2017-001451
ドア用シール及び車両ドア
- 審判番号
- 2017-001451
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-524047外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月01日
- 審決日
- 2017年12月27日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .112-Z (B61D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 10項目
1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)6月24日(優先権主張 2013年6月28日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年6月29日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月31日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して、平成29年2月1日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
2 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明は、平成28年8月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】ドアの戸先に設けられる第1シール部、及び、前記ドアの閉鎖時に前記第1シール部と接触する第2シール部、を有する第1シール機構と、前記ドアの戸先における前記第1シール部よりも前記ドアの厚み方向にずれて設けられる第3シール部、及び、前記ドアの閉鎖時に前記第3シール部と接触可能に設けられる第4シール部、を有する第2シール機構と、を備え、前記第1シール機構及び前記第2シール機構の一方の変形は、前記第1シール機構及び前記第2シール機構の他方の変形に影響を及ぼさず、前記ドアの閉鎖時において前記第1シール部と前記第2シール部とにより形成される面である第1接触面と、前記第3シール部と前記第4シール部とにより形成される面である第2接触面とは、方向が異なり、前記第1接触面及び前記第2接触面の一方は、当該接触面が広がる方向に対して垂直な方向が前記ドアの移動方向に沿う方向となるように形成され、前記第1接触面及び前記第2接触面の他方は、当該接触面が広がる方向に対して垂直な方向が前記ドアの移動方向に交差する方向となるように形成されていることを特徴とする、ドア用シール。」
3 刊行物に記載された事項及び発明
(1)刊行物に記載された事項
本願の優先日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶理由で引用された特開2011-126368号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(1a)
「【0005】図7は、引戸30,30の戸当部35,35に備えられた従来の戸先ゴム105,115である。・・・【0006】戸先ゴム105,115を備える引戸30,30が空気式ドアエンジンによって開閉される場合、空気圧によって戸先ゴムの対向面が常時加圧されるため、戸先ゴム105,115の対向面に隙間が生じにくく、雨水等が鉄道車両内部に侵入する可能性は小さく問題ないと考えられる。・・・」
(1b)
「【0010】そこで、乗客が出入する鉄道車両の引戸の戸当部に備えられる戸先ゴムにおいて、鉄道車両内部への雨水侵入を軽減することと、戸閉めの際に引戸の対向面に乗客の身体が挟まれた場合の安全性を両立する点において改善すべき点があった。本発明の目的は、乗客が出入する鉄道車両の引戸の戸当部に備えられる戸先ゴムにおいて、鉄道車両内部への雨水侵入の軽減と、戸閉めの際に引戸の対向面に乗客の身体が挟まれた場合の安全性を両立できる戸先ゴムを備えた鉄道車両を提供することである。」
(1c)
「【0014】【図1】図1は、本発明に関わる戸先ゴムを有する引戸装置を備える軌条車両を、その屋根部を省略して示した平面図である。【図2】図2は、図1のB部を視Aから見た側面図である。【図3】図3は、図2に示す引戸装置を開状態で示すC-C断面図である。【図4】図4は、図2に示す引戸装置を閉状態で示すC-C断面図である。【図5】図5は、図2に示す引戸装置の引戸を閉じた時にその対向面に隙間が生じた時の様子を示す模式断面図である。【図6】図6は、図2に示す引戸装置において閉時に戸先ゴムとの間に指が挟まった様子(図2のC-C断面)を示す模式図である。【図7】図7は、従来の引戸装置(図2のC-C断面相当)を示す模式図である。」
(1d)
「【0019】図3は、図2のC-C断面であって、引戸30a,30bが開かれた状態を示す図である。引戸30a,30bの戸当部35,35には、その高さ方向に沿って戸先ゴム100,110が配設されており、各戸当部35の垂直面には、戸先ゴム100,110の根元部分が嵌入される溝が施工されている。」
(1e)
「【0020】一方の戸先ゴム100の長手方向垂直断面形状は、戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向(矢印330)の中央部において、基部100bから戸閉方向(矢印310aで示す方向)に向けて突き出し量H3で突き出す突起部100aが具備されるとともに、突起部100aの内部には空間100cが形成されている。」
(1f)
「【0021】他方の戸先ゴム110の長手方向垂直断面形状は、戸先ゴム110の基部110bの厚さ方向(矢印330で示す方向)の両端部に、戸閉方向(矢印310bで示す方向)に向けて突き出し量H2で突き出す壁部110c,110cを備えるとともに、基部110bの厚さ方向の中央部において、基部110bから突き出し量H1で突き出す突起部110aを備えている。突起部110a及び壁部110cは共に中実である。突起部100aの突き出し量H3は、壁部110cの突き出し量H2から突起部110aの突き出し量H1を減じた量より大きい。」
(1g)
「【0022】図4は、図2のC-C断面であって、引戸30a,30bが閉じられた状態を示す図である。引戸30a,30bが閉じられた際、戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の両端部に、戸先ゴム110の壁部110c,110cの先端部が突き当てられる。戸先ゴム100の突起部100aの突き出し高さH3は、壁部110cの突き出し量H2から突起部110aの突き出し量H1を減じた量より大きく設定されている(図3参照)ので、戸先ゴム100の突起部100aは、戸先ゴム110の突起部110aに突き当たって更に引戸30aの側に押し戻される形態に変形するとともに、引戸30aの厚さ方向(矢印330で示す方向)にも変形して、戸先ゴム110との間に接触部200,200、210が形成される。空気式ドアエンジン(戸閉機60)が採用される場合であって、引戸30a,30bを閉じた状態が維持される場合は、戸先ゴム100、110は図4に示される状態を維持する。」
(2)刊行物に記載された発明
ア
刊行物1には、図について、「【図1】図1は、本発明に関わる戸先ゴムを有する引戸装置を備える軌条車両を、その屋根部を省略して示した平面図である。【図2】図2は、図1のB部を視Aから見た側面図である。【図3】図3は、図2に示す引戸装置を開状態で示すC-C断面図である。【図4】図4は、図2に示す引戸装置を閉状態で示すC-C断面図である。」(摘記(1c))と記載されているから、図2は、車両の車外から引戸30a,30bを見た図であり、図3及び図4は、車両の車外から見た図2のC-C断面を示す図であるといえる。
したがって、図3及び図4は、それぞれ、図面上で、上方側が車内寄りを示し、下方側が車外寄りを示すものと定義することができる。
イ
図3及び図4の、図面上における左右方向及び上下方向、並びに、上記アを踏まえると、以下のように、各構成を定義することができる。
(ア)
「引戸30a」及び「引戸30b」を、それぞれ、「左側引戸30a」及び「右側引戸30b」と定義する。
(イ)
「戸先ゴム100」及び「戸先ゴム110」を、それぞれ、「左側戸先ゴム100」及び「右側戸先ゴム110」と定義する。
(ウ)
「基部110bの厚さ方向の両端部」を、「基部110bの厚さ方向の車外寄り端部及び車内寄り端部」と定義する。
(エ)
図3~4における、下側の「壁部110c」及び上側の「壁部110c」を、それぞれ、「車外寄り壁部110c」及び「車内寄り壁部110c」と定義する。
(オ)
「突起部100a」及び「突起部110a」を、それぞれ、「左側突起部100a」及び「右側突起部110a」と定義する。
(カ)
図3~4における、下側の「接触部200」及び上側の「接触部200」を、それぞれ、「車外寄りの接触部200」及び「車内寄りの接触部200」と定義する。
ウ
乗客が出入する鉄道車両の出入口部分において、戸先ゴムは高さ方向の全域に沿って一定の断面形状で設けられていることが技術常識であること、「引戸30a,30bの戸当部35,35には、その高さ方向に沿って戸先ゴム100,110が配設され」(摘記(1d)及び図2)ていることから、図2の引戸30a,30bの高さ方向のどの位置の断面であっても図4の断面と同様になっていると考えることが自然であること、及び、図4、を参照すると、「戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の両端部に、戸先ゴム110の壁部110c,110cが突き当てられ」(摘記(1g))ていることは、戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の両端部に、それぞれ、戸先ゴム110の壁部110c,110cの先端部が突き当てられて、それぞれ、高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面を形成しているものと認められる。
エ
上記ア~ウを踏まえると、図2及び図4から、「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部の平面とが接触する、車外寄りの接触部200」、「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部の平面とが接触する、車内寄りの接触部200」及び「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの先端部と右側戸先ゴム110の右側突起部110a先端部とが接触する、先端部同士の接触部210」が看取できる。
オ
上記ア~エ、摘記(1a)~(1g)及び図1~4から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「左側引戸30aの戸当部35にその高さ方向に沿って配設される左側戸先ゴム100と、右側引戸30bの戸当部35にその高さ方向に沿って配設される右側戸先ゴム110とを備え、左側戸先ゴム100の長手方向垂直断面形状は、左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の中央部において、基部100bから戸閉方向に向けて突き出し量H3で突き出す左側突起部100aが具備されるとともに、左側突起部100aの内部には空間100cが形成され、右側戸先ゴム110の長手方向垂直断面形状は、右側戸先ゴム110の基部110bの厚さ方向の車外寄り端部及び車内寄り端部に、それぞれ、戸閉方向に向けて突き出し量H2で突き出す中実である車外寄り壁部110c及び車内寄り壁部110cを備えるとともに、基部110bの厚さ方向の中央部において、基部110bから突き出し量H1で突き出す右側突起部110aを備え、空気式ドアエンジンが採用され、左側引戸30a,右側引戸30bが閉じられ、左側引戸30a,右側引戸30bを閉じた状態が維持される場合には、続きを表示(全13行)左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部及び車内寄り端部に、それぞれ、右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部及び車内寄り壁部110cの先端部が突き当てられて、それぞれ、高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面を形成し、かつ、左側戸先ゴム100の左側突起部100aの突き出し高さH3は、車外寄り壁部110c,車内寄り壁部110cの突き出し量H2から右側突起部110aの突き出し量H1を減じた量より大きく設定されているので、左側戸先ゴム100の左側突起部100aは、右側戸先ゴム110の右側突起部110aに突き当たって左側引戸30aの側に押し戻される形態に変形するとともに、左側引戸30aの厚さ方向にも変形して、右側戸先ゴム110との間に、左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部の平面とが接触する、車外寄りの接触部200と、左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部の平面とが接触する、車内寄りの接触部200と、左側戸先ゴム100の左側突起部100aの先端部と右側戸先ゴム110の右側突起部110a先端部とが接触する、先端部同士の接触部210とが形成される状態を維持する、乗客が出入する鉄道車両の引戸の戸当部に備えられる戸先ゴム。」
4 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア
(ア)
引用発明の「右側引戸30b」及びその「戸当部35」は、それぞれ、本願発明の「ドア」及び「戸先」に相当し、引用発明の「右側引戸30bの戸当部35」は、本願発明の「ドアの戸先」に相当する。
(イ)
引用発明において、「右側戸先ゴム110」は、「右側引戸30bの戸当部35にその高さ方向に沿って配設され」、「車外寄り壁部110c」は、「右側戸先ゴム110の基部110bの厚さ方向の車外寄り端部」に「備え」られ、「戸閉方向に向けて突き出し量H2で突き出す中実であ」るから、引用発明の「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」は、「右側引戸30bの戸当部35」に設けられているといえる。
(ウ)
引用発明では、「空気式ドアエンジンが採用され、左側引戸30a,右側引戸30bが閉じられ、左側引戸30a,右側引戸30bを閉じた状態が維持される場合には」、「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部」に、「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」「が突き当てられて」、「高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面を形成」するから、引用発明の「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部」及び「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」は、従来と同様に、ドアの閉鎖時に対向面が常時加圧され(摘記(1a)を参照)、ゴムが弾性体であるという技術常識に照らすと、弾性体であるゴム同士が加圧されて接触かつ密着され、密着した接触面が形成されることが明らかである。
これに加えて、摘記(1a)及び(1b)をも踏まえると、引用発明の「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部」及び「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」は、ドア閉鎖時に「突き当てられ」た状態を維持することで、雨水等の侵入を防止する程度の機能は備えているといえるから、いずれもシール部であるといえる。
(エ)
上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明の「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」は、本願発明の「第1シール部」に相当し、引用発明の「左側戸先ゴム100の基部110bの厚さ方向の車外寄り端部」は、「ドアの閉鎖時に第1シール部と接触する第2シール部」に相当する。
(オ)
上記(ア)~(エ)を踏まえると、引用発明の「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部」に、「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」「が突き当てられて」、「高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面を形成」する機構は、引用発明の「ドアの戸先に設けられる第1シール部、及び、前記ドアの閉鎖時に前記第1シール部と接触する第2シール部、を有する第1シール機構」に相当する。
イ
(ア)
引用発明において、「左側突起部100a」は、「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の中央部において、基部100bから戸閉方向に向けて突き出し量H3で突き出す」ものであるから、「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部」及び「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部」は、いずれも、基部100bの厚さ方向の中央部に設けられている、すなわち、左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部よりも厚さ方向にずれて設けられているといえる。
(イ)
引用発明は、「左側引戸30a,右側引戸30bが閉じられた際、左側引戸30a,右側引戸30bを閉じた状態が維持され」、「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部の平面とが接触する、車外寄りの接触部200と、左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部の平面とが接触する、車内寄りの接触部200と」「が形成される状態を維持する」から、引用発明の「右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部」及び「右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部」は、上記(ア)を踏まえると、「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部」及び「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部」と同様に、いずれも、基部110bの厚さ方向の中央部に設けられている、すなわち、右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部よりも厚さ方向にずれて設けられているといえる。
(ウ)
引用発明の「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部の平面とが接触する、車外寄りの接触部200」及び「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部の平面とが接触する、車内寄りの接触部200」については、上記ア(ウ)と同様に、密着した接触面が形成されることが明らかであり、雨水等の侵入を防止する程度の機能は備えているといえるから、上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部」及び「右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部」は、本願発明の「ドアの戸先における第1シール部よりも前記ドアの厚み方向にずれて設けられる第3シール部」に相当し、引用発明の「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部」及び「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部」は、本願発明の「ドアの閉鎖時に第3シール部と接触可能に設けられる第4シール部」に相当する。
(エ)
上記(ウ)を踏まえると、引用発明の「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部の平面とが接触する、車外寄りの接触部200と、左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部の平面とが接触する、車内寄りの接触部200」「とが形成される」機構は、本願発明の「前記ドアの戸先における前記第1シール部よりも前記ドアの厚み方向にずれて設けられる第3シール部、及び、前記ドアの閉鎖時に前記第3シール部と接触可能に設けられる第4シール部、を有する第2シール機構」に相当する。
ウ
(ア)
引用発明において、「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部」に、「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」「が突き当てられて」、「高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面を形成」する機構と、「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部の平面とが接触する、車外寄りの接触部200と、左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部の平面とが接触する、車内寄りの接触部200」「とが形成される」機構とは、これらの構造、特に、「左側突起部100aの内部には空間100cが形成され」、「車外寄り壁部110c及び車内寄り壁部110c」は「中実である」構造に照らすと、互いに他方の変形に影響を及ぼさない構成となっているといえるから、かかる構成は、上記ア(オ)及び上記イ(エ)を踏まえると、本願発明の「前記第1シール機構及び前記第2シール機構の一方の変形は、前記第1シール機構及び前記第2シール機構の他方の変形に影響を及ぼさ」ない構成に相当する。
エ
(ア)
引用発明の「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部」に、「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」「が突き当てられて」、「高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面を形成」する機構の「高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面」は、左側引戸30a,右側引戸30bが閉じられるために移動する方向とほぼ直交しているといえるから、上記ア(エ)を踏まえると、本願発明の「接触面が広がる方向に対して垂直な方向が前記ドアの移動方向に沿う方向となるように形成され」、「ドアの閉鎖時において第1シール部と第2シール部とにより形成される面である第1接触面」に相当する。
(イ)
引用発明の「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部の平面とが接触する、車外寄りの接触部200」及び「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部の平面とが接触する、車内寄りの接触部200」は、上記ウ(ア)で述べた構造を参照すると、いずれも、側部の面が変形して側部の平面に接触して、平面同士が接触した接触平面の構成となっているといえるところ、これらの平面に垂直な方向が、右側引戸30bが閉じられるために移動する方向と交差することは明らかである。
したがって、上記「車外寄りの接触部200」ないし上記「車内寄りの接触部200」は、本願発明の「接触面が広がる方向に対して垂直な方向が前記ドアの移動方向に交差する方向となるように形成され」、「ドアの閉鎖時において」「前記第3シール部と前記第4シール部とにより形成される面である第2接触面」に相当する。
(ウ)
上記(ア)で述べた、「高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面」と、上記(イ)で述べた「接触部200」及び「接触部200」とは、方向が異なっているといえる。
(エ)
上記(ア)~(ウ)、上記ア(オ)及び上記イ(エ)を踏まえると、引用発明の「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部」に、「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」「が突き当てられて」、「高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面を形成」する機構、及び、「左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車外寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車外寄り壁部110cの車内寄りに位置する側部の平面とが接触する、車外寄りの接触部200と、左側戸先ゴム100の左側突起部100aの厚さ方向の車内寄りに位置する側部の面と、右側戸先ゴム110の厚さ方向の車内寄り壁部110cの車外寄りに位置する側部の平面とが接触する、車内寄りの接触部200」「とが形成される」機構は、本願発明の「前記ドアの閉鎖時において前記第1シール部と前記第2シール部とにより形成される面である第1接触面と、前記第3シール部と前記第4シール部とにより形成される面である第2接触面とは、方向が異なり、前記第1接触面及び前記第2接触面の一方は、当該接触面が広がる方向に対して垂直な方向が前記ドアの移動方向に沿う方向となるように形成され、前記第1接触面及び前記第2接触面の他方は、当該接触面が広がる方向に対して垂直な方向が前記ドアの移動方向に交差する方向となるように形成されている」構成に相当する。
オ
上記ア~エを踏まえると、引用発明の「乗客が出入する鉄道車両の引戸の戸当部に備えられる戸先ゴム」は、本願発明の「ドア用シール」に相当する。
(2)判断
上記(1)ア~オより、本願発明と引用発明とは、
「ドアの戸先に設けられる第1シール部、及び、前記ドアの閉鎖時に前記第1シール部と接触する第2シール部、を有する第1シール機構と、前記ドアの戸先における前記第1シール部よりも前記ドアの厚み方向にずれて設けられる第3シール部、及び、前記ドアの閉鎖時に前記第3シール部と接触可能に設けられる第4シール部、を有する第2シール機構と、を備え、前記第1シール機構及び前記第2シール機構の一方の変形は、前記第1シール機構及び前記第2シール機構の他方の変形に影響を及ぼさず、前記ドアの閉鎖時において前記第1シール部と前記第2シール部とにより形成される面である第1接触面と、前記第3シール部と前記第4シール部とにより形成される面である第2接触面とは、方向が異なり、前記第1接触面及び前記第2接触面の一方は、当該接触面が広がる方向に対して垂直な方向が前記ドアの移動方向に沿う方向となるように形成され、前記第1接触面及び前記第2接触面の他方は、当該接触面が広がる方向に対して垂直な方向が前記ドアの移動方向に交差する方向となるように形成されている、ドア用シール。」
で一致し、相違点は存在しないから、本願発明は引用発明である。
(3)審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張
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審判請求書の【請求の理由】(3)において、審判請求人は、「引用文献1の段落0023や図5では、引戸を閉じた時に、一方の戸先ゴム100の基部100bと他方の戸先ゴム110の壁部110cとの間に隙間が生じ得ることを明記しております。このような引用文献1の開示に触れた当業者は、引用文献1における一方の戸先ゴム100の基部100bと他方の戸先ゴム110の壁部110cとがシール機構を構成するとは、理解しません。」(以下、「主張1」という。)及び「引用文献1の図4は、高さ方向における一断面に過ぎず、また、更に高さ方向に沿った全域で接触するための構成上の工夫は引用文献1において何ら提案されておりません。さらに、いずれかの部分において接触していたとしても、引用文献1において壁部110cの先端および基部110bは単なる平坦面として図示されており、単なる接触だけでは当該接触部分においてシール機能は働きません。シール機能が発揮されるには、シール機能が働くための何らかの手段、すなわち構成上の工夫を施す必要がありますが、シール機能が働くような手段について引用文献1には何らの記載も示唆も存在しません。」 (以下、「主張2」という。)と主張するので、以下、検討する。
イ 主張1について
引用発明として認定しているものは、空気式ドアエンジンが採用された図1~4に示される実施例であるから(上記3(2)オ)、この実施例とは異なる図5に示される実施例を説明している段落【0023】に基づく主張1は当を得ているとはいえない。
したがって、主張1は採用できない。
ウ 主張2について
引用発明は、「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部及び車内寄り端部に、それぞれ、右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部及び車内寄り壁部110cの先端部が突き当てられて、それぞれ、高さ方向及び厚さ方向に延びる接触面を形成」する構成を備えている。
ここで、引用発明は、「空気式ドアエンジンが採用され、左側引戸30a,右側引戸30bが閉じられ、左側引戸30a,右側引戸30bを閉じた状態が維持される場合には」、従来と同様に「ドアの閉鎖時に対向面が常時加圧され」(摘記(1a))るといえることから、上記構成において、「左側戸先ゴム100の基部100bの厚さ方向の車外寄り端部」及び「右側戸先ゴム110の車外寄り壁部110cの先端部」は、「突き当てられ」た状態、すなわち、弾性体であるゴム同士が、高さ方向に沿った全域で、加圧力で加圧されて接触かつ密着された接触面が形成されている状態を維持していることが明らかであり、隙間のないシール部としての機能を備えたものといえる。
したがって、上記主張2も採用できない。
5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明(引用発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-001451