、 「【請求項2】 前記導電性高分子は、ポリ-3、4-エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)、ポリアニリン、ポリアセチレンまたはポリフェニレンビニレンを含むことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式のタッチパネル。」 と記載されるから、導電層が、PEDOTとPSSの混合体などの導電性高分子からなるものは、周知技術であるといえる。 (4) 甲第4号証-甲第6号証 甲第4号証(特開2003-115221号公報)には、次の記載がある。 ア 段落【0027】 「【0027】このような高分子フィルム2aの厚さは、透明導電性フィルムの用途などによっても異なるが、タッチパネルの上部電極としての用途には、通常の場合13μm~0.5mm程度とされる。この高分子フィルムの厚さが13μm未満では、上部電極としての充分な耐久性を得ることができず、0.5mmを超えると得られるタッチパネルの厚肉化を招き、また上部電極としての柔軟性も損なわれ、好ましくない。」 イ 段落【0036】 「【0036】高分子化合物からなる保護層5、5a、5bの層厚は、用いた材料、透明導電フィルムに要求される光透過率、必要とされる耐久性などに応じて適宜決定されるが、保護層の膜厚が過度に薄いと保護層を形成したことによる透明導電薄膜の保護効果を充分に得ることができず、逆に過度に厚いと透明性が低下したり、透明導電薄膜の導電性が低下したりする上に透明導電フィルム自体の厚さも厚くなり、好ましくない。従って高分子化合物からなる保護層は1から1000nmの膜厚、特に1から100nmであることが好ましい。」 甲第5号証(特開2012-221075号公報)には、次の記載がある。 ウ 段落【0014】-【0019】 「【0014】 <1.透明導電性素子の構成> 図1Aは透明導電性素子の構造を模式的に示すものである。 この透明導電性素子は、基材1、透明導電膜2,保護層3の積層構造を有する。透明導電膜2は、所定パターンの透明導電材料が形成されて成り、この透明導電膜2により透明導電性素子は電極素子として機能する。保護層3は、透明導電膜2を被覆するように積層されている。 【0015】 本実施の形態では、透明導電膜2上に保護層3を形成することにより、透明導電膜2のシート抵抗の経時劣化を抑制するものである。 詳しくは後述するが、保護層3は、熱硬化樹脂、UV硬化樹脂等の樹脂を用いる。また、樹脂に無機フィラー等を混ぜたものでも良い。 透明導電膜2は、例えば導電性金属酸化物フィラーを用いて形成されている。 この実施の形態の透明導電性素子は、静電容量式タッチパネル等の電極素子として好適に使用できる。 ・・・(中略)・・・ 【0019】 ・透明導電膜2 透明導電膜2の材料にあたるフィラーには、ITOに代表される導電性金属酸化物フィラーが挙げられる。」 甲第6号証(登録実用新案第3177933号公報)には、次の記載がある。 エ 段落【0013】-【0014】 「【0013】 透明基板10は、第1側101と、第1側101と反対側の第2側102と、を有する 。導電層11は、第2側102上に配置される。導電層11は、ITO(Indium Tin Oxide)又はATO(Antimony Tin Oxide)フィルムである。本実施形態において、導電層11は、スパッタリングにより、第2側102上に形成されるが、これのみに限定されない。導電層11は、ゲルの塗布、電気鍍金又は蒸着により、第2側102に形成してもよい。 【0014】 図1及び図2に示すように、保護層12は、導電層11の透明基板10と反対側に貼合される。保護層12の材料は、窒化珪素(SiNx)、二酸化珪素(SiO2)又は炭化珪素(SiC)である。本実施形態において、保護層12は、ゲルの塗布、電気鍍金、蒸着、沈積又はスパッタリングによって形成される薄膜である。保護層12は、導電層11の透明基板10と反対側に貼合され、保護を行う。本考案の一実施形態による静電容量式タッチパネルユニット1は、1つの導電層11により、検出を行い、タッチ制御を実現するため、導電層11の設置を低減し、製造コストを低減することができる。また、薄膜構造からなる保護層12を使用することにより、タッチパネルユニット全体の薄型化を実現することができる。」 オ まとめ 甲第4号証-甲第6号証の各記載から、導電層の表面を覆う保護層を設ける点は、周知技術であると認められる。 4 判断 (1) 取消理由通知に記載した取消理由について ア 本件発明1について (ア) 甲1発明の「支持体1」は、「絶縁性材料からなり、立体的な形状を有するフィルム状又は板状の支持体1」であるから、本件発明1の「該外装体の内曲面に倣って一体に設けられたフィルム基材」と、「フィルム基材」である点で共通するといえる。 (イ) 甲1発明の「光透過性導電層からなる検出電極2」は、「支持体1の一方の面の少なくとも一部に配置され」、「光透過性導電層が、前記カーボンナノ線状構造体と導電性樹脂材料との複合体からな」るから、本件発明1の「該フィルム基材の前記外装体側の面の反対面に形成された導電性高分子からなる透明性の導電層」と「該フィルム基材の一方の面の反対面に形成された、透明性の導電層」である点で共通するといえる。 (ウ) 甲1発明の「検出電極2から引き出された引き出し配線3」は、本件発明1の「該導電層と電気的に接続された配線層」と、「該導電層と電気的に接続された配線」である点で共通するといえる。 (エ) 甲1発明の「被覆層5」は、「検出電極2が被覆層5によって被覆され」るものであって、「検出電極2」の「支持体1」と反対側の面を被覆しているから(引用文献1の図1(c)も参照されたい。)、本件発明1の「前記導電層の前記フィルム基材側の面の反対面を覆うように積層された、前記フィルム基材よりも薄い保護層」と、「前記導電層の前記フィルム基材側の面の反対面を覆うように積層された、保護層」である点で共通するといえる。 (オ) 甲1発明の「静電容量式タッチ検出装置」は、「タッチ部材が画像表示装置の前面に配置される場合には、支持体1の材料は光透過性であることが必要であり」、「光透過性導電層が、前記カーボンナノ線状構造体と導電性樹脂材料との複合体からなり」、「被覆層5を構成する材料は、光学特性がよいこと(高透明性・低反射性・低グレア性)、簡単に形成できること、電気絶縁性があることが必要であ」るから、全体としても、透明性を有するといえる。さらに、甲1発明の「静電容量式タッチ検出装置」は、「任意の立体的形状を有する物品に、貼り付けるなどの形態で用いることができ」、「半球形の支持体1の内側の面(凹面)に検出電極2が配置され、外側の面(凸面)がタッチ面4として用いられている」から、本件発明1の「透明性を有することを特徴とする曲面形状を有する静電容量型入力装置」に相当するといえる。 したがって、本件発明1と甲1発明との一致点・相違点は次のとおりである。 <一致点> 「フィルム基材と、 該フィルム基材の一方の面の反対面に形成された、透明性の導電層と、 該導電層と電気的に接続された配線と、 前記導電層の前記フィルム基材側の面の反対面を覆うように積層された、保護層と、 を有し、透明性を有することを特徴とする曲面形状を有する静電容量型入力装置。」 [相違点1] 本件発明1では、「ユーザに対向する外曲面を有して合成樹脂で成形された外装体」を有しており、「フィルム基材」が「該外装体の内曲面に倣って一体に設けられたフィルム基材」であって、「導電層」が「該フィルム基材の前記外装体側の面の反対面」に形成されるのに対して、甲1発明では、「外装体」が存在し得ることのについての、特定がなされていない点。 [相違点2] 本件発明1では、さらに、「前記外装体の前記内曲面と前記フィルム基材との間に設けられた接着層」を有するのに対して、甲1発明では、「接着層」を設けることは、特定がなされていない点。 [相違点3] 「導電層」について、本件発明1では、「導電性高分子からなる」のに対して、甲1発明では、「光透過性導電層からなる検出電極2」が「カーボンナノチューブ」である「カーボンナノ線状構造体と導電性樹脂材料との複合体からな」るものであるが、甲第1号証では、「導電性高分子は成形性には優れるものの、ITOなどに比べ、導電性および透明性に劣り、所定の導電性が得られず、タッチパネルの誤動作の原因になることがある。また、耐久性に劣り、特に車載用など高温環境中での動作特性には問題がある」(段落【0022】)との問題点が記載されており、「導電性高分子」は、あくまで、「カーボンナノチューブ」との複合体における「補助的な材料」としての利用にとどまるものであって、「導電性高分子からなる」導電層を用いることは、特定がなされていない点。 [相違点4] 「配線」について、本件発明1では、「配線」が「配線層」をなすのに対して、甲1発明では、「引き出し配線3」が「配線層」をなすことは特定がされていない点。 [相違点5] 「保護層」について、本件発明1では、「前記フィルム基材よりも薄い」のに対して、甲1発明では、「被覆層5」の薄さが、(「支持体1」すなわち)「前記フィルム基材よりも薄い」ことは、特定されていない点。 (キ) 上記[相違点1]について検討する。 本件発明1は、明細書の段落【0007】-【0010】に、 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、従来例に用いられている導電性ポリマー(導電性高分子)は、吸湿するとその層の抵抗値が大きくなる性質を有しており、一度吸湿した後水分が抜けないと、検出精度の低下に繋がる虞があった。特に、従来例の構成では、静電容量センサ900Aの第二の回路パターン層924や静電容量センサ900Bの回路パターン層920(923、924)が、フィルム基材901と支持体940とに挟まれた層構成をしているので、一旦水分がフィルム基材901や支持体940を透過して回路パターン層920(923、924)に吸収された場合、水分が容易に抜けないという課題があった。このため、従来例の静電容量センサ900においては、高湿環境下に晒された後に、検出精度が低下してなかなか復帰しない虞があった。 【0008】 本発明は、上述した課題を解決するもので、高湿環境下に晒された後に検出精度の低下から素早く復帰する、曲面形状を有する静電容量型入力装置を提供することを目的とする。 【0009】 この課題を解決するために、本発明の静電容量型入力装置は、ユーザに対向する外曲面を有して合成樹脂で成形された外装体と、該外装体の内曲面に倣って一体に設けられたフィルム基材と、該フィルム基材の前記外装体側の面の反対面に形成された導電性高分子からなる導電層と、該導電層と電気的に接続された配線層と、を有することを特徴としている。 【0010】 これによれば、本発明の静電容量型入力装置は、導電層が外装体とフィルム基材とに挟まれていないため、フィルム基材の外装体側の面の反対面側に形成された導電層の表面からフィルム基材や外装体に妨げられずに導電層内の水分が抜け易い構成となっている。このことにより、高湿環境下に晒された後に、導電層の抵抗値が元の値に戻りやすく、検出精度の低下から素早く復帰することができる。」 と記載されるとおり、従来、曲面形状を有する静電容量型入力装置の層構造において、導電性高分子からなる導電層が、フィルム基材と支持体に挟まれていたために、導電層に吸収された水分が容易に抜けないという課題があり、このため、導電層が、「フィルム基材の前記外装体側の面の反対面」に形成された層構成とする(これは、上記[相違点1]のに含まれている。)という事項を具備するものである。 一方、甲1発明では、「外装体」が存在し得ることのについての、特定がなされていない。 ここで、甲1発明は、「支持体1は、厚さが0.01~3mm、通常0.1~0.5mm程度であって、フレキシブルなテープ状、フィルム状、またはシート状であり、この場合、任意の立体的形状を有する物品に、貼り付けるなどの形態で用いることができ」るものであるが、薄いフィルム状の支持体1を「任意の立体的形状を有する物品に、貼り付ける」場合に、物品の内面、外面どちらの面に貼り付けるかは、特定されていない(段落【0058】参照。)。 そして、特に、立体的形状を有する物品の「内面」に、薄いフィルム状の支持体1を貼り付けたケースを想定すれば、このとき、甲1発明として、「立体的形状を有する物品」として、本件発明1の「外装体」に相当する層を備えた層構成のものを想定することができる。 しかし、甲第1号証の段落【0025】に、 「検出電極が透明であれば、外観を損なうことなく、検出電極を筐体211の外壁に設けることができる。この場合、筐体211の内部に設ける場合に比べて、はるかに簡易に検出電極を設けることができる」 と記載され、甲1発明が透明電極を用いる目的は、筐体内部よりも簡易に設置できる「筐体の外壁」に、透明な電極を設置するためと理解されること、 また、甲第1号証の【0068】に、 「また、光透過性の支持体を用いて静電容量式タッチ検出部材を作製し、これを他の物品に被せる場合には、他の物体の外観や意匠をそのまま利用して、静電容量式タッチ検出部材とすることができる。」 と記載され、「他の物品に被せる」、すなわち「筐体の外壁」に、電極を設ける実施の形態が記載されていること、さらに、甲第1号証の段落【0102】-【0103】にも、 「[実施の形態5] …… 図示省略するが、実施の形態5に基づく静電容量式タッチ検出装置は、タッチ検出機能を付与したいと望む物品の表面の少なくとも一部に配置された、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層からなる検出電極と、この検出電極を被覆する光透過性保護膜と、検出電極から引き出された引き出し配線とを有する第4の静電容量式タッチ部材、および静電容量変化検出回路60で構成される。…… この静電容量式タッチ部材を設ける物品は、カーボンナノ線状構造体を含有する光透過性導電層を設けることが可能であればよく、特に限定されるものではない。例えば、特許文献2に示されている人形型玩具210のようなものでもよく、PDA(情報携帯端末)、携帯電話機、ノートパソコン、携帯ゲーム機、およびビデオカメラなどの電子機器の筐体で、曲面形状をもつものなどがとくによい。また、ドアのノブのような家具や日用品でもよい。静電容量式タッチ部材は薄く、光透過性であるので、物品の外観を損ねることなく設けることができる。」 と記載され、「物品の表面に」透明電極を設置する実施の形態が記載されていることを考慮すると、甲1発明の「任意の立体的形状を有する物品に、貼り付ける」場合を、上記相違点1に係る構成のように、導電層が「フィルム基材の前記外装体側の面の反対面」に形成された層構成を開示するものと解釈することはできない。 よって、甲第1号証の記載の前後の文脈を考慮すれば、甲1発明から、「ユーザに対向する外曲面を有して合成樹脂で成形された外装体」を有しており、「フィルム基材」が「該外装体の内曲面に倣って一体に設けられたフィルム基材」であって、「導電層」が「該フィルム基材の前記外装体側の面の反対面」に形成されるという、上記相違点1に係る構成を導き出すことはできない。 甲第2号証には、上記3(2)ア-エの摘記のとおり、 「表示装置」であって、 「湾曲形状に形成された液晶パネル4と、液晶パネル4上に、液晶パネル4に沿って配置された、柔軟性を有する所定の膜厚の接着層3と、接着層3を介して、液晶パネル4と接着されたタッチパネル2と、タッチパネル2上に配置された、湾曲形状を有する表面保護板1とを備え」、 「表面保護板1を化学処理を施した強化ガラスで形成」し、 「タッチパネル2」は、「シールド電極8上にタッチパネル基板9が配置され、タッチパネル基板9上に、2層の絶縁膜11、絶縁膜14が選択的に形成され」、「タッチパネル基板9と絶縁膜11との境において、検出配線10が配線され、絶縁膜11と絶縁膜14との境において、検出配線16が配線され」、 「タッチパネル2は、タッチパネル基板9上に検出配線10、検出配線16を備え、透明電極は、シールド電極であることで、表面保護板1が1mm以上の厚さになった場合でも、適切にタッチ検出を行うことが可能となる」ものが記載されている。 しかし、甲第2号証のものは、「強化ガラス」の「表面保護板1」、「検出配線10、16」、「タッチパネル基板9」にさらに、「液晶パネル4」が積層された層構成の「表示装置」であって、特に、「検出配線10、16」は、「強化ガラス」の「表面保護板1」と「タッチパネル基板9」に挟まれているから、導電層が「フィルム基材の前記外装体側の面の反対面」に形成されるという層構成を含む、上記相違点1に係る構成は記載されていない。 なお、甲第2号証のものは、上記3(2)エの摘記のとおり、「タッチパネル基板9上に検出配線10」を備えるという、「検出配線10、16」は、「強化ガラス」の「表面保護板1」と「タッチパネル基板9」に挟まれている層構成を採用することで、表面保護板の厚みに対処しているから、甲第2号証の記載に基づいて、「検出配線10」のみを「タッチパネル基板9」より「下」に移動した層構成を想起することは想定し難い。 甲第2号証の層構成を分解して、「表面保護板1」という特定の層だけを取り出せば、個別に周知の構成要素であるとしても、甲第2号証のものは「表示装置」全体の所定の層構成に意義があるものであって、検出電極を筐体の外壁に設ける方が、筐体の内部に設けるより「はるかに簡易に検出電極を設けることができる」という作用効果を備えた甲1発明に対して、甲第2号証の「表示装置」の層構成から特定の層だけを取り出して組み合わせることの起因、動機付けは見いだし難い。 甲第3号証には、上記3(3)記載のとおり、導電層が、PEDOT/PSSなどの導電性高分子からなる周知技術が記載され、甲第4号証-甲第6号証には、上記3(4)記載のとおり、導電層を覆う保護層を設ける周知技術が記載されているが、いずれの文献にも、曲面形状を有する静電容量型入力装置において、導電性高分子からなる透明性の導電層が、「フィルム基材の前記外装体側の面の反対面」に形成されるという層構成を含む、上記相違点1に係る構成は記載されていない。 以上から、甲第1-6号証のいずれにも、曲面形状を有する静電容量型入力装置において、導電性高分子からなる透明性の導電層が、「フィルム基材の前記外装体側の面の反対面」に形成されるという層構成を含む、上記相違点1に係る構成は記載されていない。 そして、本件発明1は、当該構成によって、曲面形状を有する静電容量型入力装置において、導電性高分子からなる導電層が外装体とフィルム基材とに挟まれていないため、導電層内の水分が抜け易いという顕著な効果を奏するものであり、上記[相違点2]-[相違点5]について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2-6号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2-6について 本件発明2-4は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲第2-6号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 特許法第29条第2項について 特許異議申立人松田亘弘は、特許異議申立書の「理由2」(5ページ18行-6ページ下から2行目)において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1、4-6号証に記載の技術事項に基づき容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。 しかし、上記(1)ア(キ)記載のとおり、甲第2号証、及び、甲第1、4-6号証のいずれにも、曲面形状を有する静電容量型入力装置において、導電性高分子からなる導電層が、「フィルム基材の前記外装体側の面の反対面」に形成されるという層構成を含む、上記相違点1に係る構成は記載されておらず、示唆されてもいないから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1、4-6号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではなく、かかる主張は理由がない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1-4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1-4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700822

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決18件(アルプス電気株式会社、松田 亘弘)
  • 2018-700898異議申立 / 2020-02-27 / 訂正認容空気調和機
    同じ当事者: 松田 亘弘
  • 2018-700403異議申立 / 2019-06-28 / 訂正認容ロータリ圧縮機
    同じ当事者: 松田 亘弘
  • 2018-700535異議申立 / 2019-06-14 / 訂正認容加飾シート及び加飾樹脂成形品
    同じ当事者: 松田 亘弘
  • 2018-700952異議申立 / 2019-05-28 / 請求成立(取消)空気調和方法及び空気調和機
    同じ当事者: 松田 亘弘
  • 2018-700958異議申立 / 2019-01-17 / 維持ガス検知器
    同じ当事者: 松田 亘弘
同じ論点・分野の審決(審決分類)2,453件(121・G06F)
  • 2025-700783異議申立 / 2026-06-04 / 訂正認容情報処理システム、情報処理処理方法及びプログラム
    共通の審決分類: 121・G06F
  • 2025-701031異議申立 / 2026-02-10 / 維持性能予測装置、性能予測方法及び性能予測プログラム
    共通の審決分類: 121・G06F
  • 2025-700191異議申立 / 2026-01-27 / 訂正認容情報中継装置、情報中継方法、及び、情報中継プログラム
    共通の審決分類: 121・G06F
  • 2024-700548異議申立 / 2025-12-11 / 訂正認容分析プログラム、情報処理装置、および分析方法
    共通の審決分類: 121・G06F
  • 2025-700280異議申立 / 2025-09-30 / 維持情報提供装置、端末、本人確認システム、情報提供方法及び記録媒体
    共通の審決分類: 121・G06F

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