特許拒絶査定不服審判
2017-001593
新規な組成物及び方法
- 審判番号
- 2017-001593
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-503149外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月03日
- 審決日
- 2018年03月26日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ホガナス アクチボラグ (パブル)
- 【請求人代理人】特許業務法人浅村特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H01F) / P18 .575-Z (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-503149「新規な組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月11日国際公開、WO2012/136758、平成26年 7月 3日国内公表、特表2014-515880〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年4月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年4月7日 欧州特許庁(EP) 2011年4月12日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。
拒絶理由通知 :平成27年12月18日(起案日)
意見書 :平成28年 3月14日
手続補正 :平成28年 3月14日
拒絶査定 :平成28年 9月29日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成29年 2月 3日
手続補正 :平成29年 2月 3日
第2 平成29年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年2月3日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
平成29年2月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、請求項1については、本件補正前に、
「 【請求項1】
コア粒子を含む複合鉄基粉末組成物であって、該コア粒子が
(a)7重量%超から13重量%までのケイ素と、4重量%~7重量%のアルミニウムと、残部の鉄とから本質的になる鉄合金粒子、及び
(b)アトマイズ鉄粒子
の混合物であり、該コア粒子が第1のリン含有層でコーティングされており、
前記アトマイズ鉄粒子が
(i)フィロシリケートを含む粘土鉱物と組み合わされたケイ酸アルカリであって、組み合わされたケイ素-酸素四面体層及びその水酸化物八面体層が電気的に中性であるケイ酸アルカリ、又は
(ii)金属有機層
を含む第2の層を有する、上記複合鉄基粉末組成物。」
とあったところを、
本件補正後、
「 【請求項1】
コア粒子を含む複合鉄基粉末組成物であって、該コア粒子が
(a)7重量%超から13重量%までのケイ素と、4重量%~7重量%のアルミニウムと、残部の鉄とから本質的になる鉄合金粒子、及び
(b)アトマイズ純鉄粒子
の混合物であり、該粒子(a)及び粒子(b)の混合物であるコア粒子が第1のリン含有層でコーティングされており、
前記アトマイズ純鉄粒子及び前記鉄合金粒子が
(i)フィロシリケートを含む粘土鉱物と組み合わされたケイ酸アルカリであって、組み合わされたケイ素-酸素四面体層及びその水酸化物八面体層が電気的に中性であるケイ酸アルカリ、又は
(ii)金属有機層
を含む、前記第1のリン含有層に適用された第2の層を有する、
上記複合鉄基粉末組成物。」
とするものである。
上記本件補正の内容は、請求項1について、発明特定事項である「アトマイズ鉄粒子」について「アトマイズ純鉄粒子」と限定し、「第2の層」について「前記アトマイズ純鉄粒子及び前記鉄合金粒子が」有すること及び「前記第1のリン含有層に適用された」ことを限定したものである。
本件補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。
2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2011/032931号(2011年3月24日国際公開、以下「引用例」という。)(訳:特表2013-505563号公報)には、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「The present invention relates to a powder composition comprising an electrically insulated iron-based powder and to a process for producing the same. The invention further concerns a method for the manufacturing of soft magnetic composite components prepared from the composition, as well as the obtained component.」(1頁2~6行)
「(訳)【0001】
本発明は、電気絶縁性鉄基粉末(iron-based powder)を含む粉末組成物及びその製造方法に関する。本発明はさらに、この組成物から調製される軟磁性複合部品の製造方法並びに得られた部品に関する。」
(2)「To achieve at least one of the above-mentioned objects and/or further objects not mentioned, which will appear from the following description, the present invention concerns a ferromagnetic powder composition comprising soft magnetic iron-based core particles having an apparent density of 3.2-3.7 g/ml, wherein the surface of the core particles is provided with a phosphorous-based inorganic insulating layer.
Optionally, in another embodiment at least one metal-organic layer, is located outside the first phosphorous-based inorganic insulating layer, of a metal-organic compound having the following general formula:
R1[(R1)x(R2)y(MOn-1)]nR1
wherein M is a central atom selected from Si, Ti, Al, or Zr;
O is oxygen;
R1 is a hydrolysable group chosen from alkoxy groups having less than 4, preferably less than 3 carbon atoms.
R2 is an organic moiety and wherein at least one R2 contains at least one amino group;
wherein n is the number of repeatable units being an integer between 1 and 20;
wherein x is an integer between 0 and 1;
wherein y is an integer between 1 and 2;」(5頁7~29行)
「(訳)【0020】
少なくとも1つの上述の目的、及び/又は下記の記述から見えてくることになる言及されていないさらなる目的を達成するために、本発明は、強磁性粉末組成物であって、見掛け密度3.2~3.7g/mlを有する軟磁性鉄基コア粒子を含み、コア粒子の表面が、リン系無機絶縁層を備えている上記組成物に関する。
【0021】
所望により、他の実施形態において、少なくとも1層の金属-有機層であって、下記の一般式:
R1[(R1)x(R2)y(MOn-1)]nR1
(式中、Mは、Si、Ti、Al又はZrから選択される中心原子であり、
Oは酸素であり、
R1は、4個未満、好ましくは3個未満の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される加水分解可能な基であり、
R2は有機部分であり、この場合少なくとも1つのR2が少なくとも1つのアミノ基を含有し、
式中nは、反復可能単位の数であり、1と20の間の整数であり、
式中xは、0と1の間の整数であり、
式中yは1と2の間の整数である。)を有する金属-有機化合物の金属-有機層が、前記第1のリン系無機絶縁層の外側に位置している。」
(3)「Base powder
The iron-based soft magnetic core particles may be of a water atomized, a gas atomized or a sponge iron powder, although a water atomized powder is preferred.
The iron-based soft magnetic core particles may be selected from the group consisting of essentially pure iron, alloyed iron Fe-Si having up to 7% by weight, preferably up to 3% by weight of silicon, alloyed iron selected from the groups Fe-AI, Fe-Si-AI, Fe-Ni, Fe-Ni-Co, or combinations thereof. Essentially pure iron is preferred, i.e. iron with inevitable impurities.」
「【0032】
ベース粉末
鉄基軟磁性コア粒子は、水アトマイズ(atomize)、ガスアトマイズ又はスポンジ鉄粉末とすることができるが、水アトマイズ粉末が好ましい。
【0033】
鉄基軟磁性コア粒子は、本質的に、純鉄;7重量%まで、好ましくは3重量%までのケイ素を有する合金鉄Fe-Si;Fe-Al、Fe-Si-Al、Fe-Ni、Fe-Ni-Coの群から選択される合金鉄、又はこれらの組合せからなる群から選択することができる。本質的に純鉄が好ましい、すなわち避けられない不純物を有する鉄である。」
上記摘示事項から以下のことがいえる。
(a)引用例には、「強磁性粉末組成物」が記載されている(摘示事項(2))。
(b)強磁性粉末組成物は、軟磁性鉄基コア粒子を含み、コア粒子の表面が、リン系無機絶縁層と、前記リン系無機絶縁層の外側に位置している少なくとも1層の金属-有機層とを備えている(摘示事項(2))。
(c)鉄基軟磁性コア粒子は、水アトマイズ、ガスアトマイズ又はスポンジ鉄粉末とすることができる(摘示事項(3))。
(d)鉄基軟磁性コア粒子は、本質的に、純鉄;7重量%まで、好ましくは3重量%までのケイ素を有する合金鉄Fe-Si;Fe-Al、Fe-Si-Al、Fe-Ni、Fe-Ni-Coの群から選択される合金鉄、又はこれらの組合せからなる群から選択することができる(摘示事項(3))。
以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「強磁性粉末組成物であって、
軟磁性鉄基コア粒子を含み、コア粒子の表面が、リン系無機絶縁層と、前記リン系無機絶縁層の外側に位置している少なくとも1層の金属-有機層とを備えており、
軟磁性鉄基コア粒子は、アトマイズ粉末とすることができ、
軟磁性鉄基コア粒子は、本質的に、純鉄とFe-Si-Al合金鉄との組合せを選択することができる強磁性粉末組成物。」
3.対比
そこで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)コア粒子を含む複合鉄基粉末組成物
本願の明細書【0002】の「軟磁性複合体は、各粒子上に電気絶縁コーティングを有する、通常は鉄基の軟磁性粒子をベースとするものであり得る。」との記載より、本件補正発明の「複合鉄基粉末」は、具体的には、「各粒子上に電気絶縁コーティングを有する、鉄基の軟磁性粒子」を意味するものと解される。
引用発明の「強磁性粉末組成物」は、軟磁性鉄基コア粒子を含み、コア粒子の表面が絶縁層を備えている。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「コア粒子を含む複合鉄基粉末組成物」である点で一致する。
(2)コア粒子
引用発明の鉄基軟磁性コア粒子は、アトマイズ粉末とすることができ、本質的に、純鉄とFe-Si-Al合金鉄との組合せを選択することができる。そして、純鉄のアトマイズ粉末は、「アトマイズ純鉄粒子」といえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「該コア粒子が(a)ケイ素と、アルミニウムと、鉄とから本質的になる鉄合金粒子、及び(b)アトマイズ純鉄粒子の混合物であ」る点で一致する。
もっとも、「ケイ素と、アルミニウムと、鉄とから本質的になる鉄合金粒子」について、本件補正発明は、「7重量%超から13重量%までのケイ素と、4重量%~7重量%のアルミニウムと、残部の鉄とから本質的になる」のに対し、引用発明は、重量%による組成の特定がない点で相違する。
(3)第1の層
引用発明のコア粒子は、コア粒子の表面が、リン系無機絶縁層を備えている。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「該粒子(a)及び粒子(b)の混合物であるコア粒子が第1のリン含有層でコーティングされて」いる点で一致する。
(4)第2の層
引用発明のコア粒子は、コア粒子の表面が、前記リン系無機絶縁層の外側に位置している少なくとも1層の金属-有機層を備えている。
一方、本件補正発明において、「前記第1のリン含有層に適用された第2の層を有する」とは、ケイ酸アルカリでコーティングする前にリン含有層でコーティングする(【0027】、【0028】)こと、若しくは、金属-有機層をリンベース層の外側に配置する(【0040】、【0041】)ことを意味する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記アトマイズ純鉄粒子及び前記鉄合金粒子が(ii)金属有機層を含む、前記第1のリン含有層に適用された第2の層を有する」点で一致する。
なお、本件補正発明は、「第2の層」が「(i)フィロシリケートを含む粘土鉱物と組み合わされたケイ酸アルカリであって、組み合わされたケイ素-酸素四面体層及びその水酸化物八面体層が電気的に中性であるケイ酸アルカリ」、又は「(ii)金属有機層」を含むことを構成とするものであるから、引用発明が、「フィロシリケートを含む粘土鉱物と組み合わされたケイ酸アルカリであって、組み合わされたケイ素-酸素四面体層及びその水酸化物八面体層が電気的に中性であるケイ酸アルカリ」を含む「層」を有していなくても、相違点とはならない。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「コア粒子を含む複合鉄基粉末組成物であって、該コア粒子が
(a)ケイ素と、アルミニウムと、鉄とから本質的になる鉄合金粒子、及び
(b)アトマイズ純鉄粒子
の混合物であり、該粒子(a)及び粒子(b)の混合物であるコア粒子が第1のリン含有層でコーティングされており、
前記アトマイズ純鉄粒子及び前記鉄合金粒子が
(ii)金属有機層
を含む、前記第1のリン含有層に適用された第2の層を有する、
上記複合鉄基粉末組成物。」の点。
そして、次の点で相違する。
<相違点>
「ケイ素と、アルミニウムと、鉄とから本質的になる鉄合金粒子」について、本件補正発明は、「7重量%超から13重量%までのケイ素と、4重量%~7重量%のアルミニウムと、残部の鉄とから本質的になる」のに対し、引用発明は、重量%による組成の特定がない点。
4.判断
そこで、上記相違点について検討する。
軟磁性材料の技術分野において、「ケイ素と、アルミニウムと、鉄とから本質的になる鉄合金」として「センダスト」は著名であり(川西健次、近角聰信、櫻井良文編、「磁気工学ハンドブック」、株式会社朝倉書店、1998年11月10日、p.294)、当業者であれば最初に想起するといっても過言ではない。そして、その組成として9.6%Si、4.54%Al、残Feを中心に5~11%Si、3~8%Al、残Fe(同、p.296)が周知であるところ、該組成は、大部分が、本件補正発明の「7重量%超から13重量%までのケイ素と、4重量%~7重量%のアルミニウムと、残部の鉄とから本質的になる」と重複する。
したがって、引用発明において、「ケイ素と、アルミニウムと、鉄とから本質的になる鉄合金」として「センダスト」を採用し、その組成を「7重量%超から13重量%までのケイ素と、4重量%~7重量%のアルミニウムと、残部の鉄とから本質的になる」とすることは、当業者が容易に想到し得る。
また、明細書に記載された本件補正発明が奏する効果についてみても、本件補正発明の構成のものとして当業者であれば予測し得る程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
なお、請求人は、審判請求書において、
「しかし、引用文献1において、ケイ素の量が7重量%までとされているのは、Fe-Si合金であって、Fe-Si-Al合金ではないことがそのとおりであるとしても、Fe-Si合金を用いる場合でさえ、そのケイ素の量が7重量%までであるべきなのだから、この2成分にAlを加えた3成分の合金であるFe-Si-Al合金についても、そのケイ素の量が7重量%までであるべきことが教示されているものと自然に理解されます。従って、引用文献1を参照する当業者が、4重量%~7重量%のアルミニウムと残部の鉄に加えて、7重量%超から13重量%までのケイ素とから本質的になる鉄合金粒子を用いようと動機付けされることはないと考えられます。」
と主張している。
しかしながら、合金は、その組成により特性が大きく異なることがあり、Fe-Si合金における好ましい組成が、Fe-Si-Al合金における好ましい組成に影響するとは限らないから、「Fe-Si合金を用いる場合でさえ、そのケイ素の量が7重量%までであるべきなのだから、この2成分にAlを加えた3成分の合金であるFe-Si-Al合金についても、そのケイ素の量が7重量%までであるべきことが教示されているものと自然に理解され」るとはいえない。
したがって、請求人の上記主張には根拠がない。
よって、本件補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
平成29年2月3日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成28年3月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。
3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]3.及び4.」で検討した本件補正発明から、発明特定事項である「アトマイズ鉄粒子」について「アトマイズ純鉄粒子」との限定を削除し、「第2の層」について「前記アトマイズ純鉄粒子及び前記鉄合金粒子が」有すること及び「前記第1のリン含有層に適用された」ことの限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]3.及び4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-001593