特許拒絶査定不服審判
2017-001628
撮像用検出器及び画像検出の方法
- 審判番号
- 2017-001628
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-113900外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月03日
- 審決日
- 2018年03月27日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】荒川 聡志
- 分類
- P18 .121-WZ (G01T)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-113900「撮像用検出器及び画像検出の方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月10日出願公開、特開2012-242397〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月18日(パリ条約による優先権主張2011年5月20日、アメリカ合衆国)の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年 2月22日:拒絶理由の通知
平成28年 4月25日:意見書、手続補正書の提出
平成28年 9月29日:拒絶査定(同年10月4日送達)
平成29年 2月 3日:審判請求書、手続補正書の提出
平成29年 9月21日:拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の 通知
平成29年12月25日:意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明は、平成29年12月25日付け手続補正で補正された請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
光を放出するように構成されているシンチレータ・ピクセル(106)を含むシンチレータ(100)と、
前記シンチレータ・ピクセルにより放出される光を吸収するように構成されている光センサ・ピクセル(114)を画定している光センサ(110)と、
前記シンチレータ・ピクセルと前記光センサ・ピクセルとの間に配置されて、前記シンチレータから放出される光を前記光センサ・ピクセルへ向けるレンズ(118)であって、前記シンチレータ・ピクセルから放出される光を、焦点(128)へ向けて収束させるように構成されているレンズ(118)と
を備え、
前記光センサ(110)は、前記レンズ(118)と前記焦点(128)の間に入れられており、
前記シンチレータ・ピクセル(106)は、光を放出するシンチレータ作用面積(108)を含んでおり、前記光センサ・ピクセル(114)は、光を吸収する光センサ作用面積(116)を含んでおり、前記シンチレータ・ピクセルから放出される光は、前記光センサ作用面積によって吸収される、撮像用検出器(20)。」
第3 引用文献の記載及び引用発明
当審拒絶理由に引用され、本願優先日前に頒布された特表2006-519377号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
1 「【0002】
コンピュータ断層撮影法では、他のX線画像生成方法におけるように、検査中に患者に対して影響を及ぼすX線放射が、組織及び骨の密度及び化学組成に従って減衰される。その場合、検出されるべきX線放射のフォトン(photon,光子)は、X線検出器において、初めに、シンチレータ物質によって吸収され、次に、該シンチレータ物質が、可視光又は紫外線光のレンジのフォトンを再放出する。そのように生じる光が、その後、フォトセンサ装置に当たり、このフォトセンサ装置は、一般に、指定されたチャンネルでもある多数の個別の検出器素子を有している。従って、X線検出器は、数千から数百万のピクセルを有することができ、ここでは、個々のピクセルのサイズが、0.03~30mm2のレンジにあり、とりわけ、1~2mm2のレンジにあり得る。これによって、通常、CMOSチップ上のフォトダイオードが、光検出のために使用される。
【0003】
X線検出器の分解能は、ピクセルの数とともに当然高まる。しかし、この分解能は、クロストークによって非常にネガティブに影響される。このクロストークでは、散乱放射線が、設けられた検出器素子に隣接する検出器素子へのアクセスを得る。このクロストークを低減するために、X線放射は、放射線源の焦点にフォーカスされる散乱防止グリッド(anti-scatter grid)を通ることができる。更に、斜めに入射する散乱放射線を吸収し、それによって、隣接する検出器素子に達することを防止する吸収プレートが、個々のシンチレータ結晶の間に置かれ得る。
【0004】
入射光を電気信号に変換するフォトダイオードに加えて、個別の検出器素子の上に、他の電子部品があること、とりわけ、信号を処理する役目を果たすトランジスタがあることが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、フォトダイオードが検出器素子の表面の一部のみを形成する場合、ピクセルの入射光表面が部分的にしか利用されないという問題を生じる。それに応じて、DQE(Detection Quantum Efficiency,量子検出効率)が低下する。他方では、フォトダイオード表面が、検出器素子の表面全体に対して拡大される場合、信号を処理するための他の電子部品用に使用できる表面は、それに応じて縮小される。従って、妥協が必要であり、これらの妥協はどちらの場合においても最適条件を示すことはできない。
【0006】
従って、従来技術から着手される本発明の目的は、各ピクセルの入射光表面がほぼまるごと利用され、それにも関わらず、充分な使用に適した領域が、各検出器素子の表面上で他の電子部品のために利用できる、X線検出器を生成することにある。更に、クロストークの問題が、より一層低減されるべきである。」
2 「【0020】
図1は、本発明によるX線検出器に属するピクセルの構造を概略的に示す。この構造は、全体に参照符号1を付与される検出器素子を有し、この検出器素子1の表面の中央に位置するのが、フォトダイオード4である。検出器素子1の上方にマイクロレンズ3が位置し、このマイクロレンズ3は、シンチレータ素子2から発せられる光7を集束させる。この素子に関する限り、シンチレータ素子2は、シンチレータ素子2に当たるX線光6を、可視光又は紫外線光7に変換する。マイクロレンズ3を介して集束された光8は、フォトダイオード4に当たり、次に、フォトダイオード4は、この入射光を電気信号に変換する。これによって、フォトダイオード4が、検出器素子1の小さな部分のみをカバーするのに対して、電気信号の他の処理を行う役目を果たす種々の電子部品5は、フォトダイオード4の外側に位置する。それにも関わらず、マイクロレンズ3による光7の集束のために、シンチレータ素子2から生じる入射光表面のほぼ全体が利用される。なぜならば、マイクロレンズ3に垂直に当たる光7は、ほぼすべてがフォトダイオード4に集束されるからである。同時に、マイクロレンズ3は、横から入射する光を、フォトダイオード4の外側の検出器素子1の領域上に偏向させることも可能である。それによって、本発明は、他の電子部品5のための広い有用な領域を、入射光の広範な利用及び関連する高い量子効率(DQE)と組み合わせる。
【0021】
図2は、本発明によるX線検出器の一部としての検出器素子1を平面図で示す。この場合、検出器素子1は正方形に設計され、その設計の中でフォトダイオード4が検出器素子1の中央部に位置する。フォトダイオード4の外側で、電子部品5がここでも検出器素子1の上に位置する。マイクロレンズ3は、入射光をフォトダイオード4に集束させる。」
3 上記1及び2からみて、以下の発明が記載されている。
「クロストークをより一層低減させることを課題とし、
X線検出器は、数千から数百万のピクセルを有し、
X線検出器に属するピクセルの構造は、
シンチレータ素子に当たるX線光を、可視光又は紫外線光に変換するシンチレータ素子と、
シンチレータ素子から発せられる光を集束させるマイクロレンズと、
マイクロレンズを介して集束された光は、フォトダイオードに当たり、この入射光を電気信号に変換するフォトダイオードとで示され、
マイクロレンズに垂直に当たる光は、ほぼすべてがフォトダイオードに集束され、シンチレータ素子から生じる入射光表面のほぼ全体が利用され、マイクロレンズは、横から入射する光を、フォトダイオードの外側の検出器素子の領域上に偏向させることも可能である、X線画像生成方法におけるX線検出器。」(以下「引用発明」という。)
第4 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「『ピクセルの構造』の『シンチレータ素子に当たるX線光を、可視光又は紫外線光に変換するシンチレータ素子』」は、本願発明の「光を放出するように構成されているシンチレータ・ピクセル」に、引用発明の「『ピクセルの構造』の『シンチレータ素子から発せられ』『マイクロレンズを介して集束された光は、フォトダイオードに当たり、この入射光を電気信号に変換するフォトダイオード』」は、本願発明の「『シンチレータ・ピクセルにより放出される光を吸収するように構成されている光センサ・ピクセル』『を画定している光センサ』」に、引用発明の「『ピクセルの構造』の『シンチレータ素子から発せられる光を集束させるマイクロレンズ』であって、それ『を介して集束された光は、フォトダイオードに当た』る『マイクロレンズ』」は、本願発明の「『シンチレータ・ピクセルと前記光センサ・ピクセルとの間に配置されて、前記シンチレータから放出される光を前記光センサ・ピクセルへ向けるレンズ』『であって、前記シンチレータ・ピクセルから放出される光を、焦点』『へ向けて収束させるように構成されているレンズ』」に、引用発明1の「X線画像生成方法におけるX線検出器」は、本願発明の「撮像用検出器」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明は「X線検出器は、数千から数百万のピクセルを有し」ていることから、引用発明の「『数千から数百万のピクセル』の「『シンチレータ素子』」は、本願発明の「シンチレータ」に、相当する。
(3)シンチレータ素子及びフォトダイオードは面積を有することが技術常識であるから、引用発明の「マイクロレンズに垂直に当たる光は、ほぼすべてがフォトダイオードに集束され、シンチレータ素子から生じる入射光表面のほぼ全体が利用され」は、本願発明の「『シンチレータ・ピクセル』『は、光を放出するシンチレータ作用面積』『を含んでおり、前記光センサ・ピクセル』『は、光を吸収する光センサ作用面積』『を含んでおり、前記シンチレータ・ピクセルから放出される光は、前記光センサ作用面積によって吸収される』」に、相当する。
(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、
「光を放出するように構成されているシンチレータ・ピクセルを含むシンチレータと、
前記シンチレータ・ピクセルにより放出される光を吸収するように構成されている光センサ・ピクセルを画定している光センサと、
前記シンチレータ・ピクセルと前記光センサ・ピクセルとの間に配置されて、前記シンチレータから放出される光を前記光センサ・ピクセルへ向けるレンズであって、前記シンチレータ・ピクセルから放出される光を、焦点へ向けて収束させるように構成されているレンズと
を備え、
前記シンチレータ・ピクセルは、光を放出するシンチレータ作用面積を含んでおり、前記光センサ・ピクセルは、光を吸収する光センサ作用面積を含んでおり、前記シンチレータ・ピクセルから放出される光は、前記光センサ作用面積によって吸収される、撮像用検出器。」である点で一致し、以下の点で相違する
相違点:光センサと焦点の配置について、本願発明では、「前記光センサ(110)は、前記レンズ(118)と前記焦点(128)の間に入れられて」いるのに対して、引用発明では、「マイクロレンズに垂直に当たる光は、ほぼすべてがフォトダイオードに集束され」るものとなる範囲内にフォトダイオードが位置するものの、マイクロレンズと焦点の間に入れられているのか明らかでない点。
第5 判断
1 はじめに、本願発明が「前記光センサ(110)は、前記レンズ(118)と前記焦点(128)の間に入れられて」いることの技術的意義について、検討する。
本願の発明の詳細な説明の【0019】には「尚、光線124は先ず光センサ・ピクセル114の作用面積116によって吸収されるため、完全に収束する(焦点128において出合う)訳ではないことを特記しておく。」との記載がある。
しかしながら、「前記光センサ(110)は、前記レンズ(118)と前記焦点(128)の間に入れられて」いることにより、技術的にどのような意義があるのか、発明の詳細な説明には記載されていない。
また、上記発明特定事項は、平成28年4月25日付けの手続補正により特許請求の範囲に追加されたが、同日付けの意見書には、技術的意義は記載されていない。その後に提出された審判請求書、平成29年12月25日付けの意見書を見ても同様である。
してみると、上記発明特定事項が有する技術的意義は特段説明がないから、一般的なものと解される。
2 上記1の検討を踏まえ、以下、上記相違点について検討する。
(1)一般に、レンズに垂直に入射する光を受光素子に集束する際、受光素子の受光面の全面に光が入射するように、レンズとレンズの焦点の間に受光素子を配置することは、例えば、特開2003-152199号公報(【0003】の「受光面積の大きい受光素子3を用いた場合、位置Aから位置Bの間に受光素子3を配置することで、受光素子3では、レンズ面2に入射される光を全て受光することができる。」との記載と図3ア参照。)、特開2000-277761号公報(【0018】の「受光器15の受光面は、その中心が光軸上にあって、焦点fの近くにあるが、その焦点fよりは入射面12側に僅かに寄った位置に配置されている。これは受光器15の受光面が或る程度の広さがあるためで、図1(a)に示すように、集光器本体11の入射面に光軸に平行に入射した光のほぼ全てが受光器15の受光面に入射する位置に受光器15を配置するのが適当である。」との記載。)に記載されているよう、当業者が普通に採用する配置である。
(2)また、引用発明は、クロストークをより一層低減させることを課題とするから、クロストーク低減の観点で検討すると、当審拒絶理由で説示したとおり、フォトダイオードは、焦点に位置するよりも、マイクロレンズと焦点の間に位置する方がクロストークが低減する場合も考えられる。そうすると、引用発明において、フォトダイオードを、マイクロレンズと焦点の間に位置させることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
(3)してみると、引用発明は、フォトダイオードがマイクロレンズと焦点の間に入れられているのか明らかでないところ、フォトダイオードを、マイクロレンズと焦点の間にいれる配置は、上記(1)のとおり、当業者が普通に採用する配置であり、また、上記(2)のとおり、クロストークが低減する場合も考えられる配置であるから、引用発明において、普通の配置を採用すること、あるいは、クロストークを低減する場合も考えられる配置を採用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項となすことに困難性はない。
(4)審判請求人は、引用文献1には、
ア 段落0011に、「検出器素子に当たる光は、検出器素子の中央部に集束される」との記載があること、
イ 段落0012に、「検出器素子の領域における入射光が、検出器素子のフォトダイオードの表面上に正確に集束され」との記載があること、
ウ 段落0015に、「検出器素子に当たる光を、専ら、この検出器素子に属するフォトダイオードの上に集束させ」との記載があること、
エ 広辞苑によれば、「集束」とは、光線の束などが1点に集まることを意味することを理由に、引用文献1では、シンチレータ素子から発せられる光は、フォトダイオードの上に集束するわけであるから、フォトダイオードの表面に光の焦点が形成され、構成及び作用が相違する旨主張しているので、以下、検討する。
集束は、「光学では、凸レンズ、もしくは正レンズのようにレンズに向かってくる光線を互いに近づけるように曲げること。」(小柳修爾著「光技術用語辞典」(株)オプトロニクス社 平成17年11月21日 153頁 「収束」の項を参照。)を意味するから、レンズに向かってくる光が互いに近づけるように曲げられるのであれば、光が1点に集まる前であっても「集束」といえる。そして、「集束」がこのような意味を有することは、本願の請求項8の「前記シンチレータ・ピクセルから放出される(206)前記光は光のビームであり、前記光を収束させるステップ(208)は、前記光のビームの断面積を減少させることを含んでいる、請求項7に記載の方法(200)。」における「収束」の用法とも矛盾しない。
してみると、「集束」とは光が1点に集まることを意味することを前提に、光の焦点がフォトダイオードの表面に形成されている旨の審判請求人の主張は採用されない。
なお、引用文献1の図1においても、フォトダイオード4は、マイクロレンズ3とマイクロレンズ3を介して集束された光8の集まる点の間にあるとも見て取れることから、引用文献1では、光の焦点がフォトダイオードの表面のみに形成されているとまでは、認識できない。
(5)仮に、引用発明において、光の焦点がフォトダイオードの表面に形成されているとしても、上記(3)と同様の理由により、引用発明において、フォトダイオードを、マイクロレンズと焦点の間に位置させることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
2 作用効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明から当業者が予測できた程度のものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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