意匠拒絶査定不服審判
2017-014682
自転車用チェーンケース
- 審判番号
- 2017-014682
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2016-023317外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月03日
- 審決日
- 2018年03月28日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ブリヂストンサイクル株式会社
- 【請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【請求人代理人】布施 哲也
- 【請求人代理人】野間 悠
- 【請求人代理人】塚原 憲一
- 分類
- D18 .113-WY (G2-4)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2016- 23317「自転車用チェーンケース」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成28年10月7日付けの意匠登録出願であって,平成29年3月28日付けの拒絶理由の通知に対し,平成29年5月15日に意見書が提出されたが,平成29年6月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成29年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,平成29年11月9日に審判請求書の請求の理由を変更する手続補正書が提出されたものである。
第2 本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「自転車用チェーンケース」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。
引用意匠は,特許庁意匠課が2014年2月7日に受け入れた,電気通信回線の種類:インターネット,掲載確認日(公知日):2014年1月21日,掲載者:ブリヂストンサイクル株式会社,表題:ニュースリリース,掲載ページのアドレス:http://www.bscycle.co.jp/company/release20140108.htmlに掲載された「自転車」にあらわれた「チェーンケース」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ25058241号)であり,その形態を,同掲載ページに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
第4 請求人の主張
1.本願意匠が登録されるべき理由
(1)原審における認定の誤り
本願意匠は,略三角形状の膨出部として表れるアシストユニットカバー部を,本体部と一体成形した自転車用チェーンケースである。一方,引用意匠は,甲第1号証に添付の写真からも分かるように,略三角形状のアシストユニットカバーを,チェーンケース本体とは別体として設けたチェーンケースである(引用意匠を備えた電動自転車は,請求人会社の製品であり,同機種の電動自転車の写真を用意できることから,その写真により,引用意匠を備えた電動自転車の実際の構成を開示する。そのフレーム部に表れたロゴ「STEPCRUZ」が,引用意匠を備えた電動自転車と写真の電動自転車で同一であることから,両者が同機種であることが分かる。)。
原審は,チェーンケース本体に,それとは別体であるアシストユニットカバーを加えた物を引用意匠としている。しかし,このような意匠の認定は,以下に述べるように妥当ではない。
部分品が意匠法上の一物品といいうるためには,それが互換性を有し,かつ,通常の状態で独立の製品として取引される必要がある(東京高裁昭和53年7月26日判決(昭和52年(行ケ)第121号)。
互換とは,「広辞苑 第六版」(岩波書店)によれば,「たがいにとりかえること。また,とりかえがきくこと」の意味である。引用意匠のチェーンケース本体は,同一規格の電動アシストユニット及びバッテリーを使用する他機種の電動自転車とたがいにとりかえられることから,互換性を有する。
また,引用意匠を備えた電動自転車と同様に,チェーンケース本体とアシストユニットカバーを別体として備えた電動自転車であるアシスタDXのパーツリストでは,チェーンケース本体は別個・独立の商品として取引するものと記載されている。このようにチェーンケース本体は一般にアシストユニットカバー部とは別個に取引するものであり,通常の状態で独立の製品として取引されるという要件を満たしている。
意匠は1個の物品について成立するものであるにもかかわらず,原審は,チェーンケース本体という1個の独立した部分品にアシストユニットカバーを加えた物を1個の部分品とした上で引用意匠とし,本願意匠との対比を行った点で妥当ではない。
また,引用意匠の物理的性状からも,チェーンケース本体にアシストユニットカバーを加えたものを一個の部分品とすることは,妥当ではない。
引用意匠を備えた電動自転車において,アシストユニットカバーは,電動自転車に直接に固定する。そして,チェーンケース本体も,電動自転車に直接に固定する。このように,チェーンケース本体とアシストユニットカバーは物理的に結合・固定しておらず,電動自転車から分離した場合,チェーンケース本体にアシストユニットカバーを加えた物が結合・固定した状態で別個・独立の商品として取引されるものではない。
したがって,その物理的性状からも,チェーンケース本体にアシストユニットカバーを加えた物を一個の部分品とする原審の認定は,妥当ではない。
以上のように,チェーンケース本体にアシストユニットカバーを加えた物を1個の部分品とした原審の判断は誤りである。そのような認定を前提とし,引用意匠と本願意匠との対比を行い,両意匠は類似と判断した拒絶査定は妥当ではなく,本願意匠は登録されるべきものである。
(2)両意匠の対比
ア.はじめに
上述したように,原審は引用意匠の認定で誤っており,本願意匠と引用意匠の類否を検討するまでもなく,本願意匠は登録されてしかるべきものである。しかし,請求人は,念のために,本願意匠と,引用意匠のチェーンケース本体の類否について,以下検討を行う。
イ.本願意匠と引用意匠との対比
本願意匠は,その意匠に係る物品を「自転車用チェーンケース」とするものである。その形態は願書添付の図面に表された通りのもので,その基本的構成態様は,略環状部と,後側に向かって上下幅を漸減させた略帯状部を,上側については横略一直線状に,下側については凹状円弧線を介して繋げて形成した倒略P字状の本体部に,略三角形状の膨出部を設けたものとなっている。
一方,引用意匠のチェーンケース本体は,その意匠に係る物品を「自転車用チェーンケース」とするものである。その基本的構成態様は,略環状部と,後側に向かって上下幅を漸減させた略帯状部を,上側については横略一直線状に,下側については凹状円弧線を介して繋げて形成した倒略P字状のものとなっている。
このように両意匠は,全体の骨格をなす基本的構成態様のレベルで相違しており,その相違は一見して明瞭なものであることから,類似しないものである。
2.結び
以上の通り,原審においては,チェーンケース本体にアシストユニットカバーを加えた物を1個の部分品とし,引用意匠とした認定が誤っている。また,本願意匠と引用意匠のチェーンケース本体を対比した場合でも,両者は類似しておらず,本願意匠は意匠法第1項第3号の規定に該当せず,登録されるべきものである。
第5 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「自転車用チェーンケース」とするものであり,その具体的な形態は,以下のとおりである。
(1)全体の態様は,チェーンホイールを覆う正面視略中空円板状部分(以下「ホイールカバー部分」という。)と,チェーン上半分を覆う後方に向かってその上下幅を漸減させた正面視略横長長方形板状部分(以下「チェーンカバー部分」という。)からなる正面視略横P字状のチェーンケース(以下「本体ケース」という。)のホイールカバー部分左側の前面から一段奥まった位置に,電動アシスト用モーター及びギア等からなるアシストユニットを覆う正面視略三角形状のチェーンケース(以下「アンダーケース」という。)を一体的に形成したものであり,
(2)本体ケースの形態は,その外周縁部分を傾斜面とし,本体ケース左端部の前面から一段奥まった垂直な板状部分に略長円状の円孔部を1つ形成し,ホイールカバー部分上辺部分からチェーンカバー部分の右側面部分を経て底面部分までの傾斜面先端縁部分から背面側に向かって略水平帯状部を突出させ,ホイールカバー部分の円孔縁部分を略擂り鉢状としたものであって,
(3)アンダーケースの形態は,本体ケースとの接合部分を除く外周縁部分を傾斜面とし,この傾斜面に沿ってアンダーケース前面に正面視略横V字状の等幅の突出部を形成したものである。
2.引用意匠
引用意匠は,自転車に取り付けられて現れている「チェーンケース」の意匠であり,その具体的な形態は,以下のとおりである。
(1)全体の態様は,ホイールカバー部分と,チェーンカバー部分からなる正面視略横P字状の本体ケースと,これとは材質及び色彩が異なることから見て別体であるといえる正面視略変形三角形状のアンダーケースからなるものであり,
(2)本体ケースの形態は,本体ケースの外周縁部分を傾斜面とし,ホイールカバー部分上辺部分からチェーンカバー部分の右側面部分を経て底面部分までの傾斜面先端縁部分から背面側に向かって略水平帯状部を突出させ,ホイールカバー部分の円孔縁部分を前面から一段下がった段差状としたものであり,
(3)アンダーケースの形態は,アンダーケース前面に,正面視略変形L字状の突出部を傾斜した左辺及び水平な底辺に沿って形成したものである。
なお,引用意匠は,本体ケース及びアンダーケースの2つのケースから構成されたものであるが,これら2つのケースを1つのパッケージとし,自転車用チェーンケースとして取引されることがないとはいえず,当審においては,これら2つのケースからなる自転車用チェーンケースであると認定し,以下判断する。
3.対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「自転車用チェーンケース」であって,一致するものである。
(2)形態の対比
両意匠を対比する(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,両意匠の形態については,以下のとおり,共通点及び相違点がある。
ア.形態の共通点
(共通点1)両意匠は,本体ケースの形態が,正面視略中空円板状のホイールカバー部分と,チェーン上半分を覆う後方に向かってその上下幅を漸減させた正面視略横長長方形板状のチェーンカバー部分からなる正面視略横P字状のものであり,その外周縁部分を傾斜面とし,ホイールカバー部分上辺部分からチェーンカバー部分の右側面部分を経て底面部分までの傾斜面先端縁部分から背面側に向かって略水平帯状部を突出させている点で共通するものである。
イ.形態の相違点
(相違点1)本願意匠の全体の形態が,正面視略横P字状の本体ケース下方左側に,正面視略三角形状のアンダーケースを一体的に形成した形態であるのに対し,引用意匠の全体の形態が,正面視略横P字状の本体ケースと,正面視略変形三角形状のアンダーケースの2つのケースからなる点で,両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠のホイールカバー部分の円孔縁部分の形態が略擂り鉢状であるのに対し,引用意匠のホイールカバー部分の円孔縁部分の形態が一段下がった段差状である点で,両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠のアンダーケース前面に形成された突出部の形態が,等幅の正面視略横V字状であるのに対し,引用意匠のアンダーケース前面に形成された突出部の形態が,縦方向が幅広の正面視略変形L字状である点で,両意匠は相違する。
4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,同一である。
(2)形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は,自転車用チェーンケースであり,自転車を漕ぐ際にチェーンによって服が汚れるのを防ぐという機能を有し,その使用方法は,自転車に予め取り付けられて販売される若しくは修理パーツとして販売される部分であるから,本物品の需要者は,主として自転車の販売及び修理を行う業者であるといえる。したがって,自転車の販売時及び修理の際の組み立てやすさという観点から,本体ケースとアンダーケースが一体的に形成されているのか別部品により構成されているのかといった全体の構成態様の相違は,需要者の注意を強く惹くものであるということができる。
ア.形態の共通点
(共通点1)の本体ケースの形態は,この種物品分野における本体ケースの形態として既に見られるものに過ぎないから,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
イ.形態の相違点
(相違点1)は,本願意匠が本体ケースとアンダーケースが一体的に形成され,需要者が作業時に効率よく組み立てられるものであって,形態として見た場合に1つのまとまった板状体である印象を与えるのに対して,引用意匠は本体ケースとアンダーケースが作業時の手間がかかる別体であって,形態として見た場合に一体のものとは別異の印象を与えるものであるから,この種物品の需要者にとって見れば,(相違点1)は全体の構成態様において異なる美感を与えるものである。
(相違点2)は,ホイールカバー部分の円孔縁部分の形態についての相違であるが,前面側の中央部分に形成された目に付く部位における相違であるから,該部位の形態の違いは,需要者に異なる美感を与えるものである。
(相違点3)は,アンダーケース前面に形成された突出部の形態についての相違であるが,このアンダーケースは電動アシスト式の自転車にのみ存在するものであって,通常の自転車には存在しない特徴的で注目される部分であり,その注目されるケースの前面部分に施された大きな部分を占める形態の相違であるから,該部位の形態の違いは,需要者に異なる美感を与えるものである。
ウ.両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,両意匠は,上記4(2)イ.のとおり,需要者の注意を惹く全体の構成態様において大きな相違があり,ホイールカバー部分の円孔縁部分の形態,及びアンダーケース前面に形成された突出部の形態の相違も需要者に異なる美感を与えるものである。そうすると,本体ケースの形態が共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際に需要者に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は同一であるが,その形態において,需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものである。
第6 むすび
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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