特許拒絶査定不服審判
2021-014929
付与装置、付与方法及び付与プログラム
- 審判番号
- 2021-014929
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-215308外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月04日
- 審決日
- 2022年08月17日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】PayPay株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G06Q) / P18 .561-Z (G06Q) / P18 .575-Z (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-215308「付与装置、付与方法及び付与プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月 6日出願公開、特開2022-100991〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月24日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 3月29日付け:拒絶理由通知書
令和3年 6月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 7月30日付け:拒絶査定
令和3年11月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 1月 4日付け:前置報告書
令和4年 2月24日 :上申書の提出
第2 令和3年11月 4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年11月4日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、補正前の請求項1に係る次の補正事項を含むものである。
<補正事項>
補正前の請求項1の記載を、以下のとおりの補正後の請求項1とする補正。(下線部は、補正箇所である。また(A)~(E)、(A´)~(E´)は当審が付した。以下、それぞれ、構成要件(A)~構成要件(E)、構成要件(A´)~構成要件(E´)という。)
<補正前>
「【請求項1】
(A) 利用者が利用する利用者端末を用いる決済手段を提供する事業者とは異なる事業者が取引対象を識別するために用いる識別情報であって、取引対象に添付されるバーコードが示す識別情報と、クーポンとを紐付けて記憶する記憶部と、
(B) 前記利用者が前記決済手段を用いて行う決済の対象である取引対象に添付されるバーコードが示す識別情報を受け付ける受付部と、
(C) 前記利用者が予め獲得したクーポンのうち、前記受付部により受け付けられた識別情報に紐付けられたクーポンを特定する特定部と、
(D) 前記特定部により特定されたクーポンに基づく利益を前記利用者に付与する付与部と
(E) を有することを特徴とする付与装置。」
<補正後>
「【請求項1】
(A´) 利用者が利用する利用者端末を用いる決済手段を提供する事業者とは異なる事業者が取引対象を識別するために用いる取引対象識別情報であって、取引対象に添付されるバーコードが示す取引対象識別情報と、クーポンと、当該利用者を識別するために用いる利用者識別情報とを紐付けて記憶する記憶部と、
(B´) 前記利用者が前記決済手段を用いて行う決済の対象である取引対象に添付されるバーコードが示す取引対象識別情報と、前記利用者識別情報と、当該取引対象を提供する店舗を識別するために用いる店舗識別情報とを含む決済情報を、当該店舗が利用する店舗端末から受け付ける受付部と、
(C´) 前記利用者識別情報に紐付けられたクーポンのうち、前記受付部により受け付けられた決済情報が示す取引対象識別情報に紐付けられたクーポンを特定する特定部と、
(D´) 前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行し、前記特定部により特定されたクーポンに基づき、前記決済情報が示す決済金額のうち、当該クーポンに紐付けられた取引対象識別情報に対応する取引対象の金額に対する利益を前記利用者に付与し、当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する付与部と
(E´) を有することを特徴とする付与装置。」
2 本件補正の適合性
上記1に示した<補正事項>について、補正の適合性を検討する。
以下、事案に鑑みて本件補正前の請求項1に記載された発明の特定事項(D)を、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)の特定事項(D´)とする補正事項(以下、補正事項(D)という。)を先に検討する。
(1)新規事項について
(1-1)願書に最初に添付した明細書の記載事項
補正事項(D)に関連する記載として、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)には、以下のとおりの記載がある。下線は、当審が付した。
「【0027】
そこで、決済サーバ10は、実施形態に係る付与処理を実行する。以下、図1を用いて、決済サーバ10が実行する付与処理について説明する。なお、以下の説明では、利用者端末100が利用者U1により利用される例を示す。また、以下の説明では、利用者端末100を利用者U1と同一視する場合がある。すなわち、以下では、利用者U1を利用者端末100と読み替えることもできる。
【0028】~【0032】 略
【0033】
図1に戻り説明を続ける。続いて、決済サーバ10は、獲得操作が行われたクーポンを示す情報(クーポンID)を利用者端末100から受け付ける(ステップS3)。続いて、決済サーバ10は、利用者U1とクーポンとを紐付けて管理する(ステップS4)。例えば、決済サーバ10は、利用者U1の利用者IDと、利用者端末100から受け付けたクーポンIDとを紐付けて管理する。
【0034】 略
【0035】
続いて、決済サーバ10は、利用者U1の店舗Aに対する決済に関する決済情報を事業者端末200から受け付ける(ステップS6)。例えば、決済サーバ10は、店舗Aの店舗IDや、ステップS5において事業者端末200が読み取った商品ID、商品IDに紐付けられた各商品の価格の合計額(決済金額)、利用者U1の利用者IDなどを含む決済情報を事業者端末200から受け付ける。
【0036】
続いて、決済サーバ10は、決済情報に基づいて、利用者U1に適用可能なクーポンを特定する(ステップS7)。例えば、決済サーバ10は、利用者U1が獲得済のクーポンに対応するクーポン情報と決済情報とを照合することにより、利用者U1が獲得済のクーポンのうち、決済情報が示す商品IDに紐付けられたクーポンを特定する。
【0037】
続いて、決済サーバ10は、決済情報に基づいて決済処理を実行し、特定したクーポンに基づく利益を付与する(ステップS8)。例えば、決済サーバ10は、利用者U1の口座から店舗Aの口座へと、決済金額が示す額の電子マネーを移行させる処理を実行する。そして、そして、決済サーバ10は、特定したクーポンに基づく利益(所定額のキャッシュバック等)を利用者U1に付与する。
【0038】
続いて、決済サーバ10は、クーポンを適用した旨を利用者U1に通知する(ステップS9)。例えば、決済サーバ10は、店舗Aへの決済が完了した旨の画面C1を利用者端末100に表示させ、画面C1において適用したクーポンを示す情報や、当該クーポンにより付与される利益などの情報を通知する。」
「【0054】
(制御部40について)
制御部40は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、決済サーバ10内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部40は、コントローラであり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。実施形態に係る制御部40は、図3に示すように、受付部41と、特定部42と、決済処理部43と、付与部44と、通知部45と、提供部46とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0055】
(受付部41について)
受付部41は、利用者が利用する利用者端末を用いる決済の対象である取引対象を識別する識別情報を受け付ける。例えば、図1の例において、受付部41は、利用者端末100に予めインストールされた決済アプリを用いた決済の対象である商品の商品IDを示す決済情報を受け付ける。」
「【0064】
(特定部42について)
特定部42は、受付部41により受け付けられた識別情報に基づいて、利用者が予め獲得したクーポンのうち利用者に適用可能なクーポンを特定する。例えば、図1の例において、特定部42は、クーポン情報データベース32及び利用者情報データベース33を参照し、決済情報が示す商品IDに基づいて利用者U1に適用可能なクーポンを特定する。」
「【0077】
(決済処理部43について)
決済処理部43は、受付部41が受け付けた決済情報に従い、決済処理を実行する。例えば、決済処理部43は、利用者IDが示す利用者の口座から、店舗IDが示す店舗の口座へと、決済金額が示す額の電子マネーを移行させる。」
「【0080】
(付与部44について)
付与部44は、特定部42により特定されたクーポンに基づく利益を利用者に付与する。例えば、図1の例において、付与部44は、クーポン情報データベース32及び利用者情報データベース33を参照し、特定部42により特定されたクーポンに基づく利益を利用者U1に付与する。
【0081】
(通知部45について)
通知部45は、利用者に適用されたクーポンに関する情報を通知する。例えば、図1の例において、通知部45は、店舗Aへの決済が完了した旨の画面C1を利用者端末100に表示させ、画面C1において適用したクーポンを示す情報や、当該クーポンにより付与される利益などの情報を通知する。
【0082】
(提供部46について)
提供部46は、受付部により受け付けられた識別情報に関する情報を、決済に応じて利用者端末に提供する。例えば、提供部46は、利用者端末100を用いる上述の決済に関する決済要求に応じて、当該決済の対象である商品に関する電子的なレシートを示す情報を利用者端末100に提供する。」
「【0090】
〔5.効果〕
上述してきたように、実施形態に係る決済サーバ10は、受付部41と、特定部42と、決済処理部43と、付与部44と、通知部45と、提供部46とを有する。受付部41は、利用者が利用する利用者端末を用いる決済の対象である取引対象を識別する識別情報を受け付ける。また、受付部41は、取引対象を提供する店舗が設定したインストアコードが示す識別情報を受け付ける。特定部42は、受付部41により受け付けられた識別情報に基づいて、利用者が予め獲得したクーポンのうち利用者に適用可能なクーポンを特定する。また、特定部42は、利用者が予め獲得したクーポンのうち、識別情報に紐付けられたクーポンを特定する。また、特定部42は、利用者が予め獲得したクーポンのうち、対象となる取引対象が、受付部41に受け付けられた各識別情報が識別する取引対象と一致するクーポンを特定する。決済処理部43は、受付部41が受け付けた決済情報に従い、決済処理を実行する。付与部44は、特定部42により特定されたクーポンに基づく利益を利用者に付与する。通知部45は、利用者に適用されたクーポンに関する情報を通知する。提供部46は、受付部41により受け付けられた識別情報に関する情報を、決済に応じて利用者端末に提供する。」
(1-2)当審の判断
ア 【0027】~【0038】には、決済サーバが、
「獲得操作が行われたクーポンを示す情報(クーポンID)を利用者端末100から受け付ける」こと(【0033】)
「利用者U1とクーポンとを紐付けて管理する」こと(【0033】)
「利用者U1の店舗Aに対する決済に関する決済情報を事業者端末200から受け付ける」こと(【0035】)
「決済情報に基づいて、利用者U1に適用可能なクーポンを特定する」こと(【0036】)
「決済情報に基づいて決済処理を実行し、特定したクーポンに基づく利益を付与する」こと(【0037】)
「クーポンを適用した旨を利用者U1に通知する」こと(【0038】)
が記載されている。
イ 【0054】の「制御部40は、図3に示すように、受付部41と、特定部42と、決済処理部43と、付与部44と、通知部45と、提供部46とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する」及び、【0055】~【0082】の「受付部41」、「特定部42」、「決済処理部43」、「付与部44」、「通知部45」、「提供部46」についての説明を総合すると、当初明細書には、「制御部」が「受付に関する処理」、「特定に関する処理」、「決済処理」、「付与に関する処理」、「通知に関する処理」、「提供に関する処理」を行うこと、「決済処理部」が「受付部41が受け付けた決済情報に従い、決済処理を実行する」こと、「付与部」が「特定部42により特定されたクーポンに基づく利益を利用者に付与する」すること、「通知部」が「適用したクーポンを示す情報や、当該クーポンにより付与される利益などの情報を通知する」ことが記載されている。
ウ 上記ア、イによると、当初明細書の【0027】~【0038】、【0054】~【0082】には、「付与部」が「前記特定部により特定されたクーポンに基づき、前記決済情報が示す決済金額のうち、当該クーポンに紐付けられた取引対象識別情報に対応する取引対象の金額に対する利益を前記利用者に付与」することは記載されているが、「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行」するのは「決済処理部」であり、「当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する」ことは「通知部」が行うのであって、「付与部」が、「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行」することや、「付与部」が「当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する」ことは記載されていない。
エ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の上記(1-1)で示した箇所以外にも「付与部」が、「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行」することや、「付与部」が「当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する」ことは記載されていない。
そして、本件補正発明は、その記載からみて、少なくとも
「前記利用者が前記決済手段を用いて行う決済の対象である取引対象に添付されるバーコードが示す取引対象識別情報と、前記利用者識別情報と、当該取引対象を提供する店舗を識別するために用いる店舗識別情報とを含む決済情報を、当該店舗が利用する店舗端末から受け付ける受付部」、
「前記利用者識別情報に紐付けられたクーポンのうち、前記受付部により受け付けられた決済情報が示す取引対象識別情報に紐付けられたクーポンを特定する特定部」、
を有する付与装置の「付与部」が「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行し、前記特定部により特定されたクーポンに基づき、前記決済情報が示す決済金額のうち、当該クーポンに紐付けられた取引対象識別情報に対応する取引対象の金額に対する利益を前記利用者に付与し、当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する」ことを特定しているが、「受付部」及び「特定部」を別に有する付与装置の「付与部」が「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行」すること、及び「当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する」ことは、上記ア~エに示したとおり、当初明細書等には記載されておらず、特定事項(D´)を含む本件補正発明は、当初明細書等に記載されたものではない。
よって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合しない。
(2)補正の目的について
上記(1-2)で示したとおり、特定事項(D´)を含む本件補正発明は、当初明細書等に記載したものではないが、本件補正を形式的にみると、補正前に請求項1に記載された「記憶部」、「受付部」、「特定部」及び「付与部」について、それぞれ「利用者が利用する利用者端末を用いる決済手段を提供する事業者とは異なる事業者が取引対象を識別するために用いる取引対象識別情報であって、取引対象に添付されるバーコードが示す取引対象識別情報と、クーポンと、当該利用者を識別するために用いる利用者識別情報とを紐付けて記憶する記憶部」、「前記利用者が前記決済手段を用いて行う決済の対象である取引対象に添付されるバーコードが示す取引対象識別情報と、前記利用者識別情報と、当該取引対象を提供する店舗を識別するために用いる店舗識別情報とを含む決済情報を、当該店舗が利用する店舗端末から受け付ける受付部」及び「前記利用者識別情報に紐付けられたクーポンのうち、前記受付部により受け付けられた決済情報が示す取引対象識別情報に紐付けられたクーポンを特定する特定部」及び「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行し、前記特定部により特定されたクーポンに基づき、前記決済情報が示す決済金額のうち、当該クーポンに紐付けられた取引対象識別情報に対応する取引対象の金額に対する利益を前記利用者に付与し、当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する付与部」と下線部についての限定事項を付加したものである。
よって、本件補正は、形式的には、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(3)独立特許要件について
そこで、本件補正が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、検討する。
(3-1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1<補正後>に記載したとおりのものであり、「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行し、前記特定部により特定されたクーポンに基づき、前記決済情報が示す決済金額のうち、当該クーポンに紐付けられた取引対象識別情報に対応する取引対象の金額に対する利益を前記利用者に付与し、当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する付与部」との特定事項(D´)を含むものである。
(3-2)本願明細書の発明の詳細な説明の記載事項
上記(3-1)に記した本件補正発明の特定事項(D´)に関連する記載として、明細書には、上記(1-1)に示したとおりの記載がある。
(3-3)当審の判断
上記(1-1)に示した記載について、上記(1-2)のア~エで示したとおりのことがいえる。
発明の詳細な説明には、「付与部」が「前記特定部により特定されたクーポンに基づき、前記決済情報が示す決済金額のうち、当該クーポンに紐付けられた取引対象識別情報に対応する取引対象の金額に対する利益を前記利用者に付与」すること、「決済処理部」が「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行」すること、「通知部」が「当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知」することは記載されているが、「付与部44」が、「決済情報に基づいて決済処理を実行」する処理や「クーポンを適用した旨を利用者U1に通知する」処理を行うことは記載されていないから、特定事項(D´)、すなわち、「前記決済情報に基づいて前記利用者と前記店舗との間の決済処理を実行し、前記特定部により特定されたクーポンに基づき、前記決済情報が示す決済金額のうち、当該クーポンに紐付けられた取引対象識別情報に対応する取引対象の金額に対する利益を前記利用者に付与し、当該クーポンを示す情報と、当該クーポンにより付与される利益を示す情報とを前記利用者端末に通知する付与部」(なお、下線は当審が付した)との構成を含む本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定についてのむすび
補正事項(D)を含む本件補正は、上記(1-2)に示したとおり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものでなく、また、仮に特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであったとしても、上記(3-3)に示したとおり、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
よって、本件補正は、補正事項(D)以外の補正事項を検討するまでもなく、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
以上のとおりであるから、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年11月 4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年 6月 7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1<補正前>に記載のとおりのものである。
2 原査定の概要
原査定(令和3年7月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願請求項1~22に係る発明は、以下の引用文献1~5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項1、2、17~20について:引用文献1、2
請求項3、4~13、21、22について:引用文献1~3
請求項14について:引用文献1~4
請求項15、16について:引用文献1~5
1.特許第6513861号公報
2.特開2003-050942号公報
3.特許第6740441号公報
4.特開2010-086299号公報
5.特開2019-191845号公報
3 引用文献1に記載された事項、引用発明
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特許第6513861号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。
「【背景技術】
【0002】
従来、ユーザ端末が保有するクーポン情報を支払金額に適用する決済システムがある(例えば、特許文献1参照)。かかる決済システムでは、ユーザ端末に予め記憶されたクーポン情報のうち、適用可能なクーポン情報をユーザ端末から店舗端末へ通知し、店舗端末側でクーポン情報を適用後の支払金額を算出する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、ユーザ端末および店舗端末間でクーポン情報の授受等、煩雑なやり取りを行う必要があり、実店舗における決済の簡略化を図るうえで改善の余地があった。
【0005】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、実店舗における決済を簡略化することができる情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することを目的とする。」
「【0010】
〔1.情報処理の一例〕
まず、図1を用いて情報処理装置が実行する情報処理の一例について説明する。図1は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図である。なお、図1では、ユーザU01がコンビニで買物を行う場合を例に挙げて説明する。
【0011】~【0016】 略
【0017】
例えば、図1に示すように、店舗端末20は、ユーザ端末10に表示されたバーコード200またはQRコード300を読み取ると(ステップS1)、バーコード200またはQRコード300からユーザIDを読み取る(ステップS2)。なお、例えば、ユーザU01は、ユーザ端末10に表示された決済ボタン(不図示)を選択することで、ユーザ端末10にバーコード200またはQRコード300を表示させることが可能である。
【0018】
続いて、店舗端末20は、ユーザIDに対して店舗IDおよび利用金額を付与し、情報処理装置100へ送信する(ステップS3)。つまり、この場合におけるユーザ端末10および店舗端末20のやり取りは、ユーザIDのみとなり、ユーザ端末10および店舗端末20のやり取りを簡略化することができる。
【0019】
その後、情報処理装置100は、店舗端末20から取得したユーザIDおよび店舗IDに基づき、利用金額に適用可能なクーポン情報を選択する(ステップS4)。なお、このとき、情報処理装置100は、特定の商品に対して適用可能なクーポン情報がある場合、利用金額とともに商品情報を取得し、商品情報に基づき、かかる商品に対して適用可能なクーポン情報を選択することも可能である。
【0020】
すなわち、情報処理装置100は、ユーザU01に対して発行された電子クーポンのうち、ユーザU01が買物を行う実店舗で利用可能な電子クーポンを選択する。続いて、情報処理装置100は、選択したクーポン情報を利用金額に適用した精算金額を算出し(ステップS5)、かかる精算金額で決済処理を行う(ステップS6)。
【0021】
例えば、実施形態に係る情報処理では、クレジットカード決済や電子マネー決済等の決済処理を行うことが可能である。言い換えれば、クラウド上で決済処理を完了させることができる。したがって、ユーザU01が実店舗で決済金額を直接支払う必要がないので、ユーザU01による会計を素早く完結させることが可能である。
【0022】
なお、実施形態に係る情報処理では、精算金額をユーザ端末10や店舗端末20へ通知し、ユーザU01が精算金額を実店舗で支払うことも可能である。その後、情報処理装置100は、決済処理が完了したことを示す完了通知をユーザ端末10へ送信する(ステップS7)。図1に示す例では、ユーザ端末10には、支払金額やクーポン情報による割引額等が完了通知として表示される。
【0023】
このように、実施形態に係る情報処理では、ユーザU01は、ユーザ端末10にコード情報を表示させ、店舗端末20に読み取らせるだけで、決済を自動的に完了させることができる。さらに、実施形態に係る情報処理では、ユーザU01が今回の決済で適用可能なクーポン情報が自動的に適用される。」
「【図1】
[図:0001390296000001.jpg]
」
「【0025】
〔2.情報処理システムの構成例〕
続いて、実施形態に係る情報処理システムの構成例について説明する。図2は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。図2に示すように、情報処理システム1は、ユーザ端末10と、店舗端末20と、情報処理装置100とを備える。また、ユーザ端末10、店舗端末20、情報処理装置100は、ネットワークNを介して接続される。ネットワークNは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話網(携帯電話網、固定電話網等)、地域IP(Internet Protocol)網、インターネット等の通信ネットワークである。ネットワークNには、有線ネットワークが含まれていてもよいし、無線ネットワークが含まれていてもよい。なお、図2に示す情報処理システム1には、ユーザ端末10、店舗端末20および情報処理装置100がそれぞれ複数台含まれてもよい。
【0026】
ユーザ端末10は、ユーザU01によって利用される情報処理装置である。例えば、ユーザ端末10は、スマートデバイス、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の通信装置である。
【0027】
また、ユーザ端末10は、クーポン情報を取得し、ユーザ操作にしたがって、クーポン情報にユーザIDを対応付けて情報処理装置100に登録する。すなわち、ユーザU01に対して配信されたクーポン情報のうち、ユーザU01が興味を示したクーポン情報が情報処理装置100に登録される。なお、ユーザ端末10が取得するクーポン情報は、プッシュ通知で配信されるものであってもよく、プル通知で配信されるものであってもよい。
【0028】
店舗端末20は、実店舗で店員に使用される情報処理装置である。例えば、店舗端末20は、レジ端末や、スマートデバイス、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の情報処理端末である。
【0029】
例えば、店舗端末20は、ユーザU01が購入する商品のバーコードを読み取ることで、利用金額を算出する。また、店舗端末20は、ユーザ端末10に表示されたバーコード200やQRコード300を読み取ることで、ユーザIDや決済方法に関する情報を取得することも可能である。
【0030】
店舗端末20は、利用金額に対してユーザIDや店舗IDを対応付けて情報処理装置100へ送信する。なお、店舗端末20は、商品のバーコードに基づき、商品情報をあわせて情報処理装置100へ送信することも可能である。
【0031】
情報処理装置100は、店舗端末20から通知されるユーザIDおよび店舗IDに基づいてユーザU01に対して今回の買い物に適用可能なクーポン情報を選択し、かかるクーポン情報を用いて決済を行う。
【0032】
〔3.情報処理装置の構成例〕
続いて、図3を用いて情報処理装置100の構成について詳細に説明する。図3は、実施形態に係る情報処理装置100の構成例を示すブロック図である。なお、図3では、情報処理装置100の説明に必要となる構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0033】
図3に示すように、情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、情報処理装置100は、情報処理装置100を利用する管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。」
「【図3】
[図:0001390296000002.jpg]
」
「【0035】
(記憶部120について)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、図3の例では、記憶部120は、クーポン情報記憶部121と、ユーザ情報記憶部122と、対象クーポン記憶部123とを有する。
【0036】
(クーポン情報記憶部121について)
クーポン情報記憶部121は、各店舗で発行されたクーポン情報を記憶する記憶部である。例えば、クーポン情報記憶部121には、ターゲティング条件が紐付けられたクーポン情報を記憶する。
【0037】
図4は、実施形態に係るクーポン情報記憶部121に記憶される情報の一例である。図4に示すように、クーポン情報記憶部121は、「クーポンID」、「店舗ID」、「クーポン内容」、「適用条件」、「有効期限」、「配信条件」等を関連付けて記憶する。
【0038】
クーポンIDは、クーポン情報を識別するための識別子であり、クーポン情報の登録時に自動的に付与される。店舗IDは、クーポン情報を適用可能な店舗を識別する識別子であり、クーポン情報の発行元の店舗を示す識別子とも言える。
【0039】
クーポン内容は、クーポンの中身を示す情報であり、適用条件は、クーポンの適用条件を示す。また、有効期限は、クーポン情報の有効期限を示す。店舗の管理者は、クーポン内容、適用条件および有効期限を適宜設定することが可能である。
【0040】
配信条件は、クーポン情報のターゲティング条件を示し、性別、年齢、住居、検索ワード等が関連付けられる。なお、本実施形態では、Webページや検索アプリにおける検索ワードに基づき、クーポン情報が配信される場合について説明する。」
「【図4】
[図:0001390296000003.jpg]
」
「【0043】
(ユーザ情報記憶部122について)
図3の説明に戻り、ユーザ情報記憶部122について説明する。ユーザ情報記憶部122は、ユーザU01の決済情報を記憶する記憶部である。図6は、実施形態に係るユーザ情報記憶部122に格納された情報の一例を示す図である。
【0044】
図6に示すように、ユーザ情報記憶部122は、「ユーザID」、「電子マネー残高」、「ポイント残高」、「クレジットカード情報」等を関連付けて記憶する。
【0045】
ユーザIDは、ユーザU01を識別するための識別子であり、電子マネー残高は、決済時に利用可能な電子マネーの残高を示す。また、ユーザU01は、入金することで、電子マネーにチャージすることができる。
【0046】
ポイント残高は、例えば、決済時に自動的に付与されるポイントの残高を示す。情報処理システム1では、ポイントを用いて決済を行うことも可能である。また、クレジットカード情報は、ユーザU01のクレジットカードの情報を示す。例えば、ユーザU01は、クレジットカード決済を所望する場合、クレジットカード情報を予め情報処理システム1に登録する必要がある。
【0047】
(対象クーポン記憶部123について)
図3の説明に戻り、対象クーポン記憶部123について説明する。対象クーポン記憶部123は、ユーザ端末10の要求に応じてユーザIDとクーポン情報を対応付けて記憶する記憶部である。
【0048】
図7は、実施形態に係る対象クーポン記憶部123に記憶される情報の一例を示す図である。図7に示すように、対象クーポン記憶部123には、ユーザIDおよびクーポンIDが対応付けられて記憶される。
【0049】
例えば、ユーザU01は、ユーザ端末10から上記の配信条件を満たすクーポン情報を取得し、ユーザ端末10を介して対象クーポン記憶部123に登録することが可能である。また、図7に示すように、1つのユーザIDに対して複数のクーポンIDを対応付けることも可能である。
【0050】
(制御部130について)
図3の説明に戻り、制御部130について説明する。制御部130は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、情報処理装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラム(情報処理装置プログラムの一例に相当)がRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0051】
図3に示すように、制御部130は、配信部131と、対応付け部132と、取得部133と、選択部134と、算出部135と、決済処理部136とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部130の内部構成は、図3に示した構成に限られず、後述する情報処理を行うことができる構成であれば他の構成であってもよい。また、制御部130が有する各処理部の接続関係は、図3に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。」
「【0063】
(取得部133について)
取得部133は、ユーザ端末10または店舗端末20の一方からユーザID、店舗IDおよび利用金額を取得する。本実施形態において、取得部133は、店舗端末20からユーザID、店舗IDおよび利用金額を取得し、選択部134へ通知する。なお、取得部133は、店舗端末20からユーザU01が購入した商品に関する商品情報を取得し、選択部134へ通知することにしてもよい。
【0064】
(選択部134について)
選択部134は、取得部133によって取得された利用金額に対して適用可能なクーポン情報をユーザIDおよび店舗IDに基づいて選択する。まず、選択部134は、対象クーポン記憶部123を参照し、ユーザIDおよび店舗IDに基づいて今回の利用金額に適用可能なクーポン情報を選択する。
【0065】
すなわち、選択部134は、ユーザIDに紐付けられたクーポン情報のうち、店舗IDに対応する実店舗で使用可能なクーポン情報を選択する。この際、選択部134は、適用条件(図4参照)を満たすクーポン情報を選択することになる。」
「【0074】
(算出部135について)
図3の説明に戻り、算出部135について説明する。算出部135は、選択部134によって選択されたクーポン情報を利用金額に適用した精算金額を算出する。具体的には、算出部135は、選択部134によって選択されたクーポン情報のクーポン内容に基づき、利用金額に対してクーポン内容を適用することで、精算金額を算出する。」
「【0083】
(決済処理部136について)
決済処理部136は、算出部135によって算出された精算金額に基づいて決済処理を行う。決済処理部136は、ユーザU01によって指定された決済方法で、精算金額の決済処理を行う。
【0084】~【0087】 略
【0088】
決済処理部136は、決済処理を行うと、図6に示したユーザ情報記憶部122を書き換える。また、決済処理部136は、今回の決済処理に基づいて付与されるポイントを算出し、算出したポイントをユーザ情報記憶部122のポイント残高に付与する。
【0089】
その後、決済処理部136は、決済処理の完了通知をユーザ端末10へ送信する。図10は、実施形態に係る完了通知の通知画面の一例を示す図である。図10に示すように、ユーザ端末10には、決済内容の詳細が完了通知として表示される。
【0090】
図10に示す例では、店舗名、お支払金額、決済総額、クーポン割引、付与されたポイント等が完了通知に含まれる。なお、お支払金額は、上述の精算金額に対応し、決済総額は、利用金額に対応する。
【0091】
また、クーポン割引は、クーポン情報を適用した割引額に対応し、ポイントは、今回の決済において、付与されるポイントを示す。このように、ユーザU01に対してクーポン情報に基づく割引額を提示することで、ユーザU01に対してお得感を実感させることが可能となる。なお、決済処理部136は、例えば、適用したクーポン情報をあわせて完了通知に掲載することにしてもよい。」
(2)引用発明
上記(1)の記載から以下のことが言える。
ア 【0025】、【0033】、【0051】の記載、図3によると、「ネットワークNを介して接続される」、「ユーザ端末10と、店舗端末20と、情報処理装置100とを備え」た「情報処理システム1」における、「情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有」し、その「制御部130は、配信部131と、対応付け部132と、取得部133と、選択部134と、算出部135と、決済処理部136とを有」する。
イ 【0026】、【0028】~【0030】の記載、図1によると、「ユーザ端末10は、ユーザU01によって利用され」、「実店舗で店員に使用される」「店舗端末20は、ユーザU01が購入する商品のバーコードを読み取ることで、利用金額を算出する」ものであって、「ユーザ端末10に表示されたバーコード200やQRコード300を読み取ることで、ユーザIDや決済方法に関する情報を取得」し、「利用金額に対してユーザIDや店舗IDを対応付けて情報処理装置100へ送信」し、さらに「商品のバーコードに基づき、商品情報をあわせて情報処理装置100へ送信する」。
ウ 【0035】、【0037】~【0039】、【0043】、【0044】、【0047】、【0048】の記載、図4によると、「情報処理装置100」の「記憶部120は、クーポン情報記憶部121と、ユーザ情報記憶部122と、対象クーポン記憶部123とを有」し、「クーポン情報記憶部121は、「クーポンID」、「店舗ID」、「クーポン内容」、「適用条件」、「有効期限」、「配信条件」等を関連付けて記憶する」ものであって、「クーポンIDは、クーポン情報を識別するための識別子」であり、「適用条件は、クーポンの適用条件」である。また、「対象クーポン記憶部123は、ユーザ端末10の要求に応じてユーザIDとクーポン情報を対応付けて記憶」するものであって、「ユーザIDおよびクーポンIDが対応付けられて記憶」され、「ユーザU01の決済情報を記憶する記憶部である」「ユーザ情報記憶部122は、「ユーザID」、「電子マネー残高」、「ポイント残高」、「クレジットカード情報」等を関連付けて記憶する」。
エ 【0063】の記載、図1によると、「取得部133は、ユーザ端末10または店舗端末20の一方からユーザID、店舗IDおよび利用金額を取得」し、また、「店舗端末20からユーザU01が購入した商品に関する商品情報を取得し、選択部134へ通知する」。
オ 【0019】、【0064】の記載によると、「情報処理装置100は、特定の商品に対して適用可能なクーポン情報がある場合、利用金額とともに商品情報を取得し、商品情報に基づき、かかる商品に対して適用可能なクーポン情報を選択することも可能」(【0019】)であり、「選択部134は、取得部133によって取得された利用金額に対して適用可能なクーポン情報をユーザIDおよび店舗IDに基づいて選択する」(【0064】)から、【0019】に記載されている「商品情報に基づき、かかる商品に対して適用可能なクーポン情報を選択する」との処理は、「選択部134」が行うことは明らかである。
よって、【0019】、【0064】、【0065】の記載、図1によると、「選択部134は、取得部133によって取得された利用金額に対して適用可能なクーポン情報を」、「対象クーポン記憶部123を参照し、ユーザIDおよび店舗IDに基づいて選択」し、「この際、選択部134は、適用条件」「を満たすクーポン情報を選択」するものであり、「特定の商品に対して適用可能なクーポン情報がある場合、利用金額とともに商品情報を取得し、商品情報に基づき、かかる商品に対して適用可能なクーポン情報を選択する」。
カ 【0074】、【0083】、【0088】、【0089】、【0091】の記載、図1によると、「算出部135は、選択部134によって選択されたクーポン情報を利用金額に適用した精算金額を算出」し、「決済処理部136は、算出部135によって算出された精算金額に基づいて決済処理を行」うと、「ユーザ情報記憶部122を書き換え」、「決済処理の完了通知をユーザ端末10へ送信する」ものであって、「ユーザU01に対してクーポン情報に基づく割引額を提示することで、ユーザU01に対してお得感を実感させることが可能となる」。
上記ア~カによれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 ネットワークNを介して接続される、ユーザ端末10と、店舗端末20と、情報処理装置100とを備えた情報処理システム1における情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有し、その制御部130は、配信部131と、対応付け部132と、取得部133と、選択部134と、算出部135と、決済処理部136とを有し(上記ア)、
ユーザ端末10は、ユーザU01によって利用され、
実店舗で店員に使用される店舗端末20は、ユーザU01が購入する商品のバーコードを読み取ることで、利用金額を算出するものであって、ユーザ端末10に表示されたバーコード200やQRコード300を読み取ることで、ユーザIDや決済方法に関する情報を取得し、利用金額に対してユーザIDや店舗IDを対応付けて情報処理装置100へ送信し、さらに商品のバーコードに基づき、商品情報をあわせて情報処理装置100へ送信するものであり(上記イ)、
情報処理装置100の、
記憶部120は、クーポン情報記憶部121と、ユーザ情報記憶部122と、対象クーポン記憶部123とを有し、
クーポン情報記憶部121は、「クーポンID」、「店舗ID」、「クーポン内容」、「適用条件」、「有効期限」、「配信条件」等を関連付けて記憶するものであって、クーポンIDは、クーポン情報を識別するための識別子であり、適用条件は、クーポンの適用条件であり、
対象クーポン記憶部123は、ユーザ端末10の要求に応じてユーザIDとクーポン情報を対応付けて記憶するものであって、ユーザIDおよびクーポンIDが対応付けられて記憶され、
ユーザU01の決済情報を記憶する記憶部であるユーザ情報記憶部122は、「ユーザID」、「電子マネー残高」、「ポイント残高」、「クレジットカード情報」等を関連付けて記憶し(上記ウ)、
取得部133は、ユーザ端末10または店舗端末20の一方からユーザID、店舗IDおよび利用金額を取得し、また、店舗端末20からユーザU01が購入した商品に関する商品情報を取得し、選択部134へ通知し(上記エ)、
選択部134は、取得部133によって取得された利用金額に対して適用可能なクーポン情報を、対象クーポン記憶部123を参照し、ユーザIDおよび店舗IDに基づいて選択し、この際、選択部134は、適用条件を満たすクーポン情報を選択するものであり、特定の商品に対して適用可能なクーポン情報がある場合、利用金額とともに商品情報を取得し、商品情報に基づき、かかる商品に対して適用可能なクーポン情報を選択し(上記オ)、
算出部135は、選択部134によって選択されたクーポン情報を利用金額に適用した精算金額を算出し、決済処理部136は、算出部135によって算出された精算金額に基づいて決済処理を行うと、ユーザ情報記憶部122を書き換え、決済処理の完了通知をユーザ端末10へ送信するものであって、ユーザU01に対してクーポン情報に基づく割引額を提示することで、ユーザU01に対してお得感を実感させることが可能となる(上記カ)、
情報処理システム1における情報処理装置100。」
4 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ユーザU01」、「ユーザ端末10」、「商品」、(商品の)「バーコード」、「クーポン情報」はそれぞれ、本願発明の「利用者」、「利用者が利用する利用者端末」、「取引対象」、(取引対象の)「バーコード」、「クーポン」に相当する。
ここで、対比に先立ち、本願発明の「利用者が利用する利用者端末を用いる決済手段」について、発明の詳細な説明の記載を参照すると、発明の詳細な説明には、次の記載がある。なお、下線は当審が付した。
「【0079】
上記のように、決済サーバ10は、各加盟店に対し、電子決済サービスを提供する。したがって、決済サーバ10は、取引対象を提供する店舗の管理者とは異なる管理者により管理される決済サーバ10(付与装置)であって、利用者端末を用いる所定の決済手段を提供する所定のプラットフォームの管理者により管理される。このため、受付部41は、取引対象を提供する店舗の管理者とは異なる管理者により管理されるプラットフォームであって、利用者端末を用いる決済手段を提供するプラットフォームを介して、決済の対象である取引対象を識別する識別情報を受け付ける。そして、特定部42は、このようなプラットフォームを介して受け付けられた識別情報に基づいて、利用者が予め獲得したクーポンのうち当該利用者に適用可能なクーポンを特定する。」
「【0100】
また、実施形態に係る決済サーバ10において、例えば、特定部42は、利用者端末を用いる決済手段における利用者の口座の残高に応じて提供されるクーポンのうち利用者に適用可能なクーポンを特定する。また、特定部42は、利用者の位置情報に応じて提供されるクーポンのうち利用者に適用可能なクーポンを特定する。また、特定部42は、利用者の取引対象の購入履歴に応じて提供されるクーポンのうち利用者に適用可能なクーポンを特定する。また、特定部42は、利用者の属性情報に応じて提供されるクーポンのうち利用者に適用可能なクーポンを特定する。また、特定部42は、所定のプラットフォームにおける利用者の注文履歴に応じて提供されるクーポンのうち利用者に適用可能なクーポンを特定する。」
発明の詳細な説明の上記記載からすると、本願発明の「利用者が利用する利用者端末を用いる決済手段」は「プラットフォーム」によって「提供」されるものであって、「利用者の口座の残高」を含むものであると解釈される。
当該解釈に基づいて対比を行うと、引用発明の「情報処理システム1」は、「ユーザ端末10に表示されたバーコード200やQRコード300」を利用して、ユーザU01の決済情報を記憶する「ユーザ情報記憶部122」を書き換えることで、「ユーザ端末10」を利用した「決済手段」をユーザU01へ提供しているといえるから、このようにして引用発明の情報処理システム1によって提供される、「ユーザ端末10」を利用した「決済手段」は、本願発明の「利用者が利用する利用者端末を用いる決済手段」に相当する。また、引用発明において、当該「決済手段」を提供する「事業者」が存在することは自明である。
イ 引用発明の「店舗端末20」がある「実店舗」について、当該「実店舗」を通して商品の販売事業を行う「事業者」が存在することは自明である。 そして、引用発明の「店舗端末20は、ユーザU01が購入する商品のバーコードを読み取ることで、利用金額を算出」しており、その際、「商品のバーコード」に基づく「商品情報」を、店舗端末20が「商品のバーコード」を読み取ることで取得し、当該「商品情報」に基づいて店舗端末20が利用金額を算出することは明らかであるから、引用発明の「商品情報」は、店舗端末20がある「実店舗」を通して商品の販売事業を行う「事業者」が、「商品」を識別するために用いる情報であるといえる。
また、引用発明の「選択部134」は、「対象クーポン記憶部123」や「適用条件」を参照してクーポン情報を選択するものであって、商品情報に基づき、特定の商品に対して適用可能なクーポン情報を選択するものである。ここで、クーポン情報が「特定の商品に対して適用可能」であることはクーポン情報の「適用条件」であることは明らかであるから、「選択部134」に参照される「適用条件」やクーポン情報を識別するための識別子である「クーポンID」等を関連付けて記憶する「記憶部120」の「クーポン情報記憶部121」は、クーポン情報の対象となる特定の商品の「商品情報」といった適用条件と、「クーポン情報」とを関連付けて記憶しているものといえる。
よって、引用発明の、実店舗を通して商品の販売事業を行う事業者が商品を識別するために用いるものであり「商品のバーコード」に基づく「商品情報」と、「クーポン情報」とを関連付けて記憶する「クーポン情報記憶部121」を有する「記憶部120」と、本願発明の「利用者が利用する利用者端末を用いる決済手段を提供する事業者とは異なる事業者が取引対象を識別するために用いる識別情報であって、取引対象に添付されるバーコードが示す識別情報と、クーポンとを紐付けて記憶する記憶部」とは、「事業者が取引対象を識別するために用いる識別情報であって、取引対象のバーコードが示す識別情報と、クーポンとを紐付けて記憶する記憶部」である点で共通する。
ウ 引用発明では、ユーザU01が購入する商品のバーコードを読み取ることで、利用金額を算出し、さらに、ユーザ端末10に表示されたバーコード200やQRコード300を読み取ることで、決済が行われるから、引用発明のユーザU01による購入対象の商品は、上記アで示した「ユーザ端末10」を利用した「決済手段」による決済の対象である。
また、引用発明の「商品情報」は「商品のバーコード」に基づくものであるから、店舗端末20から「ユーザU01が購入した商品に関する商品情報を取得」する「取得部133」は、「商品のバーコード」に基づいて、「ユーザU01が購入した商品に関する商品情報を取得する」ものであるといえる。
よって、引用発明の、「決済手段」による決済の対象である「ユーザU1が購入した商品」の「バーコード」に基づいて、「ユーザU01が購入した商品に関する商品情報を取得する」「取得部133」と、本願発明の「前記利用者が前記決済手段を用いて行う決済の対象である取引対象に添付されるバーコードが示す識別情報を受け付ける受付部」とは、「利用者が決済手段を用いて行う決済の対象である取引対象のバーコードが示す識別情報を受け付ける受付部」である点で共通する。
エ 引用発明において、ユーザ端末10の要求に応じてユーザIDと対応付けて「対象クーポン記憶部123」へ記憶される「クーポン情報」は、「選択部134」によるクーポン情報の選択以前に、記憶されていることは明らかであるから、引用発明の当該「クーポン情報」は、本願発明の「前記利用者が予め獲得したクーポン」に相当する。
また、上記イに示したとおり、引用発明の「記憶部120」は、「商品情報」と「クーポン情報」とを関連付けて記憶するものである。
そして、引用発明の「選択部134」は、取得部133によって取得された情報に基づいて、「対象クーポン記憶部123」を参照して「クーポン情報」を選択するものであって、その際、特定の商品に対して適用可能なクーポン情報がある場合、商品情報に基づき、かかる商品に対して適用可能なクーポン情報を選択するものであるから、引用発明の対象クーポン記憶部123にユーザIDと対応付けて記憶された「クーポン情報」から、「取得部133」によって取得された「商品情報」に基づき、かかる商品に対して適用可能なクーポン情報を選択する「選択部134」は、本願発明の「前記利用者が予め獲得したクーポンのうち、前記受付部により受け付けられた識別情報に紐付けられたクーポンを特定する特定部」に相当する。
オ 引用発明の、選択部134によって選択されたクーポン情報を利用金額に適用した精算金額に基づいて決済処理を行い、ユーザU01に対してクーポン情報に基づく割引額を提示する「決済処理部136」は、「選択部134」によって選択されたクーポン情報に基づいて、決済を行ったユーザU1に対して、「割引」という利益をもたらしているものといえる。
よって、引用発明の、「選択部134」によって選択されたクーポン情報を利用金額に適用することで、決済を行ったユーザU1に対して、「割引」という利益をもたらす「決済処理部136」は、本願発明の「前記特定部により特定されたクーポンに基づく利益を前記利用者に付与する付与部」に相当する。
カ 引用発明の情報処理システム1における「情報処理装置100」は上記オで示したように、決済を行ったユーザU1に対して、「割引」という利益をもたらす、すなわち、「利益を利用者に「付与」する「装置」であるといえるから、引用発明の「情報処理装置100」と、本願発明の「付与装置」とは、下記の相違点を除き、「付与装置」である点で共通する。
したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「 事業者が取引対象を識別するために用いる識別情報であって、取引対象のバーコードが示す識別情報と、クーポンとを紐付けて記憶する記憶部と、
利用者が決済手段を用いて行う決済の対象である取引対象のバーコードが示す識別情報を受け付ける受付部と、
前記利用者が予め獲得したクーポンのうち、前記受付部により受け付けられた識別情報に紐付けられたクーポンを特定する特定部と、
前記特定部により特定されたクーポンに基づく利益を前記利用者に付与する付与部と
を有することを特徴とする付与装置。」
[相違点1]
「事業者が取引対象を識別」に係る「事業者」について、本願発明では、「利用者が利用する利用者端末を用いる決済手段を提供する事業者とは異なる事業者」であるのに対し、引用発明では、「ユーザ端末10」を利用した「決済手段」の「事業者」との異同が特定されていない点。
[相違点2]
本願発明では、「バーコード」が「取引対象に添付される」のに対し、引用発明では「バーコード」は、「取引対象」(「商品」)の「バーコード」ではあるものの、「取引対象」(「商品」)に「添付される」ことが特定されていない点。
(2)判断
上記[相違点1]、[相違点2]について検討する。
ア [相違点1]について
「実店舗」を通して商品の販売事業を行う「事業者」が、当該「事業者」とは異なる「事業者」が提供する「決済手段」によって、ユーザが購入する商品についての決済を行うことは一般的に行われていることであるから、引用発明の情報処理システム1を具現化するにあたり、引用発明の「実店舗」の「事業者」、すなわち、商品情報によって、商品を識別する「事業者」と、「ユーザ端末10」を利用した「決済手段」を提供する「事業者」とを、異なる「事業者」とすることは当業者であれば必要に応じて適宜なし得たことである。
イ [相違点2]について
商品の販売を行うにあたり、「商品のバーコード」を「商品」に「添付」することは一般的に行われていることであるから、引用発明の処理対象とする「取引対象のバーコード」として、「取引対象」に「添付されるバーコード」を処理の対象とすることは当業者であれば必要に応じて適宜なし得たことである。
ウ 作用効果について
以上のように、上記相違点は当業者が容易に想到し得たものであり、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
(3)小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-014929