特許拒絶査定不服審判
2017-000949
複数のセンサ領域を持つ光学バイオセンサ
- 審判番号
- 2017-000949
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-527780外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月24日
- 審決日
- 2017年11月14日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】笛田 秀仙
- 【請求人代理人】矢ヶ部 喜行
- 分類
- P18 .121-WZ (G01N) / P18 .537-WZ (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-527780「複数のセンサ領域を持つ光学バイオセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日国際公開、WO2013/035009、平成26年10月23日国内公表、特表2014-528060〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)8月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年9月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月19日付けで拒絶理由が通知され、同年7月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月11日付けで拒絶査定されたのに対し、平成29年1月24日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、それと同時に手続補正書が提出され、そして、当審において同年7月25日付けで拒絶理由を通知し、これに対し、同年10月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~11に係る発明は、平成29年10月17日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されたとおりのものであり、そのうち独立項である請求項1と2に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
a)漏れ全反射又は暗視野検出を使用する複数のセンサ領域と、
b)各々が前記センサ領域の一つの一次像を生成するように配置される複数の対物レンズと、
c)検出器ピクセルのアレイを持つ光検出器と、
d)前記検出器面上に前記複数の対物レンズの各一次像を結像する、単一の共通中間光学系であって、少なくとも一つの一次像が前記検出器面全体上に結像され、前記複数の対物レンズの各一次像が当該中間光学系を経て前記検出器面上に結像される、中間光学系と、
e)前記センサ領域へ向けられる入力光線を生成するための光源と
を有し、
前記対物レンズの少なくとも一つが0.1よりも大きい開口数を持つ複数のレンズを有する、
光学センサデバイス。」(以下「本願発明」という。)
「【請求項2】
a)漏れ全反射又は暗視野検出を使用する複数のセンサ領域と、
b)各々が前記センサ領域の一つの一次像を生成するように配置される複数の対物レンズと、
c)前記一次像がマップされる検出器面として検出器ピクセルのアレイを持つ光検出器であって、少なくとも一つの一次像が前記検出器面全体上に結像される、光検出器と、
d)前記複数の対物レンズの各一次像を前記検出器面上に結像する、単一の共通中間光学系と
を有する光学センサデバイス。」(下線は当審において付与した。)
第3 当審の拒絶理由
当審において平成29年7月25日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
理由1 特許法第36条第6項第2号について
(1)平成29年10月17日付け手続補正書による補正前(以下「補正前」という。)の請求項1の「一次像をマップ」、「一次像が前記検出器面全体上にマップ」、「一次像が当該中間光学系を経て前記検出器面上にマップ」の記載について、「センサ領域」にある物体をいわゆる画像として「検出器ピクセルのアレイを持つ」「光検出器面」にマップすると解される一方で、本願明細書には、「センサ領域」にある成分などを分析する(分析結果をマップする)ためのある特定の波長の光量等を検出しているものとも解される記載もあり、「検出器ピクセルのアレイを持つ」「光検出器面」では、「センサ領域」からのどのような光を検出しているのか不明確である。独立項である補正前の請求項2についても同じ記載があり、同様に不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえない。
(2)略
理由2 特許法第36条第4項第1号について
上記1の(1)の点が明確でないことに関連して、発明の詳細な説明における「解像度」との用語は、いわゆる物体の画像における解像の度合いを表しているのか、成分等を分析した結果をマップした際の分析精度の度合いを表しているのか不明確であることから、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているとはいえない。
(理由3)特許法第29条第2項について
補正前の請求項1及び2に記載の「少なくとも一つの一次像が前記検出器面全体上にマップされ」ることについて、限られた検出器のピクセルを有効活用して解像度を上げることは、光学分野においては周知技術(例えば、周知文献)であることから、引用文献1に記載の光学センサデバイスにおいて、解像度を上げるために上記周知技術に鑑みて、検出器アレイのピクセルを有効活用すべく、請求項1及び2に記載のように「少なくとも一つの一次像が前記検出器面全体上にマップされ」るようにすることは当業者が容易になし得たことであると説示し、補正前の請求項1~11に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2002-514739号公報
周知文献:特開2003-60860号公報
第4 特許法第29条第2項(理由3)について
1 引用文献1の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は引用発明の認定に関連する箇所として当審が付与したものである。
(1ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】レンズアレイ(21-23)とフィールドレンズ(5)とを備え、対象物アレイ(11-13)を検出器アレイ(61-63)上に結像させるようにした光学システム。
・・・
【請求項4】反射照明装置(9,91,92)が組み込まれていることを特徴とする請求項1から3までの少なくとも一つに記載の光学システム。
・・・
【請求項7】検出器アレイ(6)がCCDアレイまたはフォトダイオードアレイであることを特徴とする請求項1から6までの少なくとも一つに記載の光学システム。
【請求項8】吸収型、蛍光相関分光法を含む蛍光型、または発光型のマイクロタイタープレートのための読み取り器として形成されていることを特徴とする請求項1から7までの少なくとも一つに記載の装置。」
(1イ)「【0005】
本発明の課題は、この種の読み取り器に大規模並列測定を備えさせ、したがって動的測定時においてもサンプル・スループットをかなりの程度向上させうるような光学装置を提供することである。この場合、高効率の光路と、コンパクトで、できるだけ簡潔な構成とが達成されるべきである。もちろん、高測定感度が保証されるべきである。」
(1ウ)「【0007】
この場合、従属項に記載した構成を付加するのが有利である。これによれば、望遠鏡(横断面全体で1個のレンズ)と、検出器アレイの前方に位置するマイクロレンズアレイとが設けられ、反射照明装置が組み込まれる。反射照明装置は、光学要素を兼用することにより低コストで特に優れた効率を生じさせ、検出光路によっても検出されるサンプル容積部を正確に照明することにより、ノイズを特に低減させる。」
(1エ)「【0009】
対象物アレイ11,12,13は,凹部(波形部)とそのなかに保管されているサンプル110,120,130とを備えたマイクロタイタープレート1により形成される。同じグリッドピッチを有しているミニレンズアレイ21,22,23は通常の小型レンズで組み立てられ、焦点距離はf=7.5,開口数はほぼ0.6で,サンプル110,120,130の中央領域11,12,13から光を効率的に集める。380mmの間隔で位置する中間像面内には,個々のアレイエレメント間のクロストークを阻止するアパーチャプレート3が配置されている。
【0010】
レンズ41と42からなる次の望遠鏡は,CCDアレイのサイズに適合するように130mmの光束径を15mmに縮小する。その間に配置されているフィールドレンズ5は,中間像を結像させ,よって対象アレイ11,12,13をCCDアレイ6のエレメントに結像させる役を果たしている。」
(1オ)「【0032】
-レンズアレイ2iを、凹部の底部に設けられている細胞に合焦させることにより、細胞をベースにしたアレイで蛍光測定を行なうことができる。個々のスポットを、ここでは可能な限り大きなスポットを、ほぼ細胞の大きさの解像度またはそれ以上の解像度で局部的に解明して読み取ることにより、被検査物体の生物学的機能のきわめて詳細な、局部的解明分析が可能になる。」
(1カ)【図2】として以下の図面が添付されている。
(2)引用発明について
ア 「レンズアレイ(21-23)」と「ミニレンズアレイ21,22,23」は同じものとして記載されているから、以下の引用発明において「レンズアレイ(21-23)」と記載する。
イ 「対象物アレイ(11-13)」、「対象物アレイ11,12,13」と「対象アレイ11,12,13」は同じものとして記載されているから、以下の引用発明において「対象物アレイ(11-13)」と記載する。
ウ 「サンプル」と「サンプル110,120,130」は同じものとして記載されているから、以下の引用発明において「サンプル(110-130)」と記載する。
エ 「検出器アレイ(61-63)」、「検出器アレイ(6)」と「CCDアレイ6」の図面番号(61-63)と(6)は、(61-63)と記載する。
エ 「サンプル110,120,130の中央領域11,12,13」は、対象物アレイ11,12,13と同じ図面番号が付されていることから、対象物アレイ11,12,13に対応した各サンプル110,120,130の中央領域」を示しているものである。
オ その他の図面番号について、以下の引用発明において括弧書きで記載する。
カ してみれば、上記引用文献1の記載事項によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「レンズアレイ(21-23)と単一のフィールドレンズ(5)とを備え、対象物アレイ(11-13)を検出器アレイ(61-63)上に結像させるようにした光学システムであって、反射照明装置(9,91,92)が組み込まれており、検出器アレイ(61-63)がCCDアレイである光学システムにおいて、
対象物アレイ(11-13)は、凹部(波形部)とそのなかに保管されているサンプル(110-130)とを備えたマイクロタイタープレート(1)により形成され、そのマイクロタイタープレートが、吸収型、蛍光相関分光法を含む蛍光型、または発光型であり、
反射照明装置はサンプル(110-130)容積部を正確に照明し、
レンズアレイ(21-23)は、開口数がほぼ0.6で、対象物アレイ(11-13)に対応した各サンプル(110-130)の中央領域から光を効率的に集め、
フィールドレンズ(5)は、中間像を結像させ、よって対象物アレイ(11-13)をCCDアレイ(61-63)のエレメントに結像させる役を果たしている、
光学システム。」(以下「引用発明」という。)
2 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア センサ領域について
本願発明の「センサ領域」とは、本願明細書に「特に光検出器で観察される複数のセンサ領域」(【0001】)と記載されているように、観察する対象物のことであるから、引用発明の「対象物アレイ(11-13)」は、本願発明の「複数のセンサ領域」に相当する。
イ 対物レンズについて
本願発明の「一次像」及び「対物レンズ」について、本願明細書に「各対物レンズが上述のセンサ領域の一つの像を生成するように配置されるN個の複数の対物レンズ。参考のため、これらの異なる像は以下一次像とよばれる。これ以降、対物レンズという語は一般に物体の光学実像を生成する光学系を意味するものとする。」と記載されているものである。
一方、引用発明の「レンズアレイ(21-23)」の各レンズは、「対象物アレイ(11-13)に対応した各サンプル(110-130)の中央領域から光を効率的に集め」て、それが「フィールドレンズ(5)」で「中間像」として「結像」されていることから、「対象物アレイ(11-13)に対応した各サンプル(110-130)の中央領域から光を効率的に集め」る「レンズアレイ(21-23)」は、本願発明の「各々が前記センサ領域の一つの一次像を生成するように配置される複数の対物レンズ」に相当する。
そして、引用発明の「開口数がほぼ0.6で」ある「レンズアレイ(21-23)」は、本願発明の「少なくとも一つが0.1よりも大きい開口数を持つ複数のレンズを有する」「対物レンズ」に相当するものである。
ウ 光検出器について
引用発明の「CCDアレイである」「検出器アレイ(61-63)」は、本願発明の「検出器ピクセルのアレイを持つ光検出器」に相当する。
エ 中間光学系について
引用発明の「対象物アレイ(11-13)に対応した各サンプル(110-130)の中央領域から光を効率的に集め」る「レンズアレイ(21-23)」からの光を「中間像」として「結像させ、よって対象物アレイ(11-13)をCCDアレイ(61-63)のエレメントに結像させる役を果たしている」「フィールドレンズ(5)」は、本願発明の「検出器面上に前記複数の対物レンズの各一次像を結像する」「中間光学系」及び「前記複数の対物レンズの各一次像が」「前記検出器面上に結像される」ために「経」ることになる「中間光学系」に相当する。そして、引用発明の「フィールドレンズ(5)」は、上記図2で、1つの共通なものとして記載されていることから、本願発明の「単一の共通中間光学系」といえる。
してみれば、引用発明の「対象物アレイ(11-13)に対応した各サンプル(110-130)の中央領域から光を効率的に集め」る「レンズアレイ(21-23)」からの光を「中間像」として「結像させ、よって対象物アレイ(11-13)をCCDアレイ(61-63)のエレメントに結像させる役を果たしている」「フィールドレンズ(5)」と、本願発明の「前記検出器面上に前記複数の対物レンズの各一次像を結像する、単一の共通中間光学系であって、少なくとも一つの一次像が前記検出器面全体上に結像され、前記複数の対物レンズの各一次像が当該中間光学系を経て前記検出器面上に結像される、中間光学系」とは、「前記検出器面上に前記複数の対物レンズの各一次像を結像する、単一の共通中間光学系であって、前記複数の対物レンズの各一次像が当該中間光学系を経て前記検出器面上に結像される、中間光学系」の点で共通する。
オ 光源について
引用発明の「反射照明装置(9,91,92)」には光源があるものであるから、引用発明の「サンプル(110-130)容積部を正確に照明」する「反射照明装置(9,91,92)」は、本願発明の「前記センサ領域へ向けられる入力光線を生成するための光源」に相当する。
カ 引用発明の「光学システム」は、本願発明の「光学センサデバイス」に相当する。
キ 上記ア~カを踏まえると、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「a)複数のセンサ領域と、
b)各々が前記センサ領域の一つの一次像を生成するように配置される複数の対物レンズと、
c)検出器ピクセルのアレイを持つ光検出器と、
d)前記検出器面上に前記複数の対物レンズの各一次像を結像する、単一の共通中間光学系であって、前記複数の対物レンズの各一次像が当該中間光学系を経て前記検出器面上に結像される、中間光学系と、
e)前記センサ領域へ向けられる入力光線を生成するための光源と
を有し、
前記対物レンズの少なくとも一つが0.1よりも大きい開口数を持つ複数のレンズを有する、
光学センサデバイス。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
センサ領域が、本願発明では、「漏れ全反射又は暗視野検出を使用する」と特定されているのに対し、引用発明では、漏れ全反射又は暗視野検出を使用するものかどうか不明である点。
(相違点2)
検出器面上に結像する際に、本願発明では、「少なくとも一つの一次像が前記検出器面全体上に結像され」るのに対し、引用発明では、少なくとも一つの(中間)像が検出器アレイ(61-63)全体に結像されているかどうか不明である点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討するに、一般に対象物の観察には明視野検出、暗視野検出があり、引用発明の「対象物アレイ(11-13)」は「蛍光相関分光法を含む蛍光型」「のマイクロタイタープレート」を含むもので、対象物に光を入射し対象物から出る蛍光を観察する際には、暗視野検出を使用することが、本願優先日前より通常に行われている周知技術(例えば、特開2011-53361号公報全体、特開2011-112394号公報の【0004】、特表2011-516878号公報の【0007】参照)である。
してみれば、引用発明の「蛍光相関分光法を含む蛍光型」の「マイクロタイタープレート(1)により形成され」た「対象物アレイ(11-13)」に対して、上記相違点1である「漏れ全反射又は暗視野検出」のうち、少なくとも「暗視野検出を使用する」ことについては当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について
(ア)上記相違点2である本願発明の「少なくとも一つの一次像が前記検出器面全体上に結像され」ることについて検討するに、「少なくとも一つの一次像」と特定されていることから、「複数のセンサ領域」における「前記センサ領域の一つの一次像」が、「複数」すなわち全部の場合も含むものであり、この場合、複数のセンサ領域全部の一次像が検出器面全体上に結像されることになる。
一方、引用発明は「対象物アレイ(11-13)に対応した各サンプル(110-130)の中央領域から光を効率的に集め」る「レンズアレイ(21-23)」からの光を「中間像」として「結像させ、よって対象物アレイ(11-13)をCCDアレイ(61-63)のエレメントに結像させる」ものであるから、対象物アレイ(11-13)全体の(中間)像が検出器アレイ(61-63)全体に結像されるものである。
してみれば、上記相違点2の「少なくとも一つの一次像」が、複数のセンサ領域全部の一次像を含むという点において、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
(イ)加えて、上記相違点2の「少なくとも一つの一次像」において、複数のセンサ領域全部の一次像以外の場合についても検討するに、引用文献1の摘記(1オ)に「ほぼ細胞の大きさの解像度またはそれ以上の解像度で局部的に解明して読み取ることにより、被検査物体の生物学的機能のきわめて詳細な、局部的解明分析が可能になる。」と記載されているように、引用発明においても、対象物の解像度を上げるという動機はあるものである。そして、当審の平成29年7月25日付け拒絶理由で説示したように、限られた検出器のピクセルを有効活用して解像度を上げるため、対象物全部を一度に検出するのではなく、区分けされた対象物を検出器のピクセル全体を使って検出することにより解像度を上げることは、光学分野においては周知技術(例えば、上記周知文献参照)であり、このことは蛍光等による生物学的試料の観察においても優先日前より周知技術(例えば、特表2005-514589号の【0136】参照)といえる。
してみれば、引用発明において、上記摘記(1オ)に示されている解像度を上げるという動機のもと、上記周知技術に鑑みて、「対象物アレイ(11-13)を検出器アレイ(61-63)上に結像させる」際に、対象物アレイ(11-13)の少なくとも一つ(中間)像を検出器アレイ(61-63)全体に結像させることは、当業者が容易になし得たことである。そして、それによる高解像度で観察できるという効果も、上記周知技術から当業者が予期し得ることである。
(ウ)したがって、上記相違点2は、実質的な相違点とはいえず、さらに、相違点としても、当業者が容易になし得たことである。
(3)請求人の主張について
請求人は、平成29年7月25日付けで当審が拒絶理由として通知した特許法第29条第2項に対して、同年10月17日付け意見書において、以下の主張をしている。
「引用文献1は、マイクロタイタープレートを使用するサンプルの蛍光検査、発光検査、および吸収検査において、サンプルスループットを向上させることを目的として、光束径をCCDアレイのエレメントに結像するように縮小しており、検出器全体上に結像することにより解像度を向上させる本発明とは逆のことを行っています。したがって、引用文献1に記載の発明において、1つの凹部の像を検出器アレイ全体に結像することは、引用文献1に記載の発明の目的を達成することができなくするものであり、阻害要因になるといえます。」(以下「主張1」という。)
「周知文献1は、像の一部をリニアセンサの全幅に結像させることが記載されているものの、これは、原稿像を高い解像度で読み取るための発明であり、引用文献1に記載の発明とは対象及び課題が全く異なり、引用文献1に記載の発明と組み合わせる動機づけはなく、また、組み合わせる場合には上で説明したような阻害要因があります。」(以下「主張2」という。)
(ア)主張1について
主張1について検討するに、「検出器全体上に結像することにより解像度を向上させる本発明」と主張しているが、本願発明は、上記(2)イで説示したように、そもそも、本願発明は、複数のセンサ領域全部の一次像が検出器面全体上に結像される場合も含む「少なくとも一つの一次像が前記検出器面全体上に結像され」ることを特定したものであり、解像度が向上しないものも含むものである。そして、本願発明は、請求人の主張する「1つの凹部の像を検出器アレイ全体に結像する」に相当するものだけを発明としたものではないことから、引用発明に対して「1つの凹部の像を検出器アレイ全体に結像すること」は「阻害要因になる」との主張自体は、本願発明に基づかない主張である。
さらに、請求人は、引用文献1はサンプルスループットを向上させることを目的としているから、解像度を向上させる本発明とは逆のことを行っている旨主張しているが、一般に、サンプルスループットを上げれば解像度が下がり、解像度を上げればサンプルスループットが下がるというサンプルスループットと解像度はトレードオフの関係にあり、このトレードオフの関係にあるサンプルスループットの度合いと解像度の度合いをどの程度とするかは、当業者において設計事項といえるものであるから、引用発明と本願発明が「逆のこと」を行っているとまではいえない。
そして、引用発明は、サンプルスループットを向上させることをも目的とするものであるものの、摘記(1イ)に「もちろん、高測定感度が保証されるべきである。」と記載されており、そして、摘記(1オ)には上記のとおり「ほぼ細胞の大きさの解像度またはそれ以上の解像度で局部的に解明して読み取ることにより、被検査物体の生物学的機能のきわめて詳細な、局部的解明分析が可能になる。」と記載されているとおり、解像度を上げるということも目的として示されていることから、上記サンプルスループットと解像度のトレードオフの関係のもと、解像度を上げようとして、対象物アレイ(11-13)の少なくとも一つ像を検出器アレイ(61-63)全体に結像させることは、当業者が容易になし得たことであるとの判断に変わりはない。
(イ)次に、主張2について検討するに、上記(2)イで説示したように、検出器のピクセル全体を使って検出することにより解像度を上げることが、蛍光等による生物学的試料の観察を含めた光学分野において周知技術であるといえる以上、引用発明と上記周知技術を組み合わせることに阻害要因があるとまではいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 特許法第36条第6項第2号(理由1)について
平成29年10月17日付け手続補正書によって、請求項1においては「マップ」という特定事項が「結像」と補正されたものの、請求項2においては依然として「前記一次像がマップされる検出器面」として「マップ」という特定事項が記載されており、この「マップ」について、平成29年10月17日付け意見書で説明されているものでもない。
してみれば、請求項2の記載は、「マップ」という点で依然として不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-000949