特許拒絶査定不服審判
2024-019744
情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および情報処理システム
- 審判番号
- 2024-019744
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-088864
- 請求日
- 2024年12月09日
- 審決日
- 2026年04月28日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】PayPay株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 梅本 章子
- 審判官 坂庭 剛史
- 分類
- P18 .561-Z (G06Q) / P18 .121-Z (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024- 88864「情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 7年12月11日出願公開、特開2025-181098〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和6年5月31日を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和6年 7月 3日付け:拒絶理由通知書
令和6年 8月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年10月 9日付け:拒絶査定
令和6年12月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 5月23日 :上申書の提出
第2 令和6年12月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年12月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「店舗での商品の購入の対価または店舗で提供されるサービスの対価の決済を行う第1ユーザーが有する第1電子口座から前記店舗のユーザーである店舗ユーザーが有する店舗電子口座へ電子マネーを移行する決済サービスと、前記決済サービスで使用される前記電子マネーを送金元のユーザーであって前記決済サービスを利用する前記第1ユーザーが有する前記第1電子口座から、前記決済サービスを利用する送金先の第2ユーザーの有する第2電子口座へ移行する送金サービスと、を提供する電子決済サーバと通信可能に接続された前記第1ユーザーが利用する情報処理装置であって、
前記決済サービスは、前記情報処理装置の表示部に表示されたコードを前記店舗の端末で読み取ることで前記店舗の端末によって設定された金額を前記第1電子口座から前記店舗電子口座へ移行すること、および、前記店舗において提示されているコードを前記情報処理装置が読み取ることで前記表示部に表示される第1画面において前記第1ユーザーによって指定された金額を前記第1電子口座から前記店舗電子口座へ移行すること、の両方が可能に構成されているサービスであり、
前記送金サービスは、前記表示部に表示される第2画面において前記第1ユーザーによって指定された金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することが可能であり、かつ、前記表示部に表示されたコードを前記第2ユーザーが利用する第2装置で読み取ることでは前記金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することができないサービスであり、
前記送金サービスにおいて前記電子決済サーバが前記送金先の前記第2ユーザーを識別するための識別情報、および、前記送金サービスにおいて前記第1電子口座から前記第2電子口座へ前記電子マネーを移送するための前記第2画面に遷移させるための遷移情報を、前記決済サービスおよび前記送金サービスを利用するための電子決済アプリが起動していない状態でNFC(Near Field Communication)により取得する取得部と、
前記取得部で前記識別情報および前記遷移情報を取得したことに基づいて、前記表示部に所定の通知を表示させ、
前記所定の通知に対する操作を受け付けたことに応じて、前記電子決済アプリを起動し、起動した前記電子決済アプリ上において前記第2画面を前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記第2画面は、前記電子決済アプリが起動された後において、前記第2装置に表示される前記第2ユーザーを識別するための前記識別情報および前記遷移情報を示すコードを前記電子決済アプリ上で取得することによっても前記表示部に表示されることが可能であり、
前記第1画面は、前記電子決済アプリが起動された後においてのみ前記表示部に表示されることが可能であることを特徴とする情報処理装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年8月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「店舗での商品の購入の対価または店舗で提供されるサービスの対価の決済を行うユーザーが有する電子口座から前記店舗が有する電子口座へ電子マネーを移行する決済サービスと、前記決済サービスで使用される前記電子マネーを送金元のユーザーの有する電子口座から送金先のユーザーの有する電子口座へ移行する送金サービスと、を提供する電子決済サーバと通信可能に接続された情報処理装置であって、
前記送金サービスにおいて前記電子決済サーバが前記送金先のユーザーを識別するための識別情報、および、前記送金サービスにおいて送金元のユーザーの有する電子口座から前記送金先のユーザーの有する電子口座へ前記電子マネーを移送するための画面に遷移させるための遷移情報を、NFC(Near Field Communication)により取得する取得部と、
前記取得部で前記識別情報および前記遷移情報を取得したことに基づいて、表示部に所定の通知を表示させ、
前記所定の通知に対する操作を受け付けたことに応じて、前記画面を前記表示部に表示させる表示制御部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」
2 補正の適否(新規事項の追加について)
(1)補正事項
本件補正は、請求項1について、少なくとも以下の補正事項1~4を含むものである。
(補正事項1)
本件補正前の「決済サービス」に関し、「前記決済サービスは、前記情報処理装置の表示部に表示されたコードを前記店舗の端末で読み取ることで前記店舗の端末によって設定された金額を前記第1電子口座から前記店舗電子口座へ移行すること、および、前記店舗において提示されているコードを前記情報処理装置が読み取ることで前記表示部に表示される第1画面において前記第1ユーザーによって指定された金額を前記第1電子口座から前記店舗電子口座へ移行すること、の両方が可能に構成されているサービスであり」との事項を追加する補正。
(補正事項2)
本件補正前の「送金サービス」に関し、「前記送金サービスは、前記表示部に表示される第2画面において前記第1ユーザーによって指定された金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することが可能であり、かつ、前記表示部に表示されたコードを前記第2ユーザーが利用する第2装置で読み取ることでは前記金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することができないサービスであり」との事項を追加する補正。
(補正事項3)
「前記第2画面は、前記電子決済アプリが起動された後において、前記第2装置に表示される前記第2ユーザーを識別するための前記識別情報および前記遷移情報を示すコードを前記電子決済アプリ上で取得することによっても前記表示部に表示されることが可能であり」との事項を追加する補正。
(補正事項4)
「前記第1画面は、前記電子決済アプリが起動された後においてのみ前記表示部に表示されることが可能である」との事項を追加する補正。
(2)新規事項の追加について
ア 補正事項1について
(ア)本件補正後の「決済サービス」は、「前記情報処理装置の表示部に表示されたコードを前記店舗の端末で読み取ることで前記店舗の端末によって設定された金額を前記第1電子口座から前記店舗電子口座へ移行すること」、及び、「前記店舗において提示されているコードを前記情報処理装置が読み取ることで前記表示部に表示される第1画面において前記第1ユーザーによって指定された金額を前記第1電子口座から前記店舗電子口座へ移行すること」、の両方が可能に構成されているサービスである(下線は当審付与。以下同様。)。
(イ)当初明細書等には、請求項1の「決済サービス」に対応する「電子決済サービス」とその処理に関して、「電子決済サーバ103は、電子決済処理を行う電子決済サービス、および送金処理を行う送金サービスなどを提供する情報処理装置である。」(【0024】)、「電子決済処理とは、電子決済サービスを提供するサービス事業者と契約した店舗での決済時に、商品または役務の提供を受けたPSユーザーの電子口座から、当該商品または役務を提供した店舗の電子口座に、支払い額分の電子マネーを移行させる処理をいう。」(【0026】)、「決済処理部413は、PSユーザーが店舗などで決済を行う際に、後述する電子決済方法に基づいて電子決済処理を行う。」(【0064】)、「電子決済方法として、店舗の店員がユーザーの提示するコードをスキャンし、スキャンした情報に基づき決済を行う第1の電子決済方法と、店舗に配置されたコードをユーザーが読み取り、読み取った情報に基づき決済を行う第2の電子決済方法とがある。」(【0065】)との記載がある。
(ウ)上記(イ)の記載によれば、当初明細書等には、「電子決済サービス」は、「店舗の店員がユーザーの提示するコードをスキャンし、スキャンした情報に基づき」、「ユーザーの電子口座から」「店舗の電子口座に」「支払い額分の電子マネーを移行させる」「第1の電子決済方法」と、「店舗に配置されたコードをユーザーが読み取り、読み取った情報に基づき」、「ユーザーの電子口座から」「店舗の電子口座に」「支払い額分の電子マネーを移行させる」「第2の電子決済方法」との両方が可能に構成されているサービスであることが記載されている。
しかしながら、当初明細書等には、上記(イ)の記載においても他の記載においても、「電子決済サービス」での「支払い額」の「設定(指定)」について記載も示唆もなく、「第1の電子決済方法」での「支払い額」が「店舗の端末によって設定され」ることも、「第2の電子決済方法」での「支払い額」が、「表示部に表示される第1画面において」「第1ユーザーによって指定され」ることも記載も示唆もされていない。また、何等かの手段により、第1ユーザによって支払額が指定されることが技術常識であるとしても、当初明細書等全体をみても、「第1の電子決済方法」での「支払い額」が「前記店舗の端末によって設定された金額」であること、及び、「第2の電子決済方法」での「支払い額」が「前記表示部に表示される第1画面において前記第1ユーザーによって指定された金額」であることが、記載されているに等しい事項とまではいえない。
そうすると、補正事項1を含む本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内でされたものとはいえない。
イ 補正事項2について
(ア)本件補正後の「送金サービス」は、「前記表示部に表示される第2画面において前記第1ユーザーによって指定された金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することが可能であり」、かつ、「前記表示部に表示されたコードを前記第2ユーザーが利用する第2装置で読み取ることでは前記金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することができない」サービスである。
(イ)当初明細書等には、「送金サービス」とその処理に関して、「電子決済サーバ103は、電子決済処理を行う電子決済サービス、および送金処理を行う送金サービスなどを提供する情報処理装置である。」(【0024】)、「送金処理とは、送金元のPSユーザーの電子口座から、送金先のPSユーザーの電子口座に、送金額分の電子マネーを移行させる処理をいう。」(【0026】)、「S905において、第1端末101は、S904で受信した送金額を入力可能な画面に対するPSユーザーの送信操作に基づいて電子決済サーバ103に送金額を送信する。例えば、第1端末101は、第1のPSユーザーにより送金額入力画面1020に送金額が入力され、かつ、送金ボタン1024が操作されたことを検知すると、入力された送金額を示す情報を電子決済サーバ103に送信する。」(【0086】)との記載がある。
なお、当初明細書等には、「コード」の読み取りに関して、【0065】(上記ア(イ))に記載はあるもの、「電子決済サービス」におけるものである。
(ウ)上記(イ)の記載によれば、当初明細書等には、「送金サービス」は、「第1端末101」に表示される「送金額を入力可能な画面」において「送金元のPSユーザー」が「入力し」た「送金額」分の「電子マネー」を、「送金元のPSユーザーの電子口座から、送金先のPSユーザーの電子口座に」「移行させる」サービスであることが記載されている。
しかしながら、当初明細書等には、上記(イ)の記載においても他の記載においても、「送金サービス」に関する「コード」の読み取りについて記載も示唆もなく、「送金サービス」が、「前記表示部に表示されたコードを前記第2ユーザーが利用する第2装置で読み取ることでは前記金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することができない」サービスであることは記載も示唆もされていない。また、技術常識を考慮して当初明細書等全体をみても、「送金サービス」が、「前記表示部に表示されたコードを前記第2ユーザーが利用する第2装置で読み取ることでは前記金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することができない」サービスであることが、記載されているに等しい事項であるともいえない。
そうすると、補正事項2を含む本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内でされたものとはいえない。
ウ 補正事項3について
(ア)本件補正後の「第2画面」は、「前記電子決済アプリが起動された後において、前記第2装置に表示される前記第2ユーザーを識別するための前記識別情報および前記遷移情報を示すコードを前記電子決済アプリ上で取得することによっても前記表示部に表示されることが可能であ」るものである。
(イ)当初明細書等には、請求項1の「第2画面」に対応する、「送金サービス」で「第1端末101」に表示される「送金額入力画面1020」に関して、「第1の送金手順では、送金元のPSユーザーが、電子決済アプリを操作して、電子決済アプリ上に表示される送金画面(不図示)から、送金先のPSユーザーおよび送金額を指定する。第1の送金手順は、送金先のPSユーザーおよび送金額を指定するための複数の画面遷移および複数の操作を伴うことがあるため、PSユーザーへの負担が大きい。」(【0068】)、「比較例として、第1の送金手順を説明する。本実施形態によらない第1の送金手順では、送金元のPSユーザーは、ホーム画面1000の電子決済アプリのアイコン1001に対する操作を行う。その後、送金元のPSユーザーは、電子決済アプリ上に表示される送金画面(不図示)を操作して、一覧表から送金先のPSユーザーを探し出し、指定する必要がある。一覧表に登録されているPSユーザー数が多いと探す手間がかかる。さらに、送金元のPSユーザーは、送金先のPSユーザーが登録されてなければ、まず当該送金先のPSユーザーを登録する必要がある。この場合、送金先のPSユーザーは、電子決済アプリを起動して、自身の識別情報を送金元のPSユーザーに提示して、自身をユーザー登録してもらう必要がある。このような送金手順を経て、第1端末101は、電子決済アプリ上に1020の画面を表示することができる。このような比較例と異なり、第2の送金手順によれば、送金先のPSユーザーを指定するなどの手順を省略して1020の画面を表示することができるため、ユーザーへの負荷を軽減することができる。本実施形態で説明したように、送金サービスを利用可能な画面への遷移情報などが無線タグに記憶されることで、送金サービスを利用する際に、1020の画面に直ぐに遷移することが可能であるため、ユーザビリティの向上を図ることができる。」(【0102】)との記載がある。
(ウ)上記(イ)の記載によれば、当初明細書等には、「第1の送金手順」では、「電子決済アプリを操作して、電子決済アプリ上に表示される送金画面から、送金先のPSユーザーおよび送金額を指定する」こと、及び、「送金先のPSユーザーが登録されてな」い場合、「送金先のPSユーザー」が「提示」した「自身の識別情報」に基づいて「ユーザー登録」することを経て、「電子決済アプリ上に1020の画面を表示する」ことは記載されている。
しかしながら、当初明細書等には、上記(イ)の記載においても他の記載においても、「前記第2装置に表示される前記第2ユーザーを識別するための前記識別情報および前記遷移情報を示すコード」について記載も示唆もなく、「第2画面」に関して、「前記電子決済アプリが起動された後において、前記第2装置に表示される前記第2ユーザーを識別するための前記識別情報および前記遷移情報を示すコードを前記電子決済アプリ上で取得することによっても前記表示部に表示される」ことも記載も示唆もされていない。また、技術常識を考慮して当初明細書等全体をみても、「前記第2画面は、前記電子決済アプリが起動された後において、前記第2装置に表示される前記第2ユーザーを識別するための前記識別情報および前記遷移情報を示すコードを前記電子決済アプリ上で取得することによっても前記表示部に表示される」ことが、記載されているに等しい事項であるともいえない。
そうすると、補正事項3を含む本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内でされたものとはいえない。
エ 補正事項4について
(ア)本件補正後の「第1画面」は、「前記電子決済アプリが起動された後においてのみ前記表示部に表示される」ものである。そして、当該「第1画面」は、上記ア(ア)によれば、「決済サービス」において、「前記店舗において提示されているコードを前記情報処理装置が読み取ることで前記表示部に表示される」ものである。
(イ)当初明細書等には、「電子決済サービス」と「電子決済アプリ」に関して、「電子決済アプリにおいて、商品または役務に対する決済を行うための電子決済サービスとともに、電子データ化された貨幣(以降、電子マネーと称する)をユーザー間でやり取りするための送金サービスを提供することができる。」(【0012】)との記載がある。
また、当初明細書等における「電子決済サービス」とその処理に関する記載は、上記ア(イ)のとおりである。
(ウ)上記(イ)の記載によれば、当初明細書等には、「電子決済サービス」は「電子決済アプリ」において提供されること、及び、「電子決済サービス」は、「店舗に配置されたコードをユーザーが読み取り、読み取った情報に基づき」、「ユーザーの電子口座から」「店舗の電子口座に」「支払い額分の電子マネーを移行させる」「第2の電子決済方法」が可能に構成されていることは記載されている。
しかしながら、当初明細書等には、上記ア(ウ)で述べたとおり、「電子決済サービス」の「第2の電子決済方法」での「第1画面」に関して記載も示唆もなく、また、「電子決済サービス」の「第2の電子決済方法」での処理の流れと「電子決済アプリ」の起動タイミングとの関係についても記載も示唆もなく、「前記第1画面は、前記電子決済アプリが起動された後においてのみ前記表示部に表示される」ことは記載も示唆もされていない。また、技術常識を考慮して当初明細書等全体をみても、「前記第1画面は、前記電子決済アプリが起動された後においてのみ前記表示部に表示される」ことが、記載されているに等しい事項であるともいえない。
そうすると、補正事項4を含む本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内でされたものとはいえない。
(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「係る補正は、出願当初明細書の例えば、段落0012、0016、0026、0065-0069、0080-0093、0102、図9、図10などの記載に基づきます。」と主張する。
また、請求人は、上申書において、「電子決済サービスおよび送金サービスの両方を提供可能な電子決済アプリにおいて、電子決済サービスの利用における決済の際に、ユーザーを識別するためのコードが情報処理の表示部に表示されて使用されることが、出願当初明細書の段落0012および0065に示唆されています。」と、また、参考文献1、2を挙げて「参考文献1から、少なくとも本出願時において、電子決済サービスおよび送金サービスの両方を提供可能な電子決済アプリにおいて、送金サービスの利用において送金先のユーザーを識別するコードが使用されることが、一般的に知られており、これは技術常識に相当すること」、「参考文献2から、少なくとも本出願時において、コードを用いた送金サービスにおいてコードを読み取ったユーザーが送金元のユーザーとなり、すなわち、コードを読み取ったユーザーが送金先のユーザーにはならないことを、当業者であれば理解することができる」とし、「出願時の技術常識に照らして、出願当初明細書等から、補正後の請求項1の「前記表示部に表示されたコードを前記第2ユーザーが利用する第2装置で読み取ることでは前記金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することができないサービスであり」の記載は、自明であると思料致します。」と主張する。
しかしながら、上記(2)で検討したとおり、上記主張された段落及び図を含め、当初明細書等のいずれにおいても、上記補正事項1~4に係る事項が記載されているとはいえず、また、請求人が主張する出願時の技術常識が認められるとしても、前記「前記表示部に表示されたコードを前記第2ユーザーが利用する第2装置で読み取ることでは前記金額を前記第1電子口座から前記第2電子口座へ移行することができないサービスであり」との事項を追加する補正は、コードを用いた送金サービスについて【0065】の記載以上の具体的な記載が認められないものである、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるかから、請求人の上記主張は採用できない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~11に係る発明は、令和6年8月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~11に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特許第7481523号公報
引用文献2:特開2021-135805号公報
3 引用文献の記載、引用発明等
(1)引用文献1、引用発明
ア 引用文献1には、図面とともに次の記載がある。
「【0011】
〔1.実施形態〕
図1を用いて、本実施形態の情報処理装置等により実現される送金処理について説明する。図1は、実施形態に係る送金処理の一例を示す図である。なお、図1では、本実施形態に係る情報処理装置の一例である決済サーバ10によって、実施形態に係る送金処理等が実現されるものとする。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係る情報処理システム1は、決済サーバ10と、端末装置20とを含む。決済サーバ10及び端末装置20は、ネットワークN(例えば、図3参照)を介して有線又は無線により相互に通信可能に接続される。ネットワークNは、例えば、インターネット等のWAN(Wide Area Network)である。なお、図1に示した情報処理システム1には、複数台の決済サーバ10及び複数台の端末装置20が含まれていてもよい。
【0013】
図1に示す決済サーバ10は、実施形態に係る送金処理を実行する情報処理装置であり、サーバ装置やクラウドシステム等により実現される。例えば、決済サーバ10は、端末装置20を用いる電子決済に関する電子決済サービスを提供する。例えば、決済サーバ10は、取引対象の提供者や取引対象が提供される利用者の口座を管理しており、利用者からの決済要求に従って、口座間において電子マネーの移行等を行うことで、各種決済を実現する。なお、電子マネーとは、例えば、各種企業が独自に用いるポイントや通貨等であってもよく、日本円やドル等の国家により提供される貨幣を電子的に取引可能としたものであってもよい。
【0014】
図1に示す端末装置20は、利用者によって利用される情報処理装置である。端末装置20は、例えば、スマートフォンや、タブレット型端末、ノート型PC(Personal Computer)、デスクトップPC、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)等により実現される。また、端末装置20は、決済サーバ10によって配信される情報を、ウェブブラウザやアプリケーションにより表示する。
【0015】
なお、図1に示す例では、端末装置20がスマートフォンである場合を示す。また、図1に示す例では、端末装置20を利用する利用者に応じて、端末装置20を端末装置20-1~20-N(Nは任意の自然数)として説明する。例えば、端末装置20-1は、利用者ID「U1」により識別される利用者(利用者U1)により使用される端末装置20である。また、以下では、端末装置20-1~20-Nについて、特に区別なく説明する場合には、端末装置20と記載する。
【0016】
また、端末装置20は、所定の情報処理を実現する制御情報を決済サーバ10から受け取った場合には、制御情報に従って情報処理を実現する。ここで、制御情報は、例えば、JavaScript(登録商標)等のスクリプト言語やCSS(Cascading Style Sheets)等のスタイルシート言語により記述される。なお、決済サーバ10から配信される所定のアプリケーションそのものを制御情報とみなしてもよい。
【0017】
〔1-1.端末装置20を用いた決済について〕
ここで、決済サーバ10が実行する送金処理に先立ち、端末装置20を用いた決済(電子決済)の一例について説明する。なお、以下の説明では、決済サーバ10から配信されるアプリケーションであって、端末装置20を用いる電子決済用のアプリケーション(以下、単に「決済アプリ」と記載する場合がある)が端末装置20にインストールされているものとする。また、以下の説明では、店舗に配置された2次元コード(QRコード(登録商標))であって、店舗を識別する店舗識別情報を示す2次元コードを用いて、利用者U1が端末装置20-1を用いた決済を行う例について説明するが、実施形態は、これに限定されるものではない。以下に説明する決済の一例は、任意の利用者が任意の端末装置20を用いて、任意の店舗にて決済を行う場合においても適用可能である。また、店舗識別情報は、QRコードのみならず、バーコードや所定のマーク、番号等であってもよい。
【0018】
例えば、利用者U1が店舗にて各種の商品やサービスといった決済対象(取引対象)の利用や購入に伴う決済を行う場合、利用者U1は、端末装置20-1にあらかじめインストールされた決済アプリを起動する。そして、利用者U1は、決済アプリを介して、店舗に設置された店舗識別情報を撮影する。このような場合、端末装置20-1は、決済対象の価格を入力するための画面を表示し、利用者U1或いは店舗の店員から決済金額の入力を受け付ける。そして、端末装置20-1は、利用者U1を識別する利用者識別情報と、店舗識別情報(若しくは、店舗識別情報が示す情報、すなわち、店舗を示す情報(例えば、店舗ID))と、決済金額とを示す決済情報を決済サーバ10へと送信する。
【0019】
このような場合、決済サーバ10は、利用者識別情報が示す利用者U1の口座から、店舗識別情報が示す店舗の口座へと、決済金額が示す額の電子マネーを移行させる。そして、決済サーバ10は、決済が完了した旨の通知を端末装置20-1へと送信する。このような場合、端末装置20-1は、決済が完了した旨の画面や所定の音声を出力することで、電子マネーによる決済が行われた旨を通知する。」
「【0022】
また、端末装置20-1を用いた決済は、利用者U1の口座から店舗の口座へと電子マネーを移行させる処理のみならず、例えば、利用者U1の口座から他の利用者の口座へと電子マネーを移行させる決済(すなわち、利用者間での送金)であってもよい。例えば、送金元の利用者U1が利用する端末装置20-1は、送金先の利用者を識別する利用者識別情報(例えば、送金先の利用者が利用する端末装置に表示される利用者識別情報)を読み取り、利用者U1から送金額の入力を受け付け、読み取った識別情報と、送金額と、利用者U1を識別する利用者識別情報とを示す情報を決済サーバ10へと送信する。このような場合、決済サーバ10は、利用者U1の口座から、送金先の利用者の口座へと、送金額が示す額の電子マネーを移行させ、端末装置20-1或いは送金先の利用者が利用する端末装置に対し、送金が完了した旨の画面や所定の音声を出力させることで、送金が行われた旨を通知してもよい。」
「【図1】
[図:0001436838000001.jpg]
」
イ 上記アから、以下の事項がいえる。
(ア)【0012】、図1より、引用文献1には、「決済サーバ10と通信可能に接続された端末装置20-1」が記載されている。
(イ)【0013】より、引用文献1には、「決済サーバ10は、端末装置20を用いる電子決済に関する電子決済サービスを提供する」ことが記載されている。
【0017】~【0019】より、引用文献1には、「端末装置20を用いた決済(電子決済)」は、「店舗にて」「商品やサービス」「の利用や購入に伴う決済を行う」「利用者U1の口座から店舗の口座へと電子マネーを移行させる」「決済」であることが記載されている。
【0022】より、引用文献1には、「端末装置20-1を用いた決済」は、「利用者U1の口座から他の利用者の口座へと電子マネーを移行させる」「利用者間での送金」であってもよいことが記載されている。
これらの記載を踏まえると、引用文献1には、「端末装置20-1を用いる電子決済に関する電子決済サービスを提供し、端末装置20-1を用いた決済には、店舗にて商品やサービスの利用や購入に伴う決済を行う利用者U1の口座から店舗の口座へと電子マネーを移行させる決済と、利用者U1の口座から他の利用者の口座へと電子マネーを移行させる利用者間での送金がある、決済サーバ10」が記載されている。
(ウ)【0022】より、引用文献1には、「利用者間での送金」において、送金元の利用者U1が利用する「端末装置20-1」は、「送金先の利用者を識別する利用者識別情報を読み取り、読み取った識別情報を決済サーバ10へと送信する」ことが記載されている。
(エ)以上から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「端末装置20-1を用いる電子決済に関する電子決済サービスを提供し、端末装置20-1を用いた決済は、店舗にて商品やサービスの利用や購入に伴う決済を行う利用者U1の口座から店舗の口座へと電子マネーを移行させる決済と、利用者U1の口座から他の利用者の口座へと電子マネーを移行させる利用者間での送金がある、決済サーバ10と通信可能に接続された端末装置20-1であって、
利用者間での送金において、送金先の利用者を識別する利用者識別情報を読み取り、読み取った識別情報を決済サーバ10へと送信する、
端末装置20-1。」
(2)引用文献2、引用文献2記載技術
ア 引用文献2には、図面とともに次の記載がある。
「【0012】
図1に示すように、実施形態に係る決済システム1は、決済サーバ10と、端末装置100と、事業者端末200とを含む。決済サーバ10、端末装置100及び事業者端末200は、ネットワークN(例えば、図4参照)を介して有線または無線により相互に通信可能に接続される。ネットワークNは、例えば、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)である。なお、図1に示した決済システム1には、複数台の決済サーバ10、複数台の端末装置100及び複数台の事業者端末200が含まれていてもよい。
【0013】
図1に示す決済サーバ10は、端末装置100を用いる電子決済に関する電子決済サービスを提供し、各種の決済を行う情報処理装置であり、例えば、サーバ装置やクラウドシステムにより実現される。例えば、決済サーバ10は、取引対象の提供者(事業者)や取引対象が提供される利用者の口座を管理しており、利用者からの決済要求に従って、口座間における電子マネーの移行等を行うことで、各種決済を実現する。なお、電子マネーとは、例えば、各種企業が独自に用いるポイントや通貨等であってもよく、日本円やドル等の国家により提供される貨幣を電子的に取引可能としたものであってもよい。」
「【0021】
〔1-1-2.第1の実施形態の概要について〕
ここで、従来、利用者の取引対象の購入を支援するサービスを提供する技術が知られている。このような技術の一例として、商品に付された光学シンボルを携帯型端末で読み取って商品管理サーバにアクセスし、商品の購入指示を行う決済システムに関する技術が知られている。しかしながら、このような技術では、光学シンボルを撮影する際の周囲の環境や、携帯型端末が有するカメラ部の性能によっては光学シンボルを正確に読み取ることができず、利便性の点で改善の余地がある。
【0022】
そこで、端末装置100は、第1の実施形態に係る決済処理を実行する。以下、図1を用いて、端末装置100が実行する決済処理について説明する。なお、以下の説明では、端末装置100が利用者Uにより利用され、事業者端末200が事業者M1により利用される例を示す。また、以下の説明では、端末装置100を利用者Uと同一視し、事業者端末200を事業者M1及び事業者M1が管理する店舗Aと同一視する場合がある。すなわち、以下では、利用者Uを端末装置100、事業者M1及び店舗Aを事業者端末200と読み替えることもできる。
【0023】
まず、決済サーバ10の管理者は、店舗Aの店舗ID及び決済アプリのアプリIDを送信するNFCタグと、店舗IDを示す店舗識別情報C1とを事業者M1に提供する(ステップSa1)。例えば、決済サーバ10の管理者は、店舗Aの店舗ID及び決済アプリのアプリIDが記録されたNFCタグNT1を、店舗識別情報C1が印刷された印刷物(例えば、印刷用紙)に貼付し、当該印刷物を事業者M1に提供する。
【0024】
続いて、事業者M1は、NFCタグNT1と店舗識別情報C1とを店舗Aに配置する(ステップSa2)。例えば、事業者M1は、決済サーバ10の管理者から提供された印刷物を店舗Aの店頭(例えば、レジカウンター)に配置する。
【0025】
続いて、店舗Aに来店した利用者Uは、NFCタグNT1から、決済アプリのアプリIDと店舗Aの店舗IDとを読み取る(ステップSa3)。図1の例において、店舗Aが提供する取引対象(商品)を購入する利用者Uが、上述した決済アプリを用いた決済手法により店舗Aに対する決済を行うことを希望したものとする。この場合、利用者Uは、店舗Aに配置されたNFCタグNT1にスリープさせた状態の端末装置100を近づけ、NFCを介して、NFCタグNT1から決済アプリのアプリIDと店舗Aの店舗IDとを読み取る。
【0026】
続いて、端末装置100は、決済アプリを起動させる(ステップSa4)。例えば、端末装置100は、NFCタグNT1から決済アプリに関する情報を読み取ったことを示す通知(例えば、プッシュ通知)を、ログイン用の画面上に配置して表示する。そして、端末装置100は、表示した通知に対する利用者Uの選択操作に応じて、決済アプリを起動させる。
【0027】
続いて、端末装置100は、店舗Aに対する決済金額を入力するための入力画面を表示する(ステップSa5)。例えば、端末装置100は、NFCタグNT1から読み取った決済アプリのアプリIDと店舗Aの店舗IDとに基づいて、決済アプリのコンテンツである入力画面を表示する。具体的な例を挙げると、端末装置100は、上述した2次元コード等を用いた決済手法において、決済アプリを介して店舗識別情報C1を撮影した場合に表示する画面を入力画面として表示する。
【0028】
なお、端末装置100は、NFCタグNT1から決済アプリへのディープリンクを読み取った場合、当該ディープリンクの遷移先である入力画面を表示してもよい。
【0029】
続いて、利用者Uは、入力画面に決済金額を入力する(ステップSa6)。例えば、利用者Uは、店舗Aにおいて購入する商品について、事業者M1から提示された価格を入力画面に入力する。
【0030】
続いて、事業者M1は、利用者Uが入力した決済金額を確認する(ステップSa7)。例えば、事業者M1は、利用者Uから提示される端末装置100の入力画面に入力された決済金額と、利用者Uに提供する商品の価格とが一致するか否かを確認する。
【0031】
続いて、端末装置100は、店舗IDと利用者IDと決済金額とを決済サーバ10に通知する(ステップSa8)。例えば、入力画面に入力された決済金額と、利用者Uに提供する商品の価格とが一致すると事業者M1により確認された場合、端末装置100は、利用者Uの操作に応じて、店舗Aの店舗IDと、利用者Uの利用者IDと、入力画面に入力された決済金額とを示す決済情報を決済サーバ10へ通知する。
【0032】
続いて、決済サーバ10は、端末装置100から通知された決済情報に基づいて、決済処理を実行する(ステップSa9)。例えば、決済サーバ10は、利用者IDが示す利用者Uの口座から、店舗IDが示す店舗Aの口座へと、決済金額が示す額の電子マネーを移行させる。
【0033】
以上のように、実施形態に係る端末装置100は、NFCタグから読み取った情報に基づいて決済情報を決済サーバ10に送信する。これにより、実施形態に係る端末装置100は、暗い場所に設置された店舗識別情報が読み取れない場合や、端末装置100が有する撮影部が故障し、店舗識別情報を撮影できない場合であっても、上述したQRコード(登録商標)等を用いた決済手法と同様の画面表示を行い、決済情報を決済サーバ10に送信し、決済処理を実行させることができる。すなわち、実施形態に係る端末装置100は、決済における利用者の利便性を向上させることできる。」
「【図1】
[図:0001436838000002.jpg]
」
イ 上記アから、以下の事項がいえる。
(ア)【0012】、【0013】、【0032】、図1より、引用文献2には、「端末装置100を用いる電子決済に関する電子決済サービスを提供し」、「利用者の口座から店舗の口座へと電子マネーを移行させる」「決済サーバ10」と「通信可能に接続される」「端末装置100」が記載されている。
(イ)【0025】の「利用者Uは、NFCタグNT1から、決済アプリのアプリIDと店舗Aの店舗IDとを読み取る」、【0027】の「端末装置100は、店舗Aに対する決済金額を入力するための入力画面を表示する」、及び、【0028】の「端末装置100は、NFCタグNT1から決済アプリへのディープリンクを読み取った場合、当該ディープリンクの遷移先である入力画面を表示してもよい」との記載より、引用文献2には、「端末装置100」は、「店舗Aの店舗ID」、及び、「店舗Aに対する決済金額を入力するための入力画面」が「遷移先」である「決済アプリへのディープリンク」を、「NFCタグNT1から」「読み取る」ことが記載されている。
(ウ)【0026】より、引用文献2には、「端末装置100」は、「NFCタグNT1から決済アプリに関する情報を読み取ったことを示す通知」を「表示する」ことが記載されている。
(エ)【0026】~【0028】より、引用文献2には、「端末装置100」は、「表示した通知に対する利用者Uの選択操作に応じて」、「店舗Aに対する決済金額を入力するための入力画面を表示する」ことが記載されている。
(オ)以上から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「端末装置100を用いる電子決済に関する電子決済サービスを提供し、利用者の口座から店舗の口座へと電子マネーを移行させる決済サーバ10と通信可能に接続される端末装置100であって、
店舗Aの店舗ID、及び、店舗Aに対する決済金額を入力するための入力画面が遷移先である決済アプリへのディープリンクを、NFCタグNT1から読み取り、
NFCタグNT1から決済アプリに関する情報を読み取ったことを示す通知を表示し、
表示した通知に対する利用者Uの選択操作に応じて、店舗Aに対する決済金額を入力するための入力画面を表示する、
端末装置100。」
4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「決済サーバ10」及び「端末装置20-1」は、それぞれ、本願発明の「電子決済サーバ」及び「情報処理装置」に相当する。
(2)引用発明の「決済サーバ10」が「提供」する「店舗にて商品やサービスの利用や購入に伴う決済を行う利用者U1の口座から店舗の口座へと電子マネーを移行させる決済」に関する「サービス」は、本願発明の「店舗での商品の購入の対価または店舗で提供されるサービスの対価の決済を行うユーザーが有する電子口座から前記店舗が有する電子口座へ電子マネーを移行する決済サービス」に相当する。
(3)引用発明の「決済サーバ10」が「提供」する「利用者U1の口座から他の利用者の口座へと電子マネーを移行させる利用者間での送金」に関する「サービス」において、「利用者U1」及び「他の利用者」は、それぞれ、本願発明の「送金元のユーザー」及び「送金先のユーザー」に相当する。また、「利用者U1の口座」の「電子マネー」は、上記(2)の「決済」に関する「サービス」においても使用されることは明らかである。
したがって、引用発明の「決済サーバ10」が「提供」する「利用者U1の口座から他の利用者の口座へと電子マネーを移行させる利用者間での送金」に関する「サービス」は、本願発明の「前記決済サービスで使用される前記電子マネーを送金元のユーザーの有する電子口座から送金先のユーザーの有する電子口座へ移行する送金サービス」に相当する。
(4)上記(1)~(3)を踏まえると、引用発明と本願発明とは、「店舗での商品の購入の対価または店舗で提供されるサービスの対価の決済を行うユーザーが有する電子口座から前記店舗が有する電子口座へ電子マネーを移行する決済サービスと、前記決済サービスで使用される前記電子マネーを送金元のユーザーの有する電子口座から送金先のユーザーの有する電子口座へ移行する送金サービスと、を提供する電子決済サーバと通信可能に接続された情報処理装置」である点で一致する。
(5)引用発明の「送金先の利用者を識別する利用者識別情報」は、上記(2)の「利用者間での送金」に関する「サービス」において「決済サーバ10」へ送信されるから、本願発明の「前記送金サービスにおいて前記電子決済サーバが前記送金先のユーザーを識別するための識別情報」に相当する。また、引用発明の「端末装置20-1」は、当該「利用者識別情報」を読み取ることから、当該「利用者識別情報」を取得する手段を備えることは明らかであり、本願発明の「取得部」といえる。
したがって、引用発明の「利用者間での送金において、送金先の利用者を識別する利用者識別情報を読み取り、読み取った識別情報を決済サーバ10へと送信する」と本願発明の「前記送金サービスにおいて前記電子決済サーバが前記送金先のユーザーを識別するための識別情報、および、前記送金サービスにおいて送金元のユーザーの有する電子口座から前記送金先のユーザーの有する電子口座へ前記電子マネーを移送するための画面に遷移させるための遷移情報を、NFC(Near Field Communication)により取得する取得部」とは、「前記送金サービスにおいて前記電子決済サーバが前記送金先のユーザーを識別するための識別情報を取得する取得部」との点で共通する。
(6)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「店舗での商品の購入の対価または店舗で提供されるサービスの対価の決済を行うユーザーが有する電子口座から前記店舗が有する電子口座へ電子マネーを移行する決済サービスと、前記決済サービスで使用される前記電子マネーを送金元のユーザーの有する電子口座から送金先のユーザーの有する電子口座へ移行する送金サービスと、を提供する電子決済サーバと通信可能に接続された情報処理装置であって、
前記送金サービスにおいて前記電子決済サーバが前記送金先のユーザーを識別するための識別情報を取得する取得部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」
(相違点)
(相違点1)
「取得部」が取得する情報に関し、本願発明では「前記送金サービスにおいて前記電子決済サーバが前記送金先のユーザーを識別するための識別情報、および、前記送金サービスにおいて送金元のユーザーの有する電子口座から前記送金先のユーザーの有する電子口座へ前記電子マネーを移送するための画面に遷移させるための遷移情報」であるのに対し、引用発明では「利用者間での送金」における「送金先の利用者を識別する利用者識別情報」は特定されているものの、「前記送金サービスにおいて送金元のユーザーの有する電子口座から前記送金先のユーザーの有する電子口座へ前記電子マネーを移送するための画面に遷移させるための遷移情報」は特定されていない点。
(相違点2)
「取得部」に関して、本願発明が「NFC(Near Field Communication)により」取得するのに対し、引用発明にはそのように特定されていない点。
(相違点3)
本願発明が「前記取得部で前記識別情報および前記遷移情報を取得したことに基づいて、表示部に所定の通知を表示させ、前記所定の通知に対する操作を受け付けたことに応じて、前記画面を前記表示部に表示させる表示制御部」を備えるのに対し、引用発明にはそのように特定されていない点。
5 判断
(1)相違点1~3について
相違点1~3は、相互に関連しているから、まとめて検討する
上記3(2)イ(オ)のとおり、引用文献2記載技術の「端末装置」は、「決済サーバ10」が「利用者の口座から店舗の口座へと電子マネーを移行させる」にあたり、「店舗Aの店舗ID、及び、店舗Aに対する決済金額を入力するための入力画面が遷移先である決済アプリへのディープリンクを、NFCタグNT1から読み取り、NFCタグNT1から決済アプリに関する情報を読み取ったことを示す通知を表示し、表示した通知に対する利用者Uの選択操作に応じて、店舗Aに対する決済金額を入力するための入力画面を表示する」ものである。
引用文献2記載技術は、引用発明の「利用者間での送金」とは、電子マネーの移行先の口座の所有者が店舗か利用者(人)かで異なるものの、利用者の口座から他の所有者の口座に電子マネーを移行する点では同様であり、端末装置において、電子マネーの移行先の口座の所有者の識別情報、及び、移行する金額を入力するための入力画面が遷移先である決済アプリへのディープリンクを、NFCタグから読み取り、NFCタグから決済アプリに関する情報を読み取ったことを示す通知を表示し、表示した通知に対する利用者の選択操作に応じて、移行する金額を入力するための入力画面を表示することが特定されている。
してみると、引用発明の「利用者間での送金」において引用文献2記載技術を適用し、「利用者間での送金において送金先の利用者を識別する利用者識別情報」とともに「送金元のユーザーの有する電子口座から前記送金先のユーザーの有する電子口座へ前記電子マネーを移送するための画面に遷移させるための遷移情報」を「NFC」により取得し、「利用者識別情報」及び「遷移情報」を取得したことに基づいて、「表示部に所定の通知を表示させ、前記所定の通知に対する操作を受け付けたことに応じて、前記画面を前記表示部に表示する」構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(2)作用効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(3)請求人の主張について
請求人は、意見書において、「商品の購入またはサービスの利用を伴う決済サービスと、これらを伴わない送金サービスとを両方とも実施するサーバと通信可能に接続される端末装置において、送金サービスにおいて「送金先のユーザーを識別するための識別情報および送金サービスにおいて送金元のユーザーが有する電子口座から送金先のユーザーが有する電子口座へ電子マネーを移送するための画面に遷移させるための遷移情報を、NFCにより取得し、識別情報および遷移情報を取得したことに基づいて、表示部に所定の通知を表示させ、所定の通知に対する操作を受け付けたことに応じて、画面を表示部に表示させる」することは、仮に引用文献1と引用文献2とを組み合わせたとしても、容易想到ではありません。」と、また、「本願発明は、「ユーザーの送金操作の負担を軽減することができる」とあるように、NFCを用いることで、送金サービスを利用する際の電子決済アプリを用いた送金先のユーザーによるユーザー識別情報の提示操作、および送金元のユーザーによる送金先のユーザーの指定操作なしに、送金額の入力画面へ容易に遷移することができる(段落0105参照)という顕著な作用効果が得られるものです。」と主張する。
しかしながら、請求人の主張する上記構成は、上記(1)のとおり、引用発明及び引用文献2記載技術から当業者が容易に想到することができたものである。
また、請求人の主張する上記作用効果は、上記(2)のとおり、引用発明及び引用文献2記載技術(特に、NFCを用いること)の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
なお、審判請求書及び上申書における請求人の主張は、本件補正後の特許請求の範囲の記載を前提としたものであり、採用できない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-019744