特許拒絶査定不服審判
2017-012281
最適化された栄養処方物、それらから目的に合わせた食事を選択するための方法、およびその使用法
- 審判番号
- 2017-012281
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-534055外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月18日
- 審決日
- 2018年01月25日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (G06Q) / P18 .561-Z (G06Q) / P18 .575-Z (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第184条の4第1項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2013-534055「最適化された栄養処方物、それらから目的に合わせた食事を選択するための方法、およびその使用法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日国際公開、WO2012/051591、平成25年11月 7日国内公表、特表2013-541108〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2011年10月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年10月14日(US)アメリカ合衆国、2010年11月18日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。
平成27年10月19日 拒絶理由通知
平成28年 1月27日 意見書、手続補正書
平成28年 5月25日 拒絶理由通知(最後)
平成28年11月30日 意見書、手続補正書
平成29年 3月14日 補正却下の決定(平成28年11月30日付け手続補正書でした補正について)、拒絶査定
平成29年 8月18日 審判請求書、手続補正書
第2 平成29年8月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(補正前の請求項1)
【請求項1】
ファイトケミカル供給源、ω-6脂肪酸供給源、抗酸化剤供給源を含有する少なくとも1種の処方物を含む栄養処方物であって、前記少なくとも1種の処方物は、1~40gのω-6脂肪酸と、25mg~10gの抗酸化剤と、5mg超のポリフェノールを提供する1種以上のポリフェノールを含む1種以上のファイトケミカルとを含む投薬量を集合的に提供するよう包装され、消費の適合性を示すよう表示されることを特徴とする栄養処方物。
(補正後の請求項1)
【請求項1】
複数の異なる供給源に由来するファイトケミカル、ω-6脂肪酸、及び抗酸化剤の混合物を含有する少なくとも1種の処方物を含む、個体のための栄養処方製品であって、前記少なくとも1種の処方物は、1~40gのω-6脂肪酸と、5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤の投薬量がまとめて提供されるよう包装され、消費の適合性を示すよう表示されることを特徴とする製品。
2 補正の適否
(1)新規事項(特許法第17条の2第3項)について
本件補正により、補正後の請求項1に「5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤の投薬量がまとめて提供されるよう包装され」との技術的事項が記載されることとなった。
そこで、上記技術的事項が、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の特許法第184条の4第1項の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の同項の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下「翻訳文等」という。)に記載した事項の範囲内のものであるかについて検討する。
翻訳文等には、ポリフェノール及び抗酸化剤について、以下の記載が認められる(「・・・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審による。以下同じ。)。
「【0037】
・・・・・例えば、特定の例では、微量養素を送達する処方物は、約5、10、15、20、45、70、95、115、140、または165mg/日のポリフェノール;および・・・・・を送達することができる。」
「【0044】
・・・・・この微量養素処方物について、穀物、マメ科植物、野菜、果物、ハーブ、種子、またはその組み合わせ(完全な形態、剥離形態、または加工形態)を、健康に有益な投薬量のファイトケミカル(ポリフェノール、ステロール、クマリン、イソフラボン(ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン)、フラボノイド、ふすま、胚乳など)に到達するように調製する。」
「【0080】
・・・・・抗酸化剤は、他の分子の酸化を遅延または防止することが可能な分子である。抗酸化剤の非限定的な例には、予防酵素(スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GSHpx)など)、ビタミンA、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、セレン、フラボノイド、ラクトウルフベリー、クコ、ポリフェノール、リコペン、ルテイン、リグナン、補酵素Q10(CoQ10)、グルタチオン、またはその組み合わせが含まれる。」
「【0144】
食事性コホートを、食事中の葉酸塩、ポリフェノール、植物ステロール、抗酸化剤、ビタミンA、E、Seに基づいて定義することもできる。例えば、5、10、15、20、45、70、95、115、140、または165mg/日超(または未満)の1つ以上のポリフェノール;および/または・・・・・を使用して、食事性コホートを分類することができる。」
「【0158】
いくつかの実施形態では、ポリフェノール、葉酸塩、植物ステロール、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、ベタイン、コリン、リコペン、およびルテイン/ゼアキサンチンが処方物中に含まれる。例えば、5、10、15、20、45、70、95、115、140、165、200、または300mg/日超(または未満)の1つ以上のポリフェノール;および/または・・・・・
【0159】
いくつかの実施形態では、抗酸化剤、およびビタミンおよびミネラル(例えば、Se)が処方物中に含まれる。例えば、25、50、100、200、400、500、600、または1000mg/日、または1、2、4、6、8、または10g/日超(または未満)の抗酸化剤;および/または5、10、15、20、35、55、75、95、115、または135mcg/日超(または未満)のSeを使用することができる。」
以上によれば、ポリフェノールが処方物中に含まれる実施形態が記載され(【0158】)、ポリフェノールの量について、5mg/日超である旨の例示が認められる(【0037】、【0144】、【0158】)。また、抗酸化剤の例として、ポリフェノールが含まれるものが例示され(【0080】)、抗酸化剤が処方物中に含まれる実施形態が記載され(【0159】)、抗酸化剤の量について、25mg/日や、10g/日超(または未満)である旨の例示が認められる(【0159】)。
しかし、「5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤の投薬量がまとめて提供されるよう包装され」た「処方物」については、翻訳文等に記載されていない。
上記各記載を参照すれば、1日当たりの量として、ポリフェノールについて、5mg/日超の例、抗酸化剤について、25mg/日や、10g/日超(または未満)の例が、それぞれ個別に把握できるとしても、「5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤」については例示されているわけではなく、また、翻訳文等には、「処方物」が含み得るものとして、ポリフェノールや抗酸化剤以外にも多種多様なものが例示されており、ポリフェノールや抗酸化剤の量も、それぞれについて多数の数値が例示されているのであるから、特定の成分の、特定量についての記載を組み合わせて、「5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤」というものを把握することはできない。加えて、1日当たりの量が記載されているからといって、それを「まとめて提供されるよう包装され」ることまでが自明であるとはいえない。
よって、「5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤の投薬量がまとめて提供されるよう包装され」た「処方物」は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるともいえない。
そうすると、「5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤の投薬量がまとめて提供されるよう包装され」との技術的事項は、翻訳文等に記載した事項の範囲内のものではなく、上記技術的事項を導入する本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。
(2)独立特許要件について
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ファイトケミカル」について、「複数の異なる供給源に由来する」との限定を付加する補正を含み、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、少なくとも、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
ア 引用文献
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2009/131939号(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(日本語訳は、引用文献1のファミリーである特表2011-518223号公報を参照した。)。
(1a)「1. A lipid-containing composition comprising daily optimal amounts of fatty acids and phytochemicals for a mammalian subject based on one or more factors selected from the following group: age of the subject, sex of the subject, diet of the subject, the body weight of the subject, medical conditions of the subject, and climate of the subject's living area.
・・・・・
3. The composition of claim 1, wherein such composition further comprises omega-6 and omega-3 fatty acids and wherein the ratio of omega-6 to omega-3 fatty acids and their amounts are controlled based on one or more factors selected from said group.」(44頁2-12行)
(1.1日最適量の脂肪酸および植物性化学物質を含む哺乳動物対象のための脂質含有組成物であって、以下の群:前記対象の年齢、前記対象の性別、前記対象の食餌、前記対象の体重、前記対象の医学的状態、および前記対象の生活圏の気候から選択される1つまたは複数の要素に基づく組成物。
・・・・・
3.ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸をさらに含み、ω-6脂肪酸対ω-3脂肪酸の比率およびその量が、前記群から選択される1つまたは複数の要素に基づいて制御される、請求項1に記載の組成物。(【請求項1】-【請求項3】))
(1b)「Lipid Formulations
[0021] In one aspect, the present disclosure incorporates relatively high ratio of omega-6 to omega-3 fatty acid, while maintaining optimal daily delivery of both omega-6 and omega-3. One reason for maintaining the high ratio is because of the incorporation of nuts and nut oils as integral components of a formulation, which nuts and nut oils have high antioxidants and phytochemical content and other properties that render excessive omega-3 unnecessary.
[0022] Certain embodiments of the present disclosure provide for compositions comprising supplementation with one or more of the following: vitamin A, B9 (folic acid), C, D, E; carotenoids, like beta-carotene, lycopene, lutein, zeaxanthin; monophenols; polyphenols or flavonoids, including flavonols such as quercetin, kaempferol, and resveratrol; ・・・・・ antioxidants and phytochemicals in general; ・・・・・ In certain embodiments, each of these nutrients is optimized through natural sources such as oils, butters, nuts, seeds, herbs, sweeteners, and other foods.」(6頁4-25行)
(脂質配合物
一態様では、本開示は、ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸両方の最適な1日送達量を維持しながら、ω-3脂肪酸に対して比較的高率のω-6脂肪酸を組み込む。高率を維持する1つの理由は、配合物の不可欠な構成要素として、抗酸化物質、ミネラルおよび植物性化学物質の含有量が多く、過剰なω-3を不要にすると考えられる他の特性を有するナッツ、種子およびナッツ油が組み込まれているからである。
本開示の一定の実施形態は、以下のうち1つまたは複数の補給を含む組成物を提供する:ビタミンA、B9(葉酸)、C、D、E;βカロテン、リコペン、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチンなどの、アルカロイド、カロテノイド;モノフェノール;ケルセチン、ケンフェロールおよびレスベラトロールなどの、ポリフェノール、・・・・・ならびに、抗酸化物質および植物性化学物質全般。・・・・・一定の実施形態では、前述の栄養素のそれぞれは、油、バター、ナッツ、種子、ハーブ、甘味料および他の食品などの天然の供給源により最適化される。(【0022】-【0023】))
(1c)「[0025] Peanuts also contribute significantly to dietary intake of antioxidants, rivaling the antioxidant content of blackberries and strawberries, and are far richer in antioxidants than apples, carrots or beets. Peanuts are a good source of vitamin E (gamma- and alpha- tocopherol), niacin, folate, proteins, and manganese. Peanuts also contain high concentrations of phytochemicals polyphenols, including resveratrol.」(7頁6-11行)
(ピーナッツも、抗酸化物質の食餌性摂取に著しく貢献し、ブラックベリーおよびイチゴの抗酸化物質含有量に匹敵し、リンゴ、ニンジンまたはビートより抗酸化物質にはるかに富む。ピーナッツは、ビタミンE(γ-およびα-トコフェロール)、ナイアシン、葉酸、タンパク質およびマンガンの良好な供給源である。ピーナッツは、高濃度の植物性化学物質ポリフェノール(レスベラトロールなど)も含有する。(【0026】))
(1d)「[0030] In some embodiments, synergy among complementing nutrients from different sources may be incorporated. Furthermore, using different sources avoids concentrated delivery of specific phytochemicals that may be harmful in excess, since nuts and seeds are known to have strong positive and negative outcomes. 」(8頁23-26行)
(いくつかの実施形態では、異なる供給源に由来する補完的な栄養素間の相乗作用が組み込まれていてもよい。さらに、ナッツおよび種子は、良くも悪くも強力な結果を有することが公知であることから、異なる供給源を使用すると、過剰な場合には有害と考えられる特定の植物性化学物質の高濃度での送達が回避される。(【0031】))
(1e)「In certain embodiments, the entire diet is a composition, balanced with respect to fatty acids, antioxidants, phytochemicals, vitamins, and minerals. 」(10頁10-12行)
(一定の実施形態では、完全な食餌は、脂肪酸、抗酸化物質、植物性化学物質、ビタミンおよびミネラルに関して均衡のとれた組成物である。(【0035】))
(1f)「Administration
[0036] In some embodiments, the compositions comprising the lipid formulation disclosed herein may be administered to an individual in any orally accepted form. The lipid formulations may be packaged in one, two, three, four or more mutually complementing daily dosages. 」(11頁24-28行)
「投与
いくつかの実施形態では、本明細書中で開示する脂質配合物を含む組成物は、経口的に許容される任意の形態で個体に投与できる。この脂質配合物は、1、2、3、4またはそれを超える相互補完的な1日用量で包装してもよい。(【0037】))
(1g)「[0037] The balanced lipid composition disclosed herein may be used to create a completely balanced diet plan, by adding the composition, which contains balanced components of lipids, phytochemicals, antioxidants, vitamins, to name a few, into foods as a dietary component.」(12頁17-20行)
(本明細書中で開示する均衡のとれた脂質組成物を使用して、いくつか例を挙げれば脂質、植物性化学物質、抗酸化物質、ビタミンの均衡のとれた成分を含有する組成物を食餌の成分としての食品中に加えることにより、完全に均衡のとれた食餌計画を構築してもよい。(【0038】))
(1h)「[0038] Each individual may be given instructions on use of the product, and risk and cautionary measures, as is usual with any pharmaceutical, nutraceutical, or any product intended for ingestion. Oils, nuts, seeds, and herbs are potent; therefore, instructions may include recommended dosage, frequency, and suggestions for optimization.」(12頁30-34行)
(各個体には、任意の医薬製品、栄養補給製品、または、摂取を意図した任意の製品の場合に通常見られるように、製品の使用およびリスクおよび警告量についての取扱説明書を提供してもよい。油、ナッツ、種子およびハーブは強力であることから、取扱説明書には、推奨される用量、回数、および、最適化についての提案を含めてもよい。(【0039】))
(1i)「Example 5. Formulation with Varied Omega-3 Fatty Acid Content
[0059] Table 12 provides dose ranges for total fat content in grams, the ratio range of monounsaturated fat to polyunsaturated fat, and the ratio range of monounsaturated fat to saturated fat, range of omega-6 content in grams, ratio range of omega- 9 to omega-6, ratio range of omega-6 to omega-3, range of omega-3 content in grams designed by age and gender with increasing strength of omega-3, low, medium, and high, such that the human subject may choose the composition most agreeable to his/her diet, where the selection may be based upon the level of antioxidants and phytochemicals in the diet and/or medical predisposition. 」(22頁1-10行)
(実施例5.ω-3脂肪酸含有量を変えた配合物
表12は、ヒト対象が自身の食餌に最もふさわしい組成物を選ぶことができる(この場合、その選択は、食餌中の抗酸化物質および植物性化学物質のレベルおよび/または医学的素因に基づいてもよい)ようにω-3の強度を低、中および高に増やした場合の、年齢および性別により設計された、総脂肪酸内容物についての用量範囲(単位:グラム)、一価不飽和脂肪酸対多価不飽和脂肪酸の比率範囲および一価不飽和脂肪酸対飽和脂肪酸の比率範囲、ω-6脂肪酸含有量の範囲(単位:グラム)、ω-9脂肪酸対ω-6脂肪酸の比率範囲、ω-6脂肪酸対ω-3脂肪酸の比率範囲、ω-3脂肪酸含有量の範囲(単位:グラム)を示すものである。(【0060】))
(1j)Table 12の記載は以下のとおりであり、性別、年齢等ごとに、ω6の範囲が記載されており、いずれも、1~35gの範囲内である。
[図:0001417923000001.jpg]
これらの記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「1日最適量の脂肪酸および植物性化学物質を含む哺乳動物対象のための脂質含有組成物であって、ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸を含む脂質含有組成物。」
(イ)原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-313142号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 栄養成分として、乳蛋白質、大豆蛋白質、脂質、食物繊維、オリゴ糖、カテキン類又はポリフェノール類、ビタミン、ミネラル、微量元素を含有し、乳蛋白質/大豆蛋白質の重量比率が0/1~4/1であり、脂質中の構成脂肪酸組成がω3系脂肪酸3~20重量%及びω6系脂肪酸10~40重量%であり、且つω3系脂肪酸/ω6系脂肪酸の重量比率が1/6以上であり、水溶性食物繊維及び/又はオリゴ糖の含有量が全固形分あたり2~6重量%であり、カテキン類又はポリフェノール類の含有量が全固形分あたり0.1~2重量%である栄養組成物。
・・・・・
【請求項6】 カテキン類又はポリフェノール類が、茶由来のカテキン類又はブドウ種子由来のポリフェノール類である請求項1~5のいずれかに記載の栄養組成物。」
(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通常食を摂取することが不可能な患者で、特に高齢者もしくは要介護者への栄養補給の際に使用される液状もしくは粉末栄養組成物に関する。」
(2c)「【0023】本発明の栄養組成物は年齢や症状などにより異なるが、ヒト成人一人当たり一日800kcalから2500kcalを経口的または経管・経腸的に投与することが好ましい。」
(2d)「【0025】
【実施例】以下の例をもって本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(製造例1)
液状製剤の製造
表1に示した配合で、液状の滅菌栄養剤を常法に従い調製した。この栄養組成物の乳蛋白質と大豆蛋白質との比率は2/1であった。又、脂肪酸組成はカプリル酸36.5%、α-リノレン酸9.2%、リノール酸25.9%よりなり、ω3系脂肪酸/ω6系脂肪酸の比率は1/2.82であった。水溶性食物繊維としてグアガム分解物を、オリゴ糖としてガラクトシルラクトースを用い、配合量はそれぞれ固形分あたり3.2重量%、0.8重量%であった。カテキン類として、茶由来のカテキンを用いた。」
(2e)【表1】
[図:0001417923000002.jpg]
これらの記載によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「栄養成分として、脂質、茶由来のカテキン類又はブドウ種子由来のポリフェノール類、を含有し、脂質中の構成脂肪酸組成がω3系脂肪酸3~20重量%及びω6系脂肪酸10~40重量%であり、且つω3系脂肪酸/ω6系脂肪酸の重量比率が1/6以上であり、カテキン類又はポリフェノール類の含有量が全固形分あたり0.1~2重量%である、特に高齢者もしくは要介護者への栄養補給の際に使用される栄養組成物。」
イ 対比・判断
(ア)引用発明1との対比
引用発明1の「植物性化学物質」、「哺乳動物対象」は、それぞれ、本願補正発明の「ファイトケミカル」、「個体」に相当する。
引用発明1の「脂質含有組成物」は、本願補正発明の「少なくとも1種の処方物」及び「栄養処方製品」に相当する。
よって、本願補正発明と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「ファイトケミカル、ω-6脂肪酸の混合物を含有する少なくとも1種の処方物を含む、個体のための栄養処方製品。」
[相違点1]
本願補正発明は、ファイトケミカルについて「複数の異なる供給源に由来する」と特定されているのに対し、引用発明1の植物性化学物質の由来は特定されていない点。
[相違点2]
本願補正発明は、少なくとも1種の処方物が「抗酸化剤」を含むと特定されているのに対し、引用発明1は、「抗酸化剤」を含むとされていない点。
[相違点3]
本願補正発明は、少なくとも1種の処方物が「1~40gのω-6脂肪酸と、5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤の投薬量がまとめて提供されるよう包装され、消費の適合性を示すよう表示される」のに対し、引用発明1は、そのように包装され、表示されるものとはされていない点。
(イ)相違点1について
引用文献1には、組成物に植物性化学物質全般を種々含むこと(上記(1b))や、異なる供給源を使用して、特定の植物性化学物質の高濃度での送達を回避すること(上記(1d))が示唆されているから、引用発明1の植物性化学物質を複数の異なる供給源に由来するものとすることは、上記引用文献1の示唆も踏まえて当業者が適宜になし得た設計事項にすぎない。
よって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
(ウ)相違点2について
引用文献1には、組成物がポリフェノールや抗酸化物質を含むことが示されているから(上記(1b)、(1c)、(1e)、(1g))、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
(エ)相違点3について
引用文献1には、ω-6脂肪酸含有量の範囲として、1~35gの範囲内がふさわしい旨が示されているから(上記(1i),(1j))、1日最適量の脂肪酸を含む引用発明1の組成物について、ω-6脂肪酸の含有量を1~40gとすることは、当業者が普通になし得たことである。
また、上記(ウ)に述べたとおり、引用文献1には、組成物がポリフェノールや抗酸化物質を含むことが示されているところ、ポリフェノールが抗酸化作用を有することは周知であるから、引用発明1の組成物に、抗酸化物質としてポリフェノールを含ませることは当業者が容易に想到し得たことである。
このとき、引用文献1に、特定の植物性化学物質の高濃度での送達を回避すべき旨(上記(1d))や、抗酸化物質を含めて均衡のとれた組成物とすべき旨(上記(1e)、(1g))が示唆され、また、栄養成分や有効成分の含有量を適量に設定すべきことは当然ともいえるから、引用発明1の組成物に含ませるポリフェノールの含有量を適量に設定することは、当業者が普通に考慮すべき設計事項である。そして、具体的な含有量を25mg~10gとすることも、通常の範囲内の設計事項にすぎない(例えば、引用文献2に100kcal当たりポリフェノール0.48g(茶カテキン0.24g及びプロアントシアニジン0.24g)を含む栄養組成物が記載されており(上記(2e))、この栄養組成物を仮に1日当たり1000kcal摂取するとしても、ポリフェノールは4.8gである。)。
そして、引用発明1の組成物に「ポリフェノールを25mg~10g」含ませることは、「5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤」を含ませることに相当する。
加えて、引用文献1には、脂質配合物を1日用量で包装すること(上記(1f))や、製品の使用、リスク、警告量、推奨される用量、回数、最適化についての提案を含む取扱説明書を提供すること(上記(1h))が示されているから、引用発明1の組成物を、1日分の用量がまとめて提供されるよう包装し、消費の適合性を示すよう表示することは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、引用発明1において、相違点3に係る本願補正発明の構成となすことは、引用文献1の開示を考慮すれば、当業者が容易になし得たことである。
(オ)効果について
本願補正発明が、引用発明1から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
請求人は、
「本願発明の効果についても、たとえ「特定栄養成分の過剰摂取が弊害を生じ、含有量を減らせば弊害が減少する」との技術常識があったとしても、本願発明による効果は、ω-6脂肪酸及び(ポリフェノールを含む)抗酸化剤の投薬量の範囲をそれぞれ具体的に限定したことによる具体的な効果であるところ、斯かる効果を当業者に予測させるような記載は、主引例たる引用文献1のみならず、引用文献5(審決注:本審決の引用文献2)等の副引例にも何ら存在しません。」(平成29年10月4日付け手続補正書3.(2)イ(ウ)(iii))、「本願発明において規定されるω-6脂肪酸及び(ポリフェノールを含む)抗酸化剤の具体的な投薬量範囲を組み合わせることによって、所望の効果が得られる蓋然性が高いということができます。斯かる効果は、引用文献1~5から当業者が予測しうる効果ではなく、格別顕著な効果と言えます。」(同3.(2)イ(ウ)(vi))と主張する。
しかしながら、ポリフェノールや抗酸化剤も含め、いかなる栄養成分であれ、過剰に摂取すれば有害であることは、例えば以下の文献にも示されるように技術常識である。
周知例1:荒井綜一、外1名、「機能性食品の研究-回顧と展望」、日本乳酸菌学会誌、2007年、第18巻、第1号、p.2-6(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/18/1/18_1_2/_pdf/-char/ja 参照。)
周知例2:唐木英明、「学術からの発信 毒性は量で決まる -パラケルサスの教え-」、学術の動向、2006年、第11巻、第5号、p.70-74(https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits1996/11/5/11_5_70/_pdf/-char/ja 参照。)
上記周知例1には、「抗酸化成分が盛んに宣伝されているが、一度にたくさん摂り過ぎると、体内に蓄積されている間に酸化を促進する物質へと変化してしまう可能性があるので注意を要することは以前から知られていた。」(4頁右欄3-7行)と記載され、上記周知例2には、「どんな化学物質も体内に多量を取り入れれば何らかの毒性が見られる。」(70頁左欄末行-同右欄2行)、「大豆のイソフラボン、緑茶のカテキン、果物のアントシアニンなどの植物ポリフェノール類は「自然・天然」と「健康」が結びついて大変なブームになっている。しかし、・・・・・毎日摂取した場合、安全性や健康上の利益が科学的に証明できないという評価が食品安全委員会から出された。」(73頁左欄下から2行-同右欄9行)と記載されている。
上記技術常識を踏まえれば、ω-6脂肪酸及びポリフェノールを含む抗酸化剤の用量を適量に限定して所望の効果を得ることは、当業者が普通に予測することであるし、本願明細書には、ω-6脂肪酸及びポリフェノールを含む抗酸化剤の用量について、種々の値が網羅的に記載されているにすぎず、本願発明で特定した「1~40gのω-6脂肪酸と、5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤」とした場合の効果について具体的に確認したことの記載はないから、当該用量に格別の臨界的意義は認められない。よって、上記請求人の主張は採用できない。
(カ)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(キ)引用発明2との対比
引用発明2の「茶由来のカテキン類又はブドウ種子由来のポリフェノール類」は、本願補正発明の「1種以上のポリフェノールを含む」「抗酸化剤」に相当するとともに、「ファイトケミカル」にも相当する。
引用発明2の「ω6系脂肪酸」は、本願補正発明の「ω-6脂肪酸」に相当する。
引用発明2の「栄養組成物」は、ω6系脂肪酸を含む脂質と、茶由来のカテキン類又はブドウ種子由来のポリフェノール類を含有するから、本願補正発明の「ファイトケミカル、ω-6脂肪酸、及び抗酸化剤の混合物を含有する少なくとも1種の処方物」に相当するとともに、当該処方物を含む「栄養処方製品」にも相当する。そして、引用発明2の栄養組成物が「特に高齢者もしくは要介護者への栄養補給の際に使用される」ものであることは、本願補正発明の栄養処方製品が「個体のための」ものであることに相当し、使用に際して、含有成分が「まとめて提供される」ことは明らかである。
よって、本願補正発明と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「ファイトケミカル、ω-6脂肪酸、及び抗酸化剤の混合物を含有する少なくとも1種の処方物を含む、個体のための栄養処方製品であって、前記少なくとも1種の処方物は、ω-6脂肪酸と、1種以上のポリフェノールを含む抗酸化剤がまとめて提供される製品。」
[相違点4]
本願補正発明は、「複数の異なる供給源」に由来するファイトケミカルを含むのに対し、引用発明2は、「茶由来のカテキン類又はブドウ種子由来のポリフェノール類」を含むものの、「複数の異なる供給源」に由来するファイトケミカルを含むことまでは特定されていない点。
[相違点5]
本願補正発明は、少なくとも1種の処方物が「1~40gのω-6脂肪酸と、5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤の投薬量がまとめて提供されるよう包装され、消費の適合性を示すよう表示される」のに対し、引用発明1は、そのように包装され、表示されるものとはされていない点。
(ク)相違点4について
引用文献2には、茶由来のカテキン類又はブドウ種子由来のポリフェノール類以外にも、大豆油やシソ油等、種々の植物由来成分を配合した組成物の例が示されているから(上記(2e))、引用発明2に、複数の異なる供給源に由来するファイトケミカルを含ませることは、普通に想定されていることといえる。
よって、相違点4に係る本願補正発明の構成は、引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
(ケ)相違点5について
引用発明2の組成物は、ヒト成人一人当たり一日800kcalから2500kcalを経口的または経管・経腸的に投与することを想定したものであり(上記(2c))、このような1日分量をまとめて包装し、使用に資する情報を表示することは、例えば、引用文献1(上記(1f)、(1h))にも示されるように、普通に行われることであって、当業者が適宜になし得たことである。
そして、1日分量の引用発明2の組成物に含み得る成分量については、引用文献2に例示された組成が参考になるところ、製造例1(上記(2d)、(2e))に示された組成によれば、100kcal当たりに含まれるω-6脂肪酸、ポリフェノールの量を、およそ以下のように見積もることができる。
・ω-6脂肪酸について
大豆油0.699g、シソ油0.18g、中鎖脂肪酸トリグリセライド0.75g、パーム油0.334g、高純度大豆リン脂質0.14g、グリセリン脂肪酸エステル0.07gを配合し、脂肪酸組成はリノール酸25.9%であることから、ω-6脂肪酸は、約0.563g(=(0.699g+0.18+0.75g+0.334+0.14g+0.07g)×25.9%)と見積もることができる。
・ポリフェノールについて
茶カテキン0.24g、プロアントシアニジン0.24gを配合していることから、ポリフェノールは、約0.48gと見積もることができる。
よって、一日800kcalから2500kcalを投与することを踏まえると、1日分量の引用発明2の組成物には、ω-6脂肪酸を4.5~14.1g、ポリフェノールを3.8g~11.5g含み得る。
ここで、4.5~14.1gのω-6脂肪酸は、本願補正発明の「1~40gのω-6脂肪酸」に相当する。
また、ポリフェノールを11.5g含む場合には、本願補正発明の25mg~10gの抗酸化剤の量を超えることとなるが、上記3.8g~11.5gは、大部分の範囲で25mg~10gの範囲と重複しているから、1日分量の引用発明2の組成物に含まれるポリフェノールを3.8g~10gとして、本願補正発明の25mg~10gの抗酸化剤の範囲内とすることは、当業者が容易になし得たことであるし、本願補正発明が抗酸化剤の上限量を10gとした点に格別の臨界的な意義も認められない。そして、3.8g~10gのポリフェノールは、本願補正発明の「5mg超の1種以上のポリフェノールを含む25mg~10gの抗酸化剤」に相当する。
なお、請求人は、大豆油、シソ油、パーム油にもポリフェノールが含まれ、ビタミンやミネラルも抗酸化作用を有する可能性があるため、引用文献2からは、抗酸化剤の量を計算することはできず、「25mg~10gの抗酸化剤」が開示されているとはいえない旨を主張するが、そうであるとしても、茶カテキン0.24g、プロアントシアニジン0.24gに比べれば、他に含まれる抗酸化剤はごく微量であって無視し得ると認められ、また、1日分量を800kcalとすれば、抗酸化剤の量が10gを超えることはないから、上記請求人の主張は採用できない。
よって、相違点5に係る本願補正発明の構成は、引用発明2の組成物について、ω-6脂肪酸を4.5~14.1g、ポリフェノールを3.8g~10gを含む量を1日分の量として、これをまとめて包装し、使用に資する情報を表示することにより、当業者が容易に想到し得たものである。
(コ)効果について
本願補正発明が、引用発明2から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。また、本願補正発明の効果に係る請求人の主張については、上記(オ)で検討したとおりである。
(サ)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、また、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年1月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、当該請求項1の記載は、前記第2の1の(補正前の請求項1)に示したとおりである。
第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。
第5 対比・判断
本願発明は、実質上、前記「第2」で検討した本願補正発明から「複数の異なる供給源に由来する」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の2(2)ウに記載したとおり、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-012281