特許拒絶査定不服審判
2017-016455
遊技情報分析システム、分析サーバ、および遊技情報分析方法
- 審判番号
- 2017-016455
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-161439外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月06日
- 審決日
- 2018年08月06日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ユニバーサルエンターテインメント
- 【請求人代理人】特許業務法人タス・マイスター国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-161439号「遊技情報分析システム、分析サーバ、および遊技情報分析方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日出願公開、特開2017- 38724号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続きの経緯
本願は、平成27年8月18日の出願であって、平成28年12月16日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年2月22日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年7月20日付け(発送日:平成29年8月8日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
2 本願発明
平成29年11月6日付け手続補正による特許請求の範囲の補正は、補正前の請求項1~7のうち請求項3、4を削除し請求項1~5としたものであって、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とする補正に該当する。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年11月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(記号A~Eは、分説するため当審で付した。)。
「【請求項1】
A 分析サーバを備える遊技情報分析システムであって、
B 前記分析サーバは、
B1 投資金額および払出額に関する情報を含む遊技情報を、ゲーミングマシンから受信する遊技情報受信部と、
B2 前記遊技情報に基づいて、分析処理を行う遊技情報分析部とを含み、
C 前記遊技情報分析部は、
C1 所定区間における、前記投資金額と前記払出額の関係性を示す第1指標の値を事前に算出し、
C2 時系列の遊技情報を分析する際に、分析対象のゲームに係る前記投資金額と前記払出額の関係性を示す前記第1指標の値と前記事前に算出された第1指標の値を比較し、
D 前記分析対象のゲームに係る第1指標の値が、前記事前に算出された第1指標の値に対して所定の乖離を有する場合に、前記ゲームがボーナスゲーム状態であると判定する、
E 遊技情報分析システム。」
3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2015-77363号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
・記載事項
ア 「【0001】
本発明は、遊技場に設置されて所定の動作を実行する遊技用装置、この遊技用装置を備えた遊技場システム、及び、遊技用装置が実行する特定遊技状態期間判定方法に関し、特に、遊技者にとって有利な遊技状態である特定遊技状態により遊技が行われた期間を判定し、この特定遊技状態に関する遊技情報を集計する遊技用装置、遊技場システム及び特定遊技状態期間判定方法に関する。」
イ 「【0021】
[遊技場装置及び遊技場システム]
まず、本発明の遊技場装置及び遊技場システムの実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の遊技場システムの構成を示す概略図である。
図1に示すように、遊技場システム1は、複数のスロットマシン10と、これらスロットマシン10毎に設けられた呼出ランプ20と、一又は二以上の呼出ランプ20に接続された台コンピュータ30と、スロットマシン10の島単位に設けられた島コンピュータ40と、これら島コンピュータ40に接続されたホールコンピュータ50とを備えている。」
ウ 「【0042】
(1)台コンピュータの構成
台コンピュータ30は、一又は二以上のスロットマシン10に対して設けられた信号中継装置であって、図3に示すように、通信部31と、記憶部32と、制御部33とを有している。
通信部31は、呼出ランプ20や島コンピュータ40との間で所定の信号を送受信する通信手段である。この通信部31は、スロットマシン10から出力された外部出力信号を、呼出ランプ20を介して受信する。また、通信部31は、制御部33で算出された遊技情報を、島コンピュータ40を介してホールコンピュータ50へ送信する。」
エ 「【0053】
所定期間は、例えば一日の営業時間中に複数特定されるが、一の所定期間と次の所定期間は、連続していてもよく、あるいは、時間的に重複していてもよい。
例えば、図5(i)に示すように、一つ目の所定期間が終了した後に、二つ目の所定期間が開始するようにすることができる。
また、図5(ii)に示すように、一つ目の所定期間の開始後、所定の条件に達したときに、二つ目の所定期間を開始させるようにすることができる。具体的には、一の所定期間が15ゲームの場合において、一つ目の所定期間の開始後、7ゲームが実行されたときに、次のゲームから二つ目の所定期間を開始させるようにすることができる。
これらを比較したとき、図5(i)に示す方法よりも、図5(ii)に示す方法の方が、ARTの開始時期を早期かつ確実に見つけることができる。このため、本実施形態においては、所定ゲーム数分(15ゲーム分)の所定期間を、1ゲームごとにシフトさせながら特定していくものとする。」
【0054】
また、制御部33は、少なくとも遊技場の営業時間中において、所定期間特定情報を監視し続けて、所定期間を逐次特定していく。
そして、制御部33は、所定期間を特定すると、記憶部32に記憶されている遊技状態データベースを参照し、「判定結果」が「OFF」又は「ON」のいずれであるかを判断する。この「判定結果」が「OFF」であるとき、制御部33は、ARTの開始ゲームがまだ特定されていないものと判断し、以降に説明する処理、すなわちARTの開始ゲームを特定する処理を実行する。
【0055】
制御部33は、特定した所定期間が、ARTが開始したゲームを含む期間であるか否かを判断する。
この判断は、所定の遊技情報である第一判定情報を用いて行われる。第一判定情報は、スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出される遊技情報のうちの少なくとも一の情報である。
・・・
【0057】
差枚数は、スロットマシン10に投入されたメダルの枚数であるメダル投入枚数とメダル払出枚数との差を示す差遊技媒体数である。ただし、第一判定情報として用いられる場合の差枚数は、所定期間内においてスロットマシン10に投入されたメダルの合計枚数であるメダル投入枚数と当該所定期間内における合計のメダル払出枚数との差を示す差遊技媒体数である。
純増枚数は、メダル払出枚数からメダル投入枚数を差し引いた数量である。ただし、第一判定情報として用いられる場合の純増枚数は、所定期間におけるメダル払出枚数から当該所定期間内におけるメダル投入枚数を差し引いた数量である。この純増枚数は、計算結果が差枚数と同じとなるが、第一判定情報には、差枚数と純増枚数のいずれを用いてもよい。
ベース(出率)は、特賞(BB、RB)中以外の遊技状態における出率をいい、メダル払出枚数をメダル投入枚数で除算して、100を乗算した数値として算出される。ただし、第一判定情報として用いられる場合のベースは、所定期間における出率のうち特賞(BB、RB)中以外の遊技状態における出率をいう。この場合、ベースは、所定期間におけるメダル払出枚数の合計を当該所定期間におけるメダル投入枚数の合計で除算して、100を乗算した数値として算出される。」
オ 「【0059】
そして、制御部33は、本発明の開始期間特定手段として動作し、算出した第一判定情報が一定の条件を満たしているか否かを判断し、一定の条件を満たしている第一判定情報を検出すると、当該検出した第一判定情報が算出された所定期間を、特定遊技状態が開始したタイミングを含む期間である特定遊技状態開始期間として特定する。
例えば、第一判定情報がベースであって、一定の条件が「60%以上」であるとき、制御部33は、特定した所定期間ごとに、これら所定期間内におけるベースを算出し、このベースが「60%以上」であるか否かを判断する。
ここで、その算出したベースが「60%以上」でないとき、制御部33は、このベースを算出した所定期間をART開始期間として特定しない。
一方、その算出したベースが「60%以上」であるとき、制御部33は、この条件を最初に満たしているものとして検出した所定期間を、特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する。」
【0060】
また、制御部33は、ART開始期間を特定すると、このART開始期間内に実行された複数のゲームの中から、ARTが開始したゲームであるART開始ゲームを特定する。
この特定は、所定の遊技情報である第二判定情報を用いて行われる。第二判定情報は、スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出又は導出される情報のうちの少なくとも一の情報である。
この第二判定情報には、例えば、差枚数、純増枚数、ベース(出率)、メダル払出枚数、メダル払出回数などを用いることができる。」
カ 【図6】には、「通常遊技状態 (ベース50~30%) RT 1/7.3」との記載がある。
・認定事項
キ 上記記載事項エの【0055】から、「制御部33」は、「スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出される遊技情報のうちの少なくとも一の情報である」「第一判定情報を用いて」、「特定した所定期間が、ARTが開始したゲームを含む期間であるART開始期間か否かを判断」すること、また、上記記載事項オの【0060】から、「制御部33」は、「ART開始期間を特定すると」、「スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出又は導出される少なくとも一の情報である」「第二判定情報を用いて」、「ART開始期間内に実行された複数のゲームの中から、ARTが開始したゲームであるART開始ゲームを特定する」ことが記載されていると認められる。
ク 上記記載事項オの【0059】には、「第一判定情報がベースであって、一定の条件が「60%以上」であるとき、制御部33は、特定した所定期間ごとに、これら所定期間内におけるベースを算出し、このベースが「60%以上」であるか否かを判断する。」との記載があるから、引用文献1には、「制御部33が、特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるか否かを判断する」ことが記載されていると認められる。
ケ 上記記載事項オの【0059】には、「その算出したベースが「60%以上」であるとき、制御部33は、この条件を最初に満たしているものとして検出した所定期間を、特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する。」との記載があるから、引用文献1には、「制御部33は、特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが、「60%以上」であるとき、前記所定期間を特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する」ことが記載されていると認められる。
コ 上記記載事項エの【0057】の記載から、ベースは、メダル払出枚数をメダル投入枚数で除算して100を乗算した数値であると認められる。
サ 上記記載事項カから、引用文献1に記載のスロットマシン1の通常遊技状態におけるベースは、「50~30%」であると認められる。
シ 上記記載事項ア~オ、及び、上記認定事項キ~ケを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a~eは、本願発明の記号A~Eに対応させて付した。)。
「a 台コンピュータ30を備える遊技場システム1であって(記載事項アの【0001】、イの【0021】)、
b 前記台コンピュータ30は、
b1 通常遊技状態におけるベースが「50~30%」であるスロットマシン10から出力された外部出力信号を受信する通信部31と(認定事項サ、記載事項ウの【0042】)
b2 所定ゲーム数分の所定期間を、1ゲームごとにシフトさせながら特定し(記載事項エの【0053】、【0054】)、前記スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出される遊技情報のうちの少なくとも一の情報である第一判定情報を用いて、特定した所定期間が、ARTが開始したゲームを含む期間であるART開始期間か否かを判断し、ART開始期間を特定すると、前記スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出又は導出される少なくとも一の情報である第二判定情報を用いて、ART開始期間内に実行された複数のゲームの中から、ARTが開始したゲームであるART開始ゲームを特定する制御部33とを含み(認定事項キ)、
c 前記制御部33は、
c2 前記特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるか否かを判断し(認定事項ク)、
d 前記特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるとき、前記所定期間を特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する(認定事項ケ)、
e 遊技場システム1。」
4 対比
本願発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願発明の構成A、B1、B2、C2、Dと引用発明の構成a、b、b1、b2、c2、dについて、それぞれ(a)、(b)、(b1)、(b2)、(c2)、(d)の見出しを付して行った。)。
(b1)引用発明の「スロットマシン10」は、本願発明の「ゲーミングマシン」に相当する。
また、引用発明の「スロットマシン10から出力された外部出力信号」は、構成b2、c2に記載されるように、その信号にもとづいて第一判定情報としてのベースが算出されること、及び、上記認定事項コに記載されるように、当該ベースは、メダル払出枚数をメダル投入枚数で除算して100を乗算した数値であることから、メダル払出枚数とメダル投入枚数を含む情報である。そして、メダルの枚数は金額に対応するから、引用発明の「メダル投入枚数」と「メダル払出枚数」は、それぞれ本願発明の「投資金額」と「払出額」に相当する。したがって、引用発明の「スロットマシン10から出力された外部出力信号」は、本願発明の「投資金額および払出額に関する情報を含む遊技情報」に相当する。
さらに、引用発明の「通信部31」は、本願発明の「遊技情報受信部」に相当する。
よって、引用発明の「通常遊技状態におけるベースが「50~30%」であるスロットマシン10から出力された外部出力信号を受信する通信部31」は、本願発明の「投資金額および払出額に関する情報を含む遊技情報を、ゲーミングマシンから受信する遊技情報受信部」に相当する。
(b2)引用発明において、「前記スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出される遊技情報のうちの少なくとも一の情報である第一判定情報を用いて、特定した所定期間が、ARTが開始したゲームを含む期間であるART開始期間か否かを判断し、ART開始期間を特定すると、前記スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出又は導出される少なくとも一の情報である第二判定情報を用いて、ART開始期間内に実行された複数のゲームの中から、ARTが開始したゲームであるART開始ゲームを特定する」ことは、本願発明の「前記遊技情報に基づいて、分析処理を行う」ことに相当する。
また、引用発明の「制御部33」は、本願発明の「技術情報分析部」に相当する。
(b)引用発明の「台コンピュータ33」は、「通信部31」と「制御部33」を含むものである。また、(b2)に記載のとおり、上記「制御部33」は、本願発明の「技術情報分析部」に相当するものであるから、「制御部33」を含む「台コンピュータ33」は、「分析サーバ」の機能を有している。したがって、引用発明の「台コンピュータ33」は、本願発明の「分析サーバ」に相当する。
(a)引用発明の「台コンピュータ30」は、上記(b)に記載のとおり、本願発明の「分析サーバ」に相当する。
また、「分析サーバ」の機能を有する「台コンピュータ30」を備える「遊技場システム1」は、本願発明の「遊技情報分析システム」に相当する。
(c2)引用発明の「所定期間」は、構成b2に記載されるように、「1ゲームごとにシフトさせながら特定」されるものであるから、「所定期間における第一判定情報」は、本願発明の「時系列の遊技情報」に相当する。したがって、引用発明において、構成c2に記載されるように、「前記所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるか否かを判断し」、構成dに記載されるように、「前記所定期間を特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する」ことは、本願発明において、「時系列の遊技情報を分析する」ことに相当する。
また、引用発明の「特定した所定期間」に含まれる複数のゲームは、本願発明の「分析対象のゲーム」に相当する。
そして、引用発明の「第一判定情報としてのベース」は、上記認定事項コに記載されるように、メダル払出枚数をメダル投入枚数で除算して100を乗算した数値であることから、メダル投入枚数とメダル払出枚数の関係性を示すものであり、また、メダルの枚数は金額に対応するから、引用発明の「メダル投入枚数」と「メダル払出枚数」は、それぞれ本願発明の「投資金額」と「払出額」に相当する。したがって、引用発明の「第一判定情報としてのベース」は、本願発明の「前記投資金額と前記払出額の関係性を示す第1指標の値」に相当する。
さらに、引用発明においては、「前記所定期間を特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する」ために、「特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるか否かを判断」しているが、「ART開始」は、遊技状態が通常遊技状態から特定遊技状態であるART状態に移行することを意味することに鑑みれば、引用発明においては、「特定した所定期間における第一判定情報としてのベース」が「通常遊技状態におけるベース」である「50~30%」より十分大きくなったか否かを判断するために、上記のとおり「60%以上」との基準を設定し判断を行っていることが明らかである。したがって、第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるか否かを判断することにより、実質的に、第一判定情報としてのベースを「50~30%」と比較しているものと認められる。ここで、「50~30%」は、遊技を行う以前に設定されたものであるから、引用発明の「通常遊技状態におけるベース」である「50~30%」は、本願発明の「事前に算出された第1指標の値」と、「事前に導出された第1指標の値」の点で共通する。
よって、引用発明において、「特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるか否かを判断」することと、本願発明において、「分析対象のゲームに係る前記投資金額と前記払出額の関係性を示す前記第1指標の値と前記事前に算出された第1指標の値を比較」することは、「分析対象のゲームに係る前記投資金額と前記払出額の関係性を示す前記第1指標の値と前記事前に導出された第1指標の値を比較」する点で共通する。
(d)引用発明において、「特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるとき」には、「前記特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが」「通常遊技状態におけるベース」であって、遊技を行う以前に設定された値である「50~30%」に対して10%以上大きくなることから、引用発明の「前記1ゲームごとにシフトさせながら特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるとき」と、本願発明の「前記分析対象のゲームに係る第1指標の値が、前記事前に算出された第1指標の値に対して所定の乖離を有する場合」とは、「前記分析対象のゲームに係る第1指標の値が、前記事前に導出された第1指標の値に対して所定の乖離を有する場合」の点で共通する。
また、引用発明では、構成bに記載のとおり、「ART開始期間を特定」した上で、「前記スロットマシン10から出力された外部出力信号にもとづいて算出又は導出される少なくとも一の情報である第二判定情報を用いて、ART開始期間内に実行された複数のゲームの中から、ARTが開始したゲームであるART開始ゲームを特定する」ものであるから、構成dにおいて、「前記所定期間を特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する」ことは、「所定期間」に含まれる複数のゲームをART開始ゲームの候補として特定することを意味する(本願明細書【0529】から明らかなとおり、本願発明においても、構成Dにおける判定は、最終的な判定ではなく、「候補」の判定である。)。そして、ART機能をボーナスと表現することが、本願の出願前に周知である(例えば、特開2013-233161号公報の【0009】、特開2015-126759号公報の【0096】、【0214】等を参照。)。したがって、引用発明において、「前記所定期間を特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する」ことは、本願発明において、「前記ゲームがボーナスゲーム状態であると判定する」ことに相当する。
よって、引用発明において、「前記特定した所定期間における第一判定情報としてのベースが「60%以上」であるとき、前記所定期間を特定遊技状態開始期間であるART開始期間として特定する」ことと、本願発明において、「前記分析対象のゲームに係る第1指標の値が、前記事前に算出された第1指標の値に対して所定の乖離を有する場合に、前記ゲームがボーナスゲーム状態であると判定する」ことは、「前記分析対象のゲームに係る第1指標の値が、事前に導出された第1指標の値に対して所定の乖離を有する場合に、前記ゲームがボーナスゲーム状態であると判定する」点で共通する。
上記(a)、(b1)、(b2)、(c2)、(d)の検討により、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「A 分析サーバを備える遊技情報分析システムであって、
B 前記分析サーバは、
B1 投資金額および払出額に関する情報を含む遊技情報を、ゲーミングマシンから受信する遊技情報受信部と、
B2 前記遊技情報に基づいて、分析処理を行う遊技情報分析部とを含み、
C 前記遊技情報分析部は、
C2’ 時系列の遊技情報を分析する際に、分析対象のゲームに係る前記投資金額と前記払出額の関係性を示す第1指標の値と事前に導出された第1指標の値を比較し、
D’ 前記分析対象のゲームに係る第1指標の値が、事前に導出された第1指標の値に対して所定の乖離を有する場合に、前記ゲームがボーナスゲーム状態であると判定する、
E 遊技情報分析システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点](構成C1、C2、D)
本願発明では、「事前に導出された第1指標」が「事前に算出された」ものであるのに対して、引用発明では、「通常遊技状態におけるベース」である「50~30%」が「事前に算出されたもの」であるか否か不明である点。
5 当審における判断
(1)相違点について
本願の出願前に、遊技機の技術分野において、事前に算出された統計データである基準値と遊技状態に関する指標値を比較することで遊技状態を判定すること(以下、「周知事項1」という。)が周知である(例えば、特開2006-87781号公報の【0155】~【0168】には、遊技機のモードの判定(STEP137の判定)の前に、つまり事前に算出した「差メダルの平均」と、「差メダル」の比較により、遊技機のモードの判定を行うことが記載されている。ここで、「差メダルの平均」は、所定期間における差メダルの平均をとるものであるから、「差メダル」に関する統計データといえる。また、特開2010-154942号公報の【0072】には、遊技機の状態を判定する前に、つまり事前に算出した「判定基準値」と、ベースの比較により、遊技機の状態を判定することが記載されている。ここで、「判定基準値」は、所定の集計単位(例えば、25ゲーム、50ゲーム、100ゲーム)ごとにベースを集計して作成した図9のグラフから算出されるものであるから(【0069】)、統計データといえる。)。
そして、引用発明と周知事項1とは、遊技機の状態を判定するという点で同様の課題を有しており、そのために基準値と遊技状態に関する指標値とを比較するという点で同様の機能を有している。
そこで、引用発明に上記周知事項1を適用し、「通常遊技状態のベース」である「50~30%」を「事前に算出された統計データ」とすることにより相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2) 請求人の主張について
請求人は、平成29年11月6日付け審判請求書において、
「このように、「第1指標」は、本願の請求項1の記載からも明らかなように、「所定区間における、投資金額と払出額の関係性を示すものとして「事前に」算出されたものであり、この点で、統計的な情報を表す「統計データ」といえる。ここで、例えば、第1指標を、1つのゲーミングマシンの過去の遊技情報から構成すれば、そのゲーミングマシンの特性や癖を含んだ統計データとして利用することができるし、第1指標を、所定日時、遊技者単位、ホール単位、機種単位等で取得すれば、その取得範囲の単位での特性等を示す統計データとして利用することが可能となる。」
と主張し、また、
「このように、引用文献1の遊技用装置では、本願のような、投資金額と払出額の関係性を示す指標と、別の、投資金額と払出額の関係性を示す指標とを「比較」を行うものではなく、1つの指標に関して、50%や60%といった固定値との比較を行っているに過ぎず、本発明とは構成が全く異なるものであり、また、引用文献1において、本発明の構成につながる記載や示唆は含まれていない。
また、引用文献1の遊技用装置では、上記のように、50%や60%といった、比較対象となる固定値の設定が必要であり、本願のような、ゲーミングマシンの稼働データに基づいて(すなわち、判定のための固定値の設定を必要とせずに)、ゲームがボーナスゲームであることを判定することができる、という顕著な効果を奏することができない。」
と主張するが、
「5(1)相違点について」で例示した周知例(特開2006-87781号公報、特開2010-154942号公報)に記載される「差メダルの平均」や「判定基準値」も、「事前に算出された統計データ」であり、引用発明に周知事項1を適用することにより、「通常遊技状態のベース」である固定値の「50~30%」を該「事前に算出された統計データ」とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の主張は採用できない。
(3)小括
本願発明により奏される効果は、引用発明と周知事項1から当業者が予測できる範囲内のものであり、格別顕著なものとは言えない。
そうすると、上記「5(1)相違点について」において検討したとおり、本願発明は、引用発明と周知事項1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-016455