特許拒絶査定不服審判
2017-008618
多セグメント型アブレーション電極を有する灌注式アブレーションカテーテル
- 審判番号
- 2017-008618
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-138075外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月13日
- 審決日
- 2018年08月20日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】セント・ジュード・メディカル・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人快友国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-138075「多セグメント型アブレーション電極を有する灌注式アブレーションカテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月26日出願公開、特開2015-211874〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、平成22年5月5日(パリ条約による優先権主張 平成21年5月7日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2012-509944号の一部を平成26年4月30日に新たな特許出願とした特願2014-93635号の一部を平成27年7月9日に新たな特許出願としたものであって、平成27年8月10日に特許請求の範囲について手続補正書が提出され、平成28年6月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月28日に意見書とともに特許請求の範囲について手続補正書が提出されたものの、平成29年2月17日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。そして、平成29年6月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに特許請求の範囲について手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 平成29年6月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年6月13日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正
本件補正は、平成28年9月28日付けで補正された特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含むものである。(なお、下線部は補正箇所を明確にする目的で当審にて付与した。)
(1)補正前の請求項1(平成28年9月28日付け手続補正書)
「カテーテル装置であって、
近位端と、遠位端を含む遠位部分と、を備える細長本体と、
側壁と、前記側壁内を通過しているルーメンと、を含み、前記遠位部分を少なくとも部分的に通過しているルーメン部材であって、前記ルーメン部材の前記側壁を通過している複数の開口を含む前記ルーメン部材と、
前記遠位部分にある複数の電極セグメントであって、前記ルーメン部材とは別体に構成されている前記複数の電極セグメントと、
少なくとも1つの中間セグメントと、を備え、
前記複数の電極セグメントは、少なくとも1つの中間セグメントの各々によって、互いに離間され、
前記複数の電極セグメントの各々は、側壁を備え、
前記複数の電極セグメントの各側壁は、当該側壁を少なくとも部分的に通過している少なくとも1つの開口を含み、
前記遠位部分は、ループ状にプリフォームされている、カテーテル装置。」
(2)補正後の請求項1
「カテーテル装置であって、
近位端と、遠位端を含む遠位部分と、を備える細長本体と、
側壁と、前記側壁内を通過しているルーメンと、を含み、前記遠位部分を少なくとも部分的に通過しているルーメン部材であって、前記ルーメン部材の前記側壁を通過している複数の開口を含む前記ルーメン部材と、
前記遠位部分にある複数の電極セグメントであって、前記ルーメン部材とは別体に構成されている前記複数の電極セグメントと、
少なくとも1つの中間セグメントと、を備えており、
前記複数の電極セグメントは、少なくとも1つの中間セグメントの各々によって、互いに離間され、
前記複数の電極セグメントの各々は、側壁を備え、
前記複数の電極セグメントの各側壁は、当該側壁を少なくとも部分的に通過している少なくとも1つの開口を含み、
前記遠位部分は、ループ状にプリフォームされている、カテーテル装置。」
2 本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の「を備え、」を、「を備えており、」と補正するものであって、特許法第17条の2第5項各号に規定する補正の目的のいずれにも該当しないことは明らかである。
補正の目的について、請求人は審判請求書において、特許請求の範囲の減縮であると主張するが、その理由について何ら具体的に言及しておらず、補正前の請求項1に係る発明のいずれかの特定事項を減縮しているとも、あるいは日本語として「を備え、」との語句の意味を減縮しているとも認められない。
しかしながら、本件の事案に鑑み、本件補正を、一応請求人の主張する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち同条第6項において準用する同法第126条第7項に規定される特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件に適合するものであるかについて、以下検討することとする。
(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(2)引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
(2-1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件優先日前に頒布された米国特許出願公開第2008/0249463号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、「MULTI-ELECTRODE IRRIGATED BALLOON CATHETER」(多電極灌流バルーンカテーテル)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。括弧内の日本語は、当審で付した仮訳である。
ア 「[0010]The present invention provides apparatus, systems and methods in which a catheter with multiple irrigated electrodes having uniform cooling and/or uniform fluid delivery is provided, useful in uniform cooling of the electrodes and/or the surrounding tissues. The catheter comprises an elongated tubular catheter body having a distal end, a proximal end, and a lumen extending longitudinally within the catheter body. A number of elution holes are provided in each electrode, and these holes are in fluid communication with the lumen through ducts. As such, cooling fluid is delivered from the pump, through the lumen, through the ducts, and out of the holes to the environment outside of the catheter.」
([0010]本発明は、電極、および/または周囲組織の均一な冷却に有益な、均一な冷却および/または均一な流体送達を伴う複数の灌流式電極を備えたカテーテルに関する装置、システムおよび方法を提供するものである。カテーテルは、遠位端、近位端、および、カテーテル本体内に長手方向に延びる内腔を有する細長い管状のカテーテル本体を備えている。多数の溶出孔が各電極に設けられており、これらの孔は、ダクトを介して内腔と連通している。このように、冷却流体がポンプから供給され内腔を通って、ダクトを通って、そして溶出孔からカテーテルの外側に出る。)
イ 「[0043]Referring now to FIG. 1 , which illustrates a catheter system 10 , having control unit body 12 , tubing sets 14 and 16 , and an elongated catheter body 18 with distal region 20 . Tubing sets 14 and 16 can be connected to any suitable known devices in the art such as monitor/display, RF generator, signal processor, fluid pump, etc. The preferred system 10 can also use temperature sensor and mapping tool such as those described in U.S. Pat. No. 6,217,573, incorporated herein by reference in its entirety.
[0044]In FIG. 2 , catheter distal region 20 has bands of electrodes 22 positioned spaced apart in different longitudinal sections. Each band of electrodes 22 has elution holes 25 located in the same longitudinal sections. At the terminal end is catheter tip 21 , also having electrodes. Catheter tip 21 can be manufactured separately and attached to the rest of the elongated catheter body.
[0045]The contemplated catheter tip 21 can be made of suitable biocompatible materials to conduct RF energy and to withstand temperature extreme, such materials include natural and synthetic polymers, various metals and metal alloys, naturally occurring materials, textile fibers, glass and ceramic materials, sol-gel materials, and all reasonable combinations thereof More preferably, the catheter tip 21 is made of 90% platinum with 10% iridium.
[0046]FIG. 3 shows one preferred embodiment of the catheter tip 21 , having a through hole 26 and groove 28 . Hole 26 and groove 28 are used to help attaching the catheter tip 21 to the catheter body 18 . Catheter body 18 has corresponding structures to matingly couple to the groove 28 and hole 26 .
[0047]FIG. 4 is a side view of the catheter tip 21 . Preferred embodiments of the catheter tip 21 have two rows of elution holes 25 .・・・」
([0043]ここで図1を参照すると、カテーテルシステム10は、制御部本体12と、チューブセット14及び16と、遠位領域20を有する細長いカテーテル本体18を有する。チューブセット14及び16は、モニタ/ディスプレイ、RF発生器、信号処理器、流体ポンプ、等のような当技術分野において周知の任意の適切な装置に接続することができる。好適なシステム10は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,217,573号に記載されているような、温度センサ及びマッピングツールも使用することができる。
[0044]図2で、カテーテル遠位領域20は、異なる長手方向部分に間隔を置いて配置された電極22のバンドを有している。電極22の各バンドは、同一の長手方向区分内に配置された溶出孔25を有している。末端でカテーテル先端部21もまた、電極を有している。カテーテル先端21は、別々に製造され、細長いカテーテル本体の残りの部分に取り付けることができる。
[0045]意図されるカテーテル先端部21は、RFエネルギーを伝導するために、極端な温度に耐えるのに適した生体適合性材料で作ることができ、そのような材料には、天然及び合成ポリマー、様々な金属および金属合金、天然に存在する材料、紡織繊維、ガラス及びセラミック材料、ゾル-ゲル材料、並びにこれらの妥当なすべての組み合わせを含み、より好ましくは、カテーテル先端部21は10%のイリジウムを有する白金90%で構成されている。
「0046]図3は、貫通孔26及び溝28を有する、カテーテル先端部21の1つの好ましい実施形態を示す。貫通孔26及び溝28は、カテーテル先端部21をカテーテル本体18に取り付けるのを助けるために使用されている。カテーテル本体18は溝28及び貫通孔26に嵌合するために対応した構造を有している。
[0047]図4は、カテーテル先端21の側面図である。カテーテル先端部21の好ましい実施形態は、2列の溶出孔25を有している。・・・)
ウ 「[0056]In FIG. 14-17 , three inflatable balloons 230A, 230B, 230C can be optionally provided to the electrode catheter as discussed above.」
(図14-17のように、3つの膨張可能なバルーン230A,230B,230Cを、上記で議論した電極カテーテルに対して任意に提供することができる。)
エ 「1 . An irrigated catheter comprising:
a catheter body having an exterior surface and at least one internal lumen with a varied diameter along a longitudinal length thereof for passage of a fluid; a plurality of elution holes along the exterior surface and spaced from one another along the longitudinal length of the catheter body; and a plurality of ducts in fluid communication with the lumen, each duct leading from the lumen to one of the elution holes; wherein the diameter of the lumen is varied between at least two of the longitudinally spaced ducts to change a fluid pressure along the longitudinal length and regulate fluid flow through the spaced apart elution holes.
・・・
3. The irrigated catheter of claim 1 further comprising at least one RF ablation electrode at a distal end of the catheter body, the RF electrode having an outer surface, the elution holes provided in the outer surface.
・・・
31. The irrigated catheter of claim 1 , further comprising a plurality of electrodes coupled to the catheter body and spaced along the longitudinal length of the catheter body;
wherein the elution holes are provided in the electrodes. 」
(1.外面と、長さ方向に沿って直径が変化し、流体の通路となる少なくとも1つの内腔を有するカテーテル本体;前記外面に沿って、カテーテル本体の長手方向に沿って互いに間隔を有した複数の溶出孔;各ダクトが前記内腔から前記溶出孔の1つに至る、前記内腔と流体連通する複数のダクトを備えるとともに;長手方向に沿って流体圧を変化させ、間隔を置いて溶出孔を出る流体の流れを調整するために、前記内腔の直径が長手方向に離間したダクトの少なくとも2個の間で変化する、ことを特徴とする灌流式カテーテル。
・・・
3.前記カテーテル本体の遠位端に少なくとも1つのRFアブレーション電極を備え、当該RF電極は外側表面を備え、前記溶出孔は当該外側表面にあることを特徴とする、請求項1に記載の灌注式カテーテル。
・・・
31.さらに、前記カテーテル本体に結合されかつカテーテル本体の長手方向に沿って離間された複数の電極とを備え;該電極には溶出孔が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の灌流式カテーテル。)
a 図1を参照しつつ、摘記事項アの「カテーテルは、遠位端、近位端、および、カテーテル本体内に長手方向に延びる内腔を有する細長い管状のカテーテル本体部分を備えている。」との記載、摘記事項イの「[0043]ここで図1を参照すると、カテーテルシステム10は、制御部本体12と、チューブセット14及び16と、遠位領域20を有する細長いカテーテル本体18を有する。」及び摘記事項ウの「1.外面と、長さ方向に沿って直径が変化し、流体の通路となる少なくとも1つの内腔を有するカテーテル本体;・・・を備える・・・ことを特徴とする灌流式カテーテル。」との記載を併せ読むと、引用文献1には、カテーテルが、「近位端と、遠位端を含む遠位領域20と、外面と、長手方向に延びる内腔とを備えるカテーテル本体」を備えることが開示されている。
b 図2を参照しつつ、摘記事項アの「[0010]本発明は、電極、および/または周囲組織の均一な冷却に有益な、均一な冷却および/または均一な流体送達を伴う複数の灌流式電極を備えたカテーテルに関する装置、システムおよび方法を提供するものである。・・・多数の溶出孔が各電極に設けられており、これらの孔は、ダクトを介して内腔と連通している。このように、冷却流体がポンプから供給され内腔を通って、ダクトを通って、そして溶出孔からカテーテルの外側に出る。」との記載、摘記事項イの「[0044]図2で、カテーテル遠位領域20は、異なる長手方向部分に間隔を置いて配置された電極22のバンドを有している。」との記載、摘記事項エの「3.前記カテーテル本体の遠位端に少なくとも1つのRFアブレーション電極を備え、当該RF電極は外側表面を備え、前記溶出孔は当該外側表面にあることを特徴とする、請求項1に記載の灌注式カテーテル。」との記載を総合すると、引用文献1のカテーテルは、「遠位領域20は、異なる長手方向部分に間隔をおいて配置された複数の電極22のバンドを備え、前記複数の電極22のバンドの各々は、外側表面を備え、前記複数の電極22のバンドの各外側表面は、同一の長手方向区分内に配置され、冷却流体が内腔を通ってカテーテルの外側に出る、溶出孔を備えている」ものといえる。
(2-2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の摘記事項ア~エ及び認定事項a、bを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 カテーテルであって、
近位端と、遠位端を含む遠位領域20と、外面と、長手方向に延びる内腔とを備えるカテーテル本体と、
前記遠位領域20は、異なる長手方向部分に間隔をおいて配置された複数の電極22のバンドを備えており、
前記複数の電極22のバンドの各々は、外側表面を備え、
前記複数の電極22のバンドの各外側表面は、同一の長手方向区分内に配置され、冷却流体が内腔を通ってカテーテルの外側に出る、溶出孔を備えている、
カテーテル。」
(3-1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件優先日前に頒布された米国特許出願公開第2008/00161788号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、「ABLATION CATHETER WITH SENSOR ARRAY AND DISCRIMINATION CIRCUIT TO MINIMIZE VARIATION IN POWER DENSITY」(センサーアレイと電力密度の変化を最小化するための判定回路を備えたアブレーションカテーテル)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。括弧内の日本語は、当審で付した仮訳である。
「[0054]The catheter 22 may further house a shape-retention or shape-memory wire 48 in order to impart a desired shape to the distal end 12 of the catheter 22 in the area of the ablation electrode section 20 . See also FIGS. 5-7 . A shape-retention or shape-memory wire 48 is flexible while a clinician negotiates the catheter 22 through the vasculature to reach the heart and enter an atrial chamber. Once the distal end 12 of the catheter 22 reaches the desired cardiac cavity with the ablation electrode section 20 , the shape-retention/shape-memory wire 48 can be caused to assume a pre-formed shape form, e.g., the C-shaped configuration of the ablation electrode section 20 , to accurately orient the ablation electrode section 20 within the cardiac cavity for the procedure to be performed. The C-shaped configuration of the ablation electrode section 20 as shown in FIGS. 2 and 3 may be imparted to the catheter through the use of such shape-retention or shape-memory wires, in addition to or in lieu of pre-molding of the catheter material, to appropriately conform to tissue or to the shape of a cavity in order to create the desired lesion at a desired location.」
([0054]カテーテル22は、アブレーション電極セクション20の領域のカテーテル22の遠位端12に所望の形状を付与するために、形状保持又は形状記憶ワイヤ48を収容してもよい。図5-7を参照のこと。形状保持又は形状記憶ワイヤ48は、臨床医がカテーテル22を心臓に至る血管系を通り抜けて心房に入れる間、可撓性である。カテーテル22の遠位端12がアブレーション電極セクション20と共に所望の心腔に到達すると、形状保持/形状記憶ワイヤ48は、実行しようとする処置に応じてアブレーション電極セクション20を心腔内で正確に方向付けるために、例えば、アブレーション電極セクション20のC型の形状のような、予め形成された形状の形態にすることができる。図2及び図3に示すアブレーション電極セクション20のC型の形状は、カテーテル材料を予め成形することに加え、又はその代わりに、そのような形状保持又は形状記憶ワイヤを使用することにより、所望の傷を所望の位置に作るために組織又は腔の形状に適切に適合することができる。)
(3-2)引用文献2に記載された発明
引用文献2の摘記事項を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「カテーテル22の遠位端12を含む領域のアブレーション電極セクション20がC型の形状に予め形成されていること」
(4)対比及び判断
ア 対比
補正発明と引用発明1とを、その文言の意味、機能等に基づき技術常識をふまえて対比すると、引用発明1の「カテーテル」は補正発明の「カテーテル装置」に相当する。以下同様に、「遠位領域20」は「遠位部分」に、「内腔」は「ルーメン」に、「カテーテル本体」は「細長本体」及び「ルーメン部材」に、カテーテル本体が備える「外面」はルーメン部材が含む「側壁」に、「電極22のバンド」は「電極セグメント」に、電極22のバンドが備える「外側表面」は電極セグメントが備える「側壁」に、電極22のバンドが備える「溶出孔」は電極セグメントが含む「開口」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1のカテーテル本体の「内腔」は、その字義から内部に設けられた腔を意味することが明らかであるから、外面である「側壁」内「を通過している」ということができる。さらに、引用発明1のカテーテル本体は、遠位領域20を備えているのであるから、「遠位部分を少なくとも部分的に通過している」といえる。
そして、引用発明1のカテーテルは、「冷却流体が内腔を通ってカテーテルの外側に出る」のであるから、冷却流体は、側壁内を通過している内腔から電極22のバンドの外側表面の溶出孔から出る、すなわち内腔から、カテーテル本体の側壁を通過し、さらに電極22のバンドの外側表面の溶出孔から出るものといえる。よって、引用発明1のカテーテル本体は「前記側壁を通過している複数の開口を含む」ということができる。
さらに、引用発明1のカテーテルの遠位領域20に配置された複数の電極22のバンドは、「異なる長手方向部分に間隔をおいて配置された」ものであるから、それらの電極22のバンド同士の間隔に相当する部分が存することは自明である。そして、引用発明1のカテーテルにおいて、当該「電極22のバンド同士の間隔に相当する部分」は、複数の電極22のバンドを互いに離間するものといえるから、補正発明の「中間セグメント」に相当し、引用発明1は「少なくとも1つの中間セグメント」「を備えており、前記複数の電極セグメントは、少なくとも1つの中間セグメントの各々によって、互いに離間され」ているということができる。
してみると、補正発明と引用発明1とは、以下の一致点において一致し、相違点1及び2において相違する。
(一致点)
「 カテーテル装置であって、
近位端と、遠位端を含む遠位部分と、を備える細長本体と、
側壁と、ルーメンと、を含み、前記遠位部分を少なくとも部分的に通過しているルーメン部材であって、前記ルーメン部材の前記側壁を通過している複数の開口を含む前記ルーメン部材と、
前記遠位部分にある複数の電極セグメントと、
少なくとも1つの中間セグメントと、を備えており、
前記複数の電極セグメントは、少なくとも1つの中間セグメントの各々によって、互いに離間され、
前記複数の電極セグメントの各々は、側壁を備え、
前記複数の電極セグメントの各側壁は、当該側壁を少なくとも部分的に通過している少なくとも1つの開口を含む、
カテーテル装置。」
(相違点1)
補正発明では、「複数の電極セグメントが、ルーメン部材とは別体に構成されている」のに対し、引用発明1では、複数の電極22のバンドとカテーテル本体とは別体に構成されているか明らかでない点。
(相違点2)
補正発明では、「遠位部分は、ループ状にプリフォームされている」のに対して、引用発明1では、遠位領域20が、ループ状にプリフォームされているか明らかでない点。
イ 判断
相違点1について検討する。
引用発明1の複数の電極22のバンドについて検討すると、引用文献1には、複数の電極22のバンドを如何にして設けたかについての明示的な記載は見あたらない。
しかし、複数の電極22のバンドの「バンド」とは、一般に、「平たいひも」(広辞苑第六版)を指すことに鑑みると、引用発明1の複数の電極22のバンドは、平たいひも状の構成を備えたものと解される。
そして、複数の電極22のバンドとカテーテル本体の各々が有する機能に注目すると、複数の電極22のバンドはRFエネルギーの伝導という機能を有するのに対し、カテーテル本体は患者の血管に挿入され、複雑な脈管構造を有する血管の中をたどって術部まで導入されるという機能を有し、具体的には、柔軟性やカテーテル本体の近位側で加えられた術者の回転等の操作を的確に伝達するトルク伝達特性等が求められることは、当該分野における技術常識といえる。同時に、異なる機能が求められる部品を、それぞれの機能に応じ適切な材料を用いて別個に作成し、それらを組み立てることにより、最終的な製品とすることもまたごく普通に行われていることである。
さらに、上記摘記事項イの「[0044]図2で、カテーテル遠位領域20は、・・・末端でカテーテル先端部21もまた、電極を有している。カテーテル先端21は、別々に製造され、細長いカテーテル本体の残りの部分に取り付けることができる。[0045]意図されるカテーテル先端部21は、RFエネルギーを伝導するために、極端な温度に耐えるのに適した生体適合性材料で作ることができ、そのような材料には、天然及び合成ポリマー、様々な金属および金属合金、天然に存在する材料、紡織繊維、ガラス及びセラミック材料、ゾル-ゲル材料、並びにこれらの妥当なすべての組み合わせを含み、より好ましくは、カテーテル先端部21は10%のイリジウムを有する白金90%で構成されている。」との記載をみると、カテーテル遠位領域において複数の電極22のバンドと同様にRFエネルギーの組織への伝導という機能を有し、好ましくはイリジウムと白金の合金からなるカテーテル先端部21を、カテーテル本体の残りの部分に取り付ける、すなわちカテーテル本体とは別体に構成することが開示されている。
また、アブレーション等に用いるカテーテルの電極とカテーテル本体とを別体に構成することは、常套手段である(必要があれば、特開2009-268696号公報(図1及び3のカテーテル先端部30におけるリング状電極31を参照)、特表2008-520279号公報(図3のチューブ19におけるリング電極38を参照。)、特表2005-506872号公報(図1、2、4の外部構造物112における電極106を参照。)、特表2002-531164号公報(図3の端部シャフト13におけるリング状の切除電極14を参照。))といえる。
これらを総合してみると、引用発明1の複数の電極22のバンドは、カテーテル本体とは別体に構成されているものといえる。
してみると、相違点1は実質的なものでない。
次に相違点2について検討する。
引用文献2には引用発明2が記載されているところ、引用発明2の「カテーテル22の遠位端12を含む領域のアブレーション電極セクション20」は補正発明の「遠位部分」に相当し、同様に「C型の形状に予め形成されている」は「ループ状にプリフォームされている」に相当する。
そして、引用発明1及び2はいずれもアブレーションに用いるカテーテルに関する発明であるから、引用発明1の遠位領域20の構成として、引用発明2を採用することにより、相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことといえる。
また、本件明細書に記載された補正発明の効果について検討しても、引用発明1及び2が奏する効果からみて、格別顕著なものということはできない。
よって、補正発明は引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。
(5)本件補正についての結び
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。よって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~22に係る発明は、平成28年9月28日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(1)に示すとおりのものであると認める。
第4 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された、上記引用文献1~2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
第5 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び2の記載事項は、上記第2 2(2)に示したとおりである。そして、引用発明1及び2は上記第2 2(2-2)及び(3-2)で認定したとおりのものである。
第6 対比及び判断
本願発明は、補正発明を減縮したものであるから、補正発明は、本願発明の発明特定事項の全てを含んでいる。
そうすると、補正発明が上記第2 2(4)に示したように、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明1及び2から容易に発明することができたものである。
第7 結び
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-008618