特許拒絶査定不服審判
2022-020455
製造場所の認証を証明するための安定同位体の使用
- 審判番号
- 2022-020455
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-523772
- 請求日
- 2022年12月16日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
- 【請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 【請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【請求人代理人】井上 正
- 【請求人代理人】飯野 茂
- 【請求人代理人】河野 直樹
- 【請求人代理人】金子 早苗
- 審判長/審判官
- 審判長 樋口 宗彦
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 萩田 裕介
- 分類
- P18 .121-WZ (G01N) / P18 .537-WZ (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-523772「製造場所の認証を証明するための安定同位体の使用」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 9日国際公開、WO2019/089896、令和 3年 1月21日国内公表、特表2021-501884〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)11月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年(平成29年)11月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年6月17日に手続補正書が提出され、令和3年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年8月17日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年1月19日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年4月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月17日付けで拒絶査定がなされたところ、同年12月16日に拒絶査定不服審判が請求された。
その後、当審において、令和5年10月24日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和6年3月8日に意見書及び手続補正書(以下、「当審意見書」及び「当審手続補正書」という。)が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~17に係る発明は、当審手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。なお、各構成単位冒頭の「A」などは当審にて付した分説記号であり、構成単位について分説記号を用い「構成A」などということがある(以下、引用発明についても同様。)。
「 【請求項1】
A 少なくとも2種の異なる元素の非放射性同位体原子が添加された、製造された組成物、材料、若しくはデバイス、又は農産物であって、
B a)添加された各非放射性同位体原子は、各非放射性同位体原子の総量を増大させるための各非放射性同位体原子の添加がない場合における前記製造された組成物、材料、若しくはデバイス、又は農産物中で見られる各非放射性同位体原子の総量を上回って各非放射性同位体原子を増大させるのに十分な量で存在し、
C b)前記製造された組成物、材料、若しくはデバイス、又は農産物中の前記少なくとも2種の異なる元素の非放射性同位体原子の量の比率は、各非放射性同位体原子の総量を増大させるための各非放射性同位体原子の添加がない場合における前記製造された組成物、材料、若しくはデバイス、又は農産物中で見られる前記少なくとも2種の異なる元素の非放射性同位体原子の量の比率とは測定可能に異なっており、
D 前記少なくとも2種の異なる元素の非放射性同位体原子が、前記製造された組成物、材料、若しくはデバイス、又は農産物に付加された付加的な構成要素として前記製造された組成物、材料、若しくはデバイス、又は農産物中に存在し、
E 前記付加的な構成要素が、前記少なくとも2種の異なる元素の非放射性同位体原子を有するガス混合物を含むラベル、インクによる印刷物、ブリスターパック、又は前記のものの組合せである、
F 製造された組成物、材料、若しくはデバイス、又は農産物。」
第3 拒絶の理由
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。
理由1(明確性要件)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2(進歩性)
本件出願の請求項1~18に係る発明は、本件出願の優先権主張日前に日本国内又は外国において、以下の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件出願の優先権出張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許出願公開第2007/0134722号明細書
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献1には、次の記載がある。各摘記部分について後続当審訳を付記した。また、下線は当審にて付した。
・第4頁左欄
「13. A manufactured product having incorporated therein a gas having a determined unique combination of at least two axis ratios, wherein each axis ratio is an isotopic ratio for a same-species ratio of enriched noble gas isotopes.
14. The manufactured product of claim 13, wherein the manufactured product is a manufactured pharmaceutical product.
15. The manufactured product of claim 13, wherein: each isotopic ratio is a ratio of species selected from the group consisting of isotopes of He, Ne, Ar, Kr and Xe.
16. The manufactured product of claim 13, wherein: the manufactured product having the gas incorporated therein is hermetically sealed.」
「請求項13.決定された少なくとも2つの軸比の固有の組み合わせを有するガスをその中に組み込んだ製造製品であって、各軸比が濃縮希ガス同位体の同種同位体比である製造製品。
請求項14.製造製品が製造医薬品である、請求項13に記載の製造製品。
請求項15.各同位体比が、He、Ne、Ar、Kr及びXeの同位体からなる群から選択される種の比である、請求項13に記載の製造製品。
請求項16.その中にガスを組み込んだ製造製品が密封されている、請求項13記載の製造製品。」
・「[0003] A manufactured product, such as a pharmaceutical product, is tagged with a passive tag. A method of tagging a manufactured product with a passive tag includes determining a unique combination of at least two axis ratios. In particular, each axis ratio is an isotopic ratio for a same-species ratio of enriched noble gas isotopes. A gas having the determined unique combination of at least two axis ratios is incorporated into the manufactured product.」
「[0003]医薬品などの製造製品は、パッシブタグでタグ付けされる。パッシブタグで製造製品にタグを付ける方法は、少なくとも2つの軸比の固有の組合せを決定することを含む。特に、各軸比は、濃縮希ガス同位体の同種同位体比である。決定された少なくとも2つの軸比の固有の組合せを有するガスは、製造製品に組み込まれる。」
・「[0004] The product to be tagged may be a first product, characterized by a first particular characteristic. A second product is characterized by a second particular characteristic different from the first particular characteristic. The unique combination of at least two axis ratios is a first unique combination. A second unique combination of at least two axis ratios is determined, with the second unique combination of axis ratios being different from the first unique combination of axis ratios. A gas having the determined second unique combination of at least two axis ratios is incorporated into the second manufactured product.」
[0004]タグ付けされる製品は、第一の特定の特性によって特徴付けられる第一の製品であってもよい。第二の製品は、第一の特定の特性とは異なる第二の特定の特性によって特徴付けられる。少なくとも2つの軸比の固有の組合せは、第1の固有の組合せである。少なくとも2つの軸比の第2の固有の組合せが決定され、軸比の第2の固有の組合せは軸比の第1の固有の組合せとは異なる。決定された少なくとも2つの軸比の第2の固有の組合せを有するガスが、第2の製造製品に組み込まれる。」
・「[0007] FIG. 3 illustrates a simple two-dimensional example for determining a subset of possible combinations that is defined parametrically.」
「[0007]図3は、パラメトリックに定義可能な組合せのサブセットを決定するための簡単な2次元の例を示している。」
・「[0013] In accordance with examples, a inert noble gas passive tag is provided. The passive tag can be safely integrated with liquid or solid medication, can be made extremely difficult to counterfeit due to mathematical complexity, and is relatively inexpensive to implement.」
「[0013]実施例に従って、不活性希ガスパッシブタグが提供される。このパッシブタグは、液体又は固体の医薬品と安全に一体化させることができ、数学的な複雑さのために偽造を極めて困難にすることができ、比較的安価に実施することができる。」
・「[0014] In particular, medication is tagged with unique isotopic compositions of noble gas tags. (While the discussion herein is with respect to medicine, which is thought to be a very useful application, other products may be tagged.) Each tag comprises a (typically, relatively small) quantity of gas that includes enriched isotopes from inert noble gases. In one example, the inert noble gases include neon, argon, krypton, and xenon. Specific isotopes include He-3, He-4, Ne-18, Ne-19, Ne-20, Ar-36, Ar-38, Ar-40, Kr-76, Kr-78, Kr-80, Xe-120, Xe-124, Xe-128, and Xe-129.These isotopes are naturally occurring and are present in the atmosphere in small quantities. (While not necessarily precluded from being used, other isotopes of these five species are radioactive. There is also one additional noble gas species, radon, that is radioactive.)」
「[0014]特に、医薬品には、希ガスタグの固有の同位体組成がタグ付けされる。(本明細書では、非常に有用な用途であると考えられる医薬品に関して議論しているが、他の製品にもタグを付けることができる。)各タグは、不活性希ガスからの濃縮同位体を含む(通常、比較的少量の)ガスの量からなる。一例では、不活性希ガスは、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンを含む。具体的な同位体としては、He-3、He-4、Ne-18、Ne-19、Ne-20、Ar-36、Ar-38、Ar-40、Kr-76、Kr-78、Kr-80、Xe-120、Xe-124、Xe-128、Xe-129が挙げられる。これらの同位体は天然に存在し、大気中に少量存在している。(必ずしも利用が排除されるわけではないが、これら5種の他の同位体は放射性である。また、もう1つの放射性の希ガス種としてラドンがある。)」
(当審注:上記「これらの同位体は天然に存在し」なる記載との整合性及び技術常識から、以下の誤記載が推認される。
・誤記載1:「Ne-18 、Ne-19、Ne-20」のうち、Ne-18 、Ne-19は天然に存在せず、天然に存在するのはNe-20、Ne-21、Ne-22の3つであることが技術常識である。該技術常識を踏まえると、上記[0014]の摘記記載中、「Ne-18」と「Ne-19」は、「Ne-21」と「Ne-22」の誤記と認められる。
・誤記載2:「Kr-76、Kr-78、Kr-80」のうち、Kr-76は天然に存在せず、天然に存在するのはKr-78、Kr-80、Kr-82、Kr-83、Kr-84、Kr-86の6つであることが技術常識である。該技術常識と、同種同位体比の例として[0027]及び[0028]には、Kr-78、Kr-80の他にKr-82が挙げられることとを踏まえると、上記[0014]の摘記記載中、「Kr-76」は、「Kr-82」の誤記と認められる。
・誤記載3:「Xe-120、Xe-124、Xe-128、Xe-129」のうち、Xe-120は天然に存在せず、天然に存在するのは、Xe-124、Xe-126、Xe-128、Xe-129、Xe-130、Xe-131、Xe-132、Xe-134、Xe-126の9つであることが技術常識である。該技術常識と、同種同位体比の例として[0029]~[0034]に、Xe-124、Xe-128、Xe-129の他にXe-126が挙げられることとを踏まえると、上記[0014]の摘記記載中、「Xe-120」は、「Xe-126」の誤記と認められる。)
・「[0015] These stable noble gas isotopes are chemically inert and biologically benign. Although humans could not live in pure atmospheres of any of the above noble gases (because of absence of oxygen), small quantities have no deleterious effects on humans. Moreover, the quantities that would typically be used are on the order of picoliter and smaller traces.」
「[0015]これらの安定希ガス同位体は、化学的に不活性であり、生物学的に良性である。人間は上記の希ガスの純粋な大気中では生きられないが(酸素がないため)、少量であれば人間に有害な影響はない。さらに、一般的に使用される量はピコリットル以下の微量である。」
・「[0016] The noble gas isotopes are present in the atmosphere with precise and known natural-abundance isotopic ratios for any given species. In accordance with examples, unique tag gases are provided using enriched compositions of the stable noble gases. The enriched composition ratios differ in a detectable way from background ratios (i.e. those present in the atmosphere).」
「[0016]希ガス同位体は、大気中に存在し、任意の種について正確かつ既知の天然存在比を有する。実施例に従って、安定希ガスの濃縮した組成物を使用して、固有のタグガスが提供される。濃縮された組成比は、バックグラウンド比(すなわち大気中に存在するもの)とは検出可能な方法で異なる。」
・「[0021] In one example, a gas “ tag” is a small volume of enriched noble gas isotopes. The tag is represented as a node in a multi-dimensional Cartesian coordinate system. The axes of the coordinate system are isotopic ratios for same-species ratios. Example axis ratios include:
[0022] He-3/He-4
[0023] Ne-20/Ne-22
[0024] Ne-20/Ne-18
[0025] Ar-36/Ar-40
[0026] Ar-38/Ar-40
[0027] Kr-78/Kr-80
[0028] Kr-82/Kr-80
[0029] Xe-124/Xe-126
[0030] Xe-128/Xe-126
[0031] Xe-129/Xe-126
[0032] Xe-124/Xe-128
[0033] Xe/129/Xe-128
[0034] Xe-124/Xe-129」
「[0021]一例では、ガス「タグ」は、少量の濃縮希ガス同位体である。そのタグは多次元デカルト座標系のノードとして表される。座標系の軸は同種同位体比である。軸比の例には以下が含まれる:
[0022]He-3/He-4
[0023]Ne-20/Ne-22
[0024]Ne-20/Ne-18
(当審注:上記[0014]の当審注のとおり、天然に存在するのはNe-20、Ne-21、Ne-22の3つであることが技術常識であること、及び、[0023]が「Ne-20/Ne-22」であることを踏まえると、上記「[0024]Ne-20/Ne-18」の「Ne-18」は、「Ne-21」の誤記と認められる。)
[0025]Ar-36/Ar-40
[0026]Ar-38/Ar-40
[0027]Kr-78/Kr-80
[0028]Kr-82/Kr-80
[0029]Xe-124/Xe-126
[0030]Xe-128/Xe-126
[0031]Xe-129/Xe-126
[0032]Xe-124/Xe-128
[0033]Xe-129/Xe-128
[0034]Xe-124/Xe-129」
・「[0035] For a particular characteristic that is desired to be identified (e.g., a particular combination of medication, manufacturer, batch, date and time of manufacture), a unique tag node is chosen based on a unique combination of the isotopic ratios. A practical consideration is that the chosen tag node, when plotted in an n-dimensional ratio space (where “n” is the number of axes of the coordinate system) should be sufficiently far away from the tag node for a different medicine such that the difference can be resolved by the measurement apparatus and/or method.」
「[0035]同定が望まれる特定の特性(例えば、医薬品、製造者、バッチ、製造日及び製造時間の特定の組合せ)については、同位体比の固有の組合せに基づいて固有のタグノードが選択される。実用的な考慮事項は、選択されたタグノードが、n次元の比率空間(ここで、「n」は座標系の軸の数である)にプロットされたときに、異なる医薬品のタグノードから十分に離れている必要があり、その差が測定装置及び/又は方法によって解決され得るようにすべきである。」
・「[0036] For example, a typical detection apparatus is a mass spectrometer. With presently-available mass spectrometers, it is estimated that at least one hundred unique ratios can be defined for any given axis. Thus, for a 2-dimensional tag ratio space, one could define 10^2 or 100 unique tags. For a thirteen-dimensional tag ratio space, one could define 10^13 (i.e. ten trillion) unique tags resolvable with presently-available mass spectrometers. Thus, for example, not only can every unit of medication have its own unique tag, it is also possible to uniquely tag each batch, for each production facility around the world. Consequently, for example, any unit of medicine may be traced by its passive tag to the exact manufacturer, batch, date, and time of manufacture.」
「[0036]例えば、典型的な検出装置は質量分析計である。現在利用可能な質量分析計では、任意の軸に対して少なくとも100の固有の比率を定義できると推定される。したがって、2次元のタグ比空間では、102または100個の固有のタグを定義することができる。13次元のタグ比空間では、現在利用可能な質量分析計で解決可能な1013(すなわち10兆)個の固有のタグを定義することができる。したがって、例えば、すべての投薬単位に固有のタグを付けることができるだけでなく、世界中の生産施設ごとに、バッチごとに固有のタグを付けることも可能である。その結果、例えば、医薬品のどの単位も、そのパッシブタグによって、正確な製造業者、バッチ、製造日、製造時間を追跡することができる。」
・「[0037] In general, a thus-tagged unit of medicine, whether liquid or solid, should be hermetically sealed. If the medicine is hermetically sealed, it can be authenticated and traced to its origin with a “gas sniffer” (a small noble-gas mass spectrometer). However, even if the unit of medicine is later separated from its container or otherwise unsealed, there will besufficient noble gas isotopes remaining in the liquid or solid molecular matrix of the unit of medicine for detection and identification by a gas sniffer. Indeed, mass spectrometers available today are able to identify isotopic ratios of xenon in meteorite samples that are millions of years old, even when the total xenon content is on the order of 10^-13 ml. The traces of noble gas isotopes that will remain in opened medicine samples will be larger, typically by many orders of magnitude than the traces in the old meteorite samples.」
「[0037]一般に、液体であれ固体であれ、このようにタグ付けされた医薬品の単位は、密封されるべきである。医薬品が密封されていれば、「ガス・スニッファー」(小型の希ガス質量分析計)を用いて、その起源を認証し、追跡することができる。しかしながら、医薬品の単位が後にその容器から分離されるか、そうでなければ密封されなくなったとしても、ガス検知器による検出及び識別のために、医薬品の単位の液体又は固体の分子マトリックス中に十分な希ガス同位体が残っているであろう。実際、今日利用可能な質量分析計は、キセノンの総含有量が10-13mlのオーダーであっても、数百万年前の隕石サンプル中のキセノンの同位体比を同定することができる。開封された医薬品サンプルに残る希ガス同位体の痕跡は、古い隕石サンプルに残る痕跡よりも、通常は何桁も大きい。」
・「[0038] To manufacture the tags for a particular use, isotopically pure quantities of all possible isotopes (e.g., fifteen unique isotopes in the list above) would not be required. In one example, a finite number of “feed gas” mixtures is utilized. Each feed gas mixture comprises anywhere from two to fifteen of the stable noble gas isotopes. If the composition of each feed gas is kept reasonably secure and yet further, the possible constituent tag nodes are defined to be a “secret” subset of tag nodes, then this provides protection against counterfeiting (although a sufficiently motivated counterfeiter could determine the tag composition for a particular authentic medication sample and counterfeit medication using this same tag composition).」
「[0038]特定の用途のタグを製造するために、すべての可能な同位体の同位体的に純粋な量(例えば、上記のリストにある15の固有の同位体)は必要ではない。ある実施例では、有限数の「供給ガス」混合物が利用される。各供給ガスの混合物は、2から15の安定希ガス同位体から構成される。各供給ガスの組成が適度に安全に保たれ、さらに、可能な構成タグノードがタグノードの「秘密」サブセットであると定義される場合、これは偽造に対する保護を提供する(ただし、十分に動機のある偽造者は、特定の本物の医薬品サンプルのタグ組成を決定し、この同じタグ組成を使用して医薬品を偽造することができる)。」
・「[0039] FIG. 1 illustrates steps of a method 100 to tag products. At step 102, a unique combination of axis ratios is determined, to correspond to particular characteristics of a product or of a group of products. The group is defined merely as products having particular common characteristics which are desired to later verify. Thus, for example, the group may be medication of a certain type and produced at a particular manufacturing facility in a particular batch. Broadly speaking, grouping of products is well-known. For example, in 2001, the National Coordinating Council for Medication Error Reporting and Prevention proposed that each medication package include a bar code that indicates a National Drug Code (NDC), a lot/control/batch number and an expiration date. This is just one example of unique characteristics which are desired later to verify.」
「[0039]図1は、製品にタグを付ける方法100のステップを示す。ステップ102において、製品又は製品グループの特定の特性に対応するように、軸比の固有の組合せが決定される。このグループは、単に、後に検証することが望まれる特定の共通特性を有する製品として定義される。従って、例えば、グループは、特定のタイプの医薬品であり、特定のバッチで特定の製造施設で製造されたものである。大まかに言えば、製品のグループ分けはよく知られている。例えば、2001年、投薬過誤報告・防止のための国家調整評議会は、各医薬品パッケージに、国家医薬品コード(NDC)、ロット/管理/バッチ番号、及び有効期限を示すバーコードを含めることを提案した。これは、後で確認することが望まれる固有の特性の一例にすぎない。」
・「[0040] At step 104, product is manufactured characterized by the unique characteristics to which the unique combination of axis ratios corresponds. Thus, for example, a particular batch of a particular medication (identifiable by a particular NDC), and having a particular expiration date, may be the product that is manufactured. At step 106, a gas having the unique combination of axis ratios determined at step 102 is incorporated into the manufactured product. For example, the gas may be bubbled into a liquid medication. For a solid medication, it may be more appropriate to introduce the gas at some stage of the manufacture (e.g., by an “evacuate and backfill” procedure) such that the noble gas mixture diffuses into the lattice structure of the manufactured product. As discussed above, it may be preferable for the product having the gas incorporated therein to be hermetically sealed.」
「[0040]ステップ104において、軸比の固有の組み合わせが対応する固有の特性によって特徴付けられる製品が製造される。したがって、例えば、(特定のNDCによって識別可能な)特定の医薬品の特定のバッチであって、特定の有効期限を有するものが、製造製品であってもよい。ステップ106において、ステップ102で決定された軸比の固有の組み合わせを有するガスが、製造製品に組み込まれる。例えば、ガスは、液体医薬品にバブリングされてもよい。固体医薬品の場合、希ガス混合物が製造された製品の格子構造中に拡散するように、製造のある段階でガスを導入する(例えば、「排気及び埋め戻し」手順によって)ことがより適切であり得る。上述したように、その中にガスが組み込まれた製品が密閉されることが好ましい場合がある。」
・「[0041] At step 108, it is determined if there is more product to be manufactured according to the particular characteristic. If so, then processing returns to step 104. Otherwise, processing goes to step 110, where it is determined if a different product is to be manufactured, according to another particular characteristic. If so, then processing returns to step 102, for the different product to be manufactured. Otherwise, processing ends at step 112.」
「[0041]ステップ108において、特定の特性に従って製造すべき製品がさらにあるかどうかが判断される。さらにあれば処理はステップ104に戻る。さらになければ処理はステップ110に進み、そこで、別の特定の特性に従って、別の製品が製造されるかどうかが判断される。別の製品が製造されるのであれば、処理は製造されるべき別の製品のためにステップ102に戻る。別の製品が製造されないのであれば、処理はステップ112で終了する。」
・「[0042] We now turn to FIG. 2, which is a flowchart illustrating a process 200 to determine the unique combination of axis ratios. At step 202, a set of available axis ratios is determined. For example, the available axis ratios may be those that are resolvable. This issue of resolvability is discussed above with respect to presently-available mass spectrometers. The level of resolvability depends on the instrumentation available to detect the ratios as the gas is incorporated into a product. For example, resolvability may improve beyond that achievable with presently-available mass spectrometers or other instrumentation.」
「[0042]次に、軸比の固有の組合せを決定するためのプロセス200を示すフローチャートである図2に目を向ける。ステップ202において、利用可能な軸比のセットが決定される。例えば、使用可能な軸比は、分解可能な軸比である。この分解能の問題は、現在利用可能な質量分析計に関して上述した。分解能のレベルは、ガスが製品に取り込まれる際に比率を検出するために利用可能な機器に依存する。例えば、分解能は、現在利用可能な質量分析計やその他の装置で達成可能なレベルを超えて向上する可能性がある。」
・「[0043] At step 204, a particular combination of the available axis ratios is chosen. At step 206, the chosen combination of available axis ratios is registered with a database in association with the particular product characteristics. In this way, when the particular combination of axis ratios is incorporated into a product and is later detected, the particular product characteristics can be determined (with reference to the database).」
「[0043]ステップ204において、利用可能な軸比の特定の組合せが選択される。ステップ206において、利用可能な軸比の選択された組合せが、特定の製品特性に関連付けられてデータベースに登録される。このようにして、軸比の特定の組み合わせが製品に組み込まれ、後に検出されたときに、特定の製品特性を(データベースを参照して)決定することができる。」
・「[0044] We now discuss examples of using the tagging method described above in a manner so as to minimize the possibility of counterfeiting a product, such as a medicine (or, put another way, to enhance the ease with which the authenticity of a product may be detected). Specifically, the examples allow for a choice of tags whose ratios fall within a well-defined portion of an n-dimensional space.」
「[0044]次に、医薬品のような製品の偽造の可能性を最小化する(別の言い方をすれば、製品の真正性が検出されやすくなる)ように、上述のタグ付け方法を使用する例について説明する。具体的には、実施例では、比率がn次元空間の明確に定義された部分内に入るタグを選択できるようにしている。」
・「[0045] An analytical-geometry model for working with unique gas tags includes plotting the isotopic ratios of the gas tags in a Cartesian coordinate space. Referring to FIG. 3, as a simple example, if one were to have a tag containing only neon and argon, one could use a two-dimensional Cartesian coordinate space to plot the ratio of Ne22/Ne20 on the dimensionless X axis of the two-dimensional space and Ar42/Ar40 on the dimensionless Y axis of the two-dimensional space. By systematically varying the isotopic composition of the Ne and Ar while blending the tags, one could generate a matrix of “tag nodes”.」
「[0045]固有のガスタグを扱うための分析幾何学モデルには、デカルト座標空間にガスタグの同位体比をプロットすることが含まれる。図3を参照すると、単純な例として、ネオンとアルゴンのみを含むタグがあるとすると、2次元デカルト座標空間を使用して、2次元空間の無次元X軸上にNe22/Ne20の比をプロットし、2次元空間の無次元Y軸上にAr42/Ar40の比をプロットすることができる。タグをブレンドしながらNeとArの同位体組成を系統的に変化させることで、「タグノード」の行列を生成することができる。」
・「[0046] A practical limitation may be that, if the tag nodes are squeezed together, it may not be practically possible to resolve adjacent nodes. This is a limitation of the detection equipment (e.g., a mass spectrometer). FIG. 3 illustrates a ten by ten matrix of tag nodes 302 but, in practice, mass spectrometers are very accurate and, thus, at least hundreds of values in each dimension are feasible.」
「[0046]実用的な制限として、タグノードが互いに密集している場合、隣接するノードを分解することが実用的に不可能な場合がある。これは検出装置(例えば質量分析計)の限界である。図3は、タグノード302の10×10の行列を示しているが、実際には、質量分析計は非常に正確であるため、各次元で少なくとも数百の値が実現可能である。」
・「[0047] If a counterfeiter were to open one bottle of pills and measure the tag gas composition with a mass spectrometer, that person could buy some raw neon and argon gasses and counterfeit the tag for that one bottle of pills. Moreover, with the tag nodes 302 spaced in a rectangular grid such as shown in FIG. 3, if the counterfeiter were to get several bottles and detect the tag compositions, it is possible that the counterfeiter could learn the grid spacing algorithm and produce a large batch of counterfeit tags. However, to make counterfeiting more difficult, the choice of possible tag nodes can be designated to be tag nodes 304 that fall on a circle 306, as shown in FIG. 3.」
「[0047]偽造者が錠剤の瓶を1本開け、質量分析計でタグのガス組成を測定した場合、その人物は生のネオンガスとアルゴンガスをいくつか購入し、その錠剤の瓶1本分のタグを偽造することができる。さらに、タグノード302が図3に示すような長方形の格子状に間隔をあけて配置されているため、偽造者が複数の瓶を入手し、タグ組成を検出した場合、偽造者が格子間隔のアルゴリズムを学習し、大量の偽造タグを作成する可能性がある。しかし、偽造をより困難にするために、可能なタグノードの選択を、図3に示すように、円306上に位置するタグノード304とすることができる。」
・「[0048] Encryption parameters that would be kept secret are the center and radius of the node circle 306 in a two-dimensional space, such that the node circle 306 is an “encryption circle”. If these encryption parameters are kept secret, one would need to get three bottles of pills tagged with ratios whose nodes fall on the same encryption circle. However, there can be multiple encryption circles in the same plane, so that if a counterfeiter were to analyze three random bottles of medicine and identify three nodes in the plane, the counterfeiter would still not be certain to have identified a legitimate encryption circle.」
「[0048]ノード円306が「暗号化円」であるように、秘密にされる暗号化パラメータは、2次元空間におけるノード円306の中心と半径である。これらの暗号化パラメータが秘密にされる場合、ノードが同じ暗号化円上に位置する比率でタグ付けされた錠剤のボトルを3本入手する必要がある。しかし、同一平面上に複数の暗号化円が存在する可能性があるため、偽造者が無作為に3本の薬の瓶を分析し、平面上の3つのノードを特定したとしても、偽造者が正規の暗号化円を特定したとは限らない。」
・図3
「
[図:0001418504000001.jpg]
」
2 看取・認定事項
上記1の記載及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(1)看取・認定事項1
(請求項13)の「決定された少なくとも2つの軸比の固有の組み合わせを有するガスをその中に組み込んだ製造製品であって、各軸比が濃縮希ガス同位体の同種同位体比である製造製品」、(請求項15)の「各同位体比が、He、Ne、Ar、Kr及びXeの同位体からなる群から選択される種の比である」、及び[0045]の「単純な例として、ネオンとアルゴンのみを含むタグがあるとすると、2次元デカルト座標空間を使用して、2次元空間の無次元X軸上にNe22/Ne20の比をプロットし、2次元空間の無次元Y軸上にAr42 /Ar40の比をプロットすることができる」という記載から、ここでの「種」が、原子の「種」を指す元素を意味することは自明であるところ、「製造製品」は、決定された2つの軸比の固有の組み合わせを有するガスをその中に組み込んだ製造製品であって、2つの軸比を構成する2つの軸は相互に異なる原子種(元素)の同種同位体比であり、各軸比が濃縮希ガス同位体の同種同位体比である製造製品を含むものと認められる。
(2)看取・認定事項2
(請求項14)の「製造製品が製造医薬品である」、及び[0040]の「ステップ106において、ステップ102で決定された軸比の固有の組み合わせを有するガスが、製造製品に組み込まれる。例えば、」「固体医薬品の場合、希ガス混合物が製造された製品の格子構造中に拡散するように、製造のある段階でガスを導入する」という記載から、製造製品は固体医薬品を含み、その場合、希ガス混合物が製造された固体医薬品の格子構造中に拡散するように、製造のある段階でガスを導入することで、決定された2つの軸比の固有の組み合わせを有するガスが、固体医薬品に組み込まれるものと認められる。
(3)看取・認定事項3
(請求項16)の「その中にガスを組み込んだ製造製品が密封されている」、[0037]の「一般に、液体であれ固体であれ、このようにタグ付けされた医薬品の単位は、密封されるべきである。」「医薬品の単位が後にその容器から分離されるか、そうでなければ密封されなくなったとしても、ガス検知器による検出及び識別のために、医薬品の単位の」「固体の分子マトリックス中に十分な希ガス同位体が残っている」、[0040]の「その中にガスが組み込まれた製品が密閉されることが好ましい」、及び[0047]の「錠剤の瓶」という記載から、製造製品が瓶などの容器によって密封され、製造製品が後にその容器から分離されるか、密封されなくなったとしても、ガス検知器による検出及び識別のために、製造製品中に十分な希ガス同位体が残っているものと認められる。
(4)看取・認定事項4
濃縮安定同位体とは、特定の同位体の割合(存在比)を物理的あるいは化学的に濃縮することで増加させたものをいうことは、技術常識(以下「技術常識1」という。必要であれば、「原子力百科事典ATOMICA」の「原子力用語辞書」(国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構(JAEA)編;URL:https://atomica.jaea.go.jp/dic_list.html)参照。)であることを踏まえると、[0016]の「希ガス同位体は、大気中に存在し、任意の種について正確かつ既知の天然存在比を有する。実施例に従って、安定希ガスの濃縮した組成物を使用して、固有のタグガスが提供される」との記載、ここでの「安定希ガスの濃縮した組成物」は、安定希ガス同位体の割合(存在比)を「天然存在比」から増加させたものと解せるから、(請求項13)の濃縮希ガス同位体は、安定希ガス同位体の割合(存在比)を天然存在比から増加させたものと認められる。
(5)看取・認定事項5
ア (請求項13)の「少なくとも2つの軸比の固有の組み合わせ」、及び[0038]の「特定の用途のタグを製造するために、すべての可能な同位体の同位体的に純粋な量(例えば、上記のリストにある15の固有の同位体)は必要ではない。ある実施例では、有限数の「供給ガス」混合物が利用される。各供給ガスの混合物は、2から15の安定希ガス同位体から構成される」との記載から、上記看取・認定事項1を踏まえると、最低でも、2つの軸比(同種同位体比が2つで同位体比組の空間の2軸を構成する)を要する、という前提があって、供給ガスの同位体混合数の最低数が2つである、ということから、上記(4)の、特定の同位体を増加させるという手法に照らし、2軸を構成する各同種同位体比について、一方の同位体のみを供給する、つまり、2つの各元素種における一方の同位体のみの組み合わせからなる供給ガス混合物([0045]の例ではNe22とAr42の組み合わせとか)を供給する、という態様の存在が自明といえる。
イ また、[0045]には「単純な例として、ネオンとアルゴンのみを含むタグがあるとすると、2次元デカルト座標空間を使用して、2次元空間の無次元X軸上にNe22/Ne20の比をプロットし、2次元空間の無次元Y軸上にAr42/Ar40の比をプロットすることができる。タグをブレンドしながらNeとArの同位体組成を系統的に変化させることで、「タグノード」の行列を生成することができる」との記載があり、上記アの態様を踏まえると、[0045]の「NeとArの同位体組成を系統的に変化させる」ための手法として、「Ne22/Ne20の比」については、Ne20(分母側)の量を天然存在時の量に維持したまま、Ne22(分子側)をガス供給することで、Ne22(分子側)の量を天然存在時の量から増加させ、同様に、「Ar42/Ar40の比」については、Ar40(分母側)の量を天然存在時の量に維持したまま、Ar42(分子側)をガス供給することで、Ar42(分子側)の量を天然存在時の量から増加させることで、「Ne22/Ne20」及び「Ar42/Ar40」それぞれの軸比を天然存在時の比率から増加させ、そのためのガス供給には、相互に異なる原子種(元素)における2つ(Ne22とAr42)の希ガス同位体を有する希ガス混合物が用いられることが想定される。
ウ 上記イの想定を踏まえると、[0021]の
「軸比の例には以下が含まれる:
[0022]He-3/He-4
[0023]Ne-20/Ne-22
[0024]Ne-20/Ne-18
[0025]Ar-36/Ar-40
[0026]Ar-38/Ar-40
[0027]Kr-78/Kr-80
[0028]Kr-82/Kr-80
[0029]Xe-124/Xe-126
[0030]Xe-128/Xe-126
[0031]Xe-129/Xe-126
[0032]Xe-124/Xe-128
[0033]Xe-129/Xe-128
[0034]Xe-124/Xe-129」との記載から、上記看取・認定事項1の“2つの軸比の固有の組み合わせ”には、[0025]~[0034]に例示された軸比から選ばれた相互に異なる原子種(元素)における2つの軸比について、それぞれ、分母側希ガス同位体は、その量を天然存在時の量に維持したままの安定希ガス同位体とし、分子側希ガス同位体は、その量をガス供給することで天然存在時の量から増加させた濃縮安定希ガス同位体とすることで、軸比を天然存在時の比率から増加させることとし、そのための前記ガス供給には、前記例示された軸比から選ばれた相互に異なる原子種(元素)における2つの分子側希ガス同位体を有する希ガス混合物が用いられることとなる態様を含むものと認められる。
(6)看取・認定事項6
(請求項13)の「決定された少なくとも2つの軸比の固有の組み合わせを有するガスをその中に組み込んだ製造製品であって、各軸比が濃縮希ガス同位体の同種同位体比である製造製品」、[0016]の「濃縮された組成比は、バックグラウンド比(すなわち大気中に存在するもの)とは検出可能な方法で異なる」、[0044]の「比率がn次元空間の明確に定義された部分内に入るタグを選択できるようにしている」、[0045]の「図3を参照すると、単純な例として、ネオンとアルゴンのみを含むタグがあるとすると、2次元デカルト座標空間を使用して、2次元空間の無次元X軸上にNe22/Ne20の比をプロットし、2次元空間の無次元Y軸上にAr42 /Ar40の比をプロットすることができる。タグをブレンドしながらNeとArの同位体組成を系統的に変化させることで、「タグノード」の行列を生成することができる」、及び[0047]の「偽造をより困難にするために、可能なタグノードの選択を、図3に示すように、円306上に位置するタグノード304とすることができる」との記載、並びに図3には、8点をタグノード304としたことが見て取れるから、上記看取・認定事項1の「決定された2つの軸比の固有の組み合わせ」については、2次元デカルト座標空間を使用して、2次元空間の無次元X軸及び無次元Y軸における各同種同位体比の同位体組成を系統的に検出可能に変化させることで、タグノードの行列を生成し、偽造をより困難にするために、比率が2次元空間の明確に定義された円306上に位置する8点のタグノード304から選択して、“2つの軸比の固有の組み合わせ”を決定することを含むものと認められる。
3 引用文献1に記載された発明
上記2の看取・認定事項を含め上記1の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「構成a 決定された2つの軸比の固有の組み合わせを有するガスをその中に組み込んだ製造製品であって、2つの軸比を構成する2つの軸は相互に異なる原子種(元素)の同種同位体比であり、各軸比が濃縮希ガス同位体の同種同位体比であり、濃縮希ガス同位体は、安定希ガス同位体の割合(存在比)を天然存在比から増加させたものであり、(請求項13、看取・認定事項1、看取・認定事項4)
構成b 製造製品は固体医薬品を含み、その場合、希ガス混合物が製造された固体医薬品の格子構造中に拡散するように、製造のある段階でガスを導入することで、決定された2つの軸比の固有の組み合わせを有するガスが、固体医薬品に組み込まれ、(請求項14、看取・認定事項2)
構成c 各軸比の同種同位体比は、He、Ne、Ar、Kr及びXeの同位体からなる群から選択される種の比であり、(請求項15)
構成d その中に前記ガスを組み込んだ製造製品が瓶などの容器によって密封され、製造製品が後にその容器から分離されるか、密封されなくなったとしても、ガス検知器による検出及び識別のために、製造製品中に十分な希ガス同位体が残っており、(請求項16、看守・認定事項3)
構成e He、Ne、Ar、Kr及びXeの同位体としては、He-3、He-4、Ne-20 、Ne-21、Ne-22、Ar-36、Ar-38、Ar-40、Kr-78、Kr-80、Kr-82、Xe-124、Xe-126、Xe-128、Xe-129が挙げられ、([0014])
構成f これらは安定希ガス同位体であり、([0015])
構成g 軸比の例には以下が含まれ、([0021])
He-3/He-4、([0022])
Ne-20/Ne-22、([0023])
Ne-20/Ne-21、([0024])
Ar-36/Ar-40、([0025])
Ar-38/Ar-40、([0026])
Kr-78/Kr-80、([0027])
Kr-82/Kr-80、([0028])
Xe-124/Xe-126、([0029])
Xe-128/Xe-126、([0030])
Xe-129/Xe-126、([0031])
Xe-124/Xe-128、([0032])
Xe-129/Xe-128、([0033])
Xe-124/Xe-129、([0034])
構成h 前記“2つの軸比の固有の組み合わせ”には、前記例示された軸比から選ばれた相互に異なる原子種(元素)における2つの軸比について、それぞれ、分母側希ガス同位体は、その量を天然存在時の量に維持したままの安定希ガス同位体とし、分子側希ガス同位体は、その量をガス供給することで天然存在時の量から増加させた濃縮安定希ガス同位体とすることで、軸比を天然存在時の比率から増加させることとし、そのための前記ガス供給には、前記例示された軸比から選ばれた相互に異なる原子種(元素)における2つの分子側希ガス同位体を有する希ガス混合物が用いられることとなる態様を含み、(看取・認定事項5)
構成i 2次元デカルト座標空間を使用して、2次元空間の無次元X軸及び無次元Y軸における各同種同位体比の同位体組成を系統的に検出可能に変化させることで、タグノードの行列を生成し、偽造をより困難にするために、比率が2次元空間の明確に定義された円306上に位置する8点のタグノード304から選択して、前記“2つの軸比の固有の組み合わせ”を決定する、(看取・認定事項6)
構成j 製造製品。(請求項13)」
第5 進歩性について
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)構成A及びFについて
ア 上記技術常識1を踏まえると、引用発明(構成h)の「濃縮安定希ガス同位体」は、本願発明の「非放射性同位体原子」に相当するところ、引用発明(構成g、構成h)の「前記例示された軸比から選ばれた相互に異なる原子種(元素)における2つの分子側希ガス同位体」(例えば、「Ne-20/Ne-22」の「Ne-20」と「Ar-36/Ar-40」の「Ar-36」)は、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」であるから、引用発明の「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」は、本願発明の「2種の異なる元素の非放射性同位体原子」に相当する。
イ 引用発明(構成b、構成h)の「製造製品に組み込まれ」る「決定された2つの軸比の決定された固有の組み合わせを有するガス」は、「製造製品が固体医薬品」「の場合」、「製造された固体医薬品の格子構造中に拡散するように、製造のある段階で導入する」「希ガス混合物」であって、「希ガス混合物」は「2つの分子側希ガス同位体を有する」ことから、上記アを踏まえると、引用発明の「組み込まれ」る「決定された2つの軸比の決定された固有の組み合わせを有するガス」は、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」を含む。
よって、引用発明の「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」が「組み込まれ」たことは、本願発明の「2種の異なる元素の非放射性同位体原子が添加された」ことに相当する。
ウ 当審手続補正書により補正された請求項5の「少なくとも第1の元素の非放射性同位体及び第2の元素の非放射性同位体を含む材料の成分について、その製造場所又は生産場所を認証する認証方法」、及び請求項6の「前記材料が医薬品である、請求項5に記載の認証方法」との記載を踏まえると、材料は医薬品自体であるから、引用発明(構成b)の「固体医薬品」は、本願発明(構成F)の「製造された」「材料」に相当する。
エ よって、引用発明の「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」が「組み込まれ」た、「固体医薬品」は、本願発明(構成A)の「2種の異なる元素の非放射性同位体原子が添加された、製造された」「材料」に相当する。
(2)構成Bについて
ア 構成Bについて、本願明細書には次の記載がある。
「 【0014】
本発明の一実施形態では、少なくとも2種の異なる非放射性同位体原子を含む製造組成物、材料若しくはデバイス、又は農産物が提供される。各非放射性同位体原子は、非放射性同位体原子の総量を、前記総量を増大させるための非放射性同位体原子の添加がない場合に製造組成物、材料又はデバイス中で見られる総量を上回って増大させるのに十分な量で存在する。言い換えると、混じり物のない状態の製造組成物、材料又はデバイスは、天然に存在するこれらの特定の非放射性同位体の総量を有し得る。これらの製造組成物、材料又はデバイスのランダムなサンプルを分析すれば、天然に存在するこれらの特定の非放射性同位体の統計的平均総量になるであろう。本発明の意図は、特定の品目又はロットを任意の他の品目又はロットから区別するために、付加的な量のこれらの非放射性同位体を導入することである。」
本願明細書の当該記載によれば、本願発明の「各非放射性同位体原子の添加がない場合における前記製造された」「材料」「中で見られる各非放射性同位体原子の総量」は、天然に存在する各非放射性同位体原子の総量、と言い換えることができる。
イ 一方、引用発明(構成d)は、「ガス検知器による検出及び識別のために、製造製品中に十分な希ガス同位体が残って」いる。また、引用発明(構成h)の各「濃縮安定希ガス同位体」は、「その量をガス供給することで天然存在時の量から増加させた」ものであるから、引用発明の「固体医薬品」に「組み込まれ」た各「濃縮安定希ガス同位体」は、「天然」に「存在」する「量から増加させ」たことで「固体医薬品」「中に十分な」「量」で存在しているといえる。
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「固体医薬品」に「組み込まれ」た各「濃縮安定希ガス同位体」は、各「濃縮安定希ガス同位体」の総「量」を「増加させ」るための各「濃縮安定希ガス同位体」の「組み込」みがない場合における「固体医薬品」「中」で見られる各「濃縮安定希ガス同位体」の総「量」を上回って各「濃縮安定希ガス同位体」を「増加させ」るのに「十分な」「量」で存在するといえる。
ウ よって、引用発明の「固体医薬品」に「組み込まれ」た各「濃縮安定希ガス同位体」は、「天然」に「存在」する「量」から「増加させ」たことで「固体医薬品」「中に十分な」「量」で存在することは、本願発明(構成B)の「a)添加された各非放射性同位体原子は、各非放射性同位体原子の総量を増大させるための各非放射性同位体原子の添加がない場合における前記製造された」「材料」「中で見られる各非放射性同位体原子の総量を上回って各非放射性同位体原子を増大させるのに十分な量で存在」することに相当する。
(3)構成Dについて
「固体医薬品」が薬としての主要な構成要素とみると、固体医薬品以外のすべての構成要素、例えば、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」は、「固体医薬品」に付加された付加的な構成要素とみることができる。
よって、上記(2)を踏まえると、引用発明の「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」が、「固体医薬品」「中」に「組み込まれ」たことは、本願発明(構成D)の「前記」「2種の異なる元素の非放射性同位体原子が、前記製造された」「材料」「に付加された付加的な構成要素として前記製造された」「材料」「中に存在」することに相当する。
(4)構成Eについて
上記(3)のとおり、固体医薬品以外のすべての構成要素は、「固体医薬品」に付加された付加的な構成要素とみることができるから、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」「を有する希ガス混合物」と併せて「瓶などの容器」も、付加的な構成要素とみることができる。すると、引用発明(構成d、構成h)の「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」「を有する希ガス混合物」を含む「瓶などの容器」は、本願発明の「付加的な構成要素」に相当する。
よって、引用発明の付加的な構成要素が、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」「を有する希ガス混合物」を含む「瓶などの容器」であることと、本願発明の「前記付加的な構成要素が、前記」「2種の異なる元素の非放射性同位体原子を有するガス混合物を含む」「ブリスターパック」「である」こととは、「前記付加的な構成要素が、前記」「2種の異なる元素の非放射性同位体原子を有するガス混合物を含む」「容器」「である」点で共通する。
2 一致点・相違点
よって、本願発明と引用発明とは、次の点で少なくとも一致し、次の各点で一応相違する。
(1)一致点
「A 2種の異なる元素の非放射性同位体原子が添加された、製造された材料であって、
B a)添加された各非放射性同位体原子は、各非放射性同位体原子の総量を増大させるための各非放射性同位体原子の添加がない場合における前記製造された材料中で見られる各非放射性同位体原子の総量を上回って各非放射性同位体原子を増大させるのに十分な量で存在し、
D 前記2種の異なる元素の非放射性同位体原子が、前記製造された材料に付加された付加的な構成要素として前記製造された材料中に存在し、
E’ 前記付加的な構成要素が、前記2種の異なる元素の非放射性同位体原子を有するガス混合物を含む容器である、
F 製造された材料。」
(2)相違点1(構成C)
本願発明では、「b)前記製造された」「材料」「中の前記」「2種の異なる元素の非放射性同位体原子の量の比率は、各非放射性同位体原子の総量を増大させるための各非放射性同位体原子の添加がない場合における前記製造された」「材料」「中で見られる前記」「2種の異なる元素の非放射性同位体原子の量の比率とは測定可能に異なって」いるのに対し、引用発明では、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」の比率(例えば、濃縮後の「Ne-20/Ne-22」の「Ne-20」と、「Ar-36/Ar-40」の「Ar-36」との比率)が、濃縮前の比率(例えば、天然存在時の「Ne-20」と「Ar-36」との比率)と測定可能に異なっているか、不明である点。
(3)相違点2(構成E)
容器が、本願発明は、「ブリスターパック」であるのに対し、引用発明は、「瓶などの容器」である点。
3 判断
前記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
ア 構成Cについて、本願明細書には次の記載がある。
「【0015】
さらに、製造組成物、材料又はデバイス中の少なくとも2種の非放射性同位体の比率は、前記総量を増大させるための非放射性同位体原子の添加がない場合に製造組成物、材料又はデバイス中で見られる比率とは測定可能に異なる。言い換えると、混じり物のない状態の製造組成物、材料又はデバイスは、天然に存在するこれらの特定の非放射性同位体の比率を有し得る。これらの製造組成物、材料又はデバイスのランダムなサンプルを分析すれば、天然に存在するこれらの特定の非放射性同位体の統計的平均比率になるであろう。本発明の意図は、特有の比率を生じるため、したがって特定の品目又はロットを任意の他の品目又はロットから区別するために、付加的な量のこれらの異なる非放射性同位体を導入することである。」
本願明細書の当該記載によれば、本願発明の「各非放射性同位体原子の添加がない場合における前記製造された」「材料」「中で見られる前記」「2種の異なる元素の非放射性同位体原子の量の比率」は、天然に存在する2種の異なる元素の非放射性同位体原子の比率、と言い換えることができる。
イ 天然存在時、2つの異なる原子の種(元素)の安定希ガス同位体の比率が一定であることは、技術常識である。そして、2つの異なる原子の種(元素)の安定希ガス同位体を、それぞれの天然存在時から増加させる際、それぞれを同じ割合で増加させた場合、濃縮された各安定希ガス同位体の比率は、天然存在時の比率と同じままであり、それぞれを異なる割合で増加させた場合、濃縮された各安定希ガス同位体の比率は、天然存在時の比率とは異なる。つまり、各安定希ガス同位体をそれぞれ同じ割合で増加させない限り、増加後の濃縮された各安定希ガス同位体の比率は、天然存在時の比率とは異なる。
ウ 上記イを踏まえると、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「安定希ガス同位体」を、それぞれの天然存在時に対してそれぞれを同じ割合で増加させた場合、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」の量の関係は、該2つの元素の軸比で構成される直交座標系の2次元空間において傾きが一定の一次関数(直線)となる。一方、引用発明(構成i)の「8点のタグノード304」は、「比率が2次元空間の明確に定義された円306上に位置する」。そして、円と直線の位置関係には、「異なる2点で交わる」「1点で接する」「交わらない」の3パターンしかない。
すると、引用発明の「円306上に位置する8点」のうち、少なくとも6点は、直線との交点でなく、各「濃縮安定希ガス同位体」がそれぞれを同じ割合で増加させたものでないから、引用発明において、増加後の各「濃縮安定希ガス同位体」の比率は、天然存在時の比率とは異なるものを含む。
エ また、引用発明(構成i)の「円306上に位置する8点のタグノード304」は、「無次元X軸及び無次元Y軸における各同種同位体比の同位体組成を系統的に検出可能に変化させ」たものであるから、上記ウの「増加後の各「濃縮安定希ガス同位体」の比率は、天然存在時の比率とは異なる」とは、「検出可能に異なる」ことである。
オ したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」の「量」の比率は、各「濃縮安定希ガス同位体」の総「量」を「増加させ」るための各「濃縮安定希ガス同位体」の「組み込」みがない場合における「固体医薬品」「中」で見られる各「濃縮安定希ガス同位体」の「量」の比率とは「検出可能」に異なっているものを含む。
カ よって、上記オを踏まえると、引用発明は、相違点1の構成を備えている。よって、相違点1は、実質的な相違点でない。
仮に、相違点1が実質的な相違点であるとしても、上記イで説示したとおり、各安定希ガス同位体をそれぞれ同じ割合で増加させない限り、増加後の各濃縮安定希ガス同位体の比率は、天然存在時の比率とは異なるところ、引用発明において、増加後の各「濃縮安定希ガス同位体」の比率を天然存在時の比率と同じにすることは、「偽造」防止「タグ」としての機能を失うことになるから、相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
ブリスターパックを、固体医薬品の容器とすることは技術常識であるから、引用発明において、「固体医薬品」の「容器」をブリスターパックとし、相違点2の構成とすることは、当業者が適宜設計し得る程度のことである。
(3)そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(4)したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 請求人の主張
(1)請求人は当審意見書において、進歩性について次の主張をする(下線は請求人による)。
「本発明では、添加されるべき非放射性同位体原子として、少なくとも2種の異なる元素の非放射性同位体原子を用いています。
これに対し、米国特許出願公開第2007/0134722号明細書(引用文献1)では、その段落[0021]-[0034]に記載されているように、いずれも同じ元素の2つの同位体原子を用いており、本発明の「少なくとも2種の異なる元素の非放射性同位体原子」とは大きく異なります。
このように、本発明では、少なくとも2種の異なる元素の非放射性同位体原子を用いていますので、引用文献1に記載の「同じ元素の2つの同位体原子」と異なり、両原子の比率や量において、上記明細書の段落0018に記載の「重水素(2D又は2H、水素同位体)、ヘリウム-3(3He)、炭素-13(13C)、窒素-15(15N)、酸素-17(17O)、酸素-18(180)、フッ素-19(19F)、ネオン-21(2Ne)、硫黄-33(33S)、硫黄-36(36S)、アルゴン-36(36Ar)、アルゴン-38(38Ar)、カリウム-40(40K)、カルシウム-42(42Ca)、カルシウム-43(43Ca)、カルシウム-46(46Ca)、カルシウム-48(48Ca)、鉄-58(58Fe)、ニッケル-64(64Ni)、亜鉛-70(70Zn)、セレン-74(74Se)、クリプトン-78又は80(78Kr、80Kr)、ストロンチウム-84(84Sr)及びキセノン-124、126、128、129、130、131、132又は134(124Xeなど)」のグループから、数多くの同位体の組み合わせを採用することができ、このことは、「同じ元素の2つの同位体原子」に着目している引用文献1からは、当業者といえども導かれないものであります。
以上のとおりであり、本発明は引用文献1に記載の発明からみて進歩性を有します。」
(2)前記主張について検討する。
引用発明は、「2つの」「異なる原子種(元素)」の「濃縮安定希ガス同位体」を用いること(上記1(1)アを参照)から、「同じ元素の2つの同位体原子」に着目しているものでなく、請求人の上記(1)の主張は採用できない。
第6 明確性要件について
1 当審拒絶理由
当審拒絶理由では、明確性要件に関して次のことを指摘した。
「1 「ガス混合物を含むラベル、インク印刷、ブリスターパック、又は前記のものの組合せ」について
請求項1には、「ガス混合物を含むラベル、インク印刷、ブリスターパック、又は前記のものの組合せ」という記載(「ガス混合物を含む」は、「ラベル」、「インク印刷」、「ブリスターパック」、又は「前記のものの組合せ」のそれぞれを修飾すると解される)がある。そして、本願明細書には、【0017】に請求項1と同様の記載しかないことから、本願明細書及び技術常識を踏まえても以下の点が不明である。
(1)「ラベル」なる用語は、本願発明の属する技術分野において多義的であり、<商標・品名・分類記号・宛先などを目視判別可能なように表示するために品物や容器などに貼る紙片のような表示媒体>を指す場合(表示媒体)と、<他者と区別するために(「製造組成物、材料若しくはデバイス、又は農産物」なる認証対象自体に)付与される何らかの標識全般>を指す場合(標識)とを少なくとも含む。
そのうち、前者(表示媒体)の場合について、紙片(固体)である表示媒体が「ガス混合物を含む」とは、どのような状態(構造・形状)になっているのか、不明である。
また、後者(標識)には、認証対象を化学的に改変する化学的標識など、種々の形態が含まれ得るが、そのような標識が「ガス混合物を含む」とはどのような形態を意味するのか不明である。
(2)「インク印刷」が、インクを用いて印刷することだとすると、「ガス混合物を含む」対象が、インク(液体)なのか、それとも、印刷物(固体)なのか、不明である。また、いずれの場合でも、「ガス混合物を含む」とは、どのような状態(構造・形状)になっているのか、不明である。」
2 請求人の対応
上記1に対する対応として、請求人は、当審手続補正書において、「ガス混合物を含むラベル、インク印刷、ブリスターパック、又は前記のものの組合せ」を、(構成E)「ガス混合物を含むラベル、インクによる印刷物、ブリスターパック、又は前記のものの組合せ」(下線は補正箇所)と補正するとともに、当審意見書において、
「(1)理由1(明確性)
まず、特許請求の範囲において、少なくとも2種の非放射性同位体原子が少なくとも2種の異なる元素についてのものであることを明確にしましたので、ご指摘の主たる明確性違反は解消されたものと思料します。また、各請求項において、記載事項がそれぞれ明確になるよう補正するととも、請求項14を削除しましたので、ご指摘の他の明確性違反も解消されたものと思料します。」と主張した。
3 判断
(1)ア 「ガス混合物を含むラベル」について、上記1での指摘のとおり、「ラベル」なる用語は、本願発明の属する技術分野において多義的であり、<商標・品名・分類記号・宛先などを目視判別可能なように表示するために品物や容器などに貼る紙片のような表示媒体>を指す場合(表示媒体)と、<他者と区別するために(「製造組成物、材料若しくはデバイス、又は農産物」なる認証対象自体に)付与される何らかの標識全般>を指す場合(標識)とを少なくとも含む。
そのうち、前者(表示媒体)の場合について、紙片(固体)である表示媒体が「ガス混合物を含む」とは、どのような状態(構造・形状)になっているのか、本願明細書には、【0017】に請求項1と同様の記載しかないことから、本願明細書及び技術常識を参酌しても不明である。
また、後者(標識)には、認証対象を化学的に改変する化学的標識など、種々の形態が含まれ得るが、そのような標識が「ガス混合物を含む」とは、どのような形態を意味するのか、本願明細書及び技術常識を参酌しても不明である。
イ 「ガス混合物を含む」「インクによる印刷物」について、上記1での指摘のとおり、「インクによる印刷物」が、インクを用いた印刷物だとすると、「ガス混合物を含む」とは、どのような状態(構造・形状)になっているのか、本願明細書及び技術常識を参酌しても不明である。
(2)また当審意見書での上記2の主張は、上記1の指摘について何らの釈明でもないから、上記(1)で述べた判断を覆すことはできない。
(3)よって、請求項1の「ガス混合物を含むラベル、インクによる印刷物、」「又は前記のものの組合せ」という記載は、依然として明確でないから、本願発明は明確でない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、また、同法第36条第6項第2号の規定を満たしていないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020455