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特許訂正審判

2020-390074

水冷式エンジン冷却装置

審判番号
2020-390074
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2002-089120
登録番号
特許第3917449号(P3917449)
請求日
2020年08月21日
審決日
2020年11月24日
公報発行日
2021年02月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【請求人】マレリ 株式会社
  • 【請求人代理人】特許業務法人後藤特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 金澤 俊郎
  • 審判官 西中村 健一
  • 審判官 鈴木 充
分類
P141 .851-Y (F01P) / P141 .853-Y (F01P) / P141 .856-Y (F01P) / P141 .121-Y (F01P)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項特許法126条5項特許法126条6項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第7項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第3917449号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第3917449号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許第3917449号に係る出願は、平成14年3月27日に特許出願され、平成19年2月16日に特許権の設定登録がされたものであって、令和2年8月21日に本件訂正審判が請求されたものである。 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第3917449号の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち下記1ないし10のとおり訂正することを求めるものである(なお、下線は訂正箇所を示すため請求人が付したものである。)。 1 訂正事項1 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1において「冷却水との熱交換により車室内の空気目標温度に調和する空気調和手段と、」との発明特定事項を追加すると共に、特許請求の範囲の請求項1に「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記オイルクーラに流通させ、」と記載されているのを、「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立し前記流路と並列に接続された他の流路を介して前記オイルクーラに流通させ、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。 2 訂正事項2 本件特許明細書の特許請求の範囲における請求項2を削除する。 3 訂正事項3 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項3において「請求項1または2に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」と記載されているのを、「請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」に訂正する。 4 訂正事項4 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項4において「請求項1または2に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」と記載されているのを、「請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」に訂正する。 5 訂正事項5 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5において「請求項1ないし4に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」と記載されているのを、「請求項1、3、及び4のいずれか一つに記載の水冷式エンジン冷却装置において、」に訂正する。 6 訂正事項6 本件特許明細書の段落【0006】において 「請求項1に記載の発明では、水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させて冷却するラジエータと、 前記ラジエータへの冷却水の流通を冷却水温度に応じて制御するサーモスタットと、 水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換により自動変速機の作動油を調温するオイルクーラと、 前記冷却水温度を検出する水温検出手段と、 を備えた水冷式エンジン冷却装置において、 前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記オイルクーラに流通させ、 前記オイルクーラの作動・停止を切換可能な切換手段と、前記切換手段の切換を制御する切換制御手段を設け、 前記切換制御手段を、検出された水温が、前記サーモスタットが前記ラジエータへ冷却水を流通させる温度より低い予め設定された設定温度未満のときは、前記オイルクーラを停止する指令を前記切換手段に出力し、検出された水温が予め設定された設定温度以上のときは、前記オイルクーラを作動する指令を前記切換手段に出力する手段としたことを特徴とする。」と記載されているのを、 「請求項1に記載の発明では、水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させて冷却するラジエータと、 前記ラジエータへの冷却水の流通を冷却水温度に応じて制御するサーモスタットと、 水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換により自動変速機の作動油を調温するオイルクーラと、 冷却水との熱交換により車室内の空気目標温度に調和する空気調和手段と、 前記冷却水温度を検出する水温検出手段と、 を備えた水冷式エンジン冷却装置において、 前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立し前記流路と並列に接続された他の流路を介して前記オイルクーラに流通させ、 前記オイルクーラの作動・停止を切換可能な切換手段と、前記切換手段の切換を制御する切換制御手段を設け、 前記切換制御手段を、検出された水温が、前記サーモスタットが前記ラジエータへ冷却水を流通させる温度より低い予め設定された設定温度未満のときは、前記オイルクーラを停止する指令を前記切換手段に出力し、検出された水温が予め設定された設定温度以上のときは、前記オイルクーラを作動する指令を前記切換手段に出力する手段としたことを特徴とする。」に訂正する。 7 訂正事項7 本件特許明細書の段落【0007】の記載を削除する。 8 訂正事項8 本件特許明細書の段落【0008】において 「請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段は、前記オイルクーラへの冷却水の循環を停止する冷却水切換弁としたことを特徴とする。」と記載されているのを、 「請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段は、前記オイルクーラへの冷却水の循環を停止する冷却水切換弁としたことを特徴とする。」に訂正する。 9 訂正事項9 本件特許明細書の段落【0009】において 「請求項4に記載の発明では、請求項1または2に記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段は、前記オイルクーラへの作動油の循環を停止する作動油切換弁としたことを特徴とする。」と記載されているのを、 「請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段は、前記オイルクーラへの作動油の循環を停止する作動油切換弁としたことを特徴とする。」に訂正する。 10 訂正事項10 本件特許明細書の段落【0010】において 「請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4に記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段を、予め設定された設定温度に達することで自動的に切り換えるサーモスタットとしたことを特徴とする。」と記載されているのを、 「請求項5に記載の発明では、請求項1、3及び4のいずれかに一つに記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段を、予め設定された設定温度に達することで自動的に切り換えるサーモスタットとしたことを特徴とする。」に訂正する。 第3 当審の判断 以下、訂正事項1ないし10について検討する。 1 訂正事項1について (1)訂正の目的 訂正前の請求項1には、「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記オイルクーラに流通させ、」との事項が特定されている。 これに対して、訂正後の請求項1においては、「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立し前記流路と並列に接続された他の流路を介して前記オイルクーラに流通させ、」との事項を特定することにより、訂正後の請求項1に係る発明において、「前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路」を具体的に特定し、更に限定するものである。そして、訂正後の請求項1において、「前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路」との事項を限定するのに必要となる「冷却水との熱交換により車室内の空気目標温度に調和する空気調和手段と、」との事項を更に備えることを限定するものである。 訂正後の請求項3ないし6は、訂正後の請求項1を引用するものであり、訂正後の請求項1と同様に、「前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路」を具体的に特定し、更に限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1における「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記オイルクーラに流通させ、」との事項を訂正後の請求項1において「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立し前記流路と並列に接続された他の流路を介して前記オイルクーラに流通させ、」との事項に訂正することにより、「前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路」を具体的に特定し、更に限定するものであり、かつ、訂正後の請求項1において、「前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路」との事項を限定するのに必要となる「冷却水との熱交換により車室内の空気目標温度に調和する空気調和手段と、」との事項を更に備えることを限定するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、本件特許明細書における「前記冷却水をチューブに流通させて前記冷却水との熱交換により車室内の空気を目標温度に調和する空気調和手段と、」(特許請求の範囲の請求項2)、「また、エンジン2に対して独立して駆動されてエンジン2とラジエータ7とに冷却水を循環させる電動ポンプ8が設けられている。」(段落【0019】)、「また、冷却水回路24に空気調整装置25と並列に接続された冷却水回路24aが設けられている。」(段落【0021】)、「実施の形態1の水冷式エンジン冷却装置においては、温度センサ9により検出された水温が予め設定された設定温度(80℃)未満のときは、サーモスタット29によりオイルクーラ28への冷却水の循環を停止し、水温が予め設定された設定温度(80℃)以上のときは、サーモスタット29によりオイルクーラ28への冷却水の循環を行うよう制御される。」(段落【0069】)等の記載事項及び図1の図示内容に基づくものであって、本件特許明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項1による訂正は、新規事項を追加する訂正には該当せず、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 ア 本件訂正発明1 本件訂正発明1は、 「【請求項1】 水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させて冷却するラジエータと、 前記ラジエータへの冷却水の流通を冷却水温度に応じて制御するサーモスタットと、 前記水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換により自動変速機の作動油を調温するオイルクーラと、 冷却水との熱交換により車室内の空気目標温度に調和する空気調和手段と、 前記冷却水温度を検出する水温検出手段と、 を備えた水冷式エンジン冷却装置において、 前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立し前記流路と並列に接続された他の流路を介して前記オイルクーラに流通させ、 前記オイルクーラの作動・停止を切換可能な切換手段と、前記切換手段の切換を制御する切換制御手段を設け、 前記切換制御手段を、検出された水温が、前記サーモスタットが前記ラジエータへ冷却水を流通させる温度より低い予め設定された設定温度未満のときは、前記オイルクーラを停止する指令を前記切換手段に出力し、検出された水温が予め設定された設定温度以上のときは、前記オイルクーラを作動する指令を前記切換手段に出力する手段としたことを特徴とする水冷式エンジン冷却装置。」 というものである。 イ 引用文献、引用発明 (ア)引用文献1 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開平11-82014号(以下、「引用文献1」という。)には、図面(特に、図1ないし2を参照。)とともに、「内燃機関の冷却水循環装置」に関して、以下の記載がある(なお、下線部は当審において付したものである。以下同様。)。 1a「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の冷却水循環装置に関する。」(段落【0001】) 1b「【0010】本発明は、上記実情に鑑みて発明されたものであって、オイルクーラを備える内燃機関であっても、内燃機関の始動時におけるヒータの立ち上がりが早く、しかも暖機促進も十分にすることを技術的課題とする。」(段落【0010】) 1c「【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付した図面に基づいて説明する。図1に示すように、エンジン1(内燃機関)は、エンジン本体3を中心にその左側にラジエータ5を、右側に室内用ヒータコア7を、そして、下側にオイルクーラ9を配置し、これら5,7,9をエンジン本体3を中心として冷却水外部通路(連通路)11で連結してある。冷却水外部通路(連通路)11は、以下に順を追って述べる各構成通路13,14,19,21,30,32からなる。 【0021】エンジン本体(内燃機関本体)3は、エンジン1が駆動することで生じる高熱を図示しない冷却水に吸収させることで、エンジン1の運転状態に合わせて適温に保たれる。そのために、エンジン本体3の内部には、冷却水の通る周知のウォータジャケット(冷却水内部通路)12が形成されている。 【0022】ラジエータ5は、エンジン本体3から出た熱を、冷却水がウォータジャケット12を通る間に吸収すると、この熱を持った冷却水から熱を大気中に放出する。室内用ヒータコア7は、エンジン本体3の出す熱を吸収した冷却水の一部を熱媒体として用い、車室内に温風を出す。 【0023】オイルクーラ9は、冷却水を冷却媒体としてエンジン1に含まれる潤滑オイルを冷却する。冷却水外部通路11は、既述のように、エンジン本体3と、ラジエータ5と、室内用ヒータコア7と、オイルクーラ9とを連通するとともに、それらに冷却水を送るものである。 【0024】冷却水外部通路11の一部である連絡通路13は、図1において、エンジン本体3の上方に位置する。そして、ウォータジャケット12のうち、ヒータコア7側に開口するヒータ側開口12aとラジエータ5の上部に設けられたラジエータ入口5aとを結び、エンジン本体3からラジエータ5へ冷却水を流すので、この連絡通路13をラジエータ行き連絡通路13という。 【0025】ラジエータ行き連絡通路13は、ウォータジャケット12を通る間にエンジン本体3から吸収して熱をもった冷却水を通す通路である。また、冷却水外部通路11の別の一部である連絡通路14は、図1におけるラジエータ5とエンジン本体3との間の下方に位置する。そして、この連絡通路14は、ラジエータ出口5bとエンジン本体3のラジエータ側に開口するラジエータ側開口12bとを結んでおり、冷却水をラジエータ5側からエンジン本体3側へ流す。よって、連絡通路14のことをエンジン本体行き連絡通路(ラジエータ側冷却水通路)14という。エンジン本体行き連絡通路14は、その途中に流量制御弁(サーモスタット)15とウォータポンプ17とをラジエータ5側から純に備えている。 【0026】前記流量制御弁15は、エンジン1のうち、ラジエータ5側に位置するので、流量制御弁15をラジエータ側流量制御弁15という。ラジエータ側流量制御弁15は、冷却水の温度が82゜C以上で開弁し、それよりも冷却水温度が低い場合は閉弁する。 【0027】ウォータポンプ17は、冷却水を冷却水通路11の全体に送り出す。また、ラジエータ側流量制御弁15と、エンジン本体3のラジエータ5側に開口するウォータジャケット12の開口のうち上方に位置するラジエータ側開口12cとの間には、冷却水外部通路11のさらに別の一部であって、L字形をした連絡通路19が配設されている。」(段落【0020】ないし【0027】) 1d「【0029】また、図1の右側でヒータコア7とエンジン本体3との間に符号21で示す連絡通路も冷却水外部通路11の一部であって、ウォータジャケット12のヒータ側開口12aから室内用ヒータコア7の入り口7aに向けてまっすぐ延びている。この連絡通路21は、エンジン本体3からヒータコア7に向けて冷却水を流すのでヒータコア行き連絡通路(ヒータ側冷却水連通路)21という。 【0030】ヒータコア行き連絡通路21には、そのほぼ中間部Mにサーモスタットタイプの流量制御弁23が配置されている。よって、中間部Mを流量制御弁23の配置点という。 【0031】前記流量制御弁23は、エンジン1のうち、ヒータコア7側に位置するので、流量制御弁23をラジエータ側流量制御弁15と区別するために、これをヒータコア側流量制御弁23という。 【0032】前記ラジエータ側流量制御弁15もヒータコア側流量制御弁23も、周知の構造であるから構造についての説明は省略する。ヒータコア側流量制御弁23は、ラジエータ側流量制御弁15よりも冷却水の温度が低い温度で、例えば45゜Cよりも高い温度になると開弁して冷却水を流し、冷却水温度が45゜C以下の場合は閉弁して冷却水を塞き止める。なお、ラジエータ側流量制御弁15もヒータコア側流量制御弁23も閉弁といっても全く冷却水が流れないわけではなく、閉弁時でも感温用として図示しない小穴を通してわずかに流れるようになっているので、正確に述べれば、ヒータコア側流量制御弁23は、冷却水温度が45゜C以下の場合はヒータコア行き連絡通路21を流れる冷却水の量を減少するといえる。ヒータコア側流量制御弁23にあっては、例えば毎分0.5リットルほど冷却水が流れる。なお、45゜Cという温度数値は、ヒータから出る風を人が受けて暖かいと感じる温度である。 【0033】また、前記エンジン本体行き連絡通路14と前記ヒータコア行き連絡通路21とは、オイルクーラ9を含むオイルクーラ用冷却水連通路30で連通されており、このオイルクーラ用冷却水連通路30も、冷却水外部通路11を構成する連絡通路の一部である。 【0034】オイルクーラ用冷却水連通路30のラジエータ側端30aは、エンジン本体行き連絡通路14のうち、ウォータポンプ17の下流側部位で連結されている。また、オイルクーラ用冷却水連通路30のヒータコア側端30bは、ヒータコア行き連絡通路21のうち、ヒータコア側流量制御弁23および前記ラジエータ行き連絡通路13の入り口13aよりも上流側である接続点Cで連結されている。 【0035】なお、この実施の形態では、オイルクーラ用冷却水連通路30を冷却水外部通路11の一部としてエンジン本体3の外部に設けたものとして示したが、エンジン本体3の内部にウォータジャケット12とは別に設けてもよい。 【0036】さらに、冷却水外部通路11を構成する他の連絡通路として、エンジン本体3と、前記ラジエータ行き連絡通路13との間に配設された連絡通路32がある。連絡通路32は、室内用ヒータコア7の出口7bと前記エンジン本体行き連絡通路14とを結んでおり、ヒータコア7に入った冷却水を循環するための通路である。また、連絡通路32のエンジン本体行き連絡通路14との連結点は、前記ラジエータ側流量制御弁15と前記ウォータポンプ17との間の部分である。 【0037】そして、冷却水は、前記各連絡通路13,14,19,21,30,32によって、ラジエータ5とエンジン本体3との間で、および室内用ヒータコア7とエンジン本体3との間で循環し得る。 【0038】以上の構成からなるものが、本発明の実施の形態に係る内燃機関の冷却水循環装置Aである。このような内燃機関の冷却水循環装置Aにあっては、ラジエータ5とエンジン本体3との間では、エンジン本体3から出た冷却水は、ヒータコア行き連絡通路21に入った後、すぐにラジエータ行き連絡通路13に入り、その後ラジエータ5に至る。そして、ラジエータ側流量制御弁15が開いていれば、エンジン本体行き連絡通路14を経由して、エンジン本体3に戻る。ラジエータ側流量制御弁15が開いていなければ、冷却水は流れない。 【0039】なお、エンジン本体行き連絡通路14は、オイルクーラ用冷却水連通路30ともつながっているので、ラジエータ側流量制御弁15が開いていれば、オイルクーラ用冷却水連通路30にも冷却水は流れ得る。 【0040】また、室内用ヒータコア7とエンジン本体3との間では、エンジン本体3から出た冷却水は、ヒータコア行き連絡通路21に入った後、ヒータコア側流量制御弁23が開いていれば、そこを通過して室内用ヒータコア7に至る。ヒータコア側流量制御弁23が開いていなければ、冷却水は流れない。 【0041】ヒータコア行き連絡通路21を冷却水が通る場合は、ヒータコア7とエンジン本体行き連絡通路14とを結ぶ連絡通路32を経由して、エンジン本体行き連絡通路14に至り、このエンジン本体行き連絡通路14を経由してエンジン本体3に戻る。なお、この場合にあっても、冷却水は、エンジン本体行き連絡通路14を経由してオイルクーラ用冷却水連通路30に流れ得る。」(段落【0029】ないし【0041】) 1e 上記記載事項1a及び1c並びに出願時の技術常識から、引用文献1記載のエンジン1は、冷却水によって冷却されるものであるから、水冷式のエンジンであるといえる。 1f 上記記載事項1c及び出願時の技術常識から、引用文献1記載の室内用ヒータコア7は、エンジン本体3の出す熱を吸収した冷却水の一部を熱媒体として用い、車室内に温風を出すものであるから、冷却水との熱交換により車室内の温度を調和するものといえる。 1g 上記記載事項1d及び図1の図示内容から、引用文献1記載のヒータコア側流量制御弁23は、オイルクーラ9への冷却水の流れを室内用ヒータコア7への冷却水の流れとともに制御可能な流量制御弁であるといえる。 上記記載事項及び認定事項並びに図面(特に、図1ないし2を参照。)の図示内容から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 〔引用発明〕 「水冷式のエンジン1から流出する冷却水を流通させて冷却するラジエータ5と、 前記ラジエータ5への冷却水の流通を冷却水温度に応じて制御するサーモスタット15と、 前記水冷式のエンジン1から流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換によりエンジン1に含まれる潤滑オイルを調温するオイルクーラ9と、 冷却水との熱交換により車室内の温度を調和する室内用ヒータコア7と、 を備えた水冷式のエンジン1の冷却水循環装置において、 前記水冷式のエンジン1のヒータ側開口12a側から流出する冷却水を、前記ラジエータ5への冷却水の冷却水外部通路11とは独立したヒータコア行き連絡通路21を介して前記室内用ヒータコア7に流通させ、前記冷却水外部通路11とは独立したオイルクーラ用冷却水連通路30を介して前記オイルクーラ9に流通させ、 前記オイルクーラ9への冷却水の流れを室内用ヒータコア7への冷却水の流れとともに制御可能なヒータコア側流量制御弁23を設け、 前記ヒータコア側流量制御弁23は、ラジエータ側流量制御弁15よりも冷却水の温度が低い温度で所定値である45°C以下のとき閉弁し、45°Cより高い温度のとき開弁する、 水冷式のエンジン1の冷却水循環装置」 (イ)引用文献2 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、実願昭60-100291号(実開昭62-8323号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、「エンジンの冷却システム」に関して、以下の記載がある。 2a「2.実用新案登録請求の範囲 エンジンの出口側からラジエータおよびウォータポンプを介してエンジンの入口側に冷却水を還流させる主冷却水路を有するエンジンの冷却システムにおいて、前記主冷却水路からエンジンの出口側で分岐しヒータを通り前記ウォータポンプの上流側に至るヒータ用水路と、前記主冷却水路からエンジンの入口側で分岐しオイルクーラを通り前記ウォータポンプの上流側に至るオイルクーラ用冷却水路と、このオイルクーラ用冷却水路のオイルクーラの上流側に介装され冷却水又はオイルの温度が所定値以下のときにオイルクーラ用冷却水路を閉止するサーモバルブと、を有することを特徴とするエンジンの冷却システム。」(明細書1ページ4行ないし17行) 2b「 図面において、(1)はシリンダブロック、(1a)はそのウォータジャケット、(2)はシリンダヘッド、(2a)はそのウォータジャケットを示し、シリンダヘッド(2)のウォータジャケット(2a)の出口側からラジエータ(3)、ウォータポンプ(4)通り、シリンダブロック(1)のウォータジャケット(1a)の入口側に至り、冷却水を還流させる主冷却水路(5)を備えている。また、この主冷却水路(5)のラジエータ(3)の下流側にはシリンダヘッド側のウォータジャケット(2a)の出口側からバイパス水路(2b)が接続されており、このバイパス水路(2b)を、冷却水が所定温度以下のときに開通させるサーモバルブ(6)がラジエータ(3)下流側の主冷却水路(5)に介装されている。 さらに、主冷却水路(5)には、シリンダブロック(1)のウォータジャケット(1a)の出口側から分岐し、ヒータ(7)を通りラジエータ(3)の下流側に至るヒータ用水路(8)を備えており、ヒータ用水路(8)の出口側がサーモバルブ(6)のケース(6a)内を通じて主冷却水路(5)に接続されている。また、主冷却水路(5)のシリンダブロック(1)の入口側、すなわち、ウォータポンプ(4)の出口側には、オイルクーラ用冷却水路(9)が分岐しており、このオイルクーラ用冷却水路(9)は、ヒータ(7)下流側のヒータ用水路(8)を通じてウォータポンプ(4)の上流側に連通されている。そして、このオイルクーラ用冷却水路(9)には、オイルクーラ(10)が介装され、オイルクーラ(10)の上流側には冷却水が所定温度以下になると、オイルクーラ用冷却水路(9)を閉止するサーモバルブ(11)が設けられている。 このような冷却システムにおいては、冷却水温が所定値以上になると、サーモバルブ(6)がバイパス水路(2b)を閉止する一方、オイルクーラ用サーモバルブ(11)が冷却水路(9)を開通させるよう作動する。そのため主冷却水路(5)内の冷却水は、シリンダヘッド(2)が主にラジエータ(3)およびサーモバルブ(6)を介してウォータポンプ(4)に還流される。一方オイルクーラ用冷却水路(9)にはウォータポンプにより圧送される冷却水がシリンダブロック(1)の入口側から通流される。したがって、オイルクーラ(10)には十分に冷却された冷却水が供給されることとなり、オイルクーラ(10)の冷却効果が高まる。そして、オイルクーラ(10)を通過した冷却水は、ヒータ下流側の水路(8)およびサーモバルブ(6)を介してウォータポンプ(4)の上流側に還流される。 また、冷却水温度が所定温度以下となる冷間時や暖機時には、サーモバルブ(6)がバイパス水路(2b)を開通する一方、オイルクーラ用サーモバルブ(11)が冷却水路(9)を閉止させるよう動作する。そのため、主冷却水路(5)内の冷却水は主にバイパス水路(2b)およびヒータ用水路(8)を通じて還流される。また、オイルクーラ用冷却水路(9)には、冷却水が通流されず、この分の冷却水がヒータ(7)に供給されることとなり、ヒータ(7)の暖房性能が向上する。」(明細書4ページ2行ないし6ページ18行) 上記記載事項及び図面の図示内容から、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献2記載事項〕 「水冷式のエンジンから流出する冷却水を流通させて冷却するラジエータ(3)と、 前記ラジエータ(3)への冷却水の流通を冷却水温に応じて制御するサーモバルブ(6)と、 前記水冷式のエンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換によりオイルを冷却するオイルクーラ(10)と、 冷却水との熱交換により暖房するためのヒータ(7)と、 を備えた水冷式のエンジンの冷却システムにおいて、 前記水冷式のエンジンのウォータジャケット(2a)のシリンダヘッド(2)からの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータ(3)への冷却水の主冷却水路(5)とは独立した、ウォータジャケット(2a)の出口側から分岐して主冷却水路(5)とは別でヒータ(7)へ流れる流路を介して前記ヒータ(7)に流通させ、前記主冷却水路(5)とは独立したオイルクーラ用冷却水路9を介して前記オイルクーラ(10)に流通させ、 オイルクーラ(10)への冷却水の供給・停止を切換可能なオイルクーラ用サーモバルブ(11)を設け、 前記オイルクーラ用サーモバルブ(11)は、冷却水温が所定温度以上でサーモバルブ(6)が閉止するときに開弁するとともに、所定温度以下でサーモバルブ(6)が開いたときは閉弁する、水冷式のエンジンの冷却システム。」 (ウ)引用文献3 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、実願平2-56585号(実開平4-17553号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、図面(特に第4図を参照。)とともに、「自動変速機用オイル冷却装置」に関して、以下の記載がある。 3a「2.実用新案登録請求の範囲 車両に搭載されたエンジンの冷却水を冷却するラジエータと、このラジエータに一体化され上記車両の自動変速機に使用されるオイルを上記冷却水によって冷却する水冷式オイルクーラと、上記ラジエータに隣接され上記オイルの熱を空気中へ放散させて上記オイルを冷却する空冷式オイルクーラと、上記ラジエータへ冷却風を導くクーリングファンとを有する自動変速機用オイル冷却装置において、上記クーリングファンにより発生する冷却風を上記ラジエータと上記空冷式オイルクーラとの双方へ導くファンシュラウドを設けたことを特徴とする自動変速機用オイル冷却装置。」(明細書1ページ4ないし17行) 3b「<産業上の利用分野> 本考案は車両の自動変速機用オイル冷却装置に関する。」(明細書2ページ2ないし4行) 3c「 この自動変速機用オイル冷却装置1は空冷式及び水冷式双方共ラジエータ2に隣接しあるいは一体に設けられている。すなわち、上部にエンジン冷却水の導入口を有し下部にエンジン冷却水の送出口を有するラジエータ2において、その下部のロアタンク内にはオイル通路が内蔵されている。そして、このオイル通路は一方が自動変速機に至っており、他方が後述の空冷式オイルクーラに至っていて、オイル通路を中心としてエンジン冷却水による水冷式オイルクーラ3を構成している。 ラジエータ2に隣接した部分には、空冷式オイルクーラ4(例えば一般的なドロンカップ式)が備えられている。この空冷式オイルクーラ4はその出入口が一方で上記水冷式オイルクーラ3につながり、他方で自動変速機につながっている。」(明細書6ページ9行ないし7ページ5行) 3d「 第4図は、第1図~第3図による構造の油系統回路を示す。すなわち、エンジン7からのエンジン冷却水は、ラジエータ2に至り、ついでロアタンクである水冷式オイルクーラ3にてA/Tオイルから熱を奪い、ウォータポンプ9にてエンジン7に戻る経路を有する。 他方、自動変速機8からのA/Tオイルは、ロアタンクに内蔵されたオイル通路(水冷式オイルクーラ3)を通り、ついで空冷式オイルクーラ4を通ってオイルポンプ10により自動変速機8に戻される。」(明細書7ページ15行ないし8ページ5行) 3e 上記記載事項3c及び3d並びに第4図の図示内容から、引用文献3記載のエンジン7は、エンジン冷却水によって冷却されるエンジンであるから、水冷式のエンジンであるといえる。 3f 上記記載事項3d及び出願時の技術常識から、引用文献3記載の水冷式オイルクーラ3は、エンジン7から流出するエンジン冷却水と自動変速機8のA/Tオイルとの熱交換によりA/Tオイルを冷却するものであるといえる。 上記記載事項及び認定事項並びに図面(特に、第4図)の図示内容から、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献3記載事項〕 「水冷式のエンジン7から流出するエンジン冷却水を流通させて冷却するラジエータ2と、 前記水冷式のエンジン7から流出するエンジン冷却水を流通させ、エンジン冷却水との熱交換により自動変速機8のA/Tオイルを冷却する水冷式オイルクーラ3と、 を備えた水冷式のエンジンの自動変速機用オイル冷却装置。」 ウ 対比・判断 本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「水冷式のエンジン1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件訂正発明1の「水冷式エンジン」に相当し、以下同様に、引用発明の「冷却水」は本件訂正発明1の「冷却水」に、「ラジエータ5」は「ラジエータ」に、「サーモスタット15」は「サーモスタット」に、「オイルクーラ9」は「オイルクーラ」に、「室内用ヒータコア7」は「空気調和手段」に、「水冷式のエンジン1の冷却水循環装置」は「水冷式エンジン冷却装置」に、「ヒータ側開口12a」は「出口」に、「冷却水外部通路11」は「冷却水の循環流路」に、「ヒータコア行き連絡通路21」は「独立した流路」に、「オイルクーラ用冷却水連通路30」は「他の流路」に、それぞれ相当する。 引用発明の「オイルクーラ9」は、水冷式のエンジン1から流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換によってエンジン1に含まれる潤滑オイルを冷却するためのものであるから、引用発明の「前記水冷式のエンジン1から流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換によりエンジン1に含まれる潤滑オイルを調温するオイルクーラ9」と本件訂正発明1の「前記水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換により自動変速機の作動油を調温するオイルクーラ」とは、「前記水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換により油を調温するオイルクーラ」という限りにおいて一致する。 引用発明の「室内用ヒータコア7」は冷却水との熱交換により車室内の温度を調和するものであるから、「冷却水との熱交換により車室内の温度を調和する室内用ヒータコア7」と本件訂正発明1の「冷却水との熱交換により車室内の空気目標温度に調和する空気調和手段」とは、「冷却水との熱交換により車室内の温度を調和する空気調和手段」という限りにおいて一致する。 引用発明の「前記水冷式のエンジン1のヒータ側開口12a側から流出する冷却水を、前記ラジエータ5への冷却水の冷却水外部通路11とは独立したヒータコア行き連絡通路21を介して前記室内用ヒータコア7に流通させ、前記冷却水外部通路11とは独立したオイルクーラ用冷却水連通路30を介して前記オイルクーラ9に流通させ」と本件訂正発明1の「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立し前記流路と並列に接続された他の流路を介して前記オイルクーラに流通させ」とは、「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立した他の流路を介して前記オイルクーラに流通させ」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件訂正発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。 〔一致点〕 「水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させて冷却するラジエータと、 前記ラジエータへの冷却水の流通を冷却水温度に応じて制御するサーモスタットと、 前記水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換により油を調温するオイルクーラと、 冷却水との熱交換により車室内の温度を調和する空気調和手段と、 を備えた水冷式エンジン冷却装置において、 前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立した他の流路を介して前記オイルクーラに流通させた、 水冷式エンジン冷却装置。」 〔相違点1〕 「前記水冷式エンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換により油を調温するオイルクーラ」に関して、本件訂正発明1のオイルクーラが「自動変速機の作動油」を調温するのに対して、引用発明のオイルクーラは「エンジン1に含まれる潤滑オイル」を冷却する点。 〔相違点2〕 「冷却水との熱交換により車室内の温度を調和する空気調和手段」に関して、本件訂正発明1の空気調和手段は「車室内の空気目標温度に」調和するのに対して、引用発明の空気調和手段はかかる事項を備えるのか否か不明である点。 〔相違点3〕 本件訂正発明1は「前記冷却水温度を検出する水温検出手段」を備えるのに対して、引用発明はかかる事項を備えるのか否か不明である点。 〔相違点4〕 「前記水冷式エンジンの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータへの冷却水の循環流路とは独立した流路を介して前記空気調和手段に流通させ、前記循環流路とは独立した他の流路を介して前記オイルクーラに流通させ」に関して、本件訂正発明1においては冷却水エンジンの出口側から流出する冷却水を、循環流路とは独立し「前記流路と並列に接続された」他の流路を介して前記オイルクーラに流通させるのに対して、引用発明においては水冷式のエンジン1のヒータ側開口12a側から流出する冷却水を、冷却水外部通路11とは独立したオイルクーラ用冷却水連通路30に流通させるものの、オイルクーラ用冷却水連通路30がヒータコア行き連絡通路21と並列に接続されたものではなく、かつ、 本件訂正発明1は「前記オイルクーラの作動・停止を切換可能な切換手段と、前記切換手段の切換を制御する切換制御手段を設け、前記切換制御手段を、検出された水温が、前記サーモスタットが前記ラジエータへ冷却水を流通させる温度より低い予め設定された設定温度未満のときは、前記オイルクーラを停止する指令を前記切換手段に出力し、検出された水温が予め設定された設定温度以上のときは、前記オイルクーラを作動する指令を前記切換手段に出力する手段としたこと」との事項を備えるのに対して、引用発明は「前記オイルクーラ9への冷却水の流れを室内用ヒータコア7への冷却水の流れとともに制御可能なヒータコア側流量制御弁23を設け、前記ヒータコア側流量制御弁23は、ラジエータ側流量制御弁15よりも冷却水の温度が低い温度で所定値である45°C以下のとき閉弁し、45°Cより高い温度のとき開弁する」との事項を備える点。 上記相違点1ないし4について検討する。 事案に鑑み、上記相違点4について検討する。 引用文献2記載事項は、上記イ(イ)で述べたとおり、 「水冷式のエンジンから流出する冷却水を流通させて冷却するラジエータ(3)と、 前記ラジエータ(3)への冷却水の流通を冷却水温に応じて制御するサーモバルブ(6)と、 前記水冷式のエンジンから流出する冷却水を流通させ、冷却水との熱交換によりオイルを冷却するオイルクーラ(10)と、 冷却水との熱交換により暖房するためのヒータ(7)と、 を備えた水冷式のエンジンの冷却システムにおいて、 前記水冷式のエンジンのウォータジャケット(2a)のシリンダヘッド(2)からの出口側から流出する冷却水を、前記ラジエータ(3)への冷却水の主冷却水路(5)とは独立した、ウォータジャケット(2a)の出口側から分岐して主冷却水路(5)とは別でヒータ(7)へ流れる流路を介して前記ヒータ(7)に流通させ、前記主冷却水路(5)とは独立したオイルクーラ用冷却水路9を介して前記オイルクーラ(10)に流通させ、 オイルクーラ(10)への冷却水の供給・停止を切換可能なオイルクーラ用サーモバルブ(11)を設け、 前記オイルクーラ用サーモバルブ(11)は、冷却水温が所定温度以上でサーモバルブ(6)が閉止するときに開弁するとともに、所定温度以下でサーモバルブ(6)が開いたときは閉弁する、水冷式のエンジンの冷却システム。」というものである。 また、引用文献3記載事項は、上記イ(ウ)で述べたとおり、 「水冷式のエンジン7から流出するエンジン冷却水を流通させて冷却するラジエータ2と、 前記水冷式のエンジン7から流出するエンジン冷却水を流通させ、エンジン冷却水との熱交換により自動変速機8のA/Tオイルを冷却する水冷式オイルクーラ3と、 を備えた水冷式のエンジンの自動変速機用オイル冷却装置。」というものである。 したがって、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項は、いずれも上記相違点4に係る本件訂正発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。 また、引用発明において、上記相違点4に係る発明特定事項とすることは、本件特許の出願前の周知技術であったといえる証拠も無く、当業者が適宜決定し得た設計的な事項であるともいえない。 そして、本件訂正発明1は、上記相違点4に係る発明特定事項を備えることにより、「水温が設定温度未満のときは、暖機制御温度まで水温の上昇を早め、エンジンを極力高い温度で作動させることで、エンジン自体のフリクションロスを低減すると共に、燃料噴射量の増量制御時間を短縮することにより、オイルクーラによる自動変速機の作動油温度の上昇による燃費改善効果以上の燃費向上効果を得ることが可能となり、特にエンジン始動時の燃費の向上を図ることができる。」(段落【0012】)及び「冬等の外気温が非常に低い環境にあっては、搭乗者によって設定される車室内の目標温度と外気温の差が大きく、これによって、作動油への加温と空気調和を行うと、作動油の加温に使用されるエネルギが大きく、空気調和装置の暖房機能が低下し、目標温度を達成するのに時間がかかってしまう。しかしながら、目標温度を達成するまで、冷却水温度が80℃未満の場合には、オイルクーラの作動を禁止することで、空気調和装置の暖房機能が低下することなく、安定した空気調和を達成することができる。」(段落【0013】)という有利な効果を奏するものである。 そうすると、引用発明において、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を参酌しても、上記相違点4に係る本件訂正発明1の発明特定事項とすることはできず、当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、他に本件訂正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見当たらない。 よって、本件訂正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできないから、訂正事項1による訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項1による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 2 訂正事項2について (1)訂正の目的 訂正事項2は、本件特許明細書の特許請求の範囲における請求項2を削除するものである。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(1)で述べたとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項2による訂正は、新規事項を追加する訂正には該当せず、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第126条第7項の独立特許要件の判断の対象となる請求項は存在しない。 したがって、訂正事項2による訂正は、独立特許要件違反となるものではなく、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。 (5)小括 よって、訂正事項2による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 3 訂正事項3について (1)訂正の目的 訂正事項3は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項3において「請求項1または2に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」と記載されているのを、「請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」に訂正するものである。 上記「1 訂正事項1について」で述べたとおり、訂正事項1により請求項1が訂正されている。そして、訂正後の請求項3は、訂正後の請求項1のみを引用するように引用請求項数が削減されたものである。 したがって、訂正事項3による訂正は、訂正事項1による訂正と同様に、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(1)で述べたように、訂正事項3は、訂正事項1による訂正で請求項1が訂正された上で請求項3の引用請求項数が削減されたものであるから、上記「1 訂正事項1について」で検討したのと同様に、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記(1)で述べたように、訂正事項3は、訂正事項1による訂正で請求項1が訂正された上で請求項3の引用請求項数が削減されたものである。そして、訂正後の請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置おいて、前記切換手段は、前記オイルクーラへの冷却水の循環を停止する冷却水切換弁としたことは、本件特許明細書の段落【0069】及び図1の記載に基づくものであるから、上記「1 訂正事項1について」で検討したのと同様に、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項3による訂正は、新規事項を追加する訂正には該当せず、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 訂正事項3は、訂正事項1による訂正で請求項1が訂正された上で、請求項3の引用請求項数が削減されたものである。 上記(1)で述べたとおり、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下、「本件訂正発明3」という。)が、出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 本件訂正発明3は、 「【請求項3】 請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段は、前記オイルクーラへの冷却水の循環を停止する冷却水切換弁としたことを特徴とする水冷式エンジン冷却装置。」というものである。 訂正後の請求項3は訂正後の請求項1の記載を置換することなく引用するものであるから、本件訂正発明3は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本件訂正発明3は、上記「1 訂正事項1について」の「(4)独立特許要件について」において本件訂正発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、他に本件訂正発明3が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見当たらない。 よって、本件訂正発明3が特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできないから、訂正事項3による訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項3による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 4 訂正事項4について (1)訂正の目的 訂正事項4は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項4において「請求項1または2に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」と記載されているのを、「請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」に訂正するものである。 上記「1 訂正事項1について」で述べたとおり、訂正事項1により請求項1が訂正されている。そして、訂正後の請求項4は、訂正後の請求項1のみを引用するように引用請求項数が削減されたものである。 したがって、訂正事項4による訂正は、訂正事項1による訂正と同様に、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(1)で述べたように、訂正事項4は、訂正事項1による訂正で請求項1が訂正された上で請求項4の引用請求項数が削減されたものであるから、上記「1 訂正事項1について」で検討したのと同様に、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記(1)で述べたように、訂正事項4は、訂正事項1による訂正で請求項1が訂正された上で請求項4の引用請求項数が削減されたものである。そして、訂正後の請求項1に記載の水冷式エンジン冷却装置おいて、前記切換手段は、前記オイルクーラへの作動油の循環を停止する作動油切換弁としたことは、本件特許明細書の段落【0069】、【0072】ないし【0074】並びに図1及び8の記載に基づくものであるから、上記「1 訂正事項1について」で検討したのと同様に、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項4による訂正は、新規事項を追加する訂正には該当せず、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 訂正事項4は、訂正事項1による訂正で請求項1が訂正された上で、請求項4の引用請求項数が削減されたものである。 上記(1)で述べたとおり、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下、「本件訂正発明4」という。)が、出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 本件訂正発明4は、 「請求項1記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段は、前記オイルクーラへの作動油の循環を停止する作動油切換弁としたことを特徴とする水冷式エンジン冷却装置。」というものである。 訂正後の請求項4は訂正後の請求項1の記載を置換することなく引用するものであるから、本件訂正発明4は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本件訂正発明4は、上記「1 訂正事項1について」の「(4)独立特許要件について」において本件訂正発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、他に本件訂正発明4が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見当たらない。 よって、本件訂正発明4が特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできないから、訂正事項4による訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項4による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 5 訂正事項5について (1)訂正の目的 訂正事項5は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5において「請求項1ないし4に記載の水冷式エンジン冷却装置において、」と記載されているのを、「請求項1、3、及び4のいずれか一つに記載の水冷式エンジン冷却装置において、」に訂正するものである。 上記「1 訂正事項1について」ないし「4 訂正事項4について」で述べたとおり、訂正事項1、3及び4によりそれぞれ請求項1、3及び4が訂正され、訂正事項2により請求項2が削除されている。そして、訂正後の請求項5は、訂正前の請求項1ないし4を引用していたものを訂正後の請求項1、3及び4を引用するように引用請求項数が削減されたものである。 したがって、訂正事項5による訂正は、訂正事項1、3及び4による訂正と同様に、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(1)で述べたように、訂正事項5は、訂正事項1、3及び4による訂正でそれぞれ請求項1、3及び4が訂正されるとともに訂正事項2による訂正で請求項2が削除された上で請求項5の引用請求項数が削減されたものであるから、上記「1 訂正事項1について」ないし「4 訂正事項4について」で検討したのと同様に、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記(1)で述べたように、訂正事項5は、訂正事項1、3及び4による訂正でそれぞれ請求項1、3及び4が訂正されるとともに訂正事項2による訂正で請求項2が削除された上で請求項5の引用請求項数が削減されたものである。そして、訂正後の請求項1、3及び4のいずれか一つに記載の水冷式エンジン冷却装置おいて、前記切換手段を、予め設定された設定温度に達することで自動的に切り換えるサーモスタットとしたことは、本件特許明細書の段落【0069】、【0072】ないし【0074】並びに図1及び8の記載に基づくものであるから、上記「1 訂正事項1について」、「3 訂正事項3について」及び「4 訂正事項4について」で検討したのと同様に、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項5による訂正は、新規事項を追加する訂正には該当せず、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 訂正事項5は、訂正事項1、3及び4による訂正でそれぞれ請求項1、3及び4が訂正されるとともに訂正事項2による訂正で請求項2が削除された上で請求項5の引用請求項数が削減されたものである。 上記(1)で述べたとおり、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下、「本件訂正発明5」という。)が、出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 本件訂正発明5は、 「請求項1、3及び4のいずれか一つに記載の水冷式エンジン冷却装置において、 前記切換手段を、予め設定された設定温度に達することで自動的に切り換えるサーモスタットとしたことを特徴とする水冷式エンジン冷却装置。」というものである。 訂正後の請求項5は訂正後の請求項1、3及び4の記載を置換することなく引用するものであるから、本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本件訂正発明5は、上記「1 訂正事項1について」の「(4)独立特許要件について」において本件訂正発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、他に本件訂正発明5が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見当たらない。 よって、本件訂正発明5が特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできないから、訂正事項5による訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)小括 以上のとおりであるから、訂正事項5による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 6 訂正事項6ないし10について (1)訂正の目的 訂正事項6は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、本件特許明細書の段落【0006】の記載を、訂正後の請求項1の記載に合わせるように訂正するものである。 訂正事項7は、訂正事項2による請求項2を削除する訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、本件特許明細書の段落【0007】の記載を、訂正後の請求項2の削除に合わせるように訂正するものである。 訂正事項8は、訂正事項3による請求項3の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、本件特許明細書の段落【0008】の記載を、訂正後の請求項3の記載に合わせるように訂正するものである。 訂正事項9は、訂正事項4による請求項4の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、本件特許明細書の段落【0009】の記載を、訂正後の請求項4の記載に合わせるように訂正するものである。 訂正事項10は、訂正事項5による請求項5の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、本件特許明細書の段落【0010】の記載を、訂正後の請求項5の記載に合わせるように訂正するものである。 したがって、訂正事項6ないし10による訂正は、いずれも、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(1)で述べたように、訂正事項6ないし10は、それぞれ、訂正事項1ないし5と同様の訂正であるから、上記「1 訂正事項1について」ないし「5 訂正事項5について」で検討したのと同様に、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項6ないし10による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記(1)で述べたように、訂正事項6ないし10は、それぞれ、訂正事項1ないし5と同様の訂正であるから、上記「1 訂正事項1について」ないし「5 訂正事項5について」で検討したのと同様に、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項6ないし10による訂正は、新規事項を追加する訂正には該当せず、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 訂正事項6ないし10は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (5)小括 よって、訂正事項6ないし10による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合する。 第4 まとめ したがって、本件訂正審判の請求に係る訂正事項1ないし5による訂正は、特許法第126条第1ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 また、本件訂正審判の請求に係る訂正事項6ないし10による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-390074

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