特許異議申立
2017-700169
合成皮革
- 審判番号
- 2017-700169
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-043139
- 登録番号
- 特許第5976338号(P5976338)
- 請求日
- 2017年02月22日
- 審決日
- 2017年05月17日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アキレス株式会社
- 【権利者代理人】戸塚 朋之
- 【異議申立人】成田 忍
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 蓮井 雅之
- 審判官 渡邊 豊英
- 分類
- P1651.121-Y (D06N) / P1651.537-Y (D06N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5976338号発明「合成皮革」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5976338号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5976338号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成24年2月29日に特許出願され、平成28年7月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人成田忍(以下「申立人」という。)により本件特許異議の申立てがされたものである。
2.本件発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなり、部分的に、380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%であることを特徴とする合成皮革。
【請求項2】
生布が、単糸繊度5.0デニール以下、目付10~350g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の合成皮革。」
3.特許異議申立て理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1号証~甲第6号証を提出し、おおむね次の取消理由(以下、順に「理由1」~「理由3」という。)を主張している。
(理由1)本件発明1及び本件発明2は、出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明と、技術常識を示す甲第2号証、または周知技術を示す、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(理由2)本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(理由3)本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(証拠一覧)
甲第1号証:特開2010-244812号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:材料大事典編集委員会編、「材料大事典」、産業調査会、昭和59年2月5日、表紙、目次、594~597頁及び奥付(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特開昭58-144184号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2008-87167号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開平11-279956号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:本件特許に係る出願の審査段階の平成28年2月5日に提出された意見書(以下「甲6」という。)
(甲1~甲6は、申立人が提出した特許異議申立書に添付されたものである。)
4.甲各号証の記載
(1)甲1には、以下の記載がある。
「【要約】
【課題】より複雑な曲面に対して、意匠性をより高めながらも動作の安定性をより確保した操作スイッチ装置をより容易に設けることを可能にする。
【解決手段】光透過性および可撓性を有する透過皮革1と、透過皮革1の下層に設けられ、光透過部分を除いて遮光性および可撓性を有するマスクプレート2と、点灯時にマスクプレート2の下層側から光透過部分を照らしてスイッチ図形を浮かび上がらせる光源6と、感圧センサ7と、マスクプレート2よりも下層に設けられる基板ホルダ4と、を備え、基板ホルダ4には、透過皮革1上からスイッチ図形が表示される領域へ加えられる押圧に応じて当該領域に対応する一領域が選択的に押下されるようにスリット4aが設けられており、感圧センサ7は、当該一領域が押下されたときに押圧される位置に配置されており、感圧センサ7での押圧の検知に従ってスイッチ操作を受け付ける。」
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の制御を行うためのスイッチ操作を受け付ける操作スイッチ装置であって、
模様および色のうちの少なくともいずれかが施された光透過性および可撓性を有するシート部材と、
前記シート部材よりも下層に設けられ、所定の領域を除いて遮光するとともに、可撓性を有するマスクプレートと、
点灯時には前記マスクプレートの下層側から前記所定の領域を照らし、当該所定の領域を通して前記シート部材上に前記スイッチ操作の操作位置を示す表示を浮かび上がらせる光源と、
押圧されたことを検知する感圧センサと、
前記マスクプレートよりも下層に設けられるとともに、一部が前記感圧センサの上層に空間をもって保持される基材と、を備え、
前記基材には、前記シート部材上から加えられる前記所定の領域への押圧に応じて当該所定の領域に対応する前記基材の一領域が選択的に押下されるようにスリットが設けられているとともに、
前記感圧センサは、前記基材の一領域が押下されたときに押圧される位置に配置されており、
前記感圧センサが押圧されたことを検知することによって前記スイッチ操作を受け付けることを特徴とする操作スイッチ装置。
・・・
【請求項3】
前記シート部材は、光透過性および可撓性を有する皮革様の素材からなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の操作スイッチ装置。
【請求項4】
前記皮革様の素材は光透過性および可撓性を有したポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の操作スイッチ装置。」
「【0010】
さらに、光源の点灯時にはマスクプレートの下層側から前述の所定の領域を照らし、当該所定の領域を通してシート部材上にスイッチ操作の操作位置を示す表示を浮かび上がらせるので、光源の消灯時には、シート部材上にスイッチ操作の操作位置を示す表示が浮かび上がらず、スイッチ操作が必要のない場合にはスイッチ操作の操作位置を示す表示を隠すようにして意匠性をより高めることが可能になる。」
「【0030】
透過皮革1は、光透過性および可撓性を有する皮革様の素材からなるシート状の部材であって、車両の内装パネルの表皮材の一部として用いられるものとする。よって、透過皮革1は、請求項のシート部材として機能する。一例として、本実施形態では、透過皮革1は、インストルメントパネルの表皮材として用いられているものとして以降の説明を行う。また、一例として、本実施形態では、透過皮革1は光透過性および可撓性を有するポリウレタン樹脂からなる黒色の合成皮革であって、表面に革シボ加工が施されているものとする。なお、透過皮革1の厚さは、例えば1.2mm程度であるものとする。」
「【0033】
マスクプレート2は、透過皮革1の下層に配置され、透過皮革1に接着されている。また、マスクプレート2は、光透過性および可撓性を有するフィルム上の一部を除いてマスク印刷が行われ、マスクプレート2上のマスク印刷が行われない部分(つまり、マスクプレート2上の光透過部分)を除いて遮光性を有している。例えばマスクプレート2としてはポリカーボネイトを用いることができる。また、例えばマスクプレート2は、両面テープによって透過皮革1の裏面に接着される構成とすればよい。なお、マスクプレート2の厚さは、例えば0.3mm程度であるものとする。」
「【0060】
さらに、光源6の点灯時にはマスクプレート2の下層側から光透過部分を照らし、当該光透過部分を通して透過皮革1上にスイッチ図形を浮かび上がらせるので、光源6の消灯時には、透過皮革1上にスイッチ図形が浮かび上がらず、スイッチ操作が必要のない場合にはスイッチ図形を隠すようにして煩雑さのより低い外観を提供し、意匠性をより高めることが可能になる。・・・」
「【0068】
さらに、前述の実施形態では、請求項のシート部材として皮革様の素材からなるシート状の部材を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。請求項のシート部材としては、模様および色のうちの少なくともいずれかが施された光透過性および可撓性を有するシート部材であればどのような素材を用いてもよい。」
上記記載事項より、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「光透過性および可撓性を有するポリウレタン樹脂からなる黒色の透過皮革1であって、表面に革シボ加工が施された表皮層を有し、光源の消灯時には、透過皮革1上に表示が浮かび上がらず、光源の点灯時には、透過皮革1の下層に配置されたマスクプレート2の下層側から光源が当該マスクプレート2の光透過部分を照らし、当該光透過部分を通して透過皮革1上に表示を浮かび上がらせる、透過皮革1。」
(2)甲2には、以下の記載がある。
「(人工皮革、銀付製品、構成)ポリウレタンを主体にした弾性ポリマーの多孔質層(1)または非多孔質層(2)の表面層と、絡合不織布にポリウレタンなどの弾性ポリマーを含有させた基体層からなり、皮革様に仕上げた材料」、「(合成皮革、銀付製品、構成)ポリウレタンを主体にした弾性ポリマーあるいはポリ塩化ビニルの多孔質層(11)または非多孔質層(12)の表面層と、編織布または起毛した編織布の支持体層からなる材料」(595頁表4.103)
(3)甲3には、以下の記載がある。
「実施例 1
絞付き離型紙上に、100%モジユラス120Kg/cm2のポリ-1,6-ヘキサンカーボネート系ポリウレタン樹脂溶液100重量部(酸化チタン15重量部含有)を、ドクターナイフコーターにより乾燥厚みが30μになるように塗布し、これを100℃で加熱乾燥させポリカーボネート系ポリウレタン皮膜層を形成し、これを表皮層とする。
つぎに、前記表皮層表面に、100%モジユラス80Kg/cm2のポリアジピン酸系ポリウレタン樹脂溶液をドクターナイフコーターにより、乾燥厚み30μとなるよう塗布し、乾燥してポリエステル系ポリウレタン皮膜層を形成し、これを中皮層とする。
さらに、前記中皮層表面に、100%モジユラス20Kg/cm2のポリ1,6-ヘキサンカーボネート-ポリテトラメチレンエーテル共重合体ポリウレタン接着剤100重量部(三酸化アンチモン5重量部含有)を、目付量200g/m2で塗布し、この表面に、第1表に掲げる処方で前処理した綿起毛布の起毛面を貼合せ、120℃で10分間加熱し、接着剤の硬化後離型紙を剥離し合成皮革を得た。」(4頁右下欄11行~5頁左上欄16行)
(4)甲4には、以下の記載がある。
「【実施例1】
【0055】
下記処方1にて調製した粘度2000cpsの着色樹脂液を、離型紙へ塗布厚200μmになるようにナイフコーティングした後、100℃で2分間乾燥することにより、厚さ40μmの着色樹脂層を得た。
得られた着色樹脂層に、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(クリスボンTA-205、大日本インキ化学工業株式会社製)にDMF(ジメチルホルムアミド)を加え粘度5000cpsに調整した接着剤を塗布厚200μmになるようナイフコーティングし、100℃で1分間予備乾燥した後、ポリエステルトリコット布と重ねて4kgf/cm2で1分間加圧することにより、ポリエステルトリコット布上に着色樹脂層を接合した。次いで、ニードルパーフォレーター(シュミット株式会社製)を用いて、ポリエステルトリコット布の側から着色樹脂層を貫通する、平均孔径60μm、平均密度620個/inch2の孔を形成することにより、本発明の着色シート材を得た。顔料に関するデータを表1に、評価結果を表2、3に示す。
【0056】
〔処方1〕
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂 100部
(クリスボンNY-328、大日本インキ化学工業株式会社製)
DMF 40部
ペリレン系黒色顔料 3部
(Paliogen Black L0084、BASF Aktiengesellschaft製)」
(5)甲5には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 0.5デニール以下の極細繊維を主体としてなる不織布、織物または編物を、ポリウレタンエマルジョンで含浸処理し、加熱乾燥して、合成皮革を製造する方法において、ポリウレタンエマルジョンとメチルハイドロジェンポリシロキサン系エマルジョンを処理浴中に併用して含浸処理することを含む、合成皮革の製造方法。」
「【0019】・・・
実施例1
0.2デニールのポリエステル繊維からなる不織布(目付100g/m2)に下記の処方でパディング処理を施した。パディング処理時のマングル圧は1Kg/cm2であり、絞り率は130%であった。その後、ピンテンターにより110℃で2分間乾熱乾燥後、キュアリングを160℃で1分間行った。
【0020】・・・
図1の電子顕微鏡写真から判るように、上記で得られた合成皮革におけるウレタン樹脂の固着状態は、多孔質かつ繊維と非接着の構造を形成し、厚み感のあるものとなっている。・・・」
5.判断
(1)理由1(29条第2項)
ア.本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比・判断する。
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「透過皮革1」は本件発明1の「合成皮革」に相当し、少なくとも以下の点で相違する。
(相違点1)合成皮革が、本件発明1では、生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなるのに対して、甲1発明では、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が生布に積層されてなるものでない点。
(相違点2)合成皮革が、本件発明1では、部分的に、380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%であるのに対して、甲1発明では、部分的に、380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%であるか否か不明である点。
(イ)事案に鑑みて、はじめに上記相違点2について検討する。
本件特許明細書の段落【0008】の「本発明は、このような知見の下でなし得たものであり、以下を要旨とする。・・・(2)上記可視光線透過率を示す部分が全面もしくは部分的であることを特徴とする前記(1)に記載の合成皮革。・・・」との記載及び【0011】の「本発明の合成皮革は、生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなり、380~780nmの波長領域における可視光線透過率を0.10~11.90%としたことを特徴とする。・・・この可視光線透過率を示す部分は、合成皮革の全面でもよいし、部分的であってもよい。・・・」との記載から、本件発明1の「部分的」とは、合成皮革の領域の一部分の意味である。一方、甲1の【要約】の【解決手段】の「・・・光透過部分を除いて遮光性および可撓性を有するマスクプレート2」との記載及び段落【0033】の記載に基づけば、甲1発明において、部分的に可視光を透過させるは、「透過皮革1の下層に配置されたマスクプレート2」である。そして、甲1には、合成皮革が、部分的に380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%である点が記載も示唆もない。
さらに、甲2~甲5にも、「合成皮革が、部分的に380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%である」点が記載も示唆もない。
そして、本件発明1は、「合成皮革が、部分的に380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%である」を発明特定事項としていることにより、生布にポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層された合成皮革において、「優れた質感や高級な風合いを有するとともに、合成皮革の生布側から表皮層側に向かって光を照射すると、その光を表皮層側で表示できるものであり、生布側から表皮層側に向かって光を照射する前と照射した後の表皮層の見た目(外観)を変化させることができるので、デザインの多様化や意外性を表現できるものである」(本件特許明細書段落【0009】)という作用効果を奏するものである。
よって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
イ.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて備え、さらに減縮したものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2も、甲1発明及び甲2~甲5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない
ウ.小括
したがって、本件発明1及び2に対する理由1には理由がない。
(2)理由2について
ア.申立人の主張の内容
特許権者は、審査段階の意見書(甲6)において、本件各発明と拒絶理由通知において引用された引用発明との相違点に関し、本件特許は、特定の可視光線透過率を示す部分を部分的に存在させていることが引用発明との違いであると主張し、さらに、拒絶理由通知で引用された特開昭58-144184号公報(引例1)に記載された発明との相違点として、「裏面側から光を照射し表皮層の表面側に該光を透過させるという概念については記載はもとより示唆すらもしていない。」と主張することにより、特許を受けた。
しかしながら、本件発明1は、「裏面側から光を照射し表皮層の表面側に該光を透過させるという概念」を規定する発明特定事項を反映しておらず、発明の詳細な説明に記載された範囲を明らかに超えており、サポート要件を充足しない。本件発明2も同様である。
イ.当審の判断
本件発明が解決しようとする課題は、「デザイン上の多様性や意外性のある合成皮革を得るために、表皮層をポリウレタン樹脂で構成する合成皮革において、光の透過率を単純に上げていくと、表皮層のシボ模様が視認しづらくなり、合成皮革の最大の特徴である天然皮革調のシボによる質感が得られなくなる不都合を解消し、優れた質感や風合いを有するとともに、熟練を要さず量産可能な合成皮革を提供する」ことである(本件特許明細書段落【0006】)。
そして、本件特許明細書の段落【0009】、【0011】、【0023】~【0028】の各記載を総合すると、本件発明は、「生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなり、部分的に、380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%である」態様において上記課題を解決できることが読み取れるし、【0028】の【表1】の実施例及び比較例の実験データにおいてもその点が具体的に確認されている。
そもそも、本件発明1の「合皮皮革」は、「可視光線透過率が0.10~11.90%であること」が特定されている以上、光を透過するものであるから、申立人の「本件発明1は、『裏面側から光を照射し表皮層の表面側に該光を透過させるという概念』を規定する発明特定事項を反映しておらず、」との主張は失当である。
また、申立人は、特許異議申立書において、「裏面側から光を照射し表皮層の表面側に該光を透過させるという概念」を規定する発明特定事項を特定しないと、上記課題が解決できないとすることの具体的な根拠を示していない。
以上を総合すると、本件発明1が、上記課題を解決できない態様を包含するとは認められないから、本件発明1は、発明の詳細な範囲に記載された範囲を超えるものではない。
また、本件発明2についても同様である。
したがって、理由2には理由がない。
(3)理由3について
ア.特許異議申立人の主張の内容
本件発明1には、「裏面側から光を照射し表皮層の表面側に該光を透過させる」ための発明特定事項が反映されておらず、裏面側から光を照射しない態様の合成皮革まで含むために、特許を受けようとする発明が不明確である。本件発明2も同様である。
イ.当審の判断
本件発明1は、合成皮革に係る発明であり、請求項1の「生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなり、部分的に、380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%であることを特徴とする合成皮革。」との記載は、明確であり、不明確な記載は含んでいない。
申立人は、本件発明1には、「裏面側から光を照射し表皮層の表面側に該光を透過させる」ための発明特定事項が反映されていないと主張するが、本件発明1の「合皮皮革」は、「可視光線透過率が0.10~11.90%であること」が特定されている以上、光を透過するものであるから、申立人の上記主張は失当であり、請求項1の記載及び本件発明1が不明確であるとはいえない。
また、本件発明2についても同様である。
したがって、理由3には理由がない。
6.むすび
上記5.に示したとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700169