特許拒絶査定不服審判
2017-005919
遊技機
- 審判番号
- 2017-005919
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-183230外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月25日
- 審決日
- 2018年03月13日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社三共
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-183230号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月18日出願公開、特開2016- 26632号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、平成24年7月4日に出願した特願2012-150677号の一部を平成27年9月16日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年10月17日に意見書が提出されたところ、平成29年2月2日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成29年11月21日付け(発送日:11月28日)で拒絶の理由が通知され、平成30年1月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
2 本願発明
平成30年1月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(下線部は補正箇所を示す。また、A~E2は、分説するために当審にて付した。)。
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 遊技機への電力供給が停止しても所定期間記憶内容を保持可能であり、制御を行なう際に発生する変動データを記憶する変動データ記憶手段と、
C 遊技機への電力供給が開始されたときに、所定条件の成立に基づいて前記変動データ記憶手段の記憶内容を初期化する初期化処理を実行する初期化手段と、
D 所定の異常の発生と前記初期化手段による前記初期化処理の実行とを含む複数種類の条件のうち、いずれの条件が成立した場合であっても共通の異常情報を外部出力する外部出力手段とを備え、
E 前記外部出力手段は、
E1 前記所定の異常が発生したことに基づいて前記異常情報を外部出力しているときに前記遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開され、前記初期化手段によって前記初期化処理が実行された場合には特定期間が経過するまで前記異常情報を外部出力し、
E2 前記所定の異常が発生したことに基づいて前記異常情報を外部出力しているときに前記遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開され、前記初期化手段によって前記初期化処理が実行されなかった場合には前記初期化手段によって前記初期化処理が実行されるまで、電力供給されている期間において前記異常情報を外部出力する、遊技機。」
3 拒絶理由通知の概要
平成29年11月21日付け拒絶理由通知は、本願発明は、当業者が特開2011-234869号公報に記載された発明、及び、特開2011-246号公報に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
4 刊行物に記載された発明
(1)刊行物1に記載された発明
本願の出願遡及日前に頒布され平成29年11月21日付け拒絶理由通知で引用された刊行物である特開2011-234869号公報(以下「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下、同じ。)。
ア 「【請求項1】
開放状態と閉鎖状態とに変化する可変入賞装置と、始動領域を遊技媒体が通過した後、可変表示の開始を許容する開始条件が成立したことにもとづいて各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を開始し、表示結果を導出表示する可変表示部とを備え、該可変表示部に特定表示結果が導出表示されたときに前記可変入賞装置が前記開放状態に制御されるラウンドを所定回数実行する特定遊技状態に制御するとともに、通常遊技状態であるときに比べて識別情報の可変表示の表示結果が前記特定表示結果となる確率が向上した高確率状態に制御可能な遊技機であって、
制御を行う際に発生する変動データとして、少なくとも前記高確率状態に制御されていることを示す高確率状態中情報を含むデータを記憶する変動データ記憶手段と、
遊技機への電力供給が停止していても前記変動データ記憶手段の記憶内容を所定期間保持させることが可能な記憶内容保持手段と、
前記特定遊技状態とするか否かと、該特定遊技状態として、前記可変入賞装置を遊技者にとって有利な開放パターンで前記開放状態に制御するラウンドを前記所定回数実行する第1特定遊技状態、または前記可変入賞装置を遊技者にとって不利な開放パターンで前記開放状態に制御するラウンドを前記所定回数実行する第2特定遊技状態を含む複数種類の前記特定遊技状態のいずれとするかとを、表示結果の導出表示以前に決定する事前決定手段と、
電力供給が開始されたときに、前記変動データ記憶手段に前記高確率状態中情報が記憶されていることにもとづいて、前記高確率状態に制御されていることを示す高確率状態中信号を、遊技機の外部に出力する高確率状態中信号外部出力手段と、
前記高確率状態であるか否かを認識困難な共通演出を実行する共通演出実行手段と、を備え、
前記高確率状態中信号外部出力手段は、電力供給が開始されてから所定条件が成立するまで前記高確率状態中信号の出力を継続し、前記所定条件が成立すると前記高確率状態中信号の出力を禁止し、
前記共通演出実行手段は、前記事前決定手段によって前記第2特定遊技状態とすると決定されたことにもとづいて、前記共通演出を実行可能である
ことを特徴とする遊技機。
・・・
【請求項6】
操作に応じて操作信号を出力する初期化操作手段と、
電力供給が開始されたときに、前記初期化操作手段からの前記操作信号が入力されたときに、変動データ記憶手段の記憶内容を初期化する初期化処理を実行する初期化処理実行手段と、
所定のエラーが発生しているか否かを判定するエラー判定手段と、
少なくとも、前記初期化処理実行手段によって前記初期化処理が実行されたこと、および前記エラー判定手段によって前記所定のエラーが発生していると判定されたことを含む所定の信号出力条件が成立したことにもとづいて、遊技機の外部に所定の外部出力信号を出力する外部出力手段と、を備え、
前記外部出力手段は、
前記初期化処理実行手段によって前記初期化処理が実行されたときと前記エラー判定手段によって前記所定のエラーが発生していると判定されたときとで、高確率状態中信号を出力する出力端子とは別に遊技機に設けられた共通の出力端子から前記所定の外部出力信号を出力し、
前記所定の外部出力信号を出力しているときに新たに前記所定の信号出力条件が成立した場合には、前記所定の外部出力信号を出力する出力時間を延長する
請求項1から請求項5のうちのいずれかに記載の遊技機。」
イ 「【0010】
本発明による遊技機は、開放状態と閉鎖状態とに変化する可変入賞装置(例えば、大入賞口を形成する特別可変入賞球装置20)と、始動領域(例えば、第1始動入賞口13、第2始動入賞口14)を遊技媒体(例えば、遊技球)が通過した後、可変表示の開始を許容する開始条件が成立したこと(例えば、第1特別図柄の変動表示中でも第2特別図柄の変動表示中でもなく、大当り遊技状態に移行されている状態でもない場合)にもとづいて各々を識別可能な複数種類の識別情報(例えば、第1特別図柄、第2特別図柄)の可変表示を開始し、表示結果を導出表示する可変表示部(例えば、第1特別図柄表示器8a、第2特別図柄表示器8b)とを備え、該可変表示部に特定表示結果(例えば、大当り図柄)が導出表示されたときに可変入賞装置が開放状態に制御されるラウンドを所定回数(例えば、15回)実行する特定遊技状態(例えば、大当り遊技状態)に制御するとともに、通常遊技状態であるときに比べて識別情報の可変表示の表示結果が特定表示結果となる確率が向上した高確率状態(例えば、確変状態)に制御可能な遊技機であって、制御を行う際に発生する変動データとして、少なくとも高確率状態に制御されていることを示す高確率状態中情報(例えば、確変フラグ)を含むデータを記憶する変動データ記憶手段(例えば、バックアップRAM)と、・・・
・・・
【0015】
遊技機は、操作に応じて操作信号を出力する初期化操作手段(例えば、クリアスイッチ)と、電力供給が開始されたときに、初期化操作手段からの操作信号が入力されたときに、変動データ記憶手段の記憶内容を初期化する初期化処理を実行する初期化処理実行手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS10~S14を実行する部分)と、所定のエラーが発生しているか否かを判定するエラー判定手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS2121~S2126を実行する部分)と、少なくとも、初期化処理実行手段によって初期化処理が実行されたこと、およびエラー判定手段によって所定のエラーが発生していると判定されたことを含む所定の信号出力条件が成立したこと(例えば、初期化処理が実行されたこと、第2始動入賞口14への異常入賞を検出したこと)にもとづいて、遊技機の外部に所定の外部出力信号(例えば、セキュリティ信号)を出力する外部出力手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS14a,S2127でセキュリティ信号情報タイマをセットした後に、ステップS1069~S1074,S1102,S1103を実行して、セキュリティ信号を出力する部分)と、を備え、外部出力手段は、初期化処理実行手段によって初期化処理が実行されたときとエラー判定手段によって所定のエラーが発生していると判定されたときとで、高確率状態中信号を出力する出力端子とは別に遊技機に設けられた共通の出力端子(例えば、ターミナル基板160に設けられたコネクタCN8)から所定の外部出力信号を出力し(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、ステップS14a,S2127,S1069~S1074,S1102,S1103を実行することによって、ターミナル基板160のコネクタCN8から共通のセキュリティ信号として外部出力する)、所定の外部出力信号を出力しているときに新たに所定の信号出力条件が成立した場合には、所定の外部出力信号を出力する出力時間を延長する(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、セキュリティ信号の出力中であるか否かにかかわらず、ステップS2121~S2126を実行して第2始動入賞口14への異常入賞を検出した場合には、ステップS2127を実行してセキュリティ信号情報タイマの値を上書きする)ように構成されていてもよい。そのような構成によれば、初期化処理が実行されたことにもとづいて所定の外部出力信号を出力することによって、不正に初期化処理を実行させて特定遊技状態となることを狙う行為を防止することができる。また、初期化処理が実行されたときと所定のエラーが発生していると判定されたときとで共通の出力端子に所定の外部出力信号を出力するので、外部出力用の信号線の無駄を低減することができる。従って、不正に初期化処理を実行させて特定遊技状態となることを狙う行為防止しつつ、外部出力用の信号線の無駄を低減することができる。」
ウ「【0076】
また、RAM55は、その一部または全部が電源基板910において作成されるバックアップ電源によってバックアップされている不揮発性記憶手段としてのバックアップRAMである。すなわち、遊技機に対する電力供給が停止しても、所定期間(バックアップ電源としてのコンデンサが放電してバックアップ電源が電力供給不能になるまで)は、RAM55の一部または全部の内容は保存される。特に、少なくとも、遊技状態すなわち遊技制御手段の制御状態に応じたデータ(特別図柄プロセスフラグや、確変フラグなど)と未払出賞球数を示すデータは、バックアップRAMに保存される。遊技制御手段の制御状態に応じたデータとは、停電等が生じた後に復旧した場合に、そのデータにもとづいて、制御状態を停電等の発生前に復旧させるために必要なデータである。また、制御状態に応じたデータと未払出賞球数を示すデータとを遊技の進行状態を示すデータと定義する。なお、この実施の形態では、RAM55の全部が、電源バックアップされているとする。」
エ 「【0107】
なお、コネクタCN8から出力されるセキュリティ信号は、遊技機のセキュリティ状態を示す信号である。具体的には、後述するように、第2始動口スイッチ14aの検出結果と入賞確認スイッチ14bの検出結果とにもとづいて、第2始動入賞口14への異常入賞が発生したと判定された場合に、セキュリティ信号が所定期間(例えば、4分間)ホールコンピュータなどの外部装置に出力される。そのように構成することによって、電波などを用いて第2始動入賞口14への入賞数が実際の入賞数よりも多くなるように認識させるような不正行為が行われたことを、ホールコンピュータなどの外部装置側で認識できるようにすることができる。
【0108】
また、この実施の形態では、遊技機への電源投入が行われて初期化処理が実行された場合にも、セキュリティ信号が所定期間(例えば、30秒間)ホールコンピュータなどの外部装置に出力される。そのように構成することによって、不自然なタイミングで(例えば、遊技店の開店時に全ての遊技機の電源リセット作業を終えた後であるにもかかわらず)初期化処理が実行されたことを認識可能とすることによって、不正に遊技機を電源リセットさせて電源リセットのタイミングで大当りを狙うような不正行為が行われた可能性を、ホールコンピュータなどの外部装置側で認識できるようにすることができる。
【0109】
なお、この実施の形態では、上記のように、異常入賞が検出された場合と、初期化処理(例えば、遊技機への電源投入時に、クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理)が実行された場合とで、共通のセキュリティ信号をターミナル基板160の共通のコネクタCN8から外部出力している。・・・」
オ 「【0131】
初期化処理では、CPU56は、まず、RAMクリア処理を行う(ステップS10)。なお、RAM55の全領域を初期化せず、所定のデータをそのままにしてもよい。また、ROM54に格納されている初期化時設定テーブルの先頭アドレスをポインタに設定し(ステップS11)、初期化時設定テーブルの内容を順次業領域に設定する(ステップS12)。
・・・
【0134】
また、CPU56は、セキュリティ信号情報タイマに所定時間(本例では、30秒)をセットする(ステップS14a)。セキュリティ信号情報タイマは、ターミナル基板160から出力するセキュリティ信号のオン時間を計測するためのタイマである。この実施の形態では、ステップS14aでセキュリティ信号情報タイマに所定時間がセットされたことにもとづいて、後述する情報出力処理(S31参照)が実行されることによって、遊技機の電源投入時に初期化処理が実行されたときに、セキュリティ信号が所定時間(本例では、30秒)外部出力される。」
カ 「【0355】
なお、上記のように構成する場合、遊技機への電力供給が停止した後に電力供給が再開したときには、電力供給の停止前にエラー報知中であった場合には、電源供給の再開時に所定のエラー報知コマンドを演出制御用マイクロコンピュータ100に対して再度送信するようにするようにしてもよい。すなわち、演出制御用マイクロコンピュータ100側ではRAMなどの記憶内容がバックアップ電源によってバックアップされていないので、停電が発生してしまうと、そのままでは、それまで実行していたエラー報知などの演出を実行できないのであるが、停電復旧時に所定のエラー報知コマンドを再度送信するように構成することによって、停電復旧時にエラー報知を再開できるようにすることができる。また、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、セキュリティ信号情報タイマの値もバックアップRAMにバックアップしておくようにし、電力供給の停止前にセキュリティ信号の出力中であった場合には、停電復旧時にバックアップされていたセキュリティ信号情報タイマの値にもとづいてセキュリティ信号の出力を再開できるようにしてもよい。それらの構成を備えることによって、故意に遊技機への電源断を発生させることによって、エラー報知を消したりセキュリティ信号の出力を停止させたりするような不正行為を防止することができる。」
キ 「【0415】
なお、この実施の形態において、第2始動入賞口14への異常入賞を検出した場合のセキュリティ信号の出力期間を4分間としたのは、第2始動入賞口14への異常入賞の場合には、できるかぎり長い時間に亘ってセキュリティ信号を出力すべく、設定可能な略最大時間としたものである。・・・」
ク 上記エには「遊技機への電源投入が行われて初期化処理が実行された場合にも、セキュリティ信号が所定期間(例えば、30秒間)ホールコンピュータなどの外部装置に出力される。」(【0108】)と記載されるとともに、「初期化処理(例えば、遊技機への電源投入時に、クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理)が実行され」(【0109】)と記載されている。また、上記ウには「RAM55は、その一部または全部が電源基板910において作成されるバックアップ電源によってバックアップされている不揮発性記憶手段としてのバックアップRAMである。」(【0076】)と記載されており、RAM55がバックアップRAMで有り、初期化処理によってクリアされるものであることはあきらかである。そして初期化処理に関し、上記オには、「初期化処理では、CPU56は、まず、RAMクリア処理を行う(ステップS10)。」(【0131】)、と記載され、このRAMも初期化時にクリアされるものであるからバックアップRAMであることは明らかである。その後、「また、CPU56は、セキュリティ信号情報タイマに所定時間(本例では、30秒)をセットする(ステップS14a)。」(【0134】)と記載され、さらに、「ステップS14aでセキュリティ信号情報タイマに所定時間がセットされたことにもとづいて、・・・遊技機の電源投入時に初期化処理が実行されたときに、セキュリティ信号が所定時間(本例では、30秒)外部出力される。」(【0134】)と記載されているから、初期化処理でバックアップRAMをクリアした後、セキュリティ信号情報タイマを30秒にセットすることで、セキュリティ信号を所定期間(30秒間)外部出力することが記載されている。
したがって刊行物1には、「遊技機への電源投入が行われて初期化処理が実行された場合に、バックアップRAMをクリアした後、セキュリティ信号情報タイマを30秒にセットすることで、セキュリティ信号を所定期間(30秒間)ホールコンピュータなどの外部装置に外部出力」することが記載されている。
ケ 上記イに「初期化処理実行手段によって初期化処理が実行された」ときと「エラー判定手段によって所定のエラーが発生していると判定された」ときとで、「共通の出力端子・・・から所定の外部出力信号を出力し(例えば・・・、コネクタCN8から共通のセキュリティ信号として外部出力する)」(【0015】)と記載され上記エに「異常入賞が検出された場合と、初期化処理(例えば、遊技機への電源投入時に、クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理)が実行された場合とで、共通のセキュリティ信号をターミナル基板160の共通のコネクタCN8から外部出力している。」(【0109】)と記載されているように、「異常入賞」が、「所定のエラー」にあたることは明らかである。また、上記キには「異常入賞を検出した場合のセキュリティ信号の出力期間を4分間としたのは、第2始動入賞口14への異常入賞の場合には、できるかぎり長い時間に亘ってセキュリティ信号を出力すべく、設定可能な略最大時間とした」と記載されているから、刊行物1には「所定のエラーが発生していると判定された際できるかぎり長い時間にわたってセキュリティ信号を出力すべく、所定期間(例えば、4分間)を設定する」ことが記載されているといえる。
上記ア~キの記載事項及びク、ケの認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる(a~e2は、本願発明のA~E2に対応させて付した。)。
「a 遊技機であって、(【請求項1】)
b 制御を行う際に発生する変動データを記憶する変動データ記憶手段(バックアップRAM)と、遊技機への電力供給が停止していても前記変動データ記憶手段の記憶内容を所定期間保持させることが可能な記憶内容保持手段と、(【請求項1】、【0010】)
c 電力供給が開始されたときに、クリアスイッチによる操作が行われたことに基づいて、変動データ記憶手段の記憶内容を初期化する初期化処理を実行する初期化処理実行手段(ステップS10~S14)と、(【請求項6】、【0015】、【0109】)
d 前記初期化処理実行手段によって前記初期化処理が実行されたこと、およびエラー判定手段によって前記所定のエラーが発生していると判定されたことを含む所定の信号出力条件が成立したことにもとづいて、セキュリティ信号情報タイマをセットして、遊技機の外部に共通のセキュリティ信号を外部出力する外部出力手段と、を備え、(【請求項6】、【0015】、【0109】)
e1 遊技機への電源投入が行われて初期化処理が実行された場合に、バックアップRAMをクリアした後、セキュリティ信号情報タイマを30秒にセットすることで、セキュリティ信号を所定期間(30秒間)ホールコンピュータなどの外部装置に外部出力し、(上記ク)
e2 所定のエラーが発生していると判定された際には、できるかぎり長い時間にわたってセキュリティ信号を出力すべく、所定期間(例えば、4分間)を設定するとともに、該所定期間をカウントするセキュリティ信号情報タイマの値をバックアップRAMにバックアップしておくようにして、電力供給の停止前に、セキュリティ信号が出力中であった場合には、停電復旧時にバックアップされていたセキュリティ信号情報タイマの値にもとづいてセキュリティ信号の出力を再開するようにし、故意に遊技機への電源断を発生させることによって、エラー報知を消したりセキュリティ信号の出力を停止させたりするような不正行為を防止する、遊技機。(上記ケ、【0355】)」
5 対比
上記本願発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の構成aの「遊技機」は本願発明の構成Aの「遊技を行うことが可能な遊技機」に相当する。
刊行物1発明の構成bの「制御を行う際に発生する変動データを記憶する変動データ記憶手段(バックアップRAM)」は本願発明の構成Bの「制御を行なう際に発生する変動データを記憶する変動データ記憶手段」に相当する。また、刊行物1発明の構成bの「遊技機への電力供給が停止していても前記変動データ記憶手段の記憶内容を所定期間保持させることが可能」は本願発明の構成Bの「遊技機への電力供給が停止しても所定期間記憶内容を保持可能」に相当する。
刊行物1発明の構成cの「電力供給が開始されたときに、クリアスイッチによる操作が行われたことに基づいて」は、本願発明の構成Cの「遊技機への電力供給が開始されたときに、所定条件の成立に基づいて」に相当する。また、刊行物1発明の構成cの「変動データ記憶手段の記憶内容を初期化する初期化処理を実行する初期化処理実行手段(ステップS10~S14)」は、本願発明の構成Cの「変動データ記憶手段の記憶内容を初期化する初期化処理を実行する初期化手段」に相当する。
刊行物1発明の構成dにおける「エラー判定手段によって前記所定のエラーが発生していると判定されたこと」は、本願発明の構成Dにおける「所定の異常の発生」に相当する。また、刊行物1発明の構成dにおける「前記初期化処理が実行されたこと」は、本願発明の構成Dおける「前記初期化手段による前記初期化処理の実行」に相当する。そうすると、刊行物1発明の構成dにおける「前記初期化処理実行手段によって前記初期化処理が実行されたこと、およびエラー判定手段によって前記所定のエラーが発生していると判定されたことを含む所定の信号出力条件が成立したことにもとづいて」は、本願発明の構成Dの「所定の異常の発生と前記初期化手段による前記初期化処理の実行とを含む複数種類の条件のうち、いずれの条件が成立した場合」に相当する。刊行物1発明の構成dの「セキュリティ信号」は、異常入賞が発生したことを外部装置に報知するものであることから、本願発明の構成Dの「異常情報」に相当する。そうすると、刊行物1発明の構成dにおける「遊技機の外部に共通のセキュリティ信号を外部出力する外部出力手段」は、本願発明の構成Dおける「共通の異常情報を外部出力する外部出力手段」に相当する。
したがって、上記刊行物1発明の構成a~dは、それぞれ、本願発明の構成A~Dに相当する。
刊行物1発明の構成e1における「遊技機への電源投入が行われて初期化処理が実行された場合」は、遊技機への電力供給が停止された後、電源投入が行われる場合を含むことは明らかであるから、本願発明の構成E1における「前記遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開され、前記初期化手段によって前記初期化処理が実行された場合」に相当する。刊行物1発明の構成e1における「セキュリティ信号が所定期間(30秒間)ホールコンピュータなどの外部装置に出力され」ることは、本願発明の構成E1における「特定期間が経過するまで前記異常情報を外部出力し」に相当する。
したがって、本願発明の構成E1と刊行物1発明の構成e1とは、「外部出力手段は、前記遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開され、前記初期化手段によって前記初期化処理が実行された場合には特定期間が経過するまで前記異常情報を外部出力する」点で共通する。
刊行物1発明の構成e2の「セキュリティ信号が出力中であった場合」の「セキュリティ信号」は、「故意に遊技機への電源断を発生させることによって、エラー報知を消したりセキュリティ信号の出力を停止させたりするような不正行為を防止する」という記載からして、エラーの発生に伴うセキュリティ信号であることは明らかであるから、本願発明の構成E2における「所定の異常が発生したことに基づい」た「異常情報」に相当する。そうすると、刊行物1発明の構成e2の「電力供給の停止前に、セキュリティ信号が出力中であった場合」は、本願発明の構成E2における「所定の異常が発生したことに基づいて前記異常情報を外部出力しているときに電力供給が停止し」に相当する。刊行物1発明の構成e2の「停電復旧時」は、本願発明の構成E2における「電力供給が再開され」に相当し、よって、刊行物1発明の構成e2の「停電復旧時にバックアップされていたセキュリティ信号情報タイマの値にもとづいてセキュリティ信号の出力を再開する」ことは、本願発明の構成E2における「電力供給再開され」「異常情報を外部出力する」ことに相当する。ここで、「セキュリティ信号情報タイマの値」は「バックアップRAMにバックアップ」されるが、刊行物1発明の構成e1に記載のように、「初期化処理が実行された場合に、バックアップRAMをクリアした後、セキュリティ信号情報タイマを30秒にセットする」から、初期化処理が実行されると「バックアップされていたセキュリティ信号情報タイマ値に基づいて、セキュリティ信号の出力を再開する」ことができない。このことを踏まえると、刊行物1発明の構成e2において「停電復旧時にバックアップされていたセキュリティ信号情報タイマの値にもとづいてセキュリティ信号の出力を再開するように」することは、初期化処理が実行されないことを前提としていることは明らかである。
したがって本願発明の構成E2と刊行物1発明の構成e2とは、「所定の異常が発生したことに基づいて前記異常情報を外部出力しているときに前記遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開され、前記初期化手段によって前記初期化処理が実行されなかった場合には、電力供給再開後、再度前記異常情報を外部出力する」点で共通しているといえる。
そうすると本願発明と刊行物1発明では、
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 遊技機への電力供給が停止しても所定期間記憶内容を保持可能であり、制御を行なう際に発生する変動データを記憶する変動データ記憶手段と、
C 遊技機への電力供給が開始されたときに、所定条件の成立に基づいて前記変動データ記憶手段の記憶内容を初期化する初期化処理を実行する初期化手段と、
D 所定の異常の発生と前記初期化手段による前記初期化処理の実行とを含む複数種類の条件のうち、いずれの条件が成立した場合であっても共通の異常情報を外部出力する外部出力手段とを備え、
E 前記外部出力手段は、
E1’ 前記遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開され、前記初期化手段によって前記初期化処理が実行された場合には特定期間が経過するまで前記異常情報を外部出力し、
E2’ 前記所定の異常が発生したことに基づいて前記異常情報を外部出力しているときに前記遊技機への電力供給が停止し電力供給が再開され、前記初期化手段によって前記初期化処理が実行されなかった場合には、電力供給再開後、再度前記異常情報を外部出力する、遊技機。
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明の構成E1では、「前記遊技機への電力供給が停止し、電力供給が再開され、前記初期化手段によって前記初期化処理が実行された場合には特定期間が経過するまで前記異常情報を外部出力」するのが「所定の異常が発生したことに基づいて前記異常情報を外部出力しているとき」であるのに対し、刊行物1発明の構成e1では、そのような限定がない点。
相違点2:本願発明の構成E2では、再開された異常情報の外部出力は「前記初期化手段によって前記初期化処理が実行されるまで、電力供給されている期間において前記異常情報を外部出力する」が、刊行物1発明の構成e2では、そのような構成となっていない点。
上記相違点について検討する。
相違点1について:
遊技機の分野において電源断がいつでも発生しうることは技術常識であって、刊行物1発明において、エラーの発生に伴うセキュリティ信号を出力しているとき(本願発明の構成E1の「異常が発生したことに基づいて前記異常情報を外部出力しているとき」に相当)であっても、電源断が発生することはあきらかである。そして、その場合でも、電源投入時にクリアスイッチの操作が行われ初期化処理が行われると、「バックアップRAMをクリアした後、セキュリティ信号情報タイマを30秒にセットすることで、セキュリティ信号を所定期間(30秒間)ホールコンピュータなどの外部装置に外部出力」(構成d)するから、刊行物1発明の構成e1は、本願発明の構成E1の「異常が発生したことに基づいて前記異常情報を外部出力しているとき」に相当するエラーの発生に伴うセキュリティ信号を出力しているときを含むものである。したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
相違点2について:
上記刊行物1発明においては、異常入賞時のセキュリティ信号についてはできるかぎり長い時間にわたってセキュリティ信号を出力するために、セキュリティ信号情報タイマの値を4分にセットしている。一方、遊技機の分野において、不正等による異常を報知するための異常報知手段の解除に関し、クリアスイッチがオンとなっていること(本願発明の「所定条件の成立」に相当)に基づいて、電源の再投入時に、RAMをクリアし初期化処理(本願発明の「前記初期化手段」による「前記初期化処理」に相当)を実行するまで、異常報知を解除しないようにすること、すなわち、異常報知を出力し続けるようになすことは周知(例えば、特開2008-253669号公報には、「異常報知処理は、・・・電源断されたときは、・・・クリアスイッチ97aを押圧操作しながら、・・・電源を入れると、・・・RAMの記憶バッファをクリアする処理が行われ、異常状態がクリア(解除)されるように構成する。」(【0266】)と記載されている(特開2008-183210号公報(【0277】)も同様)。また、特開2011-167345号公報には「異常報知処理は、・・・電源の再投入時にクリアスイッチの押圧操作が行われることにより初期化設定処理が実行されて、RAM55がクリアされた後に初期化設定処理が実行されて、異常状態がクリア(解除)されればよい」(【0444】)と記載されている(特開2011-15860号公報(【0307】)、特開2008-295968号公報(【0110】)も同様)。)である。
そして、異常や不正を遊技店員が確実に把握することは、遊技機分野での共通の課題であり、上記刊行物発明で「できるかぎり長い時間にわたってセキュリティ信号を出力」することも、上記周知の初期化処理を実行するまで異常報知を解除しないようにすることも、遊技店員が確実に把握することを目的としていることは明らかであり、そのために刊行物発明に周知技術を適用することに阻害要因はない。したがって、上記刊行物1発明の異常報知手段であるセキュリティ信号の出力の解除に関し、上記周知技術を適用し、クリアスイッチがオンとなっていることに基づいて初期化処理を実行するまで異常入賞時のセキュリティ信号を出力する構成として、上記相違点2にかかる本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
よって、本願発明は、当業者が上記刊行物1発明と周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
6 請求人の主張について
本願発明について、請求人は、平成30年1月26日付けの意見書の(4-2)において、「刊行物1には、「異常入賞時のセキュリティ信号が出力されている場合、電力供給が停止し電力供給が再開されても初期化処理が実行されるまで、電力供給されている期間において当該セキュリティ信号を外部出力し続ける事項」は、記載されておりません。」と主張する。しかしながら、「電力供給が停止し電力供給が再開されても初期化処理が実行されるまで、」異常報知を行う点は、上記「相違点2について」で、記載したように周知であるし、それを異常報知手段であるセキュリティ信号に適用することも、上記「相違点2について」で検討したように、当業者であれば容易になしえたことであるから、請求人の主張は採用することができない。
また、本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明及び周知の事項から予測し得る範囲内のものであって、格別のものではない。
よって、本願発明は、刊行物発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-005919