特許拒絶査定不服審判
2017-010151
集積されたビア素子を有する導体構造
- 審判番号
- 2017-010151
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-506972外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月07日
- 審決日
- 2019年04月15日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザイリンクス インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-506972「集積されたビア素子を有する導体構造」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日国際公開、WO2013/158151、平成27年6月11日国内公表、特表2015-516684〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)11月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年4月20日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月23日及び同年11月11日に手続補正がなされ、平成28年9月27日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月4日に手続補正がなされたが、同年3月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月7日に拒絶査定不服の審判が請求され、同時に手続補正がなされた。
その後、平成29年10月31日及び同年11月9日に上申書が提出され、当審において平成30年7月20日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年11月22日に意見書のみが提出され、さらに、当該意見書の内容について、平成31年3月12日にファクシミリで回答書が提出された。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成29年7月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
電気回路構造であって、
第1の導電層を用いて形成される第1のトレースおよび第3のトレースを備え、前記第1のトレースの内側は、前記第3のトレースの内側と対向し、さらに、
第2の導電層を用いて形成される第2のトレースおよび第4のトレースを備え、前記第2のトレースの内側は、前記第4のトレースの内側と対向し、さらに、
前記第1のトレースは前記第2のトレースと鉛直方向に整列され、前記第3のトレースは、前記第4のトレースと鉛直方向に整列され、さらに
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に導電材料から形成される複数のビアセグメントを備え、前記ビアセグメントの各々は、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間の絶縁層内の開口を充填し、さらに
前記第1のトレース、前記第2のトレース、第3のトレースおよび第4のトレースの下に位置する第1の基準平面と、
前記第1のトレースおよび前記第2のトレースの外側上の第1の導体構造とを備え、前記第1の導体構造は、前記第1の導電層から前記第1の基準平面に延在し、さらに
前記第3のトレースおよび前記第4のトレースの外側上の第2の導体構造を備え、前記第2の導体構造は、前記第1の導電層から前記第1の基準平面に延在し、
前記複数のビアセグメント間の間隔は所望のインピーダンスを達成するように決定され、
前記複数のビアセグメントの第1のビアセグメントは、前記第1のトレースと前記第2のトレースとを接触させて、前記第1の導電層に平行な方向に電気信号を伝えるように構成される第3の導体構造を形成し、前記複数のビアセグメントの第2のビアセグメントは、前記第3のトレースと前記第4のトレースとを接触させて、前記第1の導電層に平行な方向に他の電気信号を伝えるように構成され、かつ前記第3の導体構造から分離した第4の導体構造を形成し、
前記第3の導体構造および前記第4の導体構造のすぐ上方には基準平面が位置決めされない、電気回路構造。」
第3 拒絶の理由
平成30年7月20日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
本件出願の請求項1ないし13に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。から、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2010-62516号公報
引用文献2.米国特許出願公開第2010/0307798号明細書
引用文献3.特開2007-142307号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2009-38341号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載等
1.引用文献1
当審の拒絶理由通知に引用された引用文献1(特開2010-62516号公報)には、「マイクロストリップラインを備えた印刷回路基板、ストリップラインを備えた印刷回路基板、及びそれらの製造方法」について、図面とともに以下の記載がある。
(1)「【0028】
図3は本発明の一実施形態によるマイクロストリップラインを備えた印刷回路基板100の一実施例を示す斜視図であり、図4は本発明の一実施形態によるマイクロストリップラインを備えた印刷回路基板100の一実施例を示す断面図である。
【0029】
本実施例によれば、第1絶縁層110と、第1絶縁層110の一面に埋め込まれた信号線120と、第1絶縁層110を貫通し、信号線120の両側に信号線120と並んで配置された複数の導電体130と、第1絶縁層110の他面に導電体130と電気的に接続されるように形成された接地層140と、を含むマイクロストリップラインを備えた印刷回路基板100が提示される。
【0030】
本実施例によれば、隣接している信号線120間のクロストーク及び高周波信号と低周波信号のインダクタンス(inductance)差によるデジタル信号歪み、すなわち、分散現象が低減されるので、高速デジタル信号伝送の品質を向上させることができる。
【0031】
以下、図3から図8を参照して、本実施例の各構成について詳細に説明する。
【0032】
本実施例によるマイクロストリップライン構造は、信号線120、接地層140、これらの間に介在される第1絶縁層110、及び信号線120の両側に配置される導電体130を含む。
【0033】
信号線120は、第1絶縁層110の一面に埋め込まれ、所定間隔で複数形成されることができる。各信号線120には交流電流が流れ、隣接している信号線120間に形成されるカップリングキャパシタンス(coupling capacitance)によりクロストーク現象が発生することがある。このクロストーク現象は、信号線120と信号線120との間を後述する導電体130で遮ることにより低減できる。これについては、後で導電体130を説明しながら詳細に説明する。
【0034】
また、接地層140は、第1絶縁層110の他面に後述する導電体130と電気的に接続されるように形成される。ここで、接地層140の一部は電流の経路として利用されることができる。これについては後で導電体130を説明しながら詳細に説明する。
【0035】
複数の導電体130は、第1絶縁層110を貫通し、信号線120の両側に信号線120と並んで配置される。すなわち、導電体130は第1絶縁層110の一面及び他面を貫通するように形成され、信号線120を基準として信号線120の両側に配置される一対の導電体130が信号線120の電流進行方向と平行に形成されるので、信号線120は両側に配置された一対の導電体130及び接地層140により囲まれるようになる。
【0036】
これにより、接地層140に伝達される交流電流の周波数変化により、接地層140における電流経路の変化が最小化されるため、高周波信号と低周波信号のインダクタンス差によるデジタル信号伝達の歪み、すなわち、分散現象が低減されることができる。以下、従来技術と比べて詳細に説明する。
【0037】
従来技術によれば、高周波電流が導体表面の近くのみを流れる現象である表皮効果(Skin effect)及び、高周波電流が他の導体の近くに、より集中して流れる現象である近接效果(proximity effect)から、接地層140における高周波電流が流れる時の電流経路が、低周波電流が流れる時の電流経路より狭くなる。
【0038】
これにより、高周波電流が低周波電流よりインダクタンスが小さくなり、交流電流の伝達速度が周波数に応じて変化することになり、結局、伝達されるデジタル信号が歪むという分散現象が発生することになる。
【0039】
しかし、本実施例によれば、上述したように、信号線120が導電体130及び接地層140により囲まれるので、接地層140だけでなく、信号線120に隣接している導電体130の側面も電流経路として利用されるようになる。
【0040】
すなわち、信号線120から接地層140までの距離とほぼ同じ距離に導電体130が形成されて、低周波の電流が流れる場合だけでなく、高周波の電流が接地層140に流れる場合にも接地層140と共に導電体130の側面が電流の経路として利用できるようになる。
【0041】
このように、周波数に応ずる電流経路の変化が最小化され、上述した分散現象を顕著に低減させることができる。
【0042】
さらに、高周波での電流経路として接地層140だけでなく、導電体130の側面も利用することにより、抵抗を最小化することができ、伝達されるデジタル信号の品質をさらに向上させることができる。
【0043】
ここで、信号線120から導電体130までの各距離d1,d2は、互いに等しく形成される。これにより、上述した電流経路も対称をなして、ノイズを減少させることができるようになり、伝達されるデジタル信号の品質をさらに向上させることができる。
【0044】
一方、信号線120は複数であり、各信号線120と各導電体130が互いに交互に配置される。したがって、導電体130が各信号線120の間で障害物のような機能を行うので、隣接している信号線120間のクロストーク現象を低減させることができる。
【0045】
すなわち、信号線120は、第1絶縁層110に完全に埋め込まれており、導電体130は、第1絶縁層110を貫通して第1絶縁層110の一面から他面まで形成されるので、隣接している信号線120は導電体130により完全に遮られる。
【0046】
隣接している信号線120は、これらの間で発生するカップリングキャパシタンスによりクロストーク現象が起こって、伝達されるデジタル信号にノイズが発生することがあった。これを防止するために、本実施例では、複数の信号線120間ごとにこれらを遮る導電体130を配置して、隣接している信号線120間にキャパシタンスが形成されることを防止できるようになり、クロストークを顕著に低減することができる。」
(2)「【0047】
次に、図5から図8を参照して本実施例の変形された形態について上述した内容との相違点を中心に説明する。
【0048】
図5から図8は本発明の一実施形態によるマイクロストリップラインを備えた印刷回路基板100の一実施例の変形された形態を示す断面図である。
【0049】
図5を参照すると、信号線120は、一対の単位信号線122,124で構成されることができ、このような単位信号線122,124は、差動対をなすことができる。これにより、ノイズのためにある単位信号線122に伝達される交流電流が変化しても、他の単位信号線124がこれを補って変化することになり、結果的に、伝達されるデジタル信号の品質を向上させることができる。」
そして、上記(1)及び図3ないし4によれば、引用文献1には一実施例として、「第1絶縁層110と、第1絶縁層110の一面に埋め込まれた信号線120と、第1絶縁層110を貫通し、信号線120の両側に信号線120と並んで配置された複数の導電体130と、第1絶縁層110の他面に導電体130と電気的に接続されるように形成された接地層140と、を含むマイクロストリップラインを備えた印刷回路基板100」(【0029】)が記載されている。
また、上記(2)及び図5によれば、上記一実施例の変形された形態として、「信号線120は、一対の単位信号線122,124で構成されることができ、このような単位信号線122,124は、差動対をなすことができる」(【0049】)ことが記載されている。
さらに、上記一実施例の斜視図である図3及び断面図である図4、並びに、上記一実施例の変形された形態の断面図である図5の記載からみて、信号線120(一対の単位信号線122,124)の上方には、接地層は存在していない。
そこで、上記(2)に記載の上記一実施例の変形された形態のように、信号線120を一対の単位信号線122,124で構成した場合の印刷回路基板100に着目して、引用文献1の上記(1)ないし(2)並びに図3ないし5の記載を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「第1絶縁層110と、第1絶縁層110の一面に埋め込まれた信号線120と、第1絶縁層110を貫通し、信号線120の両側に信号線120と並んで配置された複数の導電体130と、第1絶縁層110の他面に導電体130と電気的に接続されるように形成された接地層140と、を含むマイクロストリップラインを備えた印刷回路基板100であって、
上記信号線120は、一対の単位信号線122,124で構成され、上記単位信号線122,124は、差動対をなし、
上記一対の単位信号線122,124で構成される信号線120の上方には、接地層は存在しない、
印刷回路基板100。」
2.引用文献2
当審の拒絶理由通知に引用された引用文献2(米国特許出願公開第2010/0307798号明細書)には、「UNIFIED SCALABLE HIGH SPEED INTERCONNECTS TECHNOLOGIES」(当審仮訳:統合化されたスケーラブルな高速相互接続技術)について、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。また、当審の仮訳を付記した。)
(1)「[0027]It is a well-known fact that one of the major impediments to increasing signal speeds on copper transmission lines is the signal loss over frequency which exhibits a low pass filter characteristics. As previously mentioned, there are essentially two main mechanism of signal loss, conductor loss which varies as inverse of square root of frequency, and propagation losses which varies as inverse of frequency. Other secondary losses mechanism such as current bunching also effects losses. The inventions disclosed here provides techniques that help mitigates these losses and provide optimally low loss transmission line media that can be realized on CMOS or PCB, hard or soft, and at every level and hierarchy of fan out and fan in signal flow. (以下、省略)」
(当審仮訳:銅伝送線上の信号速度を増加させることに対する主要な障害の一つは、低域通過フィルタ特性を示す周波数にわたる信号損失であることはよく知られている事実である。前述したように、信号損失には、周波数の平方根の逆数として変化する導体損失、及び、周波数の逆数として変化する伝搬損失という、2つの主要なメカニズムが本質的に存在する。電流バンチングのような他の二次損失メカニズムも損失に影響する。ここに開示される発明は、これらの損失を軽減するのに役立つ技術を提供し、CMOS又はPCB、ハード又はソフト、そして信号フローにおけるファンアウト及びファンインのあらゆるレベル及び階層で実現可能な最適に低損失な伝送線の媒体を提供する。)
(2)[0146]FIG. 1B shows a cross section of one possible embodiment comprising of four layer PMTL transmission line as was disclosed in Izadian. As is shown, the PMTL can be constructed from strategic use of several dielectric layers, in this case three, designated by 1-7, 1-9, and 1-11, and four metal layers, designated by 1-6-T, 1-8, 1-10, and 1-6-B. and a set of Plated Thorough Holes arrays, (PTH) as well as a set of VIA NPTH arrays. (not plated, filled with air or such) strategically arranged. One of the objectives of this arrangement is to emulate the behavior of coaxial transmission line. The PMTL 1-1 of FIG 1B shows a central PTH 1-5 that electrically connects the two central traces 1-8C and 1-10C together thus substantially providing a fat center conductor type assembly.(以下、省略)」
(当審仮訳:図1Bは、Izadianに開示された4層のPMTL伝送線からなる1つの可能な実施例の断面図である。図示されるように、PMTLは、いくつかの、この場合は1-7、1-9、及び1-11で示される3つの誘電体層と、1-6-T、1-8、1-10、及び1-6-Bで示される4つの金属層と、めっき貫通孔(PTH)のセット、並びに戦略的に配置されたVIA NPTHアレイ(めっきされておらず、空気などで充填されている)の戦略的な使用で構成される。この配置の目的の一つは、同軸伝送線の挙動をまねることである。図1BのPMTL 1-1は、2つの中央トレース1-8C及び1-10Cを互いに電気的に接続し、実質的に厚い中央導体型アセンブリを提供する中央PTH1-5を示す。)
(3)「[0151]FIG. 1 , was described originally in Izadian patent application 1, and many variation of this is possible. It is highly desired to also have differential pair transmission line, and or twin ax, or quad axial transmission lines, which will be described later.
[0152]In contrast to single ended transmission lines, a differential pair transmission line, provides two internal conductors usually surrounded by an external shield. (中略)
[0153]FIG. 2A shows a PMTL implementation of the differential transmission line or a twin-ax. It can be readily viewed that some basic elements of the PMTL of FIG.1B is used as modules of construction of the Differential PMTL of FIG.2. As is shown in FIG. 2A , the differential PMTL is comprised of at least three dielectric layers 2-7 , -9 , and -11 , with four metal layers 2-6-T, 2- 8, 2-10, and 2-6-B. The top and bottom metal layer 2-6-T and 2-6-B constitute the top and bottom ground planes which are connected together on the left with PTH stack comprised of 2-2-L, Strip 2-8L, 2-10L, and on the right 2-2-R, Strips 2-8R, and 2-10 R. which together provide a complete shield for the transmission line. The two differential pairs conductor assemblies are comprised on the generally central left, the Strips 2-8CL, PTH 2-5L, and 2-10CL, and on the generally central right Strips 2-8CR, PTH 2-5R, and 2-10CR.
(当審仮訳:[0151]図1はもともとIzadianの特許出願1に記載されたもので、その多くの変形が可能である。差動対伝送線、あるいは、ツイン軸又はクアッド軸伝送線を有することも非常に望ましく、これらは後述する。
[0152]シングルエンド伝送線とは対照的に、差動対伝送線は、外部シールドで通常囲まれた2つの内部導体を提供する。(中略)
[0153]図2Aは、差動伝送線又はツイン軸のPMTLによる実施を示す。図1BのPMTLのいくつかの基本要素が図2の差動PMTLの構造のモジュールとして用いられているのが容易に見て取れる。図2Aに示すように、差動PMTLは、少なくとも3つの誘電体層2-7、-9、-11と、4つの金属層2-6-T、2-8、2-10、2-6-Bから構成される。上部と下部の金属層2-6-T及び2-6-Bは、上部と下部の接地平面を構成し、左側では2-2-L、ストリップ2-8L、2-10Lで構成されるPTHスタックで互いに接続され、右側では2-2-R、ストリップ2-8R、2-10Rで互いに接続され、これらは合わさって伝送線のための完全なシールドを提供する。2つの差動対の導体アセンブリは、ほぼ中央左ではストリップ2-8CL、PTH2-5L、2-10CLで構成され、ほぼ中央右ではストリップ2-8CR、PTH2-5R、2-10CRで構成される。)
そして、上記(1)によれば、引用文献2に記載の技術は、低損失な伝送線を提供するための技術である。
また、図1Bによれば、2つの中央トレース1-8C及び1-10Cは鉛直方向に整列して配置されており、上記(2)によれば、これら2つの中央トレース1-8C及び1-10Cを中央PTH1-5で互いに電気的に接続することによって、厚い中央導体を提供する。
さらに、上記(3)及び図2Aによれば、差動対伝送線を構成する2つの内部導体のそれぞれについても、上記中央導体と同様に、2つのストリップ及びPTHによって構成する。すなわち、ストリップ2-8CL、PTH2-5L、ストリップ2-10CLで左側の内部導体を構成し、ストリップ2-8CR、PTH2-5R、ストリップ2-10CRで右側の内部導体を構成している。
そこで、図2Aに記載の差動対伝送線の構成に着目して、引用文献2の上記(1)ないし(3)並びに図1Bないし2Aの記載を総合勘案すると、引用文献2には、低損失な伝送線を提供するための次の技術事項が記載されている。
「差動対伝送線を構成する2つの内部導体のそれぞれを、鉛直方向に整列して配置された2つのストリップ(2-8CL及び2-10CL、2-8CR及び2-10CR)とそれらを電気的に接続するめっき貫通孔(PTH:2-5L、2-5R)によって構成すること。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「信号線120」を構成する「一対の単位信号線122,124」は、本願発明の「第1のトレース」及び「第3のトレース」に相当する。また、当該「一対の単位信号線122,124」は、第1絶縁層の同じ面に埋め込まれており、引用文献1の図5の断面図も参酌すると、それらは「導電層」であるということができる。さらに、上記図5からも明らかなように、対として、すなわち、並んで埋め込まれているから、それらの内側同士は対向している。
ただし、本願発明においては、「第1のトレース」及び「第3のトレース」に加えて、
「第2のトレース」及び「第4のトレース」、並びに、第1のトレースと第2のトレースとを接触させる「第1のビアセグメント」及び第3のトレースと第4のトレースとを接触させる「第2のビアセグメント」を備えることで、「第3の構造導体」及び「第4の構造導体」を形成しているのに対して、引用発明においては、「第2のトレース」及び「第4のトレース」、並びに、「第1のビアセグメント」及び「第2のビアセグメント」を備えておらず、「第3の構造導体」及び「第4の構造導体」を形成していない点で相違する。
さらに、引用発明においては、「第3の構造導体」及び「第4の構造導体」を形成していないから、当該第3の導体構造及び第4の導体構造のすぐ上方の構造については特定されていないし、「第1のビアセグメント」及び「第2のビアセグメント」を備えていないから、それらの間隔と所望のインピーダンスとの関係についても特定されていない。
(2)引用発明の「接地層140」は、本願発明の「第1の基準平面」に相当する。また、引用発明の「一対の単位信号線122,124」は第1絶縁層110の一面に埋め込まれているのに対して、「接地層140」は第1絶縁層110の他面に形成されるから、引用文献1の図5の断面図における上下の位置関係も参酌すると、「接地層140」は「一対の単位信号線122,124」の下に位置するということができる。
ただし、上記(1)で述べたとおり、引用発明は「第2のトレース」及び「第4のトレース」を備えていないから、「接地層140」が「第2のトレース」及び「第4のトレース」の下に位置するとまではいえない。
(3)引用発明の「複数の導電体130」は、一対の単位信号線122,124で構成される「信号線120」の両側、すなわち、外側に配置されていることから、本願発明の「第1の導体構造」及び「第2の導体構造」に相当する。また、「複数の導電体130」は、第1絶縁層の一面に埋め込まれた「信号線120」と並んで配置されているから、「信号線120」が存在する層と同じ層(導電層)に少なくとも存在し、かつ、第1絶縁層110の他面に形成された「接地層140」に電気的に接続されているから、引用文献1の図5の断面図も参酌すると、「複数の導電体130」は、一対の単位信号線122,124で構成される「信号線120」と同じ層から「接地層140」に延在しているということができる。
ただし、上記(1)で述べたとおり、引用発明は「第2のトレース」及び「第4のトレース」を備えていないから、「複数の導電体130」が「第2のトレース」及び「第4のトレース」の外側に配置されているとまではいえない。
(4)引用発明は、「印刷回路基板100」の「マイクロストリップライン」の構造に特徴を有する発明であるから、「電気回路構造」についての発明であるということができる。
上記(1)~(4)を踏まえると、本願発明と引用発明は、
「電気回路構造であって、
第1の導電層を用いて形成される第1のトレースおよび第3のトレースを備え、前記第1のトレースの内側は、前記第3のトレースの内側と対向し、さらに、
前記第1のトレースおよび第3のトレースの下に位置する第1の基準平面と、
前記第1のトレースの外側上の第1の導体構造とを備え、前記第1の導体構造は、前記第1の導電層から前記第1の基準平面に延在し、さらに
前記第3のトレースの外側上の第2の導体構造を備え、前記第2の導体構造は、前記第1の導電層から前記第1の基準平面に延在する、
電気回路構造。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
電気信号を伝えるために、本願発明においては、
「第1の導電層を用いて形成される第1のトレースおよび第3のトレースを備え、前記第1のトレースの内側は、前記第3のトレースの内側と対向し、さらに、
第2の導電層を用いて形成される第2のトレースおよび第4のトレースを備え、前記第2のトレースの内側は、前記第4のトレースの内側と対向し、さらに、
前記第1のトレースは前記第2のトレースと鉛直方向に整列され、前記第3のトレースは、前記第4のトレースと鉛直方向に整列され、さらに
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に導電材料から形成される複数のビアセグメントを備え、前記ビアセグメントの各々は、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間の絶縁層内の開口を充填し、」
さらに、
「前記複数のビアセグメントの第1のビアセグメントは、前記第1のトレースと前記第2のトレースとを接触させて、前記第1の導電層に平行な方向に電気信号を伝えるように構成される第3の導体構造を形成し、前記複数のビアセグメントの第2のビアセグメントは、前記第3のトレースと前記第4のトレースとを接触させて、前記第1の導電層に平行な方向に他の電気信号を伝えるように構成され、かつ前記第3の導体構造から分離した第4の導体構造を形成し、」
ているのに対して、引用発明においては、上記「第1のトレース」及び「第3のトレース」に相当する「一対の単位信号線122,124」を備えてはいるが、「第2のトレース」及び「第4のトレース」、並びに、「第1のビアセグメント」及び「第2のビアセグメント」を備えておらず、「第3の構造導体」及び「第4の構造導体」を形成していない点。
<相違点2>
第1の基準平面(接地層140)が、本願発明においては、「前記第1のトレース、前記第2のトレース、第3のトレースおよび第4のトレースの下に位置する」のに対して、引用発明においては、上記「第2のトレース」及び「第4のトレース」を備えていないため、当該第2のトレース及び第4のトレースと第1の基準平面(接地層140)との位置関係については特定されていない点。
<相違点3>
本願発明においては、「前記第3の導体構造および前記第4の導体構造のすぐ上方には基準平面が位置決めされない」のに対して、引用発明においては、上記「第3の導体構造」及び「第4の導体構造」を形成していないため、当該第3の導体構造及び第4の導体構造のすぐ上方の構造については特定されていない点。
<相違点4>
本願発明においては、「前記複数のビアセグメント間の間隔は所望のインピーダンスを達成するように決定され」ているが、引用発明においては、「複数のビアセグメント」である「第1のビアセグメント」及び「第2のビアセグメント」を備えていないため、それらの間隔と所望のインピーダンスとの関係については特定されていない点。
第6 判断
1.相違点1について
引用文献2には、低損失な伝送線を提供するために、差動対伝送線を構成する2つの内部導体のそれぞれを、鉛直方向に整列して配置された2つのストリップとそれらを電気的に接続するめっき貫通孔によって構成することが記載されており(上記「第4 2.」を参照)、上記ストリップ及びめっき貫通孔は、それぞれ「トレース」及び「ビアセグメント」ということができるものである。
そして、低損失な伝送線を提供することは、当業者にとって周知の技術的課題であるから、引用発明に引用文献2に記載の上記技術事項を適用することによって、引用発明における「一対の単位信号線122,124」のそれぞれを、鉛直方向に整列して配置された2つのストリップ及びPTHからなる構造の信号線に置き換えることによって、本願発明の「第3の導体構造」及び「第4の導体構造」と同様の構造導体を形成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
2.相違点2及び3について
上述のとおり、引用発明における「一対の単位信号線122,124」のそれぞれを、引用文献2に記載のような鉛直方向に整列して配置された2つのストリップ及びPTHからなる構造の信号線に置き換えた場合、第1の基準平面(接地層140)は、上記2つのストリップの下に位置することになるし、2つのストリップ及びPTHからなる構造の信号線(すなわち、構造導体)のすぐ上方には基準平面が位置決めされないことになる。
したがって、上記相違点2及び相違点3に係る本願発明の構造とすることも、上記相違点1と同様に当業者が容易に想到し得ることである。
3.相違点4について
差動対伝送線において、差動インピーダンスが差動対を構成する2つの信号線の間隔によって定まることは周知であるから(例えば、引用文献3(特開2007-142307号公報)の【0004】-【0006】、引用文献4(特開2009-38341号公報)の【0005】-【0006】参照。)、所望のインピーダンスを達成するように上記間隔を決定することは、当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことではない。
4.審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、平成30年7月20日付けで当審が通知した拒絶理由に対して、同年11月22日付け意見書の「(3)請求項に係る本願発明と引用文献1~4との対比(理由1)」の欄において、
「その上で、審判官殿は、引用文献2のPTH2-5L及びPTH2-5Rが、本願発明の「第1のビアセグメント」及び「第2のビアセグメント」に相当するものであり、低損失な伝送線を提供することは、当業者にとって周知の技術的課題であるから、引用発明における「一対の単位信号線122,124」に対して、引用文献2(図1B、2A等参照)に記載の技術事項を適用して、本願発明の相違点1に係る構造とすることは、当業者が容易に想到し得ることであると述べておられます。
しかしながら、引用文献2の図2Aは、2つの外側導体の間の2つの内側導体について示していません。むしろ、引用文献2は、2つの外側導体2-4TLおよび2-4TRの間に単一の内部導体2-5Lを示しています。
また、引用文献2は、2つの外側導体(導体2-4TRおよび符号が付されていない導体)の間に他の単一の内側導体2-5Rを示しています。すなわち、引用文献2は、各々が単一の内側導体を有する2つの分離した同軸ケーブル構造(左および右)を示しています。よって、引用文献1および2を組み合わせたとしても、「前記第1のトレースは前記第2のトレースと鉛直方向に整列され、前記第3のトレースは、前記第4のトレースと鉛直方向に整列され」る本願発明の配置にはなり得ません。」
と主張する。
しかしながら、引用文献2の図2Aの「2-4TLおよび2-4TR」は、「めっき貫通孔(PTH)」ではなく「非めっき貫通孔(NPTH)」であるから、「2-4TLおよび2-4TR」は外側導体ではなく、また、同図の記載からみて「内部導体2-5L」は「2-4TLおよび2-4TR」の間にはないから、審判請求人の上記「しかしながら、引用文献2の図2Aは、2つの外側導体の間の2つの内側導体について示していません。むしろ、引用文献2は、2つの外側導体2-4TLおよび2-4TRの間に単一の内部導体2-5Lを示しています。」という主張は、引用文献2の記載(特に図2Aの記載)と整合していない。
また、引用文献2の図2Aの「2-4TR」は、「めっき貫通孔(PTH)」ではなく「非めっき貫通孔(NPTH)」であるから、「2-4TR」は導体(外部導体)ではなく、また、同図には、「符号が付されていない導体」は存在しないから、審判請求人の上記「引用文献2は、2つの外側導体(導体2-4TRおよび符号が付されていない導体)の間に他の単一の内側導体2-5Rを示しています。すなわち、引用文献2は、各々が単一の内側導体を有する2つの分離した同軸ケーブル構造(左および右)を示しています。」という主張も、引用文献2の記載(特に図2Aの記載)と整合していない。
そして、図2Aにおいては、2-2-L及び2-2-Rという2つの導体の間に、2-5-L及び2-5-Rという2つの導体が示されているから、審判請求人の上記「引用文献2は、2つの外側導体(導体2-4TRおよび符号が付されていない導体)の間に他の単一の内側導体2-5Rを示しています。すなわち、引用文献2は、各々が単一の内側導体を有する2つの分離した同軸ケーブル構造(左および右)を示しています。」という主張も、引用文献2の記載(特に図2Aの記載)と整合していない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(2)審判請求人は、平成30年7月20日付けで当審が通知した拒絶理由に対して、同年11月22日付け意見書の「(3)請求項に係る本願発明と引用文献1~4との対比(理由1)」の欄において、
「また、審判官殿は、引用文献2のストリップ2-8CL及びストリップ2-8CRが、本願発明の「第1のトレース」及び「第3のトレース」に相当し、引用文献2のストリップ2-10CL及びストリップ2-10CRが、本願発明の「第2のトレース」及び「第4のトレース」に相当するものであると述べておられます。
しかしながら、引用文献2のストリップは、接地面をともに結合する導体スタックの一部となっています。すなわち、本願発明に置き換えると、引用文献2のトレースは、第1および第2の導体構造の一部となっています。
引用文献2のストリップは、共通の接地面に結合されているため、引用文献2の全てのトレースは、電気的に共通となっています。
一方、本願発明には、「前記第1のトレースおよび前記第2のトレースの外側上の第1の導体構造とを備え、前記第1の導体構造は、前記第1の導電層から前記第1の基準平面に延在し、さらに前記第3のトレースおよび前記第4のトレースの外側上の第2の導体構造を備え、前記第2の導体構造は、前記第1の導電層から前記第1の基準平面に延在し、」と記載されています。
すなわち、本願発明では、第1および第2のトレースの導体構造は、第3および第4のトレースの導体構造と電気的に接続されていません。したがって、引用文献2のストリップは、本願発明に記載された第1から第4のトレースと対応していません。」
と主張する。
しかしながら、引用文献2の図2Aの記載からみて明らかなように、ストリップ2-8CL及びストリップ2-8CRや、ストリップ2-10CL及びストリップ2-10CRは、金属層2-6-T及び2-6-BやPTH2-2-L及び2-2-Rには接続しておらず、また、ストリップ2-8CL、PTH2-5-L、ストリップ2-10CLで構成される導体アセンブリと、ストリップ2-8CR、PTH2-5-R、ストリップ2-10CRで構成される導体アセンブリとが、差動対(差動伝送路)を構成することからみて、上記2つの導体アセンブリが電気的に共通でないことは明かであるから、審判請求人の主張する「引用文献2のストリップは、接地面をともに結合する導体スタックの一部となっています。すなわち、本願発明に置き換えると、引用文献2のトレースは、第1および第2の導体構造の一部となっています。」及び「引用文献2のストリップは、共通の接地面に結合されているため、引用文献2の全てのトレースは、電気的に共通となっています。」という技術事項は、引用文献2の記載と整合していない。
したがって、「引用文献2のストリップは、本願発明に記載された第1から第4のトレースと対応していません。」という審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(3)審判請求人は、平成30年7月20日付けで当審が通知した拒絶理由に対して、同年11月22日付け意見書の「(3)請求項に係る本願発明と引用文献1~4との対比(理由1)」の欄において、
「また、審判官殿は、引用文献4を引用して、差動対伝送線において、差動インピーダンスが差動対を構成する2つの信号線の間隔によって定まることは周知であるから、所望のインピーダンスを達成するように上記間隔を決定することは、当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことではないと述べておられます。
しかしながら、引用文献4は、本願発明に記載された「前記第3のトレースと前記第4のトレースとを接触させて、前記第1の導電層に平行な方向に他の電気信号を伝えるように構成され、かつ前記第3の導体構造から分離した第4の導体構造」について少なくとも教示していません。したがって、引用文献4は、引用文献1および2の組合せにおける不備を補えていません。同様に、引用文献3もまた、引用文献1および2の組合せにおける不備を補えていません。」
と主張する。
しかしながら、上記拒絶理由において周知であると認定した技術内容は「差動対伝送線において、差動インピーダンスが差動対を構成する2つの信号線の間隔によって定まること」であって、特定の導体構造(すなわち、本願発明の第3の導体構造又は第4の導体構造)を有する差動対伝送線に限定される技術内容ではないから、周知例として挙げた引用文献3及び4に当該特定の導体構造についての記載がないことを根拠とする審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(4)審判請求人は、平成30年3月12日にファクシミリで提出した「不服2017-10151の拒絶理由に対する意見書内容について」において、
「このように、本願の請求項1は、第1および第3のトレースならびに第2および第4のトレースによって形成される内部導体を取り囲む非めっきスルーホールなしに、単一の絶縁層を含みます。すなわち、本願の請求項1では、第1および第3のトレースから形成される導体と第1の導体構造との間に非めっきスルーホールは存在せず、第2および第4のトレースから形成される導体と第2の導体構造との間にも非めっきスルーホールは存在しません。よって、本願の請求項1に記載された構造は、引用文献2に示された構造とは異なります。」
と主張する。
確かに、引用文献2に記載の伝送路には、図2Aに示されるように2-3-L、2-4-TL、2-4-BL、2-3-C、2-4-TR、2-4-BR、2-3-Rといった非めっきスルーホールが存在するが、引用文献2から認定した技術事項は、内部導体そのものの構造であって、内部導体と外部導体との間の非めっきスルーホールに関する技術事項ではないから、引用文献2に記載の伝送路に非めっきスルーホールがあるからといって、引用発明と引用文献2に記載の内部導体そのものの構造についての技術事項を組合わせることができないとはいえない。
なお、本願の請求項1の記載からは、電気回路構造内における非めっきスルーホールの有無は特定することができない(すなわち、本願発明は、非めっきスルーホールを有する電気回路構造を除外するものではない。)。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
5.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-010151