特許異議申立
2017-700331
エンジンの冷却装置
- 審判番号
- 2017-700331
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-002764
- 登録番号
- 特許第6004018号(P6004018)
- 請求日
- 2017年04月04日
- 審決日
- 2018年04月12日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】マツダ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人前田特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 デンソー
- 【異議申立人代理人】矢作 和行
- 審判長/審判官
- 審判長 冨岡 和人
- 審判官 金澤 俊郎
- 審判官 松下 聡
- 分類
- P1652.113-YAA(F01P) / P1652.121-YAA(F01P)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6004018号発明「エンジンの冷却装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6004018号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-4〕、5について訂正することを認める。
特許第6004018号の請求項5に係る特許を維持する。
特許第6004018号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6004018号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年9月16日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年4月4日に特許異議申立人 株式会社デンソー(以下、「特許異議申立人」という。)より請求項1及び5に対して特許異議の申立てがされ、平成29年5月17日付けで審尋がされ、平成29年6月1日付けで回答書が提出され、平成29年6月15日付けで取消理由通知がされ、平成29年8月18日付けで意見書の提出及び同日付け訂正請求がされ、平成29年9月7日付けで訂正請求があった旨の通知がされ、平成29年10月10日付けで特許異議申立人から意見書が提出され、平成29年12月8日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成30年2月9日付けで意見書の提出及び同日付け訂正請求がされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を削除する訂正をすることを請求する(訂正事項1)。
(2)特許権者は、特許請求の範囲の請求項2を以下の事項により特定されるとおりの請求項2として訂正することを請求する(訂正事項2)。なお、下線部は訂正箇所を示す(以下同様。)。
「ウォータポンプから吐出されかつエンジン本体部のウォータジャケットを流通した後の冷却液を、ラジエータを経由して該ウォータポンプに流入させるためのラジエータ経路と、該冷却液を、該ラジエータをバイパスして該ウォータポンプに流入させるためのラジエータバイパス経路とを備えた、エンジンの冷却装置であって、
上記エンジン本体部の冷却液流出部の近傍に設けられ、回転弁体の回転位置の制御により、該冷却液流出部から流出した冷却液の、上記ラジエータ経路及び上記ラジエータバイパス経路への流れを制御するロータリ式流量制御弁を更に備え、
上記ロータリ式流量制御弁は、上記回転弁体を収容するハウジングを有し、
上記ハウジング内には、
上記ラジエータ経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータ経路に流すためのラジエータ経路接続路と、
感温部に接触する冷却液の温度に応じて開閉するサーモスタット弁が設けられたサーモスタット弁配設路と、
上記ラジエータバイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータバイパス経路に流すためのラジエータバイパス経路接続路と、
上記サーモスタット弁の感温部が設けられ、上記回転弁体の回転位置に関係なく上記冷却液流出部からの冷却液を該感温部へ流通させるための流通路と、
が配設されており、
上記ラジエータバイパス経路は、ラジエータ以外の熱交換器が配設された第1バイパス経路と、熱交換器が配設されていない第2バイパス経路と、該第1バイパス経路及び第2バイパス経路が接続されるとともに、上記ウォータポンプに接続されるリターン路とを有し、
上記ハウジング内の上記ラジエータバイパス経路接続路は、
上記第1バイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該第1バイパス経路に流すための第1バイパス経路接続路と、
上記第2バイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該第2バイパス経路に流すための第2バイパス経路接続路と、
で構成され、
上記流通路は、上記第2バイパス経路接続路、上記第2バイパス経路、又は上記リターン路に接続されることを特徴とするエンジンの冷却装置。」(請求項2の記載を引用する請求項3及び4も同様に訂正する。)
(3)特許権者は、特許請求の範囲の請求項5を以下の事項により特定されるとおりの請求項5として訂正することを請求する(訂正事項3)。
「ウォータポンプから吐出されかつエンジン本体部のウォータジャケットを流通した後の冷却液を、ラジエータを経由して該ウォータポンプに流入させるためのラジエータ経路と、該冷却液を、該ラジエータをバイパスして該ウォータポンプに流入させるためのラジエータバイパス経路とを備えた、エンジンの冷却装置であって、
上記エンジン本体部の冷却液流出部の近傍に設けられ、回転弁体の回転位置の制御により、該冷却液流出部から流出した冷却液の、上記ラジエータ経路及び上記ラジエータバイパス経路への流れを制御するロータリ式流量制御弁を更に備え、
上記ロータリ式流量制御弁は、上記回転弁体を収容するハウジングを有し、
上記ハウジング内には、
上記ラジエータ経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータ経路に流すためのラジエータ経路接続路と、
感温部に接触する冷却液の温度に応じて開閉するサーモスタット弁が設けられたサーモスタット弁配設路と、
上記ラジエータバイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータバイパス経路に流すためのラジエータバイパス経路接続路と、
上記サーモスタット弁の感温部が設けられ、上記回転弁体の回転位置に関係なく上記冷却液流出部からの冷却液を該感温部へ流通させるための流通路と、
が配設されており、
上記流通路に、上記回転弁体の回転位置の制御に用いられる冷却液温センサが配設され、
上記サーモスタット弁の感温部と上記冷却液温センサとが配設された上記流通路には、上記エンジン本体部の上記冷却液流出部から排出され、上記回転弁体の内側に流入した後の冷却液が流入されることを特徴とするエンジンの冷却装置。」
(4)特許権者は、願書に添付した明細書の段落【0008】を以下のとおり訂正することを請求する(訂正事項4)。
「上記の目的を達成するために、本発明では、ウォータポンプから吐出されかつエンジン本体部のウォータジャケットを流通した後の冷却液を、ラジエータを経由して該ウォータポンプに流入させるためのラジエータ経路と、該冷却液を、該ラジエータをバイパスして該ウォータポンプに流入させるためのラジエータバイパス経路とを備えた、エンジンの冷却装置を対象として、上記エンジン本体部の冷却液流出部の近傍に設けられ、回転弁体の回転位置の制御により、該冷却液流出部から流出した冷却液の、上記ラジエータ経路及び上記ラジエータバイパス経路への流れを制御するロータリ式流量制御弁を更に備え、上記ロータリ式流量制御弁は、上記回転弁体を収容するハウジングを有し、上記ハウジング内には、上記ラジエータ経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータ経路に流すためのラジエータ経路接続路と、感温部に接触する冷却液の温度に応じて開閉するサーモスタット弁が設けられたサーモスタット弁配設路と、上記ラジエータバイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータバイパス経路に流すためのラジエータバイパス経路接続路と、上記サーモスタット弁の感温部が設けられ、上記回転弁体の回転位置に関係なく上記冷却液流出部からの冷却液を該感温部へ流通させるための流通路と、が配設されており、上記ラジエータバイパス経路は、ラジエータ以外の熱交換器が配設された第1バイパス経路と、熱交換器が配設されていない第2バイパス経路と、該第1バイパス経路及び第2バイパス経路が接続されるとともに、上記ウォータポンプに接続されるリターン路とを有し、上記ハウジング内の上記ラジエータバイパス経路接続路は、上記第1バイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該第1バイパス経路に流すための第1バイパス経路接続路と、上記第2バイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該第2バイパス経路に流すための第2バイパス経路接続路と、で構成され、上記流通路は、上記第2バイパス経路接続路、上記第2バイパス経路、又は上記リターン路に接続される、という構成とした。」
(5)特許権者は、願書に添付した明細書の段落【0010】を削除する訂正を請求する(訂正事項5)。
(6)特許権者は、願書に添付した明細書の段落【0016】を以下のとおり訂正することを請求する(訂正事項6)。
「本発明の別の態様では、ウォータポンプから吐出されかつエンジン本体部のウォータジャケットを流通した後の冷却液を、ラジエータを経由して該ウォータポンプに流入させるためのラジエータ経路と、該冷却液を、該ラジエータをバイパスして該ウォータポンプに流入させるためのラジエータバイパス経路とを備えた、エンジンの冷却装置を対象として、上記エンジン本体部の冷却液流出部の近傍に設けられ、回転弁体の回転位置の制御により、該冷却液流出部から流出した冷却液の、上記ラジエータ経路及び上記ラジエータバイパス経路への流れを制御するロータリ式流量制御弁を更に備え、上記ロータリ式流量制御弁は、上記回転弁体を収容するハウジングを有し、上記ハウジング内には、上記ラジエータ経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータ経路に流すためのラジエータ経路接続路と、感温部に接触する冷却液の温度に応じて開閉するサーモスタット弁が設けられたサーモスタット弁配設路と、上記ラジエータバイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータバイパス経路に流すためのラジエータバイパス経路接続路と、上記サーモスタット弁の感温部が設けられ、上記回転弁体の回転位置に関係なく上記冷却液流出部からの冷却液を該感温部へ流通させるための流通路と、が配設されており、上記流通路に、上記回転弁体の回転位置の制御に用いられる冷却液温センサが配設され、上記サーモスタット弁の感温部と上記冷却液温センサとが配設された上記流通路には、上記エンジン本体部の上記冷却液流出部から排出され、上記回転弁体の内側に流入した後の冷却液が流入される。」
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1の、請求項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2の、請求項2に係る訂正は、引用関係の解消を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項3の、請求項5に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正前の請求項1ないし5は、請求項2ないし5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項ごとにされたものである。
訂正事項4及び5の、明細書に係る補正は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1ないし3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1、〔2-4〕、5について訂正を認める。
また、上記訂正請求による訂正事項4及び5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の明細書について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項5に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「ウォータポンプから吐出されかつエンジン本体部のウォータジャケットを流通した後の冷却液を、ラジエータを経由して該ウォータポンプに流入させるためのラジエータ経路と、該冷却液を、該ラジエータをバイパスして該ウォータポンプに流入させるためのラジエータバイパス経路とを備えた、エンジンの冷却装置であって、
上記エンジン本体部の冷却液流出部の近傍に設けられ、回転弁体の回転位置の制御により、該冷却液流出部から流出した冷却液の、上記ラジエータ経路及び上記ラジエータバイパス経路への流れを制御するロータリ式流量制御弁を更に備え、
上記ロータリ式流量制御弁は、上記回転弁体を収容するハウジングを有し、
上記ハウジング内には、
上記ラジエータ経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータ経路に流すためのラジエータ経路接続路と、
感温部に接触する冷却液の温度に応じて開閉するサーモスタット弁が設けられたサーモスタット弁配設路と、
上記ラジエータバイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータバイパス経路に流すためのラジエータバイパス経路接続路と、
上記サーモスタット弁の感温部が設けられ、上記回転弁体の回転位置に関係なく上記冷却液流出部からの冷却液を該感温部へ流通させるための流通路と、
が配設されており、
上記流通路に、上記回転弁体の回転位置の制御に用いられる冷却液温センサが配設され、
上記サーモスタット弁の感温部と上記冷却液温センサとが配設された上記流通路には、上記エンジン本体部の上記冷却液流出部から排出され、上記回転弁体の内側に流入した後の冷却液が流入されることを特徴とするエンジンの冷却装置。」
2 取消理由(決定の予告)の概要
訂正前の請求項5に係る特許に対して平成29年12月8日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項5に係る特許は、取り消されるべきものである。
3 甲号証の記載
甲第1号証(特開2013-68162号公報)には、段落【0026】ないし【0028】、【0030】ないし【0036】、【0038】ないし【0041】、【0043】ないし【0046】、及び【0051】ないし【0053】並びに図1ないし図9等の記載からみて、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認られる。(なお、[ ]内には、相当又は対応する本件発明の発明特定事項を記載した。以下、同様。)「ウォータポンプ2[ウォータポンプ]から吐出されかつエンジン1[エンジン本体部]のウォータジャケット1a[ウォータジャケット]を流通した後の冷却水[冷却液]を、ラジエータ3[ラジエータ]を経由して該ウォータポンプ2[ウォータポンプ]に流入させるためのメイン流路4[ラジエータ経路]と、該冷却水[冷却液]を、該ラジエータ3[ラジエータ]をバイパスして該ウォータポンプ2[ウォータポンプ]に流入させるためのサブ流路6a、7a[ラジエータバイパス経路]とを備えた、エンジン冷却システム[エンジンの冷却装置]であって、
上記エンジン1[エンジン本体部]のウォータジャケット1aの開口部[冷却液流出部]の近傍に設けられ、ロータ12[回転弁体]の回転位置の制御により、該ウォータジャケット1aの開口部[冷却液流出部]から流出した冷却水[冷却液]の、上記メイン流路4[ラジエータ経路]及び上記サブ流路6a、7a[ラジエータバイパス経路]への流れを制御する冷却水制御バルブ装置10[ロータリ式流量制御弁]を更に備え、
上記冷却水制御バルブ装置10[ロータリ式流量制御弁]は、上記ロータ12[回転弁体]を収容するケーシング20[ハウジング]を有し、
上記ケーシング20[ハウジング]内には、
上記メイン流路4[ラジエータ経路]の上流端に接続され、上記ロータ12[回転弁体]の回転位置の制御により、上記ウォータジャケット1aの開口部[冷却液流出部]からの冷却液を該メイン流路4[ラジエータ経路]に流すためのメイン吐出部26[ラジエータ経路接続路]と、
温度検知媒体42[感温部]に接触する冷却水[冷却液]の温度に応じて開閉するFSバルブ40[サーモスタット弁]が設けられた迂回流路67[サーモスタット弁配設路]と、
上記サブ流路6a、7a[ラジエータバイパス経路]の上流端に接続され、上記ロータ12[回転弁体]の回転位置の制御により、上記ウォータジャケット1aの開口部[冷却液流出部]からの冷却液を該サブ流路6a、7a[ラジエータバイパス経路]に流すためのサブ吐出部28[ラジエータバイパス経路接続路]と、
上記FSバルブ40[サーモスタット弁]の温度検知媒体42[感温部]が設けられ、上記ロータ12[回転弁体]の回転位置に関係なく上記ウォータジャケット1aの開口部[冷却液流出部]からの冷却水[冷却液]を該温度検知媒体42[感温部]へ流通させるための主室部23のバイパス吐出部27近傍部分[流通路]と、
が配設されている、エンジンの冷却装置。」
また、甲第1号証(特に段落【0036】の記載を参照。)には、次の技術(以下、「甲1技術」という。)も記載されている。
「センサにより検知されて制御装置に入力される冷却水温度により、ロータ12がモータにより回転駆動される技術。」
さらに、取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第2号証(特開2014-196708号公報)には、段落【0068】及び【0091】並びに図1ないし14等の記載からみて、次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。
「冷却水Wが常時通水されている第2冷却水流路27に水温センサ102を装着することにより、冷却水Wの水温を適正に検知し、水温センサ102により検知された冷却水Wの水温によりロータリバルブ30を制御する技術。」
4 判断
本件発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「ウォータポンプ2」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件発明における「ウォータポンプ」に相当し、以下同様に、「エンジン1」は「エンジン本体部」に、「ウォータジャケット1a」は「ウォータジャケット」に、「冷却水」は「冷却液」に、「ラジエータ3」は「ラジエータ」に、「サブ流路6a、7a」は「ラジエータバイパス経路」に、「エンジン冷却システム」は「エンジンの冷却装置」に、「ウォータジャケット1aの開口部」は「冷却液流出部」に、「ロータ12」は「回転弁体」に、「冷却水制御バルブ装置10」は「ロータリ式流量制御弁」に、「ケーシング20」は「ハウジング」に、「メイン吐出部26」は「ラジエータ経路接続路」に、「温度検知媒体42」は「感温部」に、「FSバルブ40」は「サーモスタット弁」に、「迂回流路67」は「サーモスタット弁配設路」に、「サブ吐出部28」は「ラジエータバイパス経路接続路」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明における「温度検知媒体42へ流通させるための主室部23のバイパス吐出部27近傍部分」は本件発明における「感温部へ流通させるための流通路」に、「感温部へ流通させるための部分」という限りで共通する。
したがって、本件発明と甲1発明とは、以下の点で一致する。
〔一致点〕
「ウォータポンプから吐出されかつエンジン本体部のウォータジャケットを流通した後の冷却液を、ラジエータを経由して該ウォータポンプに流入させるためのラジエータ経路と、該冷却液を、該ラジエータをバイパスして該ウォータポンプに流入させるためのラジエータバイパス経路とを備えた、エンジンの冷却装置であって、
上記エンジン本体部の冷却液流出部の近傍に設けられ、回転弁体の回転位置の制御により、該冷却液流出部から流出した冷却液の、上記ラジエータ経路及び上記ラジエータバイパス経路への流れを制御するロータリ式流量制御弁を更に備え、
上記ロータリ式流量制御弁は、上記回転弁体を収容するハウジングを有し、
上記ハウジング内には、
上記ラジエータ経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータ経路に流すためのラジエータ経路接続路と、
感温部に接触する冷却液の温度に応じて開閉するサーモスタット弁が設けられたサーモスタット弁配設路と、
上記ラジエータバイパス経路の上流端に接続され、上記回転弁体の回転位置の制御により、上記冷却液流出部からの冷却液を該ラジエータバイパス経路に流すためのラジエータバイパス経路接続路と、
上記サーモスタット弁の感温部が設けられ、上記回転弁体の回転位置に関係なく上記冷却液流出部からの冷却液を該感温部へ流通させるための部分と、
が配設されている、エンジンの冷却装置。」
そして、両者は、次の点で相違する。
〔相違点〕
本件発明においては、「感温部へ流通させるための部分」が「感温部へ流通させるための流通路」であり、「流通路に、回転弁体の回転位置の制御に用いられる冷却液温センサが配設され、上記サーモスタット弁の感温部と上記冷却液温センサとが配設された上記流通路には、上記エンジン本体部の上記冷却液流出部から排出され、上記回転弁体の内側に流入した後の冷却液が流入される」のに対し、甲1発明においては、「感温部へ流通させるための部分」が「温度検知媒体42へ流通させるための主室部23のバイパス吐出部27近傍部分」であり、「バイパス吐出部27近傍部分」がそのような構成を有するかどうか不明である点(以下、「相違点」という。)。
上記相違点について検討する。
甲第1号証には、「センサにより検知されて制御装置に入力される冷却水温度(本件発明における「冷却液温」に相当する。)により、ロータ12がモータにより回転駆動される技術。」(上記「甲1技術」)が記載されている。
しかしながら、甲第1号証には、本件発明における「上記サーモスタット弁の感温部と上記冷却液温センサとが配設された上記流通路には、上記エンジン本体部の上記冷却液流出部から排出され、上記回転弁体の内側に流入した後の冷却液が流入される」ことに相当する事項は記載されていない。
また、甲第2号証には、「冷却水Wが常時通水されている第2冷却水流路27に水温センサ102を装着することにより、冷却水Wの水温を適正に検知し、水温センサ102により検知された冷却水Wの水温によりロータリバルブ30を制御する技術。」(上記「甲2技術」)が記載されている。
しかしながら、甲第2号証にも、本件発明における「上記サーモスタット弁の感温部と上記冷却液温センサとが配設された上記流通路には、上記エンジン本体部の上記冷却液流出部から排出され、上記回転弁体の内側に流入した後の冷却液が流入される」ことに相当する事項は記載されていない。
そして、本件発明は、上記相違点に係る構成を備えることにより、本件明細書に記載された格別な効果を奏するものである。
よって、本件発明は、甲1発明、甲1技術及び甲2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700331