特許拒絶査定不服審判
2017-018965
ガス漏れ警報器
- 審判番号
- 2017-018965
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-069964外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月21日
- 審決日
- 2018年10月15日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】新コスモス電機株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人R&C
- 分類
- P18 .121-Z (G08B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 69964「ガス漏れ警報器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 9日出願公開、特開2014-194590〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年1月30日付け:拒絶理由通知書
平成29年5月31日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年9月29日付け:拒絶査定
平成29年12月21日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、平成29年5月31日提出の手続補正書により補正された、請求項1~6に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
発光部がカバー部材と一体に成形されており、前記発光部が、前記カバー部材の内側に設けてある発光部材からの光を受けて面発光可能に構成され、前記発光部が、前記カバー部材の他の部分よりも薄肉に構成されているガス漏れ警報器。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2005-18174号公報
引用文献2:特開2011-112309号公報
引用文献4:特開2006-133434号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2012-243509号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2005-3334号公報 (周知技術を示す文献)
第4 引用発明及び周知事項
1 引用文献
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2005-18174号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0009】
請求項1記載の発明によれば、筐体の一面に設けた開口部の背面側に発光素子が配置される。この発光素子の正面側に、開口部を覆い、かつ、発光素子からの光を散乱させる透光性の部材が配置されている。従って、発光素子からの光を散乱することにより、開口部を覆う部材を面発光させることができる。」
「【0033】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
以下、この発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のガス漏れ警報器の第1実施形態を示す部分断面図である。同図に示すように、ガス漏れ警報器の筐体としてのケース20には、ガス漏れを検出する検出手段としてのガスセンサ(図示せず)と、このガスセンサがガス漏れを検出したとき点灯する発光素子、警報発光素子としての赤色発光ダイオード(以下、赤色LED)21Rとが収容されている。この赤色LED21Rは、ケース20内部に設置された基板26に搭載されている。
【0034】
また、上記ケース20の正面には、開口部22が設けられ、この開口部22を覆うように乳白色の半透明性ポリカーボネート板23(以下、PC板23)が配置されている。このPC板23は、請求項中の部材に相当し、内部に分散された結晶によって光が散乱するものである。また、このPC板23の周縁には、背面に向かって突起する凸部23aが設けられ、凸部23aの外側面23a-1がケース20外に露出されている。さらに、このPC板23と、周縁に設けられた凸部23aとがなす内周角R1及び外周角R2には曲率がつけられている。
【0035】
そして、このPC板23の背面側に赤色LED21Rが配置されている。さらに、この赤色LED21Rの周囲には、白色の壁部24が設けられている。また、上記赤色LED21R及びPC板23は、PC板23全体が赤色LED21Rの半値角θ1/2内に入り、かつ、両者の距離が最も短くなるような位置に配置されている。」
(イ)上記記載から引用文献には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
上記【0033】の記載によれば、ガス漏れ警報器は、筐体としてのケース20を有している。上記【0034】の記載によれば、上記ケース20の正面の開口部には、乳白色の半透明性ポリカーボネート板23(以下、PC板23)が配置されている。そうすると、ガス漏れ警報器には、PC板23とケース20とが別体として設けられているといえる。
上記【0034】の記載によれば、赤色LED21Rは、ケース20の内側に設けられているといえる。上記【0034】~【0035】の記載によれば、PC板23が赤色LED21Rからの光を受けているといえる。さらに、上記【0009】には、開口を覆う部材を面発光させると記載され、該部材は、上記【0034】の記載によれば、PC板23である。そうすると、PC板23は、前記ケース20の内側に設けてある赤色LED21Rからの光を受けて面発光可能に構成されているといえる。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「PC板23とケース20とを別体として設けられており、前記PC板23が、前記ケース20の内側に設けてある赤色LED21Rからの光を受けて面発光可能に構成される、ガス漏れ警報器。」
2 周知事項
(ア)本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-112309号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0020】
図1および図2によく表われるように、この操作装置Aは、筐体1、この筐体1に設けられた無接点方式である静電スイッチとしての複数の操作スイッチSW0~SW3、押釦を用いた接点方式の操作スイッチ8、複数の発光部12A~12C、制御回路2Aを構築する制御基板2、データ表示用の表示部3、および静電容量センサ4を具備している。なお、操作スイッチSW0~SW3は、物理的な操作釦を有しておらず、図面における符号SW0~SW3は、操作スイッチとして機能する領域を示している。
【0021】
筐体1は、扁平な略直方体状であり、この筐体1の前壁部11の表面が、複数の操作スイッチSW0~SW3が設けられた操作面11aである。筐体1は、前壁部11を有する合成樹脂製の筐体本体部10を有している。本実施形態では、筐体本体部10の背面側に背板部19が取り付けられているが、筐体1は、そのような背板部19を具備することなく、台所などの壁面に取り付けられる構造とすることもできる。」
「【0025】
複数の発光部12A~12Cは、筐体1の前壁部11の複数箇所を部分的な薄肉部とすることにより構成されている。より具体的には、図3に示すように、前壁部11の裏面側には、複数の凹部15aが形成されていることにより、前壁部11の複数箇所は薄い厚みt1の薄肉部とされており、この薄肉部が発光部12A~12Cに相当する。制御基板2には、LEDなどの複数の光源7が搭載され、かつこれらの光源7から発光部12A~12Cに向けて個別に光を進行させることが可能である。発光部12A~12Cは、進行してきた光を筐体1の正面に透過させる。このため、発光部12A~12Cは、筐体1の正面から光って見える(発光する)。光源7の点灯および消灯により、発光部12A~12Cは、発光状態と非発光状態とに切り替えられる。なお、複数の凹部15aの周囲には、凹部15aよりも深さが浅い追加の凹部15bが形成され、中間肉厚部13が形成されている。この中間肉厚部13の厚みt2は、非薄肉部14の厚みt3と発光部12A~12C(薄肉部)の厚みt1との中間である。このような構成によれば、前壁部11の厚みが凹部15aの形成箇所において急変することを緩和し、筐体1を樹脂成形する際に前壁部11の表面にヒケが発生することを防止することができる。
【0026】
発光部12A~12Cは、より具体的には、メニュースイッチ用の発光部12A、および増減変更スイッチ用の発光部12B,12Cである。メニュースイッチ用の発光部12Aは、操作面11aのうち、メニュースイッチSW1と同一の配置に設けられており、正面視円形リング状ある。増減変更スイッチ用の発光部12B,12Cは、操作面11aのうち、増減変更スイッチSW2,SW3と同一の配置に設けられており、ともに正面視円形のリング形状部を有している。ただし、発光部12Bは、リング形状部分の内側に「+」の記号を表わす部分を有している。発光部12Cは、リング形状部分の内側に「-」の記号を表わす部分を有している。」
(イ)上記記載から周知例1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
上記【0025】の記載によれば、発光部12A~12Cは、前壁部11の薄い厚みt1の薄肉部であって、該前壁部11は、筐体1の一部である。
さらに、上記【0025】の記載によれば、光源としてLEDが例示されているから、上記【0020】記載の操作装置Aは表示装置といえる。
そうすると、操作装置Aは、発光部12A~12Cが筐体1と一体に成形されており、前記発光部12A~12Cが筐体1の他の部分よりも薄肉に構成されている表示装置といえる。
上記【0021】の記載によれば、筐体1は扁平であり、上記【0025】~【0026】の記載によれば、発光部12A~12Cは筐体1に設けられているから、該発光部12A~12Cの形状は面状であるといえる。そして、上記【0025】の記載によれば、光源7から上記発光部12A~12Cに向けて光を進行させているから、該発光部12A~12Cは、該光により、面発光しているといえる。
(ウ)本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2005-3334号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0033】
(実施例3)
図11および図12に示すように、空気の清浄手段(図示せず)を設けた本体3Aの前面側に合成樹脂製のフロントパネル4Aを着脱可能に設け、フロントパネル4Aに凹レンズ状に裏面を肉ぬすみした薄肉部を一体成形して表示部16を形成する。この表示部16の裏面に対向してLED17を本体3Aに設けLED17の周囲にはラッパ状に形成した反射体18を設け、LED17の発光が薄肉の表示部16に照射される形状となっている。
【0034】
上記構成において、LED17を点灯するとLED17からの光がフロントパネル4Aの裏面側より表示部16に照射され、表示部16はLED17の光を透過するとき凹レンズとして働き、直進光を屈折させて広範囲に拡げ、また薄肉構造であるため、表示部16に視認性を高めるように明るく表示される。
【0035】
このように本発明の実施例3の空気清浄機の発光表示装置によれば、空気の清浄手段7Aを設けた本体3Aと、この本体3Aの前面側に設けられる合成樹脂製のフロントパネル4Aと、このフロントパネル4Aに一体成形した薄肉形状の表示部16とを備え、表示部16の裏面側からLED17の光を透過して表示させる構成としたので、化粧パネルや別部品等が不要となり、製造コストを削減することができ、また、フロントパネル4A表面に凹凸が生じないので、フロントパネル4Aの表面が汚れた場合に清掃が容易となるとともにデザイン性も向上することができる。」
「【図面の簡単な説明】
・・・(中略)・・・
【図12】同空気清浄機の発光表示装置の断面図
(以下、省略)」
(エ)上記記載から周知例2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
上記【0033】~【0034】の記載によれば、表示部16がフロントパネル4Aと一体に成形されており、前記フロントパネル4Aの内側に設けてあるLED17の発光が前記表示部16に照射され、前記表示部16が、前記フロントパネル4Aの他の部分よりも薄肉に構成しているといえる。
上記【図面の簡単な説明】の記載によれば、図12は空気清浄機の発光表示装置の断面図である。そうすると、該図12の記載によれば、表示部16の形状は面状といえる。さらに、上記【0033】~【0034】によれば、LED17の発光が該表示部16に照射されるから、該表示部16は面発光しているといえる。
上記【0035】には、空気清浄機の発光表示装置と記載されているから、表示装置の一種であるといえる。
(オ)上記(ア)~(エ)から、次の事項(以下、「周知事項」という。)は周知技術であると認められる。
「発光部がカバー部材と一体に成形されており、前記発光部が、前記カバー部材の内側に設けてあるLEDからの光を受けて面発光可能に構成され、カバー部材の他の部分よりも薄肉に構成されている表示装置。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「赤色LED21R」は赤色の光を発光するから、本願発明の「発光部材」に相当する。
引用発明における「PC板23」、「ケース20」は、本願発明の「発光部」、「カバー部材」に各々対応し、本願発明も引用発明も、発光部とカバー部材とを有している点で共通している。
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
1 【一致点】
「発光部とカバー部材とを有し、前記発光部が、前記カバー部材の内側に設けてある発光部材からの光を受けて面発光可能に構成されているガス漏れ警報器。」
2 【相違点】
<相違点1>
発光部とカバー部材に関して、本願発明は、「発光部がカバー部材と一体に成形されており」、発光部が「カバー部材の他の部分よりも薄肉に構成されている」のに対し、引用発明は、発光部とカバー部材とが別体であって、薄肉部がない点。
第6 判断
以下、相違点について検討する。
1 相違点1について
上記引用発明と上記周知事項とは、発光部材をLEDとし、発光部は面発光可能に構成される、表示を行う装置である点で共通しており、表示を行う装置において面発光させるための構成は、必要に応じて採用するものであるから、引用発明の発光部とカバー部材とを、周知事項のように構成することは、当業者が容易になし得る。
2 効果について
上記相違点1を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、引用発明において発光部がケースから突出していることは必須事項であり、引用発明に周知事項を採用すると、引用発明の「より広範囲において、赤色LED21Rの点灯状態を見分けることができる。」が失われるおそれがあるから、該採用に動機付けが無い旨主張し(以下、「主張1」という。)、さらに、引用発明と周知事項とは、光を利用する目的が全く異なるから、引用発明と周知事項とを組み合わせる動機付けは無い旨主張している(以下、「主張2」という。)。
まず、上記主張1について検討する。
ガス漏れ警報器は、「より広範囲」でなくとも、使用者が、発光部材からの光を見分けることができれば、ガス漏れを警報するとの機能は奏する。引用発明の構造から見て、該「突出」していなくても、使用者は、赤色LED21Rからの光を見分けることができる。
そうすると、上記「突出」は、引用発明のガス漏れ警報器において必須の構成ではない。
また、「突出」させることを維持したまま発光部をカバー部材と一体に形成することも可能である。
そうすると、上記「突出」は、引用発明と周知事項とを組み合わせる際の阻害要因とはならない。
次に、上記主張2について検討する。
光を用いた表示を行う装置は、使用者に情報を伝える目的で光を点灯するものである。
そして、使用者に伝える情報の内容は、用途、すなわち、表示を行う構成を適用する装置に応じて適宜決定され、この点は、周知事項に係る「一体に成形され」ていることや「薄肉」であることとは無関係である。
そうすると、引用発明と周知事項との間に、光を用いた表示の内容の相違や用途の相違があるとしても、引用発明に周知事項を組み合わせることの動機付けが否定されることにはならない。
上記したとおり、上記引用発明と上記周知事項とを組み合わせることに阻害要因はなく、表示を行う装置において発光させるための構成は、表示することにより使用者に伝える効果を有しているのであれば、必要に応じて採用するものであるから、上記引用発明と上記周知事項とを組み合わせることは、当業者が容易に想到し得る。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-018965