特許拒絶査定不服審判
2017-018864
半導体装置
- 審判番号
- 2017-018864
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-183442外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月04日
- 審決日
- 2018年10月23日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .575-Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-183442「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 2日出願公開、特開2015- 41764〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月20日の出願であって、平成29年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月4日に意見書が提出されたが、同年8月30日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年12月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。
第2 平成29年12月4日に提出された手続補正書による補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月4日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1~13を、補正後の特許請求の範囲の請求項1~9と補正するとともに明細書を補正するものであり、補正前後の請求項1は、それぞれ次のとおりである。
(補正前)
「【請求項1】
基板上にIII族窒化物半導体、もしくは、II-VI族化合物半導体を形成し、ソース電極及びドレイン電極の間に信号入力のためのゲート電極を夫々設けてある電界効果型トランジスタにおける半導体装置にあって、動作活性層と基板との間に結晶欠陥低減のための緩衝層(バッファ層)を形成してなる半導体装置。」
(補正後)
「【請求項1】
基板上にIII族窒化物半導体を形成し、ソース電極及びドレイン電極の間に信号入力のためのゲート電極を夫々設けてある電界効果型トランジスタにおける半導体装置にあって、動作活性層と基板との間に結晶欠陥低減のための緩衝層(バッファ層)を形成してなる半導体装置。」
2 本件補正についての検討
(1)本件補正は、請求項1についての補正(以下「補正事項1」という。)を含むものであり、当該補正事項1は、補正前の請求項1について、基板上に形成する「III族窒化物半導体、もしくは、II-VI族化合物半導体」を、「III族窒化物半導体」に限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、当該補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下において検討する。
(2)独立特許要件について
ア 本件補正後の発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記「1 本件補正の内容」の「(補正後)」に記載したとおりである。
イ 引用例の記載と引用発明
(ア)引用例1:特開2008-186952号公報
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-186952号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は、当審による。以下、同じ。)。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板及び半導体装置に関し、特に、III族窒化物系半導体やII-VI族化合物半導体結晶成長に用いる半導体基板及び半導体装置に関する。」
b 「【背景技術】
【0002】
GaNデバイスに適用するIII-V族窒化物系半導体をエピタキシャル成長させる場合、高品質、安価なホモエピタキシャル成長層基板が存在しないため、異種基板を用いたヘテロエピタキシャル成長により、GaNデバイス用のIII-V族窒化物系半導体エピタキシャル成長層を形成している。
【0003】
GaN系半導体の場合、異種基板部材には、サファイア(α―Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)、シリコン(Si)などが用いられているが、いずれも格子不整合が大きい。このため、格子不整合を緩和するために、基板部材とエピタキシャル成長層との間に、バッファ構造などを形成するなどの様々な工夫を行って、異種基板を形成している。」
c 「【0019】
[第1の実施の形態]
(III-V族窒化物系半導体基板構造)
(構成例1)
本発明の第1の実施形態に係る半導体基板(2a,2b)の構成例1は、図1に示すように、基板部材11と、基板部材11上に形成された酸化ハフニウム、酸化ジルコニウムから選ばれる層から形成されるバッファ層(3a,3b)と、バッファ層(3a,3b)上に配置されるIII族窒化物系半導体層30とを備える。
…(略)…
【0021】
基板部材11は、シリコン、サファイア(α―Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)の内、いずれかで形成されるが、これらに限定されるものではなく、GaAs,GaPなどのIII-V族化合物、MgO、ZnO、LiGaO2、AlN、InN、3C-SiCなどを適用することもできる。
…(略)…
【0023】
(製造方法)
(a)例えば、基板部材11としてシリコンを用いる場合、基板部材11の上に酸化ハフニウム、酸化ジルコニウムなどの材料からなるバッファ層(3a,3b)を…(略)…
【0025】
シリコンの格子定数は、5.431Åであり、シリコンを基板部材11として使用した時、(111)面にIII族窒化物系半導体層30が形成されると、シリコンの格子間隔は、√2/2倍となり、基板部材11とIII族窒化物系半導体層30との格子不整合は17%程度となる。
【0026】
酸化ハフニウムの格子定数は、a=5.172Å,b=5.295Åであり、シリコンの結晶格子に近く、高品質な酸化ハフニウムからなるバッファ層3aが得られる。又、酸化ハフニウムの格子定数は、シリコンの格子定数よりもやや小さいが、III族窒化物系半導体層30の格子定数よりも大きい。酸化ハフニウムとIII族窒化物系半導体層30との格子不整合は14%程度となり、酸化ハフニウムの結晶性膜をバッファ層(3a)として基板部材11とIII族窒化物系半導体層30との間に介在させた方が、基板部材とIII族窒化物系半導体層30との格子不整合が小さくなる。その結果、高品質のIII族窒化物系半導体層30が得られる。
…(略)…
【0066】
(構成例4)
本発明の第1の実施形態に係る半導体基板(2g)の別の構成例4は、図4に示すように、半導体基板(2g)において、基板部材11と、基板部材11上に形成された酸化ハフニウム,酸化ジルコニウム,或いは酸化ハフニウムジルコニウムからなるバッファ層60と、バッファ層60上に配置される周知のIII族窒化物系バッファ層70と、III族窒化物系バッファ層70上に配置され、デバイス形成層として機能するIII族窒化物系半導体層30とを備える。バッファ層(3g)は、酸化ハフニウム,酸化ジルコニウム,或いは酸化ハフニウムジルコニウムからなるバッファ層60とIII族窒化物系バッファ層70で構成される。
【0067】
基板部材11は、シリコン、サファイア(α―Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)の内、いずれかで形成されるが、これらに限定されるものではなく、GaAs,GaPなどのIII-V族化合物、MgO、ZnO、LiGaO2、AlN、InN、3C-SiCなどを適用することもできる。
…(略)…
【0079】
酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、或いは酸化ハフニウムジルコニウムを含む結晶性膜をバッファ層60として基板部材11とIII族窒化物系半導体層30との間に介在させた方が、基板部材とIII族窒化物系半導体層30との格子不整合が小さくなる。その結果、高品質のIII族窒化物系半導体層30が得られる。」
d 「【0150】
[第3の実施形態]
(III族窒化物系半導体基板構造を備える半導体装置)
本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構成は、第1の実施の形態におけるいずれかの構成例の半導体基板(2a~2g)上に配置され,III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し,III族窒化物系半導体層30よりもバンドギャップの広いIII族窒化物系半導体バリア層34と、III族窒化物系半導体バリア層34上に配置され,III族窒化物系半導体バリア層34とオーミック接触するソース電極35及びドレイン電極36と、ソース電極35及びドレイン電極36間のIII族窒化物系半導体バリア層34上に配置されるゲート電極37を備える。
【0151】
即ち、III族窒化物系半導体層30とIII族窒化物系半導体バリア層34とでデバイス形成層を形成している。
【0152】
図9の構成例では、基板部材11と、基板部材11上に形成され,例えば、酸化ハフニウム層からなるバッファ層60と、バッファ層60上に配置され,例えば、GaN系バッファ層からなるIII族窒化物系バッファ層70と、III族窒化物系バッファ層70上に配置され,例えば、GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30と、III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し,GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34と、AlGaNバリア層34上に配置され、AlGaNバリア層34とオーミック接触するソース電極35及びドレイン電極36と、ソース電極35及びドレイン電極36間のAlGaNバリア層34上に配置されるゲート電極37を備える。
【0153】
ゲート電極37は、AlGaNバリア層34とショットキーコンタクトを形成する。ゲート電極37直下のAlGaNバリア層34には、ショットキーバリアが形成される。GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30は電子走行層として機能し、AlGaNバリア層34は電子供給層として機能し、AlGaNバリア層34とIII族窒化物系半導体層30との界面近傍に形成される2次元ガス(2DEG)におけるキャリアの導通状態を、ゲート電極37に印加するゲート電圧によって、ショットキーバリアを制御することによって、半導体装置を制御している。
【0154】
尚、ゲート電極37は、AlGaNバリア層34上に絶縁膜を介して配置することによって、AlGaNバリア層34との間にMIS構造を形成してもよい。この場合には、ショットキーゲートの代りに、MISゲートによるソース/ドレイン間導通キャリアの制御が行われる。
【0155】
図9の構造において、基板部材11と、基板部材11上に配置され,酸化ハフニウム層によって構成されるバッファ層60と、バッファ層60上に配置され,GaN系バッファ層によって構成されるIII族窒化物系バッファ層70と、III族窒化物系バッファ層70上に配置され,GaN層によって構成されるIII族窒化物系半導体層30からなる構成が、本発明の第1の実施の形態に係る半導体基板に相当している。具体的には、図4に示すように、バッファ層(3g)を有する本発明の第1の実施形態に係る半導体基板(2g)の構成例4に対応している。
【0156】
本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置に適用される半導体基板の構造は、上記構成例4に限定されるものではなく、本発明の第1の実施の形態において開示された図1乃至図4に示される構成例1乃至構成例4をすべて適用可能である。
…(略)…
【0163】
或いは、図4に示す構成例4のように、基板部材11/バッファ層60/III族窒化物系バッファ層70/III族窒化物系半導体層30からなる半導体基板を備えていてもよい。
【0164】
基板部材11は、シリコン、サファイア(α―Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)の内、いずれかで形成されるが、これらに限定されるものではなく、GaAs,GaPなどのIII-V族化合物、MgO、ZnO、LiGaO2、AlN、InN、3C-SiCなどを適用することもできる。
…(略)…
【0169】
本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置によれば、III族窒化物系半導体材料のエピタキシャル成長において高品質化と安定化を実現する半導体基板を適用することによって、高周波特性に優れた半導体装置を提供することができる。」
e 「【0170】
[第4の実施形態]
(II-VI族化合物半導体基板構造を備える半導体装置)
本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の構成は、第2の実施の形態におけるいずれかの構成例の半導体基板(2h~2n)上に配置され,II―VI族化合物半導体層40とヘテロ接合を形成し,II―VI族化合物半導体層40よりもバンドギャップの広いII―VI族化合物半導体バリア層44と、II―VI族化合物半導体バリア層44上に配置され,II―VI族化合物半導体バリア層44とオーミック接触するソース電極45及びドレイン電極46と、ソース電極45及びドレイン電極46間のII―VI族化合物半導体バリア層44上に配置されるゲート電極47を備える。
【0171】
即ち、II―VI族化合物半導体層40とII―VI族化合物半導体バリア層44とでデバイス形成層を形成している。
【0172】
図10の構成例では、基板部材11と、基板部材11上に形成され,例えば酸化ハフニウム層からなるバッファ層60と、バッファ層60上に配置され,例えば、ZnO系バッファ層からなるII―VI族化合物半導体バッファ層80と、II―VI族化合物半導体バッファ層80上に配置され,例えば、ZnO層からなるII―VI族化合物半導体層40と、II―VI族化合物半導体層40上に配置され,II―VI族化合物半導体層40とヘテロ接合を形成し,II―VI族化合物半導体層40よりもバンドギャップの広いZnMgOバリア層44と、ZnMgOバリア層44上に配置され,ZnMgOバリア層44とオーミック接触するソース電極45及びドレイン電極46と、ソース電極45及びドレイン電極46間のZnMgOバリア層44上に配置されるゲート電極47を備える。
【0173】
ゲート電極47は、ZnMgOバリア層44とショットキーコンタクトを形成する。ゲート電極47直下のZnMgOバリア層44には、ショットキーバリアが形成される。II―VI族化合物半導体層40は電子走行層として機能し、ZnMgOバリア層44は電子供給層として機能し、ZnMgOバリア層44とII―VI族化合物半導体層40との界面近傍に形成される2次元ガス(2DEG)におけるキャリアの導通状態を、ゲート電極47に印加するゲート電圧によって、ショットキーバリアを制御することによって、半導体装置を制御している。」
(イ)引用発明
上記「(ア)引用例1」の摘記事項dによれば、引用例1には、図9に示される第3の実施形態に係る半導体装置として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「半導体装置であって、
基板部材11と、基板部材11上に形成され、酸化ハフニウム層からなるバッファ層60と、バッファ層60上に配置され、GaN系バッファ層からなるIII族窒化物系バッファ層70と、III族窒化物系バッファ層70上に配置され、GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30と、III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し、GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34と、AlGaNバリア層34上に配置され、AlGaNバリア層34とオーミック接触するソース電極35及びドレイン電極36と、ソース電極35及びドレイン電極36間のAlGaNバリア層34上に配置されるゲート電極37を備え、
基板部材11は、シリコン、サファイア(α―Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)の内、いずれかで形成され、
ゲート電極37直下のAlGaNバリア層34には、ショットキーバリアが形成され、GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30は電子走行層として機能し、AlGaNバリア層34は電子供給層として機能し、AlGaNバリア層34とIII族窒化物系半導体層30との界面近傍に形成される2次元ガス(2DEG)におけるキャリアの導通状態を、ゲート電極37に印加するゲート電圧によって、ショットキーバリアを制御することによって、当該半導体装置を制御している、半導体装置。」
ウ 対比・判断
(ア)本願補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「基板部材11」は、本願補正発明の「基板」に相当する。
また、引用発明の「『GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30』と、『III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し、GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34』」は、本願補正発明の「III族窒化物半導体」に相当する。
b 引用発明の半導体装置は、「ゲート電極37直下のAlGaNバリア層34には、ショットキーバリアが形成され、GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30は電子走行層として機能し、AlGaNバリア層34は電子供給層として機能し、AlGaNバリア層34とIII族窒化物系半導体層30との界面近傍に形成される2次元ガス(2DEG)におけるキャリアの導通状態を、ゲート電極37に印加するゲート電圧によって、ショットキーバリアを制御することによって、当該半導体装置を制御している」ものであるから、引用発明において、半導体装置は「電界効果型トランジスタ」であり、ゲート電極37は「信号入力のため」のゲート電極であることは明らかである。
また、引用発明は、「ソース電極35及びドレイン電極36間」のゲート電極37を備えるものである。
よって、本願補正発明と引用発明とは、「ソース電極及びドレイン電極の間に信号入力のためのゲート電極を夫々設けてある電界効果型トランジスタにおける半導体装置」である点で一致する。
c 引用発明は、「ゲート電極37直下のAlGaNバリア層34には、ショットキーバリアが形成され、GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30は電子走行層として機能し、AlGaNバリア層34は電子供給層として機能し、AlGaNバリア層34とIII族窒化物系半導体層30との界面近傍に形成される2次元ガス(2DEG)におけるキャリアの導通状態を、ゲート電極37に印加するゲート電圧によって、ショットキーバリアを制御することによって、当該半導体装置を制御している」ものであるから、引用発明の「『III族窒化物系バッファ層70上に配置され、GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30』と、『III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し、GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34』」は、本願補正発明の「動作活性層」に相当する。
d 引用発明の「基板部材11上に形成され、酸化ハフニウム層からなるバッファ層60と、バッファ層60上に配置され、GaN系バッファ層からなるIII族窒化物系バッファ層70」は、本願補正発明の「緩衝層(バッファ層)」に相当する。
また、上記「イ(ア)引用例1」の摘記事項b、cを参照すると、引用例1の段落【0003】には、【背景技術】として、III族窒化物系半導体(GaN系半導体)と異種基板部材とは、格子不整合が大きいため、格子不整合を緩和するために、基板部材とエピタキシャル成長層との間に、バッファ構造などを形成するなどの様々な工夫を行っている旨が記載されており、段落【0026】、【0079】には実施の形態1に係る半導体基板の構成例1においても、構成例4においても、所定のバッファ層(3a、60)を介在させた方が、基板部材とIII族窒化物系半導体層30との格子不整合が小さくなり、その結果、高品質のIII族窒化物系半導体層30が得られる旨が記載されている。
また、窒化物系薄膜のSi基板、サファイア基板、SiC基板上への成長は、窒化物系半導体結晶の格子定数と基板の格子定数とが大きく異なるため、窒化物系半導体薄膜中に欠陥が導入され、その膜特性を低下させることが問題となるので、基板と窒化物系薄膜との間に所定のバッファ層を設けて、該薄膜中の欠陥を少なくすることは技術常識であり、例えば、下記の周知例1及び2に記載されている。
一方、引用発明は、「基板部材11と、基板部材11上に形成され、酸化ハフニウム層からなるバッファ層60と、バッファ層60上に配置され、GaN系バッファ層からなるIII族窒化物系バッファ層70と、III族窒化物系バッファ層70上に配置され、GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30と、III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し、GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34」を備え、「基板部材11は、シリコン、サファイア(α―Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)の内、いずれかで形成され」るものであるところ、上記の引用例1の摘記事項から、バッファ層を介在させて、格子不整合が小さくなり、高品質のIII族窒化物系半導体層30が得られるものであるといえるから、引用発明において、バッファ層(バッファ層60とIII族窒化物系バッファ層70)は、「結晶欠陥低減のためのバッファ層」であるといえる。
(a)周知例1:特開2004-296717号公報
「【0002】
【従来の技術】
従来から窒化物系半導体は、青色発光素子やパワー系および高周波電子素子用の材料として注目されてきた。特にサファイア基板上に形成された窒化物薄膜を用いた青色発光素子はすでに実用化されている。窒化物系薄膜の成長については、サファイア基板に限らず、シリコン基板など様々な基板上への成長も試みられている。しかしながら、窒化物系半導体結晶の格子定数と基板(サファイアまたはシリコン)の格子定数とが大きく異なるため、窒化物系半導体薄膜中に欠陥が導入され、その膜特性を低下させることが問題となっている。この問題に関して、基板と窒化物系薄膜との間にバッファ層を設けて、該薄膜中の欠陥を少なくすることが検討されてきており、特に、窒化物系薄膜の膜特性に大きな影響を与えるためにバッファ層が非常に重要となってきた。
【0003】
例えば、InGaN膜、AlGaN膜、あるいは組成の異なるAlaGa1-aN(0≦a≦1)の薄膜を積層した多層膜をバッファ層として用いることにより、その上に形成される窒化物系半導体薄膜の結晶欠陥を改善できることが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、基板上あるいはAlbGa1-bN(0≦b≦1)バッファ層上に、AlN層とGaN層とを交互に成長させた多層膜層を導入することにより、その上に成長する窒化物半導体の結晶性を向上できることが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、AlGaN層とInGaN層とを交互に複数回積層したバッファ層、またはAlN層とInGaN層とを交互に複数回積層したバッファ層を設けることにより、歪みの発生を防止し、その上にクラックのない良好なGaN系半導体層が形成できることが開示されている(特許文献3参照)。
【0006】
さらに、高温で成長させたGaN層中に、中間層として低温で成長させたAlNを挿入することにより、その上に形成するGaN系薄膜の結晶欠陥が改善できることが報告されている(非特許文献1参照)。」
「【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態の積層体を示した断面図である。図1中、符号1は基板、2はバッファ層、3は第1窒化物系半導体層を示している。
【0023】
本発明に用いられる基板1は、Si基板、GaAs基板、サファイア基板、SiC基板、ZnO基板、MgO基板等が通常用いられる。中でもSi基板は、低コストで、大口径化も可能であり、最も好ましく用いられる。
…(略)…
【0025】
本発明のバッファ層2は、第1のIII族窒化物(XN)層2aおよび第2のIII族窒化物(ZN)層2cが交互に成長している多層膜において、XN/ZNおよびZN/XNのそれぞれの界面に、XαZ1-αN(0<α<1、好ましくは0.3≦α≦0.7、より好ましくは0.4≦α≦0.6)からなる混晶層2bが挿入された積層体からなっている。すなわち、本発明のバッファ層2は、XN/XαZ1-αN/ZN/XαZ1-αNの4層構造を1周期として構成される。バッファ層2は、該4層構造を1つまたは複数有して構成されていてもよく、図1には、2つの該4層構造を有するバッファ層2を示した。
【0026】
XおよびZは、XとZとが異なる元素であることを条件として、Al、GaおよびInからなる群から選択される。すなわち、(X,Z)の組合せは、(Al,Ga)、(Al,In)、(In,Ga)のいずれかである。例えば、X=AlおよびZ=Gaの場合には、AlN/GaNおよびGaN/AlNのそれぞれの界面にAlGaN混晶層を挿入して、AlN/AlGaN/GaN/AlGaNなる積層構造をとる。この際に、AlGaN結晶の格子定数は、AlN結晶の格子定数とGaN結晶の格子定数との中間の値を採る。したがって、AlN/AlGaN界面およびGaN/AlGaN界面における格子定数の差は、AlN/GaN界面における格子定数の差よりも小さくなり、これによって各界面における原子配列の乱れが抑制され、平坦でかつ結晶欠陥の少ない窒化物系半導体層が得られる。(X,Z)の他の組合せについても同様である。」
(b)周知例2:特開2005-5657号公報
「【0001】
【GaN系高周波、高速デバイスの特徴】
GaN(窒化ガリウム)を初めとする広いバンド帯幅を用いた高周波デバイスは、GaAs(ひ化ガリウム)やSi(シリコン)結晶を用いた高周波デバイスよりも、数多くの有利な特性を持っている。この理由は、GaN系結晶が持つ物性パラメーターが多くの利点を持っているからである。
例えば、GaNのバンドギャップがSi結晶,やGaAs結晶と比べて3倍程広いことから、その広さに関連して、絶縁破壊電界が約1桁大きくなり、Si,GaAs,系高周波デバイスよりも高耐圧化が可能なる。その結果、高い電圧を印加して、高電流を流すことが可能となり、高出力化に適している。また比誘電率が1/3程小さいことから、GaN系高周波デバイスはより高周波動作に向いている。また電子飽和速度が3倍大きいことから、GaN系デバイスは高周波動作、高出力動作に適している。また熱伝導度がGaAsに比べて3倍大きいことから、熱抵抗が小さくなり、その結果、熱放散がよく大出力化に向いている。
上記のことをまとめると、GaN系高周波デバイスは、高出力、高効率、高直線性、高利得性、対環境性、に優れている。
【0002】
【従来技術の問題点】
しかし、生産性、低価格化には問題がある。それは、基板材料として、格子整合したGaNバルク結晶の大面積化は困難であり、高額となる、またほぼGaN結晶と格子整合したSiC結晶は昇華法等の結晶成長で作成されるため、結晶基板ウエハは、やはり高額となる。大面積が得られるサファイヤ結晶基板も大面積が得られるが、高額であるとともに、GaNとの結晶格子整合性が13%もあり、サファイヤ(Al2O3)結晶基板上にエピタキシャル結晶成長した結晶層に結晶欠陥が導入されて、デバイス特性が著しく低下する原因となる。
【0003】
【解決策の従来からある問題点】
そこで、GaN系デバイス結晶に、大面積でかつ生産性が高く、SiC、やサファイヤ結晶基板に比べて低価格なシリコン結晶基板を用いることにができれば、大幅な大面積化、低価格化をはかることができる。しかしながら、シリコン結晶とGaN結晶とは、サファイヤ結晶同様に、約14%程の格子不整合性があるため、シリコン結晶基板上にエピタキシャル結晶成長した結晶成長層には多くの結晶欠陥の導入による結晶特性の劣化、あるいは、エピタキシャル結晶成長後に結晶格子不整合による界面歪にともなう結晶基板が“反る“現象が表れる。
【0004】
【従来の問題点の解決策】
しかし、本特許のBP結晶層をバッファー結晶成長層として、シリコン結晶基板とエピタキシャル結晶動作層間に導入することにより、エピタキシャル結晶動作層中に結晶格子不整合性に伴う結晶欠陥密度が大幅に低減できる、動作層結晶特性が大幅に改善されること、あるいは、結晶成長後の基板の“反り”が全くな事が判明した。その結果、デバイスの高周波特性も、サファイヤやSiC結晶基板を用いたよりも大幅に改善可能な事が判明した。」
(イ)上記(ア)のaないしdを勘案すると、本願補正発明と引用発明とは、
「基板上にIII族窒化物半導体を形成し、ソース電極及びドレイン電極の間に信号入力のためのゲート電極を夫々設けてある電界効果型トランジスタにおける半導体装置にあって、動作活性層と基板との間に結晶欠陥低減のための緩衝層(バッファ層)を形成してなる半導体装置。」である点で一致し、相違する点はない。
したがって、本願補正発明の構成はすべて引用例1に示されているものであって、本願補正発明は引用発明であることとなる。
よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
エ 独立特許要件についてのまとめ
本件補正は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。
3 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、出願当初の明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、上記「第2 1 本件補正の内容」の「(補正前)」に記載したとおりである。
2 引用例の記載と引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-186952号公報(引用例1、再掲)には、上記「第2 2(2)イ(ア)引用例1」に記載した事項が記載されており、引用例1には上記「第2 2(2)イ(イ)引用発明」に記載したとおりの引用発明が記載されている。
3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「基板部材11」は、本願発明の「基板」に相当する。
また、引用発明の「『GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30』と、『III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し、GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34』」は、本願発明の「III族窒化物半導体」に相当するから、本願発明と引用発明とは、「基板上にIII族窒化物半導体を形成」する点で共通する。
(2)さらに、上記「第2 2(2)ウ(ア)」のbないしdを勘案すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「基板上にIII族窒化物半導体を形成し、ソース電極及びドレイン電極の間に信号入力のためのゲート電極を夫々設けてある電界効果型トランジスタにおける半導体装置にあって、動作活性層と基板との間に結晶欠陥低減のための緩衝層(バッファ層)を形成してなる半導体装置。」
<相違点>
基板上に形成した半導体について、本願発明では、「III族窒化物半導体、もしくは、II-VI族化合物半導体」であるのに対し、引用発明では、「『GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30』と、『III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し、GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34』」であり、本願発明のような特定はなされていない点。
4 判断
上記相違点について検討する。
上記「第2 2(2)イ(ア)引用例1」の摘記事項eを参照すると、引用例1には、基板部材11と、II―VI族化合物半導体層40と、II―VI族化合物半導体層40上に配置され,II―VI族化合物半導体層40とヘテロ接合を形成し,II―VI族化合物半導体層40よりもバンドギャップの広いZnMgOバリア層44とを備える構成例が開示されている。
したがって、引用発明において、基板上に形成した半導体層として、「『GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30』と、『III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し、GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34』」を、「『GaN層からなるIII族窒化物系半導体層30と、III族窒化物系半導体層30とヘテロ接合を形成し、GaN層よりもバンドギャップの広いAlGaNバリア層34』、もしくは、『II―VI族化合物半導体層40と、II―VI族化合物半導体層40上に配置され,II―VI族化合物半導体層40とヘテロ接合を形成し,II―VI族化合物半導体層40よりもバンドギャップの広いZnMgOバリア層44』」とすること、すなわち、「III族窒化物半導体、もしくは、II-VI族化合物半導体」とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
よって、引用発明において、引用例1に記載の技術上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは適宜なし得たことである。
よって、本願発明は、引用発明及び引用例1に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-018864