特許拒絶査定不服審判
2017-019236
ペン先
- 審判番号
- 2017-019236
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-215886
- 請求日
- 2017年12月26日
- 審決日
- 2018年11月13日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】テイボー株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 英知国際特許事務所
- 【請求人】株式会社西浦化学
- 【請求人代理人】特許業務法人 英知国際特許事務所
- 【請求人】株式会社新ニッセン
- 【請求人代理人】特許業務法人 英知国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 千葉 輝久
- 審判官 菊地 陽一
- 審判官 山田 正文
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-215886「ペン先」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日出願公開、特開2015- 79347、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月16日の出願であって、平成29年4月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年6月28日付けで手続補正がされ、平成29年7月10日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年9月14日付けで手続補正がされ、平成29年9月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1,2に係る発明は、以下の引用文献1,2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2012-108896号公報
2.特開昭53-25116号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1における「前記導電性物質で被覆される」を「該合成繊維の繊維束の内部まで十分に前記導電性物質で被覆される」とする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、当初明細書の【0025】には、合成繊維の繊維束の内部まで十分に導電性物質で被覆することが記載されているから、「該合成繊維の繊維束の内部まで十分に前記導電性物質で被覆される」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1,2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1,2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、平成29年12月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
繊維束からなるペン先本体に導電性物質を被覆することにより、導電化させたペン先であって、
前記ペン先本体は、合成繊維をバインダにより接着してなる繊維束からなり、繊維束の気孔率が20~80%であり、全重量に対するバインダの比率が1~40%であり、
前記ペン先本体の内部を構成する合成繊維が、該合成繊維の繊維束の内部まで十分に前記導電性物質で被覆されることを特徴とするペン先。
【請求項2】
導電性物質として、ピロールを用いることを特徴とする請求項1記載のペン先。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審により付与したものである。
「【0008】
本発明の目的は、上述した欠点を除去、即ち、水などの導電性液体を入力装置に付着することなく、筆圧による検知位置のズレが少なく、スライド動作時のすべりがよく、かつ、パネル表面を傷つけるような材料を用いずに製造できるペン先を備えた静電容量型入力パッド用のタッチペンの提供にある。」
「【0009】
即ち、本発明は次の(1)~(6)に存する。
(1)静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置に情報を入力する入力用タッチペンであって、前記入力用タッチペンは軸体、および、繊維束を含むペン先尖端から成り、前記軸体の把持部は導電性を有し、かつ、前記ペン先尖端を構成する前記繊維束は、合成繊維または天然繊維を束ね、合成樹脂接着剤により多孔質に結着され、さらに前記繊維束の外側面には導電性材料を含む外皮部が設けられていることを特徴とする入力用タッチペン。
(2)前記軸体の把持部と前記繊維束の外側面は電気的に導通していることを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(3)前記導電性材料が導電性樹脂であることを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(4)前記繊維束は前記ペン先尖端に対して着脱自在であることを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(5)前記ペン先を含む先軸部は、前記軸体に対して着脱自在であることを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(6)前記繊維束先端部は、前記軸体の中心軸と交差する平面を含むことを特徴とする上記(1)から(5)の何れか一つに記載の入力用タッチペン。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタッチペンは、前記した通り、ペン先尖端が合成樹脂接着剤により多孔質に結着された繊維束からなり、更に導電性材料を混合した合成樹脂接着剤を含む外皮部を設けたため、筆圧による検知位置のズレが少なく、スライド動作時のすべりがよく、かつ、入力パネルを傷つけにくい静電容量型入力パネル用タッチペンとなる。また、前記導電性材料を導電性樹脂とすることによって、更に入力パネルを傷つけにくい静電容量型入力パネル用タッチペンとすることが出来る。」
「【0012】
本発明で用いる繊維としては、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維体からなるものが挙げられる。これらの樹脂等に導電性の炭素材等を混練して繊維自体に導電性を持たせる、あるいは、樹脂自体を導電性樹脂とすることによって導電性を持たせることも可能であるが、高価となるうえ、前記列挙したような、ごく普通の繊維を合成樹脂接着剤によって結着させた後、導電性樹脂によって外側に被膜を形成させ、導電性を持たせる方が、安価に製造出来る。
【0013】
前記繊維を結着させる合成樹脂接着剤は、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の硬化前のものを溶媒で適宜に薄めたものである。前記した繊維の束を、樹脂溶液含浸装置を通過して合成樹脂接着剤を含浸させ、この樹脂溶液含浸繊維束を加熱乾燥機に通すことによって、樹脂溶液の溶剤が蒸発し樹脂が硬化し繊維束として固められる。
【0014】
前記した通り、本願発明の繊維束芯は、繊維束の外周を被覆する導電性材料を含む外皮部を設ける。この外皮部は導電性材料により、導電性を持つ。このような外皮部を設けることにより、繊維束から繊維が脱落することを防ぎ、繊維束の曲げ強度等の機械的強度を大幅に向上させることが出来るためペン先を多少押し付けても傷まないことに加え、繊維束芯外皮部に導電性を有するため、ペン先で接触している「区域」が、はっきり認識される。」
「【0017】
前記繊維を結着させ、導電性を持つ外皮部を備えた繊維束とするには、まず前記した通り、樹脂溶液含浸装置を通過して合成樹脂接着剤を含浸させ、この樹脂溶液含浸繊維束を加熱乾燥機に通すことによって、樹脂溶液の溶剤が蒸発し樹脂が硬化し繊維束として固められることにより得られる。ここまでは一般的な繊維束芯の製造方法であるので、この工程を経た製品を購入する等によって、そのまま利用してもよい。次に、この繊維束体に、前記の有機溶剤で希釈したポリウレタン樹脂と導電性樹脂等の混合溶液を、自然に吸い込む程度に含浸させ加熱乾燥させることで、外皮部を設けた導電性繊維束を得ることができる。」
以上の記載、特に下線部によれば、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「繊維束体に、有機溶剤で希釈したポリウレタン樹脂と導電性樹脂等の混合溶液を、自然に吸い込む程度に含浸させ加熱乾燥させることで得られる、外皮部を設けた導電性繊維束をペン先尖端として用いるものであって、
前記繊維束体は、繊維の束を、樹脂溶液含浸装置を通過して合成樹脂接着剤を含浸させ、この樹脂溶液含浸繊維束を加熱乾燥機に通すことによって、樹脂溶液の溶剤が蒸発し樹脂が硬化し繊維束として固められたものであり、
繊維としては、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維体を用いることができる、
ペン先尖端。」
2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の第2頁左下欄第10行~右下欄第5行、表1の記載からみて、当該引用文献2には、筆記具用のペン先に用いられる、繊維に樹脂を含浸して得られる繊維束であって、繊維束の全重量に対する樹脂の重量の比率が約25%、気孔率が60%のものが記載されていると認められる。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「ペン先尖端」は、本願発明1における「ペン先」に相当するから、引用発明における「繊維束体に、有機溶剤で希釈したポリウレタン樹脂と導電性樹脂等の混合溶液を、自然に吸い込む程度に含浸させ加熱乾燥させることで得られる、外皮部を設けた導電性繊維束をペン先尖端として用いる」ペン先尖端は、本願発明1における「繊維束からなるペン先本体に導電性物質を被覆することにより、導電化させたペン先」に相当する。
また、引用発明において繊維束体を製造する際に用いられる繊維には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の合成繊維を用いることができ、引用発明における「合成樹脂接着材」は、本願発明1における「バインダ」に相当するから、引用発明において「前記繊維束体は、繊維の束を、樹脂溶液含浸装置を通過して合成樹脂接着剤を含浸させ、この樹脂溶液含浸繊維束を加熱乾燥機に通すことによって、樹脂溶液の溶剤が蒸発し樹脂が硬化し繊維束として固められたものであ」ることは、本願発明1において「前記ペン先本体は、合成繊維をバインダにより接着してなる繊維束からな」ることに相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「繊維束からなるペン先本体に導電性物質を被覆することにより、導電化させたペン先であって、
前記ペン先本体は、合成繊維をバインダにより接着してなる繊維束からなる、ことを特徴とするペン先」
(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「繊維束の気孔率が20~80%であり、全重量に対するバインダの比率が1~40%であ」るのに対し、引用発明は、繊維束の気孔率や全重量に対するバインダの比率について特定されていない点。
(相違点2)本願発明1は、「ペン先本体の内部を構成する合成繊維が、該合成繊維の繊維束の内部まで十分に前記導電性物質で被覆される」ものであるのに対し、引用発明はそのような特定はされていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1,2について検討する。相違点1に係る本願発明1の、繊維束の気孔率が20~80%であり、全重量に対するバインダの比率が1~40%であるという構成について、上記「第5」2.で示したとおり、引用文献2には、繊維束の全重量に対する樹脂の重量の比率が約25%、気孔率が60%のものが記載されていると認められる。
そして、引用文献1の【0017】には、引用発明における繊維束体としては市販のものも含めて一般的な繊維束体を用いても良いことが記載されているから、引用発明における繊維束体として、引用文献2に記載されたものを採用することは考えられる。
しかしながら、本願発明1と引用発明とでは、導電加工の方法が大きく異なっているため、仮に引用発明における繊維束体として、引用文献2に記載されたものを採用し、引用発明における導電加工の方法で導電化処理をおこなったとしても、相違点2に係る本願発明1の、ペン先本体の内部を構成する合成繊維が、該合成繊維の繊維束の内部まで十分に導電性物質で被覆されるという構成には必ずしもならないと認められる。
本願発明1は、ペン先本体の内部を構成する合成繊維が、該合成繊維の繊維束の内部まで十分に導電性物質で被覆されることにより、長期に亘り安定した導電性を有するペン先となるという効果を奏するものであり、そのようにすることが単なる設計的事項であるとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1と同様に、ペン先本体の内部を構成する合成繊維が、該合成繊維の繊維束の内部まで十分に導電性物質で被覆されるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
1.理由(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1,2は「前記ペン先本体の内部を構成する合成繊維が、該合成繊維の繊維束の内部まで十分に前記導電性物質で被覆される」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1,2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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