特許異議申立
2017-700813
低抵抗膜を有するフロー電池
- 審判番号
- 2017-700813
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-553524
- 登録番号
- 特許第6088442号(P6088442)
- 請求日
- 2017年08月30日
- 審決日
- 2019年03月08日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
- 【権利者代理人】小林 博通
- 【権利者代理人】富岡 潔
- 【異議申立人】住友電気工業 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 池渕 立
- 審判官 土屋 知久
- 審判官 小川 進
- 分類
- P1651.537-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6088442号発明「低抵抗膜を有するフロー電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6088442号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
特許第6088442号の請求項1-11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6088442号の請求項1~11に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)2月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年2月8日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年2月10日にその特許権の設定登録がなされ、同年3月1日に特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、その特許の全請求項について、平成29年8月30日に特許異議申立人住友電気工業株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものであって、同年11月2日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、これに対して、その指定期間内である平成30年1月22日に意見書(以下、「意見書1」という。)が提出され、同年1月31日付けで申立人に対して審尋がなされ、これに対して、その指定期間内である同年4月4日に申立人から回答書(以下、「回答書」という。)が提出され、同年4月19日付けで取消理由(決定の予告:以下、「予告1」という。)が通知され、これに対して、その指定期間内である同年7月20日に意見書(以下、「意見書2」という。)が提出され、その後、同年8月30日付けで取消理由(決定の予告:以下、「予告2」という。)が通知され、これに対して、その指定期間内である平成30年12月3日に意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、平成31年1月22日に申立人から意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第6088442号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求める。」というものであって、本件訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、下線は、変更された箇所を表すために当審が付与したものである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「425mΩ・cm2未満の面積比抵抗を有する膜と、
前記膜を湿潤させる、可逆的なレドックス対の反応物を有する溶液と、
を備え、
前記膜が、前記第1の電極と前記第2の電極との間において、100mA/cm2を超える電流密度でイオン電流を伝達するように動作可能であり、」とあるのを
「膜と、
前記膜を湿潤させる、可逆的なレドックス対の反応物を有する溶液と、
を備え、
前記膜が、前記第1の電極と前記第2の電極との間において、100mA/cm2を超える電流密度でイオン電流を伝達するように動作可能であり、
この電流密度の下で前記膜の面積比抵抗は、425mΩ・cm2未満であり、」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2~11も同様に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「425mΩ・cm2未満の面積比抵抗を有する膜」について、本件訂正前は、「面積比抵抗」を測定する条件について規定されていなかったが、本件訂正後は、「この電流密度の下で前記膜の面積比抵抗は、425mΩ・cm2未満であ」るとし、「この電流密度の下で」とは、「100mA/cm2を超える」「電流密度の下で」を意味するとしたものである。
そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1に係る本件訂正後の「100mA/cm2を超える」「電流密度の下で前記膜の面積比抵抗は、425mΩ・cm2未満であ」る事項は、願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0020】に記載されたものであるから、新規事項の追加ではない。
さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~11は、請求項1を引用するものであるから、本件訂正前の請求項1~11は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、そのような一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~11〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件訂正請求に係る請求項はいずれも特許異議の申立てがなされているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正を認める。
3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
第1の電極および第2の電極と、
膜と、
前記膜を湿潤させる、可逆的なレドックス対の反応物を有する溶液と、
を備え、
前記膜が、前記第1の電極と前記第2の電極との間において、100mA/cm2を超える電流密度でイオン電流を伝達するように動作可能であり、
この電流密度の下で前記膜の面積比抵抗は、425mΩ・cm2未満であり、
前記膜が、125μm未満の厚さを有するとともに、第1のイオン交換材料を備え、前記第1のイオン交換材料が、パーフルオロアルキル・スルホンイミド・イオノマを備えた、フロー電池。
【請求項2】
前記膜が、前記溶液中の非レドックス対反応物を透過できるものとして構成されることを特徴とする請求項1に記載のフロー電池。
【請求項3】
前記膜が、前記第1のイオン交換材料と、前記第1のイオン交換材料とは異なる材料と、の複合材料を備えることを特徴とする請求項1に記載のフロー電池。
【請求項4】
前記膜が、第1の層と、第2の層と、を備え、前記第1の層が前記第1のイオン交換材料を有し、前記第2の層が前記第1のイオン交換材料とは異なる材料を備えることを特徴とする請求項1に記載のフロー電池。
【請求項5】
前記第2の層における、前記第1の層のイオン交換材料とは異なる材料が、非導電材料のマトリクスを備えることを特徴とする請求項4に記載のフロー電池。
【請求項6】
前記マトリクスが、イオン交換バインダを含浸することを特徴とする請求項5に記載のフロー電池。
【請求項7】
前記第2の層における、前記第1の層のイオン交換材料とは異なる材料が、疎水性の多孔質材料を備えることを特徴とする請求項4に記載のフロー電池。
【請求項8】
前記第2の層が、第2の種類のイオノマを備えることを特徴とする請求項4に記載のフロー電池。
【請求項9】
前記第2の層が、前記第1の層と、第3の層と、の間に配置されるとともに、前記第3の層が、第2のイオン交換材料を有することを特徴とする請求項4に記載のフロー電池。
【請求項10】
前記非導電材料が、繊維ガラス、ポリテトラフルオロエチレン繊維、およびポリテトラフルオロエチレンの多孔質シートのうちの一つを備えることを特徴とする請求項5に記載のフロー電池。
【請求項11】
前記第1のイオン交換材料とは異なる材料が、パーフルオロスルホン酸を備えることを特徴とする請求項4に記載のフロー電池。」
(2)申立理由の概要
(2)-1 取消理由、予告1及び予告2で採用した申立理由の概要
本件訂正前の請求項1~11に係る特許に対して特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、予告1及び予告2においても、概要としては、同様の取消理由を通知した。
ア 特許法第36条第6項第2号について
願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に係る発明の「425mΩ・cm2未満の面積比抵抗を有する膜」「を備え」るとの発明特定事項について、具体的な測定方法及び測定条件が本件明細書に記載されていないから、請求項1~11に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)-2 取消理由として採用しなかった申立理由の概要
本件訂正前の請求項1~11に係る特許に対して、取消理由として採用しなかった申立て理由の概要は、次のとおりである。
ア 特許法第29条第2項について
本件発明1~11は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
<刊行物>
1 特開平8-287938号公報(申立人が提出した甲第6号証)
2 米国特許出願公開2010/0003545号明細書(申立人が提出した甲第7号証)
3 特開平8-7913号公報(申立人が提出した甲第8号証)
4 特開2006-32157号公報(申立人が提出した甲第9号証)
5 Qingtao Luo et al.,"Preparation and characterization of Nafion/SPEEK layered composite membrane and its application in vanadium redox flow battery",Journal of Membrane Science,325(2008),p553-p558(申立人が提出した甲第10号証)
6 特開2008-27627号公報(申立人が提出した甲第11号証)
(3)本件明細書の記載
本件明細書には、次の記載がある。
「【0017】
イオン交換膜38は、第1のイオン交換面56と、第2のイオン交換面58と、膜厚60と、断面積59(図3参照)と、を有する。イオン交換膜はまた、イオン抵抗、面積比抵抗(area specific resistance)、伝導率、および抵抗率(resistivity)を含む、ある特定の材料特性を有する。膜厚60が第1のイオン交換面56と第2のイオン交換面58との間に延在する。イオン抵抗は、第1のイオン交換面56と第2のイオン交換面58の間の経路に沿って、オーム(Ω)で測定される。イオン抵抗は、膜厚60、膜断面積59(図3参照)、およびバルク膜抵抗率(bulk membrane resistivity)の関数である。イオン抵抗は、例えば次の式を用いて求められる。
【0018】
R=(ρ・L)/A
ここで、「R」はイオン抵抗を表し、「ρ」は膜のバルク抵抗率を表し、「L」は膜厚60を表し、「A」は膜の断面積59(図3参照)を表す。面積比抵抗は、イオン抵抗および膜断面積59(図3参照)の関数である。面積比抵抗は、例えば次の式を用いて求められる。
【0019】
RAS=R・A
ここで「RAS」はイオン交換膜28の面積比抵抗を表す。
【0020】
以下に詳述するように、フロー電池セル20の全体的なエネルギーの非効率性を低減するように、フロー電池セル20が動作する平均電流密度の関数として、膜厚60の寸法が取られかつ/または面積比抵抗が選択される。一実施例では、約100mA/cm2(約645mA/in2)を超える平均電流密度(例えば、約200mA/cm2より大きい;約1290mA/in2より大きい)で動作されるフロー電池セル20の膜厚60が、約125μm(約4921μin)未満に寸法が取られる(例えば、100μm未満;約3937μin未満)。その他の実施例では、約100mA/cm2を超える平均電流密度(例えば、約200mA/cm2より大きい)で動作されるフロー電池セル20の面積比抵抗が約425mΩ・cm2(約2742mΩ・in2)未満に選択される。」
「【0032】
イオン交換膜38の過電圧の非効率性は、イオン交換膜38の面積比抵抗および膜厚60の関数である。過電圧の非効率性は例えば次の式を用いることにより求められる。
【0033】
nv=(V-Vocv)/Vocv,
V=f(iRAS)
ここで「nv」は過電圧の非効率性を表し、「V」はフロー電池セル20の電圧電位を表し、「Vocv」は開放電圧を表し、「f()」は関数関係を表し、「i」はイオン交換膜38を横切るイオン電流を表す。」
(4)甲号証の記載
特許異議申立人が提出した甲第4-1~4-4、6~9、15~18号証(以下、甲号証の番号に応じて、「甲4-1」・・(略)・・「甲18」などという。)は、次のとおりであって、それぞれ次のア~シの記載がある。ただし、甲第16~18号証は、本件特許の優先日時点で未公開の文献である。
なお、翻訳は当審による。また、「・・・・・・」は記載の省略を示す。さらに、「(R)」は、「R」を丸で囲った記号を表す。
甲第4-1号証:"Redox-Flow-Batteries fumasep(R) membrane types",fumatech,発行日不明
甲第4-2号証:"Technical Data Sheet-fumasep(R) FS-930",fumatech,発行日不明
甲第4-3号証:"Technical Data Sheet-fumasep(R) F-930-rfd",fumatech,発行日不明
甲第4-4号証:"Technical Data Sheet-fumasep(R) F-1075-PK",fumatech,発行日不明
甲第6号証:特開平8-287938号公報
甲第7号証:米国特許出願公開第2010/0003545号明細書
甲第8号証:特開平8-7913号公報
甲第9号証:特開2006-32157号公報
甲第15号証:「ゼロから学ぶ電気化学-測定データを解釈するために-」第36回電気化学講習会テキスト、社団法人電気化学会関西支部、平成18年11月9日発行、第80頁第15~21行、表3
甲第16号証:「エネルギー・資源」VOL.32 NO.3、一般社団法人エネルギー・資源学会、平成23年5月5日発行、第53頁右欄第1~19行、図3
甲第17号証:Hyun-Seok Cho et al.,"Absorption behavior of vanadium in Nafion(R)", Journal of Power Sources 267 (2014) p547-552
甲第18号証:Zhijiang Tang et al.,"Composition and Conductivity of Membranes Equilibrated with Solutions of Sulfuric Acid and Vanadyl Sulfate", Journal of The Electrochemical Society 160(9) (2013) F1040-F1047
ア 甲第4-1号証
ア-1「
」(表紙を含めて4頁目)
ア-2「
」(表紙を含めて4頁目)
(訳)「・2MのH2SO4と混合した1.6MのVOSO4溶液
・シングルセル測定
・両方の電解質は窒素下に保持された(純度2.8以上)
・電流密度20-80mA/cm2
・SOC充電限度99%
・SOC放電限度2%
・温度23℃±1.5℃
・比抵抗は、SOCが60-50%であり、電流密度が18mA/cm2に設定されている放電モードでのEISによって測定される。EIS測定による電位は、膜と電極との間に置かれたPtワイヤ上で読み取られるため、測定は接触抵抗や電極の分極の影響を受けない。」
ア-3 上記ア-1の表の「Specific resistance(mOhm・cm2)」(訳:「比抵抗(mOhm・cm2)」)は、その単位からみて、面積比抵抗を意味していると認められる。そして、上記ア-1には、レドックスフロー電池の膜の面積比抵抗について、FS-930が290mOhm・cm2、F-930-RFDが520mOhm・cm2、F-1075-PKが650mOhm・cm2であることが記載されている。
ア-4 上記ア-2には、動作条件として、2MのH2SO4 と混合した1.6MのVOSO4水溶液中で、シングルセルでの測定で、温度23℃±1.5℃において、比抵抗は、SOCが60~50%で電流密度が18mA/cm2に設定されている放電モードでEIS法によって測定されることが記載されている。
ア-5 上記ア-3及びア-4から、2MのH2SO4 と混合した1.6MのVOSO4水溶液中で、シングルセルでの測定で、温度23℃±1.5℃において、SOCが60~50%で電流密度が18mA/cm2に設定されている放電モードでEIS法によって測定した値で、レドックスフロー電池の膜の面積比抵抗は、FS-930が290mOhm・cm2、F-930-RFDが520mOhm・cm2、F-1075-PKが650mOhm・cm2であることが記載されているといえる。
イ 甲第4-2号証
イ-1「General
Membrane type:Perfluorinated cation-exchange membrane -reinforced - thickness 25-30μm,with low resistance, high mechanical stability, low dimensional swelling, and high stability in acidic enviroment.
Application:Redox-Flow Battery, e.g. Vanadium-Redox-Flow Battery (VRB), using aqueous acidic conditions.」(表紙)
(訳)「一般
メンブレンタイプ:低抵抗、高い機械的安定性、低次元の膨張、酸環境における高い安定性を有し、厚さ25~30μm、強化・安定した過フッ化カチオン交換膜
用途:レドックスフロー電池、例えば、水性及び酸性の条件で使用するバナジウムレドックスフロー電池」
イ-2「
」(表紙を含めて2頁目)
イ-3「a) in 0.5M H2SO4 solution @ T=25℃, measured in two-electrode cell (through-plane), sample activated in 10% H2SO4, T=100℃, 30 min, before measurement.」(表紙を含めて2頁目)
(訳)「a)測定前に10%の硫酸中で、100℃、30分間、サンプルを活性化した後、0.5Mの硫酸水溶液中において、25℃で、2電極セル(面を通過する方向で)中で測定。」
イ-4 上記イ-3の記載を参照すると、上記イ-2の表には、レドックスフロー電池のイオン交換膜に用いるfumasep(R) FS-930について、0.5Mの硫酸中における面積抵抗が0.03Ω・cm2より低いことが記載されている。
ウ 甲第4-3号証
ウ-1「General
Membrane type:Perfluorinated cation-exchange membrane -reinforced - thickness 30μm,with low resistance, high mechanical stability, low dimensional swelling, and high stability in acidic enviroment.
Application:Redox-Flow Battery, e.g. Vanadium-Redox-Flow Battery (VRB), using aqueous acidic conditions.」(表紙)
(訳)「一般
メンブレンタイプ:低抵抗、高い機械的安定性、低次元の膨張、酸的安定性を有し、厚さ30μm、強化・安定した過フッ化カチオン交換膜
用途:レドックスフロー電池、例えば、水性及び酸性の条件で使用するバナジウムレドックスフロー電池」
ウ-2「
」(表紙を含めて2頁目)
ウ-3「a)in 0.5M H2SO4 solution @ T=25℃, measured in two-electrode cell (through-plane)」(表紙を含めて2頁目)
(訳)「a)0.5Mの硫酸溶液中において、25℃で2電極セル(面を通過する方向で)中で測定。」
ウ-4 上記ウ-3を参照すると、上記ウ-2の表には、レドックスフロー電池のイオン交換膜であるfumasep(R) F-930-rfdについて、0.5Mの硫酸中における面積抵抗が、受け入れたままのものは0.06Ω・cm2であり、活性化されたものは0.08Ω・cm2であることが記載されている。
エ 甲第4-4号証
エ-1「General
Membrane type:Perfluorinated cation-exchange membrane, PK-reinforced, thickness 75μm, with low resistance, high mechanical stability, high selectivity and high chemical and oxidative stability.
Application:Redox-Flow Battery, e.g. Vanadium-Redox-Flow Battery (VRB), using aqueous acidic conditions.」(表紙)
(訳)「一般
メンブレンタイプ:低抵抗、高い機械的安定性、高い選択性、高い化学的・酸的安定性を有し、厚さ75μm、PK強化した過フッ化カチオン交換膜
用途:レドックスフロー電池、例えば、水性及び酸性の条件で使用するバナジウムレドックスフロー電池」
エ-2「
」(表紙を含めて2頁目)
エ-3 上記エ-1を参照すると、上記エ-2の表には、レドックスフロー電池のカチオン交換膜であるfumasep(R) F-1075-PKについて、0.5Mの硫酸中における面積抵抗が0.15Ω・cm2であることと、0.5Mの硫酸及び0.4Mの硫酸バナジル中における面積抵抗が0.5-0.6Ω・cm2であることが記載されている。
オ 甲第6号証
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二次電池に関し、さらに詳しくは、レドックスフロー型二次電池(略して、「レドックス電池」と呼ぶことがある)に関するものであり、特に高電流密度で使用可能な、内部抵抗及びポンプ動力損失の小さい、高出力のレドックス電池の電極構造に関する。」
「【0014】以下、本発明を具体的に説明する。本発明のレドックス電池の構造は、図1に示すように、イオン交換膜からなる隔膜とその両側に設けられた電解液の通過性を有する炭素繊維電極(正極及び負極)と、更にその外側に設けられた燒結炭素板製のバイポーラ板(集電板)からなり、正極液(例えば、5価/4価バナジウム溶液)及び負極液(例えば、2価/3価バナジウム溶液)はそれぞれ正極タンクと負極タンクから正極と負極に送られる構造となっている。本発明のレドックス電池用電極は、隔膜側に炭素繊維からなる高表面積多孔質電極の層、およびバイポーラ板側に炭素繊維からなる低表面積多孔質電極を配置した複層多孔質炭素電極の層を備えている。」
「【0026】
【実施例】次に本発明を実施例をもって具体的に説明する。
実施例1
図1に示すようなレドックスフロー電池セルにおいて、イオン交換膜に旭硝子社製「ニューセレミオン TYPE-2」(アニオン系イオン交換膜)を、電解液としてバナジウム硫酸溶液(2M V2+~V5+/2M H2SO4)を、複層多孔質電極(厚さ3mm)として、隔膜側高表面積多孔質電極としてSGL CARBON社製「Graphite felt KFD-2」(フェルト状炭素繊維、厚さ2mm、繊維径10μm、BET表面積16m2/g、広角X線解析より求めた(002)面の面間隔d002=3.54Å、ESCAより求めた表面のO/C原子比=0.091)を、集電板側低表面積多孔質電極としてSGL CARBON社製「Graphite felt GFD-2」(フェルト状炭素繊維、厚さ2.5mm、繊維径10μm、BET表面積0.47m2/g、広角X線より求めたd002=3.45Å、ESCAより求めた表面のO/C原子比=0.038)を設置した電池セルの構成で、電流密度130mA/cm2で充放電実験を実施した。液透過性多孔質電極の圧力損失の測定は、次の方法を採用して電池セルにおける圧力損失の代用値とした。即ち、図2の測定装置を用いて、純水の流量60cc/minにおける圧力損失により測定し、マノメーターの水銀柱長さで、その圧力損失の大きさを示した。結果を表-1に示す。」
「【図1】
」
カ 甲第7号証
「[0002]This invention generally relates to energy storage technologies, and more particularly to redox flow battery energy storage systems and applications.」
(訳)「[0002]本発明は、一般に、エネルギー貯蔵技術に係り、特にレドックスフロー電池エネルギー貯蔵システムおよび用途に関するものである。」
「[0036]Referring to FIG. 1, the main components of the redox flow battery system include the redox flow battery stack assembly 10 through which two electrolytes flows through porous electrodes 18, 20 which are separated by a separator membrane 12.」
(訳)「[0036]図1を参照すると、レドックスフロー電池システムの主要な構成として、レドックスフロー電池スタックアセンブリ10を含み、2種の電解液はセパレータ膜12により分けられた多孔質電極18、20を通って流れる。」
「[0039]FIG. 2 illustrates a cross-section of an individual single cell layer 48 within a redox flow battery stack assembly 10 as viewed from a perspective perpendicular to the plane of the electrodes 18, 20 and the membrane separator 12 (i.e. short axis of layer 48 is into and out of the page of FIG. 1). The illustrated cell layer 48 includes three independent cells 52, 54, 56, as an example embodiment; in other embodiments each cell layer 48 may include fewer or more independent cells. ・・・・・・To enhance overall efficiency and battery performance, the battery cells are configured with varying catalyst loadings, electrode tortuosity, chamber volumes, and/or membrane separator porosities or selectivity to handle the variations in reactant concentration along the flow path, minimize undesired reactions, and optimize coulombic and voltage efficiencies. For example, as illustrated in FIG. 2, in a three-cell redox flow battery cell layer assembly 48, a first cell 52 near the reactant inlet flows 34, 36 may be configured with structural and material properties to offer greater efficiency with the higher state of charge condition of the electrolyte at the input to the battery cell layer assembly. A second cell 54 may then be configured with structural and material properties to provide efficient operation with the intermediate state of charge condition of the electrolytes that will exist after the electrolytes have passed through the first cell 52. The third cell 56 may be configured with structural and internal properties to provide efficient operation with the relatively low state of charge condition that will exist in the electrolytes after they have reacted in the first and second cells 52, 54.」
(訳)「[0039]図2は、電極18、20とセパレータ膜12の平面に垂直な視点から見たものであって(すなわち、層48の短い軸は図1の紙面に対して垂直方向である)、レドックスフロー電池スタックアセンブリ10内の個々の単電池層48の断面図を示す。例示的実施形態として、図に示されたセル層48は3個の独立したセル52、54、56を含み、他の実施形態では、各セル層48は、より少ないまたはより多くの独立したセルを含んでもよい。・・・・・・全体的な効率及び電池性能を高めるため、電池セルは、流路に沿って反応物濃度の変動を処理し、望ましくない反応を最小化し、クーロン力及び電圧効率を最適化するために、触媒量、電極のねじれ、チャンバの容量、及び/又は膜セパレータ多孔率または選択性を変化させることで構成されている。例えば、図2に示すように、3セルのレドックスフロー電池セルレイヤアセンブリ48において、反応物質の注入流34、36近傍の第1のセル52は、電池セルレイヤアセンブリに対する入力において電解液の充電状況に関してより高い状態でより大きな効率を発揮するよう構造的物質的に構成されてもよい。電解液が第1のセル52を通過した後、第2のセル54は、存在する電解液の充電状況の中間状態で効率的な動作を提供するような構造的および材料特性を有するよう構成されてもよい。電解液が、第1及び第2のセル52、54において反応した後、第3のセル56は、電解液中に存在する充電状況のより低い状態において効率的な動作を提供するような構造および内部特性を有するよう構成されてもよい。」
「[0042]・・・・・・As described more fully below with reference to FIGS. 16A-16C, the membrane separator 12 may be made from different materials so as to exhibit varying diffusion selectivity and electrical resistance as appropriate for the expected state of charge within each battery cell.」
(訳)「[0042]・・・・・・以下で図16A-図16Cを参照してより十分に説明するように、各電池セル内において予想される充電状態に対して、拡散選択性及び電気抵抗が適切に変化するように、分離膜12は異なる材料から作られてもよい。」
「[0112]Further representative stack design parameters and performance characteristics for a three-cell configuration are listed in Table 1 below. All values are approximate.」
(訳)「[0112]さらに、3セル構成の代表的なスタックデザインパラメータ及び性能が、以下の表1に列挙されている。すべての値は近似値である。」
「
」
(訳)
「充電率(%)
利用率(%)
電解液の濃度[M]
・・・・・・
電極表面領域
放電時の電極触媒負荷
充電時の電極触媒負荷
電極滞留時間
セパレータ選択性(μgFe/hr-cm/M)
セパレータ面積比抵抗((ohm-cm2)
セパレータ気孔率(μm) 」
「
」
「
」
「
」
キ 甲第8号証
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、二次電池に関し、さらに詳しくは、バナジウム(II/III)とバナジウム(V/IV)をレドックス対とするレドックスフロー型二次電池(略して、「レドックス電池」と呼ぶことがある)に関するものであり、特に高電流密度で使用可能な全バナジウムレドックス電池のセル構造に関するものである。」
「【0018】(4) 隔膜
正極室と負極室とを分離する隔膜11は通常イオン交換膜が使用される。イオン交換膜としては、5価のバナジウムイオンの酸化力に耐性のあるものであれば、陽イオン、陰イオンどちらのイオン交換膜でも良い。具体的には、ポリスルホン樹脂をベースにしたイオン交換膜やフッ素樹脂をベースにしたイオン交換膜が使用できるが、80mA/cm2以上の高電流密度で使用するには、イオン交換樹脂層の厚さが20μm~150μmであることが好ましい。これより薄い膜であればセル抵抗は低くなるが、正極と負極の液移動が激しくて充放電をすることが難しく、これ以上厚ければセル抵抗が高くなりすぎて所定の効率を達成することが困難となる。」
「【0022】
【実施例】以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
実施例1
第1図に示したようなセル構成において、厚さ100μmのポリスルホン系ポリマーから成るイオン交換膜11(旭硝子社製)、炭素繊維のフェルト状電極12(面積20cm2)、ポリ塩化ビニルの外枠に同じ厚さのグラッシーカーボン板から成るバイポーラ板1(厚さ1mm)、エチレンープロピレンラバーのパッキン9(デュ-ロ硬度A90,厚さ0.5mm)および厚さ1.5mmのポリ塩化ビニル製分液板6を集層して、セル厚さが2.5mmの電池セル(縦150mm及び横110mm)を作製した。該分液板としては、図2~4に示すように、外枠のコーナー部4箇所にマニホールド4(直径10mm)、その中央部にくりぬき部7(50×50mm)、該マニホールドと該くりぬき部との中間に分液穴8(2×10mm)がそれぞれ穿設されており、さらに3本のスリット5(深さ1.0mm、幅2.0mm、間隔2.0mm)が、該分液板の表側には分液穴からくりぬき部へ向けて、及びその裏側には該マニホールドから該分液穴へ向けて、それぞれ7mmの長さで凹設されているものを用いた。得られた電池セルを用いて80mA/cm2及び100mA/cm2で充放電を実施した。その結果を表-1に示す。」
「【図1】
」
ク 甲第9号証
「【請求項1】
スルホン酸基又はスルホンイミド基を有し、かつ主鎖に脂肪族環構造を有するパーフルオロポリマーからなる電解質材料であって、3%の過酸化水素水と200ppmの2価鉄イオンを含むフェントン試薬溶液50g中にポリマー0.1gを40℃で16時間浸漬する試験において、溶液中に検出されるフッ素イオン溶出量が、浸漬したポリマー中の全フッ素量の0.01%以下であることを特徴とする電解質材料。
【請求項2】
・・・・・・
【請求項3】
前記パーフルオロポリマーが、下記モノマーAに基づく繰り返し単位と下記モノマーBに基づく繰り返し単位を含む共重合体からなる請求項1又は2に記載の電解質材料(ただし、式中、Y1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0~3の整数であり、nは1~12の整数であり、pは0又は1であり、m+p>0、Y2はOH又はNHSO2ZであってZはエーテル性の酸素原子を含んでもよい炭素数1~6のパーフルオロアルキル基である。)。
モノマーA:ラジカル重合により、主鎖に環構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを与えるパーフルオロモノマー。
モノマーB:CF2=CF-(OCF2CFY1)m-Op-(CF2)n-SO2Y2で表されるパーフルオロビニルエーテル。
【請求項4】
前記モノマーAに基づく繰り返し単位が、下記式(1)~(4)のいずれかで表わされる請求項3に記載の電解質材料(ただし、式中nは1~4の整数であり、Rfは炭素数1~8のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であり、X1、X2はそれぞれ独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、(CX1X2)nにおいてnが2以上である場合は、炭素ごとにX1とX2の組合せは異なっていてもよい。)。
【化1】
」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池用膜電極接合体及びそのための固体高分子電解質材料に関する。」
ケ 甲第15号証
ケ-1「
」(第80頁第15~21行、表3)
コ 甲第16号証
コ-1「
」(第53頁右欄第1~19行)
コ-2「
」(図3)
サ 甲第17号証
サ-1「2.2. Membrane conductivity measurement
For the conductivity measurements, NRE211 was used to minimize the time to reach equilibrium. Membrane conductivities for pristine and vanadium absorbed NRE211 were determined at 10 values of constant relative humidity (RH) (i.e., 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 95%) by applying DC currents at the cell temperature of 80℃. The potentiostat (model PAR273) was used with a four probe conductivity Teflon based cell (model BT 112) made by Beckktech LLC. The cell was equilibrated with a 300 sccm flow of N2 at Tcell 80℃and RH 90% for 1 h using a Scribner 890E PEMFC test station that was calibrated for both flow and humidity. The humidity was changed from low (20%) RH to high (95%) RH while the membrane conductivity was measured with a hold of 30 min for each RH to ensure equilibrium conditions.」(第548頁右欄第25~38行)
(訳)「2.2.膜伝導率測定
導電率測定のために、平衡に達する時間を最小にするためにNRE211を使用した。未処理およびバナジウム吸収NRE211についての膜導電率は、80℃のセル温度で直流電流を適用することにより、一定の相対湿度(RH)の10値(すなわち、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95%)で測定した。ポテンショスタット(モデルPAR273)を、Beckktech LLCによって製造された4プローブ伝導率テフロン(登録商標)ベースのセル(モデルBT 112)と共に使用した。流量と湿度の両方について較正されたScribner 890E PEMFCテストステーションを使用して、セルを窒素流量300sccm、セル温度80℃、相対湿度90%で1時間平衡させた。湿度を低(20%)RHから高(95%)RHに変化させながら、平衡状態を確実にするために各RHについて30分保持して膜伝導率を測定した。」
サ-2「3. Result and discussion
3.1. Absorption isotherm of vanadium ions into Nafion(R) membrane
Fig.1 shows absorption isotherms of N115 for different oxidation states of vanadium ions at room temperature.・・・・・・Note that these affinity values of the vanadium ions for Nafion(R) are greater for the lower valence species than the higher valence species. This affinity is an initial value and could change over extended periods of time when Nafion(R), Gore Select, and Selemion are immersed in 0.1 M VO2+ (V5+), as described in Ref. 17 and 18. Additionally, the isotherms exhibit greater affinity to N115 in the reverse order of the valences of the vanadium ions: VO2+ (V5+) < VO2+ (V4+) < V3+ < V2+.」(第548頁右欄第44行~第549頁左欄第9行)
(訳)「3 結果と考察
3.1. ナフィオン(R)膜へのバナジウムイオンの吸収等温線
図1は、室温におけるバナジウムイオンのさまざまな酸化状態に対するN115の吸着等温線を示している。・・・・・・バナジウムイオンのナフィオン(R)に対するこれらの親和性の値は、高価数原子よりも低価数原子の方が大きい。この親和性は初期値であり、参考文献17、18に記載されているように、ナフィオン(R)、ゴアセレクト、セレミオンを0.1 MのVO2+ (V5+)に浸したときに長期間にわたって変化する可能性があります。さらに、等温線は、バナジウムイオンの価数の逆順で、N115に対してより大きな親和性を示している:VO2+ (V5+) < VO2+ (V4+) < V3+ < V2+。」
サ-3「3.2. The ex situ membrane conductivity measurement
Fig. 3 compares the conductivity for VO2+ and V3+ with Na+ and Ca2+ absorbed (or exchanged) in NRE211.・・・・・・However, the greater conductivity loss for V3+ (21%) compared to VO2+ (12%) was observed so that the conductivity loss by more absorption (or ion-exchange) of vanadium ion is more critical reason for the conductivity loss.・・・・・・In summary, vanadium absorption to Nafion(R) membranes leads to a significant loss of conductivity even though less absorption (or exchange) occurred.」(第550頁右欄第6行~第551頁左欄第1行)
(訳)「3.2. ex situ膜伝導率測定
図3は、NRE211に吸着(または交換)されたVO2+ と V3+ の伝導率を Na+ と Ca2+の伝導率と比較したものです。・・・・・・しかしながら、VO2+(12%)と比較してV3+(21%)の方が導電性損失が大きいことが観察された。バナジウムイオンのより多くの吸着(またはイオン交換)による導電性損失が、導電性損失のより重要な理由であることがわかる。・・・・・・要約すると、ナフィオン(R)膜へのバナジウムの吸収は、たとえ吸収(または交換)が少ないとしても、導電性の著しい損失をもたらす。」
サ-4「
」
(訳)
「縦軸:N115中のカチオンの等価イオン分率
横軸:酸溶液中のカチオンの等価イオン分率
図1 ナフィオン(R)のバナジウムイオンについての吸着等温線」
サ-5「
」
(訳)
「縦軸:導電率「ms/cm]
横軸:RH[%]
図3 VO2+ (V4+)、 V3+ 、 Na+ 及び Ca2+についてのナフィオン(R)の膜導電率の比較
シ 甲第18号証
シ-1「Vanadyl influence on membrane's conductivity. - The conductivity of Nafion was measured after membrane samples were equilibrated in 0.1 mol・dm-3 total sulfate solutions of different vanadyl/proton fractions (Figure 10).」(F1045頁左欄第8から11行)
(訳)「バナジルが膜の導電性に及ぼす影響-異なるバナジル/プロトン比において0.1mol・dm-3の全硫酸塩溶液中で膜サンプルを平衡化した後に、ナフィオンの伝導率を測定した(図10)。」
シ-2「
」
(訳)
「縦軸:膜導電率 S/cm
横軸:0.1mol・dm-3の全硫酸塩溶液におけるVO2+のSO42-に対する比率
図10 0.1mol・dm-3の全硫酸塩溶液における硫酸バナジル/硫酸で平衡化したナフィオン117の導電率。バナジルはナフィオンの導電率を減少させる効果があります。」
(5)当審の判断
(5)-1 取消理由、予告1及び予告2について
ア 特許法第36条第6項第2号について
(ア)本件発明1は、「100mA/cm2を超える電流密度」「の下で前記膜の面積比抵抗は、425mΩ・cm2未満であ」るとの発明特定事項を含むものである。
(イ)ここで、「面積比抵抗」について、本件発明1では、上記(ア)のとおり特定されており、本件明細書には、「約100mA/cm2を超える平均電流密度(例えば、約200mA/cm2より大きい)で動作されるフロー電池セル20の面積比抵抗が約425mΩ・cm2(約2742mΩ・in2)未満に選択される」(【0020】)と記載されており、これらの記載からすると、「面積比抵抗」は「約100mA/cm2を超える平均電流密度(例えば、約200mA/cm2より大きい)で動作」している際に測定するといえるものの、「面積比抵抗」の具体的な測定条件及び測定手段が、本件発明1で特定されていないし、本件明細書にも記載されていない。
(ウ)そこで、本件発明1または本件明細書に、「面積比抵抗」の具体的な測定条件(特に、電解液の種類、濃度や充電率)及び測定手段が特定されていなくても、上記(ア)の発明特定事項が明確であるか否かを、以下検討する。
<電解液の種類、濃度について>
(エ)上記(4)のア-5より、2MのH2SO4と混合した1.6MのVOSO4水溶液中で、シングルセルでの測定で、温度23℃±1.5℃において、SOCが60~50%で電流密度が18mA/cm2に設定されている放電モードでEIS法によって測定した値で、レドックスフロー電池の膜の面積比抵抗は、FS-930が290mOhm・cm2であるのに対し、上記(4)のイ-4より、レドックスフロー電池のイオン交換膜に用いるfumasep(R) FS-930について、0.5Mの硫酸中における面積抵抗が0.03Ω・cm2より低い。
(オ)また、上記(4)のア-5より、2MのH2SO4と混合した1.6MのVOSO4水溶液中で、シングルセルでの測定で、温度23℃±1.5℃において、SOCが60~50%で電流密度が18mA/cm2に設定されている放電モードでEIS法によって測定した値で、レドックスフロー電池の膜の面積比抵抗は、F-930-RFDが520mOhm・cm2であるのに対し、上記(4)のウ-4より、レドックスフロー電池のイオン交換膜に用いるfumasep(R) F-930-rfdについて、0.5Mの硫酸中における面積抵抗が、受け入れたままのものは0.06Ω・cm2であり、活性化されたものは0.08Ω・cm2である。
(カ)さらに、上記(4)のア-5より、2MのH2SO4と混合した1.6MのVOSO4水溶液中で、シングルセルでの測定で、温度23℃±1.5℃において、SOCが60~50%で電流密度が18mA/cm2に設定されている放電モードでEIS法によって測定した値で、レドックスフロー電池の膜の面積比抵抗は、F-1075-PKが650mOhm・cm2であるのに対し、上記(4)のエ-3より、レドックスフロー電池のイオン交換膜に用いるfumasep(R) F-1075-PKについて、0.5Mの硫酸中における面積抵抗が0.15Ω・cm2であり、0.5Mの硫酸及び0.4Mの硫酸バナジル中における面積抵抗が0.5-0.6Ω・cm2である。
(キ)そうすると、上記(エ)~(カ)によれば、レドックスフロー電池に用いる同一の膜について、異なる測定条件で面積比抵抗を測定した場合に、異なる値となるといえるから、本件発明1の「面積比抵抗」は、測定する際の電解液の種類、濃度によって、変化するといえる。
(ク)この点について、特許権者は意見書1において、「本件特許の請求項1に記載の「フロー電池」は、当該請求項に記載の構成に従って完成させ、作動させた場合に、膜の面積比抵抗が「425mΩ・cm2未満」となることを明確に特定しています。つまり、フロー電池の任意の作動条件下で、請求項1に記載の構成を有する「膜」が、125μm未満の厚さ、100mA/cm2を越える電流密度で、425mΩ・cm2未満の面積比抵抗を満たしていればよく、本件特許の請求項1の記載は十分に明確であるものと思料します。尚、本件明細書は、こうした膜の「面積比抵抗」の測定方法についても具体的に記載しています(明細書の段落[0017]~[0020]参照)」(第3頁第8~16行)と述べている。
(ケ)確かに、本件発明1は、測定条件として、「100mA/cm2を超える電流密度」「の下で前記膜の面積比抵抗は、425mΩ・cm2未満であ」るとの発明特定事項を含むものである。
(コ)また、本件発明1の「フロー電池」は、「膜を湿潤させる、可逆的なレドックス対の反応物を有する溶液」「を備え」るものであり、当該溶液とは、技術常識によれば、所定の濃度を有する所定の電解液を意味するのは明らかであるところ、「100mA/cm2を超える電流密度」「の下で」の「425mΩ・cm2未満の面積比抵抗」とは、当該所定の濃度を有する所定の電解液を用いて、上記(ケ)の測定条件で測定した場合の「面積比抵抗」であるといえる。
(サ)そうすると、上記(エ)~(キ)で検討したとおり、測定する際の電解液の種類、濃度によって、「面積比抵抗」が変化することが事実であるとしても、「100mA/cm2を超える電流密度」「の下で」「425mΩ・cm2未満の面積比抵抗」となるような電解液を用いた「フロー電池」のみが、本件特許発明1の技術的範囲に含まれることとなる。
(シ)したがって、請求項1の「面積比抵抗」を測定する際の電解液の種類及び濃度については、請求項1にその特定がなくても、本件発明1は明確でないとはいえない。
<充電率について>
(ス)申立人は、甲17及び甲18を提出し、申立人意見書において、「フロー電池の充電率の変化に伴って(すなわち、電解液中における各バナジウムイオンの含有率の変化に伴って)、イオン交換膜へのバナジウムイオンの吸着量の変化に起因して、イオン交換膜の導電率が変化します」と主張している。
(セ)ここで、甲17には、上記(4)のサ-2のように、「等温線は、バナジウムイオンの価数の逆順で、N115に対してより大きな親和性を示している:VO2+ (V5+) < VO2+ (V4+) < V3+ < V2+」と記載され、上記(4)のサ-3のように、「ナフィオン(登録商標)膜へのバナジウムの吸収は、たとえ吸収(または交換)が少ないとしても、導電性の著しい損失をもたらす」と記載されている。
(ソ)しかしながら、上記(4)のサ-1には、「未処理およびバナジウム吸収NRE211についての膜導電率は、80℃のセル温度で直流電流を適用することにより、一定の相対湿度(RH)の10値(すなわち、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95%)で測定した」と記載されているように、上記(セ)の「等温線」は、「一定の相対湿度(RH)の10値」で「測定した」もの(すなわち、ex situ)であって、電解液のような液体に浸して膜導電率を測定したもの(すなわち、in situ)ではないから、電解液中における各バナジウムイオンの含有率の変化に伴って、イオン交換膜の導電率が変化するとまではいえない。
(タ)また、甲18には、上記(4)のシ-2のように、硫酸塩の液相中におけるVO2+のSO42-に対する比率に対する膜の導電率が示されており、このグラフによれば、VO2+のSO42-に対する比率が高くなるのに伴い、膜の導電率が低くなっていることが読み取れる。
(チ)しかしながら、上記(4)のシ-2のグラフからは、バナジウムイオンの価数が変化することに伴い、膜の導電率が変化するかは不明であるから、電解液中における各バナジウムイオンの含有率の変化に伴って、イオン交換膜の導電率が変化するとまではいいきれない。
(ツ)そうすると、上記(セ)~(チ)の検討によれば、甲17及び甲18に記載された事項から、電解液中における各バナジウムイオンの含有率の変化に伴って、イオン交換膜の導電率が変化するとまではいいきれないから、本件発明1において、「面積比抵抗」を測定する際の充電率が特定されていなくても、本件発明1は明確でないとはいえない。
<測定方法について>
(テ)「面積比抵抗」の測定方法としては、一応、甲4-1号証に記載された、電気化学インピーダンス分光法(上記(4)ア-2の「EIS測定」がこれに相当。)が周知であるところ、電気化学インピーダンス分光法による「面積比抵抗」の測定方法について、申立人は、回答書において、次の(ト)~(ニ)の主張をしている(第2頁第19行~第4頁最終行)。
(ト)電気化学インピーダンス分光法による、膜の「面積比抵抗」の測定は、通常、白金電極を膜に接触させて行うところ、水素過電圧が低い白金(上記(4)ケ-1参照。)を、プロトンが存在するバナジウム電解液中に入れると、白金電極上で水素が発生し、膜と白金との直接的な接触が困難となり、膜の「面積比抵抗」の再現性のある測定が困難となると考えられる。これは、電解液の充電率が高くなるほど、電解液中の水素イオン濃度が増え、発生する水素が多くなるから、顕著になると考えられる。
(ナ)また、膜の抵抗は膜中におけるプロトンの移動度により決定されるところ、上記(ト)で述べたように、水素ガスが発生すると、水素ガスの発生量に応じて電解液中のプロトン濃度が変化し、膜の抵抗の測定結果も変化することとなるから、「フロー電池の任意の作動条件下」での膜の「面積比抵抗」の再現性のある測定・算出は困難である。
(ニ)さらに、電気化学インピーダンス分光法を用いた、膜の「面積比抵抗」の測定方法として、膜に対して交流を印加することによりインピーダンスの測定を行う方法が採用されている(上記(4)コ-1及びコ-2参照。)ところ、フロー電池が作動している状態では、直流電流が膜に流れているから、印加した交流にフロー電池の作動による直流電流が重畳されることとなり、膜の「面積比抵抗」の測定に再現性が失われることとなる。
(ヌ)しかしながら、特許権者が意見書2において主張するように、膜のイオン抵抗および面積比抵抗の測定には、電気化学インピーダンス分光法以外に、溶液中(in situ)での常識的な測定方法として、電流遮断法や高周波抵抗法などが挙げられ(第3頁第1行~第4頁最後から3行)、例えば、電流遮断法による測定では、「フロー電池の任意の作動条件下」での膜の「面積比抵抗」の再現性のある測定・算出を十分に行うことができると考えられる。
(ネ)また、膜の「面積比抵抗」の測定を、電気化学インピーダンス分光法、電流遮断法、高周波抵抗法で行った場合に、測定方法によって測定結果に大きな差異が生ずるとの根拠もない。
(ノ)そうすると、本件発明1の「100mA/cm2を超える電流密度」「の下で前記膜の面積比抵抗は、425mΩ・cm2未満であ」るとの発明特定事項について、「面積比抵抗」について具体的な測定方法が特定できなくても、溶液中での面積比抵抗の測定方法は、当業者には技術常識の範囲内の事項であるといえるから、当該発明特定事項が明確でないとはいえない。
(ハ)したがって、本件発明1及びその引用発明である本件発明2~11は、明確でないとはいえないから、本件の請求項1~11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
(5)-2 取消理由として採用しなかった申立理由について
ア 特許法第29条第2項について
(ア)甲6に記載された発明
(ア)-1 上記(4)のオには、「レドックスフロー型二次電池」について、記載されている。
(ア)-2 上記(4)のオの【0026】より、「レドックスフロー型二次電池」は、イオン交換膜として旭硝子社製「ニューセレミオン TYPE-2」(アニオン系イオン交換膜)を、電解液としてバナジウム硫酸溶液(2M V2+~V5+/2M H2SO4)を、複層多孔質電極として、隔膜側高表面積多孔質電極(フェルト状炭素繊維)及び集電板側低表面積多孔質電極(フェルト状炭素繊維)を設置した電池セルを備えたものである。
(ア)-3 上記(4)のオの【0026】より、「レドックスフロー型二次電池」は、電流密度130mA/cm2で充放電可能である。
(ア)-4 上記(4)のオの【0026】より、「レドックスフロー型二次電池」において、複層多孔質電極は液透過性である。
(ア)-5 上記(ア)-1~4より、甲6には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「イオン交換膜として旭硝子社製「ニューセレミオン TYPE-2」(アニオン系イオン交換膜)を、電解液としてバナジウム硫酸溶液(2M V2+~V5+/2M H2SO4)を、複層多孔質電極として、隔膜側高表面積多孔質電極(フェルト状炭素繊維)及び集電板側低表面積多孔質電極(フェルト状炭素繊維)を設置した電池セルを備えたものであり、
電流密度130mA/cm2で充放電可能であり、
複層多孔質電極は液透過性である、
レドックスフロー型二次電池。」
(イ)甲7に記載された技術事項
(イ)-1 上記(4)のカには、「レドックスフロー電池エネルギー貯蔵システム」について、記載されている。
(イ)-2 上記(4)のカの[0039]には、「セル層48は3個の独立したセル52、54、56を含み、」「3セルのレドックスフロー電池セルレイヤアセンブリ48において、反応物質の注入流34、36近傍の第1のセル52は、電池セルレイヤアセンブリに対する入力において電解液の充電状況に関してより高い状態でより大きな効率を発揮するよう構造的物質的に構成され」、「電解液が第1のセル52を通過した後、第2のセル54は、存在する電解液の充電状況の中間状態で効率的な動作を提供するような構造的および材料特性を有するよう構成され」、「電解液が、第1及び第2のセル52、54において反応した後、第3のセル56は、電解液中に存在する充電状況のより低い状態において効率的な動作を提供するような構造および内部特性を有するよう構成されてもよい」ことが記載されている。
(イ)-3 上記(4)の[0042]には、「各電池セル内において予想される充電状態に対して、拡散選択性及び電気抵抗が適切に変化するように、分離膜12は異なる材料から作ら」ることが記載されている。
(イ)-4 上記(4)のカの[0112]には、「3セル構成の代表的なスタックデザインパラメータ及び性能が、以下の表1に列挙されている」ことが記載されており、上記(4)のカの表1には、90→62%の充電率のセルには面積比抵抗が0.8ohm・cm2のセパレータ膜が形成されており、62→34%の充電率のセルには面積比抵抗が0.5ohm・cm2のセパレータ膜が形成されており、34→6%の充電率のセルには面積比抵抗が0.2ohm・cm2のセパレータ膜が形成されていることが示されている。
(イ)-5 そして、上記(イ)-2より、第1のセル52は、反応物質、すなわち電解液の注入流34、36近傍にあり、電解液は、第1のセル52を通過した後第2のセル54に注入され、電解液が、第1及び第2のセル52、54を通過した後、第3のセル56はに注入されるように構成されている。
(イ)-6 そうすると、(イ)-4及び5より、技術常識に照らせば、90→62%の充電率のセルが第1のセル52であり、62→34%の充電率のセルが第2のセル54であり、34→6%の充電率のセルが第3のセル56であるといえる。
(イ)-7 したがって、(イ)-6を(イ)-4に当てはめると、90→62%の充電率の第1のセル52には面積比抵抗が0.8ohm・cm2のセパレータ膜が形成されており、62→34%の充電率の第2のセル54には面積比抵抗が0.5ohm・cm2のセパレータ膜が形成されており、34→6%の充電率の第3のセル56には面積比抵抗が0.2ohm・cm2のセパレータ膜が形成されている。
(イ)-8 上記(イ)-1~7より、甲7には、次の事項が記載されていると認められる。
「レドックスフロー電池エネルギー貯蔵システムにおいて、
セル層48は3個の独立したセル52、54、56を含み、3セルのレドックスフロー電池セルレイヤアセンブリ48において、反応物質の注入流34、36近傍の第1のセル52は、電池セルレイヤアセンブリに対する入力において電解液の充電状況に関してより高い状態でより大きな効率を発揮するよう構造的物質的に構成され、電解液が第1のセル52を通過した後、第2のセル54は、存在する電解液の充電状況の中間状態で効率的な動作を提供するような構造的および材料特性を有するよう構成され、電解液が、第1及び第2のセル52、54において反応した後、第3のセル56は、電解液中に存在する充電状況のより低い状態において効率的な動作を提供するように構造および内部特性を有するよう構成され、
各電池セル内において予想される充電状態に対して、拡散選択性及び電気抵抗が適切に変化するように、分離膜12は異なる材料から作られ、
上記3個の独立したセル52、54、56のうち、90→62%の充電率の第1のセル52には面積比抵抗が0.8ohm・cm2のセパレータ膜が形成されており、62→34%の充電率の第2のセル54には面積比抵抗が0.5ohm・cm2のセパレータ膜が形成されており、34→6%の充電率の第3のセル56には面積比抵抗が0.2ohm・cm2のセパレータ膜が形成されている事項。」
(ウ)甲8に記載された事項
(ウ)-1 上記(4)のキの【0001】及び【0018】より、甲8には、次の事項が記載されていると認められる。
「レドックスフロー型二次電池において、
正極室と負極室とを分離するイオン交換膜が、ポリスルホン樹脂をベースにしたイオン交換膜やフッ素樹脂をベースにしたイオン交換膜であり、
80mA/cm2以上の高電流密度で使用する場合、イオン交換樹脂層の厚さが20μm~150μmである事項。」
(エ)甲9に記載された事項
(エ)-1 上記(4)のクの【0001】より、甲9には、「固体高分子型燃料電池用膜電極接合体の固体高分子電解質材料」について、記載されている。
(エ)-2 上記(4)のクの請求項1には、「スルホンイミド基を有し、かつ主鎖に脂肪族環構造を有するパーフルオロポリマーからなる電解質材料」が記載されている。
(エ)-3 上記(4)のクの請求項3には、上記(エ)-2の「スルホンイミド基を有し、かつ主鎖に脂肪族環構造を有するパーフルオロポリマー」が、「モノマーAに基づく繰り返し単位と」「モノマーBに基づく繰り返し単位を含む共重合体からなる」ことが記載されている。
(エ)-4 上記(4)のクの請求項3には、上記(エ)-3の「モノマーA」が「ラジカル重合により、主鎖に環構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを与えるパーフルオロモノマー」であること、及び、「モノマーB」が「CF2=CF-(OCF2CFY1)m-Op-(CF2)n-SO2Y2で表されるパーフルオロビニルエーテル」であることが記載されている。
(エ)-5 上記(エ)-1~4より、甲9には、次の事項が記載されていると認められる。
「固体高分子型燃料電池用膜電極接合体の固体高分子電解質材料において、
スルホンイミド基を有し、かつ主鎖に脂肪族環構造を有するパーフルオロポリマーからなり、
モノマーAに基づく繰り返し単位とモノマーBに基づく繰り返し単位を含む共重合体からなり、
モノマーAが、ラジカル重合により、主鎖に環構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを与えるパーフルオロモノマーであり、
モノマーBが、CF2=CF-(OCF2CFY1)m-Op-(CF2)n-SO2Y2で表されるパーフルオロビニルエーテルである電解質材料を用いる事項。」
(オ) 本件発明1について
上記(2)-2の申立理由のうち、本件発明1については、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された甲6~甲9の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものであるというものである。
よって、本件発明1の検討においては、本件発明1が、甲6~甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものか否かを検討する。
まず、本件発明1と甲6発明とを対比する。
(オ)-1 甲6発明の「イオン交換膜」、「複層多孔質電極」、「バナジウム硫酸溶液(2M V2+~V5+/2M H2SO4)」、「レドックスフロー型二次電池」は、本件発明1の「膜」、「第1の電極および第2の電極」、「可逆的なレドックス対の反応物を有する溶液」、「フロー電池」にそれぞれ相当する。
(オ)-2 上記(4)のオの【0014】には、「本発明のレドックス電池の構造は、図1に示すように、イオン交換膜からなる隔膜とその両側に設けられた電解液の通過性を有する炭素繊維電極(正極及び負極)と、更にその外側に設けられた燒結炭素板製のバイポーラ板(集電板)からなり、正極液(例えば、5価/4価バナジウム溶液)及び負極液(例えば、2価/3価バナジウム溶液)はそれぞれ正極タンクと負極タンクから正極と負極に送られる構造となっている」と記載されており、甲6発明の「レドックスフロー型二次電池」は、イオン交換膜からなる隔膜の両側に電解液の通過性を有する炭素繊維電極があるから、甲6発明の「イオン交換膜」は、電解液により湿潤させられているといえる。
そうすると、甲6発明の「イオン交換膜として旭硝子社製「ニューセレミオン TYPE-2」(アニオン系イオン交換膜)を、電解液としてバナジウム硫酸溶液(2M V2+~V5+/2M H2SO4)を、複層多孔質電極として、隔膜側高表面積多孔質電極(フェルト状炭素繊維)及び集電板側低表面積多孔質電極(フェルト状炭素繊維)を設置した電池セルを備えたものであ」る事項は、本件発明1の「第1の電極および第2の電極と、膜と、前記膜を湿潤させる、可逆的なレドックス対の反応物を有する溶液と、を備え」る事項に相当する。
(オ)-3 甲6発明の「電流密度130mA/cm2で充放電可能であ」る事項は、技術常識に照らせば、本件発明1の「膜が、前記第1の電極と前記第2の電極との間において、100mA/cm2を超える電流密度でイオン電流を伝達するように動作可能であ」る事項に相当する。
(オ)-4 甲6発明の「イオン交換膜」は、イオン交換材料を備えていることは明らかである。
(オ)-5 上記(オ)-1~4によれば、本件発明1と甲6発明とは、
「第1の電極および第2の電極と、
膜と、
前記膜を湿潤させる、可逆的なレドックス対の反応物を有する溶液と、
を備え、
前記膜が、前記第1の電極と前記第2の電極との間において、100mA/cm2を超える電流密度でイオン電流を伝達するように動作可能であり、
前記膜が、第1のイオン交換材料を備えた、フロー電池。」で一致し、次のa~cの点で相違する。
(相違点)
a 「100mA/cm2を超える電流密度」「の下で前記膜の面積比抵抗」が、本件発明1は、「425mΩ・cm2未満であ」るのに対し、甲6発明は、イオン交換膜の面積比抵抗が不明である点。
b 「膜」の「厚さ」が、本件発明1は、「125μm未満」であるのに対し、甲6発明は、イオン交換膜の厚さが不明である点。
c 「第1のイオン交換材料」が、本件発明1は、「パーフルオロアルキル・スルホンイミド・イオノマ」であるのに対し、甲6発明は、どのようなイオン交換材料を備えているのか不明である点。
(オ)-6 まず、上記aの相違点から検討する。
上記(イ)-8のとおり、甲7には、「レドックスフロー電池エネルギー貯蔵システムにおいて、セル層48は3個の独立したセル52、54、56を含み、3セルのレドックスフロー電池セルレイヤアセンブリ48において、反応物質の注入流34、36近傍の第1のセル52は、電池セルレイヤアセンブリに対する入力において電解液の充電状況に関してより高い状態でより大きな効率を発揮するよう構造的物質的に構成され、電解液が第1のセル52を通過した後、第2のセル54は、存在する電解液の充電状況の中間状態で効率的な動作を提供するような構造的および材料特性を有するよう構成され、電解液が、第1及び第2のセル52、54において反応した後、第3のセル56は、電解液中に存在する充電状況のより低い状態において効率的な動作を提供するように構造および内部特性を有するよう構成され、各電池セル内において予想される充電状態に対して、拡散選択性及び電気抵抗が適切に変化するように、分離膜12は異なる材料から作られ、上記3個の独立したセル52、54、56のうち、90→62%の充電率の第1のセル52には面積比抵抗が0.8ohm・cm2のセパレータ膜が形成されており、62→34%の充電率の第2のセル54には面積比抵抗が0.5ohm・cm2のセパレータ膜が形成されており、34→6%の充電率の第3のセル56には面積比抵抗が0.2ohm・cm2のセパレータ膜が形成されている事項」が記載されている。
すなわち、甲7には、レドックスフロー電池エネルギー貯蔵システムにおいて、セル層48は3個の独立したセル52、54、56を含み、そのうち、34→6%の充電率の第3のセル56には面積比抵抗が0.2ohm・cm2の(200mΩ・cm2)膜が形成されている事項が記載されており、この面積比抵抗は、上記aの相違点に係る本件発明1の発明特定事項である「膜の面積比抵抗は、425mΩ・cm2未満であ」る事項を満たしている。
しかしながら、甲7に記載された面積比抵抗は、どのような電流密度で動作しているときのものか不明であるし、甲6発明の膜の面積比抵抗において、34→6%の充電率の第3のセル56の面積比抵抗0.2ohm・cm2を適用する際に、90→62%の充電率の第1のセル52の面積比抵抗、62→34%の充電率の第2のセル54の面積比抵抗、34→6%の充電率の第3のセル56の面積比抵抗のうち、特に、34→6%の充電率の第3のセル56の面積比抵抗を適用する動機付けが見当たらない。
また、甲6発明において、甲8,甲9の事項を適用したとしても、上記aの相違点に係る本件発明1の発明特定事項を得ることはできない。
そうすると、上記aの相違点に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6~甲9に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)-7 上記(オ)-6のとおり、本件発明1は、甲6~甲9に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないが、念のため、上記cの相違点についても検討を行う。
上記(エ)-5のとおり、甲9には、「固体高分子型燃料電池用膜電極接合体の固体高分子電解質材料において、スルホンイミド基を有し、かつ主鎖に脂肪族環構造を有するパーフルオロポリマーからなり、モノマーAに基づく繰り返し単位とモノマーBに基づく繰り返し単位を含む共重合体からなり、モノマーAが、ラジカル重合により、主鎖に環構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを与えるパーフルオロモノマーであり、モノマーBが、CF2=CF-(OCF2CFY1)m-Op-(CF2)n-SO2Y2で表されるパーフルオロビニルエーテルである電解質材料を用いる事項」が記載されている。
そして、該電解質材料は、イオン交換材料であるし、「スルホンイミド基を有し、」「繰り返し単位」である「モノマーAが、」「パーフルオロモノマー」であるから、本件発明1の「パーフルオロアルキル・スルホンイミド・イオノマ」に相当する。
しかしながら、甲9に記載され「固体高分子電解質材料」は、「固体高分子型燃料電池用膜電極接合体」に用いるものであって、甲6発明のように、「レドックスフロー型二次電池」に用いるものではない。
そして、「固体高分子型燃料電池用膜電極接合体」と「レドックスフロー型二次電池」とでは、セルを流れる主体が、前者は気体であるのに対し、後者は液体と異なるものであり、電解質材料に気体が接触するか、液体が接触するかの違いがあるから、甲6発明の「レドックスフロー型二次電池」において、甲9に記載された「固体高分子型燃料電池用膜電極接合体の固体高分子電解質材料」を直ちに適用することはできない。
そうすると、上記cの相違点に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、上記bの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6~甲9に記載された発明基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(カ)本件発明2~11について
本件発明2~11は、本件発明1を直接的または間接的に引用するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明2~11は甲6発明と少なくとも上記a及びcの相違点で相違するものである。
そうすると、上記(オ)で検討した理由と同様の理由で、本件発明2~11は、甲6~甲11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない
また、他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700813