特許拒絶査定不服審判
2017-010708
眼底撮影装置
- 審判番号
- 2017-010708
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-244956外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月18日
- 審決日
- 2018年07月20日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ニデック
- 分類
- P18 .121-WY (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-244956「眼底撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-110825、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月7日(優先権主張 平成24年11月6日)の出願であって、平成28年9月1日付けで拒絶理由が通知され、同年11月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年4月11日付けで拒絶査定されたところ、同年7月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
<理由1> 請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献2-6に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開平6-261862号公報
2.特開2010-259543号公報
3.特開平1-302474号公報
4.特開平3-81879号公報
5.特開2000-131640号公報
6.特開2011-191454号公報
(なお、引用文献1は、平成28年9月1日付けの拒絶理由で引用されたが、原査定では引用されていない。)
第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成29年7月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。(下線は、当該補正により変更された箇所を示す。)
「 【請求項1】
光源から出射された光によって被検眼の眼底上の局所領域を走査するための光スキャナと、前記局所領域における各走査位置に関して前記眼底からの光を検出するための検出器と、を有し、前記局所領域を撮像するための眼底撮像光学系と、
前記眼底撮像光学系の光路中に配置され前記光源からの光を偏向する光偏向手段を有し、前記眼底撮像光学系によって撮像される前記局所領域の位置を、前記局所領域の画角よりも広い範囲で前記光偏向手段を駆動制御することにより、上下左右に変更する撮像位置変更手段と、
前記撮像位置変更手段によって設定される前記局所領域を撮影範囲とする眼底画像を、前記検出器からの受光信号を処理して取得する画像処理手段と、を備え、
前記画像処理手段は、前記撮像位置変更手段によって設定された前記局所領域の位置情報を取得し、前記眼底画像の歪みであって前記局所領域の位置毎に異なる歪みを、前記撮像位置変更手段によって設定された前記局所領域の位置情報に基づいて補正することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、
前記眼底画像の歪みを補正する際、
前記眼底画像における各画素の座標を変位させることにより前記眼底画像の歪みを補正する画像処理手段であって、
前記各画素の座標の変位量は、 前記眼底撮像光学系に配置された少なくとも1つの光学部材による歪が生じていないと仮定した場合の前記眼底画像の座標位置と、実際に取得された前記眼底画像の座標位置との変位量に基づいて、前記撮像位置変更手段によって設定される前記局所領域における前記光スキャナの各走査位置に関してそれぞれ設定されている請求項1の眼底撮影装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、
前記眼底撮像光学系の光軸から、前記撮像位置変更手段によって設定される前記局所領域までの距離に応じて、前記眼底画像の歪みを補正する請求項1又は2の眼底撮影装置。」
第4 引用文献・引用発明等
1 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2010-259543号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。以下同じ。)
(引2a)「 【0008】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の眼底撮影装置の光学系を示した模式図である。本実施形態の眼底撮影装置は、大別して、被検眼Eの眼底を高解像度(高分解能)・高倍率で撮影するための第1撮影ユニット100、第1撮影ユニット100で得られる眼底画像(以下、第1眼底画像と記す)の撮影位置を指定するための眼底の観察画像(以下、第2眼底画像と記す)を得るための第2撮影ユニット200、撮影される被検眼Eの固視微動等による位置ずれの経時変化を検出し、移動位置情報を得るトラッキング用ユニット(位置検出部)300、を備える。ここで、第1撮影ユニット100は、被検眼の低次収差及び高次収差を取り除くための波面補償部を備える。また、第1撮影ユニット100の画角は、眼底を拡大して観察するために第2撮影ユニット200に対して狭く(狭画角)、第2撮影ユニット200の画角は、第1眼底画像の眼底上での位置を把握できるようにするために眼底を広範囲に観察できる画角(広画角)とされる。
【0009】
第1撮影ユニット100は、被検眼Eに照明光(照明光束)を照射し眼底を2次元的に照明する第1照明光学系と、眼底に照射された照明光の反射光(反射光束)を受光して第1眼底画像を得るための第1撮影光学系と、被検眼Eの波面収差を検出し、被検眼Eの波面収差を補償するための波面補償部と、を備える。第1撮影ユニット100は、共焦点光学系を用いた走査型レーザ検眼鏡の構成とされる。
【0010】
第1照明光学系は、眼底を照明するための照明光を出射する光源1(第1光源)、照明光(スポット光)を眼底上で2次元的に走査する走査部20を有する。光源1は、被検眼に視認されにくい近赤外域の照明光を出射する。本実施形態では光源1は、波長840nmのSLD(Super Luminescent Diode)光源が用いられる。SLDを光源とすることで、レーザ光を光源とする場合と比べて眼底での反射光のスペックルノイズを低減できる。なお、光源としては、収束性の高い特性を持つスポット光を出射するものであればよく、例えば、半導体レーザ等であってもよい。
【0011】
はじめに、第1照明光学系を説明する。光源1から眼底に到るまでの光路には、レンズ2、ビームスプリッタ3、偏光板4、レンズ5、ビームスプリッタ71、レンズ6、波面補償デバイス72、レンズ7、ビームスプリッタ75が配置される。そしてさらに、レンズ8、照明光を眼底上で2次元的に走査するための走査部20、レンズ9、2次元状に走査される照明光の走査位置を補正するための偏向部400、2枚のプリズムからなる視度補正部10、レンズ11、第2撮影ユニット200等の光路を第1照明光学系と略同軸にするビームスプリッタ90が配置される。なお、ビームスプリッタ3は、本実施形態では、ハーフミラーとされている。
【0012】
光源1から出射された照明光は、レンズ2により平行光とされた後、ビームスプリッタ3を介し、本実施形態では偏光板4によりS偏光成分のみの光束とされる。偏光板4を経た照明光は、レンズ5により一旦集光し、ビームスプリッタ71を介してレンズ6により平行光束とされ、波面補償デバイス72に入射する。波面補償デバイス72にて反射した照明光は、レンズ7、レンズ8によりリレーされ、走査部20に向かう。
【0013】
走査部20は、照明光を眼底上で2次元的に走査する構成とされ、ここでは、図示するように、眼底でXY方向に照明光を走査する。本実施形態では、照明光を眼底にて水平方向(Y方向)に偏向させ走査するための偏向部材となるレゾナントミラーと、水平方向の走査方向に対して垂直方向(X方向)に偏向させ走査するための偏向部材となるガルバノミラーと、各ミラーを駆動する駆動部を備える。走査部20を経た照明光は、レンズ9にて再び集光される。偏向部400は、走査部20を経た照明光を水平方向及び垂直方向に対して所定量だけさらに偏向させる役目を持ち、本実施形態では2枚のガルバノミラーにより構成されている。偏向部400を経た照明光は、視度補正部10、レンズ11、ビームスプリッタ90を経て被検眼Eの眼底に集光し、走査部20によって眼底上を2次元的に走査することとなる。なお、視度補正部10は一方のプリズムが図示する矢印方向に移動することにより、光路長を変えることができ、視度補正の役目を果たしている。、また、ビームスプリッタ90は、本実施形態ではダイクロイックミラーであり、後述する第2撮影ユニット200、及びトラッキング用ユニット300からの光束を反射させ、光源1及び後述する光源76からの光束を透過させる特性を持つ。なお、光源1及び光源76の出射端と被検眼Eとは共役とされている。このようにして、照明光を眼底に2次元的に照射する第1照明光学系が形成される。
【0014】
次に、第1撮影光学系を説明する。第1撮影光学系は、第1照明光学系にて説明したビームスプリッタ90からビームスプリッタ3までの光路を共通とし、さらにレンズ51、眼底と共役な位置に置かれるピンホール板52、集光レンズ53、受光素子54を含む。なお、本実施形態では、受光素子54はAPD(アバランシェフォトダイオード)が用いられている。
【0015】
光源1から出射された照明光における眼底からの反射光は、前述した第1照明光学系を逆に辿り、偏光板4にてS偏光の光だけ透過された後、ビームスプリッタ3により一部の光束が反射される。この反射光は、レンズ51を介してピンホール板52のピンホールに焦点を結ぶ。ピンホールにて焦点を結んだ反射光は、レンズ53を経て受光素子54に受光される。なお、照明光の一部は角膜上で反射されるが、ピンホール板52により大部分が除去され、角膜反射の画像への悪影響が低減される。このため、受光素子54は、角膜反射の影響を抑えて、眼底からの反射光を受光できる。なお、ビームスプリッタ3は、ホールミラーとされてもよい。この場合、ホールミラーのホールは、角膜反射光を第1撮影光学系に入射することを抑制する。
【0016】
このようにして、第1撮影光学系が形成される。第1撮影光学系で受光された処理された画像が第1眼底画像となる。なお、第1撮影ユニット100で取得する眼底画像(眼底像)の画角が所定の角度となるように走査部20におけるミラーの振れ角(揺動角度)を定める。ここでは、眼底の所定の範囲を高倍率で観察、撮影する(ここでは、細胞レベルでの観察等をする)ために、画角を1度~5度程度とする。本実施形態では、1.5度とする。被検眼の視度等にもよるが、第1眼底画像の撮影範囲は、500μm角程度とされる。
【0017】
次に、波面補償部(補償光学系)を説明する。前述のように、波面補償部は、一部の光学素子を第1照明光学系の光路上に持ち、第1照明光学系と光路を一部共用している。波面補償部は、波面センサ73、偏光板74、光源76、レンズ77、偏光板78、レンズ79、を含み、第1照明光学系の光路上に置かれるビームスプリッタ71からビームスプリッタ90までの光学部材を共用することにより構成されている。なお、波面センサ73は、多数のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイを透過した光束を受光させるための2次元受光素子からなる。また、収差検出用光源(第3光源)である光源76は、光源1と異なる赤外域の光を発する光源とされる。本実施形態では光源76は波長780nmのレーザ光を出射するレーザダイオードを用いている。光源76から出射したレーザ光は、レンズ77により平行光束とされ、偏光板78により光源1からの照明光と直交する偏光方向(P偏光)とされ、ビームスプリッタ75により第1照明光学系の光路に導かれる。なお、レンズ7、8の間に眼底共役位置があり、光源76の出射端はこの眼底共役位置と共役な関係とされる。なお、ビームスプリッタ75は、本実施形態ではハーフミラーとされている。偏光板78は、眼底へと照射される第3光源の光を所定の偏光方向とする役割を持ち、波面補償部が備える第1偏光手段の役割を持つ。
【0018】
ビームスプリッタ75により反射したレーザ光は、第1照明光学系の光路を経て被検眼Eの眼底に集光される。底で反射されたレーザ光は、第1照射光学系の各光学部材を経て波面補償デバイス72にて反射し、ビームスプリッタ71により第1照明光学系の光路から外れ、レンズ79、S偏光成分のみを通す偏光板74を経て波面センサ73へと導かれる。偏光板74は、波面補償部に備えられた第2偏光手段であり、眼底へと照射される第3光源の光が持つ偏光方向(P偏光光)を遮断し、この偏光方向に直交する偏光方向(S偏光光)を透過し、波面センサ73へと導光する役割を持つ。なお、ビームスプリッタ71は、光源1の波長の光(840nm)を透過し、収差検出用の光源76の波長の光(780nm)を反射する特性とされる。従って、波面センサ73では、照射したレーザ光の眼底での散乱光のうちS偏光成分を持つ光が検出される。このようにして、角膜や光学素子で反射される光が波面センサ72に検出されることを抑制している。また、走査部20、波面補償デバイス72の反射面、及び波面センサ73のマイクロレンズアレイは、被検眼の瞳と略共役とされる。また、波面センサ73の受光面は被検眼Eの眼底と略共役とされる。波面センサ73には、低次収差及び波面収差等の高次収差が検出できる素子、例えば、ハルトマンシャック検出器や光強度の変化を検出する波面曲率センサ等を用いる。
【0019】
また、波面補償デバイス72は、例えば、液晶空間位相変調器とし、反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を用いるものとしている。なお、波面補償デバイス72は、光源1からの照明光(S偏光光)、照明光の眼底での反射光(S偏光光)、波面収差検出用光の反射光(S偏光成分)等の所定の直線偏光(S偏光)に対して収差を補償することが可能な向きに配置される。これにより、波面補償デバイス72は、入射する光のS偏光成分を変調できる。また、波面補償デバイス72は、その液晶層内の液晶分子の配列方向が入射する反射光の偏光面と略平行であり、さらに、液晶分子が液晶層への印加電圧の変化に応じて回転する所定の面が、波面補償デバイス72に対する眼底からの反射光の入射光軸及び反射光軸と、波面補償デバイス72が持つミラー層の法線と、を含む平面に対して略平行になるように、配置されている。
【0020】
このような波面補償部(補償光学系)によって、波面センサ73で検出した光源76の眼底反射光の波面収差に基づいて、波面補償デバイス72が制御され、光源76の反射光のS偏光成分と共に、光源1から出射される照明光とその反射光の波面収差が取り除かれる。このようにして、光源1から出射された照明光とその反射光が持つ収差が取り除かれる。言い換えると、被検眼Eの波面収差が取り除かれた(波面補償された)高解像度の第1眼底画像が得られることとなる。このような第1眼底画像は、狭画角(1.5度程度)でありながら、1画像を構築するのに必要とする画素数を従来の広画角(例えば40度程度)の眼底画像と同程度となるように照明光の走査を行い、さらに波面補償を行っているため、細胞レベルまで観察することのできる高解像度・高倍率な眼底画像となっている。
【0021】
なお、第1撮影ユニット100で取得された眼底画像は、第1眼底画像として記憶部に記憶される。
【0022】
次に、第2撮影ユニット200を説明する。第2撮影ユニットは、第1撮影ユニットの画角よりも広画角の眼底画像(第2眼底画像)を取得するためのユニットであり、取得される第2眼底画像は、前述した狭画角の第1眼底画像を得るための位置指定、及び位置確認用の画像として用いられる。このような第2眼底画像を取得するための第2撮影ユニット200は、被検眼Eの眼底画像を観察用として広画角(例えば20度~60度程度)でリアルタイムに取得できればよい。したがって第2撮影ユニット200は、既存の眼底カメラの観察・撮影光学系や走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)の光学系、及び制御系を用いることができる。以下では、説明の簡便のため、光学系等をブロックとして図示する。
【0023】
第2撮影ユニット200は、眼底を照明する照明光を出射する第2光源210、照明光束を眼底において2次元的に走査するための走査部220等を有し、眼底を2次元的に照明する第2照明光学系230と、第2照明光学系230により照明された眼底からの反射光を受光する受光素子251を有し眼底画像を撮影する第2撮影光学系250を備える。
【0024】
第2撮影ユニット200の光軸は、走査部20と被検眼の間に配置されたビームスプリッタ90により、第1撮影ユニット100の光軸と略同軸とされる。本実施形態では、第2撮影ユニット200の光軸は、第1撮影ユニット100の光軸と被検者眼の手前で同軸とされる。この角度は、第2撮影ユニット200に入射する角膜反射を低減するように定められる。ビームスプリッタ90は、光源1及び光源76の波長の光を透過し、第2光源210及び後述するトラッキング用ユニット300の光源の波長の光を反射する特性とされる。また、ビームスプリッタ90と第2撮影ユニット200との間の光路には、第2撮影ユニット200の光軸と後述するトラッキング用ユニット300の光軸とを同軸にするためのビームスプリッタ91、及び偏向部400と同機能を有する偏向部410が配置されている。
【0025】
第2光源210は、赤外域の光とされ、例えば、波長が910nmのレーザ光を出射するレーザダイオードとされる。走査部220は、前述と同様にX方向、Y方向にレーザ光を偏向(反射)するミラーを備える。第2撮影ユニット200で得られる眼底画像の画角が第1撮影ユニット100の画角よりも大きくなるように走査部220のミラーの振れ角を定める。本実施形態では、第2眼底画像は、眼底の特徴部を取得するために、眼底の広い範囲、特に黄斑部と乳頭を同時に撮影できる程度の画角を持つ構成とされ、画角は、20~60度程度とされる。本実施形態では、画角35度とされる。
【0026】
第2光源から出射されたレーザ光は、第2照明光学系230を経て、第2撮影ユニット200から出射され、ビームスプリッタ91、偏向部410を通過し、ビームスプリッタ90にて反射することにより、被検眼Eの眼底に集光する。被検眼Eの眼底に集光したレーザ光は、走査部220の駆動により眼底を広い範囲で2次元的に走査される。眼底からの反射光は第2撮影光学系250の受光素子251に受光され、広画角の眼底画像(第2眼底画像)が得られる。
【0027】
なお、本実施形態では第2照明光学系230の走査部220を用いて眼底を2次元的に走査し照明するものとしているが、これに限るものではなく。ライン状に形成されるスリット光をラインと直交する方向に走査する構成としてもよいし、ホールミラー等を用いた既存の眼底カメラの照明光学系を用いることもできる。
【0028】
このようにして、第2撮影ユニット200が形成される。第2撮影ユニット200で撮影された眼底画像は、第2眼底画像として記憶部に記憶される。」
(引2b)「 【0030】
次に、眼底撮影装置の制御系を説明する。図2は、本実施形態の眼底撮影装置の制御系を示したブロック図である。装置全体の制御を行う制御部80には、光源1、走査部20、受光素子51、波面補償デバイス72、波面センサ73、光源76、光源210、走査部220、受光素子251、トラッキング用ユニット300、偏向部400、偏向部410、視度補正部10が接続される。また、記憶部81、コントロール部82、画像処理部83、モニタ85、が接続される。画像処理部83は受光素子51、251にて受光した信号に基づきモニタ85に画角の異なる被検眼眼底の画像、つまり、第1眼底画像及び第2眼底画像を形成する表示制御を行う。記憶部81には種々の設定情報や撮影画像が保存される。モニタ85には、所定のフレームレートにて更新される眼底画像(第1眼底画像、及び第2眼底画像)が表示される。フレームレートとしては、例えば、10~100Hzとされる。このようにして、動画として眼底画像が表示される。本実施形態では、制御部80は、モニタ85表示制御部、偏向部400、410の駆動制御部、光源1、76等の出射制御部の機能を兼ねる。
【0031】
また、本実施形態では、制御部80は、波面センサ73からの信号に基づいて、第1光源1から照明光を出射する制御を行う。具体的には、光源76の眼底反射光を、波面センサ73で受光し、受光結果を制御部80に送る。制御部80は眼底反射光の波面収差に基づいてされ波面補償デバイス72を駆動し、収差を取り除くように制御する。制御部80は、眼底反射光の波面収差が取り除かれた結果(補償結果)に基づいて光源1から照明光を出射するように制御を行う。なお、波面収差を補償した結果の判断には、所定の閾値を設けておく。これにより、波面補償を受ける前から被検眼Eに対して光源1の照明光を照射することがないため、観察、撮影に適さない状態の第1眼底画像が生成されることがない。このため、無駄となる光源1の照明光の出射を抑制でき、被検眼Eが無用な照明光に曝されることがない。また、光源1で消費される電力を抑えることができる。
【0032】
なお、無駄な光を被検眼に入射させないために、さらに第2撮影ユニット200で撮影された第2眼底画像のアライメント状態が適切でない間は、制御部80が第1光源1及び光源76から照明光を出射させない制御を行ってもよい。例えば、第2眼底画像のフォーカス状態(眼底に対するZ方向のアライメント)を用いて、制御部80がアライメント状態を判定する構成とする。また、制御部80が、第2眼底画像のアライメント状態に基づいてトラッキング用ユニット300の光源310から照明光を出射させる構成としてもよい。なお、本実施形態では、第2撮影ユニット200にて被検眼の前眼部を撮影し、モニタ85に表示することにより、装置のアライメントを行う構成とする。
【0033】
以上のような構成の眼底撮影装置において、その動作について説明する。図3は、モニタ85の表示を説明する模式図である。検者は図示なき固視灯を用いて被検眼Eを固視させ、被検眼Eに対して図示なきジョイスティック等を用いて装置をアライメントする。このとき、コントロール部82の操作により視度補正部10を駆動し、被検眼Eの視度補正を行う。アライメントでは、第2撮影ユニット200による第2眼底画像520がモニタ85の所定領域に表示されており、検者はモニタ85の観察画面枠に表示される観察画像(第2眼底画像520)を見ながら、アライメントを完了させる。アライメント完了後、検者はコントロール部82を用いてトラッキング用ユニット300を動作させる指令信号の入力を行う。制御部80は、この指令信号を受けてトラッキング用ユニット300からレーザ光を出射させ、被検眼Eの眼底上にトラッキング指標を形成させる。またこのとき制御部80は、眼底のトラッキング指標の形成位置に対応する第2眼底画像520上(観察画面枠内)の位置にトラッキング指標と同形状のレチクル600を表示させる。検者は第2眼底画像520上に形成されたレチクル600を見ながら、装置や固視灯を適宜動かし、観察画面枠に写っている被検眼Eの乳頭がレチクル600に重なるように位置調整を行う。
【0034】
観察画面枠に表示されているレチクル600と第2眼底画像520の乳頭とが重なった状態で、検者はコントロール部82を用いてトラッキング開始の指令信号を制御部80に送る。制御部80はトラッキング開始の指令信号を受けて、トラッキング用ユニット300、偏向部400,410を駆動させて被検眼Eのトラッキングを開始する。
【0035】
図4及び図5は、本実施形態におけるトラッキングの方法を示した模式図である。図4(a)は、第2眼底画像520に表示されている乳頭にレチクル600が重なった状態を説明するための模式図であり、眼底の乳頭にトラッキング指標Tが重なった状態を示している。同様に、図5(a)は、眼底の乳頭からトラッキング指標Tが外れた状態を示している。また、図4(b)、図5(b)では、それぞれの状態でのトラッキング指標Tの輝度分布を模式的に示した図である。
【0036】
トラッキングを開始してから被検眼Eが動いていない状態を示す。また、被検眼Eが固視微動等により動いてしまうと、図5(a)に示すように乳頭とトラッキング指標Tとがずれることとなる。乳頭に完全に重なった状態でのトラッキング指標Tの反射光は、全体的に輝度が高い状態(図4(b)参照)でトラッキング用ユニット300の受光素子に受光される。一方、図5(a)に示すようにトラッキング指標Tの一部の領域が乳頭から外れていると、図5(b)に示すように外れた一部の領域の輝度は低くなる。
【0037】
トラッキング用ユニット300では、トラッキング開始時に得られた受光結果を基準情報として制御部80に送っておき、その後、1走査毎(走査によるリング形成毎)に得られる受光結果(受光情報)を逐次、制御部80に送信する。制御部80は基準情報に対してその後に得られた受光情報を比較し、基準情報と同じ受光情報が得られるように、言い換えればトラッキング指標全体を乳頭に重ねるための移動位置情報を演算により求める。制御部80は求めた移動位置情報に基づいて偏向部410を駆動させる。また、偏向部400も制御部80により偏向部410と同期して駆動される。
【0038】
このようなトラッキングを行うことにより、被検眼Eが微動してもその動きが相殺されるように偏向部400,410の駆動が行われるため、モニタ85に表示される眼底画像の動きは抑制されることとなる。
【0039】
トラッキングが開始された後、制御部80は、光源76、走査部20、波面補償デバイス72、波面センサ73を駆動し、被検眼の波面収差を補正する。
【0040】
制御部80は、波面センサ73にて得られる光学的な分布(受光信号)から得られる結果に基づいて補償光学系を動的に制御する。本実施形態では、波面補償デバイス72が持つ液晶パネル(液晶層)を用い、眼底からの反射光の回折像の拡がり具合が最小となるように、液晶パネルの液晶分子を電圧制御により配列方向を変え、位相分布を制御する。
【0041】
そして、波面収差の補正が終わると第1眼底画像の撮影が開始される。制御部80は、波面センサ73からの信号(受光結果)に基づいて、光源1、受光素子51を駆動する。光源1から出射された照明光は、偏光板4でS偏光とされ、波面補償デバイス72で変調を受ける。そして、走査部20により2次元的に走査され、被検眼に照射された照明光は眼底に集光される。
【0042】
眼底に集光した照明光の反射光は、走査部20を介して逆に光路を辿り、波面補償デバイス72の変調を受け、偏光板4を透過した後、ビームスプリッタ3で反射(偏向)され撮影光学系50へと導かれる。反射光は、レンズ52にてピンホール板53のピンホールに集光され、レンズ53にて受光素子51に入射される。受光素子51の受光結果に基づいて画像処理部83がモニタ85に第2眼底画像520と第1眼底画像530とを並べて表示する。
【0043】
図6は第1眼底画像530と第2眼底画像520とがモニタ85の各観察画面枠に表示された状態を示す図である。第2眼底画像520は眼底の広い範囲を表示する観察画像であるのに対して、第1眼底画像530は狭い画角であり、細胞レベルの観察が行える高倍率な眼底画像が動画表示される。なお、初期状態では第1眼底画像530は、第1撮影ユニットの光軸(主光軸)を中心として所定画角(ここでは1.5度)の範囲を撮影したものとなっている(図6(a)参照)。このとき、第2眼底画像520上(観察画像枠内)には、第1眼底画像530の撮影箇所に対応する位置にマーク610が形成され、第1眼底画像530が第2眼底画像520上のどの位置における拡大画像であるかが判るようになっている。
【0044】
また、第2眼底画像520における異なる領域(撮影箇所)を観察したい場合には、コントロール部82を操作して、第2眼底画像520を表示するマーク610を適宜移動させる。なお、マウス等の入力手段により操作するカーソルをモニタ85に表示させ、指定手段となるカーソルにてマーク510を適宜移動させる構成としてもよい。制御部80は第2眼底画像520上に形成されているマーク610の移動位置に対応する走査部20の走査条件を求める。制御部80は求めた走査条件に基づいて走査部20を駆動制御し、図6(b)に示すような移動後のマーク610に対応する第1眼底画像530aをモニタ85に表示させる。
【0045】
このようにして、解像度の高い眼底画像(第1眼底画像)を得つつ、画角の広い眼底画像を用いることで、解像度の高い眼底画像の撮影位置の把握がしやすくなる。」
ここで、当審において、段落【0030】及び段落【0042】における「受光素子51」が「受光素子54」の誤記であることは、引用文献2の段落【0015】及び【図1】等の記載等から明らかである。
(引2c)引用文献2の【図1】には、次の図が記載されている。
(引2d)引用文献2の【図6】には、次の図が記載されている。
段落【0043】-【0044】を参照して、図6を見ると、マーク610は、第1眼底画像530の画角より広い範囲で第2眼底画像520上を上下左右に移動可能であること、が把握できる。
これらの記載を総合すると、上記引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 被検眼Eの眼底を高解像度(高分解能)・高倍率で撮影するための第1撮影ユニット100、第1撮影ユニット100で得られる眼底画像の撮影位置を指定するための眼底の観察画像を得るための第2撮影ユニット200を備える眼底撮影装置であって、
第1撮影ユニット100は、被検眼Eに照明光(照明光束)を照射し眼底を2次元的に照明する第1照明光学系と、眼底に照射された照明光の反射光(反射光束)を受光して第1眼底画像を得るための第1撮影光学系と、を備え、
第1照明光学系は、眼底を照明するための照明光を出射する光源1と、照明光を眼底上で2次元的に走査するための走査部20とを有し、
第1照明光学系の光源1から眼底に到るまでの光路には、前記走査部20と、2次元状に走査される照明光の走査位置を補正するための偏向部400と、レンズ11とが配置され、
第1撮影光学系は、受光素子54を含み、
第1撮影光学系で受光されて処理された画像が第1眼底画像530となり、
第2撮影ユニット200は、第1撮影ユニットの画角よりも広画角の眼底画像(第2眼底画像)を取得するためのユニットであり、取得される第2眼底画像は、狭画角の第1眼底画像を得るための位置指定、及び位置確認用の画像として用いられ、
第2眼底画像520における異なる領域(撮影箇所)を観察したい場合には、コントロール部82を操作して、第2眼底画像520上に表示するマーク610を移動させ、制御部80は第2眼底画像520上に形成されているマーク610の移動位置に対応する走査部20の走査条件を求め、制御部80は求めた走査条件に基づいて走査部20を駆動制御し、移動後のマーク610に対応する第1眼底画像530aをモニタ85に表示させ、
マーク610は、第1眼底画像の画角より広い範囲で第2眼底画像520上を上下左右に移動可能であり、
画像処理部83は受光素子54にて受光した信号に基づき第1眼底画像を形成する表示制御を行い、
第1眼底画像530は狭い画角であり、細胞レベルの観察が行える高倍率な眼底画像である、
眼底撮影装置。」
2 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平1-302474号公報)には、眼底カメラ1によって撮影された眼底画像の画像信号がデータ処理部3に入力され、データ処理部3では眼底カメラ1に固有のデータメモリ4に記憶している歪曲収差データに基づいて画像歪の補正がなされテレビモニタ6に歪曲収差が補正された眼底画像を表示される装置であり、データ処理部3による歪補正は、各光軸高さつまり画像中心からの半径rの位置に対応して、歪曲収差により生ずる径線方向の変位Δrを予め測定又は計算しておき、これらを歪曲収差データとしてデータメモリ4等に格納しておき、データ処理の際にデジタル画像信号の位置情報を変位Δr分だけ補正する方法によるものが開示されている。(引用文献3の第2頁左上欄第20行-右上欄第15行を参照。)
3 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平3-81879号公報)には、眼底カメラの撮像画像の持っている光軸を中心とした同心円状の歪み(歪曲収差)を補正することが開示されている。(引用文献4の第2頁左下欄第3行-同欄第7行参照)
4 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2000-131640号公報)には、画像表示装置11が表示した画像を眼底に直接に結像させる虚像視画像表示装置において、マイクロレンズ64によって生じる歪曲収差を補正する技術が開示されている。(引用文献5の段落【0050】-【0051】を参照。)
5 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2011-191454号公報)には、微弱な光を高速で走査しながら観察者の網膜10bに照射することで、網膜10b上に走査された光の残像を映像として観察者に認識させる網膜走査型の画像表示装置(RSD1)において、画像光が網膜10b上で結像することで形成される画像に関し、光学系の歪みを補正する技術が開示されている。(引用文献6の段落【0019】及び【0064】を参照。)
6 引用文献1について
引用文献1(特開平6-261862号公報)には、レーザー光源1からのレーザー光は、第1光走査手段4と、第2光走査手段8Mによって2次元的に走査され、偏心対物ミラー13を介して、被検眼眼底14bに投射され、被検眼眼底14bからの反射拡散光は、投影時と同一の光学系を通過し、受光素子18に検出され、眼底像が表示される、レーザー走査型眼科撮像装置が開示されている。(引用文献1の段落【0032】-【0039】を参照。)また、同文献には、対物ミラーが偏心していることにより台形状の歪曲収差が発生すること、及びそれを補正する技術が開示されている。(引用文献1の段落【0067】-【0070】を参照。)
第5 対比・判断
1 対比
以下、本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「光源1」は、本願発明1の「光源」に相当する。また、引用発明の「照明光」は、光源1から出射されたものであるから、本願発明1の「光源から出射された光」に相当する。
(2)引用発明の「第1眼底画像」は「狭い画角であり、細胞レベルの観察が行える高倍率な眼底画像が表示される」ものであるから、本願発明1の「眼底上の局所領域」を撮影したものに相当する。よって、引用発明において、「走査部20」は「眼底上の局所領域を走査」しているものと認められる。すると、引用発明の「照明光を眼底上で2次元的に走査するための走査部20」は、本願発明1の「光源から出射された光によって被検眼の眼底上の局所領域を走査するための光スキャナ」に相当する。
(3)引用発明の「第1眼底画像」を形成する信号を受光する「受光素子54」は、本願発明1の「前記局所領域における各走査位置に関して前記眼底からの光を検出するための検出器」に相当する。
(4)引用発明の「受光素子54を含」む「第1撮影ユニット100」は、本願発明1の「前記局所領域を撮像するための眼底撮像光学系」に相当する。
(5)引用発明の「第1照明光学系の光源1から眼底に到るまでの光路には、前記走査部20」「が配置され」ることは、本願発明1の「前記眼底撮像光学系の光路中に配置され前記光源からの光を偏向する光偏向手段を有」することに相当する。そして、引用発明では、「コントロール部82を操作して、第2眼底画像520上に形成されているマーク610を」「第1眼底画像530の画角よりも広い範囲で第2眼底画像520上を上下左右に」「移動させ、制御部80は第2眼底画像520上に形成されているマーク610の移動位置に対応する走査部20の走査条件を求め、制御部80は求めた走査条件に基づいて走査部20を駆動制御し、移動後のマーク610に対応する第1眼底画像530aをモニタ85に表示させ」るものである。よって、引用発明の「コントロール部82」、「制御部80」及び「走査部20」は、本願発明1の「前記眼底撮像光学系の光路中に配置され前記光源からの光を偏向する光偏向手段を有し、前記眼底撮像光学系によって撮像される前記局所領域の位置を、前記局所領域の画角よりも広い範囲で前記光偏向手段を駆動制御することにより、上下左右に変更する撮像位置変更手段」に相当する。
(6)引用発明の「受光素子54にて受光した信号に基づき第1眼底画像を形成する表示制御を行」う「画像処理部83」は、本願発明1の「前記撮像位置変更手段によって設定される前記局所領域を撮影範囲とする眼底画像を、前記検出器からの受光信号を処理して取得する画像処理手段」に相当する。
(7)よって、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
「光源から出射された光によって被検眼の眼底上の局所領域を走査するための光スキャナと、前記局所領域における各走査位置に関して前記眼底からの光を検出するための検出器と、を有し、前記局所領域を撮像するための眼底撮像光学系と、
前記眼底撮像光学系の光路中に配置され前記光源からの光を偏向する光偏向手段を有し、前記眼底撮像光学系によって撮像される前記局所領域の位置を、前記局所領域の画角よりも広い範囲で前記光偏向手段を駆動制御することにより、上下左右に変更する撮像位置変更手段と、
前記撮像位置変更手段によって設定される前記局所領域を撮影範囲とする眼底画像を、前記検出器からの受光信号を処理して取得する画像処理手段と、を備える、
眼底撮影装置。」
また、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。
(相違点1)画像処理手段が、本願発明1においては、「前記撮像位置変更手段によって設定された前記局所領域の位置情報を取得し、前記眼底画像の歪みであって前記局所領域の位置毎に異なる歪みを、前記撮像位置変更手段によって設定された前記局所領域の位置情報に基づいて補正する」ものであるのに対して、引用発明においては、そのようなものであることは特定されていない点。
2 判断
(1)本願発明1について
前記相違点1について検討する。
引用文献3及び引用文献4に開示される技術は、光ビームの走査を行わない眼底カメラでの眼底の撮影において、撮影画像の歪みの原因となる歪曲収差を補正するものである。このような歪曲収差の補正は、撮影画像全体で行われるものであり、本願発明1のように、眼底の局所領域を光ビームで走査し各走査位置に関して眼底からの光を検出器にて検出する際の光学的な歪みを補正するものとは異なる技術であるといえる。
引用文献5に開示される技術は、画像表示装置11が表示した画像を眼底に直接に結像させる虚像視画像表示装置においてマイクロレンズ64によって生じる歪曲収差を補正するものである。また、引用文献6に開示される技術は、微弱な光を高速で走査しながら観察者の網膜10bに照射することで、網膜10b上に走査された光の残像を映像として観察者に認識させる網膜走査型の画像表示装置において画像光が網膜10b上で結像することで形成される画像の光学系の歪みを補正するものである。しかし、引用文献5及び引用文献6に開示される技術は、画像表示装置に関するものであって、本願発明1のように、走査される照明光と撮像対象からの反射光とが同じ光路を逆向きに辿る撮影装置に関するものではなく、技術分野が異なる。
したがって、引用文献3-4に開示される技術を参照しても、当業者が前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到することはできない。
また、引用文献5-6は、本願発明1の当業者が参照するものではなく、仮に参照したとしても、前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到することはできない。
よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献3-6に開示される技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、引用文献1には、対物ミラーの偏心により発生した台形状の歪曲収差を補正する技術について開示されている。しかし、引用発明における第1撮影光学系中には、対物ミラーが存在しないから、引用発明において対物ミラーの偏心により発生した台形状の歪曲収差は存在しない。よって、引用発明に対して、引用文献1に開示される対物ミラーの偏心により発生した歪曲収差を補正する技術を適用する動機付けは無い。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献1に開示される技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
(2)本願発明2-3
本願発明2-3は、本願発明1の発明特定事項をすべて有するものである。よって、本願発明2-3は、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献3-6に開示された技術事項に基づいて、又は、引用発明及び引用文献1に開示された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 結び
以上のとおり、本願発明1-3は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-010708