特許拒絶査定不服審判
2024-004755
放射線の定量化のための新しい線量測定装置
- 審判番号
- 2024-004755
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-500051
- 請求日
- 2024年03月19日
- 審決日
- 2026年01月22日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイエスピー インヴェストメンツ エルエルシー
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】真能 清志
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 波多江 進
- 審判官 小澤 尚由
- 分類
- P18 .121-WZ (G01T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-500051「放射線の定量化のための新しい線量測定装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月 9日国際公開、WO2020/009930、令和 3年11月18日国内公表、特表2021-531453〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)6月28日を国際出願日とする外国語特許出願であって(優先権主張外国庁受理 2018年(平成30年)7月5日 米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 2月 5日 :翻訳文の提出
令和5年 4月14日付け:拒絶理由通知書
同年 7月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同月19日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年11月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同月20日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月21日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 3月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 5月15日付け:前置報告書
同年 9月11日 :上申書の提出
令和7年 6月19日付け:拒絶理由通知書
同年 9月22日 :意見書、手続補正書の提出
以下、2018年(平成30年)7月5日を「優先日」という。
第2 本願発明
1 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年9月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。
<本願発明>
「放射線源から放出された放射線の線量を定量化するための線量測定装置であって、該装置は、
(i)放射線量インジケータであって、ポリアセチレン、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはポリアセチレンの亜鉛塩から調製され放射線源から放出された放射線量を測定可能な放射線感受性フィルムを含み、測定される放射線が、0.01グレイ(Gy)から2,000グレイ(Gy)の放射線量範囲を有する、該放射線量インジケータと、
(ii)放射線に被曝後の前記放射線量インジケータの色の変化をキャプチャするための光学的手段と、および
(iii)前記放射線源から放出された放射線量を定量化するために、前記放射線量インジケータの光学密度を、パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線と比較するソフトウェア手段と、
を備え、
前記所定の検量線が、放射線感受性フィルムの赤色光学密度の線形応答特性に基づいていることを特徴とする線量測定装置」
2 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。
(構成X)放射線源から放出された放射線の線量を定量化するための線量測定装置であって、該装置は、
(構成A)(i)放射線量インジケータであって、ポリアセチレン、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはポリアセチレンの亜鉛塩から調製され放射線源から放出された放射線量を測定可能な放射線感受性フィルムを含み、測定される放射線が、0.01グレイ(Gy)から2,000グレイ(Gy)の放射線量範囲を有する、該放射線量インジケータと、
(構成B)(ii)放射線に被曝後の前記放射線量インジケータの色の変化をキャプチャするための光学的手段と、および
(構成C)(iii)前記放射線源から放出された放射線量を定量化するために、前記放射線量インジケータの光学密度を、パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線と比較するソフトウェア手段と、
を備え、
(構成D)前記所定の検量線が、放射線感受性フィルムの赤色光学密度の線形応答特性に基づいていることを特徴とする
(構成X)線量測定装置
3 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願の明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある(下線は、当合議体による。)。
「【0007】
放射線の危険性についてユーザに警告するために照射量の識別、汚染の低減、安全保護温度及び視覚的識別手段について多くの変更がインジケータに加えられている。しかし、放射線源から放出される実際の放射線量を測定する正確なメカニズムはない。
【0008】
したがって、当技術分野では、使用者の位置で実際の放射線(X線またはガンマ線)曝露を定量化し、使用者に関する詳細な情報を提供することができる線量測定装置が必要とされている。
【0009】
驚くべきことに、我々の線量測定装置は、放射線源から放出された実際の放射線を高精度で定量化する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様では、本明細書において、放射線源から放出された放射線の線量を定量化するための線量測定装置が提供され、この装置は、(i)放射線を測定し、放出された放射線の量を色の変化として視覚的に表す放射線感受性組成物を含む放射線量インジケータ、(ii)放射線に被爆後の放射線量インジケータの色の変化をキャプチャするための光学的手段、および(iii)放射線源から放出された放射線量を定量化するために、放射線量インジケータの光学密度を、パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線と比較するソフトウェア手段を備える。」
「【0053】
別の実施形態では、試験アセンブリは、光学密度測定に供される。携帯電話のカメラが、色の変化を測定するために使用され、HDRモードまたはフラッシュモードで画像の形でキャプチャされる。密度-赤色データは、対象の放射線範囲(25Gy)のラジオクロミックフィルムに対してほぼ線形の応答を示す。驚くべきことに、ラジオクロミックフィルムの赤色線形応答は、線形数学方程式によって赤色光学密度の実験結果をX線線量に合わせる線量測定アプリケーションを開発するための適切な候補であることが判明した。図3と図4は、それぞれ20Gyと10Gyの放射線量に曝される前と後の製品試験アセンブリに関するものである。
【0054】
したがって、本出願は、Gafkromic(登録商標)フィルム放射線を用いる放射線量センサーの毎秒0.01グレイ(Gy)から毎秒約2000Gy(グレイ)の線量範囲内の光学密度-赤色の線形応答特性として表される新しい線量測定装置と写真濃度計とを使用して、放射線量を監視する正確な方法を提供する。
【0055】
したがって、試験アセンブリが光学密度測定に供された。反射ヘッドアセンブリを備えたX-Rite301T写真濃度計を使用した。結果は、dv(密度-視覚)、dr(密度-赤色)、dg(密度-緑色)、db(密度-青色)として測定される。放射線を受けた被験体を通過する放射線の量に基づいて色が青色から赤色に変化するにつれて、濃度計を使用して測定された濃度-赤色の値は一貫して増加する。
【0056】
さらに別の重要な実施形態において、本発明は、Gafkromic(登録商標)フィルム放射線を用いる放射線量センサーの毎秒0.01グレイ(Gy)から毎秒約2000Gy(グレイ)の線量範囲内の光学密度-赤色の線形応答特性として表される新しい線量測定装置とApple iPhoneから選択したスマートフォンとを使用して、放射線量を監視する正確な方法を提供する。クロップされたフィルム画像が図6に示されている。」
「【0068】
例1:
ラジオクロミックフィルムの比較データ
【0069】
線量計機能の可能性を実証するために、様々な既存のラジオクロミックフィルム製品を、X線放射線被曝の関数として評価した。評価したフィルムまたは製品を表1に示す。
【0070】
【表1】
[図:0001436539000001.jpg]
【0071】
例2:
X線装置への曝露
【0072】
表1に提示されたフィルムまたは製品を、Pantak(登録商標)ユニポーラシリーズ2HF160X線装置において10、20、30、40、50および60Gyで曝露した。X線キャビネットにはXRAD-160のマークが付されていた。この装置には、フィルムに供給された実際の線量をグレイ(Gy)単位で決定するためにCNMC K602精密線量計が装備されていた。別の一連のフィルム露光において、同様の方法で取り付けられたGafchromic(登録商標)フィルムアセンブリも試験した。このアセンブリの例が図3に示されている。
【0073】
例3:
光学密度測定
【0074】
フィルムまたは製品を光学密度についても評価した。光学密度の測定に使用した装置は、反射ヘッドアセンブリ(モデル310-06)を備えたX-Rite310T写真濃度計であった。この装置は、dv(密度-視覚)、dr(密度-赤色)、dg(密度-緑色)、db(密度-青色)の4つの測定結果を報告した。表2に、濃度計試験の結果を示す。
【0075】
【表2】
[図:0001436539000002.jpg]
【0076】
濃度計の結果を分析すると、dr(濃度-赤色)データが、この曝露範囲において、Gafchromic(登録商標)フィルム#1に対して線形応答を示す。dr結果の比較プロットが図6に示されている。フィルム#1の赤色線形応答は、このフィルム技術が線量測定アプリケーションの開発に適した候補であり、この赤色光学密度の実験結果は線形方程式によってX線の線量に合わせることができることを示している。
【0077】
例4:
色の変化として測定され、画像の形でキャプチャされた放射線
【0078】
ラジオクロミックフィルムの色の変化を測定するために、携帯電話のカメラを使用した。ソフトウェアバージョン11.2.1(15C153)を搭載したApple iPhone 5S(モデルA1533)を使用して、HDRモードでまたはフラッシュなし(HDRモード除去)で写真撮影した。この試験でクロップされたラジオクロミックフィルムの画像を図5に示す。
【0079】
iPhoneを使用して、HDRモードの写真をキャプチャした。これらの画像はクロップされ、jpgファイル形式で保存した。これらの画像の色情報をRGB形式に変換するために、イリノイ大学アーバナシャンペーン校のベックマン研究所のImaging Technology Group(ITG)の「GetRGB」と呼ばれるソフトウェアプログラムを採用した。結果(ポイント選択され、平均化されてない)は、この生データに最小限の変動があったことを示し、これらの生データのRGB形式への変換を表3に示す。
【0080】
【表3】
[図:0001436539000003.jpg]
【0081】
表3からの赤色データは、対象の放射線範囲において、ラジオクロミックフィルム#1に対してほぼ線形の応答を示した。この効果は、図5に示すグラフでより簡単に視覚化される。図6に示す結果から、色を線量に関連付ける線形検量線が実現可能であること明らかである。」
「【図5】
[図:0001436539000004.jpg]
【図6】
[図:0001436539000005.jpg]
」
第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
本願発明は、本件補正前の請求項1(令和6年3月19日になされた手続補正後のもの)に係る発明を補正したものであるところ、当審において令和7年6月19日付け拒絶理由通知書で本件補正前の請求項1に係る発明に対して通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうちの理由3(進歩性の欠如)の概要は、次に示すとおりである。
理由3(進歩性の欠如)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献一覧>
1.特表2013-524238号公報
2.米国特許出願公開第2008/0023647号明細書
第4 当合議体の判断
当合議体は、以下に示すとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
1 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に発行された引用文献1(特表2013-524238号公報)には、次の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。他の文献についても同様である。
(ア) 技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段(【0001】~【0015】)
「【技術分野】
【0001】
本願は、放射線量測定方法及びその方法を実行するための関連デバイスに関する。特に、本発明は、放射線量測定方法フィルム内の放射線感受性物質の量の変動を補償するこのような方法及び関連デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線放出源が用いられている施設、例えば癌患者が放射線治療を受ける病院や、血液製剤が照射される血液バンクでは、放射線放出源によって伝えられる放射線量を定量的に求めるのに、多様な方法を用いる。実践されている方法は、熱ルミネッセンス線量計(TLD,thermoluminescent dosimeter)、電離型放射線検出器、写真フィルム、及び、ラジオクロミック物質の使用を含む。TLDは、複雑で時間のかかる読み出しプロセスを要するので、不便である。電離型放射線検出器は、扱い難くて、複雑な設定を要する。写真フィルムは、読み出しの前に時間のかかる化学的処理手順を要する。ラジオクロミック物質は、露光後処理を要せず、高空間分解能で放射線量を測定することができるので、好ましいが、線量の計算が複雑なステップシーケンスを要して、誤差が生じ易いので、現状では不便である。
【0003】
特許文献1には、例えば、患者が放射線治療中に受ける放射線のレベルを求める際に用いるための放射線量計が記載されていて、その放射線量計は、放射線感受性物質の層が設けられた基板を備える。放射線感受性物質は、放射線被曝の程度に従って系統的に変化する光学密度を有する。線量計は、カード又はフレキシブル基板の形状を取り得て、患者又は他の照射対象の上に配置可能であり、また、反射又は透過密度計を含む線量リーダー内に配置可能であり、又はその中のスロットを介してスライド可能である。
【0004】
放射線量計の放射線感受性物質は、ポリマーマトリクス中に分散させた微結晶ペンタコサジイン酸(PCDA,pentacosadiynoic acid)から成り得る。モノマーPCDA結晶、PCDAの金属塩等の関連化合物を電離放射線に曝すと、徐々に重合が生じるが、重合の程度は、放射線量と共に増大する。重合の量(つまり、放射線量)を、曝された線量計のスペクトル吸収又は光学密度のいずれかを測定することによって、求めることができる。しかしながら、これらのパラメータは、測定時のデバイスの温度、PCDA分散体の厚さ、ポリマーマトリクスの含水量によっても変化することが知られている。線量測定の最大精度は、温度、厚さ、水分の影響を考慮しなければならない。
【0005】
放射線量測定方法フィルムは、一点における放射線被曝を測定する手段を提供するが、その主な利用方法は、放射線被曝の二次元マップ(つまり、二次元アレイ中の多数の点における放射線被曝)を得ることである。一般的なユーザーは、75dpiの空間分解能で一つ又は複数のカラーチャネルにおいて8インチ×10インチのサイズのフィルムを測定し得て、450000点の放射線量のマップを生成する。勿論、他の分解能を用いて、放射線被曝マップを生成するこができる。
【0006】
実際には、多数の点における放射線感受性フィルムの測定には、問題がある。問題は、測定を行う手段の利用性及びコストである。一次吸収ピークにおけるフィルム(例えば、PCDAや、PCDAのリチウム塩(LiPCDA))の活性成分の吸光度及び所定の波長における他の成分の測定は、走査型分光光度計の使用を要する。このような設備は、簡単には利用できず、また、コストが高い。更に、測定が必要とされる特定の波長における光源の低強度に起因して、動作速度が遅い。
【0007】
この問題の考えられる解決策は、フィルム又はドキュメントスキャナを用いて、フィルムの測定点を収集することである。このような手段の利点は、こうしたスキャナは普及していて、比較的低コストであり(大抵1000ドル未満)、高空間分解能で走査して(最大2400dpi)、動作が高速であり(30秒未満で75dpiの分解能で8インチ×10インチを走査)、色を測定するように構成されている。
【0008】
フィルムスキャナは、分光光度計とは異なり、特定の波長における吸光度を測定するのではなくて、波長帯にわたって測定を行う。特定のモデルのスキャナが動作する波長帯は、光源のスペクトル出力、光路中の光学フィルタのスペクトル吸光度、及び検出器のスペクトル応答を含む複数の要因の組み合わせによって定められる。カラー測定用に構成されたスキャナは典型的に、可視スペクトルの赤、緑、及び青の部分を定める三つの波長帯にわたって積分された吸光度を評価する。カラー帯内の全信号に対する各波長における吸光度の寄与は、波長毎に異なる。各波長の重みは、ユーザー定義ではなく、光源のスペクトル出力、光路中の光学フィルタのスペクトル吸光度、及び検出器のスペクトル応答という上記要因に依存する。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
放射線量測定方法及びその方法を実行するための関連デバイスが開示される。特に、放射線量測定フィルム中の放射線感受性物質の量の変動を補償する方法及び関連装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
放射線感受性物質に比例して放射線不浸透性物質を含む放射線量測定方法フィルムが開示され、その放射線不浸透性物質によって、放射線量測定方法フィルム中の放射線感受性物質の量の変動が補償され得る。
…(後略)」
(イ) 発明を実施するための形態(【0017】~【0078】)
「【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一側面によると、放射線感受性物質の厚さの変動を考慮した方法で線量応答の決定を促進する放射線量測定方法が説明される。特定の実施形態によると、線量応答は、少なくとも二つの成分チャネルを用いて、特にフラットベッドカラースキャナの二つのカラーチャネルを用いて、計算され得る。そして、本方法は、測定された応答を二つの部分に分けることができて、一方が線量依存部分であり、他方が線量非依存部分である。線量非依存部分は、放射線感受性層の厚さに比例した値を有する。この部分を用いて、放射線感受性活性成分から導出された線量応答を補正して、活性成分の厚さの差によって生じる変動を考慮することができる。
【0018】
“画像”との用語は、本願において、走査されたサンプルに対応するデジタルデータのことを称する。デジタルデータは、スキャナから直接得られた生の値であるか、又は生の値に基づいた計算値(光学密度や吸光度の値等)であり得る。
…(中略)…
【0022】
少なくとも一つのカラー又は成分チャネルにおいて、吸光度の少なくとも一部は、放射線感受性活性成分に起因するものであり、その活性成分に起因する吸光度の一部は、放射線量に比例する。
…(中略)…
【0040】
本発明は、放射線量測定方法フィルム内の放射線感受性物質の厚さの変動を補償するための装置10及び方法を有する。装置10の例が図1に示されている。本発明は、本願において、フラットベッドスキャナ14と共に使用可能であるものとして説明されるが、後述のように、本発明を、他の多様な光学スキャナ装置のいずれかと共に用いることもできる。
【0041】
本方法を実行する装置又はコンピュータシステム10は、フラットベッドスキャナ14を備え得る(図1を参照)。装置10は、モニタ16、プリンタ18、処理ユニット20、キーボード22、及びマウス24を更に含み得る。装置10には、装置10がモニタ16上に走査された放射線量測定方法フィルムの画像を表示できるようにする画像処理ソフトウェア(図示せず)が備わり得る。また、コンピュータシステム10は、放射線量測定方法フィルムの画像をプリンタ18で印刷し得る。また、画像処理ソフトウェアは、画像からのデータを分析及び操作するための多様な方法を提供し得る。
…(中略)…」
「【図1】
[図:0001436539000006.jpg]
」
「【0047】
図1に示されるように、フラットベッドスキャナ14は、コンピュータシステム又は装置10に接続され得て、そのコンピュータシステム又は装置は、モニタ16、プリンタ18、処理ユニット20、キーボード22、及びマウス24を含む。コンピュータシステム10には、そのコンピュータシステム10が走査されたフィルムの画像を適切なディスプレイデバイス16(CRTやLCDディスプレイ等)に表示できるようにする画像処理ソフトウェア(図示せず)が備わり得る。また、コンピュータシステム10は、走査されたフィルムの画像(図示せず)をプリンタ18で印刷し得る。
【0048】
装置10は、プロセッサ又は中央処理ユニット(CPU,central processing unit)20と、入力デバイス(例えば、スキャナ14、キーボード22、マウス24)と、出力デバイス(例えば、モニタ16、プリンタ18)を備え得る。装置10は、ストレージデバイスを更に含み得て、そこにはオペレーティングシステム、ファイル、アプリケーション、データベース、及び画像データ処理システムが記憶されている。オペレーティングシステムは、一旦インストールされると、コンピュータシステム10の多様なタスク、ジョブ、データ及びデバイスを管理し得る。装置10は、オペレーティングシステムがその機能を実行する際にアクセスし得るメモリを更に含み得る。ストレージデバイス又はメモリ等のコンピュータ可読ストレージデバイス内に含まれているのは、本方法の多様なステップ(ステップについては上記で概説し下記で詳述する)の一つ又は複数を実行するためのコンピュータ可読プログラムコードであり得る。CPU20は、ネットワーク(例えば、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、イントラネット、又はインターネット)上で、サーバ又はサーバプールにリンクされ得る。
…(中略)…
【0055】
第一ステップでは、放射線量測定方法フィルムを、フラットベッドスキャナ14の走査ベッドの上に配置する。勿論、フラットベッドスキャナ14の代わりに、デジタルカメラや、他の携帯型光学スキャナデバイスも使用可能である。
【0056】
放射線量測定方法フィルム(又はその一部)及び走査ベッドを互いに隣接して配置させた後、フラットベッドスキャナ14を作動させて、放射線量測定方法フィルムを走査して、複数の成分チャネルにおける複数の応答を有するデジタル画像(典型的には、走査されたフィルムを表すカラーデジタル画像データ信号)を生成する。そして、カラー画像データ信号は、コンピュータシステム10に転送され得て、走査された対象の画像が、モニタ16に表示され得るか、又は、後述のように、データが更に処理され得る。
【0057】
当業者には、多様な方法を用いて、放射線量測定方法フィルムの領域を多様な線量レベルに自動的に曝すことができることが十分に認識されているものである。例えば、マルチリーフコリメータ、二次コリメータ、放射線減衰物質の固定ブロックを、単独で又は組み合わせて用いて、電離放射線への被曝中に複数の領域を異なって遮蔽することができる。放射線検出媒体の異なって遮蔽された部分によって、ビーム強度や個々の被曝継続期間等の電離放射線の特性を変更せずに、線量レベルを変動させることができる。本発明の他の側面によると、線量レベルの変動を、電離放射線の特性を変更することによって、被曝線量が適用される比率を変化させることによって、若しくは、被曝時間を変化させることによって、又は上記手段の組み合わせによって、得ることができる。
【0058】
個々の放射線量レベルは、放射線源、被曝時間、被曝率、放射線源と放射線検出媒体との間の距離等の多数の因子に依存する。本発明に係る放射線量測定フィルムの較正は典型的に、フィルムの使用中に想定される放射線量レベルの範囲をカバーする放射線量レベルに放射線検出媒体を曝すことを含む。例えば、典型的な放射線量レベルは、略1cGyから略100000Gyの範囲、特に略1cGyから略10000cGyの範囲、特に略1cGyから略200cGyの範囲、本発明の特定の側面によると略1cGyから略100cGyの範囲内であり得る。
【0059】
本発明の一実施形態は、放射線量測定フィルムがInternational Specialty Products製のGAFCHROMIC(登録商標)ラジオクロミックフィルム等のラジオクロミックフィルムのようなものである放射線量測定方法を提供する。本発明用に修正可能なラジオクロミック組成物の具体的な例として、本願にその全体が組み込まれる特許文献2(Lewis等、2003年7月10日発行)に開示されているものが挙げられるが、これに限定される訳ではない。
【0060】
本発明は、特定のタイプの放射線感受性物質に限定されるものではないが、以下の説明は、GAFCHROMIC(登録商標)ラジオクロミックフィルムのおいて用いられているのと同様の特に有用なタイプの物質の使用に基づいた本発明の実施形態に関する。GAFCHROMIC(登録商標)ラジオクロミックフィルムは、自己現像性であり、一般的なルームライトには顕著に感受性ではなく、所望のサイズに切断して使用可能である。電離放射線への被曝は、ラジオクロミックフィルムに急激な色の変化を生じさせて、典型的には暗くなる。暗くなる程度は、被曝に比例して、密度計やスキャナを用いて定量的に測定され得る。
【0061】
GAFCHROMIC(登録商標)フィルム媒体の活性成分は微粒子の放射線感受性モノマーであり、ポリマーマトリクス中に分散していて、ポリエステルフィルムベース上にコーティングされている。活性モノマー成分が電離放射線に曝されると、重合反応が開始して、染料ポリマーの生成が生じる。ポリマー自体が染料であるので、被曝はフィルム内の着色を生じさせる。特定の実施形態に係る活性成分は、ジアセチレンとして知られている分子クラスに属する長鎖脂肪酸を有する。多くのジアセチレン族は、分子間秩序(例えば、結晶状態やミセル状態)が存在する場合のみ、特徴的に放射線感受性である。適切なアセチレン化合物は、
A-(CH2)n-C=C-C=C-(CH2)m-B
構造を有し、ここで、n及びmは両方とも略0から20の間の整数であり、特に略6から14の間の整数であり、A及びBは独立的に、メチル基、カルボキシル基、又は金属カルボキシレート基である。放射線に曝されると、活性ジアセチレンは、固体状態重合反応を経て、ポリジアセチレンと称される染料ポリマーを生成する。ポリジアセチレンの色及びスペクトル吸光度は、特定の分子構造に対して特有であるが、好ましくは、色の変化が放射線感受性フィルム上においてはっきりと目に見える。色の変化は、シアン、紫、又はマゼンタであることが多い。
【0062】
このようなポリアセチレンの具体的な例として、ペンタコサ-10,12-ジイン酸、13,15-オクタコサジイン、ドコサ-10,12-ジイン-1,22-ジオイック酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。勿論、ペンタコサ-10,12-ジイン酸は、電子放射線照射に対して異様に高い感度を提供するので、特に有用である。しかしながら、共役構造を有する他の一般的な結晶カラー現像ポリアセチレンの分散体を、単独で、又は好ましいジインと混合して、本発明の画像受容層として使用することができる。このような化合物は、上記構造のジインを含み、A及び/又はB部分は、低アルキル又はカルボキシルに加えて、ヒドロキシ、アミド、低アルキル置換アミド、最大10個の炭素原子を有する脂肪又は芳香カルボキシレートエステル基、一価又は二価のカルボキシレート金属塩基、ハロ、カルバミル、低アルキル置換カルバミル又はトシル、また、略20から60個の炭素原子及び共役構造を有する上記ポリアセチレンの対応するトリイン、テトライン生成物でもあり得る。こうした化合物の例として、10,12-ドコサジインジオール、9,11-エイコサジイン酸のジトルエン-p-スルホネート、10,12-ドコサジインジオニック酸のモノエチルエステル、10,12-ペンタコサジイン酸のリチウム、ナトリウム又はカリウム塩、ヘンエイコサ-10,12-ジイン酸の亜鉛塩、エイコサ-5,7-ジイン酸のマグネシウム塩、10,12-ドコサジイン塩化物、10,12-ペンタコサジイン(m-トリル-ウレタン)、10,12-ペンタコサジイン{[(ブトキシ-カルボニル)-メチル]ウレタン}、N-(ジメチル)-10,12-ペンタコサジインアミド、N,N’-ビス(1-メチルベンジ-1)10,12-ペンタコサジインジアミド等が挙げられる。また、本発明に従って使用されるジアセチレンは一般的に、以下の化学式
R-C=C-C=C-R’
を有し得て、例えば、R及びR’は共に、
CH2--O--CON--H--(CH2)5CH3
である。このようなジアセチレンは、熱アニーリング又は高エネルギー放射線照射のいずれかで、固体状態に重合する。適切な化合物は、本願に参照として組み込まれる特許文献3、特許文献4、特許文献5に開示されている。好ましくは、ポリアセチレン化合物は、少なくとも二つの共役アセチレン結合を有し、略10から60個の炭素原子を含む。
…(中略)…
【0074】
こうして形成されたフィルムは、放射線感受性であり、照射されると、重合プロセスがポリアセチレン化合物内で開始して、コーティングの色が直ちに変化する。色は、放射線被曝に比例して暗くなる。暗くなる程度は、密度計、分光光度計、フィルムスキャナ等の多数の機器で測定され得る。一般的に、このような測定を行う場合、透明フィルムサンプルの色の変化は、サンプルを透過した光の割合を測定することによって、評価される。同様に、不透明フィルムベース上にコーティングされたフィルムは、サンプルから反射された光の割合を測定することによって、適切に試験される。
【0075】
フィルムが放射線被曝に比例して暗くなるので、その暗さを測定して、その測定結果を、本願で説明されるように決定される較正に基づいて放射線被曝の量を決定するための手段として用いることができる。従って、フィルムを、放射線場を測定してマッピングするための放射線量計として用いることができる。
…(後略)」
(ウ) 例(【0079】~【0119】)
「【0079】
本発明の特定の側面を、以下の非限定的な例を参照してより詳述する。
…(中略)…
【0082】
[例2]
コーティング組成物を以下の成分を混合することによって調製した。
ポリビニルアルコール(水中で25%) 45重量部
ペンタコサジイン酸のリチウム塩(水中で18%) 50重量部
タルトラジン(水中で15%) 1.915重量部
界面活性剤 10G(水中で10%) 0.958重量部
【0083】
この組成物を透明ポリエステル基板上にコーティングした。流体を、スロットダイ塗布器によって基板上で計測して、0.005インチの公称の湿った状態での厚さのコーティングを形成した。湿ったコーティングを強制温風ドライヤにかけて、略28マイクロメートルの厚さの乾燥したコーティングを得た。このコーティングは黄色であった。
…(中略)…
【0085】
[例4]
例2の一枚のコーティングを分光光度計内に配置して、吸収スペクトルを350nmから800nmの間の波長において記録した。スペクトルは、略420nmの波長において2.0に達するピーク吸光度値を示した。吸光度は、510nm以上の波長において略0.12の値に落ち込んだ。略420nmにおいてピークを有する吸収帯は、コーティング中のタルトラジンの存在によるものである。
【0086】
略510nmから800nmの間の波長において、例2のコーティングのスペクトル吸光度は、例1のコーティングのスペクトル吸光度とほとんど区別できない。
【0087】
これらの観測によって、タルトラジン染料が、略500nm以下のスペクトルの青色部分において強力なスペクトル吸光度を生じさせるが、600nm以上のスペクトルの赤色部分において本質的に吸光度を有さないことが明らかとなった。
…(中略)…
【0090】
[例6]
例2の一枚のコーティングを、略2Gyの吸収線量でX線放射に曝した。照射後において、サンプルは緑色であった。被曝フィルムを分光光度計内に配置して、吸収スペクトルを、350nmから800nmの間の波長において記録した。強い吸光度ピークが635nmの波長において存在し、弱い吸光度ピークが585nmの波長に存在した。弱い吸光度ピークの低波長側において一つの肩部が存在し、略420nmに強い吸光度ピークが存在した。
【0091】
この例のサンプルのスペクトルを、例5のサンプルと比較すると、強いピーク及び弱いピークにおける全吸光度が、二つのサンプルにおいて事実上同じであると観測された。これによって、タルトラジン染料が、>600nmのスペクトルの赤色部分において活性成分の吸光度に対してあまり影響しないことが明らかになった。
【0092】
この例のサンプルのスペクトルを、<500nmの波長において例4のサンプルのスペクトルと比較すると、被曝サンプルの吸光度値が、被曝していないサンプルよりも略5%~10%大きいと観測された。これによって、スペクトルの青色部分におけるフィルムの応答が、主にタルトラジン染料に起因するものであるが、活性成分の被曝に起因した吸光度に対する0顕著な成分が存在していることが明らかになった。
【0093】
全体として、これらの観測によって、スペクトルの青色部分における応答は、フィルム中の活性成分の被曝に依存するが、スペクトルの赤色部分における応答は、タルトラジン染料に依存しないことが明らかになった。
…(中略)…
【0098】
[例8]
8インチ×10インチの大きさの例2のコーティングされたフィルムを、透明性アダプタが取り付けられたEpson 10000XLフィルムスキャナ上に配置した。略2インチ×2インチのサイズで透明黄色及び透明青色のフィルタ物質で構成された二つの対照フィルムを、スキャナのベッドに取り付けた。これらの位置は、8インチ×10インチのフィルムから離れている。この大きい方のフィルムは、元々の位置から0.5mm以内において着脱可能であるように、スキャナ上に配置された。
【0099】
スキャナを、コンピュータに接続して、Epson Scanソフトウェアインターフェースによって制御した。このソフトウェアアプリケーションにおいて、色補正の全てのオプションを切った。これによって、なんらかの種類の画像補正アルゴリズムを適用せずに、スキャナからの生の応答値を獲得することが可能になる。
【0100】
RGB画像を、8インチ×10インチのフィルム及び対照フィルムから、50dpiの空間分解能で収集した。このRGB画像を、赤色成分、緑色成分、及び青色成分の部分に分割した。青色成分画像をコンピュータモニタ上に表示した。画像は均一な暗さのものではないと観測された。これは、サンプルフィルム上のコーティング厚さが均一ではないことを示している。
【0101】
フィルムを、ライトテーブル上に置いて、目視で検査した。これによって、フィルムの黄色が完全に均一ではなく、平均よりも僅かに大きい光学密度を有する領域と、平均よりも僅かに小さい光学密度を有する他の領域が存在することが明らかになった。注意深い比較によって、フィルム上で目視で観測可能な明度及び暗度のパターンが、コンピュータモニタ上に表示された青色成分画像のパターンに対応していることが明らかになった。
【0102】
[例9]
例8の8インチ×10インチのフィルムを、リニア加速器によって生成された6MVのX線放射の均一場に曝した。吸収線量は略2Gyであった。被曝後に、フィルムは緑色になった。ライトテーブル上での被曝フィルムの注意深い観測によって、フィルムの見た目が完全には均一でないことが示された。一部領域は、平均よりも僅かに大きい光学密度を有し、一部領域は、平均よりも僅かに小さい光学密度を有していた。注意深い比較によって、被曝フィルム上で目視で観測可能な明度及び暗度のパターンが、コンピュータモニタ上に表示された例8の青色成分画像のパターンに対応していることが明らかになった。
【0103】
被曝フィルムを、例8で説明した元々の配置で、Epson 10000XLスキャナに戻した。二つの対照フィルムがスキャナ上に存在したままであり、動かされていなかった。RGB画像を、被曝8インチ×10インチのフィルム及び対照フィルムから、50dpiの空間分解能で収集した。画像を、赤色成分、緑色成分、及び青色成分の部分に分割した。
【0104】
[例10]
例8及び例9の被曝した及び被曝していないフィルムの画像を、MIRA AP6画像分析ソフトウェアを用いて測定した。このソフトウェアの特徴の一つは、RGB画像の赤色成分、緑色成分、及び青色成分の部分又はチャネル内において、ユーザー定義の対象領域内におけるスキャナ応答値の測定を可能にする点である。
【0105】
このようにして、被曝していない8インチ×10インチのフィルム(例8)の青色チャネル画像を測定した。対象領域はフィルム上に中心のある略7.5インチ×9.5インチのものであった。平均応答値MU,Bを測定した。そして、値MU,Bに対して、元々の青色チャネル画像における全ての画素値を正規化することによって、補正画像ICU,Bを生成した。この工程は、MIRA AP6ソフトウェアの画像計算機能を用いて、MU,Bで各画素のスキャナ応答値を割ることによって行われた。補正画像は、8インチ×10インチのフィルムにおける厚さの差についての情報を含んでいる。フィルムが完全に均一であれば、画像内の全ての画素は、1の値を有するが、僅かな厚さの差の存在は、その位置におけるコーティングが平均よりも僅かに厚いか薄いかに応じて、値を、1よりも僅かに大きい、又は1よりも僅かに小さいものにする。
【0106】
例9の被曝した8インチ×10インチのフィルムの赤色チャネル成分画像を検査した。MIRA AP6ソフトウェアを用いて、選択された対象領域内のスキャナ応答値のプロファイルを表示した。プロファイルを、モニタ上に表示から不均一性が明らかである画像領域にわたって得た。このプロファイルから、スキャナ応答値が、最大で、少なくとも±3%で変化していることが見て取れた。勿論、完全に均一なフィルムにおいては、応答値は全て厳密に1.000である。従って、スキャナ自体内部のノイズ源によって生じる画素値測定の誤差が存在している。こうしたノイズの寄与は略0.25%~0.5%と比較的小さいが、ノイズの複合のため、ノイズの低減が推奨される。CCDアレイの検出器素子からの顕著な信号ノイズが存在するが、フィルムの厚さの差は、低空間周波数において、例えば0.3サイクル/mm以下である。しかしながら、走査は一般的に少なくとも0.3mmの分解能で行われるので、スキャナノイズの周波数は、3サイクル/mmよりも大きくなる。スキャナノイズ及びフィルム厚さの変動が顕著に異なる周波数領域に存在するので、スキャナノイズの影響を、相対的厚さマップから効果的にフィルタリングすることができる。
【0107】
そして、被曝フィルムの赤色チャネル画像に補正を適用した。MIRA AP6ソフトウェアの画像計算機能を用いて、被曝フィルムの赤色チャネル画像を、補正画像ICU,Bで割った。このようにして、被曝フィルムの赤色チャネル画像における各画素の応答値を、補正画像における対応画素の値で割った。補正画像の応答値は、厚さに差に応じて変化するので、画像除算工程は、被曝フィルムの赤色チャネル画像を平坦化して、応答値が厚さに依存しない画像を生成する。
【0108】
MIRA AP6ソフトウェアを用いて、平坦化された赤色チャネル画像の選択された対象領域内のスキャナ応答値のプロファイルを表示した。プロファイルを、平坦化された画像の領域にわたって得て、平坦化前の画像の同じ領域にわたるプロファイルと比較した。スキャナ応答値は、平坦化前に最大で少なくとも±3%で変化したが、平坦化後の値は、±1%以下で変化することが観測された。これは、フィルム内の染料の含有が、厚さの差に対して放射線感受性フィルムの応答を補正する手段を提供することができることを実証している。
【0109】
[例11-信号参照チャネルの応答を用いた補正]
例10において利点が実証されているものの、被曝前後において各フィルムを走査して、位置が完全に一致するようにフィルムをスキャナ上に正確に配置することはユーザーにとって非常に不便である。また、MIRA AP6ソフトウェア及び他の市販の画像分析ソフトウェアを用いて、上記例で説明した多様な計算工程を行うことも不便である。更に、市販のソフトウェアでは、マーカー染料を含有するフィルムのRGBカラー画像が、放射線感受性成分の厚さの変動によって生じる応答の差に対して補正可能であるように、これらの画像の測定及び分析をすることができない。以下の説明は、フィルムが放射線量測定方法用に使用される際に用いることができる手順を定義する。この手順では、特別なコンピュータソフトウェア(FilmQA Pro)を用いて、RGBカラー画像を測定及び分析して、“参照チャネルに基づいた均一性補正”との題で上述した計算工程を行う。提供される工程は本発明の中核を成す。説明される方法の特有の利点は、各フィルムが一度しか走査されない点である。この特定の例は、マーカー染料からの信号が最大であるカラーチャネルにおいて測定される応答値に基づいた補正方法を用いる。この例のマーカー染料はタルトラジン(青色カラーチャネルにおいて最大の応答を有する黄色の染料)である。この例の放射線感受性成分は、ペンタコサ-10,12-ジイン酸のリチウム塩である。被曝後に、ペンタコサ-10,12-ジイン酸のリチウム塩は、赤色カラーチャネルにおいて最大の応答を有する青色に着色されたポリマーを形成する。
【0110】
放射線量測定用のフィルム線量測定方法のプロセスにおいて、較正フィルムを用いることは一般的である。これは、一枚又は複数のフィルムであり、一組の較正された放射線量がそれに対して既に照射されている。この単一のフィルム又は一組のフィルムのことを、較正フィルムと称する。フィルム線量測定方法のプロセスにおいては、放射線場内の二次元平面に対して伝えられる放射線量を求めるために、一枚又は複数のフィルムを放射線場に曝すことも一般的である。この単一のフィルム又は一組のフィルムのことを、測定フィルムと称する。
【0111】
補正を適用して、測定フィルムの厚さの差を補償するプロセスを以下説明する。
【0112】
この例では、測定フィルムMは、例9で説明した8インチ×10インチのフィルムであった。較正フィルムCは、測定フィルムと同じロットナンバーのフィルムであって、その複数の画定された領域が、既知の線量の放射線を既に受けている。両方のフィルムを、透明性アダプタが備えられたEpson 10000XLフィルムスキャナ上で、75dpiのRGBトランスミッションモードで走査した。FilmQA Proソフトウェアを用いて、較正フィルムを走査することによって得られたRGB画像の被曝領域内の赤色チャネル及び青色チャネルにおけるスキャナ応答値を測定した。FilmQA Proソフトウェアを用いて、較正フィルムから測定された赤色及び青色の応答値・対・線量をプロットすることによって、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルに対する較正曲線を提供した。較正曲線の値の間の関係性を、有理線形フィッティング関数を用いることによって、数学的に記述した。フィッティング関数は、他の変数の関数として一つの変数を記述する。可逆フィッティング関数を用いることが有用である。何故ならば、関数中の定数を単純な算術演算を用いて再構成して、変数Aを変数Bの関数として表すこと、又はその逆ができるからである。可逆関数の他の例は、指数線形関数又は逆数線形関数である。また、多項式関数を用いて、線量に対する応答に関する校正曲線を生成することもできるが、可逆ではないので、あまり望ましくない。
【0113】
測定フィルムのRGB画像を、FilmQA Proソフトウェアに対する入力として提供した。そして、そのソフトウェアを用いて、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルに対する較正関数を適用して、測定画像を、スキャナ値空間から線量値空間に変換した。測定フィルムの画像が、図2の30に示されていて、赤色カラーチャネルから導出された線量マップ画像が31に示されている。線量マップを横切る水平方向における赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルから計算された線量プロファイルが、図3の40、41にそれぞれ示されている。これは、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルの両方における線量プロファイルが実質的に不均一であることを示している。この不均一性は、青色チャネルにおいてより大きく表れる。何故ならば、このカラーチャネルにおける応答は、厚さに強く依存するが、放射線量に弱く依存して、赤色カラーチャネルに対してこの逆が当てはまるからである。40に示される例は、計算された線量プロファイルにおける最大略10cGyの線量の逸脱を示し、厚さ異常性に対する補正無しで計算された線量マップを表している。」
「【図2】
[図:0001436539000007.jpg]
【図3】
[図:0001436539000008.jpg]
」
「【0114】
また、FilmQA Proソフトウェアを用いて、線量応答を、線量依存部分と線量非依存部分との二つの部分に分割した。この特定の例では、測定チャネル(この例では、赤色カラーチャネル)と参照チャネル(この例では、青色チャネル)との二つのチャネルからの線量応答を用いて、計算を行った。線量非依存部分は、フィルムの放射線感受性成分における厚さの差を示す。そして、FilmQA Proソフトウェアを、画像の線量非依存部分に適用して、厚さの差に対する測定フィルムの線量応答を調整して、測定フィルムから、補正された二次元線量画像(又は線量マップ)を計算した。赤色カラーチャネルにおける応答から計算されて且つ厚さ異常性の補正された線量マップを横切る線量プロファイルが、図4の50に示されている。図4の50に示されるプロファイルを、図3の40に示されるプロファイルと比較することによって、活性層中の放射線感受性成分の厚さ異常性の影響に対する補正が、被曝領域にわたる線量の変動をほぼ除去していることが見て取れる。
…(後略)」
「【図4】
[図:0001436539000009.jpg]
」
イ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、例11(【0109】~【0114】)に係る放射線量測定方法を実行するための関連デバイスに関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
<引用発明>
「放射線量測定方法を実行するための関連デバイスであって、(【0001】)
放射線感受性物質の厚さの変動を考慮した方法で線量応答の決定を促進する放射線量測定方法であり、線量応答は、少なくとも二つの成分チャネルを用いて、フラットベッドカラースキャナの二つのカラーチャネルを用いて、計算され得、測定された応答を二つの部分に分けることができて、一方が線量依存部分であり、他方が線量非依存部分であり、線量非依存部分は、放射線感受性層の厚さに比例した値を有し、この部分を用いて、放射線感受性活性成分から導出された線量応答を補正して、活性成分の厚さの差によって生じる変動を考慮することができ、(【0017】)
“画像”との用語は、走査されたサンプルに対応するデジタルデータのことを称し、デジタルデータは、スキャナから直接得られた生の値であるか、又は生の値に基づいた計算値(光学密度や吸光度の値等)であり得、(【0018】)
少なくとも一つのカラー又は成分チャネルにおいて、吸光度の少なくとも一部は、放射線感受性活性成分に起因するものであり、その活性成分に起因する吸光度の一部は、放射線量に比例し、(【0022】)
放射線量測定方法フィルム内の放射線感受性物質の厚さの変動を補償するための装置10を有し、(【0040】)
装置10は、フラットベッドスキャナ14を備え、(【0041】)
放射線量測定方法フィルムを、フラットベッドスキャナ14の走査ベッドの上に配置し、フラットベッドスキャナ14の代わりに、デジタルカメラや、他の携帯型光学スキャナデバイスも使用可能であり、(【0055】)
放射線量測定方法フィルム(又はその一部)及び走査ベッドを互いに隣接して配置させた後、フラットベッドスキャナ14を作動させて、放射線量測定方法フィルムを走査して、複数の成分チャネルにおける複数の応答を有するデジタル画像(典型的には、走査されたフィルムを表すカラーデジタル画像データ信号)を生成し、(【0056】)
放射線量測定フィルムの較正は典型的に、フィルムの使用中に想定される放射線量レベルの範囲をカバーする放射線量レベルに放射線検出媒体を曝すことを含み、例えば、典型的な放射線量レベルは、略1cGyから略100000Gyの範囲、特に略1cGyから略10000cGyの範囲、特に略1cGyから略200cGyの範囲、特定の側面によると略1cGyから略100cGyの範囲内であり得、(【0058】)
放射線量測定フィルムがGAFCHROMIC(登録商標)ラジオクロミックフィルム等のラジオクロミックフィルムのようなものである放射線量測定方法を提供し、(【0059】)
電離放射線への被曝は、ラジオクロミックフィルムに急激な色の変化を生じさせて、典型的には暗くなり、暗くなる程度は、被曝に比例して、密度計やスキャナを用いて定量的に測定され得、(【0060】)
GAFCHROMIC(登録商標)フィルム媒体の活性成分は微粒子の放射線感受性モノマーであり、ポリマーマトリクス中に分散していて、ポリエステルフィルムベース上にコーティングされており、活性モノマー成分が電離放射線に曝されると、重合反応が開始して、染料ポリマーの生成が生じ、ポリマー自体が染料であるので、被曝はフィルム内の着色を生じさせ、活性成分は、ジアセチレンとして知られている分子クラスに属する長鎖脂肪酸を有し、放射線に曝されると、活性ジアセチレンは、固体状態重合反応を経て、ポリジアセチレンと称される染料ポリマーを生成し、(【0061】)
このようなポリアセチレンの具体的な例として、ペンタコサ-10,12-ジイン酸、13,15-オクタコサジイン、ドコサ-10,12-ジイン-1,22-ジオイック酸が挙げられ、(【0062】)
こうして形成されたフィルムは、放射線感受性であり、照射されると、重合プロセスがポリアセチレン化合物内で開始して、コーティングの色が直ちに変化し、色は、放射線被曝に比例して暗くなり、暗くなる程度は、密度計、分光光度計、フィルムスキャナ等の多数の機器で測定され得、(【0074】)
フィルムが放射線被曝に比例して暗くなるので、その暗さを測定して、その測定結果を、決定される較正に基づいて放射線被曝の量を決定するための手段として用いることができ、従って、フィルムを、放射線場を測定してマッピングするための放射線量計として用いることができ、(【0075】)
放射線量測定用のフィルム線量測定方法のプロセスにおいて、較正フィルムを用いることは一般的であり、これは、一枚又は複数のフィルムであり、一組の較正された放射線量がそれに対して既に照射されており、この単一のフィルム又は一組のフィルムのことを、較正フィルムと称し、フィルム線量測定方法のプロセスにおいては、放射線場内の二次元平面に対して伝えられる放射線量を求めるために、一枚又は複数のフィルムを放射線場に曝すことも一般的であり、この単一のフィルム又は一組のフィルムのことを、測定フィルムと称し、(【0110】)
補正を適用して、測定フィルムの厚さの差を補償し、(【0111】)
測定フィルムMは、8インチ×10インチのフィルムであり、較正フィルムCは、測定フィルムと同じロットナンバーのフィルムであって、その複数の画定された領域が、既知の線量の放射線を既に受けており、両方のフィルムを、透明性アダプタが備えられたEpson 10000XLフィルムスキャナ上で、75dpiのRGBトランスミッションモードで走査し、FilmQA Proソフトウェアを用いて、較正フィルムを走査することによって得られたRGB画像の被曝領域内の赤色チャネル及び青色チャネルにおけるスキャナ応答値を測定し、FilmQA Proソフトウェアを用いて、較正フィルムから測定された赤色及び青色の応答値・対・線量をプロットすることによって、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルに対する較正曲線を提供し、較正曲線の値の間の関係性を、有理線形フィッティング関数を用いることによって、数学的に記述し、(【0112】)
測定フィルムMは、ペンタコサジイン酸のリチウム塩から調整したものであり、(【0082】・【0098】・【0102】・【0112】)
測定フィルムのRGB画像を、FilmQA Proソフトウェアに対する入力として提供し、そして、そのソフトウェアを用いて、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルに対する較正関数を適用して、測定画像を、スキャナ値空間から線量値空間に変換し、(【0113】)
また、FilmQA Proソフトウェアを用いて、線量応答を、線量依存部分と線量非依存部分との二つの部分に分割し、測定チャネル(この例では、赤色カラーチャネル)と参照チャネル(この例では、青色チャネル)との二つのチャネルからの線量応答を用いて、計算を行い、線量非依存部分は、フィルムの放射線感受性成分における厚さの差を示し、そして、FilmQA Proソフトウェアを、画像の線量非依存部分に適用して、厚さの差に対する測定フィルムの線量応答を調整して、測定フィルムから、補正された二次元線量画像(又は線量マップ)を計算し、赤色カラーチャネルにおける応答から計算されて且つ厚さ異常性の補正された線量マップを横切る線量プロファイルを得、活性層中の放射線感受性成分の厚さ異常性の影響に対する補正が、被曝領域にわたる線量の変動をほぼ除去している、(【0114】)
放射線量測定方法を実行するための関連デバイス」
(2) 引用文献2に記載された事項及び引用文献2技術事項の認定
ア 引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に発行された引用文献2(米国特許出願公開第2008/0023647号明細書)には、次の事項が記載されている。括弧内の翻訳は、当合議体が作成したものである。
「[0002] This invention relates to a method and device for monitoring a dosage using a scanning device, such as a CCD camera. More particularly, this invention relates to a general purpose dosimeter reader for determination of a radiation dosage, based on comparison of an image of treated dosimeter with a series of images of a pre-treated dosimeter.」
(本発明は、CCDカメラのような走査装置を用いて線量を監視するための方法及び装置に関する。より具体的には、本発明は、処理された線量計の像を、前処理された線量計の像の系列と比較することに基づいて、放射線線量を決定するための汎用線量計読取器に関する。)
「[0104] It is preferred that the dosimeter undergo color change proportional to the dosage. The color change may be a gradual color development or intensification; a gradual color fading; a gradual color change or an abrupt color change.」
(線量計が線量に比例した色の変化を受けることが好ましい。色の変化は、漸次的な色の発現又は濃化、漸次的な色の退色、漸次的な色の変化、又は急激な色の変化であってもよい。)
イ 引用文献2技術事項の認定
前記アに摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、汎用線量計読取器に関して、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されている
<引用文献2技術事項>
「処理された線量計の像を、前処理された線量計の像の系列と比較することに基づいて、放射線線量を決定するための汎用線量計読取器に関して、([0002])
線量計が線量に比例した色の変化を受けることが好ましいこと。([0104]」
2 対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点
構成Xは、「放射線源から放出された放射線の線量を定量化するための線量測定装置」の発明であることを特定するものである。
(ア) 引用発明の「放射線量測定方法を実行するための関連デバイス」は、本願発明の「線量測定装置」に相当する。
(イ) 引用発明は、「フィルムが放射線被曝に比例して暗くなるので、その暗さを測定して、その測定結果を、決定される較正に基づいて放射線被曝の量を決定するための手段として用いることができ、従って、フィルムを、放射線場を測定してマッピングするための放射線量計として用いることができ[る]」ものであるから、本願発明でいう「放射線源から放出された放射線の線量を定量化するための」ものであるといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「放射線源から放出された放射線の線量を定量化するための線量測定装置」の発明である点。
イ 構成Aの観点
構成Aは、「(i)放射線量インジケータであって、ポリアセチレン、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはポリアセチレンの亜鉛塩から調製され放射線源から放出された放射線量を測定可能な放射線感受性フィルムを含み、測定される放射線が、0.01グレイ(Gy)から2,000グレイ(Gy)の放射線量範囲を有する、該放射線量インジケータ」を備えることである。
(ア) 引用発明の「測定フィルム」である「フィルム」は、「放射線感受性であり、照射されると、重合プロセスがポリアセチレン化合物内で開始して、コーティングの色が直ちに変化し、色は、放射線被曝に比例して暗くなり、暗くなる程度は、密度計、分光光度計、フィルムスキャナ等の多数の機器で測定され得[る]」ものであるから、本願発明の「放射線感受性フィルム」に相当するとともに、「放射線感受性フィルム」を含む「放射線量インジケータ」に相当する。
(イ) 引用発明の「測定フィルム」は、「ペンタコサジイン酸のリチウム塩から調整したものであ[る]」ところ、当該「ペンタコサジイン酸」である「ペンタコサ-10,12-ジイン酸」が「ポリアセチレンの具体的な例」であることを勘案すれば、引用発明の「放射線量測定フィルム」は、本願発明でいう「ポリアセチレン」「から調製され[た]」ものであるといえる。
(ウ) 引用発明の「測定フィルム」は、前記(ア)を踏まえれば、本願発明でいう「放射線源から放出された放射線量を測定可能な」ものである。
(エ) 引用発明は、「放射線量測定フィルムの較正は典型的に、フィルムの使用中に想定される放射線量レベルの範囲をカバーする放射線量レベルに放射線検出媒体を曝すことを含み、例えば、典型的な放射線量レベルは、略1cGyから略100000Gyの範囲、特に略1cGyから略10000cGyの範囲、特に略1cGyから略200cGyの範囲、特定の側面によると略1cGyから略100cGyの範囲内であり得[る]」ものであるから、本願発明の「放射線量インジケータ」と引用発明の「測定フィルムM」は、「測定される放射線が、0.01グレイ(Gy)から」所定上限値「の放射線量範囲を有する」で共通する。
一方で、当該所定上限値について、本願発明は、「2,000グレイ(Gy)」であるのに対して、引用発明は、「略100000Gy」である。
(オ) そうすると、構成Aの観点における本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。
a 構成Aの観点における一致点
「(i)放射線量インジケータであって、ポリアセチレン、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはポリアセチレンの亜鉛塩から調製され放射線源から放出された放射線量を測定可能な放射線感受性フィルムを含み、測定される放射線が、0.01グレイ(Gy)から」所定上限値「の放射線量範囲を有する、該放射線量インジケータ」を備える点。
b 構成Aの観点における相違点
測定される放射線の放射線範囲の所定上限値について、本願発明は、「2,000グレイ(Gy)」であるのに対して、引用発明は、「略100000Gy」である点。
ウ 構成Bの観点
構成Bは、「(ii)放射線に被曝後の前記放射線量インジケータの色の変化をキャプチャするための光学的手段」を備えることである。
(ア) 引用発明の「Epson 10000XLフィルムスキャナ」は、「測定フィルムM」を「75dpiのRGBトランスミッションモードで走査[する]」ものであるから、本願発明の「光学的手段」に相当する。
(イ) 引用発明の「測定フィルム」は、「放射線場内の二次元平面に対して伝えられる放射線量を求めるために、一枚又は複数のフィルムを放射線場に曝すことも一般的であり、この単一のフィルム又は一組のフィルム」であるから、本願発明でいう「放射線に被曝後」のものである。
(ウ) 引用発明の「Epson 10000XLフィルムスキャナ」は、「測定フィルムM」を「75dpiのRGBトランスミッションモードで走査[する]」ものであるから、前記イ(ア)も踏まえると、本願発明でいう「前記放射線量インジケータの色の変化をキャプチャするための」ものであるといえる。
(エ) 前記(ア)~(ウ)をまとめると、本願発明と引用発明は、構成Bの点である次の点において一致する。
「(ii)放射線に被曝後の前記放射線量インジケータの色の変化をキャプチャするための光学的手段」を備える点。
エ 構成Cの観点
構成Cは、「(iii)前記放射線源から放出された放射線量を定量化するために、前記放射線量インジケータの光学密度を、パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線と比較するソフトウェア手段」を備えることである。
(ア) 引用発明の「FilmQA Proソフトウェア」は、本願発明の「ソフトウェア手段」に相当する。
(イ)a 引用発明は、「較正フィルムから測定された赤色及び青色の応答値・対・線量をプロットすることによって、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルに対する較正曲線を提供し、較正曲線の値の間の関係性を、有理線形フィッティング関数を用いることによって、数学的に記述[する]」ものであるから、引用発明の「赤色カラーチャネル」に対する「較正曲線」は、本願発明の「所定の検量線」に相当する。
b 引用発明においては、「“画像”との用語は、走査されたサンプルに対応するデジタルデータのことを称し、デジタルデータは、スキャナから直接得られた生の値であるか、又は生の値に基づいた計算値(光学密度や吸光度の値等)であり得[る]」ことを踏まえると、前記aにおける「赤色」の「応答値」は、「光学密度」であることが理解できる。ここで、本願発明の「パーセント密度」における「パーセント」の意味は、本願の明細書の記載を参酌しても判然としないが、その字句から見て何らかの値を基準とした光学密度の割合と解するのが相当である。しかしながら、本願発明においては、前記基準となる何らかの値が特定されておらず、明細書の記載を参酌しても不明である。また、本願発明は、「前記放射線量インジケータの光学密度を、パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線と比較する」ことからみて、「パーセント光学密度」は、「前記放射線量インジケータの光学密度」と比較できる値であることが理解できる。これらのことを勘案すれば、引用発明の「赤色」の「応答値」が、本願発明「パーセント光学密度」と格別相違ものとは認められないから、両者は、「パーセント光学密度」である点で一致するものと認められる。
c 引用発明においては、「放射線量測定用のフィルム線量測定方法のプロセスにおいて、較正フィルムを用いることは一般的であり、これは、一枚又は複数のフィルムであり、一組の較正された放射線量がそれに対して既に照射されており、この単一のフィルム又は一組のフィルムのことを、較正フィルムと称[する]」ことを踏まえると、前記aにおける「線量」は、「既に照射」された「較正された放射線量」であることが理解でき、これはそれまでに照射された累積放射線量であるといえる。したがって、引用発明の当該「線量」は、本願発明の「累積照射線量」に相当する。
d 前記b~cを踏まえると、引用発明の「赤色」「の応答値・対・線量をプロットすることによって」提供される「較正曲線」は、本願発明でいう「パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された」ものであるといえる。
(ウ) 引用発明は、「測定フィルムのRGB画像を、FilmQA Proソフトウェアに対する入力として提供し、そして、そのソフトウェアを用いて、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルに対する較正関数を適用して、測定画像を、スキャナ値空間から線量値空間に変換[する]」ものであるところ、前記(イ)bで説示したのと同様に、当該「測定フィルムのRGB画像」は、「測定フィルム」の「光学密度」を意味することが理解できる。また、引用発明において、「測定フィルムのRGB画像を、」「入力として提供し、」「赤色カラーチャネル」「に対する較正関数を適用[する]」ことは、「測定画像」である「RGB画像」、すなわち、「光学密度」を、「較正曲線」と比較することを意味することは明らかである。したがって、引用発明の「FilmQA Proソフトウェア」は、本願発明でいう「前記放射線量インジケータの光学密度を、」「所定の検量線と比較する」するものであるといえる。
(エ) 引用発明において、前記(ウ)の「測定フィルムのRGB画像を、」「入力として提供し、」「赤色カラーチャネル」「に対する較正関数を適用[する]」ことは、「測定画像を、スキャナ値空間から線量値空間に変換[する]」ためのものであるから、本願発明でいう「前記放射線源から放出された放射線量を定量化するため」のものである。
(オ) 前記(ア)~(エ)をまとめると、本願発明と引用発明は、構成Cの点である次の点において一致する。
「(iii)前記放射線源から放出された放射線量を定量化するために、前記放射線量インジケータの光学密度を、パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線と比較するソフトウェア手段」を備える点。
オ 構成Dの観点
構成Dは、「前記所定の検量線が、放射線感受性フィルムの赤色光学密度の線形応答特性に基づいている」ことである。
(ア) 前記エ(イ)aで説示した、引用発明の「赤色カラーチャネル」に対する「較正曲線」は、「較正フィルムから測定された赤色」「の応答値・対・線量をプロットすることによって」提供されるものであるところ、当該「赤色」の「応答値」は、「光学密度」であることが理解できることは、前記エ(イ)bで説示したとおりである。そうすると、本願発明と引用発明は、「前記所定の検量線が、ラジオクロミックフィルムの赤色光学密度の」「応答特性に基づいている」点で共通する。
一方で、当該応答特性について、本願発明は、「線形応答特性」であるのに対して、引用デバイス発明は、「有理線形フィッティング関数」である点で相違する。
(イ) そうすると、構成Dの観点における本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。
a 構成Dの観点における一致点
「前記所定の検量線が、放射線感受性フィルムの赤色光学密度の」「応答特性に基づいている」点。
b 構成Dの観点における相違点
所定の検量線が基づく赤色光学密度の応答特性について、本願発明は、「線形応答特性」であるのに対して、引用発明は、「有理線形フィッティング関数」である点。
(2) 一致点及び相違点の認定
前記(1)の対比分析を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「放射線源から放出された放射線の線量を定量化するための線量測定装置であって、該装置は、
(i)放射線量インジケータであって、ポリアセチレン、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはポリアセチレンの亜鉛塩から調製され放射線源から放出された放射線量を測定可能な放射線感受性フィルムを含み、測定される放射線が、0.01グレイ(Gy)から所定上限値の放射線量範囲を有する、該放射線量インジケータと、
(ii)放射線に被曝後の前記放射線量インジケータの色の変化をキャプチャするための光学的手段と、および
(iii)前記放射線源から放出された放射線量を定量化するために、前記放射線量インジケータの光学密度を、パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線と比較するソフトウェア手段と、
を備え、
前記所定の検量線が、放射線感受性フィルムの赤色光学密度の応答特性に基づいている線量測定装置」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
測定される放射線の放射線範囲の所定上限値について、本願発明は、「2,000グレイ(Gy)」であるのに対して、引用発明は、「略100000Gy」である点。
(イ) 相違点2
所定の検量線が基づく赤色光学密度の応答特性について、本願発明は、「線形応答特性」であるのに対して、引用発明は、「有理線形フィッティング関数」である点。
3 判断
(1) 相違点についての検討
ア 相違点1(放射線範囲の所定上限値)について
相違点1に係る本願発明の放射線量範囲は、引用発明の「略1cGyから略100000Gyの範囲」の一部であり、引用発明においても予定されている放射線量範囲であるといえる。そして、引用発明において、測定フィルムMとして用途に応じて所定の感度を有するものを選択することは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
したがって、引用発明において、放射線量範囲の所定上限値を2000Gyとして、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2(線形応答特性)について
(ア) 引用発明は、「較正曲線の値の間の関係性を、有理線形フィッティング関数を用いることによって、数学的に記述[する]」ものであるから、線形関数としての線形応答特性を示唆するものであるといえる。したがって、引用発明において、線形フィッテイング関数となるような、すなわち、線形応答特性に基づくものとなるような較正フィルム及び測定フィルムを選択することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(イ) また、「処理された線量計の像を、前処理された線量計の像の系列と比較することに基づいて、放射線線量を決定するための汎用線量計読取器に関して、線量計が線量に比例した色の変化を受けることが好ましいこと」は、引用文献2技術事項に見られるように公知である。
そして、引用文献2技術事項に接した当業者であれば、引用発明においても、較正曲線の値の間の関係性が線量に比例した色変化を示すこと、すなわち、線形応答特性を示すことが望ましいことを理解できる。そして、引用発明における「有理線形関数」は、このような線形応答特性を包含する関数である。してみると、引用発明において、引用文献2技術事項を参酌して、有理線形関数が線量に比例した色変化を示す関数となるような、すなわち、線形応答特性に基づくものとなるような較正フィルム及び測定フィルムを選択することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 総合検討
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、本願発明の構成が奏するものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人は、引用発明は、赤色、緑色、青色における放射線量値の差が最小化されるように補正することによって、放射線感受性物質の層の厚さの変動を考慮して線量を定量化する発明であるから、複数の成分カラーチャネル(赤色、緑色、青色)における応答を有するデジタル画像から線量を求めている点において、本願発明のように「ラジオクロミックフィルムの赤色光学密度の線形応答特性に基づいて」線量を定量化する発明ではない旨を主張している。
しかしながら、まず、本願発明においては、「前記所定の検量線が、放射線感受性フィルムの赤色光学密度の線形応答特性に基づいている」こと、「前記放射線源から放出された放射線量を定量化するために、前記放射線量インジケータの光学密度を、パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線と比較する」ことが特定されるにとどまるのであって、赤色以外の応答特性に基づく他の検量線を用いないことは特定されていないから、引用発明のように青色チャネルを用いる態様を除外するものではない(なお、引用発明は例11に係る放射線量測定方法を実行するための関連デバイスを認定したものであり、例11において緑色チャネルは放射線量測定に用いられていない。)。
さらに、引用発明の青色チャネルは、線量非依存部分である参照チャネルであり、線量非依存部分は、厚さの差を示すのであって、線量を示すものではない。したがって、青色チャネルは、線量の定量に直接用いられるものではなく、厚さを補正するために用いられているものであるから、引用発明における青色チャネルの較正曲線は、本願発明でいう「前記放射線源から放出された放射線量を定量化するために、前記放射線量インジケータの光学密度」と比較される「所定の検量線」には該当しないから、実体的に見ても請求人の主張する点において本願発明と引用発明が相違するものとは認められない。
イ 請求人は、引用文献1には、本願発明の「パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線」について開示されていない旨の主張もしているが、引用発明の「赤色カラーチャネル」に対する「較正曲線」が、本願発明の「パーセント光学密度対累積放射線量を使用して作成された所定の検量線」に相当することは、前記2(1)エ(イ)で説示したとおりである。
ウ したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-004755