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特許拒絶査定不服審判

2019-010171

半導体X線検出器の製造方法

審判番号
2019-010171
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-502300
請求日
2019年08月01日
審決日
2020年05月13日
公報発行日
2020年11月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】シェンゼン・エクスペクトビジョン・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
  • 【請求人代理人】特許業務法人スズエ国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 瀬川 勝久
  • 審判官 松川 直樹
  • 審判官 山村 浩
分類
P18 .113-Z (G01T) / P18 .121-Z (G01T) / P18 .575-Z (G01T)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2018-502300号「半導体X線検出器の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日国際公開、WO2016/161543号、平成30年5月17日国内公表、特表2018-512599号〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2015年4月7日(外国庁受理 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年10月 2日  :国際出願翻訳文(特許請求の範囲、明細 書、図面)の提出 平成30年 8月28日付け:拒絶理由通知書 平成30年12月 3日  :意見書、手続補正書の提出 平成31年 3月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和元年 8月 1日  :審判請求書、手続補正書の提出 令和2年 1月20日  :上申書の提出 第2 令和元年8月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年8月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は下線は当審が付した。補正箇所を示す。)。 「【請求項1】 X線を検出するのに適した装置の製造方法であって、 第1の表面および第2の表面を有する基板を取得することを含み、 前記基板は、前記基板内または前記基板上にある電子システムを含み、 前記基板は、前記第1の表面上の複数の電気接点を含み、 第1のX線吸収層を含む第1のチップを取得することを含み、 前記第1のX線吸収層は電極を含み、 前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に直接接続されるように、前記第1のチップを前記基板に直接接合することを含む、方法。」(以下「本願補正発明」という。) (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成30年12月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載であって、当該請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 X線を検出するのに適した装置の製造方法であって、 第1の表面および第2の表面を有する基板を取得することを含み、 前記基板は、前記基板内または前記基板上にある電子システムを含み、 前記基板は、前記第1の表面上の複数の電気接点を含み、 第1のX線吸収層を含む第1のチップを取得することを含み、 前記第1のX線吸収層は電極を含み、 前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に直接的に接続されるように、前記第1のチップを前記基板に直接的に接合することを含む、方法。」 2 補正の適否 (1)本件補正は、補正前の請求項1において、「前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に直接的に接続される」及び「前記第1のチップを前記基板に直接的に接合する」とあったものを「前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に直接接続される」及び「前記第1のチップを前記基板に直接接合する」とそれぞれ補正するものである。 当該補正に係り、本願明細書の「図4Aは、電極における、個別領域114と電気接点125などのX線吸収層110と電子層120との間の直接接合を概略的に示す。直接接合は、追加の中間層(例えば、はんだバンプ)を使用しないウェーハ接合プロセスである。接合プロセスは、2つの表面間の化学結合に基づく。直接接合は、高温下であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。」(【0040】)との記載、及び、後記図4Aによれば、上記「電気的に直接接続される/直接接合する」は、追加の中間層(例えば、はんだバンプ)を使用しないウェーハ接合プロセスであると解される。 これに対し、上記「電気的に直接的に接続される/直接的に接合する」は、本願の発明の詳細な説明及び図面に格別の定義がないため、周知技術に照らして、追加の中間層(例えば、はんだバンプ)を使用する接合であってよいと解される。 そうすると、上記補正は、「電気的に直接的に接続される/直接的に接合する」とあったものを「電気的に直接接続される/直接接合する」と補正することにより、追加の中間層(例えば、はんだバンプ)を使用する接合であってよいものを、追加の中間層(例えば、はんだバンプ)を使用しないウェーハ接合プロセスに限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。 ・図4A (2)本願補正発明の認定 本願補正発明は、上記「1」「(1)」に記載したとおりである。 (3)引用文献及び引用発明 (3-1)引用文献1に記載された事項及び引用発明について ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2005-26419号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、X線やγ線などの放射線のエネルギースペクトル、或いは放射線強度の2次元情報を得るための半導体放射線検出器及びこれを用いた画像診断装置に関する。」 (イ)「【0021】 図1は本発明の一実施の形態に係る検出ユニット10の構成を示す概略図である。 【0022】 図1に示すように、この検出ユニット10は、個別基板11を有している。この個別基板11は、プリント配線基板からなり、表面に複数の第1個別電極12a、裏面に第2個別電極12bを備えている。 【0023】 なお、個別基板11としては、セラミックやガラスエポキシ樹脂等のうち、線膨張率が半導体素子13(後述する)に近い素材が用いられる。 【0024】 個別基板11の表面側には、ブロック状に形成された4つ(2つのみ図示)の半導体素子13がほぼ隙間無く、2行2列のマトリクス状に設けられている。ここで重要なのは、個別基板11が、平面視で上記4つの半導体素子13によって十分に覆われるような寸法にすることである。半導体素子13としては、CdTe、CdZnTe、HgI2、PbIなどの素材が用いられる。 【0025】 なお、本実施の形態では、4つの半導体素子13を2行2列に設けているが、複数の半導体素子13を隙間無く並べるのであれば、その数や配列は特に限定されるものではない。また、半導体素子13の形状は、上記ブロック状に限定されず、例えば円筒形や多角柱であってもよい。 【0026】 半導体素子13の表面(第1の面)には、それぞれ参照電極14(第1の電極)が設けられている。この参照電極14は、Au、Al、Cu等の導電材料からなり、各半導体素子13の表面全体に亘って薄膜状に形成されている。参照電極14の形成方法としては、蒸着法、メッキ法、CVD法などが用いられる。 【0027】 一方、半導体素子13の裏面(第2の面)には、電荷収集電極15(第2の電極)が形成されている。この電荷収集電極15は、Au、Al、Cu等の導電材料からなり、半導体素子13の裏面において複数個、本実施の形態では4つに分割されている(2つのみ図示)。電荷収集電極15の形成方法としては、蒸着法、メッキ法、CVD法等が用いられる。 【0028】 これら電荷収集電極15は、それぞれ導電性接着剤16を介して第1個別電極12aに電気的に接続されている。導電性接着剤16としては、はんだ、銀ペースト、銅ペースト等の等方性の金属ペーストが用いられる。 【0029】 個別基板11と半導体素子13の間には、封止樹脂17が充填されている。この封止樹脂17は、個別基板11と半導体素子13を固定するとともに、個別基板11と半導体素子13の接続部を空気中の酸素や水分から保護している。そのため、封止樹脂17としては、透湿度の小さいエポキシ系の素材が用いられる。 【0030】 図3は同実施の形態に係る検出ユニット10を用いた半導体放射線検出器20の構成を示す概略図、図4は同実施の形態に係る配線付粘着シート23の構成を下方から示す斜視図である。 【0031】 図3に示すように、この半導体放射線検出器20は、配線基板21を有している。この配線基板21は、プリント配線基板からなり、その表面には複数の表面配線(不図示)と、これら表面配線と導通する配線電極21aが設けられている。表面配線と配線電極21aの素材としては、Al、Au、Cu等の導電材料が用いられる。 【0032】 配線基板21の表面には、上記構成からなる複数、本実施の形態では4つ(2つの図示)の検出ユニット10が2行2列のマトリクス状に並べて設けられている。これら検出ユニット10は、隣接する半導体素子13同士が密着するように配置されている。これによって、検出ユニット10の表面側から見れば、半導体素子13がほぼ隙間無く配置されている。 【0033】 なお、上述のように、個別基板11は、検出ユニット10の表面側から見た場合に、半導体素子13によって十分に覆われるような寸法に設定されているため、検出ユニット10を半導体素子13同士が密着するように配置しても、個別基板11同士が互いに干渉し合うことがない。 【0034】 配線基板21の配線電極21aと個別基板11の第2個別電極12bは、導電性接着剤22を介して電気的に接続されている。導電性接着剤22の素材としては、はんだ、銀ペースト、銅ペースト等が用いられる。 【0035】 検出ユニット10の表面側には、可撓性を有する配線付粘着シート23が参照電極14に密着するように設けられている。 【0036】 図4に示すように、この配線付粘着シート23は、参照電極14(図3参照)に密着する粘着面24aを備えた粘着シート24(保持部材)と、粘着面24aに格子状に配置された複数の配線25(導電性線材)によって構成されている。これら配線25は、金属等の導電材料からなり、全てが配線付粘着シート23の一端部にて接続配線(不図示)に接続されている。 【0037】 図3に示すように、この配線付粘着シート23は、その粘着シート24が上記4つの検出ユニット10の参照電極14に貼り付けられることで、全ての検出ユニット10を構成する全ての参照電極14に配線25の格子状部が接触するようになっており、これによって、全ての参照電極14同士が電気的に接続されて同電位となる。 【0038】 そして、配線付粘着シート23の一端部は、配線基板21の所定位置に接続されており、この一端部における接続配線は配線基板21上に設けられた電子回路26に接続している。 【0039】 図5は同実施の形態に係る電子回路26の構成を示すブロック図である。 【0040】 図5に示すように、この電子回路26は、電圧印加部26aと、信号処理部26bと、画像構成部26cを備えている。 【0041】 電圧印加部26aは、配線付粘着シート23の配線25と配線基板21の表面配線を介して各検出ユニット10に所定の電圧を印加する。検出ユニット10に印加された電圧は、参照電極14と電荷収集電極15を介して半導体素子13に印加される。これによって、半導体素子13内には、電界が形成される。 【0042】 コリメータ27側から検出ユニット10に照射された放射線は、このコリメータ27によってその方向が整えられたのち、半導体素子13に入射する。これによって、各半導体素子13内には電荷が形成される。 【0043】 半導体素子13内に形成された電荷は、上記電界の作用によって各電荷収集電極15から電気信号として取り出され、電子回路26の信号処理部26bによって種々の処理がなされたのち、画像構成部26cによって画像が構成される。この画像は、電子回路26に接続されたモニタ28に映し出される。 【0044】 上記構成の半導体放射線検出器20によれば、複数の半導体素子13の参照電極14を配線25によって検出ユニット10上で電気的に接続し、これによって全ての参照電極14を同電位にしてから、これら配線25を接続配線によって電子回路26に接続している。 【0045】 そのため、従来のように、参照電極14と電子回路26を個別にワイヤボンディングする必要が無いから、複数の半導体素子13をほぼ隙間無くマトリクス状に配置することができる。その結果、放射線の検出を高い分解能で行うことができる。」 (・・・途中省略・・・) 【0049】 図11に示すように、この画像診断装置は、半導体放射線検出器20(検出器)を有している。この半導体放射線検出器20は、コリメータ27が被験者W(被検体)側に向くように配置されている。被験者Wの診断対象部分には、予め放射性物質を含む薬剤が注入されており、この放射円物質から放射されるX線やγ線を上記半導体放射線検出器20で検出することで、診断対象部分の画像をモニタ28に映し出す。 (・・・途中省略・・・) 【0059】 また、本実施の形態では、半導体素子13と配線基板21とを個別基板11を介して接続しているが、半導体素子13と配線基板21の線膨張率の差によって半導体素子13に作用する熱応力を緩和することができれば、個別基板11は不要となる。」 (ウ)図1、2、3、5及び9は次のとおりである。 イ 上記アによれば、引用文献1には、下記の各事項が記載されていると認められる。 (ア)上記「本発明は、X線やγ線などの放射線のエネルギースペクトル、或いは放射線強度の2次元情報を得るための半導体放射線検出器及びこれを用いた画像診断装置に関する。」(【0001】)、及び、「被験者Wの診断対象部分には、予め放射性物質を含む薬剤が注入されており、この放射円物質から放射されるX線やγ線を上記半導体放射線検出器20で検出することで、診断対象部分の画像をモニタ28に映し出す。」(【0049】)との記載から、引用文献1に記載された「半導体放射線検出器」は「X線やγ線などの放射線」を検出するのに適した装置であるといえる。 また、「半導体素子13」は、「CdTe、CdZnTe、HgI2、PbIなどの素材が用いられる。」(【0024】)との記載から、当該「半導体放射線検出器」の「半導体素子13」が、「X線やγ線などの放射線」を吸収する「CdTe、CdZnTe、HgI2、PbIなどの素材が用いられる」層を含むことは明らかである。 さらに、「半導体素子13の裏面(第2の面)には、電荷収集電極15(第2の電極)が形成されている。」(【0027】)との記載から、当該「半導体放射線検出器」の「X線やγ線などの放射線」を吸収する「CdTe、CdZnTe、HgI2、PbIなどの素材が用いられる」層を含む「半導体素子13」が、「電荷収集電極15(第2の電極)」を含むことは明らかである。 (イ)上記「配線基板21は、プリント配線基板からなり、その表面には複数の表面配線(不図示)と、これら表面配線と導通する配線電極21aが設けられている。表面配線と配線電極21aの素材としては、Al、Au、Cu等の導電材料が用いられる。」(【0031】)との記載から、引用文献1に記載された「プリント配線基板」が「表面」と裏面を有することは明らかである。 また、当該「プリント配線基板」は、「表面には複数の表面配線」が設けられ、「これら表面配線と導通する配線電極21aが設けられている」から、「表面には複数の」「配線電極21aが設けられている」と認められる。 (ウ)上記「配線付粘着シート23の一端部は、配線基板21の所定位置に接続されており、この一端部における接続配線は配線基板21上に設けられた電子回路26に接続している。(【0038】)、「電子回路26は、電圧印加部26aと、信号処理部26bと、画像構成部26cを備えている。」(【0040】)、及び、「半導体素子13内に形成された電荷は、上記電界の作用によって各電荷収集電極15から電気信号として取り出され、電子回路26の信号処理部26bによって種々の処理がなされたのち、画像構成部26cによって画像が構成される。この画像は、電子回路26に接続されたモニタ28に映し出される。」(【0043】)との記載から、引用文献1に記載された「電子回路26」は「配線基板21上に設けられた」ものであるとともに、当該「電子回路26」は「電圧印加部26aと、信号処理部26bと、画像構成部26cを備えている」電子システムであるといえる。 (エ)上記「半導体素子13の裏面(第2の面)には、電荷収集電極15(第2の電極)が形成されている。」(【0027】)、「個別基板11は、プリント配線基板からなり、表面に複数の第1個別電極12a、裏面に第2個別電極12bを備えている。」(【0022】)、「電荷収集電極15は、それぞれ導電性接着剤16を介して第1個別電極12aに電気的に接続されている」(【0028】)、及び、「配線基板21の配線電極21aと個別基板11の第2個別電極12bは、導電性接着剤22を介して電気的に接続されている。」(【0034】)との記載から、半導体素子13の裏面の電荷収集電極15は、個別基板11の表面の第1個別電極12aに導電性接着剤16を介して電気的に接続され、配線基板21の配線電極21aは、個別基板11の第2個別電極12bに導電性接着剤22を介して電気的に接続されているといえる。 さらに、上記「本実施の形態では、半導体素子13と配線基板21とを個別基板11を介して接続しているが、半導体素子13と配線基板21の線膨張率の差によって半導体素子13に作用する熱応力を緩和することができれば、個別基板11は不要となる。」(【0059】)と記載されていることに照らして、「半導体素子13と配線基板21の線膨張率の差によって半導体素子13に作用する熱応力を緩和することができ」るものである場合、半導体素子13の裏面の電荷収集電極15は、個別基板11の表面の第1個別電極12aに導電性接着剤16を介して電気的に接続され、配線基板21の配線電極21aは、個別基板11の第2個別電極12bに導電性接着剤22を介して電気的に接続されているものにおいて、「個別基板11は不要となる」から、半導体素子13の裏面の電荷収集電極15は、配線基板21の配線電極21aに導電性接着剤を介して電気的に接続されるものであってよいといえる。 ウ 上記ア及びイによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用物発明」という。)が記載されていると認められる。 「X線やγ線などの放射線を検出するのに適した装置である半導体放射線検出器であって、 X線やγ線などの放射線を吸収するCdTe、CdZnTe、HgI2、PbIなどの素材が用いられる層と電荷収集電極を含む前記半導体放射線検出器の半導体素子と、 表面と裏面を有し、前記表面には複数の配線電極が設けられているプリント配線基板と、 前記配線基板上に設けられた、電圧印加部と信号処理部と画像構成部を備えている電子システムである電子回路と、 半導体素子と配線基板の線膨張率の差によって半導体素子に作用する熱応力を緩和することができるものであって、半導体素子の裏面の電荷収集電極は、配線基板の配線電極に導電性接着剤を介して電気的に接続される、 半導体放射線検出器。」 エ 上記ウの引用物発明を得るためには、当該引用物発明を製造する工程が必要であることは明らかであるから、上記アないしウによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用方法発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。 「X線やγ線などの放射線を検出するのに適した装置である半導体放射線検出器を製造する方法であって、 X線やγ線などの放射線を吸収するCdTe、CdZnTe、HgI2、PbIなどの素材が用いられる層と電荷収集電極を含む前記半導体放射線検出器の半導体素子を取得する工程と、 表面と裏面を有し、前記表面には複数の配線電極が設けられているプリント配線基板を取得する工程と、 前記配線基板上に設けられた、電圧印加部と信号処理部と画像構成部を備えている電子システムである電子回路を取得する工程と、 半導体素子と配線基板の線膨張率の差によって半導体素子に作用する熱応力を緩和することができるものであって、半導体素子の裏面の電荷収集電極を、配線基板の配線電極に導電性接着剤を介して電気的に接続する工程を含む、 半導体放射線検出器を製造する方法。」 (3-2)引用文献2~4に記載された事項及び周知の技術事項について ア 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-118073号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本開示の実施形態は、センサアレイに関し、特に、モジュール式センサアレイの構築に関する。 【背景技術】 【0002】 センサやトランスデューサは、或る形式の入力信号を別の形式の出力信号に変換する素子である。よく使用されるトランスデューサとして、光センサ、熱センサ、音響センサ等がある。生物医学の非侵襲的診断や材料の非破壊試験(NDT)等、多岐にわたる様々な用途において、センサアレイの使用が不可欠であり、その場合、センサは、二次元(即ち、X-Y平面)で構成されることが多い。更に、医療用及び工業用のイメージング、非破壊試験(NDT)及び検査、セキュリティ、荷物スキャン、天体物理学、医学等の用途では、広い範囲を網羅するセンサの使用が不可欠であろう。X線、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波、マンモグラフィ等の医療診断の分野では、広い範囲を網羅するセンサを用いることが望ましいであろう。例えば、X線イメージングシステムでは、X線検出器の範囲を網羅するために大面積トランスデューサが有用であろう。更に、医療用以外の用途では、更に大きなアレイが必要とされるであろう。 【0003】 上述のように、大面積検出器アレイは、特定の用途にとって望ましい特性を有している。大面積検出器アレイは、複数のセンサモジュールを配列して形成可能である。更に、アレイ内の各センサモジュールのエッジを、隣接するモジュールのエッジに整合させて、大きなギャップやオフセットが無いようにすることが望ましい。しかし、このような、タイル状配列が可能な構造を実現することは、困難になりつつある。具体的には、センサ検出素子は、読み出し用の特定用途向け集積回路(ASIC)に電気的に接続することが必要であるため、相互接続が高密度になると、ASICの接点パッドとセンサの接点パッドとの間に密接な対応が必要になる。ASICの接点は、典型的には、片側にのみ配置されている。更に、ASICは、これらの接点パッドを用いてASICとセンサとを結合することに加えて、これらの接点パッドを用いて、他のシステム電子回路との電力接続及びデジタル通信接続を行う必要がある。したがって、センサ及びシステムの両方の相互接続をこのASIC表面に接続するとともに、四角タイル状配列構造及び高画素ピッチをセンサ内で支持する、何らかの手段を実装することが望ましい。」 「【0027】 次に、ステップ20で、1つ以上のインターポーザ素子を用いて、センサアレイの各センサ素子を1つ以上の集積回路と動作可能に結合する。具体的には、各センサ素子の第2の面にある接点パッドを、インターポーザの第1の面にある上面接点パッドと結合する。実施形態によっては、センサ素子の第2の面の接点パッドをインターポーザの第1の面の上面接点パッドと結合するにあたり、ASICダイのフリップチップアタッチ(FCA)又はワイヤボンディングのいずれかを用いる。FCAの場合は、I/Oパッドの全面配列を用いて、センサ素子をインターポーザと結合することが可能である。一方、ワイヤボンディングの場合は、I/Oパッドの外周配列を用いて、センサ素子をインターポーザと結合することが可能である。更に、ステップ20では、集積回路をインターポーザ素子と結合する。これは、インターポーザの第2の面にある底面接点パッドを、集積回路の第1の面にある接点パッドに接着することにより行われる。実施形態によっては、各センサ素子の第2の面の接点パッドをインターポーザの第1の面の上面接点パッドと結合するにあたり、エリアアレイ組立工程を用いる。Siデバイスの場合は、FCA工程を用いるのが一般的である。これに対し、この工程の変形形態では、ダイ表面において銀充填導電性エポキシとともに金スタッドバンプを使用することが必要であり、これは、従来のはんだFCA法の場合よりもかなり低温で実行可能である。また、インターポーザ素子が不要なセンサ素子であれば、対応する集積回路と直接結合することも可能である。」 イ 本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-161689号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は一般的には、センサ素子用の電気的インタフェイスに関し、さらに具体的には、計算機式断層写真法(CT)システム用の大面積検出器におけるタイル構成可能なモジュール素子として用いられ得るようなセンサ素子とデータ取得システム(DAS)との間の集積回路(IC)方式電気的インタフェイスに関する。 【背景技術】 【0002】 X線及び計算機式断層写真法(CT)のような放射線イメージング・システムが、対象の内部の諸相を実時間で観察するのに用いられている。典型的には、イメージング・システムは、患者又は手荷物のような関心対象に向かってX線を放出するように構成されているX線源を含んでいる。放射線検出器のアレイのような検出装置が対象の他方の側に配置されており、対象を透過したX線を検出するように構成されている。 【特許文献1】米国特許出願公開第20050286682号 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 計算機式断層写真法(CT)システムに用いられる一つの公知の検出器として、エネルギ識別型直接変換検出器がある。X線エネルギを受けると、直接変換検出器のセンサ素子がこのX線をエネルギへ変換して、入射したフォトン束に対応するアナログ電気信号を発生する。 【0004】 データ取得システム(DAS)が、直接変換検出器からアナログ信号を取得して、これらの信号をディジタル信号へ変換して後に行なわれる処理に供することができる。検出器とDASとの間で従来用いられているインタフェイス・パッケージは、アナログ信号については最適信号品質(signal integrity)を達成することができていない。この非最適信号品質の一因は、センサ素子とDASとの間のインターコネクト経路にある。現在の検出器モジュールは、センサ読み出し面からDASへのインターコネクト接続を、可撓性又は剛性の回路基板に設けられた長さの長い金属トレースを含むインターコネクト構造として形成している。センサ素子の密度が高まるほど、DASとセンサとの間のインターコネクトの配線(routing)が難しくなる。インターコネクトの配線のためにさらに多層のパッケージ形成が必要とされ、このようにしてキャパシタンスが高まると共に信頼性が低下する。」 「【0016】 図3は、本発明の一実施形態による構成特徴及びアセンブリの「積層体(stack-up)」を有する検出器モジュール20を示す。検出器モジュール20は、類似の検出器モジュール・ユニットが全4面において接触配置され得るようにタイル構成が可能であるという特徴を有する。検出器モジュール20は、X線信号を受信してX線信号を対応する電気的アナログ信号へ変換するように構成されているセンサ素子52を含んでいる。好ましくは、センサ素子52は直接変換物質の単一の層を含んでおり、直接変換物質としては、テルル化カドミウム及びテルル化亜鉛カドミウムの結晶、多結晶コンパクト及び薄層がある。図3に示すように、センサ素子52がDAS54に結合されてアナログ信号をディジタル信号へ変換する。明確に述べると、センサ素子52は、DAS54の一部を成す電子回路基材56に結合される。この結合を容易にするために、ピッチ・アダプタ58がセンサ素子52と電子回路基材56との間に含められている。ピッチ・アダプタ58は両面接続であり、各々の表面に接点パッド60を有してセンサ素子52の底面の読み出し面の接点パッド60を電子回路基材56の接点パッド60と接合する。ピッチ・アダプタ58は、センサ素子52及び電子回路基材56に異なる接点パッド60構成及び/又はピッチが存在している場合に、センサ素子52を電子回路基材56に接合するように構成されている。ピッチ・アダプタ58の上面は、センサ素子52の底面の一つの接点パッド構成に対応する接点パッド60を有し、また電子回路基材56の異なる接点パッド構成に対応する底面の接点パッド60を有する。 【0017】 また、センサ素子52の接点パッド60が電子回路基材56の接点パッド60と同じ構成にあることも思量される。この構成では、センサ素子52を電子回路基材56に結合するためのピッチ・アダプタは必要とされない。この構成では、センサ素子52は、電子回路基材56に直接結合される接点パッド60を有する底面の読み出し面を有する。すなわち、センサ素子52の底面の接点パッド60は、電子回路基材56の上面の対応する接点パッド60と結合するように構成される。」 ウ 本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-143564号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明の各実施形態は一般的には、診断撮像用の放射線撮影検出器に関し、さらに具体的には、スライスを増加させた取得及び検出器性能の改善を提供する複数のタイル構成可能なサブ・モジュールを有する計算機式断層写真法(CT)検出器モジュールに関する。 【背景技術】 【0002】 典型的には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムでは、X線源が患者又は手荷物のような被検体又は物体へ向けてファン(扇形)形状のビームを放出する。以下では、「被検体」及び「対象」「物体」等の用語は、撮像されることが可能な任意の物体を含むものとする。ビームは被検体によって減弱した後に放射線検出器のアレイに入射する。検出器アレイにおいて受光される減弱後のビーム放射線の強度は典型的には、被検体によるX線ビームの減弱量に依存する。検出器アレイの各々の検出器素子が、各々の検出器素子によって受光される減弱後のビームを示す別個の電気信号を発生する。電気信号はアナログからディジタルへの(A/D)変換器へ送られた後に、ディジタル画像への処理のために送られる。 一般的には、X線源及び検出器アレイは、撮像平面内で被検体を中心としてガントリの周りを回転する。X線源は典型的には、焦点においてX線ビームを放出するX線管を含んでいる。X線検出器は典型的には、検出器において受光されるX線ビームをコリメートして患者からの散乱を拒絶するコリメータと、コリメータに隣接して設けられてX線を光エネルギへ変換するシンチレータと、隣接するシンチレータから光エネルギを受け取ってここから電気信号を発生するフォトダイオードとを含んでいる。 典型的には、シンチレータ・アレイの各々のシンチレータがX線を光エネルギへ変換する。各々のシンチレータは、シンチレータに隣接するフォトダイオードに光エネルギを放出する。各々のフォトダイオードが光エネルギを検出して、対応する電気信号を発生する。次いで、フォトダイオードの出力はデータ処理システムへ送信されて、画像再構成を施される。」 「【0025】 図5及び図6に戻り、ASIC電子回路パッケージ68をシンチレータ及びフォトダイオードの対64、66に直接結合すると、従来のアナログ・フレックス伝送及び付設されるインタコネクトに比較して減少した電子雑音を有利に与え、これにより信号対雑音比(SNR)を高めることが認められる。すなわち、アナログ信号伝達の主な不利益は雑音すなわちランダムな無用の変動であることが認められる。信号が複製されまた再複製され、又はアナログ・フレックス回路に跨がる送信のように長距離にわたり送信されるにつれて、これらの見かけ上ランダムな変動が支配的になり、このようにして電気的雑音を生ずる。加えて、フォトダイオード・アレイをASIC(A/D変換器)に近接して結合すると、電力要件が縮小し、また発生される対応する熱が少なくなる。このように、フォトダイオード・アレイ66によって発生されるアナログ電気信号のディジタル数への変換(すなわちASIC電子回路パッケージ68でのA/D変換)をサブ・モジュール56のASIC電子回路パッケージ(1又は複数)68において直接行なうと、相対的に長い距離にわたり(すなわちフレックス回路に跨がって)アナログ信号を送信する必要がなくなるため、雑音を少なくしてSNRを高めるのに役立つ。 【0026】 SNRを高めることに加えて、ASIC電子回路パッケージ(1又は複数)68をシンチレータ及びフォトダイオードの対64、66に直接結合すると、電気的インタコネクト及び構成要素の数を減少させ、特に従来の検出器モジュールに見られる高密度アナログ・フレックス回路に関して減少させることにより、検出器モジュール20の信頼性を高めることができる。サブ・モジュール56においてASIC電子回路パッケージ(1又は複数)68を用いると、内部に含まれる構成要素及び境界の数を減少させることにより、検出器モジュール20の全体の単位面積当たり(すなわちピクセル当たり)の費用を縮小するのにも役立つ。」 エ 上記アによれば、引用文献2には、「X線を網羅するセンサを用いるX線検出器と、読み出し用の特定用途向け集積回路(ASIC)に電気的に接続するに際して、センサ素子を対応する集積回路と直接結合すること」が記載され、上記イによれば、引用文献3には、「検出器モジュールは、X線信号を受信してX線信号を対応する電気的アナログ信号へ変換するように構成されているセンサ素子を含み、データ取得システム(DAS)センサ素子は、DASの一部を成す電子回路基材に結合され、センサ素子は、電子回路基材に直接結合される接点パッドを有する底面の読み出し面を有する」ことが記載され、上記ウによれば、引用文献4には、「ASIC電子回路パッケージをシンチレータ及びフォトダイオードの対であるX線検出器に直接結合する」ことが記載されていることに照らせば、「X線検出器の接点と電子回路機材とを電気的に接続するに際して直接結合すること。」(以下「周知の技術事項という」)が、本願の出願前には周知の技術事項であったと認められる。 (4)対比・判断 ア 本願補正発明と引用方法発明とを対比する。 (ア)引用方法発明の「X線やγ線などの放射線を検出するのに適した装置である半導体放射線検出器を製造する方法」は、本願補正発明の「X線を検出するのに適した装置の製造方法」に相当する。 (イ)引用方法発明の「表面と裏面を有し、前記表面には複数の配線電極が設けられているプリント配線基板を取得する工程」は、本願補正発明の「第1の表面および第2の表面を有する基板を取得すること」及び「前記基板は、前記第1の表面上の複数の電気接点を含」むことに相当する。 (ウ)引用方法発明の「前記配線基板上に設けられた、電圧印加部と信号処理部と画像構成部を備えている電子システムである電子回路を取得する工程」は、本願補正発明の「前記基板は、前記基板内または前記基板上にある電子システムを含」むことに相当する。 (エ)引用方法発明の「X線やγ線などの放射線を吸収するCdTe、CdZnTe、HgI2、PbIなどの素材が用いられる層と電荷収集電極を含む前記半導体放射線検出器の半導体素子を取得する工程」は、本願補正発明の「第1のX線吸収層を含む第1のチップを取得することを含」むこと、及び、「前記第1のX線吸収層は電極を含」むことに相当する。 (オ)引用方法発明の「半導体素子と配線基板の線膨張率の差によって半導体素子に作用する熱応力を緩和することができるものであって、半導体素子の裏面の電荷収集電極を、配線基板の配線電極に導電性接着剤を介して電気的に接続する」ことは、本願補正発明の「前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に直接接続されるように、前記第1のチップを前記基板に直接接合すること」と「前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に接続されるように、前記第1のチップを前記基板に接合すること」の点で一致する。 (カ)そして、本願補正発明の概略「基板を取得し」、「第1のチップを取得し」、「第1のチップを基板に直接接合する」との発明特定事項から見て、特に、「基板を取得」する順と、「第1のチップを取得」する順の間に、当該順であることを格別特定する事項(例えば、「最初に」、「次に」、「の順で」等)はないことに照らして、引用方法発明における、プリント配線基板を取得する工程と半導体素子を取得する工程の順と、本願発明の「基板を取得」する順と、「第1のチップを取得」する順の間に方法発明の工程順の差異はない。 (キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、本願補正発明と引用方法発明は、 「X線を検出するのに適した装置の製造方法であって、 第1の表面および第2の表面を有する基板を取得することを含み、 前記基板は、前記基板内または前記基板上にある電子システムを含み、 前記基板は、前記第1の表面上の複数の電気接点を含み、 第1のX線吸収層を含む第1のチップを取得することを含み、 前記第1のX線吸収層は電極を含み、 前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に接続されるように、前記第1のチップを前記基板に接合することを含む、方法。」 の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 <相違点> 「前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に接続されるように、前記第1のチップを前記基板に接合すること」に関して、本願補正発明は、当該接合が「直接接合」するのに対して、引用方法発明は、直接接合すると特定されない点。 イ 判断 (ア)相違点について 引用方法発明では、半導体素子の裏面の電荷収集電極を、配線基板の配線電極に導電性接着剤を介して電気的に接続しているが、「X線検出器の接点と電子回路機材とを電気的に接続するに際して直接結合すること。」(以下「周知の技術事項という」)が、本願の出願前には周知の技術事項であったことを踏まえると、半導体素子の裏面の電荷収集電極と配線基板の配線電極を、導電性接着剤を介して電気的に接続することに代えて、直接結合して上記相違点に係る本願補正発明の構成をなすことは当業者が容易になし得たことである。 (ウ)よって、本願補正発明は、引用方法発明及び上記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 ウ 請求人の令和2年1月20日付け提出の上申書における主張について (1)請求人は上申書の「【上申の内容】」「(1)第1の説明」において、本願補正発明に係り、概略、「このように、本願の請求項1に係る発明では『電子システムと電気接点とを含む基板』と、『第1のX線吸収層と電極とを含む第1のチップ』とが、別工程により製造される。 そして、本願の請求項1に係る発明は、第3の工程で、上記のように別々の工程で取得された基板の電気接点と第1のチップの電極とを直接接合し、これによりX線を検出するのに適した装置を製造する。 このように、本願の請求項1に係る発明は、基板の電気接点と第1のチップの電極とを単に直接接合することのみを特徴とするものではなく、電子システムと電気接点とを含む基板を取得し、第1のX線吸収層と電極とを含む第1のチップを取得し、別々の工程で取得された基板の電気接点と第1のチップの電極とを直接接合することを特徴とする。 このような製造方法の特徴は、引用文献1,5-7のいずれにも記載されていないため、審判請求人は、本願の請求項1に係る発明は引用文献1,5-7の記載から当業者が容易に想到し得るものではない、と思料する。」と主張する。 (2)しかしながら、前記「2」「(3)」「(3-1)」で検討したとおりであって、引用方法発明は、「X線やγ線などの放射線を吸収するCdTe、CdZnTe、HgI2、PbIなどの素材が用いられる層と電荷収集電極を含む前記半導体放射線検出器の半導体素子」と「表面と裏面を有し、前記表面には複数の配線電極が設けられているプリント配線基板」とを同一の工程で製造するものであると特定するものではない。 そして、引用方法発明は、「半導体素子の裏面の電荷収集電極を、配線基板の配線電極に導電性接着剤を介して電気的に接続する」ものである以上、別々の工程で製造されたものをこの工程で「導電性接着剤を介して電気的に接続する」ものであることは明らかであるから、上記請求人の主張は採用できない。 3 むすび(補正の却下の決定のむすび) 上記2のとおり、本願補正発明は、引用方法発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年8月1日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし29に係る発明は、平成30年12月3日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に記載された発明は、上記「1」「(2)」のとおりのものであると認められる(以下「本願発明」という。)。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-3、5、7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない(新規性)、あるいは、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(進歩性)との理由を含むものである。 引用文献1.特開2005-26419号公報 3 引用文献 原査定の拒絶理由で引用された、引用文献1の記載事項及び引用方法発明は、前記「第2」[理由]「2」「(3)」「(3-1)」のとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記「第2」[理由]「2」で検討した本願補正発明における、「第1のX線吸収層の電極/第1のチップ」と「電気接点/基板」に関して、追加の中間層(例えば、はんだバンプ)を使用しないウェーハ接合プロセスに限定する「電気的に直接接続される/直接接合する」であったものに関して、追加の中間層(例えば、はんだバンプ)を使用する接合であってよい「電気的に直接的に接続される/直接的に接合する」として、「追加の中間層(例えば、はんだバンプ)を使用しないウェーハ接合プロセスに限定する」限定を省いたものである。 そうすると、「半導体素子と配線基板の線膨張率の差によって半導体素子に作用する熱応力を緩和することができるものであって、半導体素子の裏面の電荷収集電極は、配線基板の配線電極に導電性接着剤を介して電気的に接続される」引用方法発明における「導電性接着剤」は当該「追加の中間層」といえるものであるから、引用方法発明の「半導体素子と配線基板の線膨張率の差によって半導体素子に作用する熱応力を緩和することができるものであって、半導体素子の裏面の電荷収集電極は、配線基板の配線電極に導電性接着剤を介して電気的に接続される」ことは、本願発明の、「前記第1のX線吸収層の前記電極が少なくとも1つの前記電気接点に電気的に直接的に接続されるように、前記第1のチップを前記基板に直接的に接合すること」に相当する。 よって、前記「第2」[理由]「2」での検討を踏まえると、引用方法発明と本願発明に相違するところはない。 よって、引用方法発明は本願発明である。 また、本願発明は引用方法発明から当業者が容易に想到し得たものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用方法発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願発明は、引用方法発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-010171

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