特許拒絶査定不服審判
2017-004172
金属化フィルムコンデンサ
- 審判番号
- 2017-004172
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-252634外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月23日
- 審決日
- 2018年04月12日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】岡谷電機産業株式会社
- 【請求人代理人】奥田 弘之
- 【請求人代理人】奥田 規之
- 分類
- P18 .121-Z (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-252634「金属化フィルムコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日出願公開、特開2014-103174〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月16日に出願したものであって、手続の概要は以下のとおりである。
拒絶理由通知 :平成28年 8月31日(起案日)
意見書 :平成28年10月 6日
手続補正 :平成28年10月 6日
拒絶査定 :平成29年 1月31日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成29年 3月23日
手続補正 :平成29年 3月23日
第2 平成29年3月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年3月23日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
平成29年3月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、請求項1については、本件補正前に、
「 【請求項1】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着すると共に、絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に、上記分割電極と接続されるメタリコン電極を形成し、さらに、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成して成り、該傾斜金属膜の幅を0.025mm~0.18mmの範囲に設定したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。」
とあったところを、
本件補正後、
「 【請求項1】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着すると共に、絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に、上記分割電極と接続されるメタリコン電極を形成し、さらに、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記単位コンデンサとして機能する領域を含む誘電体フィルムと接する金属膜の全ての端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成して成り、該傾斜金属膜の幅を0.025mm~0.18mmの範囲に設定したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。」
とするものである。
上記本件補正の内容は、請求項1について、発明特定事項である「傾斜金属膜を形成」する「金属膜」の「端面」について、「上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面」だけでなく、「誘電体フィルムと接する金属膜の全ての端面」とし、より多くの位置に「傾斜金属膜を形成」する旨を限定したものである。
本件補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。
2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-76960号公報(平成13年3月23日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「【請求項1】 アイソタクチックペンダット分率が98%以上で、かつ少なくとも片面の平均表面粗さRaが0.03μm~0.3μmで、かつ厚みが5μm~8μmの2軸延伸ポリプロピレンフイルムの少なくとも片面に、金属蒸着部からマージン部にかけ金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層を有する金属化フイルム。」
(2)「【請求項5】 請求項1~4のいずれかに記載の金属化フイルムを巻回または積層し使用してなるコンデンサ。」
(3)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属蒸着した金属化フイルムからなる電気、電子回路等に好適に用いられる金属化フイルム、およびその金属化フイルムを用いてなるコンデンサに関するものである。」
(4)「【0016】次に、本発明の金属蒸着した金属化フイルムの一実施態様を図1の概略断面図に示す。なお、本発明の金属化フイルムは本実施態様に限定されるものではない。図1において、本発明の金属蒸着した金属化フイルム1は、2軸延伸ポリプロピレンフイルム2をベースに、その上に金属蒸着を施した金属蒸着部4および非常金属蒸着部分であるマージン部3とともに、金属蒸着部4とマージン部3の境界部に位置する、金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層5を設けたものである。図1においては、金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層5の幅Lが表示されている。」
(5)「【0020】また、金属蒸着膜厚が連続的に減少する金属蒸着層5(境界部または傾斜部)の幅Lは、0.05~1mmであることが好ましい。本発明の金属化フイルム1においては、金属蒸着部4とマージン部3の間に境界部5を有することが重要である。ここで境界部5とは、図1に示すとおり、金属蒸着部4からマージン部3にかけ金属蒸着部の蒸着膜の厚みが連続的に低減していく状態にある部分(幅L)を指している。境界部5のより好ましい幅Lは0.06~0.5mmであり、さらに好ましくは0.1~0.15mmである。境界部5の幅Lが0.05mmより小さければ、マージン部3における電界緩和効果がなく、課電時のコロナ放電により素子破壊が生じる。境界部5の幅Lが1mmより大きくなれば、素子をプレスする際のプレス性が悪くなり、コンデンサ素子に電圧を課電したとき、うなり音を生じるようになる。」
(6)「【0021】本発明では、この境界部5を設けることによって、安全規格コンデンサのテストにある高い電圧を印加しても破壊せず、特にマージン部と蒸着金属部の境界における絶縁破壊を防止することができる。」
(7)「【0029】(3)DC耐圧検査
容量1μFになるように蒸着品を巻回し、50個のコンデサ素子を作成する。その素子を100v/secの昇圧速度で電圧を課電し、破壊する電圧を求める。判定は、次の基準にて行なった。測定に用いた耐電圧測定機のカットオフは10mAとした。」
上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。
(a)引用例1には、「金属蒸着した金属化フイルム、およびその金属化フイルムを用いてなるコンデンサ」が記載されている(摘示事項(3))。
(b)「金属化フイルム」は、2軸延伸ポリプロピレンフイルムの少なくとも片面に、金属蒸着部からマージン部にかけ金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層を有する(摘示事項(1)、(4)、図1)。
(c)「コンデンサ」は、金属化フイルムを巻回または積層し使用してなる(摘示事項(2)、(7))。
(d)金属蒸着膜厚が連続的に減少する金属蒸着層5(境界部または傾斜部)の幅Lは、0.05~1mmであることが好ましい。境界部5のより好ましい幅Lは0.06~0.5mmであり、さらに好ましくは0.1~0.15mmである(摘示事項(5))。
以上を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「金属化フイルムを用いてなるコンデンサであって、
金属化フイルムは、2軸延伸ポリプロピレンフイルムの少なくとも片面に、金属蒸着部からマージン部にかけ金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層を有し、
コンデンサは、金属化フイルムを巻回または積層し使用してなり、
金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層5(境界部または傾斜部)の幅Lは、0.1~0.15mmである金属化フイルムを用いてなるコンデンサ。」
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-222127号公報(平成24年11月12日公開、以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(8)「【請求項1】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記金属膜をアルミニウムで構成すると共に、
上記マージン部と接する金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。」
(9)「【請求項3】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着すると共に、絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に、上記分割電極と接続されるメタリコン電極を形成し、さらに、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記金属膜をアルミニウムで構成すると共に、
上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。」
(10)「【0001】
この発明は誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る複数の金属化フィルムを積層又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成る金属化フィルムコンデンサに関する。」
(11)「【0015】
本発明の請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサは、マージン部と接する金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜の端面での電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルムの部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することがで
きる。
また、金属膜をアルミニウムで構成したので、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際の「鳴き」の発生を抑制することができる。すなわち、アルミニウムを誘電体フィルムに蒸着させる金属膜の構成材料として用いた場合、アルミニウムは凝着力が大きく、金属化フィルム間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである。
【0016】
また、請求項3又は4に記載の金属化フィルムコンデンサは、単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことにより、異常電圧の印可時に金属膜の端面での電界集中が緩和されるため、単位コンデンサの分離による静電容量の低下を抑制することができる。
また、金属膜をアルミニウムで構成したので、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際の「鳴き」の発生を抑制することができる。すなわち、アルミニウムを誘電体フィルムに蒸着させる金属膜の構成材料として用いた場合、アルミニウムは凝着力が大きく、金属化フィルム間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである」
(12)「【0019】
図1~図3は、本発明に係る第1の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルム010を示すものであり、図1は平面図、図2は図1のC-C拡大断面図、図3は図1の中央横断面図である。
上記金属化フィルム010は、ポリプロピレンやポリエステル等より成る誘電体フィルム012の表面に、一側辺に沿ってマージン部014が形成されるように金属膜016を10nm~80nmの厚さで蒸着して成る。
上記金属膜016はアルミニウムで構成されている。
【0020】
上記構造を有する一対の金属化フィルム010,010を、図4及び図5に示すように、それぞれのマージン部014が反対側に配されるように積層又は積層巻回し、これにヒートプレスを施してコンデンサ素子018を形成すると共に、該コンデンサ素子018の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極020を形成することにより第1の金属化フィルムコンデンサ022が構成される(図6)。
【0021】
本発明においては、マージン部014と接する金属膜016の端面16aに、傾斜金属膜024が形成されている(図1及び図2参照)。
傾斜金属膜024は、金属膜016と同一の材料で構成され、金属膜016の端面016aから外側(マージン部014側)に向かって厚さが徐々に減少する傾斜形状と成されている。」
(13)「【0026】
図9~図12は、本発明に係る保安機構付きの第2の金属化フィルムコンデンサを構成する第1の金属化フィルム10を示すものであり、図9は平面図、図10は図9のX-X拡大断面図、図11は図9のY-Y拡大断面図、図12は図9の中央横断面図である。
上記第1の金属化フィルム10は、ポリプロピレンやポリエステル等より成る誘電体フィルム12の表面に、一側辺に沿ってマージン部14が形成されるように金属膜16を10nm~80nmの厚さで蒸着して成る。
上記金属膜16はアルミニウムで構成されている。
【0027】
また、上記マージン部14と対向する一側辺の金属膜16は後述するメタリコン電極と接続するメタリコン接続部18と成されている。
さらに、上記メタリコン接続部18に沿って所定間隔で複数の第1の絶縁スリット20が形成されており、第1の絶縁スリット20,20間に、金属膜16で構成されるヒューズ機能部22が形成されている。
また、上記各第1の絶縁スリット20とマージン部14とを接続する誘電体フィルム12の幅方向に延びる複数の第2の絶縁スリット24が所定間隔で並設されている。
上記第1の絶縁スリット20及び第2の絶縁スリット24は、金属膜16が蒸着されていない部分である。
【0028】
而して、上記第1の絶縁スリット20及び第2の絶縁スリット24を形成したことにより、誘電体フィルム12表面の金属膜16に、上記第1の絶縁スリット20及び第2の絶縁スリット24で分離区画された複数の分割電極26が形成される。各分割電極26は、上記ヒューズ機能部22を介してメタリコン接続部18に接続されている。
尚、図1に示すように、ヒューズ機能部22を構成する金属膜16は、分割電極26を構成する金属膜16より幅狭と成されている。
【0029】
図13及び図14に示すように、複数の上記第1の金属化フィルム10,10をそれぞれのマージン部14が反対側に配されるように積層又は積層巻回してコンデンサ素子27を形成すると共に、該コンデンサ素子27の両端面に半田や丹銅等の電極材料を溶射してメタリコン電極28を形成することにより本発明の第2の金属化フィルムコンデンサ29が構成される(図15)。
この際、各分割電極16は、メタリコン接続部18を介してメタリコン電極28と接続され、また、誘電体フィルム12を介して対向する一対の分割電極26,26で単位コンデンサが構成されることとなる。
【0030】
本発明においては、誘電体フィルム12を介して対向する金属膜16の端面16aに、傾斜金属膜30が形成されている(図13~図15参照)。
すなわち、誘電体フィルム12を介して対向する分割電極26の金属膜16で区画される領域が単位コンデンサとして機能する領域Cであり、斯かる単位コンデンサとして機能する領域Cを形成する位置の金属膜端面16aに、上記傾斜金属膜30が形成されるのである(図15)。
傾斜金属膜30は、金属膜16と同一の材料で構成され、金属膜16の端面16aから外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜形状と成されている。」
上記摘示事項(8)、(12)及び図1ないし6の記載から、引用例2には、次の技術的事項(以下「技術的事項1」という。)が記載されているものと認める。
「一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記マージン部と接する金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成した金属化フィルムコンデンサ。」
また、上記摘示事項(9)、(13)及び図9ないし15の記載から、引用例2には、次の技術的事項(以下「技術的事項2」という。)が記載されているものと認める。
「一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着すると共に、絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に、上記分割電極と接続されるメタリコン電極を形成し、さらに、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成した金属化フィルムコンデンサ。」
3.対比
そこで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)金属化フィルムコンデンサ
引用発明は、金属化フイルムを用いてなるコンデンサであるから、本件補正発明と引用発明とは、「金属化フィルムコンデンサ」である点で一致する。
(2)金属化フィルムコンデンサの基本構成
引用発明の「金属化フイルム」は、図1の概略断面図に示されるように、「金属蒸着部」と「マージン部」とを有し、引用発明の「コンデンサ」は、「金属化フイルムを巻回または積層し使用してな」るから、本件補正発明と引用発明とは、「一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る複数の金属化フィルムを、積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成する」点で一致する。
もっとも、「積層」する態様について、本件補正発明は、「上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように」するのに対し、引用発明は、そのような明確な特定がない点、及び、本件補正発明は、「該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成」するのに対し、引用発明は、そのような明確な特定がない点で一応相違する。
(3)絶縁スリット、分割電極及び単位コンデンサ
本件補正発明は、「絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成し、メタリコン電極が、分割電極と接続され、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成する」のに対し、引用発明は、絶縁スリット、分割電極及び単位コンデンサについて特定がない点で相違する。
(4)傾斜金属膜
引用発明は、「金属蒸着部からマージン部にかけ金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層」、すなわち、「金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層5(境界部または傾斜部)」を有するから、本件補正発明と引用発明とは、「上記マージン部と接する金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成」する点で一致する。
もっとも、「傾斜金属膜を形成する金属膜の端面」について、本件補正発明は、「上記単位コンデンサとして機能する領域を含む誘電体フィルムと接する金属膜の全ての端面」であるのに対し、引用発明は、「上記マージン部と接する金属膜の端面」以外の金属膜の端面について特定がない点で相違する。
(5)傾斜金属膜の幅
引用発明の「金属蒸着膜厚が連続的に低減する金属蒸着層5(境界部または傾斜部)の幅L」の数値範囲「0.1~0.15mm」は、本件補正発明の「該傾斜金属膜の幅」の数値範囲「0.025mm~0.18mm」に含まれるから、本件補正発明と引用発明とは、「該傾斜金属膜の幅を0.025mm~0.18mmの範囲に設定した」点で一致する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る複数の金属化フィルムを、積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記マージン部と接する金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成して成り、該傾斜金属膜の幅を0.025mm~0.18mmの範囲に設定した金属化フィルムコンデンサ。」の点。
そして、次の点で相違する。
<相違点>
(1)「積層」する態様について、本件補正発明は、「上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように」するのに対し、引用発明は、そのような明確な特定がない点、及び、本件補正発明は、「該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成」するのに対し、引用発明は、そのような明確な特定がない点。
(2)本件補正発明は、「絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成し、メタリコン電極が、分割電極と接続され、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成する」のに対し、引用発明は、絶縁スリット、分割電極及び単位コンデンサについて特定がない点。
(3)「傾斜金属膜を形成する金属膜の端面」について、本件補正発明は、「上記単位コンデンサとして機能する領域を含む誘電体フィルムと接する金属膜の全ての端面」であるのに対し、引用発明は、「上記マージン部と接する金属膜の端面」以外の金属膜の端面について特定がない点。
4.判断
そこで、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
誘電体フィルムの表面に、一側辺に沿ってマージン部が形成されるように金属膜を蒸着して金属化フィルムを構成し、斯かる構造を有する一対の金属化フィルムを、それぞれのマージン部が反対側に配されるように積層又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極を形成することにより金属化フィルムコンデンサが構成されることは、技術常識である(例えば、特開平5-304044号公報参照)から、引用発明の「金属化フイルムを用いてなるコンデンサ」もそのように構成されることは明らかである。
したがって、相違点(1)は、実質的な相違点ではない。
相違点(2)及び(3)について
引用発明は、「境界部5を設けることによって、特にマージン部と蒸着金属部の境界における絶縁破壊を防止することができる」(摘示事項(6))ものであるところ、引用例2に記載された技術的事項1及び2もまた、「金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜の端面での電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルムの部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することができる」(摘示事項(11))ものである。そして、引用発明は、技術的事項1の構成を有する。
したがって、引用発明において、技術的事項1の構成に代えて、技術的事項2の構成を採用すること、すなわち、「絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成し、メタリコン電極が、分割電極と接続され、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成する」こと、及び、「傾斜金属膜を形成する金属膜の端面」について、「上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面」とすることは、当業者が容易に想到し得る。
さらに、「金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜の端面での電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルムの部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することができる」との効果を最大限とすることを期待して、「傾斜金属膜を形成する金属膜の端面」について、「上記単位コンデンサとして機能する領域を含む誘電体フィルムと接する金属膜の全ての端面」とすることも、当業者が容易に想到し得る。
また、明細書に記載された本願発明が奏する効果についてみても、本願発明の構成のものとして当業者であれば予測し得る程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
したがって、本件補正発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
平成29年3月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年10月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。
3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]3.及び4.」で検討した本件補正発明から、発明特定事項である「傾斜金属膜を形成」する「金属膜」の「端面」について、「上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面」だけでなく、「誘電体フィルムと接する金属膜の全ての端面」とし、より多くの位置に「傾斜金属膜を形成」する旨の限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]3.及び4.」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-004172