特許拒絶査定不服審判
2017-018464
遊技板及び遊技機
- 審判番号
- 2017-018464
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-246210外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月12日
- 審決日
- 2019年01月07日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社足立ライト工業所
- 【請求人代理人】▲高▼荒 新一
- 分類
- P18 .161-WZ (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条の2
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-246210号「遊技板及び遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 8日出願公開、特開2015-104392号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月28日に特許出願されたものであって、平成29年8月1日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月29日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年10月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月12日に拒絶査定不服審判が請求され、これに対して平成30年9月3日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年10月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(なお、当審にて分説のために記号AないしEを付した。)。
「 【請求項1】
A 透明又は半透明な素材で作製された遊技基板と、
B 前記遊技基板の前面側の一部に後面及び背面側が視認可能な第1背面側視認可能領域を有するように前記遊技基板の前面の全部又は一部に設けられ、前面装飾部に絵柄を有する前面装飾層と、
C 前記遊技基板の後面であって、前記第1背面側視認可能領域に対向する位置の少なくとも一部に前面装飾部と同じ前記絵柄からなり、正面から視認した場合に一定距離ずれて又は同じ位置に形成された後面装飾部を有する後面装飾層と、
D 後面に前記後面装飾部が設けられていない領域であって、かつ前記第1背面側視認可能領域から背面側が視認可能となる第2背面側視認可能領域と、
E を有していることを特徴とする遊技板。」
2 当審の拒絶理由
平成30年9月3日付けの拒絶理由通知で通知した当審の拒絶理由は、次のとおりである。
[拒絶理由1]
この出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願1又は2の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願1又は2に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願1又は2の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
[拒絶理由2]
この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
特許出願1:特願2013-192118号(特開2015-58058号)
特許出願2:特願2013-90107号(特開2014-212833号)
3 拒絶理由1について
(1)特許出願1
当審の拒絶理由通知で引用された、本願の特許出願の日前の他の出願であって、本願の出願後に出願公開がなされた特許出願1(特願2013-192118号、特開2015-58058号公報参照。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。)。
[記載事項]
(ア)「【0030】
遊技盤本体50は、図4~図6に示すように、透明なアクリル素材で形成された平板状の部材であるアクリル板51と、アクリル板51の表面51aに貼り付けられた表面装飾シート60と、アクリル板51の裏面51bに貼り付けられた裏面装飾シート70と、を備えている。この遊技盤本体50には、図3,図6に示すように、上述した遊技盤30の各構成にそれぞれ対応する位置に形成された開口部である複数の取付穴52a~52g,通過穴52hが設けられている。取付穴52a~52gは、図2に示した普通図柄作動ゲート32、演出表示装置34及びセンター役物49、第1始動口36、図柄表示装置40、大入賞口44、一般入賞口45、風車47に対応する位置にそれぞれ形成された穴である。取付穴52a~52gは、遊技盤本体50の表面から裏面までを貫通する穴(図3における紙面手前-奥方向に開けられた穴)であり、対応する各構成を取り付けるためのものである。通過穴52hは、遊技盤本体50の表面から裏面までを貫通する穴であり、図2に示したアウト口46を通過した遊技球が通過するものである。また、遊技盤本体50には、遊技領域31から外れた位置であり図3における左下,右下,左上,右上に計4つの基準穴53a~53dが形成されている。この基準穴53a~53dは、遊技盤本体50の表面から裏面までを貫通している。
・・・中略・・・
【0032】
表面装飾シート60は、図4,5に示すように、表層60aと、表層60aの裏面側に形成された基材層60cと、表層60aと基材層60cとの間に形成された意匠層60bと、を備える。この表面装飾シート60は、基材層60cの裏面側がアクリル板51の表面51aに貼り付けられており、表面51aの全面に貼り付けられている。また、表面装飾シート60には、上述した取付穴52a~52g,通過穴52h,基準穴53a~53dが形成されており(図3,6参照)、これらの穴はいずれも表層60a,意匠層60b,基材層60cを貫通している。表層60a及び基材層60cは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、キャブロイド等の透明フィルムで構成されている。意匠層60bは、基材層60cの表面に印刷(シルクスクリーン印刷など)により形成された層である。意匠層60bには、表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられている(図3,6参照)。表面絵柄61aは、樹木やそこから舞い散る花びらを描いた絵柄であり、表面装飾シート60の上部から左中央部にかけて設けられている。表面絵柄61bは、扇子(扇)を描いた絵柄であり、表面装飾シート60の右中央部に設けられている。表面識別マーク63a,63bは、それぞれ表面装飾シート60の左下,右上に設けられている。表面識別マーク63a,63bは、それぞれ基準穴53a,53bから一部がはみ出している。また、表面装飾シート60には、後述する裏面装飾シート70の裏面識別マーク73a,73c(図3,7参照)を遊技盤本体50の表面側から確認可能な確認部62a,62bが設けられている。表面識別マーク63a,63b及び確認部62a,62bについては、後述する。表面装飾シート60の下端には、アクリル板51に対する表面装飾シート60の傾き(回転)の有無を検査するための表面検査用ライン68が設けられている。表面検査用ライン68は、表面装飾シート60の下端に沿って左右に引かれた破線として描かれている。
【0033】
裏面装飾シート70は、図4,5に示すように、表層70aと、表層70aの裏面側に形成された基材層70cと、表層70aと基材層70cとの間に形成された意匠層70bと、を備える。この裏面装飾シート70は、表層70aの表面側がアクリル板51の裏面51bに貼り付けられており、裏面51bの全面に貼り付けられている。また、裏面装飾シート70には、上述した取付穴52a~52g,通過穴52h,基準穴53a~53dが形成されており(図7参照)、これらの穴はいずれも表層70a,意匠層70b,基材層70cを貫通している。表層70a及び基材層70cは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、キャブロイド等の透明フィルムで構成されている。意匠層70bは、基材層70cの表面に印刷(シルクスクリーン印刷など)により形成された層である。意匠層70bには、裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられている(図7参照)。裏面絵柄71aは、樹木から舞い散る花びらを描いた絵柄であり、裏面装飾シート70の左中央部に設けられている。裏面絵柄71bは、扇子(扇)の影を模した絵柄であり、裏面装飾シート70の右中央部に設けられている。裏面識別マーク73a,73bは、それぞれ裏面装飾シート70の右下,左上に設けられている。裏面識別マーク73a,73bは、それぞれ基準穴53c,53dから一部がはみ出している。裏面識別マーク73a,73bについては、後述する。裏面装飾シート70の上端には、アクリル板51に対する裏面装飾シート70の傾き(回転)の有無を検査するための裏面検査用ライン78が設けられている。裏面検査用ライン78は、裏面装飾シート70の上端に沿って左右に引かれた破線として描かれている。
【0034】
このようにして構成された遊技盤本体50を表面側(表面51a側)から見ると、図3に示すように、表面装飾シート60の絵柄等だけでなく、アクリル板51を透かして裏面装飾シート70に形成された絵柄等も確認できる。具体的には、遊技盤本体50の上部から左中央部にかけて表面絵柄61a,裏面絵柄71aが確認できる。また、遊技盤本体50の右中央部には表面絵柄61b,裏面絵柄71bが確認できる。このように、遊技盤本体50では、表面装飾シート60と裏面装飾シート70とに設けられた絵柄により、遊技者に奥行きを感じさせるようになっている。また、表面識別マーク63a,表面識別マーク63b,表面検査用ライン68だけでなく、裏面識別マーク73a,裏面識別マーク73b,裏面検査用ライン78についても、遊技盤本体50の表面側から確認できる。ここで、表面装飾シート60の確認部62aは、遊技盤本体50を表面側から見たときに、裏面識別マーク73a及び基準穴53cを含む領域として形成されている。表面装飾シート60のうちこの確認部62aは絵柄が設けられておらずほぼ無色透明となっている。そのため、裏面識別マーク73a及び基準穴53cの遊技盤本体50の表面側からの確認を妨げないようになっている。確認部62bは、遊技盤本体50を表面側から見たときに、裏面識別マーク73b及び基準穴53dを含む領域として形成されている。この確認部62bも、確認部62aと同様に絵柄が設けられずほぼ無色透明となっている。そのため、裏面識別マーク73b及び基準穴53dの遊技盤本体50の表面側からの確認を妨げないようになっている。なお、確認部62a,62bは表面側から見て矩形状の領域として図示しているが、必ずしも矩形状である必要はなく、そもそも確認部62aの外縁を明確に識別できる必要はない。例えば、表面装飾シート60のうち確認部62aの周辺も絵柄が設けられず無色透明となっていてもよい。」
(イ)「【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
」
[認定事項]
(ウ)上記記載事項(ア)【0032】に「表面装飾シート60は、図4,5に示すように、表層60aと、表層60aの裏面側に形成された基材層60cと、表層60aと基材層60cとの間に形成された意匠層60bと、を備える。」と記載されていることに照らして、上記記載事項(イ)【図4】及び【図5】を参照すれば、表面装飾シート60は、表層60aと、意匠層60bと、基材層60cとをこの順で積層したものであることが看て取れる。
(エ)上記記載事項(ア)【0032】に「意匠層60bには、表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられている」と記載されていることに照らして、上記記載事項(イ)【図6】を参照すれば、表面装飾シート60は、表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域を有することが看て取れる。
(オ)上記認定事項(ウ)より、「表面装飾シート60は、表層60aと、意匠層60bと、基材層60cとをこの順で積層したものであ」り、上記記載事項(ア)【0032】に「表層60a及び基材層60cは…透明フィルムで構成されている。意匠層60bは、基材層60cの表面に印刷…により形成された層である。」と記載され、上記記載事項(ア)【0034】に「遊技盤本体50を表面側(表面51a側)から見ると…表面装飾シート60の絵柄等だけでなく、アクリル板51を透かして裏面装飾シート70に形成された絵柄等も確認できる。…表面装飾シート60…絵柄が設けられておらずほぼ無色透明となっている」と記載されているので、上記認定事項(エ)における、表面装飾シート60の表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域は透明であるといえる。
(カ)上記記載事項(ア)【0033】に「裏面装飾シート70は、図4,5に示すように、表層70aと、表層70aの裏面側に形成された基材層70cと、表層70aと基材層70cとの間に形成された意匠層70bと、を備える。」と記載されていることに照らして、上記記載事項(イ)【図4】及び【図5】を参照すれば、裏面装飾シート70は、表層70aと、意匠層70bと、基材層70cとをこの順で積層したものであることが看て取れる。
(キ)上記記載事項(ア)【0033】に「意匠層70bには、裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられている」と記載されていることに照らして、上記記載事項(イ)【図7】を参照すれば、裏面装飾シート70は、意匠層70bに裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域を有することが看て取れる。
(ク)上記認定事項(カ)より、「裏面装飾シート70は、表層70aと、意匠層70bと、基材層70cとをこの順で積層したものであ」り、上記記載事項(ア)【0033】に「表層70a及び基材層70cは…透明フィルムで構成されている。意匠層70bは、基材層70cの表面に印刷…により形成された層である」と記載されているから、裏面装飾シート70は、上記認定事項(ウ)ないし(オ)で検討した表面装飾シート60と同じ構成であるため、上記認定事項(キ)における、裏面装飾シート70の裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域も透明であるといえる。
(ケ)上記記載事項(イ)【図3】から、遊技盤本体50は、表面装飾シート60に表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられておらず、かつ裏面装飾シート70に裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域を有することが看て取れる。
そして、上記記載事項(ア)及び(イ)並びに認定事項(ウ)ないし(ケ)を総合勘案すると、先願明細書等1には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
[先願発明]
「a 透明なアクリル素材で形成された平板状の部材であるアクリル板51を備え、((ア)【0030】)
b アクリル板51の表面51aに貼り付けられ、扇子(扇)を描いた絵柄である表面絵柄61bが右中央部に設けられている意匠層60bを備える表面装飾シート60を備え、((ア)【0030】、【0032】)
表面装飾シート60は表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域を有し、表面装飾シート60の表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域は透明であり、(認定事項(エ)、(オ))
c アクリル板51の裏面51bに貼り付けられ、扇子(扇)の影を模した絵柄である裏面絵柄71bが右中央部に設けられている意匠層70bを備える裏面装飾シート70を備え、((ア)【0030】、【0033】)
表面側(表面51a側)から見ると、アクリル板51を透かして、右中央部には表面絵柄61b,裏面絵柄71bが確認でき、このように、表面装飾シート60と裏面装飾シート70とに設けられた絵柄により、遊技者に奥行きを感じさせるようになっており、((ア)【0034】)
d 裏面装飾シート70は、裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域を有し、裏面装飾シート70の裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域は透明であり、表面装飾シート60に表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられておらず、かつ裏面装飾シート70に裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域を有する(認定事項(キ)、(ク)、(ケ))
e 遊技盤本体50。((ア)【0030】)」
(2)対比
本願発明と先願発明とを対比する(なお、本願発明の分説した構成AないしEに対応して、見出し(A)ないし(E)を付した。)。
(A)
先願発明の「透明なアクリル素材で形成された平板状の部材であるアクリル板51」は、本願発明の「透明又は半透明な素材で作成された遊技基板」に相当する。
したがって、先願発明は、本願発明の構成Aを備えている。
(B)
先願発明において、「表面装飾シート60」が「アクリル板51の表面51aに貼り付けられ」たことは、本願発明において、「前面装飾層」が「前記遊技基板の前面の全部又は一部に設けられ」たことに相当する。
また、先願発明における、「意匠層60b」の「扇子(扇)を描いた絵柄である表面絵柄61bが」「設けられている」部分は、本願発明における、「絵柄を有する」「前面装飾部」に相当する。
さらに、先願発明における、「表面装飾シート60」の「表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域」は、「表面絵柄61bが右中央部に設けられている」ため、アクリル板51の表面51a側の一部であることは明らかである。
そして、「表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域」は「透明であ」り、「アクリル板51」も「透明なアクリル素材で形成された平板状の部材である」ので、先願発明において、「表面装飾シート60」に「表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域を有」することは、本願発明において、「前記遊技基板の前面側の一部に後面及び背面側が視認可能な第1背面側視認可能領域を有する」ことに相当する。
したがって、先願発明は、本願発明の構成Bを備えている。
(C)
先願発明では、「裏面絵柄71b」は、「表面側(表面51a側)から見ると、アクリル板51を透かして、右中央部に」「確認でき」るので、「表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域」に対向する位置の少なくとも一部に「設けられている」といえる。
よって、先願発明における、「アクリル板51の裏面51bに貼り付けられ、扇子(扇)の影を模した絵柄である裏面絵柄71bが設けられている意匠層70bを備える裏面装飾シート70」は、本願発明の構成Cと、「前記遊技基板の後面であって、前記背面側視認可能領域に対向する位置の少なくとも一部に」「絵柄からなり」、「形成された後面装飾部を有する後面装飾層」である点で共通する。
(D)
先願発明の「裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域」は、本願発明の「後面に前記後面装飾部が設けられていない領域」に相当する。
そして、先願発明において、「アクリル板51」は「透明なアクリル素材で形成された平板状の部材であ」り、「表面装飾シート60の表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられていない領域は透明であ」り、「裏面装飾シート70の裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域は透明であ」るから、先願発明の「表面装飾シート60に表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられておらず、かつ裏面装飾シート70に裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域」は、アクリル板51も表面装飾シート60も裏面装飾シート70も透明であるため、背面側が視認可能となっているといえる。
よって、先願発明の「表面装飾シート60に表面絵柄61a,61b,表面識別マーク63a,63bが設けられておらず、かつ裏面装飾シート70に裏面絵柄71a,71b,裏面識別マーク73a,73bが設けられていない領域」は、本願発明の「後面に前記後面装飾部が設けられていない領域であって、かつ前記第1背面側視認可能領域から背面側が視認可能となる第2背面側視認可能領域」に相当する。
したがって、先願発明は、本願発明の構成Dを備えている。
(E)
先願発明の「遊技盤本体50」は、本願発明の「遊技板」に相当する。
したがって、先願発明は、本願発明の構成Eを備えている。
以上より、本願発明と先願発明とは、
「透明又は半透明な素材で作製された遊技基板と、
前記遊技基板の前面側の一部に後面及び背面側が視認可能な第1背面側視認可能領域を有するように前記遊技基板の前面の全部又は一部に設けられ、前面装飾部に絵柄を有する前面装飾層と、
前記遊技基板の後面であって、前記第1背面側視認可能領域に対向する位置の少なくとも一部に絵柄からなり、形成された後面装飾部を有する後面装飾層と、
後面に前記後面装飾部が設けられていない領域であって、かつ前記第1背面側視認可能領域から背面側が視認可能となる第2背面側視認可能領域と、
を有している遊技板。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
[相違点]
構成Cの後面装飾部が、本願発明では、「前面装飾部と同じ前記絵柄からなり、正面から視認した場合に一定距離ずれて又は同じ位置に形成された」ものであるのに対し、先願発明では、そのように特定されていない点。
(3)判断
上記相違点について検討する。
先願発明では、「表面装飾シート60」の「扇子(扇)を描いた絵柄である表面絵柄61b」と「裏面装飾シート70」の「扇子(扇)の影を模した絵柄である裏面絵柄71b」とは共に、「右中央部に設けられ」ており、「表面側(表面51a側)から見ると、アクリル板51を透かして、右中央部には表面絵柄61b,裏面絵柄71bが確認でき、このように、表面装飾シート60と裏面装飾シート70とに設けられた絵柄により、遊技者に奥行きを感じさせるようになって」いる。
そうすると、先願発明の「扇子(扇)の影を模した絵柄である裏面絵柄71b」は、「遊技者に奥行きを感じさせる」という課題を解決するために、「表面装飾シート60」の「扇子(扇)を描いた絵柄である表面絵柄61b」に対応した絵柄からなり、「アクリル板51を透かして、右中央部に」「確認でき」るよう、「扇子(扇)を描いた絵柄である表面絵柄61b」に対応する位置に形成されているといえる。
ここで、透明又は半透明な基板の後面に、前面の絵柄と同じ絵柄を、正面から視認した場合に一定距離ずれて形成することによって、立体感を感じさせるようにすることは、装飾体に関する技術分野において周知の技術事項であると認められる(例えば、実願昭60-67741号(実開昭61-183700号公報参照。)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの実用新案登録請求の範囲には「(1)透明材料からなる板状基体と、該板状基体の表側面に形成された絵、文字等の表側加飾体と、該板状基体の裏側面で該表側加飾体の反対側に該表側加飾体を反転させた形状で形成された裏側加飾体とからなることを特徴とする装飾部材。…(3)表側加飾体と裏側加飾体とは板状基体表面に平行に、僅かにずれた位置に形成されている特許請求の範囲第1項記載の装飾部材。」と記載され、第5頁第10行~同頁第12行には「…板状基体と介して、表側加飾体と裏側加飾体の両方が見えることにより、板状基体の屈折率の関係で立体的に見える…」と記載されている。また、特開平8-187812号公報の【特許請求の範囲】には「【請求項1】文字や画像が印画または印刷されている非透明シートのベース画像面と、前記非透明シートと同一の文字や画像が印画または印刷されている透明シート画像面の裏面とが、密着状態で積層されてなる立体状視覚を呈するシート状積層体。…【請求項3】ベース画像面と透明シート画像面とが、何れかの方向に微細な感覚のずれを形成した状態で積層されてなる請求項1記載の立体状視覚を呈するシート状積層体。」と記載され、【0026】には「【発明の効果】本発明のシート状積層体は、ベース画像と表面画像とが透明層を介して積層された簡単な構造で画像に立体感を持たせたものであり、特に、人為的にずれを設けた場合は、画像全体に深みと立体感とを合わせ有したものとなる。」と記載されている。さらに、実願昭61-195692号(実開昭63-98846号公報参照。)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの実用新案登録請求の範囲には「(1)所望厚みの透明乃至半透明な基体を介して表裏側で互いに外郭をズラせて一つの調和した識別模様を醸し出す各着色層を形成してなることを特徴とする装飾成形品。(2)上記各着色層が同じ外郭形状に形成されているところの実用新案登録請求の範囲第1項記載の装飾成形品。」と記載され、第5頁第6頁~同頁第13行には「…透明乃至半透明な基体10の肉厚を通して裏面側の着色層12と表面側の着色層11が同時に視認され、しかも両着色層11,12の外郭が位置ズレしているために表面側の着色層11が裏面側の着色層12から浮き上った感じを呈することにより各着色層11,12で成形する識別模様に極めて立体感を持たせることができる。」と記載されている。)。
そして、先願発明の「遊技盤本体50」は、「表面装飾シート60」と「裏面装飾シート70」とを「備え」るので、装飾体に関する技術分野に属することは明らかである。
してみると、先願発明における「遊技者に奥行きを感じさせる」という課題に照らせば、「扇子(扇)の影を模した絵柄である裏面絵柄71bが右中央部に設けられている」構成に換えて上記周知の技術事項を採用して、「扇子(扇)を描いた絵柄である表面絵柄61b」と同じ絵柄を、正面から視認した場合に一定距離ずれて形成することは、周知技術による転換であって、新たな効果を奏するものではないから、上記課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
したがって、本願発明と先願発明とは実質的に同一である。
(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成30年10月12日に提出した意見書の「[2]本願が特許されるべき理由」「3.各引用文献に記載の発明と本願発明との比較」において、先願明細書等1には、本願発明のように、
・後面装飾層の一部に、前面装飾部と同じ絵柄からなる絵柄が設けられている点
・前面装飾層と後面装飾層の同じ絵柄が一定距離ずれて又は同じ位置に配置されている点
については、記載されておらず、実質的同一と判断されるべき記載もない旨を主張している。
しかしながら、審判請求人の上記主張については上記(3)判断のとおりであるから、これを採用することはできない。
(5)小括
上記(1)ないし(4)より、本願発明は、先願明細書等1に記載された先願発明と同一であり、しかも、本願の発明者が特許出願1に係る上記の先願発明をした者と同一ではなく、また本願出願時において、本願の出願人が上記特許出願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
第3 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の拒絶理由及び他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-018464