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特許異議申立

2016-700360

高分子フィルム、フレキシブル発光素子ディスプレイ装置及び巻き可能ディスプレイ装置

審判番号
2016-700360
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-528420
登録番号
特許第5801018号(P5801018)
請求日
2016年04月27日
審決日
2017年08月01日
公報発行日
2017年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
  • 【権利者代理人】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
  • 【異議申立人】土屋 篤志
  • 【異議申立人代理人】廣田 浩一
審判長/審判官
  • 審判長 小柳 健悟
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 藤原 浩子
分類
P1651.851-YAA(C08L) / P1651.853-YAA(C08L) / P1651.854-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.113-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第184条の3、特許法第184条の4
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5801018号発明「高分子フィルム、フレキシブル発光素子ディスプレイ装置及び巻き可能ディスプレイ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5801018号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし25〕について訂正することを認める。 特許第5801018号の請求項21に係る特許を維持する。 特許第5801018号の請求項1ないし20及び22ないし25に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許5801018号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし25に係る特許についての出願は、2014年5月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2013年5月9日、韓国、2014年5月8日、韓国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年9月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年4月27日に特許異議申立人 土屋 篤志(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年8月3日付けで取消理由が通知され、同年11月4日付け(受理日:同年11月7日)で特許権者 エルジー・ケム・リミテッド(以下、「特許権者」という。)より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年11月14日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年12月19日付け(受理日:同年12月20日)で特許異議申立人より意見書が提出され、平成29年2月7日付けで取消理由(決定の予告)(以下、取消理由(決定の予告)という。)が通知され、同年5月9日付け(受理日:同年5月10日)で特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされ、同年5月22日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年6月23日付け(受理日:同年6月26日)で特許異議申立人より意見書が提出されたものである。 なお、平成28年11月4日付け(受理日:同年11月7日)でされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 本件訂正の請求による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項21において、「請求項1の高分子フィルムを含む、フレキシブル発光素子ディスプレイ装置。」と記載されているのを「30,000乃至800,000の重量平均分子量を有するバインダー樹脂;及び ラクトン系化合物が結合された環状分子、前記環状分子を貫通する線状分子、及び前記線状分子の両末端に配置され前記環状分子の離脱を防止する封鎖基を含むポリロタキサン;を含み、 前記ポリロタキサンの中の前記ラクトン系化合物の末端が(メタ)アクリレート系化合物に置換される比率が46.8モル%であり、 全体重量中にポリロタキサンを1乃至50重量%を含み、 前記バインダー樹脂及び前記ポリロタキサン間の架橋結合構造を含み、 常温でASTM D638によって測定した伸び率が150%であり、 92.9%の光透過度及び0.7のヘイズ値を有し、 フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板として使用され、 マンドレルテスト(Mandrel test)によってクラッキングなく曲げられるマンドレルの直径が10Φ以下である高分子フィルムを含む、フレキシブル発光素子ディスプレイ装置。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項15を削除する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項18を削除する。 (20)訂正事項20 特許請求の範囲の請求項19を削除する。 (21)訂正事項21 特許請求の範囲の請求項20を削除する。 (22)訂正事項22 特許請求の範囲の請求項22を削除する。 (23)訂正事項23 特許請求の範囲の請求項23を削除する。 (24)訂正事項24 特許請求の範囲の請求項24を削除する。 (25)訂正事項25 特許請求の範囲の請求項25を削除する。 (26)訂正事項26 明細書の【0009】において、「本明細書では、30,000乃至800,000の重量平均分子量を有するバインダー樹脂;及びラクトン系化合物が結合された環状分子、前記環状分子を貫通する線状分子、及び前記線状分子の両末端に配置され前記環状分子の離脱を防止する封鎖基を含むポリロタキサン;を含み、前記ポリロタキサンの中の前記ラクトン系化合物の末端が(メタ)アクリレート系化合物に置換される比率が40モル%乃至70モル%であり、マンドレルテスト(Mandrel test)によってクラッキングなく曲げられるマンドレルの直径が10Φ以下である、高分子フィルムが提供される。」と記載されているのを「本明細書では、30,000乃至800,000の重量平均分子量を有するバインダー樹脂;及びラクトン系化合物が結合された環状分子、前記環状分子を貫通する線状分子、及び前記線状分子の両末端に配置され前記環状分子の離脱を防止する封鎖基を含むポリロタキサン;を含み、前記ポリロタキサンの中の前記ラクトン系化合物の末端が(メタ)アクリレート系化合物に置換される比率が46.8モル%であり、全体重量中にポリロタキサンを1乃至50重量%を含み、前記バインダー樹脂及び前記ポリロタキサン間の架橋結合構造を含み、常温でASTM D638によって測定した伸び率が150%であり、92.9%の光透過度及び0.7のヘイズ値を有し、フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板として使用され、マンドレルテスト(Mandrel test)によってクラッキングなく曲げられるマンドレルの直径が10Φ以下である高分子フィルムを含むフレキシブル発光素子ディスプレイ装置が提供される。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書の訂正をする場合であって、請求項ごとに訂正の請求をするときに、請求項の全てについて行っているか否か、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)一群の請求項 本件訂正の請求による訂正は、訂正後の請求項1ないし25についての訂正であるが、訂正前の請求項2ないし25は訂正前の請求項1を引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし25は、一群の請求項である。 したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。 (2)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項21を、訂正前の請求項1に記載された事項を加えることで訂正前の請求項1を引用しない形式に書き改めた上に、「高分子フィルム」が「前記ポリロタキサンの中の前記ラクトン系化合物の末端が(メタ)アクリレート系化合物に置換される比率が46.8モル%であり、 全体重量中にポリロタキサンを1乃至50重量%を含み、 前記バインダー樹脂及び前記ポリロタキサン間の架橋結合構造を含み、 常温でASTM D638によって測定した伸び率が150%であり、 92.9%の光透過度及び0.7のヘイズ値を有し、 フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板として使用され」るものとして、「高分子フィルム」をさらに限定して、訂正後の請求項21とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1、明細書の【0097】、訂正前の請求項18及び19、明細書の【0117】の【表1】並びに明細書の【0016】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項2ないし25について 訂正事項2ないし25は、訂正前の請求項1ないし20及び22ないし25を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2ないし25は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項26について 訂正事項26は、訂正事項1に伴い、訂正後の請求項21の記載と明細書の記載を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、訂正事項26は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、本件訂正の請求は、訂正前の請求項1ないし25、すなわち一群の請求項ごとの訂正であり、しかも、その全てについて訂正の請求を行っている。 さらに、訂正事項26は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1、3及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4ないし6項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔1ないし25〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし25〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし25に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明25」という。)は、平成29年5月9付け(受理日:同年5月10日)で提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】(削除) 【請求項9】(削除) 【請求項10】(削除) 【請求項11】(削除) 【請求項12】(削除) 【請求項13】(削除) 【請求項14】(削除) 【請求項15】(削除) 【請求項16】(削除) 【請求項17】(削除) 【請求項18】(削除) 【請求項19】(削除) 【請求項20】(削除) 【請求項21】 30,000乃至800,000の重量平均分子量を有するバインダー樹脂;及び ラクトン系化合物が結合された環状分子、前記環状分子を貫通する線状分子、及び前記線状分子の両末端に配置され前記環状分子の離脱を防止する封鎖基を含むポリロタキサン;を含み、 前記ポリロタキサンの中の前記ラクトン系化合物の末端が(メタ)アクリレート系化合物に置換される比率が46.8モル%であり、 全体重量中にポリロタキサンを1乃至50重量%を含み、 前記バインダー樹脂及び前記ポリロタキサン間の架橋結合構造を含み、 常温でASTM D638によって測定した伸び率が150%であり、 92.9%の光透過度及び0.7のヘイズ値を有し、 フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板として使用され、 マンドレルテスト(Mandrel test)によってクラッキングなく曲げられるマンドレルの直径が10Φ以下である高分子フィルムを含む、フレキシブル発光素子ディスプレイ装置。 【請求項22】(削除) 【請求項23】(削除) 【請求項24】(削除) 【請求項25】(削除)」 2 取消理由(決定の予告)の概要 取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。 「第1 手続の経緯 ・・・(略)・・・ 第2 訂正の適否について ・・・(略)・・・ 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 ・・・(略)・・・ 2 取消理由の概要 ・・・(略)・・・ 3 取消理由についての判断 (1)本件特許の優先日 ・・・(略)・・・ (2)甲第2-1号証の記載等 甲第2-1号証(国際公開第2013/176527号)は、国際特許出願(PCT/KR2013/004604)の国際公開公報(国際公開日は2013年11月28日であり、本件特許の優先日である2014年5月8日より前である。)であるが、該国際特許出願は、日本国に国内移行されて国内書面及び翻訳文が提出され、さらに、特表2015-521210号公報(甲第2-3号証)として、国内公表された。 ・・・(略)・・・ 甲第2-1号証の記載(特に、甲第2-3号証の【請求項12】、【請求項13】、【請求項19】、段落【0068】、【0108】ないし【0111】及び段落【0118】ないし【0125】等を参照。)を整理すると、甲第2-1号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 ・・・(略)・・・ (3)対比・判断 ・・・(略)・・・ (4)むすび したがって、本件特許発明1ないし3、5及び7ないし25は、いずれも、甲2発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 結語 ・・・(略)・・・」 3 取消理由(決定の予告)についての判断 (1)本件特許の優先日 本件特許は、次の第1国出願及び第2国出願に基づく優先権を主張するものである。 第1国出願:韓国10-2013-0052701(出願日:2013年5月9日) 第2国出願:韓国10-2014-0054991(出願日:2014年5月8日) しかしながら、次の理由により、本件特許発明21に対して、第1国出願に基づく優先権の効果は認められず、本件特許発明21についての新規性及び進歩性の判断の基準日、すなわち本件特許の優先日は、第2国出願の出願日である2014年5月8日である。 <理由> 本件特許発明21における「マンドレルテスト(Mandrel test)によってクラッキングなく曲げられるマンドレルの直径が10Φ以下である」という発明特定事項は、第1国出願に係る書類(特許異議申立人が提出した特許異議申立書に添付された甲第6号証。)に記載がなく、当業者にとって自明な事項でもない。 したがって、本件特許発明21は、第1国出願には記載されているとはいえないので、第1国出願に基づく優先権の効果は認められない。 (2)甲第2-1号証の記載等 ア 甲第2-1号証の記載 甲第2-1号証(国際公開第2013/176527号)は、国際特許出願(PCT/KR2013/004604)の国際公開公報(国際公開日は2013年11月28日であり、本件特許の優先日である2014年5月8日より前である。)であるが、該国際特許出願は、日本国に国内移行されて国内書面及び翻訳文が提出され、さらに、特表2015-521210号公報(甲第2-3号証)として、国内公表された。 そして、甲第2-1号証と甲第2-3号証は、内容面での相違は認められず、甲第2-3号証は甲第2-1号証の翻訳文に相当するといえる。 以下、甲第2-1号証については、記載箇所を示し、それに続いて訳文として、甲第2-3号証の記載を摘記する(以下、総称して「甲第2-1号証の記載」という。)。 ・甲第2-1号証の第23ページ第1行ないし第26ページ末行 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 末端に(メタ)アクリレート系化合物が40モル%~70モル%導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物、前記環状化合物を貫通する線状分子、および前記線状分子の両末端に配置されて前記環状化合物の離脱を防止する封鎖基、を含む、ポリロタキサン化合物。 【請求項2】 前記ラクトン系化合物の末端に導入される(メタ)アクリレート系化合物の比率は、45モル%~65モル%である、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【請求項3】 前記環状化合物は、α-シクロデキストリンおよびβ-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【請求項4】 前記ラクトン系化合物は、直接結合または炭素数1~10の直鎖または分枝鎖のオキシアルキレン基を介して前記環状化合物に結合された、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【請求項5】 前記ラクトン系化合物の残基は、下記化学式1の作用基を含む、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【化3】 (前記化学式1中、mは、2~11の整数であり、nは、1~20の整数である。) 【請求項6】 前記(メタ)アクリレート系化合物は、直接結合、ウレタン結合、エーテル結合、チオエステル結合またはエステル結合を通じて前記ラクトン系化合物の残基に結合された、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【請求項7】 前記(メタ)アクリレート系化合物の残基は、下記化学式2の作用基を含む、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【化4】 (前記化学式2中、R1は、水素またはメチルであり、R2は、炭素数1~12の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、炭素数4~20のシクロアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基である。) 【請求項8】 前記線状分子は、ポリオキシアルキレン系化合物またはポリラクトン系化合物である、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【請求項9】 前記線状分子は、1,000~50,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【請求項10】 前記封鎖基は、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン基およびピレン基からなる群より選ばれた1種以上の作用基を含む、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【請求項11】 100,000~800,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のポリロタキサン化合物。 【請求項12】 末端に(メタ)アクリレート系化合物が40モル%~70モル%導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物と、前記環状化合物を貫通する線状分子と、前記線状分子の両末端に配置されて前記環状化合物の離脱を防止する封鎖基と、を含むポリロタキサン化合物、 高分子樹脂またはその前駆体、および 光開始剤、を含む光硬化性コーティング組成物。 【請求項13】 前記ラクトン系化合物の末端に導入される(メタ)アクリレート系化合物の比率は、45モル%~65モル%である、請求項12に記載の光硬化性コーティング組成物。 【請求項14】 前記高分子樹脂は、ポリシロキサン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂およびウレタン(メタ)アクリレート系樹脂からなる群より選ばれた1種以上の高分子樹脂またはこれらの共重合体を含む、請求項12に記載の光硬化性コーティング組成物。 【請求項15】 前記高分子樹脂の前駆体は、(メタ)アクリレート基、ビニル基、シロキサン基、エポキシ基およびウレタン基からなる群より選ばれた1種以上の作用基を含む単量体またはオリゴマーを含む、請求項12に記載の光硬化性コーティング組成物。 【請求項16】 前記光開始剤は、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物およびオキシム系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物を含む、請求項12に記載の光硬化性コーティング組成物。 【請求項17】 前記ポリロタキサン化合物1~95重量%、 前記高分子樹脂またはその前駆体1~95重量%、および 光開始剤0.01~10重量%、を含む、請求項12に記載の光硬化性コーティング組成物。 【請求項18】 有機溶媒をさらに含む、請求項12に記載の光硬化性コーティング組成物。 【請求項19】 請求項12に記載の光硬化性コーティング組成物の光硬化物を含むコーティングフィルム。」 ・甲第2-1号証の第1ページ第5ないし18行 「【0001】 本発明は、ポリロタキサン化合物、光硬化性コーティング組成物およびコーティングフィルムに関し、より詳しくは、特定の化学構造を有する新規なポリロタキサン化合物と、高い耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などの優れた機械的物性を有すると共に、優れた自己治癒能力を有するコーティング材料を提供できる光硬化性コーティング組成物と、前記光硬化性コーティング組成物から得られるコーティングフィルムとに関する。 【背景技術】 【0002】 外部からの機械的、物理的、化学的影響による製品の損傷を保護するために、多様なコーティング層またはコーティングフィルムが携帯電話などの電気電子機器、電子材料部品、家電製品、自動車の内外装、プラスチック成形品の表面に適用されている。しかし、製品コーティング表面のスクラッチや外部衝撃による亀裂は、製品の外観特性、主要性能および寿命を低下させるため、製品表面を保護して長期的な製品の品質維持のために多様な研究が進められている。」 ・甲第2-1号証の第12ページ第26行ないし第13ページ第2行 「【0068】 前記高分子樹脂は、20,000~800,000の重量平均分子量、好ましくは50,000~700,000の重量平均分子量を有することができる。前記高分子樹脂の重量平均分子量が過度に小さい場合、前記コーティング組成物から形成されるコーティング材料が十分な機械的物性や自己治癒能力を持ち難いことがあり、前記高分子樹脂の重量平均分子量が過度に大きい場合、前記コーティング組成物の形態や物性が均質度が低下することがあり、製造されるコーティング材料の最終物性も低下することがある。」 ・甲第2-1号証の第17ページ第9行ないし第22ページ末行 「【0091】 <実施例1~2および比較例1:ポリロタキサンの合成> 実施例1 カプロラクトンがグラフティングされているポリロタキサンポリマー[A1000、Advanced Soft Material INC]50gを反応器に投入した後、Karenz-AOI[2-acryloylethyl isocyanate、Showadenko(株)]4.53g、ジブチル錫ジラウレート[DBTDL、Merck社]20mg、ヒドラキノンモノメチレンエテール(Hydroquinone monomethylene ether)110mgおよびメチルエチルケトン315gを添加して70℃で5時間反応させて、末端にアクリレート系化合物が導入されたポリラクトン系化合物が結合されたシクロデキストリンを環状化合物として含むポリロタキサンポリマー液(固形分15%)を得た。 【0092】 このようなポリロタキサンポリマー液をn-ヘキサン(n-Hexane)溶媒に落として高分子を沈殿させ、これを濾過して白色の固体高分子(重量平均分子量:500,000)を得ることができた。 【0093】 前記で反応物として使用したポリロタキサンポリマー[A1000]の1H NMRデータは図1のとおりであり、図2のgCOSY NMRスペクトルを通じてポリロタキサンの環状化合物に結合されたカプロラクトンの構造を確認した。 【0094】 そして、前記で最終的に得られたポリロタキサンポリマー液に含まれているポリロタキサンの1H NMRは図3のような形態を有する[ピークの強度(intensity)などは異なり得る]。 【0095】 前記図2のNMRデータを通じてポリロタキサンの環状化合物に含まれているカプロラクトン繰り返し単位の数(図1のm+N)が8.05であることを確認し、繰り返し単位数を8と想定すると、図3の7番ピークは、16.00(2H×8)の強度を有することが分かる。 【0096】 そのために、カプロラクトン繰り返し単位の末端が「OH」で100%置換されると、アクリレート作用基と関係する図3の1番ピークは、4.00(2H×2)になるべきであるため、実際測定された1H NMR値を比較してポリロタキサンの環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端置換率を求めることができる。 【0097】 前記で最終的に得られたポリロタキサンポリマー液(固形分15%)の置換率は46.8%であった。 【0098】 実施例2 カプロラクトンがグラフティングされているポリロタキサンポリマー[A1000、Advanced Soft Material INC]50gを反応器に投入した後、Karenz-AOI[2-acryloylethyl isocyanate、Showadenko(株)]9.06g、ジブチル錫ジラウレート[DBTDL、Merck社]20mg、ヒドラキノンモノメチレンエテール110mgおよびメチルエチルケトン315gを添加して70℃で5時間反応させて、末端にアクリレート系化合物が導入されたポリラクトン系化合物が結合されたシクロデキストリンを環状化合物として含むポリロタキサンポリマー液(固形分15%)を得た。 【0099】 このようなポリロタキサンポリマー液をn-ヘキサン溶媒に落として高分子を沈殿させ、これを濾過して白色の固体高分子(重量平均分子量:500,000)を得ることができた。 【0100】 前記で反応物として使用したポリロタキサンポリマー[A1000]の1H NMRデータは図1のとおりであり、図2のgCOSY NMRスペクトルを通じてポリロタキサンの環状化合物に結合されたカプロラクトンの構造を確認した。 【0101】 そして、前記で最終的に得られたポリロタキサンポリマー液に含まれているポリロタキサンの1H NMRは図3のような形態を有する[ピークの強度(intensity)などは異なり得る]。 【0102】 前記図2のNMRデータを通じてポリロタキサンの環状化合物に含まれているカプロラクトン繰り返し単位の数(図1のm+N)が8.05であることを確認し、繰り返し単位数を8と想定すると、図3の7番ピークは、16.00(2H×8)の強度を有することが分かる。 【0103】 そのために、カプロラクトン繰り返し単位の末端が「OH」で100%置換されると、アクリレート作用基と関係する図3の1番ピークは、4.00(2H×2)になるべきであるため、実際測定された1H NMR値を比較してポリロタキサンの環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端置換率を求めることができる。 【0104】 前記で最終的に得られたポリロタキサンポリマー液(固形分15%)の置換率は60.0%であった。 【0105】 比較例1 カプロラクトンがグラフティングされているポリロタキサンポリマー[A1000、Advanced Soft Material INC]50gを反応器に投入した後、Karenz-AOI[2-acryloylethyl isocyanate、Showadenko(株)]13.58g、ジブチル錫ジラウレート[DBTDL、Merck社]20mg、ヒドラキノンモノメチレンエテール110mgおよびメチルエチルケトン315gを添加して70℃で5時間反応させて、末端にアクリレート系化合物が導入されたポリラクトン系化合物が結合されたシクロデキストリンを環状化合物として含むポリロタキサンポリマー液(固形分15%)を得た。 【0106】 実施例1および2と同様な方法で、最終的に得られたポリロタキサンポリマー液に含まれているポリロタキサンの1H NMRは図3のような形態を有することを確認した[ピークの強度(intensity)などは異なり得る]。 【0107】 また、実施例1および2と同様な方法で、ポリロタキサンの環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端置換率を求めた結果、最終的に得られたポリロタキサンポリマー液(固形分15%)の置換率は約100%に近接した。 【0108】 <実施例3~4および比較例2:光硬化性コーティング組成物およびコーティングフィルムの製造> 実施例3 (1)光硬化性コーティング組成物の製造 前記実施例1で得られたポリロタキサン100重量部に対してUA-200PA(多官能ウレタンアクリレート、新中村社)15重量部、PU-3400(多官能ウレタンアクリレート、MIWON社)40重量部、Miramer SIU2400(多官能ウレタンアクリレート、MIWON社)10重量部、Estane-5778(ポリエステル系ポリウレタン、Lubrizol社)15重量部、光重合開始剤であるIrgacure-184 1.5重量部、光重合開始剤であるIrgacure-907 1.55重量部、イソプロピルアルコール(IPA)12.5重量部、エチルセルソルブ12.5重量部を混合して光硬化性コーティング組成物を製造した。 【0109】 (2)コーティングフィルムの製造 前記光硬化性コーティング組成物をそれぞれPETフィルム(厚さ188μm)にワイヤーバー(70号)を用いてコーティングした。そして、コーティング物を90℃で2分間乾燥した後、200mJ/cm2の紫外線を5秒間照射して30μmの厚さを有するフィルムを製造した。 【0110】 実施例4 (1)光硬化性コーティング組成物の製造 前記実施例2で得られたポリロタキサンを使用した点を除いては、実施例3と同様な方法で光硬化性コーティング組成物を製造した。 【0111】 (2)コーティングフィルムの製造 前記光硬化性コーティング組成物をそれぞれPETフィルム(厚さ188μm)にワイヤーバー(70号)を用いてコーティングした。そして、コーティング物を90℃で2分間乾燥した後、200mJ/cm2の紫外線を5秒間照射して30μmの厚さを有するフィルムを製造した。 【0112】 比較例2 (1)光硬化性コーティング組成物の製造 前記比較例1で得られたポリロタキサンを使用した点を除いては、実施例3と同様な方法で光硬化性コーティング組成物を製造した。 【0113】 (2)コーティングフィルムの製造 前記光硬化性コーティング組成物をそれぞれPETフィルム(厚さ188μm)にワイヤーバー(70号)を用いてコーティングした。そして、コーティング物を90℃で2分間乾燥した後、200mJ/cm2の紫外線を5秒間照射して30μmの厚さを有するフィルムを製造した。 【0114】 <実験例:コーティングフィルムの物性評価> 前記実施例3および4と比較例2で得られたコーティングフィルムの物性を下記のように評価した。 【0115】 1.光学的特性:Haze meter(村上社製のHR-10)を用いて光透過度とヘーズを測定した。 【0116】 2.自己治癒能力:コーティングフィルムの表面を500gの荷重で銅ブラシで擦った後、スクラッチの回復にかかる時間を測定した。 【0117】 3.耐スクラッチ特性の測定 スチールウール(steel wool)に一定の荷重をかけて往復でスクラッチを作った後、コーティングフィルムの表面を肉眼で観察した。 【0118】 4.マンドレルテスト(Mandrel test) 厚さが異なる円筒形テスト(Cylindrical Mandrel)に前記実施例および比較例で得られたコーティングフィルムをそれぞれ180度巻いて1秒間維持した後、クラックの発生を肉眼で観察し、円筒形テストマンドレルのパイ(Φ)値を低めながらクラックが発生しない時点を確認した。 【0119】 5.硬度:荷重500gで鉛筆硬度を測定した。 【0120】 前記測定結果を下記表1に示した。 【0121】 【表1】 【0122】 前記表1に示されているように、実施例3および4で製造されたコーティングフィルムは、比較例2で得られたコーティングフィルムに比べて、高い透過度を有しながらも低いヘーズを示して優れた外観特性を有する点が確認された。 【0123】 また、銅ブラシで擦った以降に1分以内に表面が元の状態に回復する自己治癒能力に関する実験例でも、前記実施例3および4で製造されたコーティングフィルムは、比較例2で得られたコーティングフィルムに比べて、より優れた自治治癒能力を有する点が確認された。 【0124】 そして、前記実施例3および4で製造されたコーティングフィルムは、一定の荷重がかかるスチールウールの200gまたは300gdの荷重がかかった状態でもスクラッチがほとんど発生せず、優れた耐スクラッチ特性を有する点が確認された。 【0125】 また、前記実施例3および4で製造されたコーティングフィルムは、より低いパイ(Φ)値を有するマンドレルシリンダーでもクラックが発生せず、比較例に比べてより高い弾性と共に耐久性を有する点が確認された。」 イ 甲2発明 甲第2-1号証の記載(特に、甲第2-3号証の【請求項12】、【請求項13】、【請求項19】、【0002】、【0068】、【0091】ないし【0097】、【0108】ないし【0111】及び【0118】ないし【0125】等を参照。)を整理すると、甲第2-1号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 「50,000~700,000の重量平均分子量を有する高分子樹脂;及び ラクトン系化合物が結合された環状分子、前記環状分子を貫通する線状分子、及び前記線状分子の両末端に配置され前記環状分子の離脱を防止する封鎖基を含むポリロタキサン化合物;を含み、 前記ポリロタキサン化合物の中の前記ラクトン系化合物の末端が(メタ)アクリレート系化合物に置換される比率が46.8モル%であり、 92.3%の光透過度及び0.9のヘイズ値を有し、 携帯電話などの電気電子機器、電子材料部品、家電製品、自動車の内外装、プラスチック成形品の表面に適用され、 マンドレルテスト(Mandrel test)によってクラックが発生しない時点の円筒形テストマンドレルのΦ値が4である、光硬化性コーティング組成物を含むコーティングフィルムを含む、携帯電話などの電気電子機器、電子材料部品、家電製品、自動車の内外装、プラスチック成形品。」 (3)対比・判断 ア 対比 本件特許発明21と甲2発明を対比する。 甲2発明における「50,000~700,000の重量平均分子量を有する高分子樹脂」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本件特許発明21における「30,000乃至800,000の重量平均分子量を有するバインダー樹脂」に相当し、以下、同様に、「ポリロタキサン化合物」は「ポリロタキサン」に、「クラックが発生しない時点の円筒形テストマンドレルのΦ値が4である」は「クラッキングなく曲げられるマンドレルの直径が10Φ以下である」に、「光硬化性コーティング組成物を含むコーティングフィルム」は「高分子フィルム」に、それぞれ、相当する。 また、甲2発明における「携帯電話などの電気電子機器、電子材料部品、家電製品、自動車の内外装、プラスチック成形品の表面に適用され」は、本件特許発明21における「フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板に使用され」と、「電気電子機器に使用され」という限りにおいて一致する。 さらに、甲2発明における「携帯電話などの電気電子機器、電子材料部品、家電製品、自動車の内外装、プラスチック成形品」は、本件特許発明21における「フレキシブル発光素子ディスプレイ装置」と、「電気電子機器」という限りにおいて一致する。 したがって、両者は、次の点で一致する。 「30,000乃至800,000の重量平均分子量を有するバインダー樹脂;及び ラクトン系化合物が結合された環状分子、前記環状分子を貫通する線状分子、及び前記線状分子の両末端に配置され前記環状分子の離脱を防止する封鎖基を含むポリロタキサン;を含み、 前記ポリロタキサンの中の前記ラクトン系化合物の末端が(メタ)アクリレート系化合物に置換される比率が46.8モル%であり、 電気電子機器に使用され、 マンドレルテスト(Mandrel test)によってクラッキングなく曲げられるマンドレルの直径が10Φ以下である、高分子フィルムを含む、電気電子機器。」 そして、次の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明21においては、「全体重量中にポリロタキサンを1乃至50重量%を含」むのに対し、甲2発明においては、そのようなものであるか不明な点。 <相違点2> 本件特許発明21においては、「前記バインダー樹脂及び前記ポリロタキサン間の架橋結合構造を含」むのに対し、甲2発明においては、そのようなものであるか不明な点。 <相違点3> 本件特許発明21においては、「常温でASTM D638によって測定した伸び率が150%であ」るのに対し、甲2発明においては、そのようなものであるか不明な点。 <相違点4> 本件特許発明21においては、「92.9%の光透過度及び0.7のヘイズ値を有」するのに対し、甲2発明においては、「92.3%の光透過度及び0.9のヘイズ値を有」する点。 <相違点5> 本件特許発明21においては、「高分子フィルム」は「フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板として使用され」るものであり、そのような「高分子フィルム」を含む「フレキシブル発光素子ディスプレイ装置」であるのに対し、甲2発明においては、「高分子フィルム」は「携帯電話などの電気電子機器、電子材料部品、家電製品、自動車の内外装、プラスチック成形品の表面に適用され」るものであり、そのような「高分子フィルム」を含む「携帯電話などの電気電子機器、電子材料部品、家電製品、自動車の内外装、プラスチック成形品」である点。 イ 判断 事案に鑑み、まず、相違点3及び5について検討する。 明細書の【0118】の「前記表1に示されているように、実施例1及び2の高分子コーティングフィルムは、透明な外観特性を有しながらも高い伸び率及び弾性を確保することができ、優れた耐スクラッチ性などの機械的物性を有し得る。これにより、前記高分子フィルムは強化ガラスなどを代替することができる物性を有し得るため、フレキシブル発光素子ディスプレイ装置で基板、外部保護フィルムまたはカバーウィンドウとして使用することができる。」との記載によると、本件特許発明21は、特定の「高分子フィルム」が、「高い伸び率」すなわち「常温でASTM D638によって測定した伸び率が150%」という未知の属性を有することを発見し、該「高分子フィルム」を「フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板」としての使用に適することを見いだして、該「高分子フィルム」を含む「フレキシブル有機発光ダイオードディスプレイ装置」という発明としたものである。 他方、甲第2-1号証には、甲2発明が、「常温でASTM D638によって測定した伸び率が150%」という属性を有することは記載されていないし、「高い伸び率」という属性を有することすら記載されていない。また、甲第2-1号証の記載から、甲2発明がこれらの属性を有していることが、当業者にとって自明な事項であるとも認められない。さらに、甲第2-1号証には、甲2発明における「高分子フィルム」及び甲2発明の用途として、「フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板」及び「フレキシブル発光素子ディスプレイ装置」は記載されていないし、甲第2-1号証の記載から、甲2発明における「高分子フィルム」及び甲2発明の用途として、「フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの基板」及び「フレキシブル発光素子ディスプレイ装置」が、当業者にとって自明な事項であるとも認められない。 したがって、高いスクラッチ性や高い耐久性等の性質が、フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイに要求されるものであることが、本件特許の優先日前に周知である(必要であれば、特表2010-506168号公報、特表2011-510905号公報、特表2010-507899号公報及び特開2008-145840号公報の記載等を参照。以下、「周知事項」という。)としても、甲2発明において、相違点3に係る発明特定事項を有することを見いだし、相違点5に係る発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 よって、相違点1、2及び4について検討するまでもなく、本件特許発明21は、甲2発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、平成29年6月23日付け(受理日:同年6月26日)で特許異議申立人が提出した意見書を検討したが、上記判断は左右されない。 (4)むすび したがって、本件特許発明21は、甲2発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件特許発明21は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、その特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の内、取消理由(決定の予告)において、取消理由として採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の内、取消理由(決定の予告)において、取消理由として採用しなかった特許異議申立理由は、おおむね次の(1)ないし(3)のとおりである。 また、特許異議申立書においては、証拠方法として、次の文献も挙げられている。 甲第1号証:特開2011-46917号公報 甲第2-2号証:国際公開第2013/176527号(PCT/KR2013/004604号)についての、特許権者が提出した、特許法第184条の3の規定による国内書面及び特許法第184条の4の規定による翻訳文 甲第3号証:SeRM Super Polymer セルムスーパーポリマー ユーザーガイド 2011.09.07 Version アドバンスト・ソフトマテリアルズ社発行 甲第4号証:昭和電工株式会社発行、カレンズAOI○R(当審注:○Rは、Rを○で囲ったもので登録商標であることを表す記号である。)のホームページ(www.karenz.jp/ja/aoi/)からの抜粋 甲第5号証:ASTM D522-93a 付着した有機コーティングのマンドレル屈曲テストのための標準試験方法及びその部分翻訳文 甲第6号証:第1国韓国出願(出願番号:10-2013-0052701、出願日:平成25(2013)年5月9日)及びその部分翻訳文 甲第7号証:本件特許に係る国際特許出願(PCT/KR2014/004164、出願日:平成26(2014)年5月9日)の国際公開公報(国際公開第2014/182127号) (1)訂正前の請求項1ないし25に係る発明ついての甲第1号証に基づく新規性・進歩性違反(特許法第29条第1項第3号及び第2項) (2)訂正前の請求項1ないし25に係る発明についての甲第2-1号証に基づく新規性違反(特許法第29条第1項第3号) (3)訂正前の請求項1ないし25に係る発明についての実施可能要件違反、サポート要件違反及び明確性要件違反(特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第6項第2号) そこで、検討する。 (1)訂正前の請求項1ないし25に係る発明についての甲第1号証に基づく新規性・進歩性違反(特許法第29条第1項第3号及び第2項)について 上記第3 3(3)アで指摘した相違点1ないし5に係る本件特許発明21の発明特定事項については、甲第1号証には記載されていないし、本件特許の優先日前において周知でもない。 したがって、本件特許発明21についての甲第1号証に基づく新規性・進歩性違反は理由がない。 (2)訂正前の請求項1ないし25に係る発明についての甲第2-1号証に基づく新規性違反(特許法第29条第1項第3号)について 上記第3 3(3)アで指摘したとおり、本件特許発明21と甲2発明を対比すると、両者は、少なくとも相違点3及び5の点で相違する。 したがって、本件特許発明21についての甲第2-1号証に基づく新規性違反は理由がない。 (3)訂正前の請求項1ないし25に係る発明についての実施可能要件違反、サポート要件違反及び明確性要件違反(特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第6項第2号)について 発明の詳細な説明には、本件特許発明21の実施例が、具体的な製造方法及び具体的なデータをもってして記載されており、本件特許発明21は、発明の詳細な説明において当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているから、本件特許発明21についての実施可能要件違反は理由がない。 また、同様の理由により、本件特許発明21は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであり、発明の詳細な説明に記載された発明であるから、本件特許発明21についてのサポート要件違反は理由がない。 さらに、請求項21の記載はそれ自体明確であり、また、請求項21に記載された事項に基づいて一の発明が明確に把握できることから、本件特許発明21についての明確性要件違反は理由がない。 よって、上記特許異議申立理由(1)ないし(3)は、いずれも理由がない。 第4 結語 上記第3のとおりであるから、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項21に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項1ないし20及び22ないし25は、訂正により削除されたため、請求項1ないし20及び22ないし25に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700360

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    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、536・C08L、537・C08L ほか1件

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