特許拒絶査定不服審判
2024-000297
熱感知器
- 審判番号
- 2024-000297
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-065071
- 請求日
- 2024年01月10日
- 審決日
- 2024年07月17日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】能美防災株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人きさ特許商標事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 馬場 慎
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P18 .121-Z (G08B) / P18 .57 -Z (G08B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 65071「熱感知器」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月14日出願公開、特開2022- 88675〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月28日に出願した特願2018-34065号の一部を令和4年4月11日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年 4月11日 上申書
令和 5年 6月30日付け 拒絶理由通知書
令和 5年 9月 4日 意見書、手続補正書
令和 5年 9月28日付け 拒絶査定
令和 6年 1月10日 審判請求書、手続補正書
第2 令和6年1月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正により、以下(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の記載が、以下(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。(下線は、補正箇所を示す。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられた基板と、
気流が流入する流入孔を有し、前記本体に設けられた前記基板の下面を覆うように前記本体に取り付けられ、前記基板の下面と対向する平板状のカバー底面部を有したカバーと、
前記基板から前記カバー底面部へ向かって斜めに延びるように前記基板に取り付けられ、前記流入孔より流入した前記気流の熱を検知する熱検知部と、を備え、
前記流入孔は、少なくとも前記カバーの外周に設けられた水平孔を含むものであり、
前記熱検知部は、前記基板に固定され、前記熱検知部において前記基板の下面から下側に延び出た部分が前記カバー底面部へ向かって傾斜して直線状に延びるものであり、
前記熱検知部は、
感熱部と、
先端である下端に前記感熱部が取り付けられ、前記基板から前記カバー底面部へ向かって前記基板の下面と一定の角度になるよう傾斜させた直線状に延びるリード部と、を有し、
前記感熱部の長さは、前記リード部において前記基板の下面から前記カバー底面部の側へ突出した部分の長さよりも短く、
前記カバーは、前記感熱部が前記カバー内に配置され、且つ、前記基板の下面と前記カバー底面部との距離が、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分の傾斜方向の長さよりも短くなるように設けられる、
熱感知器。
【請求項2】
前記流入孔は、前記カバー底面部に形成された垂直孔を含むものであり、
前記熱検知部が前記基板に固定される固定部を下方の前記カバー底面部に投影した場合において、前記固定部は前記カバー底面部内に投影されるが前記垂直孔とは重複しない
請求項1に記載の熱感知器。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられた基板と、
気流が流入する流入孔を有し、前記本体に設けられた前記基板の下面を覆うように前記本体に取り付けられ、前記基板の下面と対向する平板状のカバー底面部を有したカバーと、
前記基板から前記カバー底面部へ向かって斜めに延びるように前記基板に取り付けられ、前記流入孔より流入した前記気流の熱を検知する熱検知部と、を備え、
前記流入孔は、少なくとも前記カバーの外周に設けられた水平孔を含むものであり、
前記熱検知部は、前記基板に固定され、前記熱検知部において前記基板の下面から下側に延び出た部分が前記カバー底面部へ向かって傾斜して直線状に延びるものであり、
前記熱検知部は、
感熱部と、
先端である下端に前記感熱部が取り付けられ、前記基板から前記カバー底面部へ向かって前記基板の下面と一定の角度になるよう傾斜させた直線状に延びるリード部と、
前記リード部の上端に設けられ、前記基板に固定されたピンと、を有し、
前記感熱部の長さは、前記リード部において前記基板の下面から前記カバー底面部の側へ突出した部分の長さよりも短く、
前記感熱部と前記リード部とは、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分であり、一体的にコーティングされており、
前記カバーは、前記感熱部が前記カバー内に配置され、且つ、前記基板の下面と前記カバー底面部との距離が、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分の傾斜方向の長さよりも短くなるように設けられる
熱感知器。
【請求項2】
前記流入孔は、前記カバー底面部に形成された垂直孔を含むものであり、
前記熱検知部が前記基板に固定される固定部を下方の前記カバー底面部に投影した場合において、前記固定部は前記カバー底面部内に投影されるが前記垂直孔とは重複しない
請求項1に記載の熱感知器。
【請求項3】
本体と、
前記本体に設けられた基板と、
気流が流入する流入孔を有し、前記本体に設けられた前記基板の下面を覆うように前記本体に取り付けられ、前記基板の下面と対向する平板状のカバー底面部を有したカバーと、
前記基板から前記カバー底面部へ向かって斜めに延びるように前記基板に取り付けられ、前記流入孔より流入した前記気流の熱を検知する熱検知部と、を備え、
前記流入孔は、少なくとも前記カバーの外周に設けられた水平孔を含むものであり、
前記熱検知部は、前記基板に固定され、前記熱検知部において前記基板の下面から下側に延び出た部分が前記カバー底面部へ向かって傾斜して直線状に延びるものであり、
前記熱検知部は、
感熱部と、
先端である下端に前記感熱部が取り付けられ、前記基板から前記カバー底面部へ向かって前記基板の下面と一定の角度になるよう傾斜させた直線状に延びるリード部と、を有し、
前記感熱部の長さは、前記リード部において前記基板の下面から前記カバー底面部の側へ突出した部分の長さよりも短く、
前記カバーは、前記感熱部が前記カバー内に配置され、且つ、前記基板の下面と前記カバー底面部との距離が、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分の傾斜方向の長さよりも短くなるように設けられ、
前記熱検知部は、前記感熱部が前記基板の外縁よりも外側、且つ、前記基板の下面と前記カバー底面部との間において前記カバー底面部の側に位置するように、前記基板に固定されている
熱感知器。」
2 補正の適否
(1)本件補正は、請求項3を新たに追加する補正事項を含み、補正前後で請求項の数が増加する、いわゆる増項補正を含むものである。
(2)そして、本件補正前の請求項1~2と本件補正後の請求項1~3とを比較すると、本件補正前の請求項1は、本件補正後の請求項1及び3に対応しているということができる。また、本件補正前の請求項2は、本件補正後の請求項2に対応している。
(3)ここで、増項補正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するといえるためには、多数項引用形式で記載された一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする補正、又は、発明特定事項が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項とする補正、という格別な事情がある場合に限られる。
しかしながら、本件補正後の請求項1及び3には、前記に示すような格別な事情は認められず、「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。
(4)また、増項補正が「請求項の削除」、「誤記の訂正」又は「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当しないことは明らかである。
(5)したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、令和5年9月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。なお、後の参照の便宜のため、本願発明を以下のA~Jに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
「A 本体と、
B 前記本体に設けられた基板と、
C 気流が流入する流入孔を有し、前記本体に設けられた前記基板の下面を覆うように前記本体に取り付けられ、前記基板の下面と対向する平板状のカバー底面部を有したカバーと、
D 前記基板から前記カバー底面部へ向かって斜めに延びるように前記基板に取り付けられ、前記流入孔より流入した前記気流の熱を検知する熱検知部と、を備え、
E 前記流入孔は、少なくとも前記カバーの外周に設けられた水平孔を含むものであり、
F 前記熱検知部は、前記基板に固定され、前記熱検知部において前記基板の下面から下側に延び出た部分が前記カバー底面部へ向かって傾斜して直線状に延びるものであり、
G 前記熱検知部は、
G1 感熱部と、
G2 先端である下端に前記感熱部が取り付けられ、前記基板から前記カバー底面部へ向かって前記基板の下面と一定の角度になるよう傾斜させた直線状に延びるリード部と、を有し、
H 前記感熱部の長さは、前記リード部において前記基板の下面から前記カバー底面部の側へ突出した部分の長さよりも短く、
I 前記カバーは、前記感熱部が前記カバー内に配置され、且つ、前記基板の下面と前記カバー底面部との距離が、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分の傾斜方向の長さよりも短くなるように設けられる、
J 熱感知器。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1及び2に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2009-230510号公報
引用文献2.特開昭64-13792号公報
引用文献3.特開平9-307209号公報
引用文献4.特開2005-12039号公報
3 引用文献
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-230510号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
「【0001】
本発明は、環境の変化を表す環境値が許容範囲を超えたときに火災を検知する火災警報器に関するもので、特に、流体の温度を測定することで火災を検知する熱感知式の火災警報器に関するものである。」
「【0012】
このような火災警報器において、前記熱感知器を前記筐体の外部に突出させることなく、前記筐体内部に設置することで、前記筐体の薄型化が実現できるため、火災警報器の小型化及び薄型化を図ることができる。又、前記熱感知器が前記熱気流に直接曝される位置に設置される構成とすることで、前記熱感知器による測定感度の低下を防ぐことができる。」
「【0022】
図1に示すように、本実施形態の火災警報器は、天井面又は壁面などの取付面に取り付けられるとともに装置全体を覆う筐体1と、筐体1内部に設けられた回路基板2と、回路基板2と電気的に接続された熱感知部であるサーミスタ3と、警報の発報を行う発音体4と、電力供給を行う電池5とを備える。取付面に対して垂直な方向に対して、筐体1の内部の空間は、回路基板2によって2分割され、回路基板2に対して取付面側の第1空間10aにサーミスタ3が設置され、回路基板2に対して取付面の反対側の第2空間10bに発音体4が設置される。
【0023】
筐体1は、取付面に設置される基台11と、基台11の外周縁より取付面から離れる方向に突出させたリング状の側壁12と、側壁12における基台11に覆われる端部と逆側の端部を覆う略円盤状の天板13とを有する。そして、側壁12は、第1空間10aを覆う領域に第1開口部14を有することで、筐体1の外周側の周辺環境(外環境)に対して、第1空間10aを開放する。」
「【0028】
サーミスタ3は、回路基板2における第2開口部15の外側の領域で端子が半田付けなどにより電気的に接続されるとともに、回路基板2から取付面に向かって延びた後に第2開口部15に向かって屈曲させたL字形状となる。このように構成するとき、取付面に対して垂直な方向における第1開口部14の中心位置に、サーミスタ3の屈曲部分が設けられるとともに、第2開口部15の中心位置にサーミスタ3の先端を位置させる。
【0029】
これにより、温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端が、第1開口部14及び第2開口部15のそれぞれから流入される熱気流に対して、直接曝される位置に配置される。尚、第2開口部15の流路を構成する側壁は、取付面に対して垂直な方向に対して回路基板2より突出させた端部が、第1開口部14の天板13側における開口位置の高さよりも天板13側に位置するように構成される。即ち、第2開口部15の流路を構成する側壁は、第1開口部14よりサーミスタ3へ流れる熱気流の障害とならない位置まで形成される。」
「【0035】
尚、本実施形態において、図1に示すように、第1空間10aが取付面側(筐体1の基台11側)に構成されるものとしたが、図4に示すように、第2空間10bが取付面側(筐体1の基台11側)に構成されるものとしてもよい。このとき、基台11の取付面と対向する端面には、筐体1より取付面側に突出した支持部材17が周設される。この支持部材17が取付面に接続されて火災警報器が設置されることで、基台11が取付面から離れた位置に配置される。又、側壁12は、天板13側に第1開口部14が設けられる。」
「【0037】
又、サーミスタ3は、回路基板2から天板13に向かって突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状となるため、第2開口部15は、図1の構成のように回路基板2に向かう流路を形成する必要がない。又、回路基板2についても、図1の構成のように、第2開口部15による流路を形成する側壁が貫通することがないので、図1の構成における貫通穴が塞がれた構成となる。」
「【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】は、本発明の第1の実施形態の火災警報器の構成を示す概略断面図である。
(・・・中略・・・)
【図4】は、本発明の第1の実施形態の火災警報器の別の構成例を示す概略断面図である。
(・・・後略・・・)」
「【図4】
[図:0001415110000001.jpg]
」
・火災警報器の取付面を天井面としたとき、取付面側が「上」となり(上面、上側、上端などと称され)、取付面とは反対側が「下」となる(下面、下側、下端などと称される)ことは明らかであり、【図4】における上下もそのように描かれている。また、【図4】において、上下方向は鉛直方向といえるから、図の左右方向は水平方向といえる。
・【図4】より、天板13は、回路基板2の下面と対向していることが見てとれる。
・【図4】より、第1開口部14を通過する気流は、概略水平方向に流れることが見てとれる。
・【図4】より、サーミスタ3の先端(●の部分)の長さは、回路基板2から天板13に向かって突出させた後に天板13付近で屈曲させた部分(●の部分を除いたL字形状の線で描かれた部分:以下「L字状線部」という。)の長さよりも短いことが見てとれる。
・【図4】より、回路基板2の下面と天板13との距離が、サーミスタ3の回路基板2の下面から下側へ延びさらに第2開口部15の中心に向かって延びた部分の長さ(サーミスタ3の先端(●の部分)及びL字状線部の長さ)よりも短いことが見てとれる。
(2)引用発明
したがって、特に、引用文献1に記載の第1の実施形態の火災警報器の別の構成例(【0035】、【0037】、図4)に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明を以下のa~kに分説し、「構成a」のようにして参照する。
「a 熱感知式の火災警報器であって(【0001】)、
b 天井面である取付面に取り付けられるとともに装置全体を覆う筐体1と、筐体1内部に設けられた回路基板2と、回路基板2と電気的に接続された熱感知部であるサーミスタ3とを備え(【0022】)、
c 筐体1は、取付面に設置される基台11と、基台11の外周縁より取付面から離れる方向に突出させたリング状の側壁12と、側壁12における基台11に覆われる端部と逆側の端部を覆う略円盤状の天板13とを有し(【0023】)、
d 側壁12は、天板13側に第1開口部14が設けられ(【0035】)、
e 第1開口部14を通過する気流は、概略水平方向に流れ(図4)、
f 天板13は、回路基板2の下面と対向し(図4)、
g 温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端が、第1開口部14から流入される熱気流に対して、直接曝される位置に配置され(【0029】)、
h サーミスタ3は、回路基板2から天板13に向かって突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状となり(【0037】)、
i サーミスタ3の先端の長さは、回路基板2から天板13に向かって突出させた後に天板13付近で屈曲させた部分(L字状線部)の長さよりも短く(図4)、
j 回路基板2の下面と天板13との距離が、サーミスタ3の回路基板2の下面から下側へ延びさらに第2開口部15の中心に向かって延びた部分の長さよりも短い(図4)、
k 火災警報器。」
4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)発明特定事項Aについて
引用発明の「筐体1」は、「基台11」と「側壁12」と「天板13」とを有しており(構成c)、天井面である取付面(構成b)に取り付けられる「基台11」(構成c)は、本願明細書の「本体10はベース11を介して天井200に取り付けられている。」(【0010】)との記載を参照すると、本願発明の「本体」に相当する。
(2)発明特定事項Bについて
ア 引用発明の「回路基板2」(構成b)は、本願発明の「基板」に相当する。
イ 本願発明の「基板」は「本体に設けられ」ているのに対し、引用発明の「回路基板2」は「筐体1内部に設けられ」ている(構成b)ものの、「基台11」に設けられているか否かは特定されていない。
(3)発明特定事項Cについて
ア 引用発明の「筐体1」は、「基台11」と「基台11の外周縁より取付面から離れる方向に突出させたリング状の側壁12」と「側壁12における基台11に覆われる端部と逆側の端部を覆う略円盤状の天板13」とを有している(構成c)ところ、基台11の外周縁に取り付けられた「側壁12」と当該「側壁12」を覆う「天板13」とを合わせたものは、本願発明の「カバー」に相当する。
イ 引用発明の「側壁12」は、「天板13側に第1開口部14が設けられ」ており(構成d)、熱気流が「第1開口部14から流入される」(構成g)から、当該「第1開口部14」が、本願発明の「気流が流入する流入孔」に相当する。
ウ 引用発明の「回路基板2」は「筐体1内部に設けられ」ており(構成b)、「側壁12」及び「天板13」は、「基台11」に対して天井面である取付面から離れる方向に位置する(構成c)ところ、「側壁12」と「天板13」とを合わせたものが、回路基板2の下面を覆うことは明らかである。
エ 引用発明の「天板13」は、「略円盤状」であり(構成c)、「回路基板2の下面と対向」する(構成f)から、本願発明の「基板の下面と対向する平板状のカバー底面部」に相当する。
オ 上記ア~エによれば、本願発明と引用発明とは、気流が流入する流入孔を有し、前記基板の下面を覆うように前記本体に取り付けられ、前記基板の下面と対向する平板状のカバー底面部を有したカバーを備える点で共通する。
(4)発明特定事項Dについて
ア 引用発明の「サーミスタ3」は、「回路基板2と電気的に接続された熱感知部」(構成b)であり、「第1開口部14から流入される熱気流に対して、直接曝される位置に配置され」る(構成g)から、本願発明の「基板に取り付けられ、前記流入孔より流入した前記気流の熱を検知する熱検知部」に相当する。
イ 引用発明の「サーミスタ3」は、「回路基板2から天板13に向かって突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状」(構成h)であり、「回路基板2の下面から下側へ延び(さらに第2開口部15の中心に向かって延び)た部分」(構成j)を有するから、回路基板2から天板13に向かって延びるように回路基板2に取り付けられているものである。
ウ 上記ア及びイによれば、本願発明と引用発明とは、基板から前記カバー底面部へ向かって延びるように前記基板に取り付けられ、前記流入孔より流入した前記気流の熱を検知する熱検知部を備える点で共通する。
ただし、本願発明の「熱検知部」は、基板からカバー底面部へ向かって「斜めに」延びるように取り付けられるのに対し、引用発明の「サーミスタ3」は、回路基板2から天板13へ向かって「突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状」で取り付けられる点で相違する。
(5)発明特定事項Eについて
ア 上記(3)アのとおり、基台11の外周縁に取り付けられた「側壁12」と当該「側壁12」を覆う「天板13」とを合わせたものが本願発明の「カバー」に相当するところ、引用発明の「側壁12」は、本願発明の「カバーの外周」に相当する。
イ 上記(3)イのとおり、引用発明の「側壁12」には「第1開口部14」(本願発明の「流入孔」に相当)が設けられている。
ウ 引用発明の「第1開口部14」は、そこを通過する気流が「概略水平方向に流れ」る(構成e)ところ、本願明細書の「水平孔33aを介して、水平気流が流通空間SPに流入する。」(【0014】)との記載によれば、本願発明の「水平孔」に相当する。
エ 上記ア~ウによれば、本願発明と引用発明とは、流入孔は、少なくとも前記カバーの外周に設けられた水平孔を含むものである点で一致する。
(6)発明特定事項Fについて
ア 引用発明の「サーミスタ3」は、「回路基板2から天板13に向かって突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状」(構成h)であり、「回路基板2の下面から下側へ延びさらに第2開口部15の中心に向かって延びた部分」(構成j)を有するから、回路基板2の下面から下側に延び出た部分を有するということができる。
イ 上記ア及び上記(4)によれば、本願発明と引用発明とは、熱検知部は、前記基板に固定され、前記熱検知部において前記基板の下面から下側に延び出た部分が前記カバー底面部へ向かって延びるものである点で共通する。
ただし、本願発明の「熱検知部」は、カバー底面部へ向かって「傾斜して直線状に」延びるものであるのに対し、引用発明の「サーミスタ3」は、天板13へ向かって「突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状」である点で相違する。
(7)発明特定事項G、G1、G2について
ア 発明特定事項Gについて
上記(4)のとおり、引用発明の「サーミスタ3」は、本願発明の「熱検知部」に相当する。
イ 発明特定事項G1について
引用発明の「温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端」(構成g)が、本願発明の「感熱部」に相当する。
ウ 発明特定事項G2について
電子部品をそのリードにより基板に取り付けることが技術常識であることを踏まえると、引用発明の「サーミスタ3」のうち、「温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端」を回路基板2と電気的に接続する部分が、本願発明の「リード部」に相当する。
そして、上記(4)によれば、本願発明と引用発明とは、先端に前記感熱部が取り付けられ、前記基板から前記カバー底面部へ向かって延びるリード部を有する点で共通する。
ただし、本願発明の「リード部」は、基板からカバー底面部へ向かって「前記基板の下面と一定の角度になるよう傾斜させた直線状に」延びるのに対し、引用発明の「温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端」を回路基板2と電気的に接続する部分は、回路基板2から天板13へ向かって「突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状」である点で相違する。
また、これにともなって、本願発明は、先端「である下端」に感熱部が取り付けられるのに対し、引用発明は、その点が特定されていない点で相違する。
(8)発明特定事項Hについて
引用発明の「サーミスタ3の先端の長さは、回路基板2から天板13に向かって突出させた後に天板13付近で屈曲させた部分(L字状線部)の長さよりも短」い(構成i)ことは、上記(7)イ、ウを踏まえると、本願発明の「感熱部の長さは、前記リード部において前記基板の下面から前記カバー底面部の側へ突出した部分の長さよりも短」いことに相当する。
(9)発明特定事項Iについて
ア 引用発明の「サーミスタ3」は「筐体1内部に設けられ」ており(構成b)、引用発明の「筐体1」は「基台11」と「側壁12」と「天板13」とを有している(構成c)ところ、「サーミスタ3」は「側壁12」と「天板13」とを合わせたものの内側に配置されることは明らかである。
イ 引用発明の「回路基板2の下面と天板13との距離が、サーミスタ3の回路基板2の下面から下側へ延びさらに第2開口部15の中心に向かって延びた部分の長さよりも短い」(構成j)ことは、上記(4)、(6)を踏まえると、本願発明の「基板の下面と前記カバー底面部との距離が、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分の」「長さよりも短くなる」ことに相当する。
ウ 上記ア及びイによれば、本願発明と引用発明とは、カバーは、前記感熱部が前記カバー内に配置され、且つ、前記基板の下面と前記カバー底面部との距離が、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分の長さよりも短くなるように設けられる点で共通する。
ただし、本願発明は、基板の下面と前記カバー底面部との距離が、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分の「傾斜方向の」長さよりも短くなるのに対し、引用発明は、その点が特定されていない点で相違する。
(10)発明特定事項Jについて
引用発明の「熱感知式の火災警報器」(構成a)は、本願発明の「熱感知器」に相当する。
(11)上記(1)~(10)によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「本体と、
基板と、
気流が流入する流入孔を有し、前記基板の下面を覆うように前記本体に取り付けられ、前記基板の下面と対向する平板状のカバー底面部を有したカバーと、
前記基板から前記カバー底面部へ向かって延びるように前記基板に取り付けられ、前記流入孔より流入した前記気流の熱を検知する熱検知部と、を備え、
前記流入孔は、少なくとも前記カバーの外周に設けられた水平孔を含むものであり、
前記熱検知部は、前記基板に固定され、前記熱検知部において前記基板の下面から下側に延び出た部分が前記カバー底面部へ向かって延びるものであり、
前記熱検知部は、
感熱部と、
先端に前記感熱部が取り付けられ、前記基板から前記カバー底面部へ向かって延びるリード部と、を有し、
前記感熱部の長さは、前記リード部において前記基板の下面から前記カバー底面部の側へ突出した部分の長さよりも短く、
前記カバーは、前記感熱部が前記カバー内に配置され、且つ、前記基板の下面と前記カバー底面部との距離が、前記熱検知部における前記基板の下面から下側へ延び出た前記部分の長さよりも短くなるように設けられる、
熱感知器。」
<相違点1>
本願発明の「基板」は「本体に設けられ」ているのに対し、引用発明の「回路基板2」は「筐体1内部に設けられ」ているものの、「基台11」に設けられていることが特定されていない点。
<相違点2>
熱検知部を基板に取り付けるにあたり、本願発明は、基板からカバー底面部へ向かって「斜めに」延びるように取り付けるのに対し、引用発明は、回路基板2から天板13へ向かって「突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状」で取り付ける点。
それにともなって、本願発明は、
ア 熱検知部において基板の下面から下側に延び出た部分がカバー底面部へ向かって「傾斜して直線状に」に延びるものであり、
イ リード部が基板からカバー底面部へ向かって「基板の下面と一定の角度になるよう傾斜させた直線状に」延びており、先端「である下端」に感熱部が取り付けられ、
ウ カバーは、基板の下面とカバー底面部との距離が、熱検知部における基板の下面から下側へ延び出た部分の「傾斜方向の」長さよりも短くなるように設けられる、
のに対して、引用発明は、これらについて特定されていない点。
5 当審の判断
(1)相違点についての判断
ア 相違点1について
引用発明において、回路基板2を筐体1内部のどこに設けるかは、当業者が適宜決定し得たことであって、回路基板2を基台11に設けることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
イ 相違点2について
(ア)引用文献1の【0012】には、「前記熱感知器を前記筐体の外部に突出させることなく、前記筐体内部に設置することで、前記筐体の薄型化が実現できる」こと、「前記熱感知器が前記熱気流に直接曝される位置に設置される構成とすることで、前記熱感知器による測定感度の低下を防ぐことができる」ことが記載されており、そのために、引用発明は、「サーミスタ3は、回路基板2から天板13に向かって突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状」とする構成(構成h)(当該構成により、サーミスタ3の実装高さが低減され、筐体の薄型化が実現できると認められる)と「温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端が、第1開口部14から流入される熱気流に対して、直接曝される位置に配置」する構成(構成g)とを有している。
(イ)ここで、電子部品を基板に取り付けるにあたり、作業効率は当然考慮されることであり、電子部品のリードを曲げることなく、リードを斜めにして基板に取り付けることで、作業効率の改善(リードを曲げる作業を削除できる、リードを曲げた電子部品は扱いにくく実装作業性が悪いという問題が生じない、など)と電子部品の実装高さの低減の両立を図ることは、周知技術である(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2の第1頁右下欄第11~18行、第2頁左上欄第15~20行、第1~2図等、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3の【0005】、【0024】、図6等を参照。)。
(ウ)そして、引用発明においても、サーミスタ3を回路基板2に取り付けるにあたり、作業効率は当然考慮されることであるから、引用発明に対して上記周知技術を適用し、引用発明の「温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端」の位置を「第1開口部14から流入される熱気流に対して、直接曝される位置」から変えることなく、引用発明の「温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端」を回路基板2と電気的に接続する部分(本願発明の「リード部」に相当する(上記4(7)ウ)ので、以下「リード部」という。)について、回路基板2から天板13へ向かって「突出させた後に天板13付近で屈曲させた形状」とすることに代えて、サーミスタ3のリード部を屈曲させることなく、当該リード部を斜めにして基板に取り付けること、すなわち、作業効率の改善とサーミスタ3の実装高さの低減の両立を図るために、「リード部」を回路基板2から天板13へ向かって「斜めに」延びるように取り付けることは、当業者にとって容易である。
(エ)そして、引用発明に上記周知技術を適用した構成においては、
a 引用発明の「サーミスタ3」は、天板13へ向かって「傾斜して直線上に」延びることととなり、
b 引用発明のリード部は、回路基板2から天板13へ向かって「基板(回路基板2)の下面と一定の角度になるよう傾斜させた直線状に」延びることとなり、リード部の先端「である下端」に「温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端」が取り付けられることとなる。
c また、回路基板2の下面と天板13との距離が、サーミスタ3の回路基板2の下面から下側へ延び出た部分の「傾斜方向の」長さよりも短いことは、明らかである(必要であれば、以下に示す参考図を参照されたい。)。
(オ)したがって、上記(ア)~(エ)のとおり、引用発明及び周知技術から上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、参考までに、引用発明に対して上記周知技術を適用したもの(「L字状線部」に代えて、傾斜させた直線状としたもの)を(図4に重ねた形で)図示する。
[図:0001415110000002.jpg]
(2)効果についての判断
上記の相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から想到される構成から当業者が予想できた範囲のものであり、格別顕著なものということはできない。
(3)請求人の主張についての判断
請求人は、審判請求書において、請求項1について、「引用文献2~4の電子部品では、リード部において基板表面から突出した長さよりも電子部品本体(引用文献1や本願発明の熱検知部では感熱部に相当する部分)の長さの方が長く、引用文献2~4に開示される技術は、このような電子部品本体の長さが長い電子部品の実装の高さを、電子部品本体を斜めに配置することで低くする技術です。」、「引用文献1や本願発明の熱検知部(サーミスタ3)は、引用文献2~4の電子部品のように単に実装の高さを低くするのではなく、流入孔である第1開口部14や第2開口部15からの気流の熱を検知できるように先端の感熱部を基板から離して配置する必要があります。」、「したがいまして、当業者は、たとえ引用文献2~4の技術を知る者であっても、引用文献1の熱感知器のサーミスタ3にその技術を採用しようとはしません。」と主張している。
しかしながら、電子部品を基板に取り付ける際の作業効率は、電子部品本体の長さの長短を問わず当然考慮されることであり、上記周知技術は、電子部品本体の長短を問わず有効であるところ、引用発明に対して上記周知技術を適用する動機付けは十分にあるといえるし、引用発明に対して上記周知技術を適用するにあたり、引用発明の「温度測定を行うセンサ部分となるサーミスタ3の先端」の位置は「第1開口部14から流入される熱気流に対して、直接曝される位置」から変える必要はない(つまり、先端の感熱部を基板から離して配置したままである)ところ、引用発明に対して上記周知技術を適用することに阻害要因を見いだすこともできないので、当該主張は採用できない。
(4)まとめ
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-000297